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心を紡ぐ旅

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銀猫 ?

期待されずにでてきた処女作です。

厨二要素を多大に含むかもしれない文章なので許してください。



※多少残酷な表現がありますのでご注意ください



プロローグ


ー爽やかな風が僕の毛を靡かせる
明日もきっといつもどうりの日常だろうー


そう…きっと。



誰かが家の戸を叩く音がする
「なんだよ…うるさいなあ」
気怠さの中寝床から重々しく体を起こし戸を開けにいく
「うるさいはないだろ…全く。今日は収穫祭だから村の皆は広場に集合!遅れてるのはアレクだけだぞ?


「…?」

そういえば今日は年に一度の木々の実りを祝い感謝する収穫祭だったなような…

カチャ
そんなことを思っていると、こちらが戸を開ける前に勝手に戸が開く

「お前…完全に今日が収穫祭だって忘れてただろ?
いくら朝に弱いからってもう昼なんだけど。」

黄色と白の体毛を持つポケモン『サンダース』のシークが入ってくるなりそう言
い放つ。

「おはようシーク。僕は収穫祭には出席しないって言ったはずだけど?」

「ああ、おはよう。…じゃなくて収穫祭は全員出席!お前がいくら騒がしいのが
嫌いだからって欠席は無理。」

…はあ。朝から騒がしいな。
シークだって僕が『ブラッキー』だから朝に弱いのは充分承知しているはずなの
に。

反論するのも無駄だと思い僕は渋々支度を始める。

僕は村の中でも変わり者だった。

生まれてからずっとこの村に住んでおり両親は幼い時に他界。

それ以来一人暮らしで引きこもりがちだったせいか村の人達からも気味悪がられ
て避けられている。

シークはそんな僕の数少ない友人(?)である。

「……アレク?黙り込んでないでさっさと準備しろよ~」

僕は顔だけ洗い両親の形見の首飾りを首に掛け

「準備…できたよ。」
「よし!じゃあ早速広場に行こう。」

はあ…本当に気がのらないな。

村の人だって僕なんか居ても居なくても変わらないだろうに。

「アレク?いつものことだけど暗いぞ。年に一度の収穫祭なんだしたまにははし
ゃいでみろよ」
さっき……僕が騒がしいのが嫌いだって知ってる発言したのにそんなこと言わな
いでよ。


「……」

「アレク?怒ったのか?」

「別に…」


広場までの道中嫌な沈黙に包まれる。

そんな空気を察したのかシークはいきなり話題を変え話始める

「な、なあアレク。その綺麗な翡翠の首飾りどうしたんだ?」

なんでそんなこと聞くのかな……
つくづく僕の触れて欲しくない部分に……
「両親の…形見だけど」

「そ、そうなのか、悪い話したな……」

「別に…」

再び気まずい沈黙が訪れる。

やっぱり僕は人付き合いが苦手だな…
シークが僕のことを思って話しかけてくるのは分かるけど、どう返したらいいの
かなんて分からないしそれをいちいち考えるのも面倒くさい。

そんな事を思っているうちに広場に着いてしまった。
大きな大木の前に村のポケモンが全員集まっている…といっても山岳の間にある
小さな村なので200匹いるかいないかぐらいの数である。

その為この村ではほとんどのポケモンが顔見知りだ。

「シーク!アレク君!おはよう~」

と、広場に着くなり少し高めの可愛い声が響いてくる。

「おはようエミルさん」
と僕が気のない返事で返す。
それとは打って変わって
「おはよう!エミル」シークは妙に背筋を伸ばし挨拶を交わす。

それを見た『リーフィア』のエミルはおかしそうに頭の葉を揺らしながらクスク
スと笑う。
「ど、どうしたの?」とシークが訪ねると
『だってシーク私が来たら急に背筋伸ばすんだもん。』

シークは顔を赤らめて
「ま、まあそりゃあ牝の仔の前じゃあしゃきっとしてないとね。」
「ふふ、そうなの?」
なんて他愛ない会話を2匹でしており僕は完全に会話から除外されていた。

まあいいけどね。別に僕は雌と馴れ合うのも好きじゃないし。むしろ僕には好都
合だ
第一シークがエミルに気があるのはどうみてもばればれじゃないか。

村一番の美人であろうエミルと村一番のお調子物であるシーク。
どう考えても釣り合わないよ……

って僕には関係のないことなんだけどね。
「あっ、そろそろ村長のお話しが始まるよ~」

とエミルが言い、よく見回して見れば村長のドダイトスが皆が静まるのを待って
いるところだった。

「えー、ごほんっ。今日は年に一度の収穫祭であります。今日ばかりは少し
羽目をはずそうと咎めたりはしません。開催の前に2、3、話があります。」

村長の前置きって長いんだよな……
別に収穫祭なんて好き勝手飲んだり食べたりして騒いでるだけなんだから注意す
ることなんてないだろうに……
エミルとシークも同様の気持ちなのか2匹ともそわそわしている。
2匹とも子供だな……なんて思いつつも20分程たつとさすがに僕も飽きてきた。

「えー、最後に王都フェルミアから通達がきております。最近は行方不明のポケ
モンや殺傷事件が増えております。フェルミアの通達によると闇の力の増大が関
係しているそうです。」

言い終わると同時に広場にざわめきが起った。 シークとエミルも少し不安な顔を
している。

「皆さん静粛に。この事件はあくまで王都で起ったものでありこんな山岳地帯に
ある村にわざわざ……と、難しい話はここまでにしましょう!」
と村長が冗談まじりで話す。

だったらいちいち言うなよ…

でも確かにこの村は田舎だ。中心地が王都だとするとかなり北西の方に位置して
いる。
なのに何故こんな村にわざわざ王都から通達が?
王都から鳥ポケモンが急いで来ても丸一日以上かかるだろう。

ってことは、その犯罪者がこの村の近くに潜伏しているとかそういう状況じゃな
いの?

馬鹿村長……そのくらい気付いてよ。

まあこの平和で退屈なこの村にはそのくらいの刺激があった方が丁度いいと思う
けどね。

「しかし今は年に一度の収穫祭!楽しまないのは無粋というものです。そんなこ
となど忘れておおいに盛り上がりましょう!」


と村長が言い終わるやいなや村のものは一斉に歓声をあげ解散した。
収穫祭が始まり中央広場で数々のポケモンがダンスを踊ったり、大きなテーブル
に並べられた木の実料理を食べたりしている。


そんな中僕はただ一匹村長の話が終わるなり、『ある場所』に向かう為にその場
を逃げる様に立ち去った。




僕は『ある場所』に向かう為、村の外れの入り組んだ森を風を切りながら颯爽と
走る。


「…ふう」


僕は、森を抜け『ある場所』に到着したので足を止める。

目の前には切り立った崖。
そこから羨望できる美しい山々や木々。

そう、『ある場所』とはこの何のへんてつも無い崖のこと。

でも僕はこの場所が大好きである。

五月蠅い他のポケモンもいない。それに風は気持ちいいし、景色も最高だ。

普段は嫌いな眩しい太陽でさえ、この場所では好きになるぐらいだ。

「ん、ふぁああ」

なんだか眠くなってきたな…。

少し早め(まあ正午前だけど)に起きたせいもあり心地よい眠気が襲ってきた。

…そこの木陰で昼寝でもしようかな?

きっといい気持ちで寝れるだろう。




ブラッキーとエーフィが幼いイーブイの僕と一緒に家に居る。

「今日はアレクをとっておきの場所に連れていってあげよう!」
と、父さんのブラッキーが僕に言う。

幼く言葉がうまく喋れない僕は、舌ったらずな口調で「とっておきー?」と聞く


「ふふ。私が母さんにプロポーズした場所さ。」

すると母さんのエーフィーが顔を赤らめて「あ、あなた!子供に変な事を教えて
るのはやめて下さいっ///」

「???」
僕にはプロポーズなんて難しい言葉分からないや。でもきっと楽しい場所なんだ
ろうな。
「ねえねえ父さん。その場所は面白い場所なの?楽しいの?」

すると父さんは苦笑いをして
「アレクが楽し…くはないんじゃないかなあ。でもね、景色がとっても綺麗で風
も気持ちいいしきっと気に入ると思うよ。」

そう言って父さんは微笑んだ。





あれ?僕は何してたんだっけ?


…そうだ 父さんと母さんがポケモン学者の仕事で東に行ったんだっけ。

一匹で心細いけど、毎回のことだし、もう7歳にもなったんだかへっちゃらさ。

それにシークやエミルだって僕の家に遊びに来てくれるしね。

そうだ!明日は『あの場所』に案内してあげようかな?














父さんと母さんが傷だらけの身体で村の入口で倒れている。

大勢のポケモンが取り囲んでいるなか僕は只泣き叫ぶ

「父さん!母さん!ねぇ…ねえ起きてよ!帰ったら一緒に『あの場所』に行くっ
て言ったじゃないか!!!」


父さんは焦点の定まらない瞳で僕の方を見ながら消入るような声で呟く
「おとこのこ…が…この…ぐらいのことで…泣いたりしちゃだめ…だろ?」

僕はそれでも嗚咽が止まらない
「ひっく…父さ…っく…母さん…やだ…やだよ」

母さんが冷たくなった手を伸し僕を抱きよせる
「死はね、…誰にでも自然に訪れるものよ。私達は、ただ…それが少し…早かっ
ただけ。」

「分かんないよ…分かんない。母さんが…っく…何言ってるか全然分からないよ



父さんと母さんは動かない身体を最後の力を振り絞り顔を僕に向ける。

「さあ…もうお別れの時が…きたみたいだ。これから言うことを…良く聞いてお
くれ?」
僕は嗚咽をあげることしかできない。
「…っく…うぅ」



そんな僕を無視して父さんは弱々しい声で、しかしはっきりと言った。
「深い闇を東の地に見た。叶うならばその闇が滅することを願わん。私が残せる
最後の言葉だ」

「ねえ何の事なの?教えてよ!起きて…教えてよ!父さん…」

しかし、父さんから返事は無く弱々しい顔で微笑んでいる。

不意に母さんが僕に向け声をあげる。
「アレ…ク…しあ…わせ…だっ…た。」
父さんも声をあげた
「ああ…わた…しも…だ」

父さんと母さんは言い終わると同時に目を閉じそれっきり動かなくなってしまっ
た。


「と…とうさん、かあさん!意味が分からないよ!何が幸せなの?ねぇ…起きて
…『あの場所』に行こうよ!…ねえ…早く!
起きて…おき…う うぅ…うわあぁぁぁ」

見ていられなくなったのか周りで見ていたポケモン達が僕を父さんと母さんから
引き離そうとする。それでも僕は近付いてきたポケモンを振り払う。


「やめろおおおぉ!」

僕は切り立った崖の木陰で呻きながら目を覚ました。

ふと、僕の目から熱い液体が落ちてくる。
泣いている?何で僕は泣いているんだろう?

酷い…とても酷い夢を見た気がする。


…そうだ、また昔の夢を見たんだ。
もう忘れたと思っていたのに…


「…くそっ」
思わず一人言を呟いてしまう。それほど酷い夢だった。

良い気分で寝られたと思ったのに……最悪だ。



不意に空を見上げるといつの間にか空は曇り日は傾いていた。

昼寝のつもりだったのにすっかり時間がたってしまったみたいだ。
泣いたせいで目も痛いし…早く村に帰るとしよう。

そんな時後ろから声がした。

「ア、アレク君?」

「っ!!!」
い、いきなり声かけないでよ……全く。
寿命が縮まったよ…
「エミルさんか…どうしたの?こんなところまで。」

「え、えと、私はそのアレク君が居なくなったから、シークと……忘れてた!
お~いシーク~」

茂みがガサガサ っと揺れ黄色い物体が飛び出してきた。

「あっ、いたいた。
心配させんなよ全く…。」

……?僕心配されようなことした覚えがないんだけどな……


「僕…何かした?」

そう言うとシークは少し困ったような顔をする。

一体なんなんだろうか?

「いや…まあ見つかったからいいけど…村長の話が終わったと思ったらアレクが
いなかったからさ…」
「そうだよー私達がアレク君のこと怒らしたから居なくなったのかと思って心配
したんだよ。」

とシークとエミルさんが口を揃えて言ってるけど…

心配性?

いやいやかなりのお節介だよ…

これだから他のポケモンが考えていることはよく分からない。

僕がいつどこに行こうが勝手…じゃないのかな?

それとも彼等が僕の友人であるが為にいちいち自分の行動を伝えなければならな
い…そしてエミルとシークはそれを望んでいる。

…違うのかな?


…だから 考えるだけ 無駄 …だって思ってるのにどうしてこんなにも他人(
ひと)のことを考えるんだろう。

僕の意識とは別に脳が勝手にいろんなことを思考していく…

それだけ僕には他の人(ポケモン)との繋がりが必要なのだろうか?

いや、それも 否 …だね。 僕はもうあの日から一切の他人とは深い
繋がりを持たないって決めたんだから。

それなのに僕の近くには常にと言ってもいいぐらいにシークやエミルさんが側に
いる。

忌々しい…とまではいかないけれど非常に迷惑極まりないことだ。
「怖い顔して…どうしたの?」

エミルさんが悠長な口調で話しかけてくるけど僕の気持ちなんてちっとも分かっ
てない。
僕は他人に話しかけられる事も思われることも苦痛でしかないのだから…

そもそも『友人』と『知り合い』の定義なんて同じようなものなんだから気軽に
話しかけすぎじゃないかな?

「別に…」


シークとエミルさんが「またか…」というような顔で肩を竦める。

そう思うんだったらわざわざ僕に話しかけなければいいじゃないか。

「帰るよ」
一言だけ言い放ちさっさと村への帰路を辿る。
「お、おい待てよアレク!」

走り去る僕の後方から声が追いかけてくるけれどそんな事気にしないで只に走り
続ける。

薄暗くなってきた森は静寂に包まれている。いつもとは違う道を通ってきたから
追ってきた声も足音ももうしない。

「…」

さすがに全速力で走ってきたから疲れたな。少し休もう…

木に寄り掛かり楽な姿勢をとり目を瞑る。
風の音、虫のさざめき、時折聞こえる鳥ポケモンの鳴き声。

嗚呼、なんて素晴らしいんだろうな。

世界が全てこんな空間で満されればいいのに、と本気でそう思う。
他人との干渉がなく自分1人になれる場所そんな場所がこの世界には少なすぎるよ








……


そんな夢見心地な良い気分を邪魔する誰かの声が聞こえる…

また…あの二人か、全く嫌になるなあ



休憩も済んだことだしさっさと帰ろうかな
「く…貴方たちの……好きには……させません」

!? 何だろう今の声…
シークやエミルさんとは違った しかも妙に緊迫した声だった気が…

「きゃっ!」

それに悲鳴まで聞えてきたけど…

大丈夫かな?

大丈夫…じゃなさそうだね。女の子の声みたいだし状況からするともう一人(一匹)
いて襲われてる?

面倒だけどさすがにわほうっておくわけにはいかない。

声のする方へ走って行くといくつかの斬撃音とともに水が跳ねるような音がする


「う…ぐっ」

ドサッ!

僕が到着した時には既に事態は終幕を迎える直前だった。

目の前にはおびただしい量の血が所々に飛び散っている。

それに…木にもたれ頭から血を流し気絶している銀色の体毛のポケモン。

そのポケモンにジリジリと迫り鋭い鈎爪を振り下ろさんとしている額にマニュー
ラ。


「や、やめろ!」
状況を把握できないまま自分でも驚く程の大声をあげてしまった。
マニューラの視線が僕に移り鈎爪が銀色のポケモンの喉元の寸でで止まる。

これで一件落着?








無論そんなはずもなく間髪もいれずに物凄いスピードでマニューラが接近して僕
の首の辺り目掛け鈎爪が振り下ろされる。

「…っつ」

なんとか後方に 跳躍し躱そうとしたが頬に一筋の鮮血がはしる。

…強い

僕は戦闘なんて野生のポケモンと数回したぐらいしかしたことないのに…あのマ
ニューラ明らかに戦闘慣れしてる。

このままじゃ…殺される!

僕の中を恐怖がかけ巡る。
先程までは無かった緊張感が僕を包み込む。
僕とマニューラは睨みあい動けないでいる。

いや……マニューラの方は期を伺っているだけだろうが僕は足が竦んで動けない
だけだ。
怖い……怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

死にたくないっ!

もはや恐怖の性で僕の思考は通常通りに働かない。

僕は目標も定まらず猪突猛進にマニューラ目掛け突っ込んでいく。

「くらえぇぇっ」
渾身の力を込めた右前脚での手刀、『しっぺ返し』をくりだす。
当たった! と思った瞬間だった。手刀は空を切り……と言うよりマニューラの身
体をすり抜けた。

影分身!?

「後ろだよ……坊や」
声が聞こえる方に振り返るがいなや見えたものは眼前に迫るマニューラの目にも
止まらぬブレイククロー

何とかガードを試みるがそれも虚しく鍵爪の三分の一が僕の腹部に突き刺さりそ
のまま地面に叩き付けられる。

「ぐ……かはっ」

地面に叩き付けられた衝撃、それに腹部からの出血で意識が朦朧とし始めた。

……はぁ はぁ もう駄目かも……

本当に……運が悪いな……少し遠回りして帰っただけなのに、たまたま声がした
方に向かっただけなのに、






僕は 死ぬの?






死の恐怖が再び蘇る。と同時に朦朧とした意識も回復してくる。

目に入ったのは無機質な瞳でこちらを見下すマニューラ。

今、まさに僕にとどめをさそうと鈎爪を大きく振りかぶる。

振り下ろした鈎爪が僕の頭に向かってくる。

ここまでか……
そう思った刹那僕の視界はホワイトアウトした。






真っ白な世界にたたずむ黒い身体、即ち僕。
ここは……天国? それとも地獄なのかな?
僕の回りは白く眩い光に包まれていて、身体は海面に浮く、くらげの様にぷかぷ
かと揺れている。

この世界の中心……とでも呼べる部分はより眩く輝いていて僕はそこに引き込ま
れる様に近付いているみたいだ。

「我を呼び起こしたのは汝か?」

眩い光の向こうから声が……と言うより頭の中に直接語りかけてくるような声が
響いてくる。

「…誰?」
一度の間をおき声の主が返してくる
「汝の心に住う者、我は汝、汝は我」

……意味が分からないな。 会話にもなって無い気がするし。

そんな僕の心を読み取ったのか更に『声』は喋り続ける。
「我は汝、汝は我、即ちお前自身と言うことだ。」

僕自身??

とうとう死ぬ間際で頭がおかしくなったんだろうか?

僕が僕に話かけている。

どう考えてもおかしな状況だ。

「ここは……何処?僕は……死んだ?」
「ここは精神と時の狭間、汝の心の中
汝は我、我は汝。我が生きているのならば汝も生きている。


僕の心の中……だとしたらこんなに光輝いてるはずが無い。
「そんな事はない。恐怖、欺瞞、絶望、混迷、それらの心の中にある希望の光、
それが汝、そして我がいるこの場所」

……こっちが質問をいちいち口に出す必要がないみたいだ。

希望……やはり僕の心の中にそんな物があるはずがない。

やっぱりこれは僕の死ぬ間際に聞えている幻聴なのだろうか?

どう考えてもその方が自然だと思う。

「……我は心のかけら、汝と同化した存在、汝の勇敢な心により目覚めた。」

同化?それに勇敢?それとは全く逆の行動をしてたじゃないか。

死にたくない……ただそれだけだっただけ。

「恐怖もまた勇敢。勇敢は恐怖より生まれ、また恐怖も勇敢から生まれる。汝が
それを忘れなければ一時の力を与えよう」

僕の頭にたくさんの疑問符が浮かぶ。

本当に意味が分からない……

恐怖=勇敢?

即ち僕は勇敢だった?
そんな逆説的でうますぎる言い回しで納得できるはずもない。

僕の思考が煮え切らないうちに中心の光が小さくなっていく。

「待って!まだ聞きたいことが…」

しかし返答はなく、僕の視界は元の暗闇の世界へ戻っていった。




マニューラが鈎爪を振り上げ僕の息の根を……ってここから始まるんだ。

これじゃあさっきの二の舞だ。結局は死んでしまう。

!?
腹部の傷が痛くない!
それどころか……いつもより身体が軽い!

マニューラの鈎爪が僕の心臓部を捉える寸前で僕は大きく跳躍し後方に着地する


マニューラが驚いた表情をしている。

それは僕自身も同じことだ
自分がこんなに素早く、高く跳躍したことなんて今までで一度もない。

それに…身体中が熱い。今なら火炎放射だって撃てそうな気分だ。

そんな僕の思考を余所に驚いた表情を見せていたマニューラだったが、瞬時に無
機質で殺気が満ちたものに変わる。

今度は単調ではなく微塵の隙も無い変則的な動きでマニューラが迫ってくる。

……と周囲にはそう見えたんだろうけど僕の目にはマニューラの動きがコマ送り
に見える。
そこだけ時が遅く流れているようにさえ思えてくる。

これなら……
僕は迫ってくるマニューラを大きく前方に跳躍して躱し空中で方向転換し技の照
準を合わせる……その時僕の身体に異変が起きた。
シャドーボールを放とうと力を集中させた時、喉の奥……いや身体中が更に熱く
なり自分でも訳が分からない内にマニューラに向け眩い光の様な炎を放った。

炎は瞬時に標的のマニューラを捉えた。
着弾と同時に全身を容赦無く包み込む……
まるで意思があるかのような、容赦無く獲物を捕食する炎だ。
「ぐっ…ぐわあぁぁぁ」

氷タイプを持っているマニューラに炎の力は絶大だった。
苦しそうに呻き声をあげているマニューラ……
ダメージの許容量を超えているのは誰が見ても明らかだ……

って…この炎……どうやって……止めるの?
いくらいきなり襲ってきた敵とみなせる存在であれどもこのまま見殺しにするの
は余りにも可哀相だ。

とは言ったもののどうすればいいんだろう?

慌てふためき砂を掛けてみるが何の変化も無い。
それどころか僕にまで襲いかかるかのように炎の勢いが増す。


熱っ……僕自身も火傷を負ってしまい後退する。

マニューラの方は既に地面に這いつくばり声もあげていない。

……と急に炎の勢いが減退し始める。
同時に炎で見えなかったマニューラの顔もあらわになる。

……いや、もうマニューラとは呼べない黒い肉塊となっていた。
肉は焦げ、皮膚はただれ、原型をとどめているのは……僕を殺そうとした鉤爪の
み……



僕が……僕が殺した?
いや、このぐらいじゃまだ死んでない……死んでない……はず…

恐る恐る黒い肉塊に触れる……が、何の反応も…無い。

殺した……僕が……人(ポケモン)を…殺した?

嘘だ……そんなの嘘だっ!!


襲ってきたのはマニューラの方…
なのに何故悲しむのか自分でも分からない、何故嗚咽をあげ泣いているのかも分
からない、何故……こんなにも罪悪感があるのかも……

このやり場のない悲しみ……いや、憎しみをどうしたら……どうしたらいいんだ
ろう。
それに身体中が……熱いっ!先程とは違う攻撃的な熱さ。

感情と比例するように高ぶっていく熱エネルギーを僕は体外に排出するしかなか
った。

本来使うことのできるはずの無い炎タイプの技。それに順応していない僕の身体
、炎を放出し続けている僕の口は既に余り感覚は無い……が、しかし炎を吐き出
す度に感情の高ぶりが少しだが収まっていく。
それ故に高ぶり過ぎた感情という名の炎を吐き出しきるには随分な時間を要する
だろう。
そこからの僕は自我がほとんどなかった。

感じるのは僕の口から放出され続けている炎の感覚と心にいつまでも突き刺さっ
ている罪悪感だけ。

熱からくる痛みと心の痛みの中僕は……意識を失った。






「んっ……ふぁ」

フカフカのベッドの上で目が覚める。

良く寝たなあ……じゃなくて
僕はなんでベッドの上で寝ているんだ?


脳裏によぎるのは……黒い……肉塊と……燃え盛る……炎……

「うわあああぁぁぁ」
思わず悲鳴を上げてしまう。頭に強く残っている……『肉塊』、『炎』
いや……むしろそれ以外に思い出すことができない。

吐き気がする……

それほどに恐ろしい物を見てしまった……否、『してしまった』んだ。
意識的でない、不可抗力でそうなった……不可抗力……そう思いたかった。
あれが夢、幻想であると思いたかった。

何もなかった、あんな物存在しなかった……そう思いたかった。

また平凡で何もない日常が始まる……切に僕はそう願った。

自分の中で、自分の『心』の中で色々な感情が渦巻いているのが分かる。

色々……というより恐怖、恐怖、恐怖、ほぼ一色。
微妙に色の違う恐怖の感情がそれこそ吐き気を催すぐらいに体を駆け巡っている


辺りを炎で埋め尽くしてしまったことの恐怖だろうか?

その原因である本来使うことのできない『炎』を使ったことだろうか?

いや、僕が恐怖していたのは……あのマニューラの『命』……を奪ってしまった
ということだ。

「アレク!大丈夫か!?」

「っっっっ!?」

急に呼びかけられて声にならない悲鳴を上げてしまった。
声の正体は少し曇った……泣きそうな顔をしたシークだ。
「おはよう。シーク。」

「ああ、おはよう……じゃないだろっ!
お前一体……」
と言いながら僕に……ダイビング。

……ん? 顔が、顔が近いよシーク!
息が……

「もが、もがががが」
先程とは違った意味で声にならない悲鳴を上げる。
「良かった…お前が死んだかと思った……ほ、本当に…っく…心配したんだから
なっ」

いや、どいてくれなきゃ窒息死だよ。

それに顔がっ、顔が近いって!
僕はそっちの趣味は無いってば!

「じ、じーぐ…く、ぐるじぃ」

ようやく僕の声にならない声に気付いたのかシークが我に帰り僕から…僕の上か
ら退く。

「わ、悪い……でも、俺…このままアレクが起きないかと……」

……そんな、心配されても、泣きそうな顔しながら話されても…困るじゃないか
……



……ごめん。こんな時どんな顔をしたらいいのか分からないや。


でも、……ありがとう
シーク

「し、心配かけて……ごめんね。
それと……あ………ありがとう。」
シークが驚きともとれる、……それでも屈託の無い笑顔を浮かべた。


僕……なるべく表情を変えずに言ったつもりだったけど、それでも顔が火照って
、……熱くて………

だって、人(ポケモン)に心配されて、『嬉しい』 って 思ったことなんて本当に
久し振りだったから……

『ありがとう』なんて心を込めて言ったのも本当に久し振りだから……


だから、 こんなにも目頭が熱いのは

仕方ないんだよね?
「大丈夫か?」
大丈夫……じゃないかな。

こんなにも『心』が揺れ動いたのも本当に久し振りだから……

「大丈夫か?」
と、聞かれても…
大丈夫……じゃないかな。

こんなにも『心』が揺れ動いたのも本当に久し振りだから……

だから、やっぱり……今日ぐらいは仕方ないよね?

「怖かった……怖かったよ…っく、うぅ……うわあぁぁぁ」

もう他人の前じゃ泣かないってあの日に決めたのに、弱さを見せないと決めたの
に、

自然と涙が溢れてくる。

疲れ果てた僕の『心』から染み出るようにして、自分でも止められない、涙腺が
壊れたんじゃないかと思う程、僕は





咽び泣いた。






シークが来てから30分ぐらいはたっただろうか?

その内20分ぐらいは…ずっと泣いてたけど……

シークは何も言わずに見守っていてくれた。

「もう、大丈夫か?」

「うん……一応ね。」

さすがに長い事泣き続けたら心に残っていた物も洗い流せた……と思う。

ようやく…思考も通常通りに戻り冷静に先程……といっても、もうどれぐらい前
の事だったか思い出せないけど。






…そうだ!そもそも僕は……あの、銀色のポケモンを助ける為に……

無事なんだろうか?生きているんだろうか?

「シーク!あのポケモン!あのポケモンは!?」

「お、落ち着けって!まずは、順序よくだな……
えーと、そうだな、何から話そうか……
……アレクが村のポケモンに助けられてから約半日、んでここは村長の家って事
は分かるよな?」

!?
あれから半日もたってたなんて……じゃあもう夜更けじゃないか、それに、ここ
村長の家だったんだ……妙にベッドが大きくて豪華だと思ったけど。
あまりに気が動転してたから気付かなかったけど…




……まあ今はそんなことは置いといて、取り敢えず頷いて話を進めてもらおう。

「……それでだな、村のポケモンが遠くで煙が上がってるのを見付けて、そこに
居たのが倒れてたアレクと真っ黒焦げのポケモンと……銀色の…あれは、『エー
フィ』…なのかな?」

銀色のエーフィ?そんなの聞いた事がないや。

確か……突然変異で色素が変化したエーフィでも体は黄緑色のはず…

「…それでだな、今に至る訳だ。
そのエーフィだったら隣りの部屋で今も寝てるぞ?
なにせ酷い傷だったからなぁ……まあ命に別状は無いみたいだけど」

僕はそれを聞いてベッドから跳ね起きる。

そりゃあ、彼女を助ける為に戦ったんだからさすがに心配な訳で……
それをシークがすかさず制止する。

「待て待て待て待て……そう急くなって、アレクだって……結構酷い状態だった
んだぞ?外傷はそれ程じゃなかったけど、悪夢にうなされてるみたいで……それ
に…本当は起きたらいの一番に村長に事情を報告しに行って欲しかったんだけど
……」

まあ……それならしょうがないかな?

でも、説明の仕様がないな……僕が森を燃やして、あのマニューラを殺してしま
った何て言ったら、どう思うんだろう。

いや、そもそもそんな話信じないんじゃないかな……

「だからなー村長を呼んでくるからちょっと待っててくれるか?」






村長と一対一での対談。
そんな、機会無かったから少し緊張するな…

シークは先に「銀色の子」の様子を見に行ってるし……
僕も早いところ大体の事情を説明して様子を見に行こう!

と息巻いていると早速僕よりも数倍も大きな体のポケモンが床を軋ませながら部
屋に入ってくる。

「身体はもう大丈夫かな?……君は、えー、アラク君であっていたかね?」


うわ、いきなり名前間違えられましたね……
「アレクです……」

思わず呟いてしまった。

だってこれから結構お堅い話をするはずなのに……名前を間違えるって……そり
ゃご年配なのは分かるけど……
と脳内で文句の応酬をしていたら村長の言葉で我にかえる。

村長は全く間違いに気付いて無いみたいだけど…

「病み上がりで悪いんだが事の説明をしてくれるかのう?」

さて、どこから話そう……

始まりから終わりまで話したらそれこそ時間もかかるし僕も感情的になってしま
ってまともに話せないかもしれない。

こんな時は……魔法の言葉を使っちゃおう!

「実は、かくかくしかじか、で、かくかくしかじか…だったんです。」

伝わった…かな?

「ふむ…『かくかくしかじか』じゃったのか……ってそんな言葉で分かるはずが
ないじゃろ!」

あらら……漫画みたいに上手くはいかないんだ……村長に乗り突っ込みまで入れ
られちゃうし。

ここは頑張って話しきらなきゃ…








「―――ってわけなんです。」

僕がようやく大体の事情を……一部簡略化したものの話し終える。
いつに無く難しい顔してるな村長……

「今の話を聞くかぎりじゃとその……襲ってきたポケモンを倒したというのはお
主……じゃが―――」

「はい。」

僕は機械仕掛けの人形の様に村長の言葉に頷いていく。

「―――じゃがしかし、襲ってきたポケモンを殺してしまった…と?」

「は…はい。」

「それで、君が放出した炎が森を焼いてしまった…と、これであらかたあってい
るかの?」

村長が言った事を改めて聞いた後に、自分のした事を肯定して口に出すのが凄く
怖かった。

ただ『はい』と簡単に認めるだけでよかったのに、その言葉を言うのは凄く…苦
しくて……重い。

「そう怖い顔をせんでくれ。それで君の処分なんじゃがな―――」
村長は柔和な笑みを浮かべながら話す。

ってことは余り重い処罰は受けないってことかな?





「―――最低でも村を追放処分となるじゃろうな。」

よかった……追放処分ぐらいで済むんだったら…………

ん? 追放って……
僕はこの村から出てくってことであって…
「村長……今の追放処分っていうのは、聞き間違い、……ですよね?」
むしろ、聞き間違いじゃないと困る。

身寄りもない僕が村の外に放り出されてしまったら……

それこそ極刑みたいなものじゃないか!

「いやいや、聞き間違いでは無いがのう。」




さっきまでの村長の……柔和な笑みは、…何?





騙された!

というのは相手の表情を見ただけで勝手に結果を予想してた僕の安直な感情だっ
たんだけど、それと同時に怒り、というよりも深い失望の念が僕の胸に打ち寄せ
てくる。

「…何故?」

この質問が一番分かりやすく、僕が最も聞きたいことであるのには間違いない。

これ以外の疑問なんて思い付かない、今日感じた恐怖の中で、村を追い出される
と聞いたのが一番怖かったから…

だからそれが何故そうなったのか、その事実を聞きたくて、否定したくて……

「お主はポケモンを助ける為に戦ったと言ったのう。しかしじゃな、その結果ど
うじゃ?不可抗力とはいえども木々は燃え、どれだけのポケモンが住家を奪われ
たと思うんじゃ?それに、火を消しに行ったポケモン…怪我をした者も……帰
ってこなかった者もおるんじゃぞ」

そんな話シークから聞いてないよ…

住家が無くなった。


火を消しに行ったポケモンが怪我をした。

それに……帰ってこなかった?


また僕は、人(ポケモン)を殺したの?

「…」

声が出ない。否定しようと思った。

でも、できない。

弁明を請おうと思った。

でも、できない。


謝罪しようと思った。

でも、言葉が出てこない。


謝罪なんてしても何の意味もない事を分かっているから。


失われた『命』も絶対に元には戻らない事を理解してるから……
「お主がこの村を出ていく期限は明日の夕刻までじゃ。異論は認めん。
では、以上じゃ。
出発の時までしばし休むがよい。」




僕は村長が部屋から出た後も、ただただ放心し天井を眺めている。

心だけが別の場所にいっている様みたいだ…

今でも全てが嘘なんじゃないかって、夢なんじゃないかって思えてくる。


でも、現実から逃げようとする僕を引き戻す様に声が聞こえる。

『また逃げるのか?』
あの声だ。白い世界で聞いたあの声。

「僕は…逃げてなんかない。」
『心だ。心が逃げている。前にも言ったはずだ、心は強さ…と。』今度は幻聴と
か疑う予知も無いな…普段通りの世界で、それでもやっぱり脳内に直接響く声で
聞こえてくる。

無駄だと思いつつも声の主を探す様に辺りを見回してみる。

回りには誰も、何も無い…けど、首飾り?

琥珀の首飾りがほんのり淡い色に光を放っている。

吸い込まれそうなぐらい綺麗な色だ。

『もう一度言うぞ。心は強さ。希望は大きな力になる。』

そう聞こえ終わると首飾りの色は元に戻り、いつも通りの琥珀色に……いや、い
つもとは少し違う。
琥珀の中心部に虹色の羽、だろうか?


これが、僕に話しかけた。

いや、そんなはずは…
きっと疲れてるんだ。一日にいろんな事がありすぎた。

不可解な事だって起こるさ。
だって今日一日全ての事が不可解だったし……

そうだ、そろそろシークと…あの『銀色の子』の様子を見に行こうかな。







丁度僕の二つ隣りの部屋みたいだ。

四足歩行のポケモンが開けやすい様になっている(ふすま)のような扉を開く…ノッ
クぐらいした方が良かったかな?

ベッドが二つあって、シークと…エミルさんも居たんだ。

二人共熟睡してるね…僕の為にこんな時間まで起こしちゃってごめんね。

口には出さないけど心の中で呟いた。

窓の外には夜と朝の変わり目に明るくなりかけた藍色の空が広がっている。

それを眺めているのが銀色の…エーフィ。

とても綺麗で思わず見とれてしまった。

取り敢えず…声をかけなくちゃ

「あ、あの…」

エーフィが肩をピクリと震わせこちらを向き、口を開く。その表情はどこか驚い
たような感じだった。

「これは…失礼いたしました。余りに外が綺麗だったもので、気が付きませんで
した。」

振り返ったエーフィの姿は全身銀色の毛、
額の輝く宝石、空と同じ色の、どこまでも透き通っているような瞳。

…綺麗だ。

思わず口にだしてしまいそうになる程その姿は奇麗、を超えて神々しくすら見える。

「あの…どうかしました?」
何秒ぐらい見とれてたんだろう。
話しかけられえようやく我に返ったのは、いいけれど何を話していいのか全くわからない。
しどろもどろしている僕を見て、エーフィの方からためらいがちに口を開く。
「もしかして、貴方がアレクさん…ですか?」
「もしかしても何も僕が、アレクだよ。」
シークとエミルさんからあらかたのことは聞かされているのだろう。
もしかしたら僕をもっと強そうなポケモンとイメージしてたのかもね、それがこんな貧弱そうなポケモンで意外だったんじゃないかな?
「貴方が・・・随分イメージが違うんで驚いちゃいました。
エミルさんやシークさんからは気難しいポケモンだって聞かされていたんですけど…そんなことないですね。凄く…優しそうな方で良かったです。」

初対面でいろいろと言われたけどそれは多分外れてるんじゃないかなあ。僕は絶対に優しいポケモンなんかじゃないし、この子を助けたのだっていわば不可抗力、偶然なんだし。
「私の名前はセシリア、よかったらセシルって呼んで下さいね。」
僕が喋る間もなく一方的にしゃべり続けるセシリアと名乗ったエーフィ。
当然、悪いポケモンでは無さそうだけど…エミルさんと同じぐらい、違った意味でマイペースな気がする。

そんな、僕の脳内談議を中断したのは、本日二度目のダイビング。


あれ? また顔が近い!近いって!

一体なんのつもりなんだろう。
「セシリアさん!いきなり・・・どうしたの?」
彼女の顔からし雫が落ちてきた。顔をほころばせながら泣いている…
「私…あそこで死ぬ、って覚悟したんです。なのに…生きているのはアレクさんのおかげです…本当に、感謝してます!」

そう言われて僕は言葉を返そうとしたけれど返せなかった。

彼女の口が僕の口を塞いでいたから…

こんな恥ずかしい、それでいて暖かい、くすぐったい様な不思議な気持ちは初めてだった。


顔を赤らめて照れているのは僕だけみたい。セシリアさんは純粋な感謝の気持ち
を表現しただけだったみたいだし。

キスなんてされたのは初めてだし、変な気が無くてもどぎまぎするのはしょうが
ない…よね?

こんなに暖かいんだもん。誰だってどきどきするさ。

「ふふっ。アレクさんの唇って柔らかいんですね。」

な、何を言ってるんだこの娘は。
柔らかいって…他人の唇と比べたことなんてないから分からないよ。
…話しが逸れてる気が
「セシリアさんは、どこから来たの?それに殺されかけてたみたいだけど…詳し
く聞かせてもらえないかな?」
話しの軌道を無理にでも戻してみる。
笑いながら話されるのかと思いきや想像とは裏腹にいたって真剣な顔で口を開い
てくれた。

「話せば長くなりますが……聞きますか?」
「うん、もちろんお願いするよ。」

「あまり説明は得意ではないですが、私の生い立ちから…私の出身はここから遥
か東の地にある辺境地アリシア、そこにはイーブイ種がたくさん住んでいて…私
達の一族はある使命を帯びて生きてきました。それから――」

「使命って?」

気になる箇所に思わず突っ込んでしまう。
話を途中で止めるのは悪いけれど。

「使命と言うのは…闇を、東の深淵に潜む「闇」を監視するという役割です。」

どこかで聞いたような…

いや、気のせいかな?…気のせいではないだろうけど、どこかで聞いた様な気もす
るし黙って続きを聞こう。

「それで、今の「闇」の話と繋がるわけですが、現在となっては、廃れた風習で
あり、ほとんど忘れ去られていたんですけど――」

闇、闇、闇 今日一日で三、四回ぐらいその話を聞いた気がするなあ…

「――つい一週間前急に、闇に…私の村が…飲み込まれて…」

おっと、話しの展開が急すぎて付いていけないな…

「闇に飲み込まれたって言うのはつまり…?」
「正しく言うと…闇に取り込まれたポケモンによって私の村は滅ぼされてしまい
ました…友達も、育ての親も、皆…殺されて――」

そこまで言うとセシリアさんは啜り泣いて喋れなくなってしまっていた。

何て声をかければいいんだろう、こんな時の対処法を知らない自分がなんだか情
けなくなってくる。

無言の時が刻々と流れていく、僕は部屋を意味無く見回すことしかできない。

ふと、彼女の左耳に付いている銀色の、セシリアさんと同じ色のピアスが目に入
った。

僕の首飾りと近しい物を感じさせる不思議な輝きを放っている。

「ごめんなさい。いつも感情的になりすぎてしまって話しが上手くできなくて…


いつの間にか泣きやんでいたセシリアさんが口を開く、涙に濡れた顔が輝いてい
るようでとても綺麗だ。

「アレクさん?」

声をかけられて我に帰る。反則的な綺麗さだったのでつい見とれてしまっていた

銀色の身体に月の光が反射して…そういえば疑問に思っていたけれどあえて口に
ださなかった事でも聞いてみよう。

「セシリアさんは身体の色…おかしい、って言ったら語弊があるけど普通のエー
フィーと違う…よね?染色体の突然変異で起こる色違いとも別物だし…」

言った後に気付くけどなんて脈絡のない発言だったんだろ…

ホントに会話慣れしてないな。


「あっ、それも今回の事に関係してるんですけど…私のこのピアス、見てもらえ
ますか?」

と言われるがままにピアスをみて見ると、真珠、じゃなくて、オニキス?でもな
く…薄い半透明で黒色の丸い宝石、の中心にはっきりと見える銀色の羽に見える
物体。

これと似た物どこかで見た気が…今日はデジャヴが多すぎやしないかな?

「分かりますか?中心に羽の様な物があるの。これは、闇を封じる鍵、かつて闇
を封じた伝説のポケモンの心の結晶、だそうです。全部村の古文書の受け売りな
んですけどね。」
今日僕はまともな話しを一度もしてない気がする。

闇から始まって、意味不明な声が聞えて、宝石は古代のポケモンの心の結晶で…

「…」
「信じない…ですか?無理もないかもしれませんが、そのおかげでアレクさんは
使えるはずのない力を使いましたよね?…聖なる不死鳥の、ホウオウの火の力を
。」

なるほど。納得、納得、なわけないでしょ。
僕が訳も分からず放った炎がホウオウの…古代のポケモンの力だった…と、確か
に他に仮説なんてたてられないけど、やっぱり納得、はできかねないな。

急に神話クラスの話しをされても…

「信じられない、って顔をされてますね。まあ、論より証拠、と言いますから…

セシリアさん、…セシルは前触れもなく、その美麗、とも言える標準よりも細い
前脚で窓を開けた。









幼い文章を投稿し申し訳ないと思ってます、だがしかし後悔はs(ry

おかしい表現・文字等ありましたら指摘お願いします。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • チートバトルは、自分も好みますw どんな力を身に付けて、それが今後にどう影響してくるかが非常に気になりますね……。唯の炎では無さそうな感じですし… -- 葉月 ? 2009-02-25 (水) 02:16:59
  • ×エーフィー
    ○エーフィ
    ですよー。
    それはさておき、わたしも作品の暗い雰囲気に惹かれました。
    序盤に伏線が適度に散りばめてあって、先が気になるように作られていますね。
    いろいろと後の展開を予想しつつまったりと更新をお待ちしています。 -- 三月兎 2009-03-02 (月) 00:00:17
  • 三月兎さん間違い指摘ありがとうございます。兎様にそのような評価をしていただけると本当に自信がつきますね。これからも皆様を見習いつつ独自の文章を作りあげていきたいと思いますので、これまたまったりと見守って下さい。 -- 銀猫 ? 2009-03-02 (月) 17:20:27
  • 村長ヒデーな、かわいい?かわいい!女の子をたすけたんだから、ねー。 -- 2009-03-02 (月) 18:40:42
  • 名無し様>初めまして。ご閲覧ありがとうございます。正体不明の女の子ですが「可愛い」で脳内補完してあげといてくださいw村長は意外と腹黒い仕様なのでございます。 -- 銀猫 ? 2009-03-04 (水) 02:36:26
  • ゆーもあとシリアスのギャップが素晴らしいです。
    ノリつっこみで笑わせておいて追放処分……ある意味読めない展開でした^^ -- 三月兎 2009-03-04 (水) 11:13:54
  • 兎様>コメントありがとうございます。特に一番wiki内で読んでいる小説が三月兎さんのものなので、『あのように上手くパロとシリアスを混同できたら…』と理想を描いています。
    今は中途半端な状態かもしれませんが、いずれ…

    と、言いましても頭の中からシオン君が離れてくれないので大変ですw

    まあ、今後はより一層キャラの個性を際立たせていきたいです。 -- 銀猫 ? 2009-03-06 (金) 02:03:00
  • アレ?これってBL? -- ここなっつ ? 2009-03-10 (火) 17:28:34
  • 村長の『けがして戻ってこない物もいる』ってところここはポケモンだから『けがして戻ってこない者もいる』のほうが正しいと思います -- ソル ? 2009-03-23 (月) 01:42:21
  • 就職活動やらなんやらでしばらくの放置お詫び申しあげます。

    ここなっつ様>BL…ではないのですがシーク君の、アレクを本当に大切な友達と思っている…というのを形にだす為の表現です。不快に思われた場合申し訳ないです。

    ソル様>修正いたしました。拙い文章力ゆえ若干間違いや見苦しい部分がありますがご了承ください。ご指摘ありがとうございました。 -- 銀猫 ? 2009-06-12 (金) 05:39:54
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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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