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彼女に応えるが為に我が身を犠牲にしてまでも

/彼女に応えるが為に我が身を犠牲にしてまでも

執筆者文書き初心者
官能描写があります。ご注意下さい。


 彼女は僕の上へと跨がっては妖しく笑うのだ。その様子から判断するに、彼女は最高に良い気分なんだろうな。
 彼女を下ろす、それは他愛無い事なのに今の僕にはどうする事も出来ない。抵抗する術はあるのにも拘らず、何をする事も許されない。
 だって、今の僕は彼女の操り人形に過ぎないもの。両手と両足、僕の身体なにからなにまでが彼女の物となってしまっているのだから。
「仕方ないわよねぇ、“掟”なんだから」
 彼女にそう言われて、僕は言い返す言葉が見つからない。黙り込んで、彼女を肯定せざるを得ない。
 僕はどうしてこうなってしまったのだろう。あの時に彼女を――。




「ねえデンリュウ、ちょっと勝負しない?」
 身体は橙色、稲妻を模した形状である尻尾の先端、そして大きな耳を持つ彼女、ライチュウは突拍子も無く口にした。
「え? 訳が分からないんだけど?」
 僕は堪らず聞き返してしまう。いきなり僕の所へ押しかけて来たかと思えば、第一声がそれであったからだ。
「別に訳なんかは話す必要はないわ。でもね、ただ勝負とは言っても――」
 彼女は勿体ぶる様に、言葉を溜める。それに付け加えて、にぃっ、と笑みを浮かべ言い放つ。
「“掟”有りだからね!」
 その一言を聞いた途端に僕は耳を疑ってしまった。きっと彼女はこの春のぽかぽか陽気で頭が狂ってしまったのではないだろうか。
 今時、掟を使う奴なんかはいない。掟を使うのはよっぽどな大事がある場合だけだ。代表的なのは縄張り争いである。しかし、この縄張り争いも長い年月の間にほぼ幕を閉じてしまった。ご先祖様達によって縄張りは確定されて、どのポケモン達も種族に見合った場所を取った。こうして後世である僕達は不自由なくに暮らしている。それにより縄張りを奪いに来るポケモン達なんか皆無と言っても過言ではない。
 それでもまだ少しは縄張り争いが起きている。平和より戦闘だと言い張るポケモン達がいるから縄張り争いは決して終わらない。どうせ戦闘狂同士が惹かれあい勝手に闘っているから、平和的なポケモン達に関係は無いのだ。
 話が少し脱線しまったけど、要するに掟とは『敗者は勝者に絶対服従』という至って簡潔的な物である。しかしこの掟が適用されるのは両者が承認した場合だけである。例えば今回、僕が使いたくないと言ってしまえば、適用されずに終わりなのである。
「なんで掟を使うのさ? ちょっとした頼みなら聞いてあげるのに」
「それがちょっとやそっとの事じゃないんだから、こう言っているんじゃない」
 物分かりが悪いわね、とでも言うかに溜め息を一つ零した。
 そんな態度をされて、逆に僕が溜め息を吐きたくなってしまう。唐突に話を持ち掛けられたこちらの身にもなって考えて欲しい。
「で、なんで僕が相手なのさ? 他にも当てがいるのに」
「……ま、そこは気にしない、気にしない」
 にこにこ笑いながら、僕の質問を適当にあしらう。
 僕は先程の間が何だったのか気になってしまう。それにほんの一瞬だけ彼女の表情が変わった様な気がしなくもない。
 きっと彼女は何か企んでいるに違いない。そして僕を嵌めようと色々思索しているのだろう。勿論、僕はそんな手には乗らない。
「残念だけどライチュウの申し出は――」「断ったら絶交だから」「えっ?」
 まだ話の途中だったのに、遮られてしまう。僕の意見は尊重されないのだろうか。そもそもこれでは脅し同然ではないか。
「いや、だから――」「絶交!」
「それって脅し――」「おまけにコッペパンチがついてきます」
「コッペパンチってただのメガトンパンチじゃ――」「いいえ、コッペパンチです」
「もう、分かったよ。やればいいんでしょ、やれば」
 彼女があまりにしつこいから僕は仕方なく折れてしまった。はあっ、と重たい溜め息を吐いては自分の発言に少し後悔した。
 だってね、僕が要求を呑んだ途端に目の色が変わったんだよ?
 彼女はにやりと不敵な笑みを浮かべては上機嫌に尻尾まで振る。長い尻尾がこんなにゆさゆさ揺れるのは見たことが無い。普段は垂れている耳もぴんと張っていて、彼女が良い気分だと言うのを身体で表していた。
「じゃあ、御天道様が沈む頃にあの原っぱに来てね」
「はいはい」
 僕が勝ったら、彼女の好きな木の実、マゴの実を食べるのを暫く禁止して貰おう。そんな下らない要求を思い浮かべていた。
 この時の僕は、彼女がただ単にふざけているだけだと思って、高を括っていた。だから後に僕があんな事になるとは考えてもなかった。


 定刻通りに僕は彼女が指定した草原へとやってきた。予想通りに僕以外に人影はない。ましてや約束した彼女でさえも。誰もいないから、昼には皆が集うこの草原は大違いな程に閑散としていた。
 御天道様はもうお休みになるから、代わりに御月様が顔を出し始めている。御天道様の代わりに御月様が僕を薄く照らしてくれている。それにより僕の影が伸びていた。
 僕は天を仰ぎ、月を眺める。
 今宵は満月だ。なんて美しく輝いているのだろう。こんな満月の夜は、君と夜桜でも行きたい気分だ。でもそんな君ったら……。
 やっぱり僕が勝ったら、一緒に夜桜を見に行く事にしよう。そう決心した。
 風が吹いては僕の皮膚を優しく撫でる。加えて草をなびかせる。草がなびく事によってざわざわと騒ぎ始めて、この夜の静けさを破った。でもほんの微かに不協和音とでも言うべき何かが混じって響いている。しかもそれは徐々に大きくなっているのだ。
 それに違和感を覚えた僕は直ぐさま身構える。その刹那に、茶色い物が僕の目の前に飛んできた。
 がしぃっ。咄嗟に手を出して受け止める。受け止めたのはまさかのコッペパン。ではなくて、これは――。
 僕は受け止めた物を素早く解放しては、後ろへ退いて間合いを取る。すると僕の目前にいたのは、
「今のは挨拶代わり。勝負はとっくに始まってるのよ、デンリュウ」
 僕が待っていた相手、ライチュウがにこっと微笑んで言った。顔は笑っているのに、彼女から感じ取れる雰囲気とは全くの別物である。ぴりぴりと張り詰めた雰囲気が彼女を覆っていた。
「全く、不意打ちなんて君らしくもない。いつもみたいに猪突猛進で来たらどう?」
 それを聞いて彼女は鼻でふふっと小馬鹿にした笑いをする。
「デンリュウはあたしを見くびっているんじゃないかと思ってね。あたしが本気になったらデンリュウなんか――」
 僕は彼女との会話に夢中で気付いていなかった。彼女が密かに技を行使していたのを。
「取るに足らないんだから」
 彼女の台詞が幾らか重なって聞こえた。これは僕の耳が可笑しくなったのではない。ただ単純に彼女が増えただけなのだ。
 僕は影分身した彼女達によって、いとも簡単に囲まれてしまったのだ。初っ端から絶対絶命の状況下となってしまう。
「参ったな、いきなりピンチか……」
 このままだと僕は開始早々に倒される。だから、どれが分身でどれが実体かを見抜いている猶予なんかは更々無い。
 少し荒っぽいけど仕方ないか。
「はあっ!」
 自分の中で駆け巡る電気を全て、身体から解き放つ。それにより僕の回りは強大な電気が発生する。これは僕が唯一全体に攻撃出来る放電と言う技である。
 僕の電気がびりびりと襲いかかり、彼女の分身をどんどん消していく。一つ、二つ、三つと分身は無くなっていくのだが、
「……いない?」
 僕を囲んでいたのは所詮、全て分身に過ぎなかったのだ。辺りを見回しても何処にも彼女は見当たらない。
 あれは僕を惑わせる作戦の一部に過ぎなかったのか。となると、まだ作戦を遂行する為に彼女は近くにいる筈だ。
 でも隠れているのか彼女は見つからない。おまけに夜だから薄暗くて探すのも骨が折れる。尻尾の先を灯して、彼女を暴き出すのもいいが、光で自分の居場所が完璧に知られてしまう。
 だったら、無理矢理にでも出てきて貰おうか。
 ぎぎぃっ、ぎぃぃ……。電磁波とは異なる波、音波を使って彼女の聴覚を刺激させる。大体のポケモンが嫌がる音だから、そのまま嫌な音と呼ばれている。流石の彼女もこの音で堪らず出てきてしまう筈だ。
「耳があっ……」
 僕から少し距離を置いた所から、むくっと彼女は手で耳を押さえ付けながら出てきた。どうやら、身体全体を地面に付ける形で隠れていたらしい。
 僕は彼女に向かって必死に走っていく。少しずつ間合いを埋めていって、
「ボディがガラ空きだよっ! とりゃあっ!」
 彼女のお腹に目掛けて瓦を割る勢いで、ずばっと手を振り落とす。ばしぃんっ、けたたましい音が静かな夜に似合わず響き渡った。
「きゃあっ!」
 すると彼女は後ろへ大きく吹っ飛んだ。錐揉み吹っ飛びで受け身も取れず、身体は地面へと叩き付けられた。
 嫌な音が耳に響いて、ろくに防御態勢が取れていなかった彼女。それ故に、物理攻撃が不得意な僕でも大ダメージを与えられた。
「ぁあ……つぅっ……」
 よろめきながらも彼女は立ち上がる。でも僕の攻撃が身体に響いたのか、足取りは不安定。立っているので精一杯、と言った感じである。
 はぁはあっ、と苦しそうに彼女は息を切らす。肩を上下に揺さぶりながら呼吸している。
「今のはちょっと予想外だったかな……」
 途中までは良かったのに、と彼女は残念そうに零した。
「さあ、諦めて降参してくれないかな?」
 このまま戦いを続ければ、間違い無く彼女の負けは予想出来る。彼女は敏捷性に富んでいる、が、体力は無いしそして何よりも打たれ弱いのだ。
 僕の言葉が、彼女の気に触ったのか、むっと怒ったような顔をする。
「なによ、勝負は始まったばかりなんだから。それにあたしにはこれがあるんだから」
 彼女はどこからともなく、木の実を取り出しては口の中へと放り込む。
 するとどうだろうか、先程まで呼吸が乱れていたのに、木の実を食べたら平然としているではないか。ふらつかせていた足も、今は微動だにしない。
 この効用から察するに、彼女が用いたのは恐らくオボンの実。このオボンの実は治癒効果があり、食べたら直ぐに効く即効性もある。
「……って、木の実なんてずるいよ!」
 真剣勝負なのにまさか道具を使うとは。こんなのは卑怯だ。
 僕がそう指摘すると、彼女は嫌らしい笑みで嘲けるのだ。
「誰も使ってはいけないなんて言ってないよ? そこはデンリュウが悪いよね」
「くっ……」
 何も言い返せない。まんまと彼女にしてやられた。これではこちらが明らかに不利だ。
 こうなったらもう一発瓦割りをして彼女を気絶させるしか……。
 僕は覚悟を決め、彼女へと近付こうと駆け出したら、
「うわっ!」
 不注意からなのか、ばたりと僕は前から倒れてしまう。まさかこんな時に躓くとは思ってもみなかった。
 手を前に置いて立ち上がろうとするのだが、思う様に足が動かない。首を後ろに回して確認すると、
「……? 足が、草に絡まってる……」
 いくらなんでも不自然だ。草ポケモンでも無い限り、植物が自発的に動く訳が無い。でも草が足に絡まっているのは事実である。
 まさかこれは――――。
「草結びよ。大人しく其処でじっとしてなさい」
 彼女はばちばちと強烈な電気を発生する。その中にはただ乱暴なだけで制御されていない電気もある。しかし、やがてはそれらも彼女と一体となって収束していく。
 僕の目前には、電気を纏って黄色く輝く彼女がいた。そして僕へと勢い良く突っ込んでくる。
 やばい。この状況はやばい。防御態勢も取れないで彼女の得意技、ボルテッカーなんて食らったら目も当てられない。だけど、身動きが取れないのではどうする事も出来ない。
 どおおんっっ。
 僕は彼女の言葉通りに大人しく攻撃を食らうしかなかった。


 気が付けば、僕は自分の住家にしている洞穴で寝ていた。起きると直ぐに、見慣れた岩肌の天井が自然と目に入った。
「か、身体がぁ……」
 この世とは思えない程に目覚めが悪かった。身体中のあちこちが重たく、そして痛みで満ちている。
 もういっそ、起きずにこのままずっと寝ていた方がましだ。
 だから二度寝しようとする。だが、思う様にはいかない。絶えず全身に鈍い痛みが走っては、睡眠を妨げるのだ。
 まさに生き地獄、とでも言うべきか。
 そもそもどうして僕はこんなに傷を負っているのだろう。こんな風になるまで身体をいたぶった記憶が無い。そう考えているとそこに、
「ああ、気が付いたのね」
 と黄色くて丸いほっぺが特徴の彼女、ライチュウが僕の顔を覗きこんできた。
 どうして彼女が僕の住家にいるのだろう。
 そう思うのと同時に、彼女の顔を見るなり、今度は僕の頭がずきずきと痛んだ。
 何か僕は忘れている。大切な事を。そしてこんなにも身体がぼろぼろになった訳を。
「どうだった、あたしのボルテッカー。もろに食らったもんね」
 それを聞いた途端に、僕の背筋が凍った。
 そう、僕は彼女の必殺技であるボルテッカーを無抵抗で食らったのだ。あの瞬間はもう思い出したくない。傷口が開きそうになる。
「でもちゃーんと、約束は聞いてもらうんだから」
「……約束?」
 僕は彼女と何か約束をしたのだろうか。それすらも曖昧になってしまっている。記憶が飛んでしまうほどボルテッカーの衝撃が凄まじかったのだろう。
「そう、約束。掟に則して、敗者は勝者の命令に従う約束よ」
 思い出した。最も、それが引金で僕と彼女が戦う羽目になったんだ。結果は言うまでもない、意識が吹っ飛ぶくらいのダメージを受けて僕の負けである。
 最も、彼女があの約束を本気で考えていたとは思ってもみなかった。
「……そうだったね。で、君の望むは何さ?」
 僕がそう尋ねると、何故か彼女は頬を赤く染めるのだ。何があってそんな態度を取るのかは僕には分からない。彼女には似合わず、もじもじとはにかみながら言った。
「あたしの望みはね――――だよ」
 僕は聞いた途端に自分の耳を疑った。
「え? ちょっと待ってよ!」
 彼女の発言に、僕も顔を赤くせざるを得なかった。いくらなんでもその要求は目茶苦茶だ。物には限度ってのがある。
 予め彼女が言ってた通りにちょっとやそっとの事では無い、これは本当であった。本当ではあったがそんな要求を受け入れる側としては全くもって困る。
「ライチュウ、その、もう一度ちゃんと考えた方が良い――」「あたしは本気よっ!」
 僕を逃がさない為なのか、彼女は僕のお腹へと乗ってくる。乗ってきた事により、僕の身体がまたまた痛む。
「いっ……」
「ああっ、御免デンリュウ……」
 頼むから、乗るんだったらもっと優しく乗ってきて欲しい。これでも一応怪我をしているのだから。
 彼女は痛がる僕を見つめては申し訳無さそうにしょんぼりとした。彼女の気分を表す耳も元気無さそうに垂れる。
 しかし彼女の耳が急にぴんと立つ。それに伴い彼女の表情も突然明るくなる。
「そうだ! まだオボンの実があるから食べさせてあげるね」
 そう言うと、どこからともなくオボンの実を取り出す。それから、僕の口にオボンの実を入れてくれるのかと思いきや、ぱくりと彼女が食べてしまう。
 あれ? さっき僕に食べさせるって言ったよね?
 もとより食べさせる気なんて無かったのでは、内心そう秘めながら僕は黙って彼女をずっと見守る。木の実を噛み砕いて、そのまま飲み込む、と大方予想していたのだが、
 ここで彼女は僕ににやりと薄笑いをし、そして身体を僕へ委ねてくる。痛くて動けない僕は彼女の行為を拒む事は出来ない。
 あと少しで彼女とぶつかる、僕は無意識に目を瞑ってしまう。それから間も無く口には柔らかい物と触れた感触がした。
 柔らかい感触がした後には、今度は何かが閉ざしていた僕の口をこじあけてくる。少し開いたその隙間からは 細くてペースト状にされた物が入ってきた。僕はそれを必死に飲み込んでいく。味に関しては触れられない、正しく良薬は口に苦しである。
 口にした途端に、身体の痛みが緩和されていく。全快とまではいかないが、身体が不自由なく動かせるぐらいまでには回復していく。
 彼女は磨り潰したオボンの実を送りこんだ後に、今後は強引に舌を絡ませてくる。舌と舌とが絡みあい、ふたりで木の実の後味を堪能しようとしてくるのだ。
 僕は彼女に振り回されるままに、舌を舐められていく。唾液から口の隅々まで何もかもが彼女に舐められていく。やがて僕は彼女の好きな様に染められていくのだ。それを頑なに拒むのは許されない。
「ぷはあっ」
 彼女が口を離したので、僕は瞼を開けた。口を重ねている時間は僅かであった。にも拘らず、長く感じてしまった。
 僕と彼女の間には唾液が汚ならしく糸を引いていた。それはまるでこれからの一生を表しているようにも読み取れた。僕は一生彼女の――。
 天の神様は僕にこんな運命を与えて喜んでいるのだろうか。
 彼女はどうしてこんなにも嬉しく笑っていられるのだろうか。
 僕はどうしてこんなにも嫌で嫌で仕方がないと訴えないだろうか。
「デンリュウ」
 聞かざるを得ない甘い囁き。何故ならば本日から彼女は僕の大切な、
 彼女のジグザグした尻尾が僕のモノを捉えた。尻尾はやがて僕のモノを締め付けては刺激を与えてくる。モノは次第に欲求を表すかに肥大化していく。
「あっ……」
 僕は声を上げてうろたえる。あまりに唐突過ぎて刺激に身体が追い付かない。締め付けられるのがこんなにも気持ちが良いだなんて思ってもみなかった。
 彼女は相変わらず僕のお腹の上で見つめてくる。彼女の表情は先とは違い、とても艶めかしい。あんな子供みたいに駄々を捏ねた彼女の面影は見受けられなかった。だから僕の心は現在猛烈にぐらついている。
「ふふっ、気持ち良さそうだね」
 当たり前だ。気持ち良いに決まっている。性的に敏感な所を弄られれば誰だって陥る。
 しかし、それに拍車を掛ける。僕のモノは彼女の尻尾に締め付けられたまま扱かれる。上下に往復するかに扱いて僕のモノを弄ぶ。
 この感じ、とても気持ちが良い。
 僕は生まれて一度も牝とこんな肉体的関係を体験しては無い。だから性欲処理をするのは決まって独り。そんな独りでするのと比べたら、これはもう馬鹿にならない。
 全身に刺激が巡る。血液の流れは正確に感じ取れないのに対して、これはきちんと身体に刻まれていく。されればされる程、僕の身体ないし精神までも蝕まれていく。この陶酔感に囚われるのだ。
 弄られれば弄られる程、僕の身体は熱を持つ。吐く息でさえも熱くなり身体が可笑しくなっていく。
「らい、ちゅう……」
 彼女に見下ろされているから、僕の弱さは筒抜け。僕がこんなに善がっているのも、こんなに君に従順なのも、全て。
 格好悪い、大の牡が牝に苛められるなんて。僕以外の牡はそう罵るだろう。でも僕は、そんな風には、
「そろそろいいかな……」
 そう言って彼女は僕のモノを解いた。中途半端に弄くり回されたモノからはだらしなく透明な液体が溢れている。
 せっかくあと少しで……。
 やり切れない僕の姿を見て、彼女は僕の気持ちを察知したのか、
「ふふ、安心して。まだ終わらないから」
 僕にそう言って微笑む。だけどその微笑みには黒い影が潜んでいるのを僕はよく分かっていた。そして、
 彼女は僕の上へと跨がっては妖しく笑うのだ。その様子から判断するに、彼女は最高に良い気分なんだろうな。
 彼女を下ろす、それは他愛無い事なのに今の僕にはどうする事も出来ない。抵抗する術はあるのにも拘らず、何をする事も許されない。
 だって、今の僕は彼女の操り人形に過ぎないもの。両手と両足、僕の身体なにからなにまでが彼女の物となってしまっているのだから。
「仕方ないわよねぇ、“掟”なんだから」
 彼女にそう言われて、僕は言い返す言葉が見つからない。黙り込んで、彼女を肯定せざるを得ない。
 僕はどうしてこうなってしまったのだろう。あの時に彼女を倒せばこんな運命は辿らなかった筈だ。普通に夜桜を一緒に見て一日が終わる、また僕はずっと単なる友達として彼女と過ごす。ただそれだけの関係で終えるだけだったのに、
 僕はこれからの一生を彼女へと注がなくてはならない。それが、彼女の望みであるから。
 この役目が本当に僕なんかで良いのだろうか。僕には不似合いではないだろうか。
「デンリュウ」
 名前を呼ばれて咄嗟に彼女を見た。彼女の瞳は迷いも無く真直ぐに僕を見つめていた。彼女のその視線が僕を突き刺す。
 こうして密着して肌を合わせている。彼女の温もりが嫌でも伝わってくる。そしてこの温もりは僕にとって手放したくない物である。それを僕なんかが独り占めして、
「いい? 貴方に拒否権はないんだから大人しく――」
 彼女の手先が僕のモノへと触れるのと同時に、彼女は腰を浮かせて、僕のモノを彼女の秘部へと宛行わせる。彼女の秘部には一切触れてもいないのにそこは既に十二分に熟れていた。
「やられなさい」
 その一言を告げて、浮かせていた腰をすとんと滑らかに落とした。それと同じく、長い間積み上げてきた僕と彼女の友達関係はいとも簡単に崩れさった。
 強引だった。
 僕の心に鋭利な物が深く突き刺さった。
 でも痛くはない。 
 寧ろ心地が良い。
 彼女が僕の殻をかち割ってくれた。こんなにも無理矢理過ぎる形だけど。
 彼女の表情は澱んでいた。いくら愛液で潤滑油の代わりとしても、僕のモノを受け入れてはいなかった。僕のモノに拒絶反応を示して、それは痛みとなって彼女を襲うのだ。だけでも彼女は、
「これから犯して、あげるから」
 無理をしてまでも平然を装いつつ、彼女は腰を動かしていく。上下にゆっくりと動かして僕を犯す。身体が痛みを訴えているにも関わらず、彼女は止めない。
 それに対して、僕は快感を得るだけであった。こんなにも目の前で彼女が苦しんでいるのに僕は黙って見過ごしている。
 ただ見過ごしているのは歯痒いから、
 彼女の腰に軽く手を添えて優しく抱いてやる。彼女を手前に引き寄せては、口を奪う。
 こんなありふれた方法でしか愛情表情出来ないけど、僕の精一杯の気持ちが籠っているから安心して。
 彼女は何か言いたそうにくぐもるけど、僕が口を塞いでいるから言葉にはならない。
 僕の胸で悶える彼女が可愛しかった。顔を真っ赤に染めて、視線も恥かしそうに逸らしてさ。
「はあっ」
 口を離して、空気を吸い込む。空気がいつもよりか新鮮に感じた。きっと気分が高揚しているからに違いない。
「……いきなりなんて卑怯よ」
 未だ彼女のほっぺが赤かった。どきどきと彼女の鼓動が身体を通して伝わってくる。どぎまぎしているのだ、彼女は。
「君だっていきなり勝負を申しこんだじゃない」
「それとこれとは――」「一緒、だよ」
 それを聞いて彼女は物憂げであった。何か言いたそうだけど、特に口には出さなかった。
 ふぅ、と彼女は一息吐いて、また行為を始めた。今度は苦い表情では無くて、嬉しそうな、また楽しそうな表情を浮かべていた。それに釣られて僕も自然と笑みがこぼれる。
 じゅぶっじゅぶり、と淫らな音が響いてくる。僕のモノが彼女の秘部を刺激する度々にこの音は波となって耳へと伝わる。
 彼女が嬌声を発しながら、僕の上で艶やかに乱れる。肉付きの良いお腹はぽよんと震え、大きな耳も長い尻尾も彼女の動きに合わせて美しく舞う。その姿を見ていると僕の心は次第に彼女の虜となり奪われていく。
 もっと彼女の心地良い声が聴きたいだとか、もっと淫らに腰を振って暴れてだとか、性的欲求が芽生える。
 僕をもっともっと溺れさせて。
 勿論、君の身体で。それで僕を盲目にさせて君の身体だけを感じ取りたいんだ。君が望む通りに僕は君だけに全てを注ぐから。その代わりに君は僕の身体で溺れてくれ。
 もう誰にも僕達は止められない。激しく貪り合うのだ、お互いの身体を余すとこなく隅々まで。
 彼女の中はとても熱苦しい。おまけに彼女は僕のモノを逃がすまいと言うかに締め付けてくる。彼女に包まれて僕のモノは溶けてしまいそう。
「でんりゅうっ……」
 彼女はうわ言の様に僕を呼んで、狂ったように腰を動かし続ける。何度も何度も動かしては絶えず熱い吐息を漏らす。たとえ汗だくにもなっても、ひたすら彼女は僕を感じるが為に動かし続ける。
「らいちゅうっ」
 僕も彼女に呼び掛ける。しかし、思ったより上手く呂律が回らない。この度重なる快感で脳が麻痺してしまっているのか。それとも麻痺したのは身体全体なのか。
 そして、忽然と僕の身体がびりっと痺れた。彼女が僕のモノを沈めるとまた痺れる。気が付けば、彼女が腰を落とす度々に僕は麻痺するようになっていた。
「もう、からだがいうこときかなっ……あっ」
 そう、無意識の内に彼女は静電気を発生していた。だから僕と彼女がぶつかる毎に静電気が僕へ伝導されていくのだ。こんな静電気による刺激でさえも僕は気持ち良く感じてしまう。その上に、
「ゃあっ……電気がっ」
 彼女もびくっと身を揺らしては喘ぐ。僕までもが気が付かない内に静電気を身体に蓄積させていた。この営みでもう身体が可笑しくなり、抑制が効かなくなってしまってる。
 びりっ。ぐちゅ。びりり。くちゅ。
 僕の耳は擬声音で一杯だった。それなのに、彼女の荒い息遣い、嬌声が耳に響いてきてごちゃごちゃになり、頭がぐるぐる混乱してくる。決して嫌な音ではないと言うのに。
「はぁっ……ぅあっ!」
 混乱した所為なのか、快感に溺れた所為なのか、いずれにせよ僕は下から存分に彼女を突き上げる。腰を上げて僕のモノを彼女にへと差し込んでは、腰を落としてモノを少し出す、そしてまた差し込む。すると彼女は我慢出来ずに甘美な声を上げた。
「ぃいっ、らめぇっ、ぁああっ!」
 びくびくっと彼女の全身が痙攣したかの様に震える。それとほぼ同時に彼女の中で僕のモノは急激に締め付けられてしまう。それで僕は止めを刺された。
「ぅあっ、くわああっ」
 僕も彼女に少し遅れて絶頂を迎えた。嘗て体験した事の無い感覚に襲われ、僕は喘ぐしかなかった。加えて外に出す暇も無かったので、彼女の中にどろどろで濃厚な白濁液をぶちまけてしまう。びゅくびゅくと噴出され続け、白濁液はなかなか収まらない。その所為で僕と彼女が繋がっている部分からは白濁液が漏れ始めていた。
「ぁっ、でんりゅうのが……」
 お腹の中に、と恍惚感一杯に彼女がそう呟いた。彼女はお腹を優しく擦っては僕のが来てるのを感じ取る。その時の表情はいつものあどけなさとは一変して、母性が滲み出ていた。 
 その姿に僕は胸を奪われた。彼女のこんな様子は目にした記憶が無かったから、本当に彼女なのかと疑ってしまう。
 でもそんな彼女はほんの僅かであって、
「もっと、もっとでんりゅうのがほしいな」
 妖しげな笑みを僕に投げ掛け、何時も通りの彼女に戻る。ふふっ、と気味の笑い声も出して益々怖い。
 それを見た途端、僕は逃げ出したくなった。
 だけどそれは不可能であった。未だに彼女は僕の上に乗っているし、何より絶頂後の為なのか力がなかなか入らない。
「まだでんりゅうもまんぞくしてないもんね」
 いや、僕はもう充分過ぎる程に満足したよ。その証拠に君に出し尽くしたじゃない。なんて言っても彼女は聴く耳を持たないだろう。
「せめてさ、休憩し――」「そんなのはいらないからもっと、たのしもうね」
 僕の意見はあっさりと却下され、彼女はぽんぽんと手拍子をした。普通の手拍子ならまだしも、それは僕にとって凶悪な物に違いなかった。
 聞き終わると自分の身体が勝手に動き出す。自分の意志とはお構いなしに。
 僕は彼女を力一杯に押し倒して、自分のモノで乱暴に彼女を突いていく。一心不乱に腰を振って彼女を持て成すのだ。たとえ身体が疲れていようがそんなのは関係無い。
 彼女のアンコールに応えるが為に我が身を犠牲にしてまでも僕は尽くさなくてはならないから。


 こうして僕は彼女に一生を捧げる身となってしまった。この役目から下りるのはもう許されない。それが僕に与えられた掟なのだ。後悔はしていない、掟に従うのが当然である。
 そしてこの掟は決して辛いものでは無い。寧ろ背負う方が幸せなのだ。だって、
 彼女の側にいつまでもいられる口実になるのだから。
「あの時、あたしに負けて後悔している?」
「いや、全然。その逆かな」
「ふうん。負けて良かった、か。変なの」
「ちょっと、変って――」「お父さん、お母さん、話してないで遊ぼうよ!」
「ほら、愛する我が子が呼んでるよ」
「そうだね。じゃあ行こっか」
 僕は立ち上がり彼女に手を差し出す。対する彼女は差し出された手を取って身体を起こす。彼女も立ち上がり一緒に歩き出す。
 これからも家族皆で仲良く過ごしていこう、ライチュウ。


後書き
PBR(ポケモンバトルレボリューション)で自分のデンリュウがライチュウに負けたのをきっかけでこの作品が出来上がりました。ラスト一匹同士の対決でライチュウにアンコール出され、技をロックされてぼこぼこやられましたw

作品タイトル 彼女に応えるが為に我が身を犠牲にしてまでも
原稿用紙(20×20) 35.65 枚
総文字数 11598 文字
行数 285 行
台詞:地の文 1545文字:10053文字



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Last-modified: 2011-10-27 (木) 00:00:00
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