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幼き上様之巻

/幼き上様之巻

作者 呂蒙
 
 

<登場キャラ>
足利義輝(あしかが よしてる)=エルレイド(1536年生まれ。室町幕府13代将軍) 剣術の腕前は折り紙つき
細川晴元(ほそかわ はるもと)=スイクン(1514年生まれ。室町幕府管領)・名門細川家出身
門番(もんばん)= ワンリキー・新婚ホヤホヤ
晴元直属の兵士たち・苦労が絶えない
町の荒くれ者・チンピラ。キンピラではない
etc
 
 序章
 1467年、全国を震撼させた応仁の乱により、室町幕府の権威は失墜。下克上の風潮が生まれ、争いが争いを生む、そんな世の中になっていた。この状況は16世紀になっても同じだった。
 1548年、管領の細川晴元は足利義輝を擁立し、敵対した細川高国を自殺させて政権を握り、日の本一の大勢力を築き上げた。そして、将軍と共に天下統一を目指す予定だった。が、一つの誤算が生じた。この誤算に晴元は悩まされていた。


 ◇◇◇
 ここは、山城国の室町御所。言うなれば、将軍の住まいである。
「上様~、上様~。あれ、どこへ行かれたのか?」
 1人(匹)のスイクンが御所の中を探し回っている。
「厠に行かれたのか?」
 が、そこにはいなかった。
(と、すると・・・・・・)
 外に出て、門番のワンリキーに声をかける。
「これ、少しばかり聞きたいことがある」
「これはこれは、晴元様。いかなるご用件で?」
「うむ、上様がどこへ行ったか知らぬか?」
「あ、いや、その・・・・・・」
「はっきり申せ」
「はっ、実は先ほどお一人で出て行かれましたが・・・・・・」
「おおそうか。って、何故止めなかった?」
「はい、必死に止めたのですが・・・・・・」
「無理だった、と?」
「面目ございませぬ。我が意に背くものは即刻斬り捨てる、と言われましたので」
「ふん、ガキの脅しに屈したというわけか」
「ガ、ガキ!? 何と晴元様・・・・・・」
「いや、すまぬ。今のはわしの暴言であった。しかしな、上様に何かあったらどうするのだ」
「そう言われましても、私はまだ死にとうございませぬ。新婚ホヤホヤですので」
(・・・・・・よく、それで門番が務まるな。しかし、『しんこんホヤホヤ』とは何じゃ?)
 とにかく、上様を見つけ出さねばならない。剣術に長けているとはいえ、まだ12歳だ。何が起こるかわからないし、何をしでかすかも分からない。多分、行き先は左京の三条通りだろう。
 そこは、山城一の繁華街であった。昼夜を問わず人であふれ、賑わいを見せている。しかし、言い方を変えればそこにはいろんな人がいる。つまり、犯罪やいざこざが起こる確率も高いというわけだ。さっさと見つけ出して、お叱りを与えた方がいい。 晴元は、前将軍、つまり今の将軍の父親から「これからはそちが義輝を守り指導して欲しい」と、後事を託されたのである。本来、管領というのは将軍の補佐役なのだが、いつの間にかお守りのような感じになってしまった。今の世の中は下克上の世である。細川家のライバル斯波一族は、朝倉や織田に領国を奪われ、もはやその勢いは風前の灯となっている。島津や伊達のように古くからの名門が生き残っている場合もあるのだが、多くは新興勢力に領国を奪われ没落してしまった。まったく油断もスキもあったもんじゃない。
 晴元は直属の兵士たちを集めた。
「よいか、皆の者。例によってどっかに行ってしまった上様を見つけ出す」
「ははあっ」
「それと、もしも上様に無礼を働いている輩がいたら即刻ぶちのめしても構わん」
「御意にございます」
「さらにだ。上様が無礼を働いていたら、即刻御所まで引っ張ってくるように」
「・・・・・・」
「あれ? おい返事はどうした!?」
「は、ははあっ」
「元気がなーい!」
「御意にございます!」
「よし合格だ。皆の者行くぞ」
 とか言っておきながら、晴元は持ち前の俊足で風のごとく走り去ってしまった。疾きこと風の如し、とはまさにこのことか。なんか人が違う気もするが。
「ま、待ってくださいよ~。晴元様ぁ~」
 兵士たちは、やむなく走って後に従うが、追いつけるはずもなく、晴元の姿はあっという間に見えなくなってしまった。

 ◇◇◇
 一方、ここは左京の三条通り。畿内では、堺に次ぐ規模を持つ商業街だ。いろいろな店が集まり、おのずと人が集まるところである。
 身なりのいい若いエルレイドが一軒の食堂に入っていった。彼が、将軍足利義輝であるということ知る人は皆無だ。
「いや~、これはこれは細川家のぼっちゃん」
 主人と女将が揉み手で向かえる。
「細川家のぼっちゃんじゃないんだけど、御飯食べに来たよ。勘定は前払いね。銀でいいかな?」
 義輝は、腰に下げていた袋から銀を取り出して、卓の上に置いた。
「すぐにお料理をお持ちします」
 銀を受け取った主人は奥へと引っ込んだ。
(やっぱりいいなぁ。こうやって御所の外に出れば民の暮らしぶりを眼で見ることが出来る)
 しばらくして、料理が運ばれてきた。
「では、ごゆっくり」
「うん、ありがとう」
(やっぱり、おいしんだよね。ここの料理。高級料亭よりもずっと安いしね)
 料理を口に運びながらこんな事を考える。
(門番を脅して、勝手に出てきちゃったけど今頃大騒ぎかな。でもね、こうやって外に出て何かをするのって勉強になるんだよね。本とか読んでても退屈だし・・・・・・。こんど元春とか信長とかに会いに行って、できたら友達になりたいな。歳近いし) 料理も食べ終えたから、帰るか。晴元に見つからないように。
「ご馳走様。ん? 表が騒がしいね」
「ああ、時々町の荒くれ者が時々騒ぎを起こすのです。関わらない方がいいですよ。触らぬ神にたたりなし、とか言いますしね」
「ふーん、ま、いいや。じゃあ帰るから」
「ありがとうございます。これからもごひいきに」
 そのまま帰ろうかと思ったが、人だかりが出来ていたので、ついつい見に行く。
「何があったの?」
「ああ、最近こういうチンピラが町の人にいんねんをつけて銭を奪っていくのさ」
 義輝が傍にいた人に聞くとこんな答えが返ってきた。
(あれって神様なのかな? あ、そっかー。破壊神か。いても迷惑なだけだな)
「ああ、何だぁ? てめぇら、散れ! 見てんじゃねえ!!」
 破壊神こと、ゴーリキーは手に持った棍棒で見ている人たちを威嚇して追い払った。素手でも強いはずなのだが、さらに棍棒で武装するというのはどういうことなのだろうか?
(ぶちのめせそうだけど、晴元にばれたら後でうるさいからな、帰ろ)
「おい、そこのガキ」
 そばに「柿」は落ちていない。となると?
「ああ、かわいそうに・・・・・・」
 という声が聞こえる。が、義輝にはよく状況が飲み込めなかった。
「余のことか?」
「『余』ってことはお前いいとこのぼっちゃんだな。さっき勘定で銀を使うのをちゃーんと見てたぞ」
「あ、そう。今、忙しいんだ。早く御所に帰らないと無断で外出したのが、晴元にばれて長~いお説教が始まっちゃうからさ・・・・・・」
「んなこたぁ、どーでもいい、お前の持ってる銀をよこせぇ」
「やだよー、晴元ケチだから、なかなかお小遣いくれないし。欲しけりゃ、晴元に言ってよ」
「誰なんだそいつは!?」
「なになに、天下の管領様の名前を知らない!?」
「知るかあぁぁぁ!!」
 このやりとり、途中から棍棒攻撃をかわしながらやっていた。一行に当たらず、相手は勝手にばてていた。
「チックショー。これでも食らえ!」
「え? 待ってよ。種子島で武装って反則じゃん」
 が、種子島にも欠点はあった。威力は強力だが、弾をこめる作業とかで、撃つまでに1分近くかかるのだ。
「気の毒だが、死んでもらうぞ」
「え、いきなり口調が変わった!?」
「これが本来の私の姿だっ」
 義輝は腕を刃に変化させると、素早い動きと得意の撃剣で、種子島の銃身をズタズタにした。
「さあ、これで銃は使えまい」
「うう、どこの誰だか知らんが、覚えていろっ」
 チンピラゴーリキーは、よくある捨て台詞を吐いて逃走しようとした。が、悪が栄えたためしはない。これが摂理というものだ。
「あまり、この技を使いたくはないが、止むを得ん」
 義輝は、サイコキネシスでゴーリキーの動きを止めて、宙に持ち上げた
「こ、このガキ。妖術を使いやがった」
 どういうわけか、この時代の日の本の国にはエスパータイプの個体数が多くなく、超能力は「妖術」という扱いになってしまっている。
「さて、と」
「は、離せっ、このガキぃ。痛い目に遭いたいのかぁ~」
「そんな無様な姿で凄まれてもちっとも怖くないな。さぁ、来てもらおうか」
「な、何ぃ!?」
「お前のごとき下郎でも裁きを受ける資格はある。が、余一人では決めかねるゆえ、晴元と相談して裁きを下す。それまで、牢屋に入れておくのだ」
「こ、この野郎、エラソーに」
「さっきまで、えらそうにしてたのはお前の方だろ。下郎の分際で」
「何が『下郎の分際で』だ。離せぇ~。@:;/,^\★o☆×*」

 途中からなんて言っているのか分からなくなった。

 と、その時、晴元とその直属の兵士たちがやってきた。
「ああっ、あなたは細川晴元様!」
 ことを遠巻きに見守っていた、人々が一斉に跪く。
「何があったのか、聞かせてもらえないだろうか」
「はい、実はあの若様が悪名高いチンピラを懲らしめたのでございます」
「ふむ、そうか」
 晴元は表情を変えなかったが、内心とても驚いていた。
「あの若様は、晴元様のご子息ですか」
「・・・・・・実は、今までそういうことにしてきたが、あの方は室町幕府13代将軍、足利義輝様であらせられる」
「ええええええええええええ!?」
 信じられない。誰もがそう言いたそうだったが、これは事実なのだ。
「晴元」
「ははっ」
「こいつを縛り上げて、牢屋に入れておいてくれ」
「はい・・・・・・」
「後は任せた。御所に帰って政務に励むとしよう」
「ははっ、あとは私にお任せください」
 兵士たちは言う
「何だ、上様はどうしようもない遊び人だと聞いていたが、しっかりしたお方ではないか」
「・・・・・・」
 晴元は何も言わなかったが、前将軍の死から10年。ひたすらに幼い将軍を守り、ときには都が戦乱の渦に巻き込まれ、命からがら都から脱出し、実家まで避難したこともあった。それらのことが、遠く昔のように思える。
 本音を言うならば、どうしょうもない人物だったら、傀儡にして政権を握ってしまおうかとも思っていた。しかし、これならば、あの方を支えれば、もしかすると・・・・・・。そう思い始めていた。

 

 幼き上様之巻第1話、とりあえずおしまい。第2話へ続く。


慣れない作品なんで、質が低いですが
感想、指摘等ありましたら、こちら
までコメントいただけたら嬉しいです。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • テストコメント
    ――呂蒙 2009-11-19 (木) 23:11:51
  • エルレイドが主人公の小説かぁ。珍しいですね。
    更新されるのを楽しみにしてます。
    ――サーナイト好き ? 2009-11-20 (金) 01:33:52
  • コメントを頂き、恐悦至極でございます。
    「信長の野望」に登場する通称 剣豪将軍
    足利義輝をポケモンにしたら何になるか?
    という変な発想から出発しました。
    で、結果エルレイドに行き着いたわけです。
    第1話は、これで終わりですが、第2話を
    構想中ですので、お待ち頂きたく思います。
    ――呂蒙 2009-11-20 (金) 03:06:32
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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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