名も無き人間
ちと進行がgdgdですが読んでいただければ嬉しいデス><
予定では戦乱の果てに3でエロを入れる予定です。
……結局、その後奇襲も無く何事も無く一夜が開け、朝日が昇った。
俺は朝の鍛錬に赴いていた。勿論昨日の教官や一兵卒達も居た。
矢張り鍛錬は良いもんだ。これだけで俺は疲れが癒える気がする。
そして俺はガーネが気になり売春小屋へ向った。
「おい、ロコンはあれから誰も手を出して無いだろうな?」
「は、はい!皆紋章を見て避けておりました!」
「なら良い。邪魔するぞ。」
何時ものように番兵は入り口の椅子で入り口の番をしていた。
俺が声を掛けると椅子から落ちそうになりながらも応答した。
ガーネには誰も触れてないようだ。まぁ、紋章を見れば当たり前か。
俺は迷う事無く奥の部屋の扉を開け、ガーネを探した。
ガーネは俺に気付くと、呼びもしないのに歩いてきた。
「私に用があるんだろ?」
「あ、あぁ。とりあえず移動するぞ。」
「分かってる。」
そしてそのまま外に出て昨日の小部屋まで歩いていってしまった。
大部屋を見ると昨日まで怯えていた雌達が軽く会釈をした。
そういえば食料を渡したんだったな。俺はそれに軽く返事をすると小部屋に向った。
「で、何の用?ついに私を襲う気になったの?」
「昨夜、ドゥロールの軍勢が攻めてきた。無論、撃退したがな。」
「え!?」
ガーネは俺が部屋に入るなり襲う気になったのかと聞いてきた。
俺は直入に昨夜の襲撃の事をガーネに伝えた。ここには届かない筈だからな。
するとガーネは驚いた様な喜んだ様な表情を浮かべた。
ガーネは何か知っている。そう睨んだ俺は更にガーネを問い詰る事にした。
「お前……何を知っている?」
「べ…別に。味方が来たら喜ぶのが仲間ってもんだろ。」
「俺は…何を知っているのか聞いているんだ。答えろ。」
「わ…私は何も知らない!知っていても敵のお前に教えるわけないだろ!」
「そうか…なら……」
だがガーネはそっぽを向き、関係ない素振りをみせた。嘘隠しが下手だな……
それで納得するほど俺は馬鹿じゃない。睨みを聞かせて再び問い質した。
だがガーネは少し震えるだけで答えようとはしなかった。
だから俺は持っていた短刀をガーネの首筋に当て脅した。
「このまま殺す事だって出来る。最後に聞く。答えろ。」
「私の考えは変わらない。殺したければ殺せ。」
「……ふぅ。全く、ガキの癖に強情だな。」
「なっ…だっ、だからガキって…っ」
そしてそのままガーネを見て最後のチャンスを与える振りをした。
だがガーネも考えを改める気は無いようで、俺を真っ直ぐ見てきた。
その瞳が…視線が…アイツに似ていた。
俺は短刀を納めるとガーネの強情さに呆れてしまっていた。
ガーネは馬鹿にされた事に再び怒ったようだった。単純なガキだ。
俺はガーネの口元にリンゴを差し出した。うるさくてかなわないからな。
「食え。まだ朝飯は食ってないだろ。」
「あ…ありがとう。で、でもこれはクレハのなんじゃ……」
「ガキは余計な遠慮しないで素直に食えば良いんだ。」
「またガキって!……じゃあ…半分返す。一緒に食べようよ。」
リンゴを両手で持ってキョトンとしてたが、直ぐに理解出来たようだ。
礼を言ってから、俺の朝飯と勘違いしたのか俺に返してきた。
さり気無く呼び捨てかよ……まぁ、変な呼び方されるよりはマシか。
俺はガーネの頭をクシャクシャにしながら遠慮せずに食うように伝えた。
するとガーネは俺の短刀を使って半分に切り、その半分を渡してきた。
って、いつのまに俺の短刀を……
「あぁ。そうしよう。」
「……ねぇ、何でクレハはこんな国の為に戦ってるの?」
「最初は妹を殺した奴を探す為だった。侵略軍なら各国に行くからな。」
「妹を殺した奴の事は何か分かってないの?姿とか紋章とかさ。」
直ぐに短刀を取り上げてから、リンゴを受け取り齧った。
ガーネも齧りながら、何故俺が侵略軍に居るのか不思議に思ったらしい。
多分、俺の身振りがこの場に相応しくないんだろうな。
俺は妹の仇を討つ為に志願した。各国を巡って探す為に。
その為に様々な国を荒し、様々なポケモンを殺してきた。
ガーネは妹を殺した奴の事を聞いてきた。……忘れるはずもない。
「姿はガバイトだった。紋章は…剣と剣が交わった感じだ。」
「ふ~ん。調べないと私は詳しく知らないけど…見付かると良いね。」
「いや…俺は必ず見付け出し仇をとる!そう約束したんだ!」
「ご…ごめん……」
「……俺こそ済まない。ガーネの気持ちは嬉しい。それだけ十分だ。」
忘れはしない……姿はガバイト。紋章は剣と剣が交わっていた。忘れるものか……
ガーネはそれに軽く返事をし、調べないと詳しく知らないと言ってきた。
だが俺は必ずそいつを見付け出し殺す!妹の亡骸にそう誓ったから……
俺の表情が怖かったのか、ガーネは少し震えながら謝ってきていた。
俺は直ぐに謝り、表情を元に戻した。元に戻す…意味があまり通じないが……
「クレハ将軍!国王様がお呼びです!謁見の間までお越し下さい!」
「直ぐ行く。……恐らく戦になる。生きていたらまた来る。これは皆で食え。またな。」
「あ…ありがとう。正直…言いたくないけど……頑張ってね。」
「あぁ。なるべく死者は出さずに戦うさ。また来る。」
「うん。」
そして少しすると兵士が俺を呼びに来た。国王の招集か…恐らく戦の話だろうな。
俺は兵士に軽く返事をし、ガーネに詫びを入れてから、持ってきた食料を渡した。
ガーネは素直に感謝してくれて、戸惑いながら頑張れと言ってくれた。
頑張れ……言わば仲間達を殺すのを頑張れと言うのと同じだ。
俺はガーネの頭を撫でながら、死者をなるべく出さないと誓ってから部屋を後にした。
俺が謁見の間に着くと、矢張り国王は奴隷に物を舐めさせていた。
あの奴隷…確かガーネと同じ部屋に居たサーナイトだな……
俺の位置からだと嫌でも目に付いてしまう。くそ…何を考えているんだ……
「お呼びでしょうか?」
「うむ。まぁ、そう固くなるな。今回は戦の話ではない。」
「はぁ。では…何の用でしょう?」
「昨日の夜襲と言い、敵側に不穏な動きが見られる。そこで…ウッ!」
俺は国王の前に跪き用件を尋ねた。まぁ、恐らくは戦だろうがな。
だが国王は戦の話じゃないと言ってきた。珍しいな…戦以外で俺を呼ぶ等……
俺はその答えを待っていると、国王が何かを言おうとした。
だがその途中で奴隷の頭を押え付け、射精したようだ。
奴隷を見れば涙を流し今にも吐き出しそうだった。だが、吐けば斬られる事は知っている。
もしコイツが国王でなければ殴り掛かってでも止める所だが……くそ……
「ふぅ…済まぬな。お前には城内の護りに徹してもらいたい。」
「と、言うと…前線での戦闘ではなく防御に回れと仰るのですか?」
「その通りだ。お前が居るなら迂闊に手は出さぬ筈だからな。良いな。」
「はっ!仰せの通りに。」
暫く頭を押え付けていたが、落ち着いたのか手を離して用件を伝えてきた。
前線での戦闘が俺達部隊の役割だ。国王はそれを防御に回れと言ってきた。
まぁ前線での戦いよりは楽だ。要するに安全が欲しいのだろうな。
俺は素直に従った。どうせそれしか選択肢は無い。
「もう良い。お前も下がれ。クレハ、こやつを小屋に連れて行け。」
「はっ。……付いて来い。」
「は、はい……。」
国王はその場で蹲っていた奴隷も無理矢理に下がらせ、俺に連れて行くように言ってきた。
正直、この場で国王を斬りたくなっていた。が、出来るはずも無い。
俺はサーナイトを連れて謁見の間を後にした。
そのまま連れ帰るのは簡単だが、俺は水浴場に連れて行った。捕虜には無縁の場所だがな。
「口を漱ぐと良い。そのままでは気分が悪いだろう。」
「で…ですが…私の様な者がこのような場所で口を漱ぐ等……」
「俺が許可する。良いから漱げ。」
「あ…ありがとうございます。」
そして俺はサーナイトに口を漱ぐように伝えた。このまま帰す訳にもいかないからな。
だがサーナイトは震えながら漱げずにいた。本来在り得ない事だからな。無理も無い。
俺は口を拭く為の布を手渡し、再度漱ぐように伝えた。
するとサーナイトは少し遠慮しながら口を漱ぎ始めた。
見ると白い液体が口から漱がれ出てきていた。恐らく口の中に残していたのだろう。
「あ…あの…ありがとうございました。奴隷の身分の私にこの様な御厚意を……」
「気にするな。……済まないな…あのような惨い事をさせてしまって。」
「そ、そんな!貴方が謝る事では無いです!」
「困った事があったなら同じ部屋のロコンに伝えろ。なるべく応えられる様に努力する。」
「はい。ありがとうございます。」
暫く漱いでいたが、俺に布を返してお礼を言ってきた。矢張りまだ震えているな……
俺は布を受け取り、サーナイトに謝った。謝った所で何も変わりはしないが……
だがサーナイトは直ぐに俺の頭を上げさせてくれた。
俺はサーナイトに困った時はガーネに伝えるように言った。
全てに応えるのは不可能だが多少は応えられるからな。
それを聞くとサーナイトは俺に初めて笑顔を見せてくれた。
俺も笑顔を返すと、サーナイトを連れて捕虜小屋まで戻って行った。
「では…済まないが大部屋に戻ってもらうぞ。」
「分かっています。本当にありがとうございました。」
「あぁ。」
入り口まで来ると、俺は大部屋に戻るように伝えた。それが任務だからな。
サーナイトは素直に応じてくれて、最後に俺に頭を下げてくれた。
俺もそれに軽く応え、見送った。
暫くは城内の護衛…か。少なくとも敵兵を斬る事は無さそうだ。
俺は自室に戻り体を休めながら剣の手入れをしていた。そうしないと錆びてしまうからな。
「よぅ、邪魔するぜ。城の護衛に回されたらしいな。」
「あぁ。まぁ、俺としてもその方が良い。無駄な争いをせずに済むからな。」
「お前らしいな。だが油断はするなよ?いつ攻めてくるか分からないからな。」
「分かってるさ。ウリューノス将軍で在る以上、城は護るさ。」
「ま、お前なら安心して任せられる。用はそれだけだ。邪魔したな。」
少しするとシックルが入ってきた。ノック位しろよな……
シックルは俺が防衛に回された事で訪ねて来たらしい。
まぁ、俺は普段前線で戦っているからな。不思議に思ったんだろう。
そしてシックルは常に油断はするなと言ってきた。言われなくても分かっている。
その思いを伝えると、シックルは去って行った。何の為に来たんだ?
まぁいいか。さて…剣も研ぎ終えたし、何をしているか……
昼食にはまだ早いしな……暇程苦痛の時間は無いな……
しょうがない…見回りに行くか。まぁ、この時間に攻めてくる馬鹿は居ないだろうがな。
俺は昼食の時間まで城外を見回り、時間になってからは昼食を済ませた。
そして俺は少し休んでからガーネの下へと出向いていた。
「捕虜の食事は済んだか?」
「はっ!先程全て済んでおります!」
「そうか。なら邪魔するぞ。」
俺は念の為、食事が済んだか尋ねてみた。食事中だったら悪いからな。
番兵はもう済んだ事を伝えてきた。なら大丈夫か……。俺は大部屋へと向った。
すると矢張りそこにはさっきのサーナイトが居た。
俺と目が合うと微笑みながらお辞儀をしてくれた。今見ると美人だ……。
「ガーネ。今大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。行こう。」
「あぁ。」
あまり見ていても変に思われそうだ。俺はガーネを呼んだ。
直ぐにガーネは会話を中断して来てくれた。そしていつもの小部屋へと向った。
「どうして此処に?戦になるんじゃなかったの?」
「あぁ。俺は前線から城の防衛に回された。暫くは城の護りに徹する。」
「じゃあ…クレハはずっとお城に居るんだね!?」
「そう言う事になるな。まぁ、いつ戦になるかは分からんがな。」
ガーネは俺が来た事が不思議だったようだ。戦に行ったと思ったんだろうな。
俺は戦じゃなく防衛に任命された事を伝えた。城の護りに徹するとな。
それを教えるとガーネは嬉しそうに聞き返してきた。
まぁ、暫くは城に居るが…いつ戦になるか分からないがな。
おそらく戦となれば俺も最前線に駆り出される。
「でも戦にならない限りクレハはお城に居るんでしょ?」
「あぁ。当分はそうなる。そんなに嬉しいのか?」
「だって…クレハがドゥロールの人達を殺さずに済むもん。」
「ガーネ……」
だがガーネは戦にならなければ城の守りをするんでしょと聞いてきた。
まぁそうなるな。相手だって馬鹿じゃない。俺が居れば迂闊には攻めてこないだろう。
俺は嬉しそうにしているガーネに、なぜそれだけ嬉しいのか尋ねてみた。
するとガーネは俺が誰も殺さない事が嬉しいと答えてくれた。
いくらガーネが俺を信じてくれててもドゥロールの者を殺すのは嫌なのだろうな……
俺だって無駄な争い等したくはない。今までだって…今だって。
「ま、そういうわけだ。これからは毎日会いに来てやっても良いぞ?」
「本当に!?あ…でも…忙しいんじゃないの?」
「別に守りと言っても、ただの留守番みたいなもんだ。一日中暇だ。」
「じゃあ…クレハさえ良ければ…会いに来てくれる?」
「あぁ。勿論だ。」
俺はガーネに毎日会いに来ても良いと伝えた。どうせ暇だしな。
それを伝えるとガーネは嬉しそうな表情を浮かべていた。嬉しいな……。
だがガーネは俺が忙しいのではないかと思ったらしい。
まぁ、防衛は城を守る任務だからな。だが俺の場合名だけの防衛だ。
俺自身は城に居るだけで何もする事がない。言ってしまえば休暇扱いだ。
それを伝えると、ガーネは少し顔を赤くして会いに来てくれと言ってきた。
普段は意地を張って居るが…可愛いところもあるんだな。
俺はそれに応えて、それからは他愛の無い雑談をして過ごした。
「ではまた来る。じゃあなガーネ。」
「うん。またねクレハ。あ…毎日食べ物ありがとね。」
「気にしないで食え。また明日持ってくる。」
「うん。」
そして俺は毎度のように食料を渡して小部屋を後にした。
ガーネも食料を背負って後に付いてきてお礼を言ってくれた。
まぁ…どうせ食料庫からくすねてきた物だ。構いはしない。
……恐らくバレないだろうと思う。バレたら……流石に不味いがな……
俺は明日も持ってくると伝えて、自室へと戻った。
……暇だ。剣は研いだ。鎧も磨いた。やる事がない……
鍛錬は午前中だけで午後は無い。本を読む事も出来たが…全て読んでしまっていた。
しょうがない。見回りでもして時間を潰すか。
……まだこんな時間か…見回りも終わってしまった。何かする事は無いだろうか……
「あら、クレハ将軍。暇を持て余してる様ですね?」
「あぁ。平和が一番なんだが……こうもやる事が無いと退屈でな。」
「そうですねぇ。私も武器番としては、戦が始まらないと一日中退屈でして。」
「ふっ。同じだな。」
「ふふ。同じ…ですね。」
ボーっとしていると武器倉庫を番しているアブソルが声を掛けてきた。
今まで気に留めなかったが…コイツ雌だったのか……言ったら不味いな。
どうやらアブソルも暇を持て余しているらしい。武器番だとそうかもな……
戦が無い限り武器を使う機会は無い。一日中武器を見ているだけだからな。
俺も戦が無い限りする事も無い。自慰に耽る程飢えてもいないしな。
俺は全く同じ境遇に思わず笑みが零れていた。アブソルもつられて笑い始めていた。
こうしていると戦乱の世だとは思えないな……
「もしお暇でしたら…私と…お話をして頂けませんか?」
「俺は別に構わないぞ?」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「俺も助かる。だが、兵器に関しての話題は抜きだぞ。」
「はい!勿論です!」
するとアブソルは暇だったら談話したいと持ち掛けてきた。
まぁ、帰っても暇になるだけだ。俺はそれに頷いた。
するとアブソルは子供の様に明るい顔になって俺に感謝してきた。……可愛いな。
だが俺は前もって兵器の話題は無しだと伝えた。戦の話等したくないからな。
アブソルも分かっている様で、快く頷いてくれた。
それからは他愛の無い話題を出し合って談話していた。
「へぇ、そうなんですか~。ですがもっと興味を持った方が良いですよ?」
「だがなぁ……どうも興味がわかない。こんな時代だからかもな。」
「なら…私で試してみますか?こう見えて……未だ純潔ですよ?」
そして話題は異性への考えになっていた。何故この方向に行ったのだろうか……
生い立ちを話して趣味や特技を話して…それから苦手な物に発展したのだったな……
俺はアブソルに雌が苦手な事を話していた。興味ないわけじゃ無いんだがな。
するとアブソルは怪しく笑みを浮かべて、自分で試さないかと持ち掛けてきた。
この風貌で…まだ純潔で…俺を誘っているのか……
「な…な…何を馬鹿な事を言ってるんだ!」
「ふふっ、冗談ですよ。そんなに驚かれるとは思いませんでした。」
「冗談にも程があるぞ……全く。」
「ですが……私とて一匹の雌。強い雄に惹かれる事は確かです。」
俺は直ぐに断った。だが唐突に言われたので挙動が怪しくなってしまっていた。
するとアブソルは笑いながら、冗談だと伝えてきた。……冗談かよ……
くそ…冗談を見抜けない程アブソルに気が合ったと言う事か……
こんな時代じゃ無ければ…誘いに乗ってただろうしな……
だがアブソルは強い雄に惹かれるのは雌として当然と伝えてきた。
まぁ、最もな事だ。強い雄と交わり強い子孫を遺す。それが普通だ。
「こんなに誘惑されても起たないんですね?もしかして…不感症ですか?」
「そんなわけないだろ!こんな場所で起つわけないだろ。他の兵士も居る場所で。」
「なら…私と二人きりだったら……起ってくれますか?」
「ま…まぁ…二人きりなら…雄としては起つだろうな……」
アブソルは俺の股間を見ながら、起っていない箇所を見てきた。……どこ見るんだよ……
そして俺が不感症じゃないかと尋ねて来た。勿論違う。自慰もしている。
今居る場所は大広場だ。他の兵士も多く居る。こんな場所で起つ程飢えていない。
それを伝えるとアブソルは、二人きりなら起ってくれるか聞き返してきた。
……もし二人きりでアブソルが誘ってくれば…本能で起つだろうな。
「そうですか。それを聞けただけで良かったです。」
「何故だ?まさか雄に飢えているわけでもあるまい?」
「クレハ将軍を狙う雌の一人として…起ってくれるのは、この上なく嬉しい事ですよ。」
「俺を狙う雌の一人……?他に誰が居るんだ?」
「秘密…です。」
それを伝えると、アブソルはまた明るい笑顔で喜んでいた。
何故喜ぶ必要があるのだろうか?俺は交尾の誘いに乗ったわけじゃない。
するとアブソルは俺を狙う雌の一人として嬉しいと言って来た。
……雌の一人?一体何人が俺を狙っていると言うのだ?
この城に仕える雌はアブソルを含め数え切れない……
もしや全員が俺を狙っているのか!?……まさかな。
勿論の事アブソルは笑顔を浮かべながら教えてくれなかった。
これからは周囲に気を配らなければな……
「今夜…私の部屋に来てくれても良いですよ?無防備に寝てますから。」
「俺を狙う一人として、その誘いは反則じゃないのか?フェアじゃない。」
「ふふっ。なら私がクレハ将軍の部屋に行きましょうか?それでも良いですよ?」
「そういう問題ではない……」
アブソルは更に歩み寄ってきて、今夜私室に来れば無防備に寝ていると言ってきた。
寝込みを襲えと言うのか?全く……少しは恥じらいの気持ちが無いのか?
抜け駆けは良くないと伝えたが、まるで効果が無かった。いや、逆効果だった。
俺が部屋に行ってもアブソルが俺の部屋に来ても同じ事だ……
「もうこの話は終わりだ。これ以上誘っても俺は乗らないぞ。」
「でも…私の気持ちだけは…心の隅に留めてくれませんか?」
「あぁ。気持ちは嬉しい。留めて置こう。」
「ありがとうございます!……では話題を変えて……」
これ以上誘われても考えは変わらない。俺は話題を変えさせようとした。
するとアブソルは上目遣いに俺を見て、気持ちだけは受け取って欲しいと言ってきた。
俺としても雌に惹かれる事に関しては嬉しい事だ。それに頷いた。
すると矢張りアブソルはあの笑顔を浮かべ、お礼を言ってくれた。
……その後は至って普通の話題等を談笑し合って時間を潰した。
「いつの間にか日が暮れてしまったな。今日は楽しかった。感謝する。」
「いえ、私こそクレハ将軍とお話出来て、この上なく楽しかったです。」
「そろそろ俺は兵舎に戻るとしよう。また機会があれば談話しよう。」
「はい!喜んで!」
ふと気付くと辺りは暗くなり始めている。いつの間にか時間が過ぎていったのだな……
話題はどうあれ、アブソルのお陰で時間が潰せた。雌と会話するのも良いもんだ……
俺がアブソルに感謝すると、同じくアブソルも俺に感謝してくれていた。
正直話し疲れて喉が渇いた。俺はアブソルに挨拶を交わして自室へと戻った。
……今日は寝る時に鍵を閉めた方が良いかもな……念の為に。
それから直ぐに夕食の時間になり、食事を済ませた俺は暫く休み、散歩に出ていた。
今日は良く晴れている……星が綺麗だ。ガーネにも見せてやりたいな……
もう寝てしまっただろうか?俺はガーネの下に向った。
「捕虜達はもう寝たのか?」
「いえ、まだ起きているようです。」
「そうか。それなら邪魔するぞ。」
いつもの番兵に捕虜達が寝たかどうか尋ねると、まだ起きていると答えた。
俺はそれを聞いてから、ガーネの居る大部屋へと出向いた。
そこには既に何人か毛布に包まり睡眠を取っていたが、ガーネは起きていた。
「あ、クレハ。」
「少し良いか?」
「うん。良いよ。」
「よし、なら今回はこっちだ。」
クレハは本を読んでいた。良く見れば本棚が置いてあるな……気付かなかった。
俺に気付くと本を置いて近付いてきてくれた。
ガーネに時間をとらせて大丈夫か尋ねると、直ぐに頷いてくれた。
そして俺は普段とは逆の方向。つまり出口に向った。
「クレハ?こっちは出口だよ?」
「今日は天気が良くて満天の星空だ。お前に見せたくてな。」
「えっ……私に?」
「あぁ。たまには外の空気を吸ったほうが良いと思ってな。」
「クレハ……」
ガーネは直ぐにいつもと違う事に気付いて、俺に尋ねてきた。
まぁ、捕虜が外に出るという事は殆ど無いからな。例外を除いて。
俺はガーネに星空を見せる事を教えた。正直、柄じゃないがな。
それを聞くとガーネは少し顔を赤くしていた。まぁ……少しは大人って事か。
ガーネはずっと大部屋に居っぱなしだからな。外の空気も吸わせたかった。
「お待ち下さいクレハ将軍!この捕虜を何処へ?」
「心配するな。少し外に出るだけだ。」
「ですが……」
入り口まで来ると、番兵に止められた。まぁ、分かっていたがな。
俺は外に出す事を伝えた。だが番兵は首を縦に振ろうとしない。
俺は備えていた剣を抜き、番兵に見せた。
「いざとなったらこの剣がある。それに逃げ果せる筈もないしな。」
「分かりました。どうぞお通り下さい。」
「行くぞガーネ。」
「うん。」
そしてそのまま抵抗されたら反撃出来るし逃げ果せる事も出来ないと言った。
するとそれで折れたのか、番兵は入り口を開けてくれた。真面目で何よりだ。
俺はガーネを連れて演習用の丘に出向いていた。星空を見るには最適な場所だからな。
「うわぁ……綺麗……」
「だろ?俺も眠れない夜は、星が出てれば此処に見に来るんだ。」
「そうなんだ。でも…私は四足歩行だから見にくいや……」
「なら、こうすれば良い。」
「きゃっ!?」
ガーネも満天の星空に見入っているらしい。連れて来て良かった。
俺も眠れない夜はこうして星を見ているんだ。曇ってる日は見れないがな。
丘になっているから寝転がって見れるからそのまま寝入ってしまう事もあった。
だがガーネは体型が体型だけに首を上に上げて見難そうにしていた。
そこで俺はガーネを俺の腹の上に仰向けに乗せた。こうすれば見易いだろうからな。
途端にガーネは小さく叫んだ。急に仰向けにした俺も悪いが…叫ばなくても……
「これなら見易いだろ?それに地面に寝たら土が付くからな。」
「で、でも悪いし…地面に寝転がるよ。掃えば土だって気にならないし。」
「気にせずとも良いんだがな。……しかし見事な星空だ……」
「うん…そうだね。凄く綺麗。」
俺はガーネの腕を持って固定して、見易くなっただろうと尋ねた。
だがガーネは俺の腕を払って地面に仰向けに寝転がった。
子供と言えど恥ずかしいのだろうな…顔が赤くなっている。
それから俺達は夜空一面に広がる星を眺めていた。
「ねぇクレハ。その剣見せてもらっても良い?」
「これか?……別に構わないが、重いぞ?」
「見るだけだから大丈夫。」
「そうか。なら構わないぞ。」
暫く星を眺めていると、ガーネが俺の脇に置いた俺の大剣を見たいと言ってきた。
別に構わなかったがとてもガーネに持てる軽さじゃない。俺自身まだ重いからな。
だがガーネは見るだけだと言って、隣に移動してきた。
見て何になるのだろうか……ただ興味があるだけなのか?
「こうして見ると綺麗な剣だけど……その身に血を浴びてるんだよね……」
「ガーネ……済まない。確かに俺は数多くの兵士を殺してきた。その剣でな。」
「別に謝らなくて良いよ。クレハは国の為に戦ってるんだから。でしょ?」
「国の為…か。俺は国王に忠誠等誓っていない。あくまで仇を探す為に居るだけだ。」
するとガーネは悲しげな様な哀しげな表情を浮かべ、意味深な言葉を言った。
外見は綺麗な剣。だがその身は血を浴びている。と。
ガーネの言う通りだ。今まで数え切れない兵士を斬り殺したからな。
だがガーネは国の為に戦っているから仕方ないと言ってくれた。
だがそれは違う。俺は国の為に戦った事等一度も無い。
俺は仇を見付ける。ただそれだけの為に戦をし、多くの兵士の命を奪ってきていた。
今だって変わりはない。戦になれば兵士を斬る。それの繰り返しだ。
「でも……そんなに自分を責めたら駄目だよ。戦わなくても護れる物もあるもの。」
「お前に何が分かる!?目の前で妹が強姦され、斬り殺される瞬間まで何も出来ず……
ただ見るしか出来なかった俺の気持ちが分かるか!?」
「分からないよ!だけどクレハは自分で自分を苦しめてる!勝手に思い込んで……
全てを自分のせいにして……全部背負い込んで苦しんでるじゃないか!」
「っ……」
ガーネはそんな俺を励まそうと思ったのか、自分を責めるなと言ってきた。
戦わなくても護れる物もある…だと……?その言葉に俺は逆上していた。
知らない内にガーネに怒鳴りかかっていた。止めようと思ったが…無理だった。
だがガーネも涙を浮かべながら俺に怒鳴り返してきた。
勝手に自分で全て背負い込んで苦しんでいる……確かにそうかもな……
妹が強姦され斬り殺された事も…全て俺のせいだと背負い込んでいる。今もそうだ。
そして砦を攻めて多くの兵士を斬り殺す事も背負っている……
そのガーネの言葉に俺は何も言う事が出来なかった。
「クレハ。涙はね、二つの種類と意味があるんだよ。知ってる?」
「いや……教えてくれ。」
「一つは……怒りや憎しみ。憎悪の感情で流れる涙。
もう一つは……悲しみや喜びや感動。歓喜や悲哀の感情で流れる涙。この二つ。」
「それが…何だと言うんだ?」
そしてガーネは涙には二つの意味と種類があると言って来た。
勿論俺は知らないし、考えた事も無かった。
するとガーネはそれを教えてくれた。
怒り等の憎悪を感じた時に流れる涙。
そして悲しみ等の表に出る感情で流れる涙。その二つだとな。
それを言われても俺には何が言いたいのか分からなかった。
「憎悪の涙はその人を復讐や嫉妬。相手を恨む鎖に縛る力を与える。
歓喜や悲哀の涙は……その人を前へと進む力を与えてくれる。」
「ガーネ、何が言いたいんだ?」
「クレハは今…妹さんの事を思って泣いている。悲哀の涙を流してるんだよ。」
「っ……いつの間に……」
そしてそれらの涙の意味も教えてくれた。
前者は相手を恨み、憎しみ、それらの鎖で縛られる…と。
後者は人を前に進む力を与えてくれる…と。
それを言われても何が言いたいのか丸っきり分からなかった。
するとガーネは俺に微笑を見せて、俺が悲哀の涙を流していると言ってきた。
右手で目を押さえると、そこには水が滲んでいた。俺はいつの間にか涙を流していたんだ。
「クレハ。誰かを憎んだりしないで。憎しみからは良い物は何も生まれない。」
「ガーネ……」
「妹さんを殺した奴は憎いと思う。だけど憎んじゃ駄目。妹さんだって望んでないよ。」
「っく……」
ガーネは俺に誰も恨むなと言ってきた。憎しみからは良い物は生まれない…か。
確かにそうかも知れないな……仇を討ち果たせば…俺の存在理由も無くなる。
そしてガーネは更に仇も恨むなと言ってきた。妹もそれを望まないと言って。
そう言えば……最後に妹が残した言葉があったな……
『ごめんね……お兄ちゃん……』
それが妹の残した言葉だ。その言葉から俺は復讐を決意したんだったな。
だが違うのかもしれない。妹が伝えたかったのは仇を討ってもらいたいんじゃない……
恐らく俺の行く末を予想して謝ってくれたのかもしれない。
俺が仇討ちの為に多くの命を奪う事を予想して……
何故俺は今まで気付かなかったんだ……勝手に自分で背負い込んで……
それを想うと俺の目からは涙が次々と溢れてきていた。
「クレハ。後悔はしないで。クレハのとった道も一つの道なんだから。」
「っ……ガーネ……」
「反省はしろ。だが後悔は決してするな。行動故の過ちは、後悔に値しない。
父…父さんが良く言っている言葉だよ。それに…泣く事は恥じゃないよ?」
「ガーネ……!」
ガーネは俺の涙を手にとってから、後悔はするなと言ってきた。
俺の選んだ復讐への道も道の一つだと言ってな。
次第に俺は流れる涙を抑えられなくなっていった。
そしてガーネは父から良く聞いたという言葉を教えてくれた。
反省はしても後悔はするな。行動した過ちは後悔に値しない。とな。
そしてガーネは泣く事は恥じゃないと言ってくれた。
その瞬間俺はその場で泣き始めてしまった。周りには誰も居なくて良かった……
その間ガーネは俺の頭を撫でていてくれた。何故か心地良かった。
今思えば……涙を流したのは妹の死を目の当たりにしてからだな……
「済まないなガーネ。見苦しい所を見せてしまった。」
「うぅん。全然見苦しくないよ。これでクレハは……前に進めるよね?」
「あぁ。だが俺は仇を討つまで決してこの想いは捨てない。捨てられない。」
「それがクレハの選んだ道なら…ひたすら進むだけだよ。必ず終着はある。」
「あぁ。決して挫けない。最後まで歩みを止めない。」
暫く泣いていたが、俺は一度深呼吸をしてからガーネに謝った。
大の男が泣きじゃくって頭を撫でられたなんて見苦しい他無いからな。
だがガーネは見苦しくないと言ってくれて、前に進めるよねと聞いてきた。
俺はもう鎖は断ち切った。復讐は捨てられないが…憎しみは断ち切れた。
それを伝えると、ガーネは俺の選んだ道なら、ひたすら進むだけだと言ってくれた。
もう俺は戸惑わない、立ち止まらない、挫けない。進み切ってみせる。
それから俺は再び星を眺め始めた。
「ねぇクレハ。やっぱり…お腹に乗っても良い?」
「あぁ。……よっと。」
「ありがとう……」
「気にするな。」
少しすると、ガーネが俺の腹に乗りたがって来た。
まぁ、雌としては自分の体を汚したくないんだろうな。
俺は直ぐに頷いて、腹に乗せてやった。
ガーネは顔を赤くしながらお礼を言って、俺の顔に近付いてきた。
「どうしたガーネ…っ!」
「……これが私の今の気持ち。嫌だったかな……」
「いや、ガーネの気持ちは確かに受け取った。ありがとう。」
「うん……」
そしてガーネは俺に口付けをしてきた。……どういう積りだ?
暫く重ねていたが、ガーネは口を離して、今の気持ちを実行したと言ってきた。
俺は正直複雑な気持ちだった。だが、素直に気持ちを受け取った。
それを言うと、ガーネは嬉しそうな表情を浮かべていた。
それからは星空を眺めていた。
「寒くないか?ガーネ。……ガーネ?」
「んぅ……」
「寝てしまったか……無邪気な寝顔だ。」
さすがに少し冷えてきたな。俺はガーネに寒くないか聞いた。
だが返事が来ない。俺は頭を上げてガーネを見た。
するとガーネは俺の腹で丸くなって眠っていた。
その寝顔は曇り一つ無い顔だった。
俺は起こさないように立ち上がり、小屋へと戻っていった。
そして大部屋に寝かせて、俺も自室で遅めの就寝に就いた。
自分の住む地域じゃ満天の星空なんか見れない・・・
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