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思いの先にある想い

/思いの先にある想い

蒼海


「また明日ね」
「うん、バイバイ」
いつもと変わらない日常の別れの挨拶。
仲のいい友達同士なら毎日交わす挨拶だ。
今日も帰り道、いつもの分かれ道で、仲のいいチコリータとアチャモはこの挨拶をする。二人は何でも相談できる友達同士。勉強はもちろん、辛いことや嬉しいこと、悲しいことも何でも相談してきた。
そんな二人だが、一つだけお互いに相談できないことがあった。それは男の子についてだった。
二人とも人間でいえば13歳。好きな男の子の一人や二人できてもおかしくない年齢だのだが、今まで誰かを好きになったことがなく、このことを相談したこともなかった二人はどうすればいいのかわからずにいた。


「ねぇお母さん、お母さんは何でお父さんと結婚したの?」
ある夜チコリータは突然母親であるメガニウムにこんな質問をした。
「何で結婚したかって言われてもねぇ…
 やっぱりお父さんのことが本当に大好きになったからかしらね。クラスの中でも1番かっこよかったわけじゃないけども、何かに努力しているお父さんがかっこよかったのを今でも覚えてるわよ」
「でも、今のお父さんからだとそんなこと想像つかないよ」
「まあ仕方ないわね。チコリータが生まれてからあなたにメロメロだったから。一番欲しかった女の子だったから嬉しいってあなたが生まれてから毎日のようにお母さんに話してたくらいだもの」
そんな話をチコリータとメガニウムがしているころアチャモは…


「ただいま」
そう玄関にかかっていた鍵をあけて家に入っても聞こえてくる声は何もない。彼女の両親は今日も遅くまで仕事をしているからか、リビングには、温めて食べてねと置き手紙と夕ご飯がテーブルに用意されていた。
週に2日は一人で夕ご飯を食べるので慣れているのだがそれでも心細いもの。両親が忙しいのはわかるが思春期をまさに迎えている彼女には、そのことが理解できずにいた。
何度かは、用意されたご飯を食べずに外食やチコリータの家で食べることもある。今日も一人で食べるのかと溜息をつきながら、お風呂に入り用意されたご飯を温めていると
「おう、アチャモ」
いきなり声をかけてきたのは彼女の兄、リザードだ。
「お兄ちゃん、帰ってくるなら連絡してって、いつも言ってるのに何で急に帰ってくるの?」
その問いかけに
「久しぶりに帰ってきたのにそれはいだろう。それに、昨日電話で今日帰るって話したんだし」
そういうとリザードは荷物を置きに自分の部屋へと向かう。その時アチャモは初めて気づいた。いつもよりも用意されていたご飯が多いことに。
「やっぱり母さんの料理は美味いなあ」
普段は外食かコンビニ弁当が多いのか、久しぶりに食べる母親の料理に舌鼓みをうちながら食事を続けるリザード
そんな兄を見ていると、どうして悩みがないんだろうと考えてしまう
自分と本当は兄妹ではないのではないのかと思ってしまうくらいに
でも、それを聞くこともできない歯がゆさがあるのも、自覚しているからなのか、何も相談できないでいた


それから1週間が過ぎた
この日は席替えがある日だったが、チコリータはいつも以上に不安でいっぱいだった
仲のいいアチャモと違う班になるのではないのかという気持ちと、今度こそ想いを寄せているポケモンと同じ班になりたいという気持ちが入り混じっていたからだ
だが、願いと現実は残酷なものだとわかっているからこそ、期待しつつも、ダメなことを考えると辛い気持ちでいっぱいになってしまう
そんなことでいっぱいになりながら、新しい席が決まるのを待っていると
「元気ないみたいだけど、どうかしたの?」
声をかけてきたのはゼニガメだ
不意に声をかけたつもりはないのだが彼が近くにいたことに気が付かなかったからなのか
「驚かさないでよ、ちょっと考え事していたんだから」
と、八つ当たりに近い言動にでてしまう
「元気なさそうに見えたからさ
 ところでチコリータは今回狙ってる席なんてあるの?」
その質問に
「あるのはあるんだけども、秘密」
「やっぱり秘密か
 僕はいつも通り後ろのほうにならなければいいや
 後ろになると黒板見えずらいから、メモとるのに苦労するからね」
それだけ言い残すとゼニガメは自分の席へと戻っていく。誰もがする行動だがチコリータには違って見えていた
(ゼニガメは前の席のほうがいいんだ…)
そんなことを考えてると今度は
「新しい席決まったみたいだよ、チコリータ。早く移動しないと」
声をかけてきたのはアチャモ。その声はいつもと違いウキウキしていた
それを訪ねると前からすきだったミズゴロウと隣同士になれたからだと答えてきた。素直におめでとうと言えず、そう…とだけ呟き新しい席に移動する
今度の席は1番前の真ん中。先生から一番近い席だった
しばらくは席替えは行われないし、しかもアチャモとは、班が違うどころか、かなり離れた席になってしまったため、かなり憂鬱な気持ちになっていると
「良かった、この席で。後ろの席じゃなくて助かった。」
声の主はゼニガメだ
「前の席で喜べるゼニガメが羨ましいよ。何でそんなに前の席がいいの?」
「前後ろの席になったとき嬉しいって思ったよ。でも授業になると、黒板は見えずらいから、メモするのも大変だからね
 チコリータも去年だっけ、この席になった時僕に喜んで話してたでしょ、前の席になったよって」
そんな話しをしているとアチャモがやってきて
「よかったね、ゼニガメの隣になれて」
と、ゼニガメには聞こえないように小声で話す
そう言われるとそんなことないと反論するのだが、胸のどこかではそれとは違う自分もいるのにこの時は気付かなかった。いや、気づこうとしなかったといったほうが正しいのかもしれないその日の帰り道、いつものようにチコリータとアチャモは一緒に帰っていると
「でさ、チコリータはいつ告白するの?」
いつもならこんな会話はしないのに、この日はずっとこの話題だった。本当に自分はゼニガメのことが好きなのか自信をもてなかった。他の男の子とは違う感情を持っているのも事実だが、それがどんなものなのかもわからないからだ
その感情を今まで持ったことがないから、それがゼニガメを一人の男の子として好きということなのか、友達として好きなのか
でも、アチャモやミズゴロウに感じている好きという思いとゼニガメに感じている好きという思いがどう違うのか想像もつかない
それが一人の男の子として好きという想いだということに気付いて本当の気持ちを伝えることができたのは、アチャモがミズゴロウに告白してからだった


今更ながらあとがき
ここでの処女作は無謀にも仮面小説大会での作品です
チコリータをヒロインにするのは大会参加を決意したときには決めていました
もう一人のヒロインをアチャモにしたのは不思議なダンジョンの公式サイトを見ている時にです
でも、こうして作品を書いているときに思いましたがやっぱり小説書くのは楽しいです




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Last-modified: 2012-06-10 (日) 00:00:00
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