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情事の事情 上

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情事の事情 


♂×♂の表現と若干の残酷描写があります。

ウインディとおもちゃ工場の秘密 


                            作者:COM

 とある町に一つのおもちゃ工場があった。
 全国展開している……という程大きな工場ではないが、その町ではそれなりに名の知れた大きな工場だ。
 その工場を運営しているのが一人のウインディ、名前はアモルという男だ。
 とても人当たりの良いウインディで、よくその工場の直営の店舗へと足を運んだりなどもしている。
 しかし、そういった人になればなるほど必ず流れるものがある。

 噂だ――

 近隣の量販店や玩具店などにもその工場で作られたおもちゃが置かれ、恐らく彼は一人でそれほどの会社を経営しているのなら膨大な私財を持っているだろう。
 しかし、実際の所彼は昼頃は町中をふらふらとしている姿をよく目撃される。
 それほどの大企業の一社長がふらふらとしているなどどう考えてもおかしい。
 その為、彼によく立つ噂が『悪い事をして稼いでいるのでは?』というものだ。
 実際、何度か彼の工場は匿名の連絡で労働局が調査しているが、至って平凡、寧ろ整った仕事環境だったそうだ。
 ならば『そういった場で働いている者を酷使しているのでは?』という噂が立つが、同じく従業員の人たちは極めてにこやかに言う。
「不満? とんでもない! こんな良い所で働かせてもらえてとても感謝している」
 誰もが口を揃えてそう言うのはいくらなんでも強制することは不可能だ。
 何処を叩いても埃の出ないそんな彼はへらへらと笑いながらこう言う。
「叩けば埃が出ますよ? お掃除とかは面倒なんであまり真面目にはしていないので」
 不思議な程に彼は裏表が無い。
 その為、彼を疑う者は既にこの街にはいなかった。
 しかし、一つだけ従業員に彼の事を尋ねると少しばかり不可解な言動が飛び出すのだ。
「アモルさんには感謝してもしきれない。 あの人のお蔭で私は今もこうやって笑顔で生きていく事ができる」
 そう言うのだ。
 しかし、それは彼の大らかな性格によるものなのだろうと誰も気にしなかった。



 しかし、裏の無い人などいないのだ……彼も例外ではないように……。



 日曜日――
 多くのポケモンたちが休みの日を存分に満喫していた。
 多くの者は家族連れでちょっと隣町ぐらいまでの遠出をしたり、恋人と一緒に以前から興味のあった場所に仲睦まじく足を運んだり、仲の良い友人同士と楽しく喋りながら何処で遊ぶか悩んだり……。
 そんな中、不穏に動き回る者の姿もあった。
 かなり大きめの荷車が人目を避けるように裏路地をゆっくりと走り抜けていた。
 大都市、と言える程大きな町ではないため裏路地になれば整備が行き届いていない場所もある。
 そのため荷車を引くポケモンたちはなんともないが、荷車の方はガタゴトと大きな音を立てていた。
 正確には音自体は小さいものだったのだろうが、狭い路地だったため音がよく反響するのだ。
 そしてついにガタン!! と大きな音を立てて荷車が跳ねた。
「バカ野郎!! この辺りは道が悪いから気を付けて行くつっただろ! 商品は大丈夫なのか!?」
 荷車を引いていたズルズキンが相方のズルッグに対しそう怒鳴り、急いで荷車の中身を確認した。
 布を剥いで中に何も異変がないことを確認し、彼は深い溜息と共にようやく胸をなでおろした。
「兄貴ぃ……そんなに気張らなくてももしもなんて起きやしやせんって」
 彼の相方がそんな様子の彼を見て一言そう呟いたが
「バカ野郎!! これから行く所はお得意様なんだよ! 商品を傷物にでもしようものなら俺ら大目玉なんだぞ!!」
 火に油を注いだようでついには怒号だけでは済まず、頭突きも一つもらった。
 痛そうに頭を押さえる彼を尻目にまたすぐに移動を始めた。
「大体たかが奴隷の一人や二人で……」
「何か言ったか?」
 ボソッと呟いたズルッグの一言は、ガタガタ五月蝿い荷車が後ろにあるはずなのにも関わらず彼の耳に届いたようでブンブンと首を振って答えていた。



――――



 それから数分、彼らの目的地である、とあるお屋敷の裏口へと到着していた。
「アモルさん。ご注文の『商品』、届けに参りました」
 そう、呼び鈴を鳴らしてお得意様……アモルに『商品』の到着を知らせていた。
 暫くすると裏口がギギー……と音を立ててゆっくりと開き、中からアモルの姿が現れた。
「さっさと連れてこい。周りに見られると色々と面倒だからな。あと騒がせるなよ?」
 そこにあったアモルの姿は平日の昼頃によく見られる優しさに満ちた顔ではなく、人を睨み殺せるような恐ろしい顔の男が居た。
 彼にそう言われると、ズルッグとズルズキンの二人はすぐに荷車から布を掛けたままで奴隷達を裏口から中へと連れて行った。
「大丈夫ですよ。キチンと口には布を銜えさせているのでうんともすんとも言わせませんよ」
 そう言いズルズキンが少しだけ布を捲り、商品である奴隷達が決して抵抗することができないようにしてあることを確かめさせた。
 ちらりの見えた布の中には四人のポケモンの姿があり、どれも口には捻じった布を銜えさせ、手足にはギリギリ歩ける程度の枷を掛け、目隠しまで施していた。
 どう足掻こうと逃げ出すことなどできないような拘束を施されたポケモン達を、彼ら二人はアモルに案内されるがまま慣れた手つきで運びこんだ。
「それでは状態の確認をお願いしますね。返品や交換も我々に仰せ付けください。直ぐにご用意させていただきますので」
 そう言い布を剥いだ。
 中には左からキュウコン、ルカリオ、イーブイ、オオタチが全員数珠繋ぎで枷をはめて並んでいた。
 それを確認するとアモルは何回か品定めするように顔を眺め、何度か頷いた後
「注文通りだな。これが商品の代金だ。『次も』宜しく頼む」
 そう言い、すぐに奴隷の購入代金が入った袋を彼らに渡した。
 彼らはすぐに中身を確認し、代金分のお金が入っているかきちんと確認したが、勿論代金通りお釣りもなく入っていた。
 それを確認し、袋に詰め直すとニッコリと慣れない笑顔を見せ
「確かに代金を戴きました。それではこれからもご贔屓に……」
 そう言い、彼らもすぐに帰っていった。
「しっかし……あのアモルって人は物好きなんスね。あんな『使えない』奴隷達を買うなんて」
 空になった荷車に戻り、ズルッグがそうズルズキンに向かって言った。
「シーッ!! 陰口はやめろ! まだ見られてるんだよ! そういうことは離れてから言えっての!」
 そう言い、まだ窓から彼らの様子を伺うアモルの方を流し目で教え、そそくさとその場を去っていった。
「行った……かな? はー……やっぱり演技だとしても疲れるよ」
 完全に姿が見えなくなったのを確認し、アモルは深い溜め息を吐いた。
 そして顔を上げると、彼の顔にはいつもの優しい表情が戻っていた。
「ゴメンねーみんな。すぐに全部外すからねー」
 そう言い、買い取った奴隷達に付いている拘束具を受け取った鍵ですぐに外していった。
 まず目隠しを外し、次に銜えさせられていた布を外し、最後に手枷と足枷を外し……。
「テメェ! いい度胸じゃねぇか! アタシの素性知っといて今手枷外したんならお望み通りぶっ殺してやるよ!!」
 足枷を外そうとした時にルカリオがアモルの喉元を締め上げるように自分よりも大きなその体を持ち上げてユサユサと振り上げた。
 ギリギリと女性とは思えない力で締め上げるその手に思わずアモルもタップするが、彼女はお構いなく首を締め上げ続けていた。
『死ぬ……死ぬ……!! 誰か助けて!!』
 涙目になりながら藁にも縋る気持ちで誰かに助けを求めるが現れるはずもない。
 意識も朦朧とし、ガックンガックンと揺らされていたが、彼女の方も限界だったようでアモルの体を最後の力で突き飛ばすように投げ捨てた。
「ハァ……ハァ……。どうだい? 分かっただろ! アタシを舐めるな!」
 碌に食事も摂らせてもらっていなかっただろう彼女はヨロヨロとしながらアモルに対しそう吐き捨てた。
 アモルの方はゴホゴホとなんとか息ができていることを感謝しながら深く深呼吸をし、息を整えた。
「待って……ちょっとだけ待って……。僕は別に君たちを奴隷として扱いたいわけじゃないんだよ……」
 必死にそう言うが、激昂した彼女は言うことを聞こうとしない。
「なんだ! まだやられたりないのかい!」
 そう言い、拳を振り上げるが
「旦那様! 大丈夫ですか!?」
 そんな声に遮られた。
 一人メイド姿のタブンネが現れ、アモルを抱き上げるとそれを口火に次々とメイド姿のポケモン達が現れ始めた。
 次々増えるメイド達にルカリオが呆気にとられていると
「とりあえず落ち着いたみたいだね……。ようこそ、僕の家へ」
 そうアモルは苦しそうな顔のままにこやかに微笑んで見せた。
 ルカリオはいかにも嫌そうな顔をしてみせたがアモルは気にせずに他の奴隷達の残りの枷も外していった。
 全員を完全に開放すると今度は全員に向けて先程と同じことを言い、続けて
「君たちはもう、奴隷として生きなくていいんだ」
 そう付け加えた。

貴方に届け 


 最初、彼の言っていることが彼女たちには理解できなかった。
 奴隷として長い間生きてきた彼女たちにとって『奴隷として生きなくていい』などという希望は遠い昔に忘れていたものだったからだ。
 ましてや、自分のことを買い取った相手がそんなことを言い出すとは思ってもみなかったからだった。
「それは……一体何の目論見があってのことかしら?」
 彼女たちの一人、左端にいたキュウコンが初めて口を開いた。
 彼女の名はイツカ。
 キュウコン特徴の長く美しい黄金色の毛並みは遜色無い物だったが、長くきちんとした手入れをしていなかったのだろうかかなり毛羽立っていた。
 すらっとした顔立ちはそのままに、深紅の瞳はあまり生への強い炎は灯しているようには見えなかった。
 長い奴隷人生は彼女のプライドや夢をズタズタに引き裂き、最低限生物として生きているだけの存在まで落とされていたようだった。
 そのため、自ら口を開いたのは遠い昔に思われるほど久し振りだった。
 口を開かされたことがあるとすれば性奴隷として無理矢理モノを銜えさせられたことぐらいだ。
 故に人の言う事など……特に自分を奴隷として買い取った相手の言葉など信用できるものではなかった。
「目論見なんてないよ。ただ君たちにも人並みの人生を送らせてあげたいだけだよ」
 そう言いアモルは荒んだ彼女の瞳をしっかりと見据え、優しくそう言ってあげた。
 しかし、先程までの言動同様に今の彼も彼女にとっては『演技』にしか見えていない。
「ならこのメイドの数は何かしら? 普通の富豪はこんなにメイドを雇わなければ私生活も送れないの?」
 そこでイツカは先程から増え続けるメイド達に目をやり彼にそう言った。
 そこに居たのは最初に現れ、倒れたアモルを介抱するメイド……次に訪れアモルに襲いかかったルカリオを必死に止めるメイド……。
 そこまでは分かる。
 だが、いつの間にか彼を介抱するメイドの数はあっという間に5を超え、ルカリオを止めるメイドも4になり、ただ何もせずにオロオロするメイドが数えられないほど……。
 いくらなんでも多すぎる。
「一人暮らしの大規模工場の社長ときたんだ。案外一人暮らしは寂しいから大家族に憧れちゃうものなんだよ?」
 彼の返答はこういうものだった。
 流石にこの言葉にはイツカも言葉を失ったようだ。
 だが、悪びれもなく『悪いジョーク』を言うアモルに唖然としている彼女を放っておくほど彼は鬼ではない。
「まあそれは冗談として……彼女達は『元』奴隷だ。今は正真正銘ただのメイドなんだが……他を宛ってくれというのに……」
「旦那様に助けて戴いたこの身、旦那様にご奉仕せずに恩を返すことができません!」
 目をチラリとでも横にやってそう言うと、ワラワラと集まって言葉は違えども言っている意味はほとんど同じことを言っていた。
「僕に感謝しているんなら社会復帰してくれた方が嬉しいんだけどなぁ……」
 そして大体この話を持ち出すと、アモルの苦笑いとそんな言葉が飛び出し、有無も言わさず感謝の嵐になるため仕方なくアモルが引いて終わるのだ。
 当たり前だが今回入ってきた四人の奴隷はこの状況について理解が追いつくはずもなく、ただ呆然として見ているしかなかった。
 そしてようやくメイドをみな元の作業に戻らせて、アモルは一息つくと彼女たちとまっすぐ向き合い
「君たちがどう思おうと、今日から君たちは自由の身だ。但し、最低でも一週間は家からは出ないようにしておいてくれ。家の中なら自由に歩き回って構わないからね?」
 そう言い放った。
「自由の身なのに一週間は手元に居ろ? もっとものを考えてから嘘を吐くんだな! アタシら奴隷を馬鹿にし過ぎなんだよ!」
 この言葉に最初に反応したのがルカリオだった。
 元々、先程の行動から考えても奴隷とは思えない言動……彼女が『安値』で取引されている理由だった。
 そんな彼女が何故、奴隷として生きているのか……それを語るのはもう少しだけ後にするとしよう。
 苛立ちを隠せない犬歯を剥き出しにしたその表情は親の仇でも見るような目だが、アモルは臆することなく
「奴隷を馬鹿にしたことは一度たりともない。君こそ僕を侮らないでもらいたい」
 今までとは違う真剣な表情でアモルは彼女に向かってそう言った。
 そんなことを言った事がか、そんな表情を見せた事がかは分からないが彼女も今までのように睨みつけるのではなく、心底驚いた表情をしていた。
 その後、先程とは打って変わって彼女はあまりアモルに食ってかかるような事がなくなった。
 そのため全員に対する大まかな一週間の期限の理由を話すことができた。
「君たちは奴隷だった訳だけど……勿論その事実を知っている人は恐らくこの町にはいないだろうね。
だけど、君たちを売り買いしていた奴隷商の人たちは一人一人の顔を正確に覚えていないにしろ、そんな数日内に一般人のように歩き回ってたら確実にバレてしまうからね。
そして君たちを解放したのが僕だとバレるのはすごくマズイんだ。
これから先、君たちのように奴隷に身を落として生きている人たちを正々堂々と解放することができなくなってしまうからね。
出来ることなら一ヶ月程は家から出ないことを勧めるけど、流石にそこまで君たちを縛り付ける気はないからそこは自由にして欲しいのが本音かな?
部屋は客間が無駄に余ってるから好きな部屋を使ってくれて構わないよ。
食事も彼女達が張り切るせいで僕しか生活してないのに沢山あるからみんなで食べておくれ。
うん……。とりあえずはこれくらいかな?」
 そう言い一通り理由と説明を終え、彼はそのままふらりと何処かへ去っていってしまった。
 元々かなり掴み所のない彼がそんな風にふらりといなくなればなおさら何をすればいいのか分からなくなってしまう。
 メイド達の方は既にそうやってフラフラとしているアモルに慣れているためか、主人が居ずともいつもと変わらぬ調子で仕事をしたり談話をしたりしていた。
 彼が言っていた通り、元奴隷だったのかと思う程彼女達は明るく、容姿も普通のポケモンと一切変わりがなかった。
 そこでどうしてもイツカは気になり、そこにいたメイドの内の一人に質問した。
「ねえ、あなたたちはどうして自由の身なのに彼の元に居るの?」
 彼が言った通りなら彼女たちは自由の身、しかし彼女たちは今も彼の元で尽くしている。
 彼女自身が今奴隷の身であるため自由というものがどれほど素晴らしい物かは良く分かっている。
 なのにも拘らず、その自由を無碍にして彼の元に居ることが彼女からすると理解できなかった。
 そう質問するとそのメイドはニッコリと微笑み
「あなたもこの一週間で分かりますよ。あの人の周りに人が溢れる理由が……ね?」
 そう言い、他のメイドたちに向かって目配せをしてみせた。
 そのメイドも同じく優しく微笑みながら頷くだけで肝心の内容は教えてはくれなかった。
 その後は何度聞こうとただ微笑むだけでみな仕事に戻っていくのだった。
 他の三人を見るとそれぞれ一応の自由の身を謳歌しているようだった。
 イーブイは近くのメイドの仕事を興味津々で見つめていた。
 メイドたちの後を付けて歩く様はまさに仔犬、可愛さが形になったようだった。
 ルカリオの方は何を考えているのかは良く分からないが、ひとまずフラフラと家の中を回る事にしたようだ。
 最初の行動からすると何かやらかしそうな気がするが、彼女には興味のないことだったのであまり気にはしなかった。
 オオタチはさっきからオドオドとして何もしていなかったが、一人のメイドが見かねたのか部屋へと案内していた。
 彼女は何を考えているか分からないというより何もできないといった雰囲気だった。
 手を引かれて部屋の紹介につれて回られる様はただの子供、彼女も奴隷のはずなのに何処かあどけなさが残っている。
 そんなことを考えながら周りを見ていると気が付けばこの部屋に残っているのは彼女だけとなっていた。
 流石にこれ以上ここに残っても仕方がないので彼女もひとまず部屋の中を回る事にした。



――――



 イツカはとりあえず廊下へと出てみた。
 ここにもポツポツとメイドの姿が目に付く。
 一体この屋敷にはどれほどのメイドが勤めているのかかなり気になるが、種族がばらけているように見えて意外と同じ種類のポケモンも多いので大体の総数が分かり難い。
 彼が言っていた通り、通路には使われていない客間が左右にズラリと並んでいた。
 一部屋づつ好奇心から覗いていくが、どの部屋もだいたいメイドが一人二人掃除をしているだけだった。
 彼女からするとまだアモルの事は信用できたわけではない。
 そのため良くも悪くも彼の素性を掴む証拠が欲しかったのだ。
 彼が自由に歩き回って言いといったのだ、物色するなとも言っていないし問題はないだろう。
 そんな事を考えながら一部屋づつ見て回ったが、何かを見つけ出すよりも早く根気の方が尽きてしまった。
 彼女が思っていた以上に部屋の数が多すぎるのだ。
 某物置屋ではないが、100人泊まっても部屋にまだ余裕がありそうな程だった。
 その上、どの部屋もメイドたちがきちんと手入れをしているため証拠はおろか埃一つすら見つからないのだ。
 仕方なく通路をフラフラと歩いていると、不意に日差しの強い場所があるのに気が付き、そちらへと歩いていった。
 するとそこにはかなり大きな屋内庭園があった。
 丁度屋敷の真ん中辺りだろうか、見渡せるほどの大きな庭には噴水や美しく剪定された庭木が白や黄色、赤など色鮮やかな花を咲かせて可愛らしく並んでいた。
 イツカは初めてその景色を見た瞬間、心を奪われていた。
 夢に描いていたようなお城の庭園……それを髣髴とさせる景色は彼女を童心に帰していた。
「気に入ったかい? ここの風景は僕も気に入ってるから特に力を入れているしね」
 何処からか聞こえてきたその声は間違いなくアモルだった。
 丁度向かいの通路から彼は彼女の元へ歩いてきた。
「ええ……。とても素敵だわ」
 それを聞くとアモルはニッコリと微笑んでいた。
 彼女はそんな彼の姿はすでに気にすら留めていなかった。
 『大きくなったらお姫様になりたい』
 遠い遠い幼少の頃、誰もが一度は描いた夢だった。
 しかし、彼女はその夢を描いて間も無く、可愛らしい子供の夢は無残に奪い去られるのだった。
 それから一体何年経っただろうか……いつの間にか夢という夢もなく、いつか普通の人生を送るだけという奴隷に身を落とした頃のささやかな夢も失っていた。
 『これが私の運命……』いつの間にかそう自分を思い込ませて、惨めなだけの自分の命を失わないように必死に保っていた。
 しかし、それも限界が近づいていた。
 誇りも夢も生き甲斐も……何一つ持たない、何もかも奪われた彼女の抜け殻のような心は抜け殻のように外からの容赦のない圧力で簡単に潰れ始めていた。
「後で僕の部屋においで。多分、君には言わなければならないことがあるからね……」
 イツカの肩をポンと叩き、そう伝えるとアモルはまたフラリと去っていった。
 その後、彼女は日が暮れるまでその景色の中に陶酔していた。
 忘れていた大切な物をこの場所は思い出させてくれるようで……。



――――



「わたしね! 大きくなったらきれいなおひめさまになるの! そして王子様と幸せにくらすの!」
 小さな可愛らしいロコンはお父さんに向かってそう笑顔で話していた。
 お父さんも笑顔でそんな小さな娘の頭をなでながらニコニコと話を聞いていた。
「そうか! ならいい子にならないといけないな! いい子はもう寝る時間だぞ?」
 そう言い、そのキュウコンは娘を寝かすためにわざとそう言った。
 素直なロコンは笑顔で頷き、急いで自分の部屋へと戻っていった。
「イツカは本当にいい子だな……誰に似たのかな?」
 キュウコンはそう意地悪そうにすぐ横の白銀のキュウコンにそう言った。
「ウフフ……私じゃないですよ? 優しくてロマンチックな所はあなたそのものよ」
 その女性は所謂色違いと呼ばれるキュウコンだ。
 彼女は彼の妻であり、そのロコン……イツカの母親だ。
 当たり前だが、そのキュウコンは彼女の父親、彼女も昔はごく普通の家庭で育っていた。
 だが、彼女の人生は6つの誕生日を過ぎた辺りから少しずつ狂い始めた……。
「早く消防車を!!」
「手が空いてるみずタイプは水をかけろ! 他にも延焼し始めてるんだぞ!!」
 瞬く間だった。
 不審火により彼女の一家は焼死した……。
 そんな話が有り得るはずがない。
 ほのおタイプのこの一家が火に巻かれて死ぬまでじっと炎の中で耐えているはずがない。
 揺らめく炎の中、幼い彼女が見た光景は複数人の姿、そして絞殺される両親の姿だった。
 彼らの目的は端から金品を強奪することでもなく、両親に対する憎悪に駆られた訳でもなく、彼女……幼き日のイツカだった。
 死者は彼ら一家を除き、一人も出なかった。
 そこには二人の死体しか残されていなかったが、まだ幼い彼女が生きている望みは薄く、捜索も1週間で打ち切られてしまった。
 そこからは地獄、絶望のみが広がっていた。
 まず、彼女が攫われた理由、それはただの一度だけ声を掛けた富豪に宿った醜い欲望だった。
 『あんな子供を好きなだけ自分の好きなように弄ぶことができたなら……』
 歪んだ願望は彼を暴走させ、この辺りでも有力な奴隷商団に大金を積み、彼女の知人を全て消した上で彼女の身を性奴隷として身元によこさせたのだった。
 当たり前だが奴隷商とてポケモンだ、心がないわけではない。
 普通、真っ当な人生を送る人々の人生を壊すようなことは決してしない。
 だが、ただの富豪ならそこで断られて終わりだっただろう。
 裏の世界に随分と顔の利いた彼は無理矢理その仕事を請け負わせた。
 目論見通り欲しかった玩具は手に入り、邪魔者は全て消した。
 傷一つなく彼女を富豪の元へ引き渡した奴隷商は、倍の報酬を受け取り、この事を全て闇に葬ることを誓わせた。
 勿論、そんな口約束いつでも無碍にできるのだが、相手の方が何枚も上手。
 その上、裏の立場でも彼の方が上なのだ。
 このまま一家は全員死んだことにされ、イツカは6つ……まだお花畑を夢見る淡い少女の幼い花弁を滅茶苦茶にしてみせた。
 まだ未発達だった彼女の『女性』は見事に好きも恋も知らぬまま二度と使えない代物にされてしまった。
 そして彼の欲望が満たされると残りのやる事は決まっている。
 壊れた玩具など不要……。
 ドス黒く汚れた欲望によって何も知らない小さな白百合は血染めとなり、毟り取るように捨てられた。
 そんな幼い彼女は……希望を捨てた。
 『これが私の人生……。人の幸せのためにその身を捧げ続ければいい』
 あまりにも早い自立、そして自己の消失だった。



――――



 美しい景色に見惚れ、ただその景色をぼーっと眺めていたイツカは漸く我に返り、アモルから呼び出されていたことを思い出した。
 気が付けば日はとっぷりと沈み、空は既に西から美しい赤から紺へのグラデーションと散りばめられた美しい星々に彩られていた。
 『大変! 急いで向かわないと!』
 そう思ったのも束の間、そもそも彼は何時頃に来いと明確に時間を指定してくれていなかったのだ。
 その上、彼の部屋の説明など受けていない。
 『兎に角……メイドさん達に聞いて行くしかないわね』
 そう思い、すぐに近くの部屋にメイドを探しに行った。
 彼女は既に彼に気を許していた。
 この美しい庭園の持ち主であり、自分の心傷を少なからず和らげてくれた彼に対し、彼女は今すぐにでもお礼を言いたかった。
 思った通り近くの部屋にはまだメイドの姿があった。
 が、それと同時にメイドとは違う人の姿もそこにはあった。
「おや? 新入りかい?」
 そこにいたのはジュプトルの男性だった。
 今までの経験からして男性を見ると警戒してしまうが、彼女が警戒したのを見て笑いながら
「おっと! こりゃ失礼。そんじゃ邪魔者は一時退却させていただきますね~」
 そんな事を言いながら奥のベッドへと歩いていき、そのまま潜り込んで寝てしまった。
 ひとまず彼に何かをする意志はないようだ。
 一応の警戒を残したまま、メイドにアモルの部屋の場所を聞き、お礼を言ってすぐにその部屋を出た。
 そこで彼女はふと思い出した。
 アモルは確かに優しそうな人だったこと。
 そして、彼が自分を買い取った張本人であることも……。
 とはいえ、今の彼女自身がどんな立場にあったとしてもこれ以上待たせるのはまずい。
 ひとまず彼女は急いで教えてもらったアモルの部屋へ足早で向かうことにした。

 アモルの部屋の前――

 イツカは今一度大きく深呼吸をし、ノックをした。
「どうぞー」
 そんな声が部屋の中から聞こえた。
 イツカはドアを開け、部屋の中へ入った。
 するとどうだろう、彼女が以前から見ていたこういった奴隷を買い取るような富豪の部屋のそれとはまったくもって違っていた。
 今まで見てきた客間とそれほど差がなく、おおよそ二部屋を足したぐらいの少し縦長の部屋というぐらいで、趣味の悪い飾り物も成金が好みそうな金色の工芸品や家具も一切置かれていなかった。
 それどころか当の本人は机に向かって黙々と筆を滑らせていた。
 今まで出会った全ての富豪と違う彼の行動にまた心が揺らぎそうになるが、イツカは一つの信念のもと自分の心を抑え、ただじっとアモルの動きを待った。
「ごめんね。もう少し掛かるからそこに座って待ってて」
 振り返りそう言った彼の顔には丸い銀縁眼鏡がかかっていた。
 見た目が変わると尚更彼の雰囲気は温和なものに見えるが、彼女は彼の指差した方向を見て確信した。
 『結局、彼も私を騙そうとしているだけ』だと……。
 彼の指差した方向、それはベッドだった。
 これまで何度も経験した絶望の一つ一つが鮮明に蘇り
「何が人助けよ!! 貴方も結局は他の男どもと同じじゃないの!!」
 抑えきれない感情はそのまま激情となり、思いはそのまま留まることなく言葉になっていた。
 信頼したかった……信頼してしまった。
 そんな感情が押し潰されそうな彼女の心にさらに圧迫をかけていく。
 そんな様子のイツカを見ていたアモルはペンを置き、イツカの方へと向き直した。
 そして
「君は……多分、とても辛いことがあったんじゃないかな? それも人に話せないぐらい……」
 緩やかな口調で、表情もまたとても緩やかなままそう言った。
 イツカは驚いた。
 まだ彼には一度たりとも、いや今まで出会ってきた人誰にも言った事がなかったからだった。
「あ、当たり前でしょ!? 私は奴隷よ?」
「多分、奴隷云々よりもひどい事だと思うんだけど……違った?」
 彼がエスパータイプなら納得できるがほのおタイプだ。
 何故そんな彼が自分の心の闇を知っているのかがいつかにとっては恐ろしい程に不気味だった。
「どうやって調べ上げたの……?」
 そう聞くと彼は首を横に振った。
「じゃあ……!?」
「庭にいた時の君の表情はとても嬉しそうだった。」
 彼女が聞くよりも先にアモルはゆっくりと答え始めた。
「でもその時、同時に君の瞳には悲しさも写りこんでいるように見えたから……ね。
これは僕のただの勘だから、それで君の癪に障ったのなら謝るよ」
 イツカには信じられなかった。
 アモルのその言葉がではない。
 アモルがたったそれだけのことで彼女の心の内を分かってくれたような気がしたこと。
 そして、彼が本当に敵ではないということに……。
 だが、溢れそうな感情を抑えて最後に一つだけ自分の口から訪ねた。
「本当に……貴方を信じてもいいの? 私はもう。裏切られないの?」
 そう言うとアモルは椅子から立ち上がり、ゆっくりと彼女の方へ近づき、優しく抱きしめた。
 もう、言葉はいらなかった。
 それだけで彼の優しさはイツカの心にまで染み込むようで……。
 気が付けば涙が溢れ、それを追いかけるように大きな声で泣いた。
 忘れていたのかもしれない、本当は世界は希望に満ち溢れていると。
 どんなに辛い場所にいてもそれを忘れなければいつか日が昇るように絶望も美しい夜明けが来ると。
 あまりにも深すぎる闇は彼女に光があることを忘れさせていた。
 そんな彼女の……イツカの夜明けは誰もが寝静まる夜の中で確かにやってきた事を彼女は確信した。



――――



 漸く彼女の溜まりに溜まった感情は、全て腫れてしまった瞼を代償にして全て吐き出すことができた。
「女性を泣かせるなんてひどい人……」
 イツカはわざとそんなことを言い、アモルを少し困らせてみたくなった。
「えー……っと、その、泣かせるつもりじゃ……」
 案の定、優しいアモルは焦っていた。
 そんな様子を見てイツカは嬉しくなった。
 『本当に裏表のない人なんだ』と。
「いいえ、冗談よ。有難う、私を助けてくれて。」
 そう言いイツカはアモルに軽いフレンチキスをした。
 するとアモルも嬉しそうに微笑み
「君たちがこの先、真っ当な人生を送れるようにしてあげたかっただけだよ。心の傷は必ず障壁になっちゃうからね」
 そう言った。
 その後、少しの間、なんともない話をして笑っていた。
 一週間が終わったらどこに行きたいかとか、何も知らない自分が社会に出ていけるかとか、好きな人ができるか……とか。
 そんな話を終えるとアモルは
「もうこんな時間か……明日に支障が出るし、イツカも今日はここで寝ていきなよ。多分、部屋探してないでしょ?」
 そう切り出した。
 図星だったために何も言い返せなかった。
 ずっと庭園に見惚れ、懐かしい思い出に浸っていたために部屋は物色以外で回っていない。
 とはいえ先程から未来予知でもしているのかと思う程的確に当ててくる彼の思惑通りに動くのが少し悔しくて
「自分の部屋に女性を呼んで一緒に寝ようって、それ私を最初から襲う気だったんでしょ?」
 とわざとそんな気がないことを知っておいてそう言った。
 勿論、アモルは困っていた。
「い、いやそんなつもりじゃ……」
 彼が誘っている以上そう思われてもおかしくはないため、何も言い返せないのだ。
 そのため、彼はなんと言おうと悪者になってしまう。
「大丈夫よ、お言葉に甘えて今夜はここで寝させてもらうわね」
 そのため、先にイツカが切り出した。
 ここまでからかいがいのある人だと逆に面白いが、これ以上は可哀想だ。
 二人ともベッドに潜り込み、そのまま眠り始めた。
 が、当たり前だがイツカは気が気ではない。
 ベッドに潜った時点で気が付いたが、このベッドはダブルベットなのだ。
 一人でこれだけの広さのベッドを使う必要がない。
 たとえ彼に気を許したとしてもこの状況、間違いが起きてもどうしようもない。
 それどころかいつの間にか彼女の心臓は跳ね上がりそうなほどに大きな音で鳴っていた。
 男の人と寝て、こんな状態になったことなど一度もなかったため、イツカは本当に焦っていた。
 胸の高鳴りは抑えきれず、いつもなら嫌なはずなのに今すぐにでもアモルに襲われたい、そんなことを考えていた。
 だが、この男にはそういった度胸は疎か、その気すらないのか既に寝息を立てていた。
 これでは一人期待していた彼女が馬鹿みたいだ。
 とはいえ自分から『襲って欲しい』などと切り出すのも馬鹿だ。
 ならばどうしようか……そんな事を考え小一時間が経っていた。
 アモルは未だ起きる気配もなく、気持ちよさそうに寝ている。
 これほど美味しい状況、自ら捨てるなど男としてあるまじき行為だ。
 とはいえ、彼がそれほどの優しさを持っていたから彼女は救われたのだ。
 その男に救った相手に襲いかかれという方が酷である。
 とはいえ、このまま昂ぶったままの彼女を放置するのもまた彼女にとっては酷である。
 『襲わないとは言ったけど……襲うなとは言ってないわよ……ね』
 そんな事を考え、一時は踏みとどまろうとしたが、それ以上に彼女の心の昂ぶりは彼女をいけない道へと推し進めた。
 そして、今まで襲われる側だったため決して見えることのない彼女の本性はここで覚醒した。
 アモルの方に向かい、軽く彼の体を揺さぶった。
 が、しっかり寝ている。
 ならと今度はグリングリンと体がねじれるほどに大きく揺さぶったり、軽く叩いたりしたが、恐らく一度寝付くと相当眠りが深いのか一向に起きる気配がなかった。
 これなら恐らく問題ないだろう。
 そう思い、彼女は徐ろに彼のモノを足を広げて見させてもらった。
 『おっきいわね……流石というところかしらね』
 彼はとても体が大きいため、たとえ平均的であったとしてもキュウコンである彼女には少なからずかなり大きい部類に入る。
 しかも彼のソレは平均よりもかなり大きいのだ。
 彼女からすれば犯されるのであれば耐えられるような代物ではなかっただろう。
 だが今回は犯されるのではなく、『犯す』のだ。
 目の前の立派なイチモツに興奮は隠せなかった。
 とはいえ眠っている相手のモノが最初から元気なはずがない。
 少し考えた後、イツカは彼のモノが出てくるチューブの先をそっと口に頬張った。
 その後、中身を吸い出すように吸い上げながら、中にある彼の漢を長い舌で掻き出すように舐め始めた。
 すると先程まで反応のなかったアモルに反応があった。
 起きるかと思い少し身構えたが、特に何もなくまた寝息を立てていた。
 ならば起こさぬように、起きても自分に都合の良い状態にできるように出来る限り優しく、かつ素早く彼のモノをその気にさせなければならない。
 より一層彼のモノを舐り、少し彼の荒い息遣いが聞こえるぐらいまでギリギリのラインを保ったままなんとか彼の立派なイチモツのその全容を見ることができた。
 納まっていた頃から考えると優に2倍、いや三倍近くはありそうなほどにまで大きくなっていた。
 ビクンビクンと脈を打ち、今にも抑えきれないものを吐き出そうとしているように見えた。
 そのまま彼女はソレを口に咥え、ねちっこく刺激を与えると思っていた通りビクンッと大きく跳ねたと思ったら、彼女の口の中へと大量の白濁を放っていた。
 汚すわけにもいかないし、そもそも吐き出すなんて勿体無いことを彼女はしたくなかった。
 そのためゆっくりと口の中に溢れるソレを飲み干していった。
 荒い息遣いが聞こえるが、次第にそれは元の寝息へと戻っていた。
 『これなら……いける!犯したって文句言えないわよね!?』
 まだ僅かに元気の残るモノをもう一度口で咥え、また元気を取り戻すように舐めてあげると見た目以上に彼は若いのかすぐに元気を取り戻した。
 次は起こしても構わないのでイツカは素早く彼を仰向けに寝転し、すぐに彼の上に馬乗りになった。
 乗られることはあっても誰かの上に乗る日が来るなんて思いもよらなかった。
 そのまま逸る気持ちを抑えつつ、十分に受け入れる準備が出来た彼女の秘部を彼のモノへと宛てがった。
 そして割れ目を徐々に上へとずらし、彼のモノの先端が秘部へ滑らかに滑り込んでいくのを感じ、今度はゆっくりと腰を下ろしていった。
 あまりに大きなモノに思わず甘い吐息が漏れるが、あまり大きな声を出せば彼が起きてしまうかもしれない。
 そのためにイツカは必死に湧き上がる快感による媚声を押し殺しつつ、さらに深く深く飲み込んでいった。
「え~……っと、どういう状況?」
 ある程度覚悟はしていたがやはり流石のアモルも起きてしまった。
 不意に声を掛けられ、イツカは予期していたにも拘らずかなり驚いてしまった。
「いや……その……、別に襲われないなら襲ってもいいかと……」
 自分でも何を言ってるのかさっぱり意味が分からないが、今のイツカでは必死に絞り出した答えだった。
 そんな意味不明な回答をしてきたイツカに対し、アモルは優しく笑い
「確かに襲っちゃいけないなんて言ってないからね。でも僕なんかでいいのかい?」
 彼は彼女の行動を否定するどころか賛同してあげた。
 意外だった彼の反応にイツカは目を丸くしてゆっくりと首を縦に振った。
 イツカは嬉しかった。
 変態呼ばわりされてもおかしくはないこの状況で寧ろ彼は彼女のことを心配していたのだ。
 だからこそこんな言葉が出てきたのだろう。
「貴方がいいの。ありがとう」
 多分、イツカは彼の事が好きになっていたのだろう。
 初めて抱いた恋心……。
 恥ずかしすぎて今にも顔から火が出そうだが、色んな思惑をそっと隠しゆっくりとまた腰を落とし始めた。
 今までも自分よりも体格の大きな殿方を相手にすることは間々あった。
 だがそれでもアモルのソレはイツカには少々大きすぎた。
 ただ腰を落としていくだけでは突っかかるようになり、イツカは少し腰を浮かせて今度は一気に体重をかけた。
 ジュッという音と共に先程よりも少しだけ深く突き刺さり、また腰を上げて落とすとさらに奥に……といった具合で少しずつ奥へ奥へと進んでいった。
 その度にイツカは今まで感じたこともない快感に襲われていた。
 息は今まで相手にしてきた誰よりも早く上がり、自分の秘部も気が付けば下にいるアモルの股間辺りの毛まで湿る程濡れていた。
 そしてパチュンという音と、少し今までよりも艶めかしくなったイツカの声が彼女の最深部まで彼がたどり着いたことを告げた。
 荒い息遣いのイツカに対し、ただただ身を任せていただけのアモルはそれほど息が上がっていなかった。
「ね、ねえ……私の好きなように動いてもいい?」
 この状況でもイツカはアモルにそう訪ねた。
 勿論アモルも首を縦に振って答えた。
 少しだけ妖艶に微笑むとイツカは腰を一気に持ち上げた。
 ジュポッという音と共に今まで沈み込んでいたアモルのモノが半分ほど姿を現し、すぐにジュプッという音と共に割れ目の中へと飲み込まれていった。
「ンアッ……!」
 思わず甘い声が出るがもう隠す必要はない。
 快感に身を委ね、少しずつ動きを早くしながら彼のモノを味わっていた。
 ようやく息の上がってきたアモルとは違いイツカは既に今にもイってしまいそうな状態だった。
 今まで性奴隷としていろんな男の相手をしてきたイツカにとって相手よりも先にイクのは彼女のプライドが許さなかった。
 そのため今度は腰を一番深くまで落とし、体を前後左右に滑るように動かして複雑な刺激を彼に与えた。
 すると今まであまり反応のなかったアモルからも甘い吐息が漏れるようになり始めた。
 体を前後に揺らすとアモルが顔を顰める。
 しかしそれは痛いという意味ではなく全く逆の意味だ。
 立派なモノを持った相手にほどこの手は有効で、逆に自分への刺激も大きくなるが相手に与える刺激はそれの倍程度だと思っていて間違いないだろう。
「ハァ……ハァ……流石に、もう出そうだよ。一旦抜いておくれ」
 そう言い、アモルは自分の限界が近いことを彼女に知らせた。
 が、途端に動きを早くした。
「じゃあ、このまま中に出しちゃえば? 気持ちいいわよ?」
 秘部から漏れるクチュクチュという卑猥な水音がさらにアモルに快感を与えるが
「だ、ダメダメ! それは……! まずいよ!」
 アモルは必死に懇願していた。
 今もなお上で動き続けるイツカを降ろそうとするが
「駄目。私の好きにしていいって約束でしょ?」
 そう言い、その前足を振りほどいた。
 口約束である上に正確にそう言ったわけではないのにも拘らず、アモルはただ必死に駄目だというだけで手を出さなくなった。
 彼女が自分からどいてくれることを信じているが、さらに腰の動きを早くし、さらに縦の動きも再開した。
 たまらない快感をアモルは必死に耐えようとしているがもう限界は近いだろう。
 彼の荒い息もだんだんと大きくなり、イツカの声もだんだんと大きくなっていく。
「あぁ! 駄目、出る!!」
 彼がそう言った瞬間、イツカは素早く身を引き、間一髪のところで彼のモノを秘部から抜き出した。
 途端に彼の精液が堰を切ったように吹き出し、イツカとアモルのお腹を白く染めた。
「ハァ、ハァ……。意地悪なんだね……君」
 間一髪中に出す事を避けられたアモルは上で疲れ果ててアモルに抱きついているイツカにそう言った。
 彼女も引き抜いた時が限界だったようで彼の上でまだ脈打つ彼のモノと自分の心地良い絶頂の余韻に浸っていた。
「貴方は私が思っていたよりも優しい人ね……」
 そう言いまだ荒い息遣いのアモルの唇に軽くキスをした。
 お互いの息が整うまでそのまま二人、身を重ねていたが
「まだお相手願えますよね? アモルさん?」
 そう嫌に意地悪そうな顔をしてイツカは言った。
 アモルは少し苦笑いをしながら
「あー……。約束しちゃったし仕方ないかな。え~っと……そういえば名前を聞いてないや」
 そう言うとイツカはクスクスと笑いながら
「イツカよ。貴方、名前も知らない相手とヤってたのね」
 そう言った。
 これにはアモルも恥ずかしくなり、前足で頭を掻いて誤魔化していた。
 ある程度息が整うとイツカはまた起き上がり少し萎んだアモルのモノを器用に前足で挟み、爪を立てないように上下に動かした。
 これも以前の経験。
 こういった事なら恐らくそこらの女性よりも経験が豊富だろう。
 リズミカルに上下させると肉球がほどよい刺激を与えるのかみるみるうちに元の元気さを取り戻した。
「貴方、結構若いのね」
 少し嬉しそうに微笑むとアモルはそっぽを向いて顔を真っ赤にしていた。
 一人で工場の経営や店舗の管理をしていたため年相応ではない落ち着き方をしていた彼が若いと言われることはなかったため、アモルとしてはとても嬉しかったのだ。
 だが、元気を取り戻すとイツカはすぐにソレを自分の秘部へ滑り込ませた。
 不意打ちでアモルはかなり動揺していたが、彼女はお構いなしに腰を一番深くまで落とし、先程よりも動かしやすくなった膣内を彼に堪能させていた。
 今度は二人とも気持ちよくなれるように上下に何度か動き、その後一番深くまで挿れて前後に動かしたりと交互に繰り返していった。
 大体同じぐらいのペースで二人の息が乱れ、だんだんと興奮も最高潮に近づいていた。
「も、もうそろそろ出そう……」
 アモルが荒い息のままそう呟くとイツカはニヤリと笑った。
「じゃあ今度こそ……中に出してもらおうかしら?」
 そう言い、返事を聞くよりも早く、腰の動きをさらに妖艶に、早く動かし始めた。
 一切緩めることのない激しい行為に身の危険を感じたのかアモルが手を出そうとするが、イツカがそれを止めた。
「最後まで……一緒に味わいましょう?」
 そのまま何か言おうとしたアモルの口へと舌を滑り込ませ、互いに舌を絡めるディープキスをしながらさらに動きを早くしていった。
 そして彼が苦しそうに顔を歪めると彼女の中へと熱いものが溢れていくのが感じられた。
 流石に三度目ということもあり量は少なかったが、それでも熱く絡みつくような感覚は彼女の一番奥深くで脈打つ彼のモノと一緒に暴れていた。
 そして口を離すと二人の唾液が混ざり合った細い橋が架かり、スゥと儚く消えていった。
 そんな幻想的な景色とは裏腹に彼らの息遣いは尋常ではないほどに荒くなっていた。
 ただでさえ酸素が足りないのに二人で息を通わせていたのだ。
 そのまま突っ伏すように彼にもたれかかり、イツカは少し体を震わせながら互いの心臓の音を聞いていた。
「ハァ、ハァ……その……責任は……」
 先に口を開いた彼は必死に酸素を吸いながらそんなことを喋り始めた。
 恐らく、彼女は孕んでしまっただろう。
 その責任を取ると言いたいのだろうが、息が荒すぎて言葉が途切れ途切れになっていた。
 そんな様子を見てイツカはどうしても笑わずにはいられなかった。
「取ってくれるんだ……嬉しい。でもね、私は子供が出来ない体なの」
 そう彼の耳元で囁いた。
 それを聞くと彼は安心するどころか心配してくれた。
「そうなんだ……ごめんね、辛いことを思い出させて」
 イツカはそんな彼の言葉を聞き深く息を吸い込んだ。
 彼になら言ってもいいと思えたから……。
「私の初めては、私が女として生きていけるようになる前……まだ少女の時に奪われたの。
幼すぎた私にはそれが精神的にも肉体的にも大きな負担になってね……もう、女として好きな人とも生きていけなくてもどうでも良くなっちゃってたの。
だって、そんな経験が原因で私の春は訪れる前に失っちゃったから。
好きな人が現れても、その人と子供を残すこともできなくなっちゃってたの。
だから……ありがとう」
 そう言い、彼の頬に軽くキスをした。
 すると彼は起き上がり、上に乗っていたイツカを横にそっと横たわらせた。
「なら……好きな人と子供は残せないかもしれないけど、その分、君がその人に愛情を貰えばいいんじゃないかな?
逆に君が子供に注ぎたかった愛情をその人に注いであげればいいんじゃないかな?
折角なら、僕はそれくらいで君の幸せを見失わないでもらいたいな。
だって君は……強いんだから」
 彼女の目を見て真っ直ぐにそう言った彼の瞳はとても優しかった。
 あまりにも嬉しい言葉に彼女は言葉を失って、ただただ泣いていた。
 『まだ、幸せを願ってもいいのか』と。
 それから暫くし、ようやく彼女が落ち着いた頃にひとまず二人でシャワーを浴びることにした。
 二人のお腹の辺りにはまだ精液がぴったりとくっついているのでこのまま眠るわけにはいかないからだ。
 シャワーを浴び、綺麗になって部屋に戻るとイツカは
「そういえば、さっき責任をとってくれるって言ったわよね?」
 そう意地悪な笑顔を見せてアモルに言った。
「うっ……。結婚とかはできれば……控えたいな」
 アモルの顔はどう見ても冗談を言っている顔ではなかった。
 そんな彼の表情を見てイツカは少しだけ笑い
「じゃ、あと三回は付き合ってもらおうかしら? それでチャラよ」
「……善処します」
 そんな取引を行った。
 今度は二人でベッドに潜り込み、イツカにアモルが覆い被さった。
 が、今一歩先導権はアモルではなくイツカにあるようで好きなようにヤられたようだが……。
 そして甘い夢心地の中、イツカはふとこんなことを心の中で呟いていた。
 『こんなイジメ甲斐があって優しい人だから……私は好きになっちゃったのかもしれないわね……』
 そうして今度は深い夢の中へと沈んでいった。
 今までとは違う、優しい優しい夢の中へと。

少女デビュー 


 次の日、アモルは昼過ぎまで眠っていた。
 結局彼女、イツカとの約束を守ってきちんと三回シてあげた頃には空は白むどころか東の空は明るくなっており、ポッポやマメパトが活動を始める時間帯にまでなっていた。
 そして当の彼女はというと既に起きて活動を始めているのかアモルの横には人が眠っていた跡だけが残っていた。
 『あれだけハードなことをしたのに……元気なものだなぁ』
 改めて彼女の奴隷としてのタフさを目の当たりにし、一人苦笑いしながら昨日の晩、やりかけたまま終わっていなかった仕事を終わらせるためにひとまず机に向かった。
 若いと言われた彼だったが、こう何回も搾り取られては腰やら股やら玉やらがズキズキと鈍い痛みを発するようになっていた。
「やっぱり、歳だなぁ」
 そんな事を呟き、眼鏡をかけて残りの余白を埋め始めた。
 一方、イツカの方は一眠りし彼よりもおよそ2、3時間早く起きていた。
 ひとまず大きく伸びをし、僅かに残る気怠さに愛しさを覚えながらベッドを降りた。
 そして部屋から出る前に
「おはよう。私の王子様」
 そんなことを耳元で呟き、頬にキスをしたがやはり起きる気配がなかった。
 彼女からすれば彼はさながら絶望の闇から目覚めさせてくれた白雪姫の王子様だ。
 今は立場が逆のため彼女のキスでは目覚めなかったのだろう。
 もっとも、ただの頬へのフレンチキスだが。
 部屋を出た彼女はまず庭へと歩いて行った。
 昨日と同じように廊下やらはメイド達が忙しなく動き回っている。
 それを見ていると元奴隷の身で何もしていない自分が恥ずかしく思えてきてしまう。
 が、当たり前だが彼女たちに手伝いたいと言ったところで何もさせてはもらえない。
 一応、彼女達はまだ『客人』であるからだ。
 そこでふと思い出す。
 昨日部屋に入った時に誰か知らない男性がこの屋敷の中に居た。
 本来なら有り得ない状況だが、メイドの人たちもごく普通に接していたことを冷静な今なら思い出せる。
 そこで近くにいたメイドの人に聞いてみた。
「失礼、この屋敷にはアモルさん以外にも誰か住んでいるの?」
 そう質問するとメイドは頷き
「そうですね。正確には住んでいるというわけではなく、居候という形ですね。
此処に居候で住んでいる人達は貴女や私と同じく、元は奴隷だった人たちですね」
 そう詳しく説明してくれた。
 なんでもここに住まわせているわけではなく、居候だとする理由はアモルにあるようで、『最終的には一般社会に、一般人として出て行って欲しい』という願いが込められているそうだ。
 だが今まで奴隷だった者がそう易易と世間に出て行けるわけもないという現実問題も分かっているため、それまでの間という緩い条件でここに住んでいるそうだ。
 実際の所、完全な社会復帰は難しいようで、殆どの者がここに住むか、出て行ったとしてもアモルの所で働いているのが現状だ。
 きちんとした勉強をできないまま奴隷になっている者が多いためなかなか普通の会社は雇ってくれないのだ。
 更に言えば彼らは一時は人として扱われていなかったため、奴隷としての期間が長かった者は戸籍自体が無くなっている者もいる程だった。
 ようやく社会復帰できたと思えばこれが現実。
 決して彼らが悪いわけではないのにも関わらず、一度奴隷になっただけでもう二度と真っ当な人生を歩むことができないのだ。
 だが、先程も言ったように、そういった人が全てではない。
 アモル以外にも元奴隷だった人などに優しい人はいるのだ。
 そういった人たちは彼らのような訳ありの人間とも真摯に話し合ってくれる。
 しかし、もちろんそこからは一般人と同じ。
 ただ土俵を用意してくれるだけなので後は本人の頑張り次第だ。
「てことは、ここに居た人って従業員だったのね」
 そう言うとメイドも頷く。
 ならばかなり失礼なことをしてしまった気がする。
 その時出会ったジュプトルはかなり体格が良かったので思わず退いてしまったのだから。
 今考えれば工場で働いているのならいい体格になるのは有り得なくはない話である。
「よお。何の話をしてるんだ?」
 そこで不意にそんな声が聞こえてきた。
 彼女の声は覚えている、というよりも覚えやすい。
 先日、アモルに食ってかかったルカリオだ。
 女性ではあるがその鍛え上げられた体躯はそこらの男性よりも強靭な肉体になっている。
 そのためか声も女性の中ではかなり低い部類に入る声になっているためいきなり声をかけられたのなら怒鳴られたのかと勘違いしそうなほどだ。
「別に。ただの世間話みたいなものよ」
「お前世間知らねぇだろ。まあアタイもそうだけど」
 的確なツッコミを入れてくるあたりを見ると彼女はやはり物事をはっきりと言わないと気が済まないのだろう。
 そのままメイドは消え去るようにいつもの仕事に戻っていた。
 二人はそのまま少しの間、雑談をすることになったが
「そういやお前、昨晩はどこで寝たんだ? メイド共が一人いないって慌てふためいてたぞ?」
 そう質問されドキッとする。
 そりゃあ誰も知るはずがないだろう。
 アモルに招待されてそのまま彼の部屋で秘め事までしたのだ。
 言えるはずがない。
 そうやってまごまごしていると、彼女は勘が鋭いのか
「まさか……!! あの野郎に襲われたのか!?」
 と勝手に一人で解決し、怒りを露わにしていた。
 半分正解だが半分不正解である。
 確かに彼と交わったわけだが、正確には襲われたのはアモルの方である。
「バッ……! バカじゃないの!? あの人に襲う勇気があるように見える?」
 そう言い、アモルのことを擁護する彼女の顔はほんのり赤くなっていた。
 それを見ると彼女は更に怒りを露わにしていた。
「やっぱぶっ殺す! 奴隷だったとはいえ乙女の純情を!!」
「奴隷だった時点で純情も糞もないでしょ!!」
 そんな二人の謎のやり取りが行われていた。



――――



 一方、アモルの方はようやく仕事を終えて一息ついていた。
 するとコンコンとドアをノックする音が聞こえ
「ご主人様、失礼します。お部屋の掃除に参りました。それと……」
 メイドがそこまで言いかけると、後ろから可愛らしい姿がピョコリと飛び出した。
「彼女がどうしてもアモルさんの部屋に行きたいって言って私の後ろを付いて来たので……お邪魔ではないですか?」
 恥ずかしそうにメイドはそう言うとアモルはニッコリと笑って答えた。
「邪魔なんてとんでもないよ。好きなだけ見て行ってくれて構わないよ」
 そう言い、既に部屋の中を歩き回るイーブイに向かって言った。
 メイドの方は深々と頭を下げて急いで掃除の方に取り掛かっていた。
 このとても可愛らしいイーブイの名はシオン。
 彼女は感情こそ表に出してはいなかったが、目に映るもの全てに興味津々のまさに仔犬のような子だった。
 掃除が終わるまでは流石に後を付いて回られたり、部屋の中を自由に歩かれるとメイドの人が可哀想なので、アモルはシオンの首元を咥え、ベッドの上へと避難していた。
 動き回ろうとしているシオンを抱き抱え、終わるまでの間拘束していると
「精液の匂い……」
 そうボソッと言われてギクリとする。
 イーブイはヨーテリーやガーディー程ではないにしてもかなり鼻がいい部類だ。
 昨日自分がした行為を忘れていたとはいえ、ここまで的確に指摘されるとその気がなくても間違われて当然なような気がした。
「えっと……これはワケありで……」
 こんな小さな子に内容を包み隠して説明しようとしたアモルは阿呆だが
「私とシたいの?」
 単刀直入にこんなことを聞いてくるこの子もこの子だ。
 そんな気は毛頭無い。
 だが、まさかこんな子供にそんな事を振られると思っていなかったのでアモルは変な汗をかいていた。
 先程から必死に掃除を続けてくれているメイドにバレやしないかとアモルはヒヤヒヤしていたが、思いのほか彼女は小声で彼にしか聞こえないように喋るのでその心配はないようだ。
 大きく動けばバレてしまうので彼は彼女の耳元で
「そんなつもりがあると思うのなら君は何故逃げないの?」
 アモルはわざとそう聞いた。
 以前のイツカの時もそうだったが、アモルは質問をする時に必ずこのように捻った言い方をする。
 試すというよりはその人の本心が知りたいからだ。
 大体はそこの受け答えで分かる。
 今までの経験でアモルが導き出した答えだ。
「別に逃げる必要なんてないからかしら。強姦みたいなのが好きなら襲えばいいし、純愛が好きなら聞いてくれれば喜んで答えるわ」
 とまあこんな感じで受け答えでその子がどんな心の傷を負っているのかがよく分かる。
 彼女の場合は恐らく、今までで一番大変なパターンだろう。
 しかし、そこも含め普通に生きていけるようにしたいのがアモルの考えだ。
 勿論、どんなに大変だろうと彼女の心の傷も癒すつもりだ。
「申し訳ありません。部屋のお掃除が終わったのでベッドの方を交換させていただきますね」
 気が付くと彼女は既に掃除を終え、替えのシーツを持ってきていた。
 シオンの方に匂いがバレたのはかなり気まずかったが、メイド達にバレる分には特に問題はない。
 彼女たちも耳が早いので恐らく昨晩のイツカの件は回っているだろう。
 それに余談ではあるが彼は本人が望むのであれば慰みの手伝いぐらいはしている。
 元々性奴隷として回されていたような人もいるため、既に生活習慣みたいになっている者もいるからだ。
 そのため夜に関しては今だに若々しいのであった。
 話は戻り、メイドは素早くシーツを替えると汚れたシーツを持ってこれまた深々と頭を下げて部屋を出て行った。
「そういえば……君はどうして僕の部屋に来たんだい?」
 一番気になっていたことをメイドがそこにいないのを確認するとシオンに対して聞いてみた。
 昨日一日もただメイドの後ろを付いて回っていただけのようなのでいきなりアモルの部屋に行きたいという思想に至ったのかが分からないのだ。
 というよりもこの子は発言も少なく、感情もあまり表に出さないのでなかなか掴み所がない。
「私は殿方の相手をするのがお仕事なので」
 それが彼女がここに来た理由だろう。
 とは考え難い。
 彼女の行動は先程の受け答えからある程度判断できる。
 今言った彼女の言葉には中身がない、つまり彼女の本心ではないのは言うまでもない事だろうがそういうことだ。
 本心から奴隷でいいと思っている人は決していない。
 それはそれでいいという思いではなく、それでいいという諦めだからだ。
 そこでアモルは小さく笑い
「なら、僕の仕事を見てみるかい?」
 そう言った。
 すると彼女は耳をピクンと上げて反応した。
 今まで感情というものが感じられなかった彼女から初めて反応があった。
「み、見てみたいです!」
 そこにあった顔は今までの何を考えているのか分からない感情無い表情ではなく、普通の子供と変わりのない表情だった。
 そこはまだ純粋な子供のままでよかったとアモルはホッとし
「じゃあついておいで。結構広いから迷子にならないようにね」
 そう言い、部屋を出て行った。
 後ろをちょこちょことついて回る姿はメイドの後ろをついて回っていた時と全く変わりなかった。
 所詮は子供、奴隷として心を閉ざしてしまったとしてもまだまだ知らない事がたくさんある。
 その好奇心は必ず彼女の心の傷を癒す手助けとなってくれるだろう。
 そう信じ彼は歩幅の小さな彼女に気遣いながらいつもと同じように仕事のために工場の方へと回った。



――――



「みんなお疲れ様! ちょっと休憩にして集まっておくれ」
 工場に着くとアモルは真っ先にそう言った。
 彼の工場は恐ろしく広い物だ。
 工場の生産ラインだけでも4、500人体制で生産できるほどの機器が揃っており、在庫管理や製品化の最終工程も何百人態勢で行っている。
 彼の工場がこの町のみならず、近場の町にまで販売を行っている理由の一つだ。
 もう一つ理由があるとすればごく普通に人気があるからでもある。
 彼の到着に気付くとみんな今やっている作業を中断しアモルの元へやってきた。
「お疲れ様です。ん? アモルさん。後ろの女の子はどうしたんですか?」
 アモルの元へ歩いてきた従業員の一人がアモルの後ろでキョロキョロとする女の子の存在に気が付いた。
 まさに目に映るもの全てが新鮮、といった感じだ。
 彼女にとってはどこにでもあるような工場の風景も新しい発見なのだ。
「まあ色々あってね。彼女は工場見学だと思っててくれるといいよ。」
 アモルがそう言うと察してくれたのかそれ以上は聞かなかった。
 そして従業員全員が集まったのを確認すると
「よし! それじゃあ今からお給料とボーナスを渡すね!」
 そう大きな声で言った。
 すると返ってきたのは喜びの声ではなく
「またですか!? だから給料だけでいいって!」
「あんだけお金ないとか言われてるくせに!」
 呆れられたお叱りの声。
 前にも言ったが個々の従業員は奴隷か内情を知っている上でアモルに協力している者だ。
 当たり前だが奴隷は安くはない。
 奴隷一人とはいえその後様々な使い方のできる奴隷は裏市場でも高値で取引されている。
 大体は人権が無いのをいいことに不当労働や性欲処理として使い捨てられるか、使い終わった後二束三文でまた売りに出されるのが関の山だ。
 アモルはこれほどの大工場を経営しているが、それを運営するためには同時にそれだけの従業員を雇わなければならないということだ。
 勿論それだけの工場であれば材料となる資材も大量に必要になる。
 さらには工場を動かすだけでその維持費が掛かる。
 案外会社というものは大きくなればなるほどお金が掛かる物なのだ。
 さらに言えば彼はそこからできた利益を貯めて奴隷を買い取っている。
 それが原因で本来ならもっと裕福な暮らしができるだろうが、貯金は雀の涙ほどだ。
 理由の一つとしてはこうやって何かと従業員にお金を払いたがる所だ。
 アモルとしては普通の扱いをしたいらしい。
 だが、そうやってお金を払えば払うほど自分たちのような奴隷を助けられなくなることを彼らは知っているため受け取りたがらないのだ。
 給料として必要な分の給料は既に貰っているため既に人並みの暮らしを送ることができる。
 そのため、居候組は勝手に余ったお金を全員で一纏めにし返そうとするがアモルが頑なに断るのだ。
 『いつか普通の生活が出来るようになった時に先立つ物が必要になる』それがアモルの考えだった。
 しかし現状は助け出してもらえただけでも十分という考えが殆どだった。
 事実、アモルという人がいなければ恐らく彼らは遅かれ早かれ摩耗するようにその尊い命をゴミのように扱われ、浪費されていただろう。
 そのため今日もようやくの給料授与兼休憩は一対数百の口論になっていく。
 こればかりはアモルも退かないが勿論物量的に押し負ける。
「あんたは何も知らないふりしてふんぞり返ってていいんです! これは俺達の勝手な恩返しなんですから!」
「だから……僕がそれじゃ納得できないんだよぅ。受け取っておくれよぅ」
 終いにはアモルが泣きそうな顔で駄々をこねる、これもまたいつもの光景だ。
 勿論、一人として受け取らない。
 ここで受け取れば後々この人は絶対に受け取らないということを知っているからだ。
 が、それは全員ではない。
 数名はアモルに感謝し受け取っている。
 これはそこそこの事情があるため深くは語らないでおこう。
 それは此処で働く者たちも重々理解している。
 そのため彼らを責める者はいない。
 それこそお門違いなことだ。
 先程も言った通り『勝手な恩返し』だからだ。
 受け取った者から仕事に戻っていき、この賑やかな休憩時間は終わる。
 いつものように残りの賞与袋を置きっぱなしにして工場を後にするが今回は話が別だった。
 とぼとぼと帰る彼の後ろにはクスクスと笑うシオンの姿があった。
「はは……恥ずかしい所を見られちゃったね」
 口ではそう言ったが、アモルとしてはとても嬉しかった。
 アモルはいつもこうなることを分かっていて、わざといつも通りの風景を見せた。
 するとどうだろうか、彼女は間違いなく感情を見せてくれた。
 そこでアモルは一つ仮定した。
 彼女は奴隷としてこれほどに幼い少女が生きていくには感情を失わなければ生きていけない。
 しかし、それが違うのならばもっと根底に彼女がこうなった理由があるだろう、と。
 ここまで予測できれば後は詮索するのは彼女に失礼だ。
 後は部屋で二人でゆっくり紐解いていけばいい。
 それからはアモルはいつも通りの日常を彼女に見せた。
 次に向かったのは工場裏の玩具屋本店。
 ここでもアモルはお人好しを怒られ、しょんぼりとして店を裏口から出る。
「あなたって社長なのに威厳も何もないのね。お仕事はしてないの?」
 鋭い指摘を受け、また言葉が詰まるが今回はズバリとした指摘だけではなかった。
「仕事は……ごめんね。僕がこんな事を言うのはどうかしてるかもしれないけど……僕は、もう真面目に働くということをしたくないんだ」
 彼の言っていることは世界中の引き籠りを敵に回しても仕方のないような言葉だが、彼の眼には感情というものが見て取れなかった。
 その後、彼は初めてその陽気な表情を曇らせた。
 そして次第に歩く速度を緩め、そして立ち止まった。
「聞いてはいけない事だったかしら?」
 心配からかどうかはその顔から読み取れなかったが彼の事を心配しているのは間違いないだろう。
「いいや。そういう訳ではないよ。ただ……僕にだって色々と詮索されたくないことがあるっていう……いや、それも言い訳になっちゃうね。分かっているんだ、いつかは向き合わないといけない事だって」
 そう彼女へ向けて放たれた言葉はどちらかというと自分自身に言い聞かせている言葉のようだった。
 それだけ話すと暫くの沈黙の後、彼は何事もなかったかのように元の明るさを取り戻していた。
 そのまま彼はメイドたちの働きを労い、自室へと戻り始めた。
「見つけた! いやがったなこのド腐れ変態野郎!!」
 それをこんな台詞で引き止める人は一人しか思いつかない。
 が、アモルが振り返るよりも先にルカリオの鉄拳が彼の右頬を捉えていた。
「ちょ……!? ちょっと!! ご主人様に何してるんですか!!」
 一瞬の出来事でまたもアモルの巨体が吹き飛ぶまで何があったか理解できなかったが、メイドたちが駆けつけてルカリオの身動きをなんとか封じていた。
「早く治療を! とりあえずアモルさんの部屋に運び込んで! 私たちは氷嚢とか準備するわよ!」
 そう言い、何人かのメイドはすぐにその場を去って行った。
 アモルの方も複数人でなんとか担ぎ上げ、自室へ運ばれていった。
「な、何の騒ぎですか? なんかすごい音が聞こえましたけど……」
 一室からオオタチが顔を出した。
 アモルが壁にぶつかった際の大きな音で驚いて飛び出してきたのだろう。
「あの人が何故かアモルさんをぶん殴った」
 そう言いシオンは麻痺わざをかけられて無理やり大人しくされたルカリオを指差した。
 この騒動でシオンはただ茫然としていたが、ようやくアモルが自室に運び込まれたことを思い出し、彼女も挨拶もなくその場を後にした。
「あの人、此処に来てから騒ぎしか起こしてない気がするんだけど? 一体何を考えてるのか……」
 そんな感じで彼女もやれやれといった感じで首を振り、部屋に戻って行った。



――――



 それから迅速な対応があったため、アモルはあまり頬も腫れずにメイドたちに看病されていた。
 とはいえ不意打ちだった上に普段鍛えていないアモルは完全にダウンしていた。
 ひとまずは氷嚢を頬に当てられたまま放置されていた。
 意外だが、彼女たちメイドも付きっきりになれるほど暇ではないようだ。
「失礼します」
 そう言い入ってきたのは他でもないシオンだったが、当のこの部屋の主人は未だ伸びきったままだ。
 ひとまず彼の元へと歩いていき、頬に当てられたままの氷嚢を外してあげた。
 あまり長く当て過ぎれば凍傷を起こしてしまう。
 そう思い、氷嚢を床に置くと一人のメイドが部屋に入ってきた。
「ご主人様~気が付きました~? ってあら? 何だ、見てくれてる人がいるのね。それじゃ私はこれで」
 扉を開けて中を確認するとアモルのすぐ横にシオンがいることに気が付き、そう言ってすぐに出て行ってしまった。
 特に予定もなく、ここに居るのが苦というわけではなかったが、勝手にシオンに押し付けて出て行かれるのも少し困るものだ。
 お陰で彼の看病をしないといけなくなってしまったため移動することもできなくなった。
 迅速な対応の甲斐あってか、頬はそれほど腫れてはいなかった。
 しかし、彼は日頃の疲れからかスヤスヤと寝息を立てて気持ちよさそうに眠っていた。
 そんな彼の顔を見ているとシオンは昔の事を思い出していた。
 彼の安らかな寝顔のようにまだ安らかだった頃の暮らしを……。

「さっさと酒を持ってこねぇか!! この出来損ないの糞娘が!!」
 そう言い、大柄なケッキングはまだ幼いイーブイを戸口に向かって投げつけた。
 虚ろな瞳のイーブイは一言も発するどころか、悲鳴も出さず涙も流さずに歩いて行った。
 近くの酒屋に寄り、いつものように碌でもない父親のために酒を買うために。
「あ、あの……お酒をください」
 彼女がそう言うと一人のオコリザルがカウンターから身を乗り出してきた。
「あぁん? ガキに酒なんか売れるかよ。帰れ帰れ!」
 横柄な態度ではあるが、まだ未熟な彼女がお酒を売ってもらえないのは一理ある。
 仕方なく長い耳を垂れて帰路についた。
「ふざけてんのかてめぇは!! 買えねぇなら盗ってくりゃいいだろ! このゴミが!!」
 家に戻れば父にその長い耳を掴まれ、振り回され、血の滲んだ頃にドアに叩きつけられて解放される。
 彼女にとってはいつもの事だった。
 この凄惨極まりない生活を送っているイーブイこそ幼き日の彼女……といっても今から数年前だ。
 シオンにとってはこんな日々でも今に比べれば安らかだった。
 まだ、彼女には心の支えがあったからだ。
「大丈夫? シオンまた怪我が増えてるよ?」
 当時、初恋の相手だったニャルマー。
 もう、彼女は彼の名前も覚えていない。
 印象に薄かったからだろうか? 違う、思い出したくないからだ。
「だ、大丈夫だよ。いつもの事だし」
 少し顔を赤らめながら言うと、いつものように彼は優しく傷を舐めてくれた。
 新しい傷に彼の舌が、唾液がしみてとても痛かったが、それ以上にその優しさが嬉しかった。
 だからこそ彼女は願ったのだろう
「ねえ。お願い! いつか私をお嫁さんにしてくれるんだよね? 今すぐにでも私をあなたのお嫁さんにして!」
 そう言い、今にも泣きそうな顔で彼の胸へと飛び込んだ。
「そ、そんなこと言われても……まだ君は子供だし、僕も御父様のお許しが出るか分からないし……」
 彼はそう言って困っていた。
 そのニャルマーは街一番の富豪の一人息子。
 どんな手を使ってかき集めたのかも知れない怪しい富豪の子供だった。
 そのため世間では彼は世間知らずのバカ息子などと言われていたが実際の所は違った。
 優しく、人の痛みを分かってあげられるとてもいい子だった。
 彼女の唯一の日溜まりはここだった。
 お互い自分の置かれた状況や親が大嫌いで二人逃げてきたこの街が見渡せる丘の上だった。
 入り組んだ山の中腹にひっそりとあるその場所は逃げ込んだ二人が偶然出会った場所でもあった。
 環境は違えど、貧富は違えど、心にある重圧は大差無かった彼女達はすぐに打ち解けた。
 シオンは生まれた時からあの父親にゴミのように扱われ、ろくに働きもしない父親のためにその日のお金を稼ぐために乞食のような事から盗みまで色々とやって生きてきていた。
 一方彼は、成金の父の下で『金で人は動く、金があればこの世は生きていける』そんな事を毎日のように聞かされ、反論すれば体罰、さらには上層教育と称し疾しい金の稼ぎ方をみっちりと教え込まされていた。
 対照的な二人は何処かで惹かれ合うものがあり、気が付けば恋心を抱くほどになっていた。
 『いつか二人共大きくなったらこの街を飛び出して、誰も知らない異国の地で二人だけで暮らそう』
 そう誓い合っていた。
 あと一年、あと一年……毎日その事を考え、必死に笑って生きてきていた。
 ピンと張ったたった一本の糸のような彼女の心の支柱はただそれだけを胸に必死に崩れるのを耐えていた。
 それから一年も経たないある冬の日、その日はこの街の冬にしては珍しく雪の降らない暖かい日だった。
「おい! 糞娘! 良かったな!お前も最後には俺の為になったじゃねぇか!」
 いつも一言目に飛んでくる言葉は罵声か怒声だった聞きたくもない父親の言葉。
 今日は酔っている風でもなかったのにも関わらず、いつにも増して上機嫌だった。
 理由はすぐに分かった。
「コレだ! じゃんじゃん使ってくれ!」
 実の父親に物扱いされた彼女は瞬時に理解した。
 連れてきた数人の男は恐らく奴隷商なのだと。
 今までのように彼の周りにいた飲んだくれの取り巻きのようなチンピラになりきれなかったようなクズではなく、正真正銘本物のクズがやってきていた。
 彼女はヒョイと持ち上げられ、人攫いよろしくそのまま荷馬車に積まれた。
 別にどうでもよかった。
 寧ろそんな父から引き離してくれた彼らに感謝の言葉でも掛けたい程だ。
 毎夜毎夜死にたくなるほど聞かされていた。
「やっぱりこんな糞の役にも立ちゃしない糞餓鬼なんざ、面倒くさいからって貰ってくるんじゃなかったよ! 知ってるんだろ? てめえが誰の餓鬼かも分かったもんじゃねぇって! あぁあ! せめて糞の役ぐらいになりゃな!」
 彼女でなくても気が滅入る。
 だが彼女の場合は寧ろ功を奏した。
 誰の子かも分からない、それはつまり確率ではあるが『こんなの』の血の繋がった子供でない可能性もあるということだ。
 『良かったじゃないの。厄介払いできて更に糞の役には経ったんだから』
 奴隷商共から金を受け取り、卑下たニヤけ面を見せる娘かもしれない子供を売る元父親に心からの皮肉を心の中で言い、うっすらと微笑みを浮かべた。
 もうこの頃にはシオンは人生に、人に、世間に達観していた。
 弱冠6歳の少女が、である。
 『どうせ救いなんかない。皆、己の保身で忙しいのが事実。私だってそうなのだから』
 そんな言葉を自分に言い聞かせた。
「良かったな。あんなクソ野郎から解放されて。いや? 結局オレ達に売買されるんだから同じか?」
 思いもよらなかった場所からその声は聞こえてきた。
 先を荷を引いて走るギャロップとは別の、彼女以外の奴隷たちもいる中で奴隷の監視をしていたヤミラミからの一言だった。
 まだ同情の心があるだけ彼らの方が人だ。
「いいえ。売り飛ばされようが、何されようがあそこよりはマシよ」
 シオンがそう言うと、彼はヘッと笑って
「ませたガキだな」
 そう言った。
 それはもう、ませているという次元を超えていた。
 スれているわけでもなく、本当に心だけはスキップでもするように先へ先へと成長してしまっていたのだろう。
 だからこそ辛かった。
「知ってるか? お前はとある富豪のところに買われることが既に決まってるんだよ。良い事やら悪い事やら……まあ、俺らは商人だ。これ以上は口出しできん」
 そう言い彼女を乗せたばかりの馬車は豪邸の前で止まった。
 その屋敷は知っていた。
 たった一人の心の支えが居る、ニャルマーの逃げ出したい場所、彼の心の闇だ。
「商品は届いたかね?」
 長い髭を揺らし、地面をも揺るがしそうなその巨体は歩いてきた。
 ニャルマーの父親だ。
 私腹を肥やして自分自身も肥え太ったのだろう、普通のブニャットの数倍はありそうな肉ダルマと化していた。
「ブニャットじゃなくてただのデブじゃん。どうすればそんなに太れるのよ」
 シオンが毒を吐いてみせると彼女の奴隷の証してして付けられた首輪をその肉塊は器用に足を伸ばして引っ捕まえていた。
「こんな薄汚れたゴミを何故うちの倅は選んだのか……やはり目を覚ましてやる必要があるな」
 首輪を握りこまれたまま地面に足を付かれたせいで体は地面にミシミシといいながらめり込むようだった。
 首の骨が折れそうなほど曲がり、呼吸もままならないままだったが
「お客様、お客様! 流石にそれ以上やると死んでしまいますぜ!?」
 そう言い彼女が現在危ない状態であることを促した。
「おお! 流石に死んでもらっては困るな。商人紐をくれ。尻尾で連れて行こう」
 そう言い、ようやくシオンは苦しみから解放された。
 紐を受け取り、署名をして荷馬車が過ぎるのを見届けるとブニャットはすぐさま歩き出し、屋敷まで彼女を引いていった。
 恐らく、その時の彼女は少しだけ心の中で彼が助けてくれたと思っていたのだろう。
 この父親をなんとか言いくるめて自分を助けてくれたのだと。
 だが人生とは面白い。
 一度悪い方向に転がり出すと後は坂を駆け下りていくように悪いことは重なっていくのだ。
「帰ってきたぞ。お前が欲しがっていた物も持ってきた」
 その言葉は無駄に広い大広間によく響き、お付きのメイド数名と彼が部屋から飛び出してきた。
 彼の顔には驚愕という文字が浮かんでいるようだった。
 まあ、総都合良く彼が白馬の王子のように助けられるはずはない。
 お互い密かに会っていたのだから。
「な……なんで……」
「私が気付いていないとでも思っていたのか? どうだ? 金があれば全て好きなように動かせる。ほら、好きなんだろ? 好きなだけ『好きなようにできる』んだ。金があればな」
 クズここに極まれり、といったところだろうか。
 だが、その血は争えないようだ。
 すっぱりと断るべき場面で彼は迷っていた。
 その時点で彼女の中にあった最後の一つ、彼女をまだ人たらしめていた最後の唯が外れた。
 『あぁ、結局こいつも私の体が目的で、境遇なんかは後回しのそこのクズの血が通った模造品なのか』と……。
 そこで同時に彼女は安堵した。
 どうやら自分の父親は自分は一番忌避したあいつではないことがこれで確証になったからだった。
 未だ何も答えを言えずに口をパクパクしながらただ父親と彼女を交互に見ていた。
「好きにすればいいんじゃないの? 私、奴隷なのよ?」
 もうどうでもよかった。
 彼女は後ろを振り返り、尻尾を振り上げてお尻を見せた。
 結果は既に分かっていた。
 彼は何を考えるよりも早く、彼女に覆い被さりただ腰を振ることだけを考えていた。
 『信じた私が馬鹿だった……。この世に信じられるものは何一つない。それは私自身を含めて……』
 頬を伝う一筋の涙は悔しさでも、処女膜が破れた痛みでもなく、彼女の最後の感情、自分自身への決別だった。



――――



 すっかりと日も沈み、夜の帳が降りた頃にようやくアモルは目が覚めた。
「あら? もうすっかり日が落ちちゃってるなぁ……。ごめんね。今までずっと看病しててくれたんだろ?」
 そう言い、すぐ横にいたシオンの頭を優しく撫でた。
 目が覚めたアモルは自室に居ることに気付き、大体何があったか把握したようだ。
 以前にも暴走する奴隷がいた事が多々あり、その時も何度も気絶させられたりはたまた命を落としかけたり……と色々あったせいでこういったことには既に慣れていた。
「別になんとも思ってないわ。勝手に任されただけだから」
 口数の少ない彼女の感情を読むのはとても難しい。
 アモルにとって彼女の感情の変化を探すのは砂漠で砂金一粒を探すようなものだ。
 子供独特の何にでも興味津々という所以外になかなか変化を見いだせないでいた。
 しかし、お陰で気付くことができた。
「君は……何を信じて生きているんだい? 何を糧に生きているんだい? 何を夢見て生きているんだい?」
 恐らく、彼女ぐらいの年齢の子なら様々に悩む質問だろう。
 だが彼女は表情一つ変えず
「何も信じないし、何も得るものなんてないし、何も思わずに生きているわ。考える必要なんて奴隷にあるかしら?」
 そう言い切った。
 ここまでサバサバとした女の子が何処の世界にいようか。
 メルヘンチックなロマンを抱いて、それを諦めずに心の底に沈めた女性*1もいたというのにこの子にはそういったものが一切なかった。
 自分自身にさえ見切りをつけたようなその言葉はアモルは決して見逃さなかった。
「なら今から考えればいいさ。もう奴隷じゃない。信じていいし、学んでいいし、夢を持っていい。奪う人なんていないよ?」
 そうアモルが笑って言うとシオンは鼻で笑った。
「奴隷じゃなかった頃に全てを奪われた私はどうすればいいかしら? 『物知り』なアモルさん?」
 彼女には分かっていた。
 答えは決して返ってこないことを。
 それを今まで見てきた中で答えた人など一人も……
「じゃあとりあえず僕を信じてくれればいい。この言葉も信用できないなら信用できるまで僕の事を調べ上げていい。勿論、僕の口からは話さずにこの部屋を自由に見て回ってもらって構わない」
 もう一度ニッコリと笑って答えるアモルの顔を見て彼女は初めて自分の心が揺らいだのが自分で気付くことができた。
 そんな事を言う人が今までいなかった。
 現に彼も詮索されたくない過去があると昼に語っていた。
 だからこそこんな答えが返ってくるとは到底思えなかった。
 だから
「一つだけ……一つだけ答えて欲しい、の」
 震える声で彼女は必死に声を出していた。
 今より幼い頃に捨てたはずの……その時の答えを聞きたくて。
「私が、例えどんな容姿だったとしても、例えどんな待遇の人だったとしても、どんなに貧しかったとしても……そういうのを全部、全部考えた上で……私がシてほしいって言ったらするの?」
 彼女は必死に絞り出した声でそう言った。
 できれば望まぬ形の返答が欲しくない。
 そんな中、彼の答えは
「勿論。但し、君が本当に心の底から望んでいるのなら。心にもない事をもしも言ったのなら僕は怒るよ」
 こういったものだった。
 答えは聞くまでもなかった。
 既に彼女の頬には一つの筋ができていた。
 何時かも覚えてないほど遠く遠くに既に置いてきたと思っていた物はこれほどにも近くにあって、とても熱かった。
 久し振りに湧き上がった感情の嵐は堰を切って溢れた。
 泣きながら笑い、ニコニコと笑うアモルをこれでもかというほど前足で小突いた。
 アモルにとってはその全てが愛おしく、ただただ静かに見守っていた。
 子供が、子供に戻れた瞬間だった。
 気が済んだのか落ち着きを取り戻したシオンはベッドに飛び乗り
「ねえ、アモル。私を抱いてくれる?」
 恥じらいを含んだ表情で彼女はそう言った。
 するとアモルもニッコリと笑い
「お安い御用さ」
 そう言って彼女を抱き上げ、仰向けに転がった。
 一つだけお互いの思考に相違があったとすれば、彼はただシオンが甘えてきただけだと思っていたことだろうか。
「あら? 抱き上げてくれただけ? さっきは私がシてほしいって言ったらシてあげるって言ってたのに」
 彼の胸に顔をぐりぐりと埋め、その後顔を真っ直ぐアモルの方に向けて言った。
 彼女のその顔は子供とは思えないような妖艶な表情だった。
「あー……そういう意味の『抱いて』だったのね。ははは、参ったな」
 彼にとっては二日連続、更に言えば彼女はとても幼く体も小さい。
 今だって彼の胸にすっぽりと納まっているような小ささなのだ。
 流石の彼でも性欲が湧くような歳ではない。
 するとそんなことを考えているのが見透かされたのか
「あら? もしかして子供扱い? 私はもう12よ? それにそこらの女よりも多くの男を逝かせてきた自信があるわ」
 そう言ってきた。
 『僕と三倍ないぐらいの歳の差があるのか……ちょうど娘ぐらいの歳じゃないか……複雑だなぁ』
 そんな女の子……もとい妖艶な彼女は艶めかしい上目遣いで彼を誘っている。
 質問に素直に答えては見たが、いざとなればかなり複雑なものだ。
 とはいえ一度約束はしている。
「はぁ~あ。分かった分かった。負けたよ。どうぞお好きなご要望を……そういや名前を教えてもらっていないや」
 危ないところであった。
 またしても名前も知らない女性と寝ようとしていたのだ。
 それどころか今度は少女、国が国なら法で罰せられてもおかしくはない。
「シオンよ。名前を言ったのは久し振りね」
 こちらは逆に今まで殆ど名乗らずに色んな男と夜を共にしてきたようだ。
 というよりも同じ種族の奴隷を複数人持っていない限り、名前を覚える必要がないため基本的に彼女達は名乗らない。
 それに大体の場合は勝手に呼びやすい名が与えられるからだ。
 それが定めとはいえアモルはとてもいたたまれない気持ちになっていた。
「要望ねー……。本当に私が好きなようにしていいの?」
 そう聞いてきたシオンに対し、アモルは首を縦に振って答えた。
 それだけ確認すると彼女はするするとアモルの胸を降り、お腹の方に移動した。
 もう大体何をされるのかは予想できたがアモルはただじっとしていた。
「おっきいわね。色んな人を相手にしてきたけどそれよりも大きい方よ」
 既に聞いたことのある褒め言葉を戴いた。
 恐らく、男性の自信をなくさせないようにするために自然と出てくる言葉なのだろう。
 すると彼女の小さな舌が中へと入り、モノを舐めてきたのが嫌というほど分かった。
 少しの間そうやって舐めていると彼女は言った通りかなり上手なようであっという間にアモルのモノは顔を出していた。
 するとシオンはソレにかぶりつき、ジュプジュプと淫らな音を立てて舐め上げた。
 小さな女の子にそんなことをされるだけで背徳感があるのにも関わらず、これほどまでに上手ければあっという間に興奮してしまう。
 全貌を現したアモルのモノは彼女が抱きついても問題のない程の大きさだ。
「それじゃ今度は私が気持ちよくしてもらう番ね」
 そう言ってまた胸の方へと這い上がってきたシオンは胸の上で後ろを向き、アモルの方に小さな秘部を露わにしていた。
 とはいえアモルとシオンでは体格差がありすぎる。
 指は太すぎて使えないし、舌も同様に大きすぎる。
 しかし、どう見ても彼女はクンニを望んでいるようだった。
 小さな彼女の体をヒョイと持ち上げ、口の方に近づけた。
 『なんだか、彼女に悪いなぁ……でも、ここで何もしないのも彼女に悪いしなぁ』
 心の葛藤があったものの、大きな舌で彼女の秘部というよりは下半身をペロリとひと舐めしてあげた。
 ピクンと彼女の体が反り、僅かに甘い声を漏らしていた。
 小さくても彼女は既に女の子ではなく女性。
 ならば彼女を満足させてあげないのは失礼だ。
 アモルはそのまま出来る限り重点的に秘部を舐めてあげた。
 舌は大きすぎて秘部の中までは入らないが、彼女の小さな豆を見つけ、その大きな舌で優しく舐めてあげた。
「ハアァ……ン!」
 すると彼女は大きく反応し、とても気持ちよさそうな声を出していた。
 こうかはばつぐんといったところだろうか。
 そうして何回か舐めていると、次第に唾液とは違う湿っぽさが現れた。
 それは舐めているアモル自身がいち早く気が付いた。
「気持ちよかったかい?」
 そう声をかけて、彼女の体を解放すると、息を荒くしながらアモルの胸にへたりこんだ。
 とても気持ちよかったようだ。
 彼女も満足したし、アモル自身も十分に満足してたため、それでもう良かったのだが
「それじゃあ今からが本番ね……」
 そう言い、彼女はまだ元気なアモルのモノに這い寄った。
 間違いでなければ彼女は本番と言った。
「まさか挿れるの?」
「大きすぎて私じゃ動けないから好きなようにして頂戴」
 どうやら本気のようだ。
 実はこの時、彼女の中で小さなプライドに火がついていた。
 先に逝かされそうになったということが彼女にとっては初めての事だったからだ。
 今まで必ず相手を先に逝かせていたというのに、彼はものともしていないのだからそれはそれで少なからずショックである。
 とはいえあまりにも体格差のあるシオンでは挿れることも、そして動くこともままならない。
 ならば先ほどの言う通りにするというのを有効活用するしかないだろう。
 仕方なくアモルはため息を吐き、壁に背をつけ上体が安定するようにした。
 そしてアモルのモノの上にちょこんと座るようにシオンを持ってきた。
 流石に自分で言い出したことだが目の前に彼のモノを置かれると自分がどれほど馬鹿なことに挑戦しようとしているのかがよく分かった。
「本当に大丈夫なの?」
「いいから! 好きなようにして頂戴!」
 が、彼女も負けず嫌いであるため一歩も退かない。
 仕方なくアモルは彼女を持ち上げ、ちょうど股間の辺りになるように自分のモノの上へと持ってきたが勿論すんなり入るはずがない。
 『私、死ぬんじゃないかしら?』
 そんなことを心の中で考えつつ、彼女は大きく足を開いてモノを受け入れやすくした。
 するとそれが功を奏したのか先端が彼女の秘部に宛てがわれたのである。
 熱いモノが秘部に触れ、若干の恐怖を覚えるが、彼女はゆっくりと深呼吸をし首を縦に振った。
 するとアモルはゆっくりと彼女の体を落とし、後は重力に任せるようにズプリズプリとモノを沈めていった。
 先端の細い部分は綺麗に彼女の秘部をこじ開ける役割を果たし、次第に許容できる範囲を超えたものが膣口を押し広げ始めていた。
 およそ先端が埋まりきる前に彼のモノの先端は彼女の最新部に到達した。
「ど、どう? 結構私の中……すごいでしょ?」
 苦しそうな息遣いでなんとか声を出した。
 が、彼女の言う通り中は恐ろしい程だった。
 小さく、先端しか入っていないが、程良く締まったかと思うと緩まり蠢いているようにさえ感じる。
 恐らく、この小さな体に見合う男性だったならば数秒と持たない名器だっただろう。
 正直に言えば、アモルもかなり感じていた。
 それこそ理性が飛びそうになるほどに。
 しかし、タガを外せば彼女が壊れるどころか死んでしまう。
 アモルとしてはさっさとこの拷問を終わらせてしまいたかった。
 体を少し持ち上げると彼女から甘い吐息が漏れていた。
 大きく苦しいはずのモノも初めて愛を感じられただけで気持ちよくなっていたのだ。
 一方のアモルは必死に色々なものを耐えていた。
 次第に動かす腕の速度は早くなり、彼女の吐息も粗いものになっていた。
 小さくジュプジュプと水音が聞こえだし、その音がアモルの興奮に拍車をかけていた。
 少しずつだが先程よりも彼女はアモルのモノを深く飲み込んでいた。
 だんだんと彼女も慣れ始めていたのだ。
 二人の声が部屋に響き、さらに彼の、彼女の気分を高揚させていった。
「も、もう出る……!抜くよ!」
 限界に達したアモルはそう言い彼女の秘部から自分のモノを引き抜こうとしたが、彼女の意地なのか中が奇妙にうねってみせた。
「中に……中に出してくれるわよね!」
 それはもう既に別の生き物の体内のようにしか感じられなかった。
 この上ない快感でアモルの抜こうとする意思に反して白濁は彼女の中へと注ぎ込まれた。
「う、うあぁ……!!?」
 中へと放った途端にキュッと締まり、さらに搾り出すような動きになった。
 そのまま中へと全て放ち、ようやく治まった頃に虚脱感と共に体を横へ倒した。
 彼女も満足したのか僅かに涙を瞳に溜めたまま僅かに微笑んでいた。

それから数分後―――

 ひとまず汚れたシーツを自分で剥ぎ、こっそりと新しいものに取り替えて、二人でシャワーを浴びた。
 流石にこんな(傍から見れば)いたいけな少女を犯したとなればメイド達も黙っていない。
 バレる前に証拠を隠滅し、二人でそのまま眠りについた。
「お休み。シオンちゃん」
 そう言い頭を撫でてあげると彼女は恥ずかしそうに
「シオンちゃんなんて呼んでもらえると思ってなかったわ。私ももっと子供らしくしたほうがいいのかしら?」
 そう聞いてきた。
 子供らしからぬ質問だが、答えは彼女の額への優しいキスで返した。
 彼女はとても嬉しそうにした後
「私、ブースターに進化できないかな? アモルさんに進化の元は注いでもらったし」
 そんな事をアモルの耳元で囁くものだからアモルは顔を真っ赤にしてシオンの頭をワシャワシャと撫でるしかなかった。
「そういえば子供なんて出来ないよね? こんないたいけな少女を孕ませただなんてしれたらあのルカリオに殺されそうだ」
 そう言うと彼女はクスクス笑った。
「幼気……ねぇ。即効性のピルも飲んでるし、素敵な殿方を拐かした女の子が幼気ねぇ~」
 そう言って、本当に嬉しそうに笑いながら。



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*1 どっかのイツカとかいう狐さん

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Last-modified: 2013-09-08 (日) 00:00:00
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