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強者達にポケモンとの生活をインタビューしてみた。

/強者達にポケモンとの生活をインタビューしてみた。



みなさま初めまして、ワッカと申します。

これから宜しくお願いします。
ちょっとばかしプロフィールでも

HN ワッカ
性別 ♂
年齢 14歳
好きなポケモン ウソッキー クチート

今日初デビューです、よろしくお願いします。まだプラグインの使い方などよくわかっていないので、手探りで頑張っていきたいと思います。

嘘でした!!

えぇ、4月1日だったので、たまにはふざけてみたかったのです。作者は私です

事の始まり 

私立 ヒオウギポケモントレーナーズスクール 高等部 夏季休講課題:自由研究
ポケモンバトル興業 競技者学部 ポケモン育成及び使役戦闘術学科所属 シラモリ カズキ
出席番号********
『優秀なポケモントレーナーが、普段どのようにポケモンと交流しているかをインタビュー形式での調査及び、
その方法とポケモンたちの戦闘スタイルとの関係性の考察』
今回の調査では、録音した音声を、台本形式で文字として打ち込み、その調査結果とします。


 まさか、高校生にもなって自由研究の課題をやるとは思わなかった……チェレンさんもセンスが古い。
 故郷から遠く離れたここ、ヒオウギシティで住み込みのバイトをしながらのトレーナーズスクールの夏休み。どんな課題が来ても三日のうちに終わらせようと意気込んでいたが、こういう課題だと数日かけないと終わりそうにない。
 だが、運がいい事に、トレーナーズスクールの特別講師をしていただいている、隣町のザンギタウンに住むアデクさんには気に入られているため、その方面での伝も多い。映画スターのハチクさんや、四天王のレンブさん。そして、サブウェイマスターのノボリさんやクダリさんとのつながりもあるというから驚きだ。
 とりあえず、コンタクトを取れたトレーナーを、片っ端から列挙して、適当且つまじめに考察をすればそれなりに体裁は整うだろう……


トレーニングの仕方について 

レンブさんの場合 


 レンブさんは、アデクさん経由でテレビ電話をつないでもらい(パソコンの使い片がわからないそうなので、パスの入力以外のほとんどは私がやることになった)テレビ電話越しのインタビューとなりました。
 それにしても、凄い筋肉だ。私もバイトのおかげで筋肉はついているけれど、こんな風になるにはどういう鍛え方すればいいのだろうか……男としてちょっとあこがれるなぁ。

レンブ「ふむ、どうやって強くなったか……か。簡単なことだ、鍛錬あるのみだ」

私「そ、そりゃ鍛錬なしには強くならないでしょうけれど……その具体的な方法を出来れば……」

レンブ「まー……自分のポケモン同士を戦わせるのは他の誰もがやっているだろうし、変わったことといえば私自身がポケモンと戦っていることくらいか。私の師匠のアデクさんも、ギガイアスやイワパレスを軽々と持ち上げる怪力を生かして、巨大な盾とランスを手にしてシュバルゴに戦いを挑んだり、消防服を二枚重ねで着用してウルガモスに挑んだりとか無茶をしていたので」
私「私の師匠もやってまして、私もおんなじ感じです。危ないって何度も言われましたけれど……」

レンブ「ほう、お前もいい肉付きだと思ったが……なるほど、傷だらけなのはそういうことか。それなら、もうインタビューの必要もないと思うが、そうやって自分がポケモンと戦うことで何が見えると思う?」

私「よく、ボクシングの試合とかで見えないパンチって言うじゃないですか。昔はあれが疑問だったのですよね……」

レンブ「ふむ」

私「例えば、見てから回避を始めるまでに、0.13秒かかる人が居たとして、その人にとって……打ってから相手に届くまで0.15秒のパンチと0.14秒のパンチは、回避に掛けられる時間が倍違うのです。もちろん、そこまで単純じゃないですけれどね。目線とかでいつパンチを放ってくるかとか、なんとなくわかりますし」

レンブ「前者ならば0.02秒、後者ならば0.01秒でパンチを処理しなければならないな。だけれど、横からパンチを見るだけでは、実質の素早さに10%の違いもないというわけか……確かに、そういうことは実際に戦ってみないとわからないのかもしれないな。
 君の言うとおりそこまで単純ではないが、向き合ってみなければわからないことがあると言うのは本当に身に沁みて思う」

私「はい。横からパンチを見ているとわからないですが、ポケモンと向き合うことでそういうのがわかるようになりました。同じように、客観的に見るだけではわからないような事も、向き合って直接戦うことで、長所も短所も対策法も自分の体で体験することが出来るようになって……要は、そういうことなんだと思います。
 あとは、ポケモンが心なしかなつきやすいですね。遠くにあるランセ地方とかでも、軍師は指示を出すだけでなく自身も駒として戦場に出なければ舐められると聞きますが、そういうことなんだと思います」

レンブ「大体同意見だ。だが、少し付け加えさせてもらうと、一番大きいのは痛みの共有だと私は思っている。ポケモンは、トレーナーに飯の世話そして貰っているからこそ従うというのも多いが、心のどこかでトレーナーの立場をうらやみ、嫉妬しているものだ。
 共に戦い、流した血と汗を共有することで、その嫉妬やわだかまりもなくなり、純度の高い絆が出来上がるものだと私は信じている。もちろん、直接戦うなんてことをしなくとも絆を育むことは出来るが……私は不器用でな」


 レンブさんは笑っていた。口下手なのかもしれないけれど、拳で語るって言う言葉があるように、それを実践できる人はこんな風に強いのだと感じる。拳で語るのを好むポケモンは、やっぱり格闘タイプが多いので、彼が格闘タイプを得意とするのはある程度当然のことなのだろう。
 口調はなんだか威圧的だけれど、気は優しくて力持ちという言葉を体現するような、そんな印象を受けた。

ギーマの場合 

 ギーマさんとは、アデクさんとは別のコネがあるので、直接会うことが可能であった。こうして直接会って一対一で離すのは久しぶりだから、向き合ってみるとものすごい雰囲気を纏っている。ギャンブルとなればじゃんけんですら勝てる気がしないというかなんと言うか……これが勝負氏の風格という奴なんだろうか。

ギーマ「特別なこと……私は何かしてるかな?」

私「な、なんとも頼りない答えですね」

ギーマ「うん、だって特別なことをしているつもりはないし。まぁ、そうだね……勝敗によって、夕食の美味しさが変わるくらいかな」

私「はぁ……要するに、メニューが変わるということですか」

ギーマ「うん。もちろん、栄養バランスが悪くて倒れられても困るからね。量はほとんど変わらないと考えてもらってもいい。けれど、例えば味の濃い料理と薄い料理を同時に出されたら君も嫌だろ?」

私「そう、ですね……同じとは言いませんがちょうどいい味で出してもらったほうが助かります」

ギーマ「似たようなもので、酸味のある木の実と辛い木の実を同時に出すとかね」

私「うわぁ……」

ギーマ「必死だよ、みんな。でも、頑張りさえすれば餌はもらえるんだ。頑張った先に努力が実らなければどうにもならないこともあるけれど……なんにせよ、頑張ることを最も優先させているね。適当にバトルをして負けたような子には、流石に餌の量を減らすくらいのことはするし……そういう厳しさも持ち合わせないといけないと思ってる。
 そして、ポケモンだけでなくそれは自分にも言い聞かせているよ。基本ポケモンと一緒に食事を取っているけれど……何かの試合で負けたり、格下相手に無様な勝ちを拾ったりすれば、それが公式試合か否かにかかわらず、自分も地べたに皿を置いて、つつましく食べることにしている」

私「流石に、ナイフやフォークのような食器は使うんですよね? あと、服は」

ギーマ「いやいやいや、君はどういう想像をしているんだ。フフフ……まぁ、赤子の手を捻られるかのように無様に負けたときは、服も脱いで裸で、手を使わずに食べるくらいはするべきかもね。そういうことは無いように祈っているよ……うん。
 ともかく、飴と鞭って大事だよ。その塩梅は難しいけれど、それを上手く出来る人がきっと、よいトレーナーになるんだろうね。タブンネ」

 相変わらず飄々としてつかみどころのないギーマさん。飴と鞭の使い方のほかにも、押しと引きを使ってポケモンをなつかせるのもコツの一つだと聞いた。もしや、ギーマさんのポケモンに雌が多いのはそれが原因なんじゃ……考えすぎかな?

ハチクさんの場合 

 この人も、レンブさんとほとんど同じ感じでインタビュニーに誘うことができました。今は映画のポケモンと人間の心が入れ替わり、そのまま日常生活を送る羽目になるフォーチュン・ポフィンの撮影も終わって、オフの真っ最中。もうジムリーダーではないけれど、それでもポケモントレーナーとして各地を回って修行の最中なのだという。

ハチク「厳しい環境に身をおくことかな。そうすれば自然と、それに耐性ができるものだ」

私「それがつまり、ハチクさんがあんな寒いジムで肩を出している理由なんですか……」

ハチク「うむ。そのかわり、私のポケモンたちにはリバースマウンテンに修行に出すようなこともしている……ものすごく嫌がられているから、リバースマウンテンで野山篭りを終えてジムに戻った直後のバイバニラの甘えっぷりときたら、殺意を感じるくらいだ」

私「殺意ってそんな……」

ハチク「寒いジムで普通なら凍えているというのに、冷機を振りまく体を摺り寄せてくる好意を、『殺意』以外に表現する言葉を私は知らないからな。だが、本当に死にそうになる前に止めてくれるから、なんだかんだで信頼もされているし、なついてくれているのだろう。これ以上はいけないというラインをポケモンと人間もどちらも持っている。それは非常に貴重なことだと思う。
 こういう言い方を嫌う人はいるが、所詮ポケモンと人間は別の生物。人間同士ですら分かり合えないのに、ポケモンと人間で完全に分かり合うことは不可能だ。だからこそ、わかるところを精一杯わかろうとする。そういったことを続けていれば、自然と見えてくるものもある。
 相手が何をしようとしているか、完全にわかるわけではないが……バトル中も、相手が何をできるか、できないか。もちろん、自分が何をできて、何をできないかを知ることが一番大事だ。自分の限界を見せることで、限界を知ってもらう。そして自分たちの限界を知りあうことで、相手の限界を予測する。私がトレーニングで気を使っていることといえばそんなところか」

私「なるほど……極限状態でしか見えないものを感じるということですね」

ハチク「うむ。だが、こんなことは言葉や表現を変えて誰もがやっていることだと思うがな」

 そう言って、ハチクさんは言葉を締める。確かに、限界近くまで追い詰めないと見えないものもあるだろう……トップアスリートとかって呼ばれる人は、きっとそれを知っているのだと思う。

ポケモンとのふれあいについて 

レンブさんの場合 


レンブ「そうだな。やはり、頑張ってもらった分は何かをして上げなければいけないと思う。私は、とりあえず、風呂を炊いたり、食事を作ったり……あと、ローブシンの石柱についた指の油を取ってあげたり、滑り止めの松脂を塗って扱いしやすくしたりとか……
 あとは、ダゲキナゲキの胴着も毎日洗っているな。洗濯機で洗うと痛みやすいから手洗いなんだがこれが大変で……そうそう、キノガッサは湿気が好きだから、モンスターボールは専用のウェットボールを使っているし……」

―以下省略―

 話を聞いているうちに、レンブさんと結婚したいと思ってしまった自分が怖かった。いや、レンブさんって実際専業主夫になっても大成できるレベルなんじゃ……?
 そこらへんの女子よりもずっと家事力あるよなぁ……

ギーマさんの場合 


ギーマ「そうだね。私の場合、紳士服メーカーがスポンサーになっているからね。よくポケモン用の服も貰ったりして、それでいっつもおしゃれをしてあげているんだ……雑誌にもよく出てるから、そこらへんは知っていると思うけれど」

私「ギーマさんのポケモン、みんな着飾っても着飾らなくても可愛いですよね」

ギーマ「うん、みんな妖艶な魅力の持ち主だからね。あくタイプはそこの見えない黒さや、珠に見せるデレの美しさが好きなものさ。そうそう、ふれあいといえばね……私は、宝剣を集めるのが趣味でね」

私「宝剣、ですか? 」

ギーマ「うん、要するに装飾された刃物だね。日本刀見たくそれだけで芸術品になる刃物はもちろん、人を斬るのはもったいな過ぎるっていう豪華な装飾を取り付けたものがほとんどさ。それで、ステーキを焼いて血のように赤いワインを飲むのが大好きでね……」

私「そんな高級な刃物で料理を食べるとか、優雅な趣味ですねぇ……」

ギーマ「贅沢な趣味さ。本当ならばガラスケースに入れて保管しておくような高級な代物を、食事に使うなんてね……で、そういうことが好きだからね。私も特に全身刃物なキリキザンに入れ込んでしまったというわけさ」

私「それでそれで?」

ギーマ「キリキザン相手には、ちょっと特別なふれあい方をしていてね……まぁ、他の子にもいろんなふれあい方はしているけれどさ。ちょうどその様子を大体いつもどおり撮影した映像があるんだが、見るかい? キリキザンの魅力をわかって欲しいから、無料で上げちゃうよ?」

私「え、いいんですか?」

ギーマ「うん。自分と同じものをよいといってくれるのは、嬉しいものさ。それは四天王とか呼ばれていても変わらないよ」

 柔和な微笑を浮かべて、ギーマさんはその&ruy(ブルーレイディスク){BD};を渡してくれた。パッケージにはなぜか、キリキザンが頭から血のように赤いワインを掛けられている映像が描かれており、そこはかとなく危ない匂いがする。いい意味でこの絵が嘘でないとすると、なんか色々地雷臭がしてならないのだけれど。

ハチクさんの場合 


ハチク「ホームビデオだな」

私「オフの日まで撮影ですか?」

ハチク「撮られるのが好きなのだよ、私のポケモンは。可愛いとか、格好いいとか褒めれば、それで起源をよくしてくれる。のびのびとした演技や、映画では決してできないようなはっちゃけかたなど、普段と違う顔を見せてくれるのも楽しくって、ついつい私自身も夢中になってしまうよ」

私「なるほど……そうして撮ったものはやっぱり逐一保存しているのですか」

ハチク「もちろんだ。大切ない思い出であり、記録だからな」
 ハチクさんは、時折見せる自分のポケモンたちの魅力について語っていた。その活き活きとした表情は、銀幕の中にあるものと同じで、なんというか本当に自然体で演技しているのだと感じる。ポケモンバトルとは関係ないけれど、こういうところが映画スターとしての才能なのだろう。

小休止して、とりあえずギーマさんから貰ったDVDを見てみる 



「あー……疲れた」
 まだ文字に起こすだけの作業ですら半分も終わっていない、まだシキミさんとカトレアさん。そしてバンジロウさんにアイリスさん。そのほか色々のインタビューが残っていると思うと、文章に起こすのが非常憂鬱だ。それに加えて考察も書かなきゃいけないのだから骨が折れそうだ。
 気分転換にと、俺はギーマさんから貰ったBDを開いてみることにする。ギーマさんはあの容姿だ。ミステリアスで悪っぽい雰囲気から惚れる女性、憧れる男性も少なくない。
 だからこそ、ポケモンとのふれあうだけという内容の映像作品でさえ、自身をポケモンに置き換えて陶酔する女性が後を絶たないのだという。要するに、このビデオは女性向けなわけだが……あれか? 俺はギーマさんに感情移入をすればいいのか? どうなんだ?

 そんな事を思っているうちに、ディスクが起動してメニュー画面が現れる。と、とりあえず……

取りあえずはギーマさんから勧められたキリキザンを見てみる 


 ムービーがスタートすると、場所は広い浴場だ。10人は一斉に入れそうなバスルームだが……流石にギーマさんの自宅ではないだろう。おそらくは、撮影用に場所を借りたというところか。
 しかし、気になるのはギーマさんの服がものすごく汚れているということだ。元は真っ白であったであろうフードつきのバスローブは、真っ赤なシミがいくつもついている。なぜかキリキザンにもフードつきのバスローブが着せられている。雰囲気的な問題なのか、キリキザンはフードをかぶっている。
 その染みのつき方……あの日の発言でなんとなくわかってしまうが、おそらくはワインによるものだろう。渋みのあるポリフェノールのあの染みが、洗濯をしてもちょっとやそっとじゃ落ちやしないから。
 まず最初にギーマさんはキリキザンと手をつないで、浴場へとむかって歩いてゆく。右手はキリキザンの手、左手には色々入ったバスケット。
 そのゆったりとした足取りが、なんだかバージンロードを歩く新郎新婦を思い起こさせる。浴場が近くなって、ギーマさんが一歩先導して歩いていたかと思えば、彼はキリキザンの手を離すと共に、浴場の真ん中へ。中心部についたギーマさんは両膝をつけてひざまずいてキリキザンを段差のある浴場へとエスコートする。
「さぁ、どうぞ。マダム」
 ギーマの呼びかけに、彼女は段差を一歩踏み越えると、ギーマさんと左右対称になるように正座の姿勢をとる。
 そしたら、次はギーマさんがバスローブのフードを取る。先程バージンロードを歩いているようだと思ったのは間違いではないようだ。これは、結婚式で誓いのキスをする際に、ヴェールをめくる動作を明らかに意識している。しかし、その時の揺れるギーマさんの瞳……なんとも扇情的だ。正座したキリキザンはといえばカメラを回されたときは目を瞑り、背中にヒルが這っているかのように背筋を伸ばした恍惚の表情。
 なるほど、これはなかなか……えーと、うん。人間の女性に同じ表情をさせてみたいものだ。うん。

 フードをめくり、頭についた刃があらわになる。磨き上げられた青銅のような小金色、いつ見ても美しい。
「今日も傷ついちゃったね……」
 戦いの後らしく、ギーマさんは刃の表面を指で撫ぜる。鋭い切っ先に一度口付けをする際にビデオカメラはズームとなる。その際、ギーマさんが撫でているあたりに細かい傷があるのが見て取れた。その傷をいたわるようにギーマさんが撫でる手つきは、かさぶたを撫でるような、腫れ物を触るような手つきだ。
 視力が悪いわけでもないのに息が当たるくらい近くまで顔を寄せているし、頬に左手を当てて右手で撫で、体はタオル地のバスローブ越しとはいえところどころに触れている。ポケモンでもクラクラするのだろうか、時折体を震わせている。
 やがて、甘い愛撫が終わると、ギーマさんはバスケットの中に入れてあったワインボトルを取り出す。ついにあのシーンが出るのかと思うと、強烈な期待とこれ以上見てはいけない背徳感のようなものを感じる。あらかじめコルク抜きがさしてあったそれを、ギーマさんはなれた手つきでコルクの栓を抜くと、それをほうり捨てる。
「さぁ、はじめるよ」
 ギーマさんは左手で(わん)を作り、右手でそこにワインをとくとくと注ぐ。ぽたぽたと指の隙間からたぎり落ちるワインがなくならないうちに、ギーマさんはそのワインを、洗礼の儀式であるかのように頭の刃に滴らせる。
「あぁ、美しいよ。本当はこんなワインじゃなく、血の色で染まった君が見たいんだけれどね……でも、美しい」
 さて、俺はどこから突っ込めばいいのか……というか、ギーマさん何やっているんですか。
 さらにギーマさんは棒を取り出す。きらきらと光り輝く、ラメでもはいっているのだろうか? そんな棒だ……いや、多分アレは工業用の人口ダイヤモンドが入った研ぎ棒だ。プロの料理人が使うような極めて鋭利な刃物を研ぐわけでもないし、キリキザンは切れ味よりもぶった切る感じに切り裂くのを得意とするポケモンだからそれでも十分なのだろう。
 ギーマさんはキリキザンの背後に回り、刃が刺さらない後ろから抱きかかえられ、バスローブ越しに伝わるギーマさんの体温。すべてが官能的。ギーマさんの右手は原にある二枚の刃の間に添えられており、なぜか指を上下させてじらすような動きをしている。
 きらきら光る棒で切っ先をとがれる音、そしてギーマさんに身をゆだねるキリキザンの表情……この映像作品を見ている人は、キリキザンのあの表情に感情移入するのだろうか……まぁ、世の中には変わった女性がたくさんいるということで。
 キリキザンは目を瞑ったまま、零れ落ちたワインを舐める。研ぎ棒の削りかすが混ざっているはずのそれだが、鋼タイプだからか鉱物を食べるのも嫌いじゃないのだろう。普通のワインよりもむしろ美味しく感じているのかもしれない。微妙なカットをはさみつつ頭の研ぎを終えると、一旦見事な幾何学模様の描かれたガラスの水差しに入った水を頭から流して、ワインを洗い流す。
「綺麗になったね……今の君、輝いている」
 そして、ギーマさんはキリキザンの手をとり立たせ、その手で服を脱がしていく。これが人間の女性なら興奮したのかもしれないけれど……世の女性はどういう目でこのシーンを見るのだろう。
 脱がせたバスローブは、またもほうり捨て、キリキザンを再び座らせる。ギーマさんは自身でワインを口に含むと、彼女の手をとりワインに塗れた舌で彼女の腕の刃を舐める。その後は頭と同じく研ぎ棒で研ぐのだが、今度はバスローブ越しとはい、膝の上にキリキザンの手が載せられている。好きな男性の膝に、自分の手が乗せられる……性別を逆転して想像してみると、これは結構興奮するシチュエーションなのではないか。
「君の味、ワインと混ざってまるで血のようだ……」
 ところで、俺は誰に感情移入をすればよいのだろう? あれかな……キリキザンを好きな女の子に置き換えてギーマさんになりきるのを想像すればいいのかな? って、好きな女の子の手や頭の刃を研ぐってどんな状況だよ!
 先程の頭のときは髪にシャンプーをかけているという想像も出来なくはないけれどさ……。

 両手を終えると、同じように水差しを使って手を清める。『大体いつもどおり撮影した映像』とギーマさんは言っていたが、普段は普通にシャワーを浴びせるのだろうか? 
 最後はやはり、腹の刃だ。しがみつくことで、相手の腸に届け、えぐれとばかりに攻撃するための部位。あそこばっかりは、ぶった切ることはボディプレスでもしないと無理なため、切れ味が重要だったりする。
 そのためにギーマさんがバスケットから取り出したのは、普通の砥石だった。プロが使うような天然石の高級砥石ではなく、粗い目と繊細な目の面がくっついている、ごくごく普通の人工砥石だが……アレで結構草刈りカマがよく切れるようになるから、馬鹿にはできない。魚をさばくにはあの砥石じゃだめかもしれないが、まぁ……キリキザンが敵を苦しめるのであれば十分すぎる。
 キリキザンは仰向けに寝かせられ 胸の上で手を合わせた。その横に跪いたギーマは、まるで白雪姫の死体に触れる王子様のように優雅で繊細な手つきをもってして、ワインを注いでゆく。
「じゃあ、いくよ……」
 そして、キリキザンをいつくしむように砥石をあてがうと、それを上下にゆする。石と金属のこすれる音……規則正しく寄せては返す、手の動き。キリキザンの切っ先は緩やかに、少しずつ輝きを取り戻してゆく。
 祈るような姿勢でいたキリキザンは、胸を上下させて静かに呼吸しているが、なんだかそれは少し震えているように見えた。呼吸が震えるほどに興奮しているのだとしたら、男の冥利に尽きるといって過言ではない……ってアダルトサイトの見すぎかな*1
 ギーマさんは一度ワインを洗い流してから、今度は水で細かい目をつかって念入りに研ぐ。二段階の研ぎをするのだから、腹の刃はよほど重要なようである。細かい目での研ぎは、先程の激しい手つきとは打って変わって、ゆったりとした手つきで行われる。シャシャシャシャシャシャというのが先程の手つきならば、次はシャッシャッシャッシャと、ゆっくりとした手つきで。最後に名残惜しむように砥石を滑らせると、研ぎは終わった。
 最後に水差しの水を全部かけ流すと、画面は暗転してゆく。この場面は終了のようで、メニュー画面に戻っていった。

「何だこれ……」
 『キリキザンの手入れの仕方もこれでOK!?』とパッケージにあおり文句が載っていたが……いいわけあるか!! と声を大にして叫びたい内容であったことは、間違いないといえる。
 とりあえず、なんか無駄にエロかった気がする。そして、ギーマさんが変態だということが伝わってしまったような気がする。世の女性たちはこれをどういった目で見るのか……というより、この作品はどういう層に人気があるのか、まじめに気になるのであった。

パッケージにお勧めの一つとして乗っているレパルダスを見てみる。 


「さて、これはどんな感じなんだろう」
 レパルダスを酔わせてしまおうというコンセプトらしいこれは、一体どんな内容なのやら。まぁ、酔わせるという時点で、なんというか使うものは大体予想はつくが。案の定、画面が明るくなったときに持っていたのは、『Wiki Berry』と書かれた紙袋。『wiki Berry』とはつまりウイの実のことで、ウイの実の根っこや枝には、猫系のポケモンを酔わせる効果があり、それを乾燥させたものならばよりその効果が高いといわれている。
 先程はバスローブだったが、今回は彼の正装とも言える、襟が紅い紺色のスーツに黄色いマフラーという、キリキザンと同じカラーリング。いつものギーマさんだと安心する。
 足元のほうを見てみると、すでにレパルダスは臭いで何を持っているかわかっている模様。いつもはおしとやかな彼女も興奮していて、ギーマさんの腰にすがり付いて甘えている。
「わるいこだなぁ、君は……」
 そんな彼女の頭を右手で撫で、あごを撫で、耳を弄繰り回しつつも、左手は紙袋を高いところに掲げて離さない。悪タイプらしい意地悪なギーマさんの顔が、とても魅力的だ。
「そんな悪い子には、上げないよ」
 こういうのをエロボイスというのだろう。キリキザンのチャプターのときからすでにその片鱗は見えていたが。声だけで耳が妊娠しそうとはこのことだ。
「さぁ、いい子ちゃんにしているんだ」
 そうして、ギーマさんはヨーテリーなどがやるように、レパルダスに待ての姿勢をさせる。
「よーしよし、いい子だ」
 ギーマさんはしゃがんでレパルダスを撫でる。しかし、左腕は肩が許す限りレパルダスから遠くの場所に行くように延ばされており、なんだか疲れそうな体勢だ。そんな体制をしているから、悪タイプのポケモンらしくレパルダスは奪い取ろうとして左腕に飛び掛るのだが。
 ギーマさんはそれを読んでいたらしい。
「こらこら、だめだろう?」
 黒い鼻を親指で押さえてそれを阻止すると、そのまま上顎を掴んでキスをする。
「悪い子には、お仕置きだよ」
 耳が虫歯になりそうなくらい甘い声だ。なんかもう、鼓膜に歯磨きしたくなるレベルで甘い。
 そして、驚きなことに、レパルダスはその口付けで酔ってしまった。どういうことかというと、もちろんギーマさんが口の中にウイの実のドライフルーツを入れていたというわけだ。渋くないのかな……? 口の中から取り出した、唾液で塗れたそれを、ギーマさんはレパルダスの口を開けて放り込む。
「さぁ、気持ちよく酔うといい……夜は君の味方だよ」
 つまりどういう意味なのかよくわからないが、ギーマさんは甘い声でそういった。

「まだ足りなかったら、これを使うといい」
 言うなり、ギーマさんは紙袋をレパルダスに渡す。すっかり出来上がったレパルダスは、その紙袋を前足で抱えると、立派な牙の生え揃ったマズルで紙袋に牙を立て、引きちぎって破る。そうすることで中から広がる芳香に、どれだけの悦楽が詰まっているのやら。恍惚とした表情を見せるレパルダスは、床に臭いをこすりつけるように仰向けになって、陸に打ち上げられた魚のごとくうねっている。
 大また開きで、仰向けで腹をあらわにして、紙袋を抱えるレパルダス。なんというか、これは男としてこみ上げるものがある。転げまわるレパルダスは、うつぶせになったり横向きになったり仰向けになったりで忙しい。
 体勢を変えるたびにギーマは胸や腹、首などをくすぐりつつ、櫛で毛皮を梳いて可愛がり、その度に悶えるように横向きになって伸びをするレパルダス。普段伸びをするときは地に足がついているというのに、今は地に足をつけることすらできないから、横向きになるしかないのだ。
 レパルダスは酩酊したまま、ギーマさんの櫛使いに悶える……なるほど、これはなんとなくギーマさんに感情移入できる気がする。今すぐにでもテレビ画面の中に手を突っ込んでご一緒したい気分だ。
 
 しかし、レパルダスの淫靡な事。猫背だってのに背筋を伸ばすほど反り返って、麻薬でも摂取したかのように善がり狂っている。本当に麻薬でもやっているんじゃないかと思うような、激しいトリップの様子……この背徳感がまさにたまらない。媚薬を使ったなんていうネタは巷にあふれているが、そんな都合のいいものは早々あるはずもないのに……だが、この悶えようだ。
 媚薬といわれれば信じてしまいそうなほど、効果が強い。これは人間に置き換えなくとも、なんというかムフフな気分になれるが……いやほんと、世の中の女性は以下略だ。続いて、レパルダスはおぼつかない足取りで力なく立ち上がり、立て膝だったギーマさんのわきの下に潜り込む。
「おやおや、甘えん坊さんだな」
 ギーマさんにマーキングするようなこの甘え方、まるでレパルダスガ『ご主人は私のものよ』と主張しているようで、狂おしいほどに愛おしく感じる。
「本当に仕方がない、悪い子だな」
 酔った末の仮初の甘えたがりな一面なのかもしれないけれど、こんな風に蜂蜜のように甘ったるく甘えてもらえるならば、レパルダスを所有しているトレーナーの冥利に尽きるというものかもしれない。そういえば、講師のチェレンさんもレパルダスを所有しており、ジムリーダーとしての仕事以外ではその力を振るわせていたが、あの人はどんな風にレパルダスに触れ合っているのだろうか、ちょっとばかし気になった。ひひひろし先輩の妹、しょしょしょうこさんもそういえばレパルダスを持っていたっけか……。

 そうやってしばらくの間トリップしていたレパルダスは、毛づくろいが終わるころには正気に戻ることでしっかりとした足取りに戻っていた。ウイの実は一度覚めるとしばらく効果がなくなる便利な代物だから、しばらくはウイの実に対して見向きもしなくなるだろう。
 それでも、トレーナーのギーマさんへぴったりと体をこすり付けて歩くさまは、なんだか巷に沸くバカップルのような仲のよさを髣髴とさせる。ウイの実の効果で甘えん坊になっているレパルダスとギーマさんを見送って、この動画は暗転してメニュー画面に戻る。

「今のは悪くなかったかも……」
 なんか同じ事をしてみたいけれど、チェレンさんやしょしょしょうこさんにレパルダスを貸してと頼んだら怒られそうだなぁ……これ。

『脱皮のお手伝い』というのがひたすら気になるので、ズルズキンの項を見てみる 


 ズルズキンといえば、特徴的なのはあの服だ。彼女らは、自分が脱皮した際に、その皮膚を自身の酸で溶かして吸着させ、服のようにするのだ。そのため、進化したてのころは面積が足りないので半ズボンほどの大きさだが、脱皮を繰り返すごとに継ぎはぎし、分厚く重ね合わせることで大きく丈夫な服を着ることが出来るようになる。
 だから、ズルズキンの脱皮はまず服を脱ぐところから始まるのだ。えーと、その、つまり……

「こっちだよ」
 ズルズキンの前を歩いて、ギーマさんはいつもどおりのあのキリキザンカラーの服を着て現れる。今回は、なんというか……潮風にも強い岩の素材や、ワックスがきつめに掛けられた木材を多用した内装の家……サザナミタウンのような場所での撮影のようだ。わざわざサザナミタウンまで行ったのか、それともポケウッドの合成技術なのかは知らないが、なかなかいい雰囲気だと思う。
 遠くからは波の音が聞こえるし、よく見ると潮風でギーマさんの髪も靡いている。ギーマさんの家はブラックシティにあるから、サザナミタウンならば遠くもないので、どこかの別荘を借りたというのが、正解だろうか。
 潮風に揺れているのは、ギーマさんの髪だけでなく、ズルズキンのトサカや服も靡いている。気持ちよさそうな風である。
 さて、二人はおもむろに籐で作られた通気性抜群のソファに座る。ギーマさんは足を組んで、隣に座るズルズキンの方に腕を回している。なんだか恋人のようでほほえましいが、ギーマさん、本当に何やっているんですか。
 その様子をズームして観察すると、ズルズキンの皮膚は確かに剥けかけの様子。人間が日焼けしたときに皮がむけるときのような汚い感じではなく、皮膚のところどころが薄く剥離しているような……しかし、かゆいのは人間と同じようだ。しきりに指の爪で体の各所をつついてかゆみを紛らわせている。
 そんなズルズキンの状態を見計らったように、ギーマさんは懐の内ポケットからナイフを取り出す。美しい銀色、鋭く冷たい光を放つそれは、まさしく鉄の芸術。髪の毛を乗せただけで切れそうなそのナイフを構えたギーマさんは、(とい)のついた刀身でズルズキンの頬を撫でる。切っ先を当てているわけではないので切れることはないが、少しでも動いたら大事故になりそうなくらい、本当に残酷なほど綺麗な刃だ。
 そのナイフを滑らせ、ギーマさんは首のフード状になった部位を切り裂く。本来ならば群れの仲間がやってくれる脱皮の手伝いだけれど、人間に飼われているポケモンはこういう風に手助けしてあげなければ大変なのだ。切っ先で撫でるだけで服は切り裂かれ、フードをはずした首があらわになる。それをソファに座ったままやる意味はあったのだろうか?
 あるのか? 本当にあるのか?

「次だ……もっと君の美しい肌を見せてくれよ」
 しかし、このチャプターはさっきのレパルダス以上にエロイ。なぜって、脱がせるのではなく服を切り裂くという行為がね……『もう服を着る必要はない』とか『私の前ではずっと裸でいい』とか、そういうことを暗に言っているようで……そして、虫が体の上を這うようなあの手つき。かさかさと音が聞こえてきそうなあの手の動き……パソコンのキーボードを叩いているんじゃないんだから。
 それに加えてノックアウトものの台詞までついているのだから、甘すぎて吐き気がする。
 でも、その手つきをズルズキンは気に入っている様子。もう何がなんだか分からないけれど、エロイ事だけはかろうじて分かるよ。もう、ズルズキンを背の低い女性だと思いながら見ることにしようそうしよう。
 脳内でズルズキンを童顔の女性に変換しながら続きを見る。ナイフを握っている指のうち、人差し指だけを離してギーマさんはズルズキンの腹をなでる。その指が下半身の山吹色のパンツに触れると、人差し指を引っ掛けてそれを引っ張る。そして、人差し指はパンツを持つ役目を左手に預け、ギーマさんはしっかりとその手でナイフを握る。研ぎ澄まされたナイフはパンツを軽く切り裂いていく。集音マイクはその小さな音もきちんと拾い、潮風と波の音に混じって、ぴりぴりと破けていく音が聞こえる。
 小気味よいその音と共にあらわになっていくズルズキンの赤裸々な姿へ心躍らされていると、ギーマさんはナイフを懐に仕舞い、後は一気に剥ぎ取ってゆく。めったに見せない下半身があらわになり、それと共に落ちてゆく、袋の中にたまった老廃物たち。風通しのよい室内に、真っ白なカーテンが入り込むほどの風が吹く。それを見計らったように、ギーマさんはパンツを逆さにして、老廃物を風に流した。どうでもいいけれどそれ、部屋の端っこに溜まっちゃいません?
 そしてギーマさんは再び懐のポケットに手をしのばせ、今度は無地のアルコールティッシュを取り出した。ズルズキンの生息地であるリゾートデザートは、乾燥しているために菌の繁殖は少ないが、湿気のある場所では当然服の中は蒸れて酷い悪臭を発するようになってしまう。代謝の少ない変温動物だけに、ガルーラのお腹の袋ほどではないが、やはり衛生的な面でもそのままというのは好ましくない。カビが生えてしまったりなどすれば、当然皮膚病になる可能性も出てくるし、耐久性や柔軟性が失われかねない。
 残った老廃物をふき取り、除菌する。本来ならば、舌で舐めとってそれを行うのだが、今回は人間の手で行うので、そのためのアルコールティッシュだ。まずは、右足の部分に手を突っ込み裏返しにして、ふき取って行く。丁寧に汚れを落としては惜しげもなく次のティッシュを取り出し、くずかごへと放り込み、右足、左足、尻尾と拭き終えたところで、その作業を終える。
 そのころには、ズルズキンも半分ほど脱皮を終えており、半透明の抜け殻が体からぶら下がっている。そんなズルズキンに、ギーマさんは指一本で自分の存在を伝え、首筋から鎖骨、腕、そしてまっ平らな胸へとアルコールティッシュを這わせてゆく。暖色系の体に、目が覚めるような白い不織布(ふしょくふ)。揮発性の高いアルコールはすぐ蒸発し、その際に熱を奪ってゆくから、潮風を身に受けながらのアルコールティッシュはさぞや涼しげであろう。
 変温動物のズルズキンには、汗をかけない分そのアルコールの気化による顕熱の排除が嬉しいらしい。主人の手の為すがままに任せているのは、きっとそういうことなのだろう。
 やがて、すべての皮膚を脱ぎ終えたところで、ギーマさんはズルズキンを抱きかかえる。普段はあらわにならない部分まであらわになっているズルズキンの姿は、別にジュカインやオノノクスとたいした違いもないというのになんだか新鮮な姿である。一糸纏わない姿をさらけ出すズルズキンを隠すものは、もはやギーマさんだけ。しかし、彼は隠すこともしなければ、逆にさらけ出すような手つきもせず、そんなそっけない態度がもどかしい。
 アルコールに気化熱を奪われるのが涼しくて、気持ちよい表情をしているズルズキンを見ると、不覚にも何か滾ってくるものがあるのだが……ギーマさん、本当に貴方は何をやっているのですか。
 抱きかかえられて、首から下の部分をすべてふき取り終えると、ギーマさんはズルズキンの目元に手を当てる。最後に顔を拭くので目を閉じろということだろう。そうして最後に一拭きして、ズルズキンの体は綺麗になる。

 だが、まだ脱皮した皮膚をつなぎ合わせる作業が終わっていない。ギーマさんは老朽化した部分を削るのを手伝う事で、ズルズキンの脱皮の手助けを行う。そこからは、新しく脱いだ皮膚を完成するところまでほとんどカットされ(一番重要なところなのに地味だからカットですかい!)、酸で溶かした衣服がほとんど吸着するところまで、飛ばされた。キングクリムゾン!!
 まず、フードの部分は吸着する前に首に巻いて、首に巻いた上体でくっつける。そして、最後にパンツを履くのだが、尻尾、左足、右足の順番に入れていく際のギーマさんの手つきがいやらしい。腰に手を当ててバランスを取るのはいいのだけれど、その際にさりげなく尻尾の付け根を撫でるのは、何か狙ってるとしか思えなかった。
 最後に、強い潮風が吹いて、白いカーテンが二人の姿にモザイクをかける。その時さりげなく口づけをしていたように見えたのは、見間違いだったのであろうか。

 とにもかくにも、これでズルズキンの脱皮の手助けは終わったわけだ。俺も育て屋で、ズルズキンが初めて行う脱皮を手伝ったことはあるけれど、絶対にこんなにエロイ手つきじゃなかったぞ。どういうことなのこの映像作品は。

 ため息を吐いているころには、すでに画面は暗転していた。メニュー画面に戻っていたが、次は何を見ようか……

オ、オイルマッサージ? バンギラスに……ですか? 


 もう、バンギラスにオイルマッサージという時点で頭がおかしいんじゃないかと思う。ギーマさんって普段どんなこと考えているんだろう?
 いぶかしげな目で画面を見ていると、バンギラスはすでに砂浜にて、パラソルの下で眠っている最中だ。あぁ、やっぱり本当に海に来ていたのか。ギーマさんはどんな服で来るのかと思ってみていると、紺色の長袖な水着を着用していた。肌が白いだけあって、日焼けにも弱いのかもしれない。
 パラソルがあるのだから、もう少し露出していてもいいと思うけれど……というか、撮影だからいいけれど、あのバンギラスを見張りのポケモンも無しに放置しているってあぶねぇ!! ビーチバレーのボールが飛んできて、叩き起こされて不機嫌にでもなったら砂浜の地形が変わりかねないぞ。
 よい子(そもそも子供は見ないだろうけれど)のみんなというか、誰かが真似しないように厳重に注意してもらいたいレベルだ。

 と、ともかく、撮影に当たっては厳重に注意していたということでよしとして……画面外から現れたギーマさんが左手のバスケットに持っていたのは、紙 ヤ ス リ !! ……キリキザンのときといい、なんか可愛がり方が間違っていませんかね?
 まぁ、バンギラスの表皮は堅いから……その、紙やすりくらいじゃないといけないのかもしれないけれど、インパクトがあるね、インパクトが。ギーマさんは眠っているバンギラスにそっと寄り添う。完全に警戒心を廃しているのか、乗られているというのに起きないとは、バンギラスもかなりの豪胆だ。
 真っ青なお腹をすべるように手の平で撫でて、その手はあご下へ行く際に人差し指だけに変わる。女の子だというのに、豪勢ないびきをかいている口元までその人差し指を持って行き、最後に左手に持っていたポロックを口の中に投げ込む。
 最初は口の中をもごもごとさせていたバンギラス。本能的に租借しているうちに、ポロックに含まれていた成分が効いてきたらしい。まだ口の中に残る味の余韻を楽しみながら、バンギラスは眠い目をこすって起き上がる。目の前には、大好きな(多分)ご主人、ギーマの顔。
 上半身を起こしたバンギラスは、まずギーマさんの肩を掴んで頭突きを見舞う。もちろん、本気でやったら放送禁止レベルの惨状になるので、軽くこつんとぶつけるレベルなのだが。そういった力加減が出来るあたり、よく教育されていると思う。頭突きによるスキンシップを終えたバンギラスは、しきりに鼻を動かしたかと思うと、目ざとくオイルを発見する。この反応……つまり、何回もオイルマッサージの経験があるということか。
 レパルダスのときにウイの実に反応したは本能的なものかもしれないが、これは明らかに学習ありきの反応だ。ギーマさんはこういうことをやっているようなことを言っていたけれど、これでその言葉が偽りでないことが確定したわけだ……気になるのはこの映像作品にどれくらい虚構がはいっているかなんだけれど。
 ともかく、目ざとくオイルを発見したバンギラスは、ギーマさんを下ろして、尻尾をぶんぶんと振り回す。それだけで砂嵐が置きそうなくらいに海岸の砂が巻き上げられていて、なんともまぁはた迷惑だ。まぁ、撮影中で周囲に人はいないし(プライベートビーチなのか?)よしとしよう。
 というか、これだけバンギラスが喜ぶって……ギーマさんに流石というべきなのか、これは。
「あわてなくても大丈夫」
 キスが出来そうなくらいの距離まで顔を寄せて、ギーマさんは言う。
「あわてなくとも、私は逃げないよ」
 そして、あの声だ。耳が妊娠しそうなあの甘い声で、バンギラスの耳元にささやいている。こんな音も拾えるんんて、凄いよね。ギーマさんの髪が風で靡く……立ち上がって話しかけていたギーマさんは、すがりつくような仕草でバンギラスの胸に両手を置き。そのまま滑り落ちるように膝立ちの姿勢になった。
 怪獣に跪くギーマさん……そこはかとない危険な香りがする。そしてギーマさんは、クリーム色と白の中間くらいの砂を掬い上げ、指の間からさらさらとこぼれるそれを、腹に塗りたくるようにこすり付ける。何の意味があるのかは正直分からない。雰囲気つくりなのだろうか……? それとも、バンギラスの求愛がこういう感じとかそういうわけじゃあるまいな?
 砂のついた手による腹への愛撫を終え、ギーマさんはオイルを取り出す。オイルはどうやらシーヤの香りがほのかに漂う香油のようである。バンギラスがそれを好むのかどうかは不明だが……あぁ、そういえばギーマさんのバンギラスは特殊攻撃を主体に戦うんだっけか。
 だから渋い味の木の実は好きだし、一滴でも香り高く焼き菓子を彩るといわれるその匂いも好きなのかもしれない。
 その香油を手に乗せて、バンギラスの方をそっと撫でる。匂いが目に見えないのは残念だが、バンギラスの鼻はヒクついているところを見るに、匂いは広がっているのだろう。岩のように堅い体がわずかに膨らんで、深呼吸しているのが分かる。巨体の中に十分芳香を取り込んでから、バンギラスは息を吐く。
「気に入ってくれたかい? 君のための香油だよ」
 渋い木の実の匂いが振りまかれている最中だというのに、ギーマさんの言葉は甘い。なんだか耳垢が溜まってきた気がする。これが耳が妊娠ということか。

 バンギラスは、ギーマの言葉に頷いた。つまるところ、気に入ってくれたということだろう。
「そうかい、じゃあ続けるよ」
 言いながら、ギーマさんはオイルをまず左手に乗せ、それを右手にも移し、二つの手で頬を撫でる。シーヤの実の油だ……さぞやいい香りだろう。顔の延滞を塗り終わった後は、バスケットの中に入れられていた紙やすりを取り出す。表面はざらざらの、目の粗い奴だ。最初は目の粗い奴で、仕上げは目の細かい奴というのは、こういうところでも生かされる法則のようだ。
 ゴリゴリと、虐待を疑うレベルの音を立てて、ギーマさんの紙ヤスリによるオイルマッサージが始まる。オイルに濡れていた表面は、粒子となった岩の肌で徐々に汚れてゆき、緑色と灰色を混ぜたような色合いとなる。流石に暑いのか、ギーマさんもものすごい汗だくだ……。汗一つかかないような冷血漢や吸血鬼のような姿がお似合いなギーマさんだけれど、こういうところではきちんと人間なんだと思う。
 紙やすりで磨かれた部分は、指でコロイド交じりの油をぬぐっただけでも非常に綺麗になっているのが分かる。しかし、それは表面の黒ずんだりしみになっていた部分を削り取っただけ。そこから先は、目の細かい紙やすりによるオイルマッサージだ。
 目の粗いあのヤスリで綺麗になった表面を、さらにつるつるに磨き上げる……一体どんな光沢を持つようになるのだろうか。先程よりも立てる音は少ないが、やはり汗だくになるのは変わらない。まだぬれていない水着の袖で汗をぬぐい、一心不乱にバンギラスの体を磨くギーマさんは、普段のクールでスマートなイメージとは違って、ポケモンを大事にしてくれていることがひしひしと伝わる内容だ。
 色々アレな性癖を刺激するような映像作品だけれど、ギーマさんのこういう一面が見られるのは悪くないかもしれない。しかし、顔だけでも汗だくである……かなりのカットを挟んでダイジェストで送られているが、影の位置、雲の位置から推測するにもう二時間くらいはやっている。
 こんな炎天下で水分補給も成しにそんな事が出来るわけはないから、きっとカットの合間に何度も休憩と水分補給をはさんでいるのだろう。というか、本来はクーラーの効いた部屋でやるべきことではないだろうか?

 全身のオイルマッサージ(?)を終えたころには、もう3時間くらいは経っていたであろうか。そんな長時間を感じさせないほどのギーマさんの涼しい顔は見事だが、なんだろう……この美味しい水やスポーツ飲料を差し入れしたくなる気分は。ギーマさんなにやってんですかとも思ったけれど、こういうことをまじめにやっているならばいいトレーナーだよな……なんというか、そういう点ではギーマさんの評価が上がる作品だ。
 足や尻尾も余すところなくオイルマッサージを終えると、最後にギーマさんがバンギラスの手の甲にキスをして、それが合図のようにバンギラスはパラソルの下から出て波乗りをする。その波乗りで、体の表面についたコロイド塗れの油はすべて流れ落ち、薄く張った油の膜が太陽の光に照らされて鈍く照り返している。
「太陽に照らされた君は美しいよ……」
 そう言って、ギーマさんはバンギラスのあごを撫でる。だが男だ。
 ところでこれ、誰に感情移入すればいいのだろう? 画面は暗転して、メニュー画面に戻る。


「しかし、なんでギーマさんはバルジーナじゃなくってドンカラスにしたんだろ……」
 ギーマさんのバンギラスを見ると、防塵の特性のおかげで砂嵐に耐性のあるバンギラスのほうが使いやすいのにと思わずにはいられなかった。というか、バンギラスはオスだよね……? ギーマさん、オスでもいいんですか?

占星術は災害予知の基本とは言うけれど……ねぇ。アブソルもですか 


 時間帯は夜となっていた。サザナミタウンの満天の星空の下で、ギーマさんはいつもの正装に身を包み、見下ろす俯瞰から波の音が聞こえるバルコニーで、星を見上げていた。しかしこのバルコニーの広さたるや、10人くらいで立食パーティーが出来そうだ。相当な高級ホテルなのだろう。
 しかし、ギーマさんは紺色が基調だから、闇によく紛れるけれど、真っ白なアブソルは対照的に夜だというのによく目立つ。その対比のおかげでとてもいいカップルに見えるじゃないか。
「ごらんよ……綺麗だよ、君と同じで」
 また耳が妊娠しそうというか、歯が浮いて入れ歯になりそうな言葉を吐いてくるよ、この人は。ギーマさんはアブソルの左にすわり(右に座るとカマが刺さる)彼女を肩に抱いている。うーん、しかしいい毛並みだ。
 バルコニーに置かれた背もたれのないベンチの上、アブソルはギーマのことなどどこ吹く風に星を見上げている。無視をするのは新手のツンデレだろうか。しかし、ここからがギーマさんの真骨頂だった。無視をされながらも、ギーマさんはアブソルに甘い言葉をかけ続ける。
「だんまりかい? 沈黙は金なりとはよく言うよね……」
 左頬を覆って垂れ下がる真っ白な体毛に息を吹きかけながら、ギーマさんが言う。その体毛を指で掻き分けて、ギーマさんは続ける。
「私も、ポーカーフェイスを武器にすることはよくあるよ。でもね……」
 頬を覆って垂れ下がる体毛から、首筋、あごと、なぞるように撫でて、ギーマさんはアブソルの口の中に中指を突っ込む。
「君の声、聞いてみたいなぁ」
 ギーマさん、AVやエロマンガがの見すぎじゃありませんよね? よね?
 しかし、口を強引に開かされ、指を突っ込まれてなお、アブソルはつんけんとして、何も反応を見せない。まるでぬいぐるみのようにおとなしいが、尻尾はかすかに揺れている。しかし、アブソルは夜空の星に何を見るのであろうか。ゴチルゼルは占星術を使えるために星を見るというが、アブソルは危険予知こそ出来るものの、占星術のようなものを利用するというのは聞いたことがない。
 空から隕石が落ちてくる災害を予言しているわけでもないだろうに、こんな子も居るものだと不思議な気分になる。
 アブソルの唾液に塗れた指を引っこ抜くと、ギーマさんはその中指を舐める。何だその間接キッスはと思うまもなく、ギーマさんは自分の唾液がついたその指をさらに突っ込む。アブソルは平静を装っていたが、背もたれのないベンチからは尻尾を振っているのはバレバレだ。
 こいつ……このアブソル、出来る。ギーマさんは視線こそアブソルノ顔を覗いているが、耳ではきっと尻尾の音を聞いているのだろう。これが人間の女の子だったら、この感情を隠そうとして隠せていなさが癖になりそうだ。人間に尻尾があったらいいのにと思うくらいにはかわいらしいアブソルである。
「態度は素直じゃなくても、体は素直なんだね」
 鼻血が出そうな台詞とともに、ギーマさんはアブソルをそっと抱き寄せる。ギーマさん、何やっているんですかホント。
「そんな君が私は好きだよ」
 ちょんと、指先で頬をつつく。アブソルは雑念を振り払うように頭を振っていたが、それでも尻尾は揺れている。
「つれない子だなぁ」
 と言って、ギーマさんは不適に笑っていた。悪い男と言うかなんと言うか、恋の駆け引きをさせたら上手そうな人だ。

「仕方がないね……」
 ギーマさんが立ち上がり、ベンチを後にする。名残惜しそうにアブソルがチラ見するところが、またかわいらしい。
 しばらく席をはずしている間、アブソルはずっと星を見ている。その様子を見つめていると、なにやら色々持って現れるギーマさん。彼は、アブソルによく似合いそうな赤いタータンチェックのリボンを首に巻き、腰周りには黒いチェックの入ったのスカート風の腹巻を、マジックテープで着脱して装着する。
 上半身には、黒のジャケットを着せて、そのいでたちはお嬢様学校の制服のよう。
「清楚にお澄ましする君には、こんなのがお似合いかな?」
 着せ替え人形とはまたマニアックな。そんな事をされても動かないアブソルもどうかと思うが、それを臆面もなくやってしまうギーマさん。悪タイプ特有のふてぶてしさが遺憾なく発揮されているではないか。
「それとも、君は裸のほうが魅力的もしれないね」
 こういうとき、頭から煙が出るマンガやアニメの表現がうらやましく思える。いや、炎タイプの子ならば出るんだけれどさ。尻尾は動かすのを抑えようとしているようだけれど、喜んでいるのがバレバレなくらいに左右に振られている。
 結局、ギーマさんは一度だけまじまじ見つめたかと思うと、アブソルの服を脱がしてしまったが……最後の台詞がまた甘い甘い。
「ふふ、やっぱり君はありのままが一番だ」
 もう突っ込むのも疲れた、色々と状況がおかしいと思うけれど、これはこれで世の女性は満足するのだろうか? というか、今回俺が満足してしまったような気がする。アブソルノ表情は写らず、ほとんど後ろからの撮影だったのが残念だったが、この動画はアブソルの尻尾に萌えるための動画だと思ってよしとしよう。
「それでもやっぱりつれない子なんだなぁ……」
 とうとうアブソルは、星を見るのをやめてギーマさんから目を背けてしまう。きっと顔が赤らんでいるんだろうなぁと思うと、なんだか凄く胸がきゅんと来てしまう気分だ。そんなアブソルに、ギーマさんは手を乗せる。頭の上に手を乗せて、ひじはアブソルの肩辺りまで触れるように置いて、妙に斜めった肘掛のように。
 ギーマさんは完全にひじをリラックスさせている。後ろから見てもあごをしゃくりあげるなど、態度をわざわざ大きくしているような動作が見受けられ、アブソルの動きはそのまま固まってしまった。ギーマさん、吸血鬼とか蛇とかのイメージがついて回る人だけれど、蛇にらみでも使えるのか、この人は。
 そのまま、抱き寄せ顔を寄せると、アブソルはついにギーマさんのほうへと体を傾けた、デレてしまった……これはいいツンデレだ。このチャプターは全編固定カメラだったけれど、やっぱりアブソルは二人きりじゃないとこんな風に甘えてはくれないと言うことなのだろうか。

 すっかり骨抜きにされたアブソルは、緩やかに尻尾を振ったまま、ギーマさんの胸に後頭部を預け、画面は暗転してゆく。
 えと、その……なんというか、お幸せに。

水中も……サメハダーね、うん。どこでもやるんだねこの人は。 


 今度は水中カメラでギーマさんを追うという構図に。バンギラスのときに着ていたものとは違い、全身を覆うウェットスーツを着用している。そして水中呼吸用の、酸素だけを取り出すシリコンチューブやゴーグルに足ヒレ、ウェイトなどゴテゴテと色々取り付けている。髪形も乱れているから正直これじゃ誰だかわからない。
 ギーマさんでやる意味が正直ないじゃな……おっと、誰も来てないか。
 そして銛……狩るんですか、狩るんですか? 銛はいかにも強力そうなゴムバンドを、銛を括りつけたもの。腕の力だけで銛を突いても、素早い魚達はそれを簡単に避けてしまう。だから、ああやってゴムの反動を利用して突くのだろうけれど……正直、サメハダーを隣につけている状況で役に立つかと言うと微妙なところである。

 サメハダーはジェット水流をお尻から噴出して最高速度はすさまじいことになるというが、それに普通につかまっているギーマさんは何気に握力がすさまじい。というか、ついていくスタッフも何者なのだろう? いや、プロなんだろうけれどさ……
 ギーマさんは、サメハダーのヒレに分厚い手袋を着用してつかまり、透明度の高い真っ青な海をぐいぐいと進む。その海をたゆたうさまざまな魚の美しさには見とれざるを得ない。ネオラントやケイコウオはその美しい尾びれを棚引かせて海を優雅に泳ぎ、水中まで届いた太陽の光をステンドグラスのように反射させて煌かせている。
 海を桃色に彩るラブカスも、肌の銀色が艶やかなテッポウオも、海の彩りとなって踊っている。

 そうして、美しい水中を堪能しつつ、ギーマさんは食べられそうな獲物を探す小物には興味が無いのか、先程から食べられそうな魚はポケモンもそうでないものもいくらかいるというのに見向きもせず。大物だけを見捨て狙う。ハイリスクハイリターン……まぁ、狩りでそれは非効率的なんだけれどね。
 どれほど探し回ったのか、ギーマさんは岩場で置物のように佇むオクタンを見据え、獲物に決める。獲物に決めると、それをサメハダーに狩らせるわけでもなく、サメハダーには別の所で待機を命じた。

 そうして1人きりになったギーマさんは、まずはゆっくりと相手に忍び寄り、まるで挨拶をするような気軽さで銛を構える。
 本当に悪い人は、カモに対して笑顔で近づくと言うが、それは野生のポケモンに対しても同じ。まるで、自分も海の一員であり、敵ではないと意思表示するような滑らかな動きで獲物に近づき、撫でるように滑らかな動きで狙いを澄ませた。銛を構える動作は、まるで花束を差し出す王子様のよう。殺気など微塵も感じさせないフレンドリーさで、獲物を見つめている。
 そして、堅く握り締めていた銛から握力を抜いていくと、銛は狙いを誤ることなく獲物の胴体に吸い込まれていった。あぁ、獲物となったオクタンが逃げる事も出来ずに、返しのついた銛の餌食になる。その瞬間の映像は、スローモーションでもう一回流される……なんだこの演出は、無駄じゃないのか。

 そうすることで、海には墨と鮮血が漏れ出した。それでもオクタンは逃げようとしてもがくのだが、銛についた返しがそれを許さない。墨を撒こうとしてもギーマさんはそれに動じず、ハイドロポンプは銛で射線をずらすように体の向きを変えられている為に叶わない。
 つまり、もうほとんど積みの状態ということだ。そして、運が悪いことに、サメハダーが血の匂いを嗅ぎつけてこちらに戻ってきた。ギーマさんはシリコンチューブを咥えたままの口を歪めて笑う。

 ギーマさんはよく来たね、とでも言っているのだろうか。しかし、そんな笑顔を意に介すこともなく、サメハダーは獲物へと一直線であった。捕食のシーンは流石に刺激が強いためか、カメラが視線を逸らしてギーマさんの横顔(正直ゴーグルとかのせいで誰だかわかりにくい)を映している。
 うーん、俺としては普通に映してくれた方が臨場感があっていいんだけれどなぁ。女性は子供を産まなきゃいけないからむしろ痛みや出血に強いって言うけれどそれは嘘なのかなぁ……? 女性が対象の映像作品だろうし、出血シーンなんて見せたって問題なさそうなものだけれど……。
 あぁ、もしや男の幻想を守るためのこういう配慮なのか……っていうか、俺はこんなどうでもいい事を何故考えているんだ。
 画面が一瞬暗転して、サメハダーがオクタンを食べつくした後の、僅かに血に染まった海の映像に変わる。ギーマさんは、サメハダーの刺々しい皮膚を手袋越しにいやらしく撫でてやり、口に咥えているシリコンチューブの呼吸器をはずして指でつまみ、軽く口付け。海水が思いっきり口に入りそうだが気にしたら負けだろうか。
 というか、それよりも♂だよね? 雄だよね? 牡だよね? 男だよね? えーと、バンギラスのときも思ったけれど、女性はこう、男性同志がいちゃいちゃしてても喜ぶ……のか、うん。まぁ、女性の大部分がそうでなくとも、1万人に1人がそういう気質ならそれだけでもこの作品はそれなりに売れるわけだし、そういうものなのかな。
 あの凶暴なポケモンに対してまったく恐れていないギーマさんも流石だし、きちんと手懐けられ自制できるサメハダー……こういっちゃなんだが育ちがいいポケモンだ。ギーマさんはチューブをはずして呼吸が出来なくなったところで、サメハダーに指示をして浮上させてもらう。

 勢いよく息(と、口に入った海水)を吐いてから、立ち泳ぎで呼吸をする。サメハダーは泳いでいないと呼吸を出来ないから、すぐにギーマさんの手から離れてしまったが、それでも彼の周りをぐるぐると回っているあたり、きちんと懐いているのだろう。

 ギーマさんがサメハダーに餌付けをするパートが終わると、次はサメハダーがギーマさんに餌付けもとい、狩りの様子を見せ付ける。獲物を探すまでの様子は先程と特に相違はないのだが、獲物を見つけてからの行動は目を見張るものがある。
 まず、渦潮でサクラビスを閉じ込めると、身動きできない状態にしてから、嫌な音で相手の集中力を奪い(ギーマさんの集中力もきっちりと奪っているけれど)フェイントをかけて小突きながらで体力を奪ったら、後ろから噛み付いて、引き裂きに掛かる。あぁ、肝心のシーンが表示されないもどかしさ……血が靄のように水中に投げ出され、サメハダーが首を振るのに合わせてその靄が踊る様。
 生き物が肉に変わって、首を振るたびに鞭の様にしなり、波うつ獲物の体がたまらなくいいというのに……世の女性に配慮したのはいいが、正直物足りないのよね、これじゃあ。

 ふむ、これはスタッフの意向によって残念になったというところか。世の女性もこんなことで参っていたら子供産めないだろうに……。まったく、こんなんだから男子も草食系が増えちゃうんだよ、きっと、多分。
 なんて愚痴が脳内を流れている間に、サメハダーはきちんと肉の一欠片をギーマさんの元に持っていく。豪快な食べっぷりであったが、先程のオクタンと合わせてもうお腹一杯になったらしく、それゆえにこうして他人に譲る事も出来るのだろうか。
 それを受け取ったギーマさんは、もう一度サメハダーに口付け。そして唇を『ありがとう』と動かした。どうでもいいけれど、それ食べるのだろうか……? レパルダスなら食べるかな。



「結局全部見てしまった……」 


「結局全部見ちゃったよ……なんと言う時間泥棒な作品なんだ」
 何か忘れている気がするけれど、全体的にポケモンを愛していることは十二分に伝わってきた。
 まだ宿題は途中だと言うのに全部見てしまったら、あたりはすっかり夜になっていた。まだ夜は長い……けれど、もう見ているだけで疲れてきてしまった。
 宿題はまた明日にして、取りあえず他の作業をしよう……夕食でも作ろう、そうしよう。


 ところで、あのBDは一体どういう層に向けて作られた作品だったのだろう?

後書き 


実はこの作品2012年8月19~25日>の間に書いていた作品でした。しかし、管理人様の言葉を受け、エロ無しのお話では参戦できないと知り、急遽別の物語を書いたわけですが……まぁ、そうなるとこのお話のやり場がなくなってしまうというわけでして。
そうして行き場のなくなった物語をどこで使うか悩んだところ、『そういえば今年のエイプリルフールに何も出来なかったなぁ』と思い、その時点での来年……つまり今日に投稿する事を決定していたと言う経緯がありました。
この物語の主人公の名前は、BCローテーションバトル奮闘記の壮大なネタバレですが、どうしてこうなるのかについては色々想像を張り巡らせて置いてくださいねw

正体はバレバレでしたが、一瞬でも『おいおい』と思ってくれたら幸いです。機会がありましたら、また次の作品でお会いしましょう。

コメント 


何かコメントがあればどうぞ……ドキドキです


お名前:
  • ギーマさんワロタwwww

    これはひどいwwww

    カズキくん、名字がシラモリになってるってことはスバルさんの養子にでもなるのかな?

    そしてひひひろしにしょしょしょうこwwww
    ―― 2013-07-31 (水) 00:48:28
  • >トランスさん

    熱いメッセージありがとうございます

    >>本当に貴方は何をやっているのですか(笑)

    ごめんなさい、嘘をつきたかったのです。

    >>いやはや、読み終えてから貴方様でしかないという確信のようなものがありましたけれどね。HNも遠回しのようで意外と確信付いていたのでまんまと(?)騙されましたよ(笑)
    大会が行われるたびに仮面の意味が無い事に定評のある作者なので……

    >>内容に関する感想ですが――
    ポケモンの描写は、その子が持つ魅力や性質を、上手く生かせるように頑張りました。砥石で刃を研いだりすることや脱皮の特性など、上手く使えば非常にエロく出来るのではないかと……
    そして、それを生かすためのエロイトレーナーは、オリキャラでも良かったのですが、合えての公式キャラでギーマさんを起用しました。BCローテーションバトル奮闘記のほうでも出番が多いので、世界観を流用しつつ、こうして出張と言うことに。

    雄の方も、きちんと魅力を活かせるようにした結果、愛で方もあんな感じに。本当は全部雌が良かったのですが、公式で雄しか存在しないポケモンですから仕方ありませんね。
    誰よりも自分が得できるように書いた作品ですが、トランスさんも楽しんでもらえた要で何よりです。応援ありがとうございました。


    >rinkさん
    ブルーレイディスクのみならず、データでも販売してますよ。(ただし作中の世界で)


    >リングさんなら分かるよね?さん
    勢いあまってげしげししてしまいましたねー。いきなり正解を言ってしまう悪い子には押しおきなのです。

    >2013-04-01 (月) 22:50:19の名無しさん
    ひひひろしとしょしょしょうこはポケモンサンデーなど一切関係ないと思います! 多分


    >2013-04-01 (月) 21:27:39の名無しさん
    ただ嘘をつきたいだけでした!

    >2013-04-01 (月) 09:35:18の名無しさん
    作品自体は変態選手権に出すつもりだったのです。官能のない変態を書きたいがために!
    仮面の意味が無い作者とは私のことです

    >2013-04-01 (月) 03:13:25の名無しさん
    ギクッ
    まぁ、正体はいい年した社会人でした

    >2013-04-01 (月) 01:30:59の名無しさん
    なんでもないのか……よかったー(棒
    正体は実は編集ページに書かれていたのです。

    >2013-04-01 (月) 01:25:54の名無しさん
    そそそ、そんなことありませんよ


    > wiki構文を知っていれば答えは導かれるさん
    俺だ

    >2013-04-01 (月) 01:06:52の名無しさん
    ネタでした。編集ページを開けば正体も載っていたことですしw

    >flareonさん
    6匹全員魂込めて描写しました。これでもかと言うくらいに詰め込んだので、その意気込みが伝わってくれたようですね。
    実際にポケモンを飼う場合は、毎日じゃなくてもいいからきちんと手入れをしてあげないと、きっとみすぼらしい見た目になってしまうでしょうね。
    ク、クチートも好きだよ!

    >2013-04-01 (月) 00:55:43の名無しさん
    ゴホゴホッ

    >ポロさん

    上手く騙されすぎですw エイプリルフールなのでふざけさせてもらいました、はい。
    原作のキャラをきちんと描けるかどうか不安でしたが、読みやすいといっていただけて何よりです。
    今度は色眼鏡無しで見てくださいねー
    ――リング 2013-04-06 (土) 17:22:03
  • 本当に貴方は何をやっているのですか(笑)
    いやはや、読み終えてから貴方様でしかないという確信のようなものがありましたけれどね。HNも遠回しのようで意外と確信付いていたのでまんまと(?)騙されましたよ(笑)

    内容に関する感想ですが、まずは御馳走様でしたと言わせて頂きます(笑)様々な系統の悪タイプをあんなにも美しく、可愛らしく何より艶めかしく表現されていて此方としましても大満足でした。それぞれのポケモンの特徴をついた描写、仕草。どれをとっても文句なしでしたね。皆生き生きとしていて思わず顔が綻びました(ニヤケたの間違いでしょうが
    ポケモンだけでなく人間サイドの動かし方も素直に凄いと感じましたね。本家での数少ない3人の口調や設定であそこまでリアリティのある再現が出来るというのは本当に感服させられます。それぞれが持つポケモンの性格などもそこから計算づけられていて、実際に存在していたら納得出来ると思います。

    そして……何といっても後半のギーマさんのターン。悪タイプ使いらしい少々意地悪そうな面や、(女を落とすという事に対する)内に秘められた自信、そこに垣間見える仲間達に対しての優しさなどギーマさんらしさのようなものがひしひしと伝わってきました。そして耳が妊娠して入れ歯に(ry

    バンギラスやサメハダーはインパクトが強かったですが、表立って描かれていない薔薇加減(?)が逆にそそられました(断じてソッチ系のものが好きという訳ではない)
    何よりバンギラスもサメハダーも動きが可愛すぎてもう(ry
    しかしやはり、他の雌達の印象はそれを遥かに上回りました。キリキザンをああして愛でるギーマさんは尊敬します(笑)

    ただ意地悪をしている訳ではなくしっかりお手入れも済ませてあげている、そのギーマさんの意図を読んでいるからこそ、何だかんだでご主人様に身をゆだねている。ギーマさん自身もそれを理解し合っているからこそ、バンギラスやサメハダーに対しても真っ直ぐに向き合えるのでしょうな。

    それっぽい場面のジャンルも豊富で飽きがこなかったですね。終始絶妙なジョークに爆笑させられましたし、乱れ喜ぶ悪ポケモン達にうっとりとしていました(蹴
    個人的にはレパルダスとアブソルがよかったですね。ケモナーだからということもありますが、ウイのみ抱えてだらしなくごろごろしているレパルダスや、ツン出しつつ常に尻尾からデレを放ち続け、最後には期待通りのデレを見せてくれたアブソルにはもう何も言えねぇです(笑)どうお伝えすればいいのか言葉が見つからないのですが、兎に角可愛かったです。

    また、ズルズキンの除菌やバンギラスの紙鑢も、ポケモンの外見から考えられる情報を深く深く理解できているからこそなせる技なのだなと実感いたしました。

    長々と綴ってしまいましたが要するに“皆美味しく頂かせてもらいました”ということですね。本当はひひひろしやサメハダーの補食シーンなど言いたいことも沢山あるのですが、キリがなくなりそうですので此方も楽しめましたとお伝えしておきます(笑)
    まぁサメハダーの勇猛さや豪快さを感じる上で私としてはあっても全然OKだったのですが、全体を通してみてここで引いてあるのもまた一興でしたという(ry

    私得過ぎる作品御馳走様でした。また、色々と参考にもなりました、有り難う御座います。
    他の強者さん達のものもあわよくば読んでみたいくらいでした。本家強者さん達は個性的な方々揃いですからね(笑)
    今後のご活動も陰ながら応援させて頂きます。駄文長文失礼致しました。
    ――トランス ? 2013-04-02 (火) 02:39:03
  • そっすね
    ――rink ? 2013-04-01 (月) 23:46:19
  • BDおもろw
    ――rink ? 2013-04-01 (月) 23:45:14

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Last-modified: 2013-04-01 (月) 00:00:00
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