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戌屋

凹洲図書館

「えー本日はこんな薄汚い小屋にお越し頂きアリガトウゴザイマス」
とある町の迷路の様に入り組んだ路地裏の一角に有る『戌屋』と書かれた小屋の中、そこでだるそうに手元のカンペを何の感情も込めずにただ淡々と読み上げる不愛想な受付、それに適当な返事を返す仮面で素顔を隠した依頼人。
そう、此処は表に出せない面倒な依頼抱えた人(ポケ)が集う汚れ仕事専門のなんでも屋、危険な依頼の割合が高くその割りに儲けが少なくハードな仕事、だが偶にガッポリ儲かる為か辞める者はいない、元々人数が少ない為だが……

「起きろマヌケ共、もう昼だ」
「ん……あと二時間……」
「俺は三分……」
「そうかじゃあ、あと三分や二時間とは言わず一生ベッドで過ごせる画期的な体にしてやろう、ベッド以外でも活動したかったらあと十秒でベッドから降りろベッド愛好者共」
「「今起きますからそれだけは御勘弁を！」」
先ほどまでベッドの上で駄々をこねていた二人が床に頭を押しつけ土下座を行っている……アホだろアイツ等
「じゃあさっさと顔上げて台所に来い"戌"共」
「僕はどちらかと猫が近いけど……」
「俺、一応ドラゴンタイプ……」
「うるせぇ、ゴチャゴチャ言ってる暇があんならさっさと足動かせ足、なんなら翼でも良いぞ龍尾」

いつも通り、翼でも良いのか？と聞こうとした前に返答されて少々驚いているカイリューの龍尾、その隣で嗚呼、やっぱり、と言いたげなエーフィのミュリン。あの二人はアホタッグ、つまり存在自体がギャグ……あれ？何だろこの浮遊感……途轍もなく嫌な予感がする。ふとミュリンを見ると額の結晶が光っていた……
「痛ッ！！」
いきなり変な浮遊感が無くなり代わりに背中に激痛が走った……半端無く痛い、当分動けないな……きっと。
「何してんだ？お前」
「死ぬほど背中が痛い……」
「あっそじゃあ勝手に死んでろ」
……そりゃ無いでしょシアルさん……何で僕だけ扱いが酷いんだ、昨日なんてグレイシアの十八番、冷凍ビームをかなり食らったし一昨日は言葉の暴力、そして今日は……
「回復したら部屋に来い、久々に依頼来たから腕慣らしに付き合え」
腕慣らしと言う名の地獄の様です。
ってゆうか僕受付希望して入った筈なんですけど？何で"戌"やらされてるの？
えーさっきからちょくちょく出てきた戌とは此処の依頼実行人の事、かなりハードだしそれなりの戦闘経験も必要、治安維持隊に捕まれば死亡確定の裏の仕事、故にこの世界に入ったら最後二度と表の世界に戻ることは出来ないけど受付は違う。戌は面が割れるけど受付はそんなことは無い、だから受付を希望したのにあの人は『戌が足りないからやれ、いいな？』って強引に戌をやらされてる
「ボサっとしてないで早く来い！」
「えぇ～……」
「ん、イヤなのか、イヤなら別にいいぞ」
ふぇ？あの人が優しいなんて風邪引引いてんじゃ……
「ただし飯抜き」
前言撤回、やっぱりこうなる……あの人が優しくなるのは僕らが風邪引いたときか大怪我したときくらいだ。文句などを言ったら大体、飯抜きにされる。こんな時は土下座するしかない。
「ごめんなさい！！飯抜きはご勘弁を……！」
「じゃ、さっさと来い」

空腹を満たすために自ら地獄へと赴く……何かバカみたいだな。別にご飯を食べなくとも死なないのに空腹で動けなくなる……動けなくなっても死なないし例え灼熱地獄に放り込まれても、絶対零度の中を歩いても、無数の鉛弾の雨を受けても、硫酸の池に蹴り落とされても死ねない。ただ、その中でもがき苦しみ痛みを感じ……いや、痛みすら感じなくなる。
勿論シアルさんの腕慣らしはここまで酷くはないけど'"ホウオウの不死の呪い"'という僕が背負わされた運命を何度か恨んだ。

【ホウオウの生き血を採ってきた者に永久の富を与える】

僕がまだ戌屋に入る前の話、その日は僕が住んでいた村に近くの国の大使を乗せた馬車がやってきて村長の家に止まっていた。

ひっさしぶりに更新……何ヶ月ぶりだろ……