ここはブラックシティ。毎日のように欲望にかられた人とポケモンが吸い込まれては吐き出されていく、金さえ払えば何でも手に入るイッシュ地方最大の闇都市だ。
バトルに負けて悔しさを覚えたあるトレーナーが、ひょっこり目の前に現れた青い炎のヒトモシに連れられて、薄暗い路地裏に引き込まれていく。着いた先には、ござを敷いて座り込んでいる男が一人。前には上が赤、下が黒のボールと上が青、下が白のボールが一つずつ。トレーナーを見るなりにやりと笑って、男は話し始める。
「おや、いらっしゃい兄ちゃん。うちのヒトモシに連れられてきたってことは、あんた強くなりたい人間だな? いやいやいいんだ、若いうちはみんな最強を目指して頑張るもんさ。見たところ黒の摩天楼に挑んでボロボロにされちまったってところだな。まぁ見てってくれよ」
男は赤黒いボールを手に取る。
「こいつは捕まえたポケモンの理性のタガを外しちまう、おっそろしいボールさ。殺意に満ちて、目の前の相手を殺すことしか考えなくなっちまうのさ。だがこいつがあれば圧倒的な強さが手に入るぜ。なんせ殺すまで止まらなくなるんだからな。ニャオニクスってポケモンがいるだろ? あいつの♂を捕まえて殺さない程度に拷問にかけて、死にたくても死ねない絶望と殺意を高めさせる。そのあと生きたまま脳みそを機械に直接つないで、出力した念波を浴びせたのがこのボールさ」
殺意や拷問といった物騒な言葉を聞いて、トレーナーは一瞬後ずさる。
「はっはっは、まぁ落ち着けよ。こっちがあれば大丈夫さ」
男は青白いボールを手に取った。
「こいつはさっきとは逆。どんなに凶暴なポケモンでも従えられる、頼もしいボールさ。本当にどんなことでも言うことを聞くようになってな、今までできなかったあんなことやこんなことし放題だぜ。兄ちゃんアブソルの×××なんて体験したことねぇだろう? そういうことも平気でできるようになるのさ。こいつはニャオニクスの♀を捕まえて、徹底的に快楽調教するんだ。従順であることこそ快感だと教え込ませて、ヤク漬けにする。あとはさっきと同じ。念波を浴びせて完成さ」
トレーナーは話を苦虫を噛み潰したような表情で聞いてしばらく悩んでいたが、無言で頷き二つのボールを手に取った。
「おっ、お買い上げかい。あんがとよ。兄ちゃん初めてのお客さんだからな、今回は二つ合わせて千円でいいぜ」
男に金を投げつけるように放り出して、トレーナーは黒い街へ戻っていった。
「またのご利用、お待ちしてるぜ兄ちゃん。ヒッヒッヒ……」
暗い路地に、ねっとりとした気味悪い男の声がこだました。
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