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扉をあけりゃ姉ちゃん地獄 プロローグ

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「ん…んん…」
目を開けてみました。手を伸ばそ…
ガン
「いでっ!何だここ…」
見回してみれば狭いと感じ、暗いと感じ、そして真ん前には六本の鉄の棒。
ああそうか、思い出しました。俺は捨てられたひじょーに可哀想なポケモンだったんですよ。
そしてここは保険所の中の中。お粗末過ぎるケージの中。
一体何ヵ月たったかな…捨てられてからよぉ…
正面右にあったカレンダーを見てみた。
「三ヶ月か…」
嫌な事にあいつの顔をくっきり脳内で投影出来る。つまらねえ所でハイテクな俺の脳。畜生…あいつが憎いぜ…
育てんのめんどいから捨てるとか…屑が…鉄の棒をつかんで、体を引き寄せケージの外を見てみる。
「あら?」
鏡がある。だけど距離が…
ぐ…ぐぐぐ…
棒が顔にめり込む!痛い痛い痛い痛い!
やっと鏡が見えた。そこ映ってたのは一匹の間抜け面したフシギダネ。
ちなみに俺の名前はコタ。なにもかもが普通のフシギダネだ。
だが自分から普通とか考えてる俺は本当に普通なのか?
まあいいや、まだ眠い。もうちょっと寝ることにしよう。



本日二回目、目を開ける。

…前には鼻のでかいおっさんの顔が…「ううぉわっ!?なんだテメー!?顔近いわ!」
俺は狭いゲージの中で暴れまわる。
するとおっさんは
「ふふ。寝ている顔も、起きてる顔も、可愛いね。」

ピキーン

なんだとぉ?このテングザル?俺が可愛いと?何なら今のセリフの「可愛いね」を「鼻クソでかいね」にして利子つけててめえにお返しいたしますぞ?
この外来種が!
そんなことをニタニタ笑って考えてたら、
「君…雄?」
再び外来種が話しかけてきた。
とりあえず聞いてた俺は、
「何を言うんですか!逞しい体、凛々しい顔、どこからどう見ても素晴らしい雄でしょう!」


なんて言っても無駄っぽいから率直に雄って言ってやった。
すると外来種は何か考え始め、また口を開く。
「そうか…じゃあ君に決めた!」

はい…?え、ちょっとなんスか?いわゆるトレーナーの真似ですか?
場違いだと思われますけど…
外来種はポケットから一枚の紙を取りだし、保険所の入り口の方へ歩いて行く。
…なんだ冷やかしだったのか?
少々イラついた俺は腕を伏せてまた眠りの体制をとる。また今日も暇に一日が過ぎるのか?しかも鼻の大きな物体が心を濁すというおまけ付きで。
と思っていると、いつも餌の準備やここらの掃除をやっている人が立っていた。
「お?んん?」
疑問の声を上げるとまだ餌の時間じゃないのに俺のゲージの鍵を開けた。
おお!もしや俺を引き取ってくれる人がいたのか!?やったよ俺!もう狭苦しいゲージはおさらばだぜぃ★
俺は最高のシチュエーションを勝手に妄想して係についていく。

…しかし現実は完全ではなかった。
嫌な予感してたけど…

…ああ~
そこには鼻が特徴的過ぎる無駄に背の高いアレが立っていた。

わぁ~
外来種だぁ~
全身の力が抜けるよ~

今気づいたけどなんかめっちゃ高級ぽいスーツ着てるし。何コイツ?何者?
一発殴っていい?
「…それでは宜しくお願いしますね。コタ、トレーナーのポケモンとしてしっかり言うこと聞くんだぞ?」
え?ちょっと係さん?俺はコレに引き取られるの?いやいや人違いでしょ?つかコイツトレーナーなの?本当だったら絵になるわ~
「ほらほら、こちらへおいで、コタ。」
あぁ~ 人違いじゃなさそうですね。うん。 うっ…うっ…ぐすん…泣きそう…
「お前を引き取ってくれるツトムさんだ。」
ツトムさんですかぁ~嫌だけど宜しくね。外来種ツトム。
「それでは。」
「コタ、私について来なさい。」
言葉通り俺は外来種についていく。
外に出る。そこには…
めっちゃ高級そうな、これ以上無いくらい真っ黒い長い車。
世間ではこの車をリムジンって言うらしいな。ってなんでコイツが…
俺は外来種と一緒に一番後列のドアを開け、乗った。
…スゴいわ。その一言しか出ない。
フカフカ過ぎるピンク色の大きな座席…保険所のケージなんて即ゴミ箱行きだわ。
しかもクーラーが利いてて最高に心地よい。ポケモンが沢山いて、暑苦しい保険所なんて即爆破だわ。
最後に隣に座っている…
あぁ~惜しい。スゲー惜しい。背は結構高いのになぁ…
ま、コイツの顔なんぞどうでもいいや。
引き取ってもらっただけでも結構ラッキーな方だし。気がつけばリムジンは山へと向かっている。外来種の自宅は山奥なのかな?
んなこともどうでもいい。とにかく今は一生懸命くつろいどくか。
「ふぅ~」
と一つ安息をつき、俺はまた眠ったようだ。




本日三度目。目を開ける。
あれっ?まだ車の中。だが車はもう止まっていた。
「コタ、私の家に着きましたよ。早く車からでなさい。」
また外来種の声。ハイハイ分かりました。車から降りた俺は声をあげる。
「おぉおっ…!」
目の前には大きく、三階位まである立派過ぎる一軒家。その上にかぶさる綺麗なアサギ色の屋根。
家の周りには芝が均等に生えていて、その上に置かれる白色のベランダやプールまである。
はっきし言って、これ以上ない家だった。
「ほらほら、中に入りなさい。」
俺の心臓はドクドクと凄い速さで高鳴っている。期待の音だ。
ドアに向かって俺は走る。
そして
ガチャ
ドアを開いた。


この家に入った事が俺の意味不明な生活の始まり、そして運の尽きでした★





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Last-modified: 2012-05-06 (日) 00:00:00
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