欠落した文章能力
前後の内容崩壊、理解に苦しむ表現方法
同性愛的思考または、性的な煩悩等目の当てられないものが含まれております。
上記以外にも読み手を選ぶ内容が含まれているかも知れませんので、閲覧には注意してください。
夜が嫌いだった。
ご主人が帰ってくるとルカリオは孤独であった。もちろんトレーナーは側に居る。仲のよいポケモンも居る。
けれど、いつも独りだった。
二階の部屋からはご主人と楽しそうに話してるライチュウの声が聞こえた。その時間が来るたびに、無力感に襲われた。
ライチュウはご主人に溺愛されていた。何度もポケモンコンテストに出たりしている。
主人に暇さえあれば、リボンを付けて貰ったり、毛づくろいをして貰っているらしい。夜の9時頃がちょうどその時間帯だった。
その時間からルカリオはずっと独りである。ルカリオとライチュウ以外、この家にポケモンはいない。
ルカリオは話す相手すらいない。いつの間にか寝るまでの時間は一日で一番つまらない時間となっていた。
このときばかりは幾ら仲のよいライチュウとはいえ、あまり快く思えなかった。
こんなときは決まって本を読んだ。ルカリオは文字が読めた。まだ、小さかった頃にライチュウに教えて貰っていた。
もちろん、難しい漢字だとかは読めない。そこで側にはいつも国語辞典を置いていた。
今、ルカリオが読んでいるのは専門書であった。
ルカリオは心理学に興味を持っていた。
どうすればご主人に振り向いて貰えるのか、どうすればライチュウともっと仲良くなれるのか。
そういう疑問を解決するのに役立ちそう、そんな動機からだった。
しかし、まだ幼いルカリオには本に書いてあることを理解するのは不可能だった。
漢字一つをとっても、専門的な難しいものばかりで、国語辞典で引けるようなものは少ない。
それに加え、本には多くの英語も記されている。ルカリオはひらがなは読めても、アルファベットは駄目であった。
それでも無理に読もうとすると、書いている内容は全く理解できなかった。一つ一つの単語を調べるために分厚い辞書を捲っているだけであった。
暫くすると、階段のほうから音がした。ふり返ると、ライチュウの姿が見えた。
何か良いことがあったみたいで、にんまりと笑っている。
「またそんな難しい本を読んでんの? 絵本とかのほうが面白いじゃん」
「うるさいな。放っといてよ。今集中してるんだから」
ルカリオは嘘を付いた。集中なんてしていない。全くページが進まなくて、読み飽きているところだった。
項は29で止まっている。
「少し休憩しなよ。お茶でも入れてあげるから」
ライチュウはそう言うと台所へ掛けていく。二つのコップを手に取り、冷蔵庫を尻尾で器用に開けている。お茶の入ったペットボトルを取り出そうとしていた。
ルカリオは横目でその様子を見ていた。どう見ても、ライチュウだけで運べる量ではない。
読んでいた本を閉じ、席を立つとライチュウの側に駆け寄った。そして、冷蔵庫の中に手をいれ、ペットボトルを取った。
「ありがとう」
可愛らしい笑顔だった。
まぶし過ぎて目を合わせることさえ躊躇させられた。
少し照れてしまう。ルカリオはそっぽを向きぶっきら棒に、気をつけろよと返事した。
* *
ルカリオは心躍らせていた。秘められた計画があったのだ。
ご主人が仕事に出かけている時間を見計らって、想いを寄せているポケモンに告白をする。
ただ、それだけの計画なのだが経験の無いルカリオにとっては大きな事件なのだ。
朝、主人が仕事に出かけてからずっとタイミングを見計らっている。
どんな状況で告白すればいいか、なんて検討がつかない。ただ、過ぎていく時間を無駄に過ごすのが関の山。
「なに考えてんの? 難しい顔してるよ」
声を掛けられてはっとした。隣を見るとライチュウの顔がすぐ側に見えた。
オレンジ色をした電気袋。カールした長い耳。小さい鼻。後ろの方に見える稲妻形の尻尾はゆらゆらと揺れている。
胴長短足で両手まで短い。そのせいですこしばかり太っても見えるのだが、そこに惹かれている面もあった。
ピカチュウなんて比ではないほどの可愛らしさを身に付けていた。
「いや、別に考えてないけれど……」
「ちゃんと考えてよ。今日の昼ごはんがこれで決まるんだからね」
口調もどこか可愛らしかった。
耳の奥をくすぐられるような心地よい声。甲高くもなく、かと言って野太くもない、変声期の只中に居る少年のような声だった。
中性的ともいえるのかも知れない。
「ポケモンフーズでいいよ。作るのも面倒くさいし」
「えー。昨日も一昨日もポケモンフーズだったじゃん。何か別のものにしようよー」
そういうとライチュウはルカリオの身体に纏わりついてきた。
まるで仲のよい恋人同士のように肌と肌を密着させている。
それはルカリオにとって拷問にも近い行為だった。
自分の憧れの存在がすぐ側に居て、恥じることも憚ることもなく、腕を組んできたり頬を合わせたりしている。
頬が熱くなっていくのを感じざるを得なかった。
熟れた果実のように柔らかい頬は、摺り寄せられると心地よいものだった。
これは夢ではないのか、現実なのか、と思考は半ば混乱していた。
「暑苦しいな。離れてよ」
「ルカリオ、顔真っ赤だよ。男同士なのに、なんで恥ずかしがってんの」
それは禁断の恋であった。ルカリオは同性のライチュウに初々しくも純粋な恋愛感情を抱いていた。
もちろんそれは気安く暴露してもよい類の気持ちではない。同性愛は人間と同じくポケモンにとっても禁忌であった。
ある者は汚い痴情と吐き捨て、ある者は醜い劣情と罵る。そして、極めつけは異常性欲者の烙印を押される。
確かに恋愛感情を抱いている対象は普通ではないのかも知れない。珍しいのかも知れない。
だが、ルカリオが抱いている想いというのは異性に向けられるそれとなんら変わりないものだった。
「うるさいな、ポケモンフーズが嫌ならライチュウの分も僕が食べるからね」
「そ、そんなぁ。酷いよ。いじわる言わないでよ」
告白する決意は硬かった。が、迷いがないという訳でもなかった。相手は同じ牡である。まず望みはない。
ふられた後で、また今までのように全てを許しあえる親友として、ライチュウが接してくれるのか。
そればかりが頭の中でちらついていた。その不安も今までの仲を考えると、ある程度は予測できた。
それでも恐怖には変わりなかった。
ルカリオはそのまま立ち上がりライチュウを振りほどいた。
「どこいくの?」
「まだ昼には早いから、風呂。暑いから水浴び」
「僕も行くよ。一緒に入ろうよ」
ルカリオは『一緒に入ろう』という言葉が、甘美な響きに聞こえた。
物心つかないときから一緒に生活していたのだが、ライチュウと風呂に入ったことはない。
普段から裸なのだから大したことはない、と考えることも出来る。
だがそれは背伸びをしたがる年頃のルカリオには度台無理な話だった。
身体を洗いあったり、肌が不自然に密着したり。
狭い空間なのだから不意に肩や太ももに触れてしまうかも、と思うと頭の芯が熱を持ち、重たくなっているように感じた。
「ほら、早くしないと先に入っちゃうよー」
ルカリオはライチュウの後を追った。
湯船には水もお湯も入っていない。大きな口をあけた浴槽の中にライチュウは居る。
手招きをしてルカリオにも入るように促していた。
「ルカリオが入ったら水を入れるよ」
ルカリオはドキドキしていた。湯船は人間が入ると足を伸ばせないくらいの広さしかない。
二匹が無理に入ろうとするならば、身体を密着させなければいけない。
今までだって密着はしていたが、それとはまた違う。雰囲気が変われば同じ密着でも意味が変わる。
ルカリオはまだ発展途上の幼い性欲を激しくかき乱されていた。
不覚にも下半身の触れてはいけない部分が反応してしまう。
完全に屹立しているわけではないのだが、股間のスリットから先をほんの少し覗かせるほどになっていた。
身体を僅かに前の方へ倒し、ライチュウに悟られないように隣に入った。
やはり湯船は狭く、二匹の身体はぴったりと張り付いていた。
「じゃあ、お水を入れるよ」
ルカリオは頷こうと視線を落とした。すると、接している手足の隙間からライチュウの身体が見えた。
膨らんだ丸いお腹があった。肌の色が黄色から白へと変わる境目がはっきりと見えた。
窮屈そうに曲げられた両足。その間からは堅く閉ざされたスリットが見え隠れした。
それもやはり普段見ているものとは全く違うように感じた。陰に隠れて、見えそうで見えない。
その状況につよく劣情を掻き立てられた。
ルカリオが返事をする前にライチュウは蛇口をひねった。そこからは激しい勢いで水が流れ出していた。
洗面器ならものの4、5秒で一杯になる位の勢いでも、湯船になるとそう簡単ではなかった。
足元一面に水が溜まるのさせ数分を要した。二匹は密着したままだった。触れ合う場所は互いの熱で次第に暑くなっていく。
涼むための水浴びなのか、汗をかくための水浴びなのか分からない。
ライチュウはあまり我慢することが得意ではない。早く冷たい水を身体一杯に浴びたかった。
カランからシャワーに切り替えると、ルカリオの顔を目掛けて冷水を掛けた。
「ちょ、なにするん――」
ルカリオは慌ててシャワーを奪い取ると、湯船の中に転がした。
水の勢いが強かったせか、シャワーはくねくねと暴れ回り二匹の身体を湿らせた。
あげく、だらしなく仰向けになり二匹の境界で動きを止めた。
「びっくりした?」
「鼻に水が入って痛い」
「でも、冷たくて気持ちよかったでしょ」
悪びれずにんまりと笑顔を浮かべるライチュウが、天使のようにも悪魔のようにも見えた。
それから二匹はお互いの身体へ、交互にシャワーを掛けた。
それは身震いするほどに冷たい水だったのだが外の暑さか、密着しているからか、割と平気であった。
初めは肩から密着しているところへ掛けていたのだが、ライチュウがまたルカリオの顔にシャワーを掛けたことから、二匹の争いが始まった。
ルカリオは同じくシャワーを奪い取ると、ライチュウの顔を目掛けて水を掛けた。
それを受け、ライチュウは両手で顔を覆い、尻尾でルカリオの頬を叩いた。
「手を出すのは反則だろ」
「悔しかったらルカリオも尻尾で叩けばいいでしょ」
そんなことをしていると、いつの間にか湯船の中は水で一杯になっていた。
そうすると、浮力のせいか多少は密着が解けてしまった。
「僕、先に身体だけ洗うよ」
ルカリオが湯船を出ようとすると、それと同時にライチュウも立ち上がった。
「じゃあ、背中を流してあげる」
多少――いやかなり期待していた事が現実になろうとしていた。それは嬉しいことなのだが、悪いこともあった。
いままでのじゃれ合いだけで、ルカリオは自らを鎮めることで必死だった。
いくら親友とは言っても、じゃれ合っていて勃起させていたらさすがに気持ちの良いのもではないだろう。
ルカリオのスリットからはやはり幼い性器が顔を覗かせていた。
「いいよ。ライチュウはシャワーで遊んでろよ」
「遠慮しなくてもいいじゃん。僕とルカリオの仲なんだから」
ライチュウは半ば強引にルカリオを座らせるると、石鹸のついたタオルで背中を擦り始めた。
それは気持ちがいいというものではない。ある種の感激に近かった。
好きな相手に背中を流して貰えるなんて、夢にも思っていなかった。
「前も洗ってあげようか」
「背中だけで十分だから。あとは自分で洗える」
ルカリオは背中を流されているときに、勃ってしまっていた。
いくら幼く小さいと言っても牡には変わらず、一度膨らんだそれを隠す術はなかった。
そんな言葉をライチュウは一切聞いてくれない。強引に腕を前にまわし、泡に塗れた手で直接ルカリオの身体を撫で回した。
それはお腹の周りを起点として、ゆっくりと下へ降りていく。
ルカリオは手を振り解こうとするのだが、思いのほかライチュウの力は強かった。
力ずくで引き離すことも出来たが、それは気が引けた。拒絶しているように受け取られるのが恐ろしかった。
「あ、なにこれ。ルカリオはエッチな仔だな」
自分で触るのとは別の快楽が、ルカリオの身体を突き刺した。
優しく握られた性器は幼いくせに、心臓の鼓動と同じリズムで動いていた。
抵抗はしなかった。他人に触れられるのが、これほど気持ちいのかと驚きを隠せないでいた。
出来るなら、このままライチュウに慰めて貰いたかった。もちろん、無理なことだと解ってはいたが……。
「早く離してくれない。握られてると、痛いんだけど」
建前だった。
「ルカリオのちんちんって大きいんだね。僕のよりも大きいかも」
「うるさい。いいから、早く離してっ」
ルカリオはライチュウを振りほどくと身体についた洗剤を洗い流し、先に風呂から上がった。
* *
我慢の限界だった。
身体の水気を適当にふき取って、トイレへ駆け込んだ。この場所くらいしか、ライチュウの目を誤魔化せる場所はない。
それに、ここは鍵がかかる。もしライチュウがドアを開けようとしても、絶対に中の様子が見られることはない。
便座にすわり、怒張したペニスに手を添えた。尿道口からは粘り気のある体液が僅かに零れていた。
目をつぶるとライチュウの姿がすぐに浮かんだ。
輝きのある瞳、にんまりと歪んだ頬。悪戯好きなところもルカリオのお気に入りだった。
妄想の中では何でも出来た。抱き合ったって、キスしたって、妄想の中に居るライチュウは何も拒まない。
むしろ自ら舌を重ねてきた。口の周りはすぐに唾液で汚れた。舌を絡めると、卑猥な水音が部屋の中に響いた。
目を瞑り、必死になって口の中を貪るライチュウの姿は、普段の浮ついた姿とは違い新鮮に見える。
頬を紅色に染め、恥じらいを隠しきれて居ない様子もルカリオをその行為へと誘った。
首を左右に振りながら、何度も付いたり離れたりを繰り返していると、二匹の舌から唾液が零れ落ちた。
床には染みが出来ている。
顔の密着を解くと、ライチュウはぼんやりとした瞳で見つめる。色に冒され淫猥な輝きを見せる瞳だった。
「ルカリオのおちんちんがほしいよぉ」
口に出すのを躊躇っているのか顔を逸らし、聞き取れないほどの小声でその言葉は放たれた。
ライチュウの頬に小さく口を付けるてやると、跪き、ペニスに恭しく舌を這わす。
根元から裏筋までを舐めるように何度も刺激している。
先走った透明な液体があふれてくると、尿道口を突付くようにして舐め取っていた。
目と目が合うとよほど恥ずかしいのか、目を硬く瞑りフェラチオを続けた。
両手で太ももにすがり付き小さな口で、ペニスの先を咥えた。舌先で転がされていた。ルカリオは思わずくぐもった声を上げた。
それを聞くと、ライチュウは口を激しく動かし、少しでも早く精液を飲もうと必死になっていた。
ルカリオも駆け上がっていく快楽に対し、ただ耐えているだけでは収まらなかった。
往復運動を繰り返すライチュウの顔を両手で掴むと、自ら腰を振り快楽を求めた。
ライチュウの悲鳴にも似た声が聞こえた。
悲鳴は耳の奥を擽り、ルカリオの残虐性に火をつける。
ライチュウは喉の奥が苦しいのか両手を振り回し、抵抗していた。それを力で押さえつけ、更に腰の動きを激しくする。
ペニスが出入りを繰り返すたびに、空気が押しつぶされ気管を逆流していく音が響く。もやはライチュウの声ではない。
低く醜い音だった。口の周りにもペニスにも、逆流してきた胃液なのか、唾液なのか見分けの付かない透明な体液で塗れてた。
嗚咽を撒き散らしながら苦悶の表情を浮かべるライチュウ。
それは異常なのか、支配欲の成せる技か、ルカリオは背筋が凍るほどの興奮を覚えた。
一度、口虐から解放してやる。そうしてやらないとライチュウは呼吸が出来ない。
ライチュウは大きくむせ込むと僅かの間その場に崩れ呼吸を整えていた。
暫くして落ち着くと、大きく息を吸い込み自らペニスを咥え込む。根元まで喉の方へ入ったとき、また低い音がなった。
ライチュウは振り回していた手を、いつの間にか自信の身体を慰めるために使っていた。
彼のペニスもまた、先走りで光っていた。
ルカリオはライチュウの喉からペニスを引き抜き、一気に押し込む。
苦しいのか痛いのか、ライチュウは悲鳴にもならない声を上げた。その目は涙で湿っている。
それでも、自慰をやめようとはしない。
色欲に狂っているかのように激しく自らのペニスを扱いている。
先走りの液は白く泡立ち、ぬちゃぬちゃと音を立てている。
その様子を見るとルカリオは、更に激しく責め立てたい衝動を覚えた。
何度も、何度も、ライチュウの口を犯していく。もうルカリオの絶頂も近い。
今にも尿が飛び出てきそうな感覚。腰はすでに重だるく、ペニス全体が痺れていた。
自然と往復運動は速度を落とし、激しさが削がれていく。代わりに、突き立てたペニスは喉の奥を求めて進もうとする。
夢中だった。それは牡の本能ともいえる。
本来な牝の子宮を求め、少しでも膣の奥に精液を放とうとする。射精欲が高まってくると、奥へ更に奥へと求めてしまうのだ。
それ以上ペニスが進めない位置にたどり着くと、性欲を放っていた。
意識が遠のくような感覚。痺れたペニスは、苦しそうに痙攣しているのだが、白濁した液体は快感の証拠。
勢いよく飛んだ精液はライチュウの食道に直接放たれる。
ルカリオはペニスを慌てて引き抜き、ライチュウの口の中に残りを出してやった。
納まらないほど出してやると、いつもの笑みでそれを飲み干していた。
ライチュウは、口からあふれ床に零れた精液を卑しくも舌でふき取っていた。
そしてルカリオはゆっくりと目を開く。
* *
ルカリオはため息をついた、自分の手を見ると白濁した体液がべっとりと付いている。
一部は手の中から零れ落ち、床に散らばっていた。早く処理すればいいのだが、身体が鉛のようで動かなかった。
快楽の後に襲ってきたのは虚無感でも、疲労感でもない。
その両方がないと言えば嘘になるのだが、ルカリオにとってその二つはどうでもいいことだった。
初めはライチュウの妄想なんてしていなかった。
何よりも気恥ずかしかった。
性の対象としてライチュウを見てしまうと、もう普段道理に話せれなくなるのではないか、と恐れていた。
しかし、それは取り越し苦労だった。きっかけは些細なことだった。
ある日を境にして、ルカリオはライチュウのことを想いながら自らを慰めるようになった。
初めのうちは妄想も穏やかだった。ただ一緒にキスをしたり、抱き合ったりすることを想像するだけで満足できた。
それがいつからか、ライチュウを虐めるようになった。
叩いたり、乱暴に扱ったりすると、妙に興奮できた。率先してライチュウの苦しむ姿を想像した。
虐め、蹂躙し、尊厳を踏みにじった。想像の世界では、いつもこういう具合だった。
ただ、興奮が冷めると激しい罪の意識に襲われた。
なぜ、ライチュウを泣かせたいと思ってしまうのか
なぜ、ライチュウを虐めてしまうことが出来るのか
なぜ、ライチュウを虐めて欲情してしまうのか。
そしていつも放心してしまう。
溢れて来る性欲や加虐心を抑えられない自分。
それどころか、虐めることによって自分の心が潤っている事実が、ルカリオには怖ろしかった。
頭が茹だっている。薄っすらと額に汗が浮かんでいた。
立ち上がり白濁した液体を紙でふき取る。ただ、それだけの行為の間、ルカリオは自分がとても惨めに感じた。
飛び散った白濁液を全てふき取ったのを確認すると、その部屋を出た。
トイレのドアを少し開けると、僅かな隙間からライチュウがこちらを覗いていた。
「そこで何してるの?」
ルカリオは普段道理に話しかけたが頭の中は混乱していた。
さっきまで風呂に入っていたはずのライチュウがすぐ目の前で、しかもこちらを覗いているのだ。
これで、ライチュウがすぐにトイレへ入るようなら、今までの行為がばれてしまうかも知れない。
トイレの中は精液の臭いが充満している。
頭の中が真っ白だった。
「いや、苦しそうだったから心配になっちゃって」
「苦しそうってなにが」
「だからさ、……便秘ならお腹、摩ってあげようか?」
ルカリオは顔が熱くなるのを感じた。
自慰の声や息遣いが聞こえていたに違いない。
その声がライチュウには排泄をしようと懸命になっているように聞こえたようだった。
勘違いをしているのは有難いことだったのだが、声が漏れてたというのは恥ずかしいことだった。
ライチュウにだけはそんな情けない声を聞かれたくなかった。
「いいよ。もう全部出したから」
「ポケモンフーズばっかり食べてるからだよ。たまには野菜も取らないと。仕方ないから、お昼ご飯にサラダでも作ってあげるよ」
「作れるの?」
「サラダなんか楽勝だよ。野菜を洗って、千切って、お皿にのせたら出来上がりー」
身振りと手振りを交えて話すライチュウは年齢よりも幼く見えた。
ライチュウはにんまりと笑顔を浮かべ、ルカリオに背を向けるとリビングの方へ歩き出していた。
ルカリオはライチュウを掴もうとして、手を伸ばした。短くて太くて、ぷにぷにとしたライチュウの手。
掴むことは出来なかった。あと少しだけ距離が足りない。しかし、手に触れることは出来た。
「どうしたの?」
ライチュウは立ち止まりルカリオの方を見た。
――好きだ。
「へ? 何? 聞こえないよ」
ルカリオの放った言葉はあまりにも小さい声だった。側にいる相手にも伝わらない程の声だった。
事実、手の届く距離にいたライチュウにさえ聞こえてはいない。
ルカリオはやはり自信がなかったのだ。
何でも話せる、どんな冗談でも言える“親友”という関係が崩れてしまうことが何よりも怖ろしかった。
普通は牡が牡に告白なんてされたら、いい気分にはならないだろう。ライチュウから露骨に避けられたくはなかった。
プライドに傷が付くとか、そういうことではなく、純粋にライチュウから避けられるのが嫌だった。
依然として葛藤はあった。
「いや、いいよ。なんでもない」
「そういう態度って一番だめなんだよ。何って言ったのか、気になるじゃん」
「じゃあ、耳貸してよ」
心臓が破裂しそうだった。たった一言話すだけ、ルカリオが幾らそう思おうと努力してみたところで、胸の高鳴りは収まらなかった。
耳の側に口を近づけた。ピカチュウの頃とは違う可愛い形の耳。
ピンと伸びているだけの耳じゃなくて、変化に富んだ不思議な形の耳。
ライチュウとの距離が縮まっていくごとに、意識はどうしても告白ではないところへ向いてしまう。
トイレでの妄想や身体の特徴や告白の不安ばかりが過ぎった
ルカリオはライチュウから一歩離れた。
そして大きな声で好きだ、と言った。
「無理だよ。牡同士だもん。ルカリオの事は好きだけど、そういう風な目では見れないし、そういう趣味には付き合えないよ」
ほとんどのポケモンはヘテロであり、異性を対象に恋愛感情を抱く。それが理解できないほど、ルカリオの心は幼くなかった。
けれど、幾ら心が成長していても、自分の気持ちを“趣味”として切り捨てられるのは我慢できなかった。
“恋愛感情”を“変態性欲”として見られるのは耐えらなかった。
「趣味じゃないっ! 僕は真剣だ!」
ルカリオは叫んだ。
同時に放心した。
その後にライチュウがずっと話をしていた。ただ、その話はルカリオの耳には届いていない。
ルカリオは自分が返事をしているということは解ったが、何に対して返事をしていたのかはっきりとしなかった。
覚悟はしていた。無理なのも承知の上だった。
だが覚悟をしていたとはいえ、無理が解っているとはいえ、失恋は辛いものだった。
瞳からは自然と涙が溢れて来ていた。
目の前が真っ暗になった。壁にもたれ掛かり、そのまま泣き崩れた。
「ごめん。もう友達じゃいられないよな……」
ルカリオが言ったその言葉はライチュウに対してのものではなく、自分に対して言った言葉だった。
長らくライチュウのことを恋愛対象として見つめていたのを、今更友達として見ることは出来ない。そういう意味だった。
「ううん。僕はルカリオと友達でいたいよ。本当のことをいうと、ルカリオが牝の仔だったらいいな、って思ってた。それに、ルカリオに告白されて、少し嬉しいって思うもん」
「じゃあ、少しずつでも……。今までより仲良くはなれないかな。恋人みたいに」
「それは、解んないよ。でも、今は無理でも、もっとゆっくりと時間をかけたら無理じゃないかも知れないよ」
ライチュウが珍しく頬を染めていた。幼い頃から側に居たルカリオでさえ、数えるほどしか紅潮した顔は見たことがなかった。
それが嬉しくもあった。
それでも丁寧に振られたことには変わりない。
「さ、早くお昼にしようよ。準備するからルカリオも手伝ってよ」
「いや、僕はいいよ。少し一人になりたい」
ルカリオは背を向けて、二階に登る階段の方へいこうとした。
そのとき、一瞬で身動きが取れなくなった。背中にはライチュウの温もりがあった。
「これから、もっと仲良くなって恋人になるんでしょ? それなら一緒に作ろっ」
振り向くといつもと同じ悪戯な笑みを浮かべたライチュウがいた。
チラシの裏にてスルーしてくださいとか言いましたが、やはり捨ててしまうのはもったいなく感じたので、こちらに投下しました。
身勝手な行動で、申し訳ないです。
スペルチェック・激しい叱咤をお願いします。
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