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打ち上げ花火

/打ち上げ花火

Writer:&fervor
*官能小説です。そういった表現がいくつも含まれておりますので、お気をつけ下さい。
*また、この作品は人×ポケ、フェラ、クンニ、失禁(エロ外)を含んでおります。駄目な人はお帰りください。


蝉の鳴き声がかすかに聞こえる。太陽こそ沈んだものの、まだ空はほのかに明るい。
夏特有のじめじめとした空気が肌にまとわりついて気持ち悪い。普段なら絶対に家で居るだろうけど、今日は特別。
今年もまた、花火大会の時期がやってきた。小さい頃は、毎年両親の手を握ってこの道を通っていたけれど――。
今は、こうして大切なパートナー――ムウマージのリースと一緒。二人っきりでこの細い道を進んでいく。
彼と私は、とっても良いパートナーだと思う。もちろん、恋人だとかそう言った関係じゃない。でも、単に友達とかで片付けられるものでもなくて。
ちょっと微妙な、特別な関係。思うところはあっても、それが恋に結びつくわけじゃない――そう、言うなれば「友達以上、恋人未満」。この言葉が一番ぴったり……だと思う。
「そろそろだよね、ナツキ」
「うん。……今年の花火も綺麗だと良いね」
隣でふわふわと浮かんでいたリースが、待ちかねて私に尋ねてきた。まだちょっと子供っぽさの残る彼は、どうやら早くあの場所に行きたいようだ。
「楽しみだなぁ……。今年は天気も良いし、きっと綺麗だよ」
「ふふ、そうだといいね。……始まっちゃう前にさっさと行こっか」
私が柄にもなく走ってみると、リースも私の後を追って飛んできた。私もちょっと童心に返って、私はあの場所まで彼と競争することにした――。

「はぁ……リースには叶わないね……」
「僕は飛んでるもん、ナツキより早いのは当たり前だよ。――あ、花火始まったみたい!」
ちょっとした川が流れるこの水辺。会場からは少し離れている所為か、人も全然居ない、まさに穴場スポット。
川のおかげで涼しい上に、花火が上がるとその光が川にも映って本当に綺麗に見えるという、絶好の場所だ。
揺れる水面、そして辺りがぱっと明るくなったかと思えば、数秒経って大きな音が。
その繰り返しがいくつにもなって、二つの花火が同時に私たちを照らしていく。
「花火ってさ、上がったら……役目が終わったら、後はそのまま消えちゃうんだよね……」
それぞれ違った雰囲気を持つ花火達は、絶えることなく地を照らし続けている。
「僕みたいに、実態のないゴーストも、あんな風にすーっと消えちゃうのかな」
「さあ、どうだろうね……」
ふっと音が止む。玉の入れ替えをしているのだろうか、空には灰色の煙が流れているだけ。
「あんなに綺麗じゃないと思うけど……死ぬとしたら、ああやって消えていくのかなぁ」
風を切る音が一瞬の静寂を切り裂く。ひょろひょろと上がった光の筋が、ふっと消えて――。
「でも、どうせ死ぬなら、かっこよく消えてみたいな」
開いた花火の輝きに照らされたリースの顔は、ちょっと寂しげに笑っていた。
――笑えないよ……。
どうして笑っていられるんだろう。リースが隣から消えちゃったら――そう考えたら、私は怖くって仕方がない。
話はそれきりになってしまって、あとはただ、上がっては開き、そして消えていく炎の芸術を見守っていた――。

ようやく花火も終わって、私たちは元来た道を引き返していく。
「綺麗だったねぇ。今年は天気も上々だったし、良かった良かった」
上機嫌なリースは、身体を上下に揺らしながら宙に浮いている。こうやって直ぐ態度に出る所を見ると、やっぱり、まだまだ子供だなぁ、と思ってしまう。
「そうね。……あ、帰り、こっちの道通ってみない?」
私が指差したのは、森の中を通る小道。夜にもなれば、流石に誰も通りたくないような、不気味な暗がりとなっている。
私は別に幽霊だとか何だとかは怖くない。そもそもリースはゴーストタイプのポケモン。お化けが怖いだのなんだの言ってたら一緒になんか居られない。
――でも、リースはちょっと違うのよね……。
「や、やめようよぉ……。すごい暗いし……もし何か出たらどうするの……?」
そう、リースは姿に似合わず、極度の恐がりなのだ。自分の姿をみてもう一度考えて欲しいけど……。
「ほらほら、雄なんでしょ? 勇気を振り絞って!」
「……っ……ナツキの意地悪……」
私がいやがるリースを無視して小道に入っていくと、心細くなったのか――リースは私のすぐ後ろについて来た。
「ここを抜ければ近道なんだから、ちょっとの辛抱でしょ?」
生ぬるい風が身体の正面に張り付くように当たる。そう言うのが好きな人に言わせれば、きっと「何かが出そう」なんだろうけど。
生憎興味もないし、特に私は気にしないことにしている。でも、リースはもうびくびくしっぱなしだ。
草叢がちょっと風で揺れて、音を立てようものなら――。
「うわああぁっ! そこに何かいた、何かいたよ!!」
リースはものすごく素早い動きで私の背中にぴったりとひっついて離れようとしない。小刻みに震えている様子が背中から手に取るように分かる。
「もう……風よ、風。いい加減慣れなさいよ」
「だ、だってぇ……怖いものは怖いんだよぉ……」
半泣きになりながら私にくっつくリース。これじゃあまるで本当に子供みたいだ。
「はぁ……分かった分かった。私がついてるから、大丈夫よ」
「ほんとに? 絶対にだよね?」
リースは本当に、こういうのに弱いんだということを改めて実感させられた。
「離れないでね? 約束だよ?」
結局、私はリースを背中にくっつけたままこの道を通り抜けていった。終始震えっぱなしだったリースは、街灯の明かりが見えた瞬間そこに向かって一直線。
やれやれ……と私は呆れながら、リースの後を追って駆けていった。

「もう……速いってば、リース!」
この辺りはまだまだ田舎で、地面の舗装がされていない道もいくつかある。そんな夜道をサンダルで走っていたら、当然――。
「きゃっ!!」
地面に転がっていた小石につまずいてバランスを崩す。結構な速度で走っていたせいか、勢いよく転んでしまった。
「っ……ぃたた……」
軽く膝をすりむいてしまったみたいだ。これくらいなら、傷口を水で洗ってから消毒すれば心配は無い。
鈍い痛みは残っているけど、とりあえず家まで帰ってからなんとかしようと思っていた。でも、リースは必要以上に心配してくれている。
「大丈夫……? これくらいなら僕が身代わりになってあげるから、心配しないで」
すっ、と痛みが消える。さっきまで傷があったはずの膝を触っても、初めから怪我など無かったかのように綺麗そのもの。
一方のリースは、ひらひらのスカートのような部分に少し傷が入っている。ゴーストタイプだからか、血は出ていない。
それでも、リースがちょっとだけ顔を歪ませたのを、私は見逃さなかった。
「……よしっ、と。さ、早く帰ろっか」
今度は私の早さに合わせて、隣に並んでリースは宙を進んでくれていた。こんな事細かな気配りが出来るのも、リースの優しさ故……なのかもしれない。
よくよく考えてみると、前にもこんな事が何回かあった気がする。その度にリースは私を助けてくれていたんだ――。

そう、私が高校生だったときの話。もうすぐテストだって言うのに、酷い風邪を引いたとき……だったかな。
「あぁ……しんどいなぁ……。ごめん、リース……水、持ってきてくれないかな……」
「う、うん、分かった」
リースはつきっきりで私の看病をしてくれたけど、それでもなかなか良くならなかった。
病院にも行って薬を貰ったけれど、それもあんまり効かなくて、ずっとベッドで寝ているだけ。
水の入ったコップをサイコキネシスで持ってきたリースは、何を思ったのか私のすぐ側までやってきた。
「ん……どうしたの、リース……」
「……ちょっと待ってて。すぐ良くなるからね……」
私の身体にリースの身体が触れたかと思うと、身体がふっと軽くなる。さっきまでのしんどさが嘘のよう。
「なんだかよく分からないけど……ありがと、リース」
「う、うん……どういたしまして……かな……」
ふらふらと浮いているリース。変に感じた私が、リースの身体を触ってみると……。
「だ、大丈夫?!」
さっきまでの私のように、身体が酷い熱を持っている。顔を見ても苦しそうだし、どうやら浮いているのが精一杯みたいだった。
「うん……だって、ナツキのためだもん……。苦しそうなナツキ、これ以上見たくないから……」
そのときが、初めてリースに身代わりをしてもらった時だった。

リースと一緒に帰っていると、ついつい寄り道をしたくなってしまって――気づけば辺りは真っ暗になっていた。
そうこうしているうちにあっという間に辺りは闇に覆われ始めてしまう。
私もリースも、急いで家までの道を走っていく。早く帰らないと本当に真っ暗だ。
そして、道の途中。ちょっと高い段差だけど、個々をジャンプして越えたら家はすぐそこ。回り道していたらだいぶ時間を食ってしまう。
「ねぇ、リース。これくらいなら、何とか跳べそうかなぁ?」
よくよく見れば、優に身長の二倍はあるかも知れない。でも、上手く跳べばきっと大丈夫――。
「大丈夫……だと思うけど……。でも一応回り道したほうが……」
「大丈夫だよ。じゃあ、跳ぶね……」
ちょっと怖かったけれど、私は思いきって下に飛び降りた。一瞬身体が浮くような感覚。後は下に落ちていくだけ――。
そろそろ地面だ、と着地の体勢を取ろうとした瞬間。私は地面に足を叩きつけてしまった。
「あ゛ぁああぁぁっっっ……!!」
足を見ると、普通は曲がらないような方向に曲がってしまっている。しかも、立とうにも激痛のせいで全く立てない。
「な、ナツキっ…! 待ってて、すぐ助けてあげるから!!」
痛いを連呼する私に、リースの身体がそっと当たった。かと思えば、さっきまで私の足を襲っていた激痛があっという間に無くなってしまった。
足もいつの間にか、普通の方向に伸びていた。普通に立てるし、歩ける――。
「よかった…………ナツキ……」
けれど、身代わりになってくれたリースはぼろぼろだ。顔が既に痛そうで、見ていられない。
「す、すぐ連れて帰ってあげるから……待っててね、リース……ありがと」
「ど、どういたしまして……」
力なく笑っているリースを見て、申し訳なくて、でも嬉しくて……私は思わず泣いてしまっていた。

ようやく家に帰って来られた。まずはエアコンのリモコンを探して、スイッチを入れる。
ややうるさい音を立てながら、冷たい風が部屋全体に行き渡る。それを確認してから、私は冷蔵庫の中からアイスを取りにいった。
棒状のアイスを取り出して、包装をゴミ箱に捨ててからぱくっと口に含むと、口の中からあっという間に熱が奪われていく。
部屋のソファに腰掛けて、私はようやく一息ついた。リースは私のアイスを物欲しそうに見ている。
「今日は楽しかったねぇ」
そのままリースの目の前にアイスを差し出すと、待ってましたかというようにアイスをほおばるリース。
やがてリースが口を離すと、アイスはいつの間にか半分くらいまで食べられてしまっていた。
「花火は楽しかったけど……帰りは本当に怖かったんだからね?」
「あの程度で怖がっててどうするの。もう……」
やれやれ、と呆れ気味に首を振ると、ムキになって怒ってくるリース。その様子は何だか見ていて微笑ましい。
――そういえば、初めてリースと会ったのも、肝試しの時だったっけ。

「ふぅ……肝試しってただ暗いだけなのになぁ……何でこんなのが怖いんだろ?」
いつもの森の道。夜になれば確かに不気味な雰囲気はあるけれど……それでも、極端に怖がる理由がよく分からない。
何も起こりそうにないこの道を、ただ向こうまで通り抜ければいいんだから、これ以上簡単なこともないと思うんだけど。
――突然、隣の草叢が少し揺れた。ほんの僅かだったけど、静かだったから分かる。
普通の人なら此処で怖くて逃げてしまうんだろうけど、私は特に怯えることもなくそこに近づいてみる。
「うわぁぁぁぁっっ!!!!」
がさり、と草叢を奥までかき分けて見たその瞬間、そこからふわふわと浮いた紫色のポケモン――ムウマが飛び出してきた。
だけど、私に相当驚いたのか、ムウマは大きく後ろに飛んだかと思えば……身体から黄色い液体を地面に零していた。
「あ……ああ……あぁああぁあっっ……」
恥ずかしいのか怖いのか、たぶんその両方だろうけど……そのムウマはお漏らしをしながら泣きじゃくっている。
私が直接悪いことをしたって訳ではないけど……でも、何だか申し訳ない気がして仕方がない。
「ご、ごめんね、怖がらせちゃって……」
「せっかく……せっかく人間を驚かせるチャンスだったのに……これじゃ、皆の所に帰れないよ……」
どうやらこのムウマは人を脅かそうとして、逆に驚かされてしまったらしい。相当の恐がりなんだろうな、きっと。
「そ、それなら私と一緒に来ない? ね、そっちの方が楽しいよ、うん、絶対楽しいって!」
まだぐずっていたムウマは、よく分かっていないのかきょとんとした顔で私の方を見つめていた。
そんなムウマを強引に連れ出して、私は皆の元へと戻っていった。

――確かその後、皆リースに驚いて逃げて行っちゃったんだっけ。
懐かしい思い出を振り返っていると、手に持っていたアイスがいつの間にか溶け始めてしまっていた。
「肝試し、か……。あの後はほんと、大変だったよねぇ……おしっこの処理」
「そ、そんなのとっくの昔の話じゃん、う、うるさいなぁ……! あの時のこと、まだ根に持ってるんだからね!!」
怒ったリースもどこか可愛くって、私は思わずくすっと笑ってしまった。
それに釣られてか、リースも笑い出す。お互いにふふふ、と笑っていると、何だか全部どうでも良くなってくる。
「……さて、お風呂入ってもう寝よっか」
アイスの最後の一欠片を口に入れて、棒をゴミ箱に放り投げる。そのまま立ち上がって、リースと一緒にお風呂場へと向かった。
お風呂は出かける前に入れておいたから、後は入るだけ。脱衣所で素早く服を脱いで、さっさと汗を流す。
リースが身代わりになってくれた傷口は、特に気をつけて洗ってあげるようにした。痛そうにはしていたけど、リースは何も言わなかった。
ざっとお風呂に入った私たちは、そのままベッドに直行した。部屋の片隅のベッドに横になって、私は置いてあったタオルケットを掴む。
「……今日も一緒に寝ようか。暑いかも知れないけど……良いでしょ?」
こくり、とリースは頷いて、私の隣で横になった。一枚のタオルケットをお互いに引っ張るように被って、お互いに暫く見つめ合う。
「……そろそろいいかな」
私は枕元に手を伸ばして、クーラーのスイッチを切った。部屋の中も静かになって、ただリースの息遣いだけが聞こえている。
よほど疲れていたのか、リースもあっという間に寝てしまった。私もそんなリースの寝顔を見ながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。

「今日は何にもすること無いね。……あ、そうだ。夕方は涼しいだろうし、散歩にでも行かない?」
「いいね。そうしよっか」
――そうして私たちは今、この夕暮れの道を歩いている。心地よい風が吹いていて、それほど暑くもない。
ふと耳を澄ませば、森の方からは無数のヒグラシの鳴き声。たくさんの旋律が風に乗ってやってくる。
「うわぁ……すごい、綺麗な音だね」
聞いていたリースが感嘆の声を漏らす。これだけたくさんの音が響いているのに、ちっとも不快じゃないのは確かに不思議だと思う。
もっとよく聞いてみようと、私もリースも森の方を向いて、改めて聴く体勢を取る。
「……でも、すごく悲しげな鳴き声だよね」
ふと、リースがぽつりと呟いた。確かに、どこか物悲しい鳴き声ではあるけれど……。
「セミってさ、寿命もすごく短いし……もっと長く生きたいよ、って、そう言ってるみたい……」
ヒグラシの声の所為なのか――リースの顔もものすごく悲しそうに見えた。一体、どうして急にこんな事を言うんだろう。
私は何も言えないまま、ただリースの隣でヒグラシの鳴き声に耳を傾けていた。
「――ごめん。……行こっか」
ぼーっと林の方を見ていた私の意識が、リースの一言でようやく戻ってくる。
私は少し名残惜しかったけれど、やがて林から目線を外して、その場を後にした。その間もずっと、絶えずヒグラシの歌声は響いていた。
空がほのかに赤から黒へと変わり始めている。その下を、私とリースはゆっくりゆっくりと歩いて行く。
けれど、一体リースは何を考えているんだろう。確かにヒグラシの声は悲しい雰囲気があるけど、それにしても何だか少し変だ。
そんな風に思考を張り巡らせているうちに、どうやらいつの間にか家に戻ってきていたみたいだ。そう言えばヒグラシの声もだいぶ遠くなっている。
私は昨日と同じようにクーラーを入れて、ソファに座り込んだ。
「ふぅ……でも、良い気晴らしになったね」
帰ってくる間は終始無言だった。家の中でも沈黙のまま――さすがにそれは嫌だ。
「う、うん」
でも、やっぱりリースの様子が少し変。ほんと、一体何があったんだろう――と、また私はただ一人考えに耽っていた。

お風呂も手早く済ませ、今日も早めに寝ることにした。リースの今日の様子を考えたら、また一緒に寝た方が良いかも知れない。
「今日も一緒に寝よっか」
だけど、リースは俯いたまま返事をしてくれない。じっと黙ったまま、暫く時間が過ぎた。
もう一度私が声をかけようとしたそのとき。リースはちょっと顔を起こして、私の顔を真剣な表情で見つめてきた。
「……ナツキ。実は僕……悩んでることがあって……」
「そうなんだ……」
リースが今までずっと悩んでいたなんて。長いこと付き合ってきた私だけど、リースが悩みを相談してきたのは初めてだ。
私に出来る事なんてたかだか知れてるだろうけど……それでも、リースを助けるために、全力を尽くそうと思う。
「いいよ……何でも話して」
「……す、好きな子ができたんだ」
顔を見て分かるほど真っ赤にするリース。恥ずかしいのか、私からは眼を逸らしてしまった。
「へぇ……誰だか教えてよ」
リースにはちょっと悪いけど、正直ものすごく興味がある。リースが好きになる相手……か。
「……ナツキ」
「……ん? 何?」
「ん?? あ……」
リースが私の名前を呼んだのに、何でリースが困っているんだろう。早く教えて欲しいのに……。
でも、無理に聞き出すわけにもいかないから、黙って待つしかない。ものすごく嫌な沈黙が私たちの周りを包む。
リースの目は私を見つめたり、逆に私から目を逸らしたり。何だか自分まで困ってしまって、どうしようもなくなってしまう。
何とかしようにも、どうして良いのか分からない。お互いに困ったまま、暫く動けなかった。
そうして、暫くそうこうしている内に、ついにリースが口を開いてくれた。
「……僕、ナツキが好き」
「…………」
私はその言葉を聞いた瞬間、暫く止まってしまった。全く動けない。声も出なくて、ただその場で凍っていた。
「今までの仲じゃ、物足りなくなってきてさ。……愛してるって、言いたくなったんだ」
少し照れながら、でも満面の笑顔でそう言ったリースが、どうしようもなく可愛い。
それと嬉しい気持ちとが混ざり合って、胸が一杯になってしまう。
もうこのまま思いっきりリースを抱きしめて、気が済むまでずっと頬ずりしてやりたい。――そんな衝動を抑えて、私はその場でリースを見つめていた。
――愛してるって、言いたくなったんだ。
気づけば、私の頬を伝って、涙が枕の上に落ちていた。目の周りを覆う涙を拭って、私はリースに笑顔を返した。そして、たった一言。
「――うん」
そのままリースをぎゅっと抱きしめて、唇を重ねる。ゆっくり、慎重に。
私はもちろん初めてだったし、リースもたぶん初めてだろう。ぎこちない、何だか不格好なキスにはなってしまったけど。
それでも私たちは、お互いの唇の温もりを、確かに感じ取っていた。

「……ベッドに移る?」
とうとう痺れを切らしたリースは、私にそんなことを持ちかけてきた。もちろん、それがどういう意味なのかは私にも分かるけど。
でも、此処でリースに主導権を渡すのも惜しい。少し意地悪してみようかな――なんて、そんな考えがふと浮かんだ。
「どうして?」
そこで私は、とぼけた振りをしてみた。これが結構効いたみたいで、リースは顔を赤くしてしまった。
「……分かってるくせに」
照れるリースの顔が可愛かったけど、流石にこれ以上は可哀想かもしれない。
「ふふふ……わかったわかった」
と、それだけ言って、私はリースと一緒にベッドに横になって、お互いの顔を見つめ合う。
そのままぎゅっと抱き合って、もう一度軽い口づけを交わす。
「ん……んふふ……」
私のお腹の辺りに、服越しに何か少し硬いものが当たる感覚。その場所にあるものと言えば、一つしかない。
「どうしたの……?」
「どうしたの、って……すっごく硬くなってるよ、ここ」
少し身体を離してそこを見てみると、スカートのようなひらひらの部分が、一部三角にふくらんでいて、まさにテントを張った様。
リースは相当恥ずかしかったのか、私から眼を逸らしてしまったけれど、それでも肝心のそっちは隠せそうにはない。
「だ、だって……仕方ないじゃん」
私はそんなリースの様子を少し笑ってから、いよいよその先の行為を始めようと決意を固めた。
「……それで、どうして欲しい……かな?」
リースは私のこの質問に、暫く悩んでいた。いきなりどうして欲しいと聞かれてもやはり困るのだろうか。
やがて、リースは私の方をしっかりと向いて、けれど恥ずかしそうに、ぼそりと呟いた。
「ま、まずは……その、ナツキの身体……じっくり見たいな。は、裸のね……」
そうやって、改めて私の身体を見たい、と言われると何だか私も恥ずかしくなってしまうけれど。
「……いいよ」
覚悟を決めて、いよいよ私は服を脱いでいく。上に着ていたものはすんなり脱いだものの、流石に下着ともなれば少し躊躇いが生じる。
リースはそんな私の様子を凝視している。それを思うとますます恥ずかしくなって、なかなか下着が取れない。
それでも、頼まれた以上は――と、やっとの思いで全ての下着を脱いだ。
「――どうかな?」
あまり人前にさらす様な体付きではないし、そんな機会もなかったから、あまり身体には自信が無い。
思わず大事な部分を隠したくなるけれど、それも含めてリースに見てもらうんだ、と何とか堪える。
「うん、すごい綺麗だよ」
と、リースは私をじっくりと眺めながら、笑顔でそう言ってくれたけれど……彼の股間の辺りの出っ張りを見ると、あまり素直には喜べなかった。

とりあえず私は、そのままリースの待つベッドまで戻ることにした。脱いだ服を適当にまとめてから、私はベッドの上に乗っかる。
「……仰向けになってくれる?」
「う、うん……」
突然のリースのお願い。私は頼まれるがままに仰向けになってベッドに寝た。
ふと気づけば、意識してもいないのに足はぴったりと閉じられている。やっぱりまだ、見せるのには抵抗があるのだろうか。
「乗りたいから……楽にしてくれる?」
それはやっぱりリースにも伝わったみたいで、私は出来る限り力を抜いてみた。それでもまだ、足は閉じられたまま。
リースから見たら、まるで私は立っている様な、そんなポーズを取っているのだろう。
私が身体の力を抜いたのを確認してから、リースは私のお腹の上にふわりと乗った。けれど、全然重さを感じない。
ただ、リースの硬いモノがお腹に当たっている所為なのか、私まで何だか気分が高まってきていた。
「……食べてみてもいい?」
リースのよくわからない言葉。私は思わずきょとんとしてしまったけれど、リースの目線を追って、ようやくその意味に気づいた。
見つめるその先にあったのは、私の胸。そこまで大きくはないけれど、人並みにはあるつもりだ。
「噛んじゃ駄目だよ?」
「分かってるって」
リースは嬉しそうにそう言って、私の胸にかぶりついてきた。かぷっ、とでも音が鳴りそうなほど、勢いよく。
「んーぅ」
「あっ……!」
リースは楽しそうに私の胸を舐めている。とてもおいしそうな表情をしていて、そこを舐めるのに夢中になっている。
一方の私は、リースの口の中の暖かさ、そして妙にぬるぬるとした、初めての感覚に驚いていた。――これが気持ちいいっていう感覚…なのかな。
そしてリースは、私の乳首を口の中で転がし始めた。一体どこでこんな事を覚えてきたのだろうか。
あるいは本能のままに、無意識でこうしているのかも知れないけれど……私には効果覿面だった。
はっと気づいたときには、私はくぐもった声を発してしまっていた。恥ずかしさで顔が火照る。
今度こそ、と口を固く閉じて、声を漏らさない様に必死に耐える。それでも、執拗なリースの攻めに、とうとう喘ぎ声が漏れ出た。
やっぱりこれが、気持ちいいっていう感覚なんだ――。私はそんなことを実感しながら、リースに身体を委ねていた。
「ねえ、そろそろ……」
リースの身体にあるひらひらの、ちょっとした手の様になっている部分。そこを使って、私の身体をゆっくりとなぞっていく。
そして、リースのそれがどんどんと下に下がっていって――太ももの辺りで止まった。
「……開いてくれていいんじゃない?」
しっかりと閉じられた足。とうとうやってきたか、と思わず緊張してしまう。ふぅ、と一息置いてから、私はついに決心を固めた。
「笑わないでね……?」
「大丈夫、絶対綺麗だから」
と、可愛い笑顔でそう言ってくれるリース。私の不安も幾分か和らいだけれど、リースの雄らしい、ぎらぎらした目つきがやっぱり少し怖くなる。
目を逸らして横を向きながら、とうとう私はゆっくりと足を開いていった。
「うわぁ……」
と、リースの声を聞いて、私は恥ずかしさのあまり、顔を両手で覆ってしまった。
暫く手をどけられなかったけれど、その間もリースからは何の言葉もない。不思議に思って、少し手を離してみると、そこには私の秘所をじっくりと眺めるリースの姿が。
私はまた顔を覆いたくなった。それでも、今度はそれを何とか堪えて、リースの次の行動に目を配っていた。
「触っていい……?」
単純な興味と好奇心に溢れた、純粋なリースの表情を見て、私は今更嫌だとは言えないし、言おうとも思わなかった。
「う、うん……」
私の戸惑いを感じ取ってくれたのか、リースはゆっくり、そうっとそのひらひらを近づけて、ぴとり、と秘所に触れた。
「……っ」
まだほんの少し触れただけだというのに、もう私の身体は震えてしまっていた。今でさえこんな調子で、これから先は大丈夫なんだろうか、と不安になってしまう。
それでも、リースを信じて、私はなるべく身体をリラックスさせようと努めていた。
――でも、そんな思いとは裏腹に、身体はますます緊張していくばかり。どうしよう、と私が焦っていると、リースはようやく、私の割れ目に沿ってひらひらを動かし始めた。
「こう……かな……?」
「そう、そんな感じ」
ついついリースに返事をしてしまった。わざわざアドバイスまでしている自分が小恥かしくなる。
恥ずかしさと、このじわじわと押し寄せてくる快感が織り交ぜになった、複雑な気持ちが心の中で渦巻いている。
ただ、何か良いな――幸せだな、と、私はそう感じていた。
「ねえ、ここも舐めてみていい?」
「だ、駄目だよ、汚いのに」
「別に良いじゃん。お願い……」
まさかこんな事まで頼んでくるとは思わず、私は度肝を抜かれてしまう。もちろん断ろうとするけれど、リースの懇願の眼差しを見て、私はとうとう屈してしまった。
けれど、もしそうされたら――どれほど気持ちいいんだろう、と、私も心のどこかで興味を持ってしまう。
一応承諾して、曖昧な返事を返す。するとリースはゆっくりと顔を私の股の辺りに近づけた。
「近くで見ると……意外とグロテスクだよね」
「い、いやぁ……」
リースが直ぐ間近で私の秘部を凝視している。堪らず、私はそんなことを口走ってしまった。
「うん……なんだか、良い匂い」
リースの鼻から漏れ出る息が私のそこに当たると、何だかすーすーしてくすぐったい。
「や、やだよぉ……」
と、もうとにかく恥ずかしくて堪らなかったから、せめて声で抵抗を試みてみる。リースはそんなことお構いなしに、私の秘部を楽しそうに眺めていた。
「それじゃ、いただきまぁす」
リースの楽しそうな声と共に、彼の口が私の秘部にかぷっとかぶりついた。その瞬間、ぬるっとした、今まで経験したことのない快感に襲われる。
「やっ……!」
そんな未知の快感に、私は上ずった声を上げてしまっていた。またまた顔を覆いたくなったけれど、目をつぶるだけで何とか抑えた。
「えへへ……」
にこにこと言うべきか、にやにやと言うべきか――ともかく、リースはまるでいたずらっ子のような笑顔をちらつかせながら、私の割れ目を何度も舌でなぞる。
下から上に舌が動く度、私は小さく喘いでしまう。その様子に味をしめたのか、リースはどんどんとその舌の動きを大きく、早くし始めた。
やがて、その舌が私の敏感な部分に当たる様になる。跳ね上がりそうなほどの快感に耐えて、何とかリースに感づかれない様に。
それでも、自然の動きは抑えることが出来ずに、びくん、と小さく身体を振るわせてしまった。
「ここもぐりぐりしてあげるね」
ついにリースは私の様子に気づいて、クリトリスをぐりぐりぐりぐりと、そのひらひらを伸ばして攻めてきた。
さらには膣口に舌をねじ込んできたから堪らない。一体全体、どこでどう教わったというのだろう。
頭が真っ白になる様な、すさまじい快感。身体が宙に浮いている様な、ふわふわとした感覚。
「お、おかしくなっちゃう……ううぁああぁっ……!」
気づいたときには、私はその秘部から愛液を大量にしたたらせていた。どうやら軽い絶頂に達したらしい。
「ご、ごめん、やりすぎちゃった……」
少ししょんぼりしながら、苦笑いを浮かべるリース。ひらひらが不思議な動きをしていることからも、ちょっとした動揺が見てとれた。

「き、気にしないで。……色々驚いたけど……次は私に、やらせてくれる?」
待ちかねていたのか、リースは元気よく頷く。私は手で軽く彼の胸を押して、ベッドに仰向けになるように促す。
リースはそれを察してくれたのか、すうっとベッドに仰向けになってくれた。その後私は股の方へと移動する。
リースと目を合わせてみると、ものすごく恥ずかしそうに目を横に向けた。そして今度は彼のスカートの様なひらひらを見てみる。
本当に不思議な布みたいなそれが、一部分、まさにテントを張っている。よくよく見れば、そのてっぺんはじんわりと湿り気を帯びて、濡れていた。
リースはもぞもぞと動いて、何とか恥ずかしさをごまかしているようけど、その身体をみていると、どうしてもそそられてしまう。
とりあえず布の上からそこに触れると、リースの身体がぴくり、と跳ねた。熱を持っていて、じっとりと湿っているのが布越しにも分かる。
ゆっくりとその辺りを撫でてから、私はそのスカートをめくりあげてみた。リースもどきどきしながら、ゆっくり、ゆっくりと。
そうして全部をあらわにしてみると、中には紫色とは不釣り合いな、綺麗なピンク色のそれが、あふれ出た先走りでてかてかと光っていた。
私は指でそれを軽く(つつ)いてみる。そのたびに揺れるリースの棒は、どうやら快感を待ちわびているようだ。
さっきリースが私にしたのと同じように、私も近くで匂いを嗅いでみた。少し鼻をつくような、つんとした匂い。けれど、決して嫌な匂いじゃなくて、寧ろ良い匂いだと思った。
顔を近づけたまま、今度は指でそれを下から上になぞっていく。リースの身体がそのたびに震えるけど、肝心の絶頂はまだ遠い様子。
「じ、焦らさないで……」
暫くその動きを続けていると、とうとうリースは心が折れたのか、そんなことを私に頼んできた。
「……じゃあ、私も食べてあげる」
ゴクリ、と唾を飲んでから、私は口を大きく開けて、リースの少し大きなその棒にしゃぶりついた。
じゅぷり、とでも言うべきか、とにかく卑猥な音を立てながら、私は顔を上下させる。
舌に唾液をたっぷりと絡めながら、丁寧に全体を舐めていく。口の動きに緩急をつけて、擦る速度も自在に変えてみる。
「いたっ!」
こんな事をしたのは当然初めてだったから、うっかり歯を立ててしまった。ほんの少し力がかかっただけでも、敏感なそこはたぶん過剰に反応するのだろう。
「あ、ご、ごめん……!」
いったん口を離してリースに謝る。リースは未だに痛がってはいたけれど、どうやらまだ続けて欲しいみたいだ。
私は直ぐにまた棒全体を口に含む。今度は確実に、歯を立てない様に気をつけながらゆっくりと。
びくびくと震え出すリース。そろそろ出そうなのか、いつの間にかリースは自分からも腰を動かし始めていた。
「っあああぁ……!」
一瞬、リースのそれが大きく反り上がる。さっきまでとは比べものにならないほど固くなったそれが、大きく口の中で弾けた。
かと思うと、そこからはどろっとした液体が大量に吹き出してくる。のどの奥に当たる、熱い液体を、私は何とか飲み込んでいく。
のどの奥に残る、独特の風味。けれど、リースのものなんだと思えば、不思議と嫌ではなかった。
あまりの量に、口の隙間からも白い粘液は溢れて来たけれど……それも構わずに、私は残った液体をモノから吸って、口の中の精をのどの奥に流し込んだ。
「だ、大丈夫?」
顔をモノから離すと、リースの心配そうな顔が目に映る。私は口の周りに垂れていた白濁を拭って、にっこりと微笑んで見せた。

「これでおあいこだね」
そう言って、リースとお互いに笑い合った。ただ、その間もリースは何か言いたげに私を見つめてくる。
「……メインに移ろうよ」
期待の眼差しをこちらに向けたまま、いよいよリースは私に本番を頼んできた。内心どきどきだったけれど、それでも余裕を見せてやろうと、とりあえずとぼけてみた。
「メインって?」
「こ、交尾だよ……っ。……いちいち言わせないで欲しいんだけどなぁ……」
と、リースは顔を真っ赤にして返事をしてくれた。そんな様子がいちいち可愛くて困る。
「ふふ……愛してるよ」
それだけ言葉に出して、私はリースと抱き合ってキスをする。舌は入れずに、ただ唇を重ねて、お互いの身体を感じる。
ふぅ、とお互いに息を吐いて、私は無言で下に、リースは無言で上に。ご丁寧にリースは秘部に自分のモノをこすりつけている。
全く、どうやってこんな事を覚えたんだろうか。ひょっとして誰かから――とも考えたけれど、それは流石に無いはず。
「……いくよ」
はっと我に返ると、リースは雄槍の先端を私の秘部の入り口にくっつけていた。不安が私の頭をよぎるけれど、それでもただじっと、その様子を見守っていた。
少しずつ、少しずつ、熱く滾った棒が私の中に入ってくる。じんじんとした感覚は、やがて痛みに変わり始めた。
「いっ……くっ……」
私が苦しい声をあげる度に、リースは私の顔を心配そうに見つめてくる。私は頷いて、気にせずモノを奥に進めるよう促す。
リースもそれを察してくれたみたいで、ゆっくりとまた挿入を再開する。確実に、リースのモノは私の奥へと入り込んできている。
やがて、モノの進入がいったん止まった。どうやら膜に突き当たったようだ。これを越えれば……もう、後戻りは出来ない。
「破るよ……?」
もう迷いはなかった。大きく頷いて、次に来る痛みに耐える。リースはその膜を一気に裂いて、さらに奥へとモノを進めていった。
とにかく痛かったけれど、リースのモノが奥に到達するまでは耐えてやろうと思って、ひたすら耐える。
やがて、何か中にある壁に、モノの先端が当たった。ようやく奥まで辿り着いたみたいだ。
「は、入ったよ……」
お互いに大きく息を吐く。私はまだ痛くてしょうがなかったけど、それでもまずは一安心だ。
「……すごいぬるぬるしてるよ……僕のおちんちんに絡み付いてくる……」
気の緩みからか、リースはそんなことを口走る。瞬間、あっと言うような表情で、そのまま顔を赤くしてしまった。
けれど、言われた私も恥ずかしい。直接的にそんなことを言われると、もう火が出そうなほど恥ずかしかった。
「ナツキ。……このまま僕を、だ、抱いてくれるかな」
「……うん」
ぎゅっとリースを抱きしめて、唇をくっつける。また離れて見つめ合ってから、もう一度キスを――。
そうやって暫く気を紛らわしていると、いつの間にか痛みはほとんど消え去っていた。
「……もう、動いても大丈夫だよ」
「やったぁっ!」
本気で喜ぶリース。どうやら相当我慢していたらしい。そんな様子に思わず私は笑ってしまう。
不思議そうに首をかしげるリース。何でもないよ、と伝えても、未だ怪訝な表情をしていたけれど……どうやら納得してくれたみたいだ。
そして、ついにリースの腰がゆっくりと動かされる。私はその動きを感じ取りながら、リースをただじっと見つめていた。
「あっ……はぁっ…………うぁっ……」
リースはぎこちなく腰を動かしている。必死なリースに応えるように、私も喘ぎ声を上げる。
ぐちゅぐちゅといった水音が部屋に響く。リースの腰が打ち付けられる音と混ざって、それは相当卑猥に聞こえる。
「もう駄目…僕もう駄目だよぉ……!」
リースの叫ぶ声。待って――という間も無く、リースは早くも絶頂に達してしまった。
中に吐き出される、熱い子種。リースはとても幸せそうな表情で、その快感に浸っている。
やがて、中で暴れていた肉棒の動きが収まると、リースはとても申し訳なさそうな表情を私に向けてきた。
「ご、ごめん……勝手に出しちゃって」
「き、気にしないで……それより、まだ続けて欲しいんだけど……」
気づいたときには、私はもう勝手にそう返事をしてしまっていた。また顔が赤くなる。
それでも、リースは快く承諾してくれた。そして、また腰の動きが再開された。
さっき吐き出した精がいい潤滑剤になって、さっきよりも早く、滑らかな腰の動き。じゅぽじゅぽと淫らな音が一段と大きくなっている。
「私も、私も駄目、あ、はぁ……ああっ……!」
私も遠慮無くそう叫んでから、くすぶっていた愛液をまとめて放出する。リースと私の身体の間は、もう液体でぐちゃぐちゃだ。
お互いに力が抜けてしまって、そのまま私たちは抱き合った。どろどろの身体を寄せ合って、長い長い口づけを。
気持ちを確かめ合うようにしながら――私たちは、快感の余韻、そして幸せを味わっていた。

あれ以来、何かが変わったかというと、結局何も変わらなかった。今まで通り、少し距離を置いたような――そんな生活。
でも、きっとこれで良いんだと思う。リースと私は、愛し合っているんだから。それさえ本当なら、十分。
「ナツキ、待ってよー……。サイコキネシスで荷物を運ぶのも大変なんだから……」
「ごめんごめん、仕方ないなぁ……」
いつもと同じように、買い物に出かけていた私たち。こんな、他愛のない生活だけど……それでも、幸せだから。
――突然、凄い音がした。道路を滑って突っ込んできているのは……車?
それが確認できたときにはもう、私は撥ね飛ばされていた。近くにあった電柱に強くぶつかって――。
ふっと意識が戻る。私はまず怪我の程度を確認しようと、強く打ったはずの頭を触ってみる――けれど、痛みさえどこにもない。
もちろん傷は泣く、まるで最初から撥ねられてなんかいなかったみたいだ。でも、私は確かに撥ねられたはず……。
その瞬間、私は全てを理解した。そうだ、こんなことは今までに何度もあったんだ――。
「リース……!!!」
近くに倒れていたリースは、もうほとんど息もしていない。全身傷だらけで、特に頭の怪我が酷い。
最悪の事態が頭を()ぎる。――そんな、リースが私の代わりに……。
すぐさまリースの側に駆け寄って、リースを優しく抱きかかえる。
「どうしてそんなことしたの……? どうして?!」
溢れる涙は止まりそうにない。目の前はもう涙で見えない。景色は何もかもがぐちゃぐちゃだ。
「お、雄として……君を、守らなくちゃ……って思っ……思ったんだ」
細々と紡がれた言葉。私はその小さな声を逃すまいと、耳を立てて、しっかりと聞く。
「どこに行っても……僕は君を、愛し続ける……からね。……キス……して……くれる……?」
涙を拭う。堪えきれない嗚咽が漏れるけれど、それさえもさらに押さえつけて、私はリースをしっかりと見つめた。
「……う゛ん」
そしてそのまま、ゆっくりと口を近づける。リースを見つめたまま、優しい笑顔を顔に浮かべて――唇を、重ねた。
リースの唇の感触、リースの体温。それをじっくりと感じながら、静かに身体を寄せていた。
やがて、そっと唇を離す。リースの顔は、屈託のない笑顔だった。そんな表情に、私も思わず笑みがこぼれる。
……愛してるよ。そう呟いて――私は、そのまま地面に泣き崩れてしまった。

リースの亡骸は、私の家の直ぐ近くの墓地に、きちんと埋めた。毎日お参りに行っていたけれど……ある日、不思議なことに私は気づいた。
植えた覚えはない。けれど、お墓の周りには、立派なひまわりが何本も咲いていた。誰かが植えた……訳でもないみたいだ。
毎日のお墓参りのついでに、私はそのひまわりを観察していたけれど……別段世話したわけでも無いのに、それはぐんぐんと育っていた。
そうして、僅か数週間で――そのひまわりは、大輪を咲かせていた。日に向かってまっすぐと輝く黄色い花は、まぶしく輝いている。
「消えはしなかったけど……綺麗に死ねたじゃん」
ふっとそんなことを呟きたくなった。きっとこのひまわりは……リースから私への、大切な贈り物。
綺麗な綺麗な花を咲かせたひまわりを、私はじっと眺めていた。――まるで、リースがそこにいるような気がしたから。
「私も……いつも、リースの側にいるからね」
ひまわり達の咲き誇る様子は、まるでリースと一緒に見た打ち上げ花火を想像させた。――彼の想いを表すかのように、それは満面の笑みを浮かべているように見えた。



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  • 本当に夏らしく、笑いあり涙ありの素晴らしい作品でした。
    ひまわりの花言葉は初めて知りました。とてもいい思いが込められいるんですね。
    次の作品も期待してます。 -- 2009-07-27 (月) 01:31:37
  • 二人の初々しさや微妙な距離感は、自分の心に効果が抜群で、急所に当たってしまいました(笑 リース君のテントにも思わz(ry
    花火を見た時の彼の意味深な発言や、自分が犠牲になってまでも庇う思いに引き込まれました。とても感動的な小説でした。
    彼のおきみやげである向日葵が、いつまでもナツキの傍で毎年咲き誇ってくれる事を祈りつつ、その悲しみと共に上手く生きていけることを願うばかりです。 -- 想夏 ? 2009-07-27 (月) 18:39:33
  • >>↑↑の名無しさん
    ありがとうございます。笑ったり泣いたり、出来る作品を目指しましたが……どうでしたでしょうか。
    ひまわりの花言葉は自分も今回初めて知りました。とても良い花言葉ですよね。

    >>想夏さん
    どこかこう、ぎこちないカップルでしたが……それほど当たってくれたなら嬉しい限りです。リース君のテント……ですかw
    感動できるお話はあまり得意……とは言い難いのですが、それでも今回は台詞を重視したので……そう言って下さると励みになります。
    ひまわりはきっとこれからも、ナツキの事を見守ってくれるんだと思いますよ。

    お二方、コメントありがとうございました。 -- &fervor 2009-07-28 (火) 22:58:44
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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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