ポケモン小説wiki
彼女の祈りと五つの宝石 - No01

/彼女の祈りと五つの宝石 - No01



 ピッシャーン!   ゴゴゴゴゴゴゴ...


 黒い雲が渦巻き、紫の雷が唸り、どす黒い赤の空が黒い雲を引き立たせる。かつて川だったであろう場所は水が枯れ、木は黒く変色して葉っぱは無く、草など一本も生えて無く、花も咲いていない。あちらこちらで落雷がし、そのたびに悲鳴と断末魔のような叫び声が聞こえる...。
 そして、その危ない中を何十人という人がある場所を目指して逃げる。向かう先にあるのは青色のリング、そこから大声と手招きで呼んでる一人の少女と願う姿でリングにエネルギーを注ぎ込み続けている少女。二人とも時渡りポケモンと呼ばれる『セレビィ』である。


「...フィルンは、早く! もう時間が無いよ!」
「私は...もう走れ...ない...」
「頑張るん...うわぁぁ!!?」
 二人の目の前を走っていたメガニウムに雷が直撃し、奇声を上げ、立ったまま動かなくなる。けれど、大丈夫ですかとは聞かない。何故なら、どうなってしまったか知っているからだ。
 そう、メガニウムはたった一撃の雷で死んでしまったのだ。それも草タイプだから威力が半減されるのにも関わらず...。
 そんな簡単にコロッと逝ってしまったのを目の前で見てしまい、走れないながらも気力で頑張っていた彼女の糸が切れる。
「...もう...私たち...お終い...だよ...。足だって怪我してるし...私を置いて先に行って...」
「そんなこと出来るかッ! あそこに見える『回廊』に飛び込めば僕達は助かるんだ! 後ちょっとだよ!」
「...ううん、私はもう...ダメだよ...だから...私の代わりに...長生きしてね...」
「へ、変なこと言わないでよ!! さあ早くコッチに...ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「きゃっあ!!? ...レ、レイ!?しっかりして!レイ!レイ!! ...そんな...死んでる......私と同じ『電気タイプ』なのに...どうして...どうして雷なんかで...」
 無慈悲にもレイと言う子に、まさに目の前で命を落とした...いや、色々な場所で何百人のも命を奪い、恐怖と悲しみを植え付ける悪魔の雷<いかずち>が牙を剥いた。この、走って逃げている中にも、写真を持って逃げている人も居れば、形見を持って逃げる人はお大勢居た。みんな、パートナーが死んでいるのだ。
 それに、その人達から「辛いと思うが、無心で逃げろ! 彼と同じ運命を行きたいのか!?」「頑張って...私も好きな人を、家族を...失ったから...」等と、一言声を掛けてセレビィのところへ再び走り始める。
「今は走って。悲しいのはみんな一緒なの...辛いながらも、振り向かずに走ってるの...」
「...でも、セレビィさん......」
 声に気が付いて顔を上げると、こちらに視線を向けながら"テレパシー"で静かに言った。
「...辛いと思うけど、悲しみに囚われないで...彼の為にも走って、助かって、元気の姿を見せてあげて...」
「...そうだね、ありがと。 絶対、生きて見せる。この宝石達も、この世界に戻ってきたときに...必ず...」

 
 ゴゴゴ...ゴゴゴゴ!!
 決心した途端、先程の揺れが大きくなって目的地のリングが一気に歪む。それを見て、先程から叫んでいたセレビィーはより一層声に力を入れる。もうリングが耐えきれないと言っているようだった。
「(...リーファ、私そろそろ限界......)」
「わ、わかった! ちょっと待ってて......"時渡り"っ!! お姉ちゃん、交代!」
「ありがと...すぅー...はぁ、よし。 みんな早く!頑張って!後もう少しだから!!」
 一瞬だけ消え、直ぐにリングが再生成されるが、色が先程の青色では無くてエメラルドグリーンに色が変わった。どうやらコレはセレビィーが持つ『時渡りと言う技を誰でも使えるようにした』物らしい。
 セレビィーはこの技を使い、色んな時代に行くことが出来る。例えば未来、過去、過去の過去...あらゆる時代に行くことが出来る。そしてすることは、自然の監視である。もし死に絶えた森を見つけたならば、魂を削って復活させて新たな生命を宿らせるのだ。
 そして、本来は人の目の前に姿を見せることはまず無い。それが今、大声出したり手招きしたりして居ることは極めてないに等しいことなのだ。しかも個別行動する種族なのに、二人同時に現れることなどもっと無い。
「歪みが...次に大きな歪みの揺れが来れば完全に...リーファ、私を置いて先に行きなさい! 私は元々死ぬ覚悟でココに来てるのよ! だから、まだ未来があるリーファを巻き沿いなんか出来ないわ!」
「お姉ちゃん!? そんなこと言われたって...っ!?」
「きた...みんな!! 第二破来るわよ!! 吹き飛ばされないように姿勢を低くして!!」
 息が詰まるような空気になり、お姉ちゃんと言われてるセレビィーはテレパシーで、まだ遠くに居る人達にも聞こえるように呼びかける。その声にみんなが一斉に体制を低くし、その数秒後に衝撃波に似たような爆風が吹き荒れる。
 それに耐えられず、走ってきた何人のも人達が紙のように吹き飛ばされる。が、何人かは協力して吹き飛ばされた人達を"サイコキネシス"で引き寄せたり"蔓のムチ"を使って引っ張ったり、体重が重い種族が軽い種族を庇ったり、助け合って爆風が収まるまで耐える。
 フィルンも例外じゃない。フィルンも飛ばされたところをドサイドスの"蔓のムチ"で助かっている。
「はぁ...はぁ...」
「お嬢ちゃん、大丈夫か?」
「うん...おじさんありがと」
「なんの、今助け合わなくてどうするのじゃ。 ...お、ちょっと風が弱くなったようじゃの。今のうちじゃ。お主が持ってる『願いの石』を、お主自身もしっかり護るんじゃぞ」
「...はい!」



「くっ...今のはヤバかったわね...」
「お姉ちゃん...割りと今ので時空との連結がダメージ入った...これ以上続けて、もし同じ事が起きれば他の時空路にも影響が...」
「...そうよね、やっぱりこの辺で割り切んないと...でも...」


「後もう少しだ!!」
「私たち助かるのよ!!」
「あと少し...あと少し...」


「見捨てる事なんて...出来るわけ無いじゃない...。 だって、生きてるのよ!? 私たちが居なくなったら!!」
「うぅ...でも、このままじゃ助かった人達が死んじゃうかもしれないだよ!? 私たちが使う時の時空路の破損...お姉ちゃんは身をもって知ってるはずでしょ!?」
「それは...ええ、分かった。あそこで走ってる『ピチュー』で最後にしましょう。 あの子が持ってる魔石には特別な力がある。そして扱えるのもあの子だけ...」
「...うん、あの子が持つ魔石が無きゃ、過去も現在も未来も全て死に絶えることになる......。 絶対に、安全に運ぶ必要がある...」


「はぁ...はぁ...後もうちょっと...。 ......着いた!!」
「...お疲れさま、リーファ!」
「今やってる!! ...出来た!ピチューさん!早く中に!!」
「...な、なんで私だけ違うの?」
「貴方は生きなければならない、この世界の為にも。その魔石と共に。 さあ、はやく!」
「...分かりました。 ...えっ!?」
「貴方が最後です。これ以上は回廊を続けられない。 リーファ!撤収するわよ!!」
 入った途端、姉のセレビィーが通せんぼするように立ち、続けて妹のセレビィーがリングを閉じた。中は上下左右全面緑色ベースで、ちらほら霧のように白やら赤やら青やら色々な色が見える。まるでオーロラのようになっていた。
「どうして...まだみんな居るのきゃ!?」
 ふと、浮力が無くなって腋下から二人に支えられる。身体の大きさは同じほどだが、二人なので苦も無く支えることが出来た。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ...。ねえ、どうして?まだ走って向かってる人居たのに...どうして! 見捨てる気なの!? それとも、私がもっと遅く来れば救えたとも言いた「私だって悔しいわよ!!」っ!!」
「お、お姉ちゃん!!」
「...ごめんなさい。でも、私達も悲しいの。けど、このままじゃ...生き残った人が死んじゃうかもしれない。 コレが最善の策なの、分かって『運命制御人の子孫』であるペチェさん」
「な、なんで私の秘密名を...」
「それは、教えられません。 っ!?お姉ちゃん!!」
「もーう!!次から次へと!!やっぱり開きすぎたのと、亀裂が入ったせい...。 良いですかペチェさん、貴方はこの世界を運命を変え、こんなことが起きる前に書き換えて貰います。その方法は貴方の父から授かってるはず」

 ...グァァァァァァアア!!

「な、何今の声!?」
「もう嗅ぎつけた! 良い!?絶対にこうなる前に、この世界を書き直して救って!!コレは貴方しか出来ないの!!」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

「お姉ちゃん!! 空間路に亀裂が!!」
「あいつ、この空間路ごと消し去る気!!? やむ得ないわね...リーファ、あれを使う時よ」
「...でも」
「私達の使命はこの子を無事に過去へ送り届けること!! それでこんな世界を見ないで済むなら!!...この子に命を託すわ」
「ちょ、そんなこと言われましても!!」
「...うん、分かった。私もこの子に託す。 ペチェさん...いや、フィルンさん、絶対に...この世界を...救ってね」
「だ、だから...えっ...」
 二人はフィルンを前後から抱き込んで、頭をなでる。その途端、今まで綺麗だったオーロラのような空間路全体に亀裂が一気に入り、真っ黒に染まっていく...。そして、その暗闇から無数の赤い、光る目が一斉に三人へ注がれる。
 その中でも一際大きい目を持ち、赤いライン、胸には大きな宝石、書物にしか記されていない、空間を統べる神と呼ばれたパルキア...。
「あれは...パルキア...」
「いいえ、違うわ。あれは闇のパルキア。 あいつが狂ったせいで貴方が住む世界、未来、過去が全部均等が崩れた。そして、時を統べる神と呼ばれるディアルガも」
「それを、貴方には止めて頂きたいのです。 かと言って、今の貴方じゃ太刀打ちすら出来ない...それに、もう闇に染まりきっている」
「だから私達は飛ばすの、あんな感じになる前へ」
 神々しさはなく、血に飢えた生物そのままだとフィルンは感じ取った。それと同時に、悲しみ、妬み、恨み、憎しみ...色々な負の感情を。
「私が...アレを...」
「最終的には...ですけど」
「...リーファ、もう使えるわよ」
「分かった...頼みました。フィルンさん...任せましたよ」
 そう言いって、二人ともにニコッと笑うと、真面目な顔持ちになって、名残惜しそうにスーッと離れる。ある程度離れると、両手を前に突き出し大きく息を吸って...


 『デットスペル! ザ・スカイタブエンバージョンッ!!!!』


 そう二人が叫んだ途端、二人の手から青いエネルギー弾のような物が発射されてフィルンの身体を包み込む。その中は暖かく、優しい気がした。そして次第に色が濃くなって二人が見えなくなり、見えなくなる直前に二人の悲鳴が聞こえた。

 けど、それも確かめることは出来ず、フィルンを包み込んでいた球体ごと星屑になって消えるのであった.........。


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-07-03 (金) 12:40:13
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.