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宵闇の幻想

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仮面を剥がしたら、ただのウロでした


言葉にしにくい表現が含まれてると思われます。
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「おい、性行為しろよ」
「……」
開口一番に聞いた言葉は、そんな言葉。
彼の瞳はそれはそれは爛々と輝いていた。
「い、嫌です……」
はっきりと断らないと、後が恐くなりそうだったので、私は断った。
「だがその言葉を断る……俺は今すぐにネッチョネチョしたいんだ!!」
「大声で、そんなこと言うなぁーーー!!!」
思い切り拳を振り上げて、彼をぶん殴った。凄い音がして痛そうだった……が、なんと彼は普通に立っていたのだ、一撃を食らっても倒れないというのは、さすがに伝説級のポケモンは何もかもが違うということだろう……
まぁ、私も伝説級のポケモンであるということは違いないのだが……
「まぁまぁ、落ち着けよ、まずは落ち着いて、おまんまんを俺に捧げなさい」
「優しく諭すな!!子供を叱る先生ですかあなたは!!!私はそんなことをしたいとは思ってない、いつもの冷静なあなたはどこに行ったんですか??」
大声を出して、ゆっくりと近づこうとする彼と距離をとる。
何でこうなってしまったのか、そもそもどうして彼はこんな風になってしまったのか…………
考えれば考えるほどわけが分からなくなっていく。
非常に言いにくいことなのだが、今の彼は幼児退行しているとしか思えない。
この幼児対抗してしまった彼を、一体誰が見てきたのだろうか……
「目を覚ましてくださいよ……」
声に出してみるが、彼の反応はゼロである。限りなく1に近いとか、そんな言葉なんて必要ないだろう。誰がなんと言おうとも、ゼロなのだ……
「――ダークライ!!」
口に出して、彼の名前を呼んでみた……
「何だ?シェイミ?」
彼も私の名前を呼ぶ……そんなときに風が吹いて、首周りについている紅いスカーフのようなものをひらひらと揺らす。
今ここでぶちぶちと、彼との言葉をぶちきってしまえればどれだけ楽だろうか、でも、そんなことできるはずがない……
彼は、私の友達だったから……


☆☆☆


私の名前はシェイミという。
非常に珍しい種族、かなだわしとか、草饅頭とか、柏餅とか、ゆっくりとか言われているが、シェイミという名前なのだ、二つの姿があり、一方は草餅とだけど、か言われているランドフォルムと呼ばれている姿。丸々している。
もう一方の姿が、グラシデアと呼ばれる花の花粉を体内に吸い込んだときに、姿が変わる、その姿が、スカイフォルムという姿だ……背が高くなって、男性なら男性らしい、女性ならより女性らしい体つきになる、と自分は思っている。
花畑の中で生まれた私には、一体なんで生まれたのか、どうして生まれてきたのかが全く分からなかった。ただ、生まれる意味が会ったから生まれた。それだけのことだ。
花畑でいろいろ過ごしているうちに、花畑の近くに、小さな村があることを肉眼で確認した。小さな村には、いろいろなポケモンが住んでいて、ちょっとよってみて、話をしてみたら、いいポケモン達ばかりで、すぐに打ち解けることも出来た。
だが、夜になると、恐ろしい怪物が現れて、ポケモン達を一匹筒食べてしまうという恐い噂も、この村に流れているのだった。村のポケモン達が襲われた形跡はなかったが。眠ったまま起きないポケモンが数匹いるということを、私は確認していた。
大丈夫だろうか、起きないのだろうか?そんな風に思った私は、自分の力で治してあげようかと試みたものだ。するとどうだろうか、自分には癒しの力でもあるのだろうか、眠ったままうなされていたポケモン達がゆっくりと目を覚ましたのだ。
村のポケモン達は感謝して、自分を神様としてあがめたが、それはやめろと私は言った。神様じゃない。やれることをやっただけだ。その代わりといっては何だけど、この村に住んでも構わないか?
ポケモン達は快く了解してくれた。わざわざ家まで作ってくれて。自分はここに住んで、この村を守っていこうと決めた。安っぽい陳腐な正義感から来る、子供のような発想だった。
が、生まれて間もなかった私は子供だ。こんな発想も子供しか出来ないだろう……だから子供の正義感というのが一番正しいのだ。
守るといっても、ただただ危険が起きたら動くのでは、ただの守護像か置物と一緒だ。頭がない単細胞生物ではない。私は生きて、動いて、眠って、考えることができる。
村にあった、書物を全部読み漁ってみた。いろいろな人の知恵を聞いて、いろいろな文献に手をだしてみた。そこに、自分には姿形を変える種族だということが書いてあるではないか。
興味があったので、そのグラシデアの花を探してみた。姿形が変わるとはどういうことだろうか。
非常に楽しみだった。花畑に行って、必死に赤い花を探した。そして見つけたときに、どんな姿になるのかが楽しみだった。
鼻の花粉を吸い込んだら、姿が変わるということだったので、吸い込んでみた。体中から光の粒子が漏れ出して、今ある姿を別の姿に変えていく感覚というのを味わった。今まで一度も味わったことのない不思議な感覚に、私の心はドキドキとワクワクに満たされていった。
姿が変わったときに、どんな姿になったのか、他人に聞いてみた。他の人は、とてもかわいらしくなったといってくれた。自分を映すものなんてないために、どんな姿か分からないので、村にいたドーブルに絵を描いてもらった。
絵を見たときに、自分でもびっくりした。こんな姿になっているのか、あの姿から、そういえば、背も上がったような気もしたし、視野も広がったような気がした。見上げるばかりかと思っていたら、相手と対等に見詰め合うことも出来たということだった……
嬉しくなった。この姿を維持できないか、いろいろ調べて、試してみた。文献によれば、寒さと、夜になると、強制的に姿形が変わってしまうではないか。
この姿ならいろいろなことが出来そうだったので、何とかこの姿を維持することを思った。そして、研究に研究を重ねて、自分はずっとこの姿を維持することが出来るようになったのだ……
村のポケモン達は行った。そこまで知識があるのなら、子供達にものを教える楽しさを教えてやってくれないか?それはつまり、私が学校の先生という立場になるということだった。
私は快く承諾した。若干の不安もあった。間違ったことを教えないのか、それに、教えることを子供がちゃんと聞いてくれるのか、それに、私もまだまだ子供だ、分からないことや、不恰好なところも、精神的に脆い部分もいっぱいあった。大丈夫だろうか、いろいろ言われて砕け散ってしまわないだろうか?
不安だった、一抹の不安を残したまま、私は学校の先生という大任を任されたのだった……学校といっても、後者と呼べるものはない。地面に文字を書いて、外で授業をする、古臭い学習方法だ。
最初に子供達と会うときに、緊張して、不安で押しつぶされそうだった。挨拶できるか、ちゃんと教えられるか、子供達は聞いてくれるのか、私も子供だから舐められないか……
不安はあったが、それよりも、教えることの楽しさが勝っていたので、何とか不安を抑えて、みんなの前に出て行ったときのことを、私は今でも覚えている。
非常なこととか、異常なこととか、精神が高ぶったりすると、心臓がきゅんきゅん高鳴るのだ。最初は、高鳴りすぎて自分が見えてないような気もした。
だけど、自分の名前を紹介して、にこやかに挨拶したときに、子供達は一緒になって笑ってくれた。私はとても嬉しくなって、今までの不安が杞憂だと分かった。
教えることの楽しさ、学ぶことの大切さ、いろんな知識を知っていれば、ずるい相手とも対等に渡り合える。子供達との時間が楽しかった。いろんなことを教えるだけじゃない。子供達からいろいろなことを学ぶこともあった。
子供達が花束をくれた時は、嬉しくって死にそうになった。村のポケモン達は言った。先生は子供だから、子どもの気持ちを一番よく知っているんだろう……だから、先生がきっと適任だったんだ。先生、ありがとう……
そういわれて、何だか気恥ずかしくなった。適任といわれるのも嬉しかったが、何よりも子どもの気持ちを一番よく知っているということが嬉しかった。自分が子どもであるということもあいまって、やっぱり嬉しくなるのは子どもだからだ。などと思っていた。
学校は順調で、前から一緒に行ってみたかった課外活動の最中に、また事件が起こった。
森の奥で子どもの一匹が倒れたのだ。ほんの数瞬の出来事だった。目を話していた自分も悪いが、なぜいきなりそんな風になるのか、眼を硬く閉じたまま、ぐったりと動かなくなってしまった子どもに、私は私の力をありったけ注ぎ込んだ。
子どもは暫くして穏やかに眠り始めた。直ったと確認した私は、それと同時にこの村の怪物の話を思い出していた。長らく忘れていた話が、私の中にぐるぐると浮かび上がる。
ちょうど課外活動の時間も夜だった。夜に出歩くのは危険だが、先生がついていてくださるなら大丈夫だろうと、村のポケモン達は安心していたらしい。野草の生態を調べている最中に起こった事件だったために、パニックで気が動転していたのかもしれない。ありのままに起こった事を伝えると、ポケモン達は大変驚いて、震え上がった。
まだ終わっていなかったのか、恐ろしい、恐ろしい、夜に眠ると永遠に眠ったままなのか……
私は皆に言った。今こそ、私がなぜこの村にいるのか、その使命を果たします。
私は、この村が好きになった。私のことを先生と慕う子ども達に、私によくしてくれている村のポケモン達、私は、この村を守りたい……
強い思いは、一緒に強い力になる。
私は今こそ、この村を脅かすお化けを退治しようと奮起した。子ども達も、一緒についていくといいてくれたことがとても嬉しかったが、絶対にきてはならないと言い聞かせた。
場所はもう分かった。私が生まれてきた花畑の奥に、鬱蒼とした森がある。そこに、そのお化けはすんでいるのだ。大事な生徒達を恐い目に陥れたお化けを、私は絶対に許すことが出来なかった。見つけたら肉骨粉にしてやろうと鼻息を荒くした。我ながらひどい言葉を使うものだと嘲笑もしてしまった。子ども達には絶対に見せられない先生の姿だった。
森の中を掻き分けて、開けた場所に出たときに、それは鎮座していた。
真っ直ぐに、透き通った青い瞳を、月に向けて、穏やかに微笑んでいた……
綺麗だった。花意外にも綺麗と感じることがあるということを、私はびっくりしていた。
世界は広い、綺麗なものなんていっぱいあるだろう。自分が綺麗だと思っていたものよりも綺麗なものは、いくらでもこの世界に存在するぞと、その黒い影はまるで沈黙を保ちながらもそういっているようにも私には見えたものだった。
だが、だからといっても自分の目的を忘れるほど自分自身が曖昧でほやほやした性格はしていない。
目の前の生き物が、きっとお化けの正体だろうと私は考えた。村のポケモン達から話を聞いた限りでは、黒い姿に、青い瞳、闇の中を駆け回っていたという情報があった。曖昧すぎて分かりにくかったが、今思えば、これほど分かりやすい特徴を模した情報もないだろうと考えた。
目の前の生き物は、暫く月を見ていたが、やがてこちらに気がついたのか、ゆっくりと首をこちらに向けると、にっこりと微笑んだ。
こんにちは、いや、こんばんわかな?……こんなお月様のまぁるい夜は、きっと蛍がいっぱい飛び回るのかもね……
開口一番に君の悪い言葉を吐いて、微笑んでいた。だが私は生憎と世話話やよた話をしにきたわけではない。あくまで相手を叩き潰しにきたのだということを再認識させた。あんな笑顔に騙されては駄目だ。
子ども達の苦しそうな顔を見て、やはり頭に怒りの文字が再認識された。
お前が、村のポケモン達を苦しめている張本人だな!!
私の大きな声に、相手は少なからずびっくりしたのだろう、体を一瞬だけ震わせて、その後に痛い沈黙が流れる……
どうして何もいわないんだろう、言わなければ何が何だか分からないために、何かいってほしかったが、次に相手が口に出した言葉は、私の望む言葉ではなかった。
…………何のこと?
分からないのか、分からないフリをしているだけなのか……少なくとも今の私には村を守るという気持ちもあった。子どもだったのかもしれない、後者という風に考えることしかできなかった。
とぼけるな!!
そういって、自分のエネルギーを思い切り相手にぶつける。黒いお化けはそれをよけることも受けることもせずに、そのままエネルギーの塊に当たって思い切りつんのめって倒れた。凄まじい爆音と、土煙が舞い踊って、月明かりの森を騒がしく奏でる。
痛い。何でこんなことをするの?
まるで分かっていないようだった。起きあがったそのお化けは目にいっぱい涙を浮かべて、顔を真っ赤に腫らしていた。恐らく攻撃を食らったために、痛くて涙でも出たのだろうが、私は構わずに攻撃を再開した。子ども達が受けた悪夢のお礼といわんばかりに、相手を徹底的に追い回した。
いたい、いたい、やめて、やめてよ……
五月蝿い、黙れ、お前にも思い知らせてやる!!
追い詰めて追い詰めて、等々追い回した挙句に、森の奥まで追い込んだ。
君はひどいよ、どうして僕がこんな目にあわなくてはいけないの?
お前の胸に聞いてみろ!!
喉元に手刀を突きつけて、涙を浮かべるお化けに、あらん限りの言葉をぶつける。そんな怒鳴り声のような私の声を聞いて、お化けはひっと目を瞑った。そんな姿を見て、熱くなって周りが白く見えた景色が、元に戻っていくのと同時に、私は冷静になって考えた。
本当に、このポケモンが犯人なんだろうか?
僕は、本当に何もやってないよ……
涙ながらに懇願するそのポケモンの瞳は、本当に何もやっていないということを必死に訴えているということが見て取れた。先生をやっていたことも会って、私にはそれが本当にやっていないのかどうかということの判断に至った。
手刀を引っ込めて、ゆっくりと離れる、警戒を解かずに、質問をする。
本当にやってないの?
やってないよ
声に偽りはない。先生を長年やっていたために、声や顔の表情、筋肉の動きや口の動きから、嘘をついているのか、それとも本当のことを言っているのかが分かるようになっていた。
宿題を忘れて、やっているといった子どもを見て、やってないでしょうといって、こつりと頭を軽く叩いたこともあった。基本的に私は悪い子には懲罰の類をしなかった。代わりに、読み取りや書き取りを通常の五倍くらいさせた……
それが嫌だから、子ども達は嘘をつかなくなった。それが嬉しかったが、嘘かホントかを見抜けなくなるのは面白くないなぁと心で失礼なことを思っていた時期があった……
じゃあ、一体誰が、子どもや村のポケモン達に悪夢を見せていたの?
…………悪夢?
目の前のお化けはまるで分かっていないような顔をしていた。本当に事態を知らないのか、きょとんと首を傾げるばかり、これでは全くお話にならないと思ったが、本当に分からないなら、このポケモンが犯人ではないということは分かった。
私はこと細かくそのポケモンに事態の説明をした。黙って聞いていたそのポケモンも、しきりに頷いたり、うんとか、ヘェ、とか相槌を打っていた。首をもたげるたびに、吸い込まれそうな青い瞳が、揺ら揺らと揺れた。
もしかしたら、心当たりがあるかもしれない……ついてきて。
最後まで話を聞いたそのポケモンは、ゆっくりと立ち上がると、ちょい、ちょい、と、私に手招きをした。
まだ情報が少ないうえに、当てが外れたポケモンを徹底的に痛めつけてしまったという罪悪感もあってか、大人しく従うしかなかった。
先頭を黒いポケモンが歩いて、しんがりを私がついて行った。
そういえば、君の名前を聞いてないね、名前は?
歩きながら話した言葉はそんな言葉……まだ完全に信用しきっていたわけではないが、名前くらいなら教えておいてもいいだろうと私は思って、一応名前を明かしておいた。
シェイミ
変な名前だね
黒いポケモンが苦笑した。そんなに変な名前なのだろうか?自分ではその名前が変なのかどうか、わからなかった。村のポケモン達や子ども達は、最初は名前で呼んでくれていたが、先生という職業に就き始めてからは、先生という名称で呼ばれ続けていたために、長らく自分の名前で呼ばれなかった。
だからこそ、久しぶりに囁くようには枯れた私の名前が、懐かしくもあり、むず痒くもあった、微妙に、気恥ずかしかったりもした……
僕の名前はね、ダークライって言うんだ。
そっちこそ、へんななまえじゃないですか。
皮肉たっぷりにそういってやる。言われたら言い返すのが私の方針だ。子ども達にも行っている、喧嘩はするなとは言わない。ただし、一対多数の喧嘩はぜったいにするな。それは喧嘩じゃなくて、虐めだ。
子ども達は喧嘩をしても育つ、どんなことをしても、よほどのことがない限りその行動がマイナスになることはない。言われたら言い返せ。どもるな、ぶちまけろ、強い弱いじゃない、言うか言わないかだ……
そうだね、僕も自分でそう思う……さぁ、ついたよ
そういって招待されたところは岩がいくらか地面に乗っかっている不思議なところだ。そこにいくらかのポケモン達が、眠っている……
が、その光景に異様な感覚を覚えた。目が青く光っている。そしてそのポケモン達からは、不思議なエネルギーが漏れ出ている。黒い何かが纏わりついているのだ……
もしかしたら、君の村のポケモン達が見たって言うのは、このスリープの集団じゃないかな?
ダークライは、そういって、スリープ達を指差した。
夜になるとね、スリープたちはいつもよりもサイコ念動の力が強まるんだ。原因は分からないけど、眠ったままふらふらと移動して、徐に近くにいるポケモンの夢を食べちゃうんだって。もしかしたら、夜に迷ったポケモンなんかの夢を、食べてたんじゃないかな?
そういって、ダークライは穏やかに微笑んだ。事情が分かって、私はまず真っ先にダークライに頭を垂れた。
ごめんなさい。私が間違ってました……
いいよ、気にしないくて、僕は気にしないから……
にこやかに微笑んだダークライを見て、私はやっぱり申し訳なくもう一回謝ったが、ダークライは笑っていた。
一回悪いって思ったら、それで御仕舞いでしょ?もう大丈夫だからね……夢を食べられちゃったポケモンは、お花の香りがいっぱいするお部屋でぐっすり眠ると、元気になるからね。
治療法を教えてくれて、何で自分がポケモン達を治療できたのかを理解した。私の力には花の香りがいろいろ関っていることが多いために、その力のおかげでポケモン達が治っていたのだろう。
暫くすれば、この周期は過ぎていっちゃうから、よかったね、それじゃ、お大事に……
そういってにこやかに手を振って去ろうとしたダークライの片腕を、私は無意識のうちに掴んでいた。
待ってください。
え?
私は自分が相手に与えた苦痛や、誤解をまだ完全に生産していないということに気がついた。これは絶対に駄目だ。相手を不快にさせたまま分かれてしまってはまた会ったときにぎこちない関係のままだろう……
私の所為でダークライが傷つきました。せめてお礼をさせてください、きっと村のポケモン達も歓迎してくれます。
そういって、彼はなんというのだろうか、人を攻撃する人なんかと一緒にいるなんて真っ平ごめんだといわれるかもしれないということも私は想定していた。そういわれても仕方のないことを私はしてしまったのだから……
だが、ダークライはちょっとだけ考えるような仕草をして、うんうんと唸ってから、やがてにこりと微笑むと、結構大きな声で、こういった。
じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかなー……
ダークライは笑ってすっと手を差し出した。私はその手を握る権利があったのだろうか、誤解で人を傷つけた私に、その手を握る資格があるのだろうか……躊躇していると、ダークライのほうから私の手をぎゅっと握った。
道案内、よろしくお願いします……
そんな風に言われて、私は何もいえなかった。ただただ握られた手を見つめて、笑っているダークライを見て、俯くことしかできなかった……
村に案内したときに、村のポケモン達はびっくりして、私が怪物に操られたと勘違いしたが、誤解を解いて、ダークライのことを話すと、なるほどと納得してくれた。
ダークライは一頻り話をすると、紙と書くものを貸してほしいといった。
私は彼が何をするのかいまいちよく分からなかったが、彼は、真っ白な和紙に、筆を握ると、ゆっくりと何かを描き始めた。驚くほどスムーズな動きと、綺麗な線が、和紙を黒く塗りつぶしていく。
いや、これは塗りつぶしているのではない……一見黒が広がっているかのように見えるが、繊細で細かい筆遣いに、荒い中でも、綺麗にみやすく描いている。村のポケモン達が見守る中で、ダークライは一枚の地図を描き上げた。
ここと、ここ、それからここは、夜間には移動してはいけません。このあたりが、スリープがいるところ、ここが、今ここにある村で、それでここが――
流暢に、そして透き通るくらいに、そんでもって結構大きな声で、ダークライは説明を続けた。
この村には地図なんてものはないし、このダークライというのが何者で、どこで何をしているのか、私には分からなかったが。村のポケモン達の視線はダークライの地図に釘付けだった。
私はダークライのそんな特技に驚き、そして尊敬と憧れを持った。知識だけあっても、それを使えなければ意味がない。ダークライは、自分の持てる知識を、地図として、私は、自分の持てる知識を、先生として、それぞれ生かしていたのだが、私にはまるで知らないことを、ダークライは知っていた。
ダークライは地図を差し上げますといって、出されたお茶を飲み干した後に、ありがとうございましたといって、そのまま出て行こうとしたが、村のポケモン達がそれを静止した。多分誰もしなかった、私がやっていたに違いない。
村のポケモン達は、ダークライに、この村で働かないかといった。ダークライは、役に立ちそうもないので、遠慮するといったが、私がその言葉に食い下がった。
この村には地図なんてものはありません、性格にこの地域を知ってたり、他の知らないことを知っている貴方なら、きっと私よりも役に立ちます、だから、どうか、この村に居続けて下さい……!!
ダークライはぎょっとした。村のポケモン達もぎょっとした。それもそうかもしれない。私が地面に頭をつけて、土下座をしてまで引き止めているのだ。
私は、ただ単にもっと知りたかった。書物で知るだけではない知識が、ダークライにはあったのだ。ダークライに教えてもらえば、きっと子ども達にももっといろいろなことを教えられるだろう……
ダークライは困った顔をしていたが、やがて根負けしたのか、私の肩にやさしく手を乗せて、こういった。
僕が何を出来るのかはわからないけど、自分よりも出来るなんて言葉、使っちゃ駄目だと思う……
その言葉を聞いて、私は顔を上げた。見ると、あの時と同じような優しい青い瞳が、私を見つめていた。
村のポケモン達の喜びの声、ダークライは完成が響く中で、気恥ずかしそうに笑うと……
僕でも出来る仕事があったら、ぜひ紹介してほしいな……
そういったのだった。もちろん私は、喜んで、と首を縦に振り、お互いに握手をした。今度こそ、彼と握手をする資格があると信じて……
そして、数年の時が流れた……
ダークライは、遠くに出かけて、未知の大陸の安全路を描く、地図師となった。この村だけではなく、いろいろな場所にまで足を運んで、紙と書くもの、それから遠出をするときの食料だけを持って、いろいろなところを飛び回った。
そのおかげで、村にもいろいろなポケモン達が訪れるようになり、名産品や、食糧の輸入や輸出を行いようになった……
私は相変わらず先生を続けた。子どもが大人になり、その大人達の子どもが、また私の授業を受けに来る。
各町々の交流のおかげで、いろんな道具も手に入った。黒板という変な黒い板、机という学習をするための木製の板。相変わらず外で授業をするのは当たり前だが。学習するということに関しては格段に進歩が上がった。
それもこれも、ダークライが新しい世界を切り開いてくれたからであった。数年たっても、ダークライも私も、姿形何一つ変わらないまま、いつもどおりの仕事をこなしている。
私は、ダークライが遠くに行ってもらってきた書物やら何やらを、狂ったように読みふけった。ダークライが町で話したことや、さまざまな出来事を教えてくれて、私はそれをどんどん吸収して行った。
その代わりに、ダークライは村の状況を教えてほしいといった。子どもが大好きで、思慮深く、優しい性格の彼は、発展していく村を見て、嬉しそうでもあり、悲しそうでもあった。
どうして、そんな悲しそうな顔をするんですか?ダークライ?
以前、そうやって聞いた事があった。するとダークライは、不思議そうな顔をする私の顔を撫でて、こういってくれた。
昔の美しい風景が変わっていくのが、ちょっとめまぐるしくって……今の村が嫌いなんじゃないけど、便利になりすぎるのもちょっとと思って……
もしかしたら、この村は今のまま発展しないほうがいいのかもしれないね、といって笑った彼の顔を私は鮮烈に覚えていた……
どんな村にも、発展と衰退がある。彼は、ダークライは発展しすぎて滅んでしまった町なども、道中でいくらか見てきたのだろう。
この村のことを案じて、そんな風に心配してくれるダークライの姿は、空と一緒に溶け込んで、とても綺麗だったのを覚えていた。
そのときから、私はダークライに惹かれていた。友達としてじゃなく、異性として……
最初は教えてほしい一身で、一緒に話をしていた。だが、話をすればするほど、彼に惹かれて行くのを否応無しに感じられた。
ダークライは自分の見てきたことを話すだけではなく、村の状況はどうなのか、私は大丈夫なのか、怪我や病気にかかっていないか、などなどいろいろな心配をしてくれた。
彼が村にいて地図のまとめをしていたときに私が風邪を引いたとき、付きっ切りで看病をしてくれたときがあった。
私になんでそこまでしてくれるのか、そういったときに、彼は照れくさそうにこういうだけだった。
最初にこの村に招待してくれて、僕にこんなにいい仕事を与えてくれたのは君だよ、シェイミ……友達を心配したり、友達のために動くのは、当たり前のことじゃないかな??
そんな風に笑う彼を見て、私も一緒に笑うのと同時に、心の中では小さな棘が刺さったような気分をしていた。
私は、貴方と…………
友達異常の関係に――
そんな思いを抱えたまま……季節が過ぎていった。
地図師の仕事もだいぶ落ち着いたのか、ダークライが村にいることが多くなった。
私は相も変わらず、書物を漁り、子ども達に知識を与えている……
そんな中、新月の夜に、事件が起こったのだった……
ダークライが新月の時期に村にいること自体が珍しく、一緒に月食でも見ようかと思って、朝方に誘ってみたのだが。
絶対に僕の家には入らないで、いい、絶対に入るなよ!!
いつもと違う強い口調でそういわれて、私は押し黙るしかなかった。いつもと違う彼の姿に気おされてしまった節が強いのかもしれない。
だが、絶対に入るなといわれれば入るのがお約束だ。それに、今まで悶々として過ごした日々に、終わりを告げようとも考えていた。
新月の夜に、ダークライに告白しよう、何と言われても、決して動じないように……
この思いを、思い切り伝えてみようと思ったのだ。だからこそ、夜に入るなといわれればそれは無茶な注文である。
黒い月が見える中、ダークライの家の前に立って、家の藁暖簾をひょいっとどかし――
とんでもないものを見てしまった。むせ返るような生臭い臭い、密閉された空間で、ダークライはぜぃぜぃと荒い息を吐きながら、自分を慰めていたではないか……
書物で読んだことはあったが、いざ実物を目の前にすると、ごくりとのどを慣らす音が聞こえるほど、それに見入ってしまった。大きくて、太くて、黒くて、長い……
立派な雄の象徴が、ダークライの手の中で扱かれていたのだ……
体中が金縛りにあったように動けなくなり、息を吐くことすら忘れて、ただただダークライを見つめていた。
そんな私に気がついたのか、ダークライはゆっくりとこちらを向いた。その瞳は、魔性の赤を爛々と輝かせていた。
驚いている私にゆっくりと近づきながら、彼はこういったのだった……
「おい、性行為しろよ」


☆☆☆


性行為自体の意味は知っていたが、書物で齧っただけの知識、さすがにどんなことをするのかまでは実際に分からなかった。体を持って体験するのが一番いいのだろうが、書物を見た感じ合意の基にするのが正しい行為であり、一方的な行為は好かれないと書いてあった。
だがしかし、目の前にいるダークライは、それを一方的に押し付けるような言葉を発した。
幼児退行してしまったのか、それとも完全に頭がハイになってしまったのか……
「私の知ってるダークライはどこにいってしまったんですか!!??」
「お前の知ってるダークライはもういない……今の俺は、性欲のために血を流す男……その名も、変態魔獣淫チンポ!!」
ババーン、とオトマノペがつきそうなくらい大きな声でそういった。多分ここでテロップと一緒に大文字が出てくるかもしれないし、出ないかもしれない……
「…………頭は大丈夫ですか?」
口に出た言葉は完全に相手を心配するような声。何があった、というよりも、どうしてこうなった。
「大丈夫じゃないかもしれない……これは一種の病気に近いな……」
男性の象徴を天にそそり立たせながら、ダークライは真剣な表情になって俯いた。正直に言ってしまうと、私は股間にしか目がいってない。生臭い臭いに、おかしくなったダークライの言動、そして、この異常事態……
「発情期?」
頭の中に浮かんだ言葉は、それしかない。だってそうとしか考えられない。あのダークライが、こんな風になるのなんて……
「察しがいいな。一発で分かっちゃうなんて面白くない……もうちょっとリアクションしなきゃ駄目じゃない……」
「発情している相手に何のリアクションを求めろと?」
「たとえば――」
そんな風に会話をしていた瞬間に、いきなり体が浮かび上がる感覚に襲われた。
「きゃあぁっ!?」
「おお、いい反応だ。グッジョブ!!」
ぐっと親指を立てて、いぇいいぇいとダークライが声を荒げていた。見ると、体から伸びた触手のような黒いものが、私の身体と手足の自由を奪っていた。
「ちょ、ちょっと何するんですかダークライ、放して下さい……」
じたばたと暴れてみるが、全く解ける気配がない。複雑に絡みついていた職種みたいなものがゆっくりと動いて、知らないうちにダークライな下半身のアレがついているところまで強制的に移動させられた。身体ごと。
「よく聞いてくれ、シェイミ」
「この状況で聞けといわれるのがちょっと無理なんですけど、よく聞いてほしかったら――」
「俺は発情期なんだ」
「無視ですか、って言うか、それはもう分かりましたってば……」
「ヌかないとおいなりさんが爆発しそうなんだ……」
「判りました。こんにゃく持ってきます」
無意味なくらいに男性の自慰行為に対しての知識を持っている私だったが、別に知りたくて知ったわけではない。たまたま書物の中にこんにゃくと膣内は同じ暗い気持ちいいよとか書いてあったので、興味をもっただけである。
邪な気持ちはないはず、多分。
なんて思っていたら、ダークライがハァハァ荒い息を吐きながら、やたらと勃起した男根を私のほっぺに押し付けてくる。何をする、本気で怒るぞ……
「うぅ、ほっぺがぷにぷにしていて、ちんこがトランザムする……」
「はぁ?何ですかトランザムって……っていうか、ちょっと、ほっぺにそんな汚いもの押し付けないでくださいってば!!」
「汚いとか言うな!!」
「ひゃっ!?」
「この棒からはな……赤ちゃんの元がいっぱい出るんだぞ!!そんな神聖な棒を汚いだなんて、シェイミ、悪い子っ!!」
そういう問題ではない。
いきなり大きな声を出されて、私は思わず黄色い悲鳴を上げた。自分で黄色い悲鳴とか言うのもなんかアレだが、だってそういう風にしか言いようがない。気が動転しているときというのは、知らないうちに変な声が出てしまうものである。
そんな私の言葉にも殆ど気にすることもなく、ダークライは問答無用でぐいぐいと押し付ける。
ぐりぐり、にちゃ、ねちょり、ぐりぐり…………ぐりぐりぐり……
「や、何か、ほっぺあついです、やめてくださいダークライ、なんか頭もぼうっとしてきましたってば…………」
「ああ、凄い気持ちいい。ちんこがふわふわだ、ちんこがベッドでおねんねだぜ、このままいくと射精しそう、ていうかする。っていうか出す…………」
ぐりぐりしていた男根の先からなんかへんな液が出続ける、ぴくぴくと震える。このままでは何かが出てしまう、何が出るのかなんて分からなかったが、我慢をしていた噴水が出るのと同じような要領で何かが出てくるということだけは分かっている。
分かっていても、何が出てくるかなど分かりはしない。そこまで博識になったらお仕舞いな気がした。。あくまで個人的な意見だが。
ぐりぐり……びく、びくびくっ……
「うぐぅ、でちゃう、でちゃうよぉっ!!ほっぺにすりすりしただけで、ちんこからくっさいザーメンが出ちゃうよぉっ!!」
よく言えばストレート、悪く言ってしまえばお下劣……私はぴくぴくと打ち震える男性の象徴から、勢いよく射出された白いエネルギー波をよけることなくほっぺたに食らってしまったのだった。
びゅく、びゅくっ!!どぷどぷっ……どろ、どろどろどろ……
「うきゃんっ!?ひゃあぁぁっ!!」
「うおおおおっ!!…………ふぅ、スーパー賢者モード」
ほっぺだけではなく、思い切り顔にもかかってしまった。ヌルヌルしていて、何だかとても臭い。それだけじゃなくて、熱い。ほっぺたが焼けてしまいそうだった。
「あうぅ、熱いですよぅ……」
「ハァハァ、凄いよかった。今度もう一回ほっぺかして、五分だけ」
子どものようにはしゃぐダークライを見て、何だか怒ることも笑うことも、驚くことも悲しむことも忘れて、ただただ臭い何か分からない液体の匂いを鼻をひくつかせて感じながら、体が拘束されたまま私は唖然とした。
「うぅ、顔がべたべたします……なんてことをしてくれるんですかぁ……」
唖然としていたのは数秒くらいで、結局出てきたのは相手に対する不満の言葉。だが不満を述べなければ発情しているダークライは更に調子に乗るかもしれなかったので、とりあえず述べておいたのだった。
「そんなに嫌そうな顔をするなシェイミ、いいか、世界にはこんな格言があるんだ。そのうち辞書にも載るだろう。覚えておくといい……」
「ど、どんな言葉ですか?」
気の抜けた声を出して、鼻のしたから垂れてきたヌルヌルの液体を恐る恐るぺろりと舐めてみた。
ペロ……これは、生臭い!!
当たり前である。自分で言っておいてなんだけど、凄く間抜けだった。さっきから異臭を放っているのも事実だし、この部屋自体がダークライが自慰行為によって出した変な液体のせいで凄く臭っていた。
自慰行為とかは知っているのに、何でこの変な液体の名前は知らないんだろう……そもそも書物が古すぎて、そこまでそんなことを詳しくかかれていなかったのが問題だ……
詳しく書いてあるのも問題だと思ったが……
「いいか、こんな格言がある………チンポの液体、美白効果有りありぃ!!」
そんなことを考えていたら、ダークライがえへんと胸をそらして、格言をしっかりといってくれた。
それは格言ではない。ただの造語だ……そう突っ込みたかったが、元気がない。幼児退行してしまったダークライを遠めで見つめながら、ため息を一つついた。
「はぁ……」
「何でそんなかわいそうな顔をしてるんだよ……そんなに精液かけられるのいやだったか?」
精液というのか、この液体は……生臭くて、ヌルヌルしていて、若干の不快感を感じたが、でも底まで悪い気はしない。自分の性格が抜けているのか、それとも怒りの沸点がとうにぐらついて吹き零れてしまったのか、力なくだれる私を見てダークライはゆっくりと私を下ろしてくれた。
「大丈夫だ、生乾きの精液にもう一回新しい精液をぶちまければ、元に戻るから!!」
きりっと笑う彼の顔に、私はもう一回パンチを叩き込んだ。やっぱり怒った。こいつ、全然反省してねぇ!!!
「人をいきなり拘束して、精液とかいうわけの分からない臭いものをかけて、言うことはそれだけですか!!?!?!?」
思い切り怒鳴りつけて、乱暴にほっぺやはな先をごしごしと擦った。おでこにまだちょっとだけついていたが、気にしない。後でさっぱり行水でもして流そう。
拘束を解かれた私はとにかく思い切りダークライの胸倉をむんずと掴んで、思い切りぐわんぐわんと振り出した。風が周囲に起こって、がくがくと前後にダークライの体が揺れ動く……
「まず最初に言う言葉は、何ですか!?」
「気持ちよかった……」
「違う!!」
「エロかった……」
「何でそうなる!?」
「もう一回しようか♪」
「tぅてのあdくfかか;ふぇkvまかっ!!!」
最後のは言葉にならなかった。藁の床に思い切りダークライを叩きつけて、鼻息荒くぺしぺしと何度も頭を叩いた。
「謝罪と、説明です!!」
「ごめん」
「軽っ!!」
まるで軽い挨拶のようだ。謝罪しているという気持ちが全くこもっていないのもいかがなものかと思ったが、まぁ、相手は幼児退行している、さすがにそんなことで目くじらを立てていては馬鹿と思われる。他の誰でもない。相手自身に……
でもやっぱり、ちゃんと謝ってほしかったなぁ……
「…………まぁ、いいでしょう、と、とにかく、ひとのほっぺに、そ、その……お、おお……」
「お?」
「おち……ん、ちんを……引っ付けた理由くらい教えてください。あと拘束の理由もひっくるめて全部!!」
言うのを恥ずかしい言葉というのはあるが、今のダークライが小難しい言葉をちゃんと聞いてくれるかどうかは妖しかったので、羞恥心を捨て去って喋ったつもりだったが、やっぱり自分が気になる異性の前という手前もあって、こんなこというのにも抵抗があった……
「ンモー、シェイミ、女の子がオティンティンとかはしたないぞ☆」
「うぅ、うぅぅぅぐぐぐぐぅ………」
茶化すようなダークライの声、恥ずかしすぎて顔まで真っ赤になったが、とりあえずはしたないなんていう言葉は今のダークライにだけは言われたくない言葉では会った。はしたないのはどっちだよ。そう心の中で突っ込んでおいた/
「ふぅん、まぁ、ちょっと俺の息子が落ち着いたし、まぁ話をしようじゃないか……」
「息子??」
「ちんこのこと、流行の言葉らしい、異国から聞いたら息子って言うと女性は尻尾を振って喜ぶとか、どう?喜んだ!?」
「喜ぶかっ!!」
「何じゃ、つまらん」
いきなり口調が変わる爺言葉に加えて、実につまらなさそうなコメント、幼児退行している上に人の神経を逆なでするとはふてぇ野郎だと心の中で悪態。頭がまた沸騰してきた。
「そんなことはどうでもいいでしょうが!!」
「どうでもよくないぞ!!男女がマグ割るときにだな、野生解放してちんことかまんことかつまんない言葉で言うよりも、もっともっと上品に、オブラートに包んでだな――」
「いい、いいです、分かりましたからこれ以上言わないで!!」
自分から食いついた割には、弱い精神だ。などと思う、自分でもそう思う。私はとにかくメンタルが脆いのだ。豆腐並みに……
耳まで真っ赤になって、耳を塞いでそっぽを向く。そんな私を遠巻きに見つめながら、ダークライは一言こういった。
「もう話してもいい?」
「うがあああああああっ!!!」
血管が破裂しそうなほど叫んだ。近所迷惑極まりないが、これ以上叫びようがないくらい叫びたい気分だった。何でこんなに頭が弱くなってしまった友達と会話のデッドボールをしなければいけないのか。心底エネルギーが暴走していた。
そんな私を見て、ダークライは何事もなかったかのように話してもいいかと言う言葉の続きを話し出す。
「そうだなあ……俺は新月になると、発情期になるんだ」
「…………え、えぇ……」
「最初は皆に迷惑をかけないようにって遠くで性欲処理してたんだけどなあ……太陽と月の公転時期を間違えて戻ってきちゃったんだよね」
「それだから私に頑なに家に入るなって言ってたんですね……」
いまさら理解したように頭が回転して、同時に後悔した。こんなことになるなら言いつけどおりに大人しくしておけばよかった。性格や口調がまるで違うワイルドで幼時退行して発情した友達に告白するなど、もはや正気の沙汰ではない。これはひどい。
「そんでだな、新月の夜になると何か知らないけど、性欲が異常になるんだ。瞳の色も変わる。赤に……」
「……はい」
「そんでだな、ちんこが全勃起状態になるんだ……なんでだろうな?何でか分かる??」
「わかりません」
「ですよねー」
会話のデッドボールは相変わらずのようだ。不毛すぎて涙が出そうだった。ああ、自分にも幼児退行が移りそうだ。
「ないちゃらめぇ……」
「らめぇってなんですかもう!!…………うぅ、何でこんなことに」
「そりゃシェイミが入ってきたからでしょ」
ごもっともな正論だった。こういうときに限って正論をぶつけるあたり、ホントは理性があるんじゃないかと疑ってしまうが。理性があるなら人のほっぺに男根を引っ付けたりなんかしないだろう。
「全くもってその通りですけどね……でもいきなり襲い掛かるなんてひどいじゃないですか……」
「じゃあ今度は手順を踏んで襲い掛かるわ……まず後ろから動きを捉えて、その次に――」
「手順踏めば襲っていいなんていってません、暴漢ですか貴方は!?」
「強姦だ!!」
「わけのわからない揚げ足取るな!!」
「…………シェイミ……」
「何ですか?」
「話し続けていいかな?」
「だぁああああっ!!!」
ぎりぎりと歯軋りをしながら、こめかみに血管を浮かべる私はどんな顔をしているのだろう。残念ながら、自分の姿を見ることができるなんて便利なものはない。ダークライははっはっはと笑っていたのでつまらない顔ではないらしい。面白い顔でも嫌だった。
とにかく心を落ち着かせた。深呼吸して、大きく息を吸って吐く。すってはいてすってはいて……
「ひっひっふーひっひっふー」
ひっひっふーひっひっふー……ねぇねぇしってる?ラマーズ法ってね、吸う吸う吐くじゃなくて、吐く吐く吐くなんだよーって、何でやねん!
「って、ラマーズ法か!!」
「ためになる医学ですね、深呼吸はラマーズ法に変えるべきだろう」
「ちょっと黙っててください本当に!!!」
静かに目を瞑ってとにかく荒い呼吸を整えた。叫んだせいか頭が結構痛かったが、気にしない。これ以上ダークライを見ると知らないうちに頭がおかしくなりそうだった。
「ふぅ、落ち着きました。続きをどうぞ……」
「ゑ?続きって何の話??」
「うわああああああああっ!!!!」
殴りたい衝動に駆られるのをぐっと堪えながら、ぜいぜいと荒い息を吐き出した。漏れた空気と一緒に、異常に粘っこい唾も地面に落ちていく……
ああ、相手を本気で縊り殺したい衝動に駆られるのは初めてだ…………
「冗談ですってば、本気にしなさんな……」
ダークライはからからと快活に笑ってから、ゆっくりと続きを話し始める。
「まぁまぁ続きといってもだな、どうせすぐ終わるって……ええとだな、新月の夜に発情期が来てだな、ちんこが全勃起状態になってだな……理由は分からんが……」
「ええ、そこまで聞きました」
「そうなるとだな、溜まった性欲を発散させないとおいなりさんが爆発しそうなくらいきゅんきゅんしてトランスフォームしちゃうんだ……」
「……そ、そうですか」
何を言っているのかまったく分からなかった。意味不明の造語を使って喋るのはやめてほしいなぁとも思った。
私達は考えて行動している。本能のままに三大欲求を満たそうとするような行動に走るのは単細胞生物だけでいいじゃないか。脳味噌あるしね、何て思う。
「だからアレだ、要するにもう一回やろうもう一回」
「へ――うゅっ!!!」
ダークライがそんなことを言って、私が反応する前に、そそり立ってびくびくと打ち震える男根を半開きの私の口の中に思い切り突っ込んだ。凄まじい勢いで喉の奥まで突っ込まれて、思わず蛙が潰れるような声を出したが、巨大な棒に阻まれて鼻息しか漏れなかった。
「えぐぅっ!!おぶっ……うぅぐぎゅうぅ……」
「ああ、シェイミの犬歯にちんこ触れて気持ちいい、ちんこぬこぬこする……」
幼児退行は悪化の一途をたどっている。それ以上に、喉の奥まで突っ込んだ男根を、一気に引き抜いたと思ったら。またおくに突っ込むという運動を繰り返されて、嗚咽と気絶の狭間で私の頭の中がぐるんぐるんとめまぐるしく信号を伝え合う。
「うぎゅ、ぐぅうっぅ……ぎゅっ、むぢゅっ……!!おえっ、えぼぁっ!?あぐぅっ!!おぇぐぅっ!!けほっ!!えごぉ!!」
それにしても凄いピストン運動だ。意識が飛ぶ前に、犬歯が捥がれそうだ。さすが伝説級のポケモン、股間についているものも伝説級か……
なんて考えている場合ではない。ほんとに捥がれる。意識が飛ぶのが早いか、犬歯が捥がれるのが早いか、何も出来ないで口の中に突っ込んでえずいている私に、ダークライが暢気に声をかけた。
「なぁなぁシェイミ、このままシェイミの検しもぐってのもそれはそれでそそるけど、個人的には舐めてくれたほうが射精が早くなってシェイミ的にも楽だと俺は思うんだが」
どの口がそんなことをいうんだ。そう言いたかったけど、口の中に余計なものが入っているので喋れない。
「だいじょぶだ。さっき出したし、もう一回出せば一度は収まる」
「えぐぅ、むぅぎゅっ!!……ふひぃぃ……」
一度はって何だ!!こんなん二回も三回もやられたら死ぬわ!!
目の前の悪魔に向かってそんなことを言おうとしたが、無理でした。今はくちなし状態。じゃなかった、くちふうじだ。
喉の奥までぐりぐりと刺激されてる性で、王と間がこみ上げるのを必死にこられる。人の気持ちも知らないで目の前のダークライみたいな変態は構わずにピストン運動を続ける。
ひどい不意打ちのせいでまともに動けないままごしごしと歯磨きの要領で口の中を抉られる。捥げそうだった。
「気持ちいい……よしっ!!」
そのまま昇天してしまえと思いながら、口の中の異物がびくびくと打ち震えるのが分かった。さっきも味わった感触だ。精液が出る瞬間が近い。
さすがにまた体中に欠けられるのは嫌なので、覚悟を決めて喉の奥までぐいっと咥え込んで、根元をしっかりと両手で掴む、嫌だけど、呑んでしまおう……
どぷっ!!びゅるびゅるびゅるっ!!どくどく……どろどろ……
「んぶーっ!!!んー!!んんんーー!!!」
凄まじい勢いで口の中にどろりとした精液が注がれていく、十秒、三十秒、全然収まらない。喉を鳴らしでどろどろの液体をおなかの中に押し込んでいくが、息が続かなくなり、半ば無理やり男根を口から引き抜いて、ごほごほとえずいた。
それでも収まらずに、半分くらいの精液が私の体中にべっとりとこびり付いて、体毛に絡みつく。
「えげぇぅ……げほっ、おえっ、えほっ……死、死ぬ……」
口からどろどろと飲みきれなかった精液が零れ落ちて、家の床をねっとりと汚した。他人の家を汚すとは最低だと思いながら、やっぱり口からまだまだ溜まっていた精液を搾り出すように吐き出した。
「ご、ごめんなさっ……えほ、げぽっ……よ、汚しちゃって……」
「ん?全然いいよ。こんなのは予想の範疇だからね」
気にするな、などといって笑うダークライの顔を見て、我に返った。
そもそもやられたのは私であり、何で被害者の私が謝らなければいけないのだ……
「だ、ダークライの……げほげほっ……ばぁかっ!!」
口から精液を出し切ったとに、思い切りそういったが、ダークライは悪びれもせずにこういった。
「ああ、馬鹿になるとアレだな、いっぱい出るようになるんだな、俺の頭がちんこに移住してしまったようだ」
会話のデッドボールが再開した。まるで話にならない。
「っていうか、不意打ちとかいきなりでこんなことしないでください!!」
「ええー」
「ええーじゃない!!」
「だって、さっき性行為しろよって言ったらシェイミ嫌だって言ったじゃん……」
「そりゃいやですよ!!嫌に決まってます!!」
異性との性行為というのは正しい手順を踏んで合意の下に愛し合うという気持ちを持って……なんて考えていたら。ダークライはにこりと微笑んだ。
「うぅん、じゃあ早く出て行ったほうがいいよ……」
「え?」
急にそんなことを言い出したダークライの顔を、私は一生忘れないかもしれない。そのときだけ、本当にそのときだけ、いつものダークライが戻っていたのだ。
「まだ夜に入ったばかりだけど、宵がどんどん深くなると、僕もほんとに理性の糸が切れちゃうから……まだ間に合うから、ほら、出口はあっち……」
そういって、ゆっくりと私が入ってきた入口を指した。入口と出口は一緒、そこから出れば、ダークライに教われるなんて脅威もなくなるだろう……
「私が出たら、ダークライはどうするんですか?」
「朝まで自分を慰める」
聞いただけで悶絶しそうな行為だった。そんなことをしたらいくらなんでもエネルギーが放出されて死んでしまうのではないだろうかと思ったが、別にそんなことはないらしい。さすがにそんなことで死んだら間抜けすぎる。
「朝までって……」
「でも、誰にも迷惑をかけないためにはこうするしかないんだ。今、シェイミに迷惑をかけちゃった。だから、こうするのが一番いいんだ……それしか方法がないから……」
やたらと悲壮な決意を込めてそんなことを言うダークライを見て、私は言葉では表せないささくれが心の中にぐさりと刺さるような感じがした。
こんな風になってしまったのは、新月の所為だが。入るなといわれて、入ったのは誰だろうか?他でもない私自身であり、人の言葉を聞かなかった私の軽率な行動がダークライに襲われる原因となったのだ。
もともとの原因は新月による発情期かもしれないが、大本の引き金を引いたのは私自身だ……
それなのに、なぜ一方的に私がダークライを罵倒する権利があるのだろうか?そんなものは一切ない。全て自分の責任で、全て自分に降りかかるからだ……自分のやったことが全て……
だからこそ、自分の責任には自分で向き合う。生徒も先生も、この責任だけは他人になすりつけることなどできはしないのだから……
「分かりました」
「わかってくれた?じゃあ早く帰って、ていうか、帰れ」
ダークライの口調が微妙に変化してきた。外を見ると、夜が少しだけ黒くなっていた。宵が深くなったのだろう……
後ろを向いて、無言で指を挿すダークライの腰を掴むと、藁を敷き詰めた寝床の上に押し倒した。彼自身が何が起こったのかまったくわかっていないようすだった。目をぱちくりさせて、今の状況を判断していた――
「マウントポジション?」
――弱い頭のままで。
「うぐぅ……」
完全にフライングしたが、もう気にしてなんていられなかった。不思議そうな顔をしているダークライを、紅潮した顔で見下ろす……
「私がここに来てしまったのは私自身がここに来たいと思ったからです……だから、私は私自身の責任で、ダークライの気が済むまでダークライを手伝います……」
ホントは愛の告白をしに来たのだが、ここまで来るとそのあたりのことも頭からスポーンと抜け落ちてしまうのも現実だ。今はダークライのしたいようにさせよう……
「え?いいの??ほんとにいいの??後悔しない??」
「大丈夫です、女に二言はありません。ダークライの気がすむまで、私がいっぱい付き合ってあげますよ……」
「ありがとう……シェイミ……君は本当に優しいね……」
彼は一瞬だけ相違って、優しく微笑んだ。
一緒にいたときの彼の微笑と重なって、何だか私も釣られてほほえ――
「んじゃ遠慮なく♪」
ぬとぉっ……
「え?」
ダークライの言葉と一緒に、ダークライの身体から大量に何かが出てきた。これは……触手!?!?
よく見ると普通に黒くなってたりしているので、作り物ということだけは分かった……
――が。
「あの、え?」
「俺に体を捧げてくれるなんて、シェイミはやっぱり最高だな!!」
捧げるという言葉だけを聞くと、何か色欲丸出しの変態みたいに聞こえるのは耳がおかしいからだろう。
そんなことを考える暇もなく、異常にネチョネチョした触手っぽいのが体中に絡みついた……


☆☆☆


粘液を纏った触手が、シェイミの小ぶりな胸の突起にしゃぶりついた。自分の力が生み出した空想の産物だが、これは凄い。
ぬちゅ、じゅ、ちゅぷっ……
「っ!?ひゃあっ、あっ、ひぃ……んんっ……」
可愛い声を漏らしながら、触手に纏わり疲れたシェイミの体がぴくん、と仰け反った。まだまだ性行為など知らないのだ、こういう初心な反応を見るのも楽しいものだ。自分自身もそんの知らないけど……
無数の細長いヌルヌルしたものが、とにかく絡みつく。足に、腕に胴体に、そして胸やお尻に。こういうときに悪いやつだったらめちゃめちゃに陵辱するんだなぁと感慨に耽りながら、自分は多分そういうタイプじゃないから大丈夫とも思った。そういうことにしておいた。
「んひゃっ……だ、ダークライ、やぁっ……」
お腹の線をねっとりとなぞられて、シェイミは紅潮させていた顔を更に紅くすると、くすぐったそうに身をよじらせる。
お腹に巻きついていた触手みたいなものをぐっと締め付けて、シェイミはぐぅ、とお腹を押されていやそうに息を漏らした。
「くぅん……うひっ!?あっ、あゃっ……」
絡み付いているだけではない、触手は開発するためにあるものだ、自分の中ではそういうアイテムだと信じて疑っていない。余ったすう本の職種が、シェイミの全身をゆっくりとなぞりだす。
つぷ、ちゅぷ、ねちょ、……つつー……
「ひゃんっ、あっ、ひんっ!!……っは……」
くすぐったそうに身悶えて、体中から伝わる愛撫を敏感に受け止めながら、シェイミは押し出されるように空気の塊を吐き出した。ねとねとした液体が前進に纏わりついてしまって、体中がヌルヌルになっていてとてもエロかった。
すっと、顔の目線を合わせると、シェイミが恐怖と困惑を浮かべていた。恐らく言いたいことは大体分かる。何でこんなことをするのかといいたいのだろう。
そんな顔をすると、益々襲いたくなる。というかもう襲っているが……発情期の獣というのは、何を考えているのかといわれても、エロイことしか考えていない。
ねっとりとした触手の一本が、体中を張っていた触手を潜り抜けて、ゆっくりとシェイミの股間に這わせ、つるつるぷにぷにのおまんまんを上からなぞり始める。
それに加えて、ゆっくりと、乳首を吸う力を強めていく。
「んあぁぁん……ひゃあっ!?あぅうっ……」
「そんな顔したら益々激しくしたくなる……シェイミえろーい」
「うぅ、そんなこといわないでぇ、ばかぁ……」
ひぃひぃと息を吐いて喘ぎながら、シェイミは精一杯の反論を口にする。体がぴくぴくと痙攣して、性感帯が開発され始めたのか、おまんまんを擦られているだけでも、ひくひくと体が反応して、瞳がうつろになっていくのが分かった。
「真性かっ!?真性でこんなに感じやすいのかシェイミッ!?!?」
きっと彼女は受け体質。素晴らしい、何でも受けてくれ、氷でもチンポでも触手でもっ……!!!
最高の性質である。自分は別に加虐体質なんて持ってないが、受け止めてくれるなら多少の無茶でも出来るんだぜ……感謝、圧倒的感謝っ!!
「一緒にいてくれるのがシェイミでよかった……」
「ふにゃあんっ、やぁっ……ぁっ、ひぃん、ひゃいっ!!……あっ、あうぅっ、ひっあっ……」
まともな返事が返ってこない。ほとんどがあえぎ声か空気を吐く息遣いくらいしか聞こえてこない。そうなっている原因は主に自分の触手みたいなのが原因である。
だってそのほうが萌えるもんね、仕方ないよね、シチュエーションは結構大事だもんね。
「どう?気持ちいい?……」
「ふえっ、あっ、はぁっ…………そ、その、いいにくいんですけど…………」
「言いにくいけど?」
「む、むずむずします。もどかしいです……あぁんっ……」
ネチョネチョと粘着質な音が耳にこびり付いてはなれない中でも、シェイミのいやらしい声はしっかりと聞こえる。もともと声が大きいからだろう。それにしてもこういうことをしたことがなくてももどかしいと感じるということは、やっぱり歯がゆいんだろうと自分は思った。
気持ちいいんだが、足りない。その気持ちはよく分かる、今でもシェイミのおまんまんにちんこ突っ込んで射精したい気分だけど、それは後回し。最初はまず慣れてもらうのが肝心だもんね。そして、どうせ慣らすなら敏感な部分をこう一気に攻めたほうが後々楽になるし……
「何でこんな気持ちになるんですか……んぅ――た、足りないですっ……」
やっぱりそんな言葉が出てきた。思い通りになったような気持ちがした。別に支配欲が満たされていくわけでもない。ただ単純に思ったことが当たって嬉しかっただけである。
うんうん、やっぱり合体する前に相手と思考が重なると嬉しいね。シンクロしているって感じがして。
「それは大人になる階段の一歩手前の更に前の二歩くらいしたの階段なんだ。分かるかシェイミ。お前はまだママっ子なんだ!!」
「ふあっ、ひゃあんっ……い、」
「い?」
「意味不明…………あぁんっ!!」
シェイミの一言が心の中にぐさりと突き刺さる。こういう場面で言われると言葉の力が半分以下になる。悲しいなぁ……
「ひどいじゃないか……そんな言い方ないじゃないか……」
「だったら、もうちょっと……んひぃっ!!分かりやすく……」
「絶頂の一歩手前。"しおふき"する前の"なみのり"みたいな感じ」
「…………ひゃっあっ……」
等々何も喋らなくなった。断続的に吐く息だけが聞こえてきて、ぬちゅぬちゅと体中を蠢く触手の粘液が擦れて、滑るような音しか聞こえない。
「うぅん、口で言っても分からんな……よぉし、シェイミ先生に詳しく分かりやすくマッピングして教えて差し上げよう」
「え?マッピング??……!?っひゃああああっ!!??」
シェイミの黄色い悲鳴が聞こえる。それはそうだ。おまんまんにこすり付けていた触手を割れ目の中にゆっくりと進入させたのだから。
触手による乳首の吸い上げ、先端をちょっとだけ割れ目の膣内に入れて、焦らすようにくちゅくちゅと微弱なピストン運動をして、ゆっくりと近づいて唇を重ねる。順序が逆な気もしたけど気にしない。だってそういう順序は破壊するためにあるんだしね。
「んっ!んぅっ……んー!!……んんーっ!!」
口の膣内の感触がいっぱい伝わる。複雑な口内には、ちょっとだけざらついたような感触と、肉と唾液で溢れていた。ちょっとだけ抉れているような部分はきっと、細胞が死んでしまったところだろう。そこからまた新しい細胞がつくられるのだ。再生というのは不思議だなぁ……
シェイミはひくひくと身体を痙攣させて、力なく俺のほうに抱きついた。自分で出した触手の粘液が身体に引っ付いて、ちょっとだけ不快感を催した。この触手は自分の力で作り出した虚影のようなもの。ねっとりとまとわりつく粘液のようなものは、汗と思ってしまう。自分自身の汗が自分について喜ぶ変態がどこにいるか。シェイミの汗ならなめなめしてクンカクンカスーハースーハーしちゃうの。
「んー!!んんっー!!!!」
身体の力がどんどん抜けていくのが分かる、快楽を一度身体に教え込まれてしまうと、どうしても力が抜けてしまうものだ。
しょうがないよね、エロイことしてる時に力むのもアレだしね。そう思って、ゆっくりと唇を離して、にこりと微笑む。
「どう?」
「んひゃああっ、ひゃあっ、あっ、ひぁっ…………」
駄目だ。まるで聞いちゃいねぇ……
でもなんとなくだけどわかる、俺の出した職種からシェイミの敏感な部分を弄っているだけで、シェイミの身体は喜んでいる。知らない快楽に、分からなかった性感帯に……
なんとなく発情しているみたいでおそろいだ。
「さあ、判ったら次のステップに進むために、全エネルギーを開放いたします!!」
そういって、シェイミが知らないうちにぴくぴくと突起させてしまったまんまんの上についているお豆さんを指でくりくりと弄った。
「!!?っーーーーーーー!!」
声にならない絶頂。シェイミのまんまんから愛液が飛び出して、指を汚してしまった。
舐めてみた。ペロッ、これは……うまいっ!!…………あ、やばいなんか変態っぽいかも。ああ、でももう変態か……
だがまだまだ、触手でいじったくらいじゃ発情して熱くなったちんこは収まらない……
これからが……本番なのだ……


☆☆☆


頭がおかしくなるくらいの快感が全身を電流の様に走り抜けた。頭がおかしくなったのか。それとも体がおかしくなったのか……
「おお、シェイミ目がうつろだ。可愛いな」
「っあ……はひぃ……」
自分の体が自分じゃないような感覚も襲いかかる。体が自由にならないだけでもそんな風に感じてしまうのだ。
自由が利かないまま、触手に蹂躙されるというのは非常に気分が悪いものだと思っていた。頭の中では触手なんて物は捕食のための機関だとしか考えられなかった。
だが、違った。バクバクと大きく脈打つ心臓も、ピクリ、ピクリと小さく震える体も、きりきりとなる耳鳴りも、どれもこれもいやなものではない。
気持ちがいいのだ……
触手の動きが変わったのか、どんどん私の陰部にその身を沈めていく。ゆっくりと、しかし、確実に……
ずっ、じゅぷ……くちゅっ、じゅぷっ……
「ふぁっ……ぅぁあんっ!!」
いちいち馬鹿みたいな声を上げながら、身体を仰け反らせる。体中のいたるところが、黒い鞭のようなもので舐られている。
そんなものに快感を感じるということが私には信じられないと思ったが、でもこれは現実の行為だ。気持ちいいと感じているのは、紛れもなく自分なのだ……
ちゅぷ、じゅぷ、ちゅっ、ちゅうぅぅ……
「はゃああっ!!あっ、あにゃあんっ!!」
胸の突起物を吸われて、陰部の上の秘豆を擦られて、快感が脳内に直接叩き込まれる。脳から走る電気信号が身体中に伝わる快楽を馬鹿正直にキャッチして、身体全体に伝える.
「ひゃああっ、ひゃっ、あっ、……うにゃあああああんっ!!」
全身を仰け反らせて、大きく跳ねる。真っ白になって、何も考えられなくなる。お腹の中も、頭の中も、いろいろなものがごちゃごちゃになって全部黒く塗りつぶす。今がどんな状況なのか、そして私が何をしていたのか、一瞬だけでも忘れるほど、強い強い快楽の渦……
ぷしゃ、と、透明な液体を噴出して、私はぐったりと項垂れた、虚ろな瞳を無意識のうちに窓に向ける……
深い暗さだ。宵が強くなっていく……
「ふぅ、ダークライタイムいったん終了」
ムードもへったくれもない声だ。でもそんな声が聞こえるだけでは、今の放心状態の私は完全に答えることはない。
「ハァ……ハァッ……」
荒い息をついて、のろのろと身を起こす。気持ちよかったが、まだ足りない……
付き合うといったが、こんなもどかしいのはいやだ……
書物で見ていただけで、どんなことなのか分からないが、でもやってみたい。ダークライと繋がりたい。もっともっと、快楽を貪りたい……
「ハァ、ハァ……」
「ん?」
触手が絡みついたまま、ゆっくりとダークライのほうへ倒れこむ。殆ど押し倒すような形で。
無意識のうちに、陰部に挿入されていた触手を引っつかんで引き抜く、ずぷり、という音がして、異常な粘液とともに触手が引き抜かれる。
「んぅっ……」
「おお、乗られた、乗られたぞ、俺びっくりだよ!!」
「はしゃがないでください……んっ……くぅっ……」
ダークライの勃起した男根をぴったりと宛がって、ゆっくりと腰を落とし始める。ずぷ、ずぷと飲み込んでいく感触、身体中がぞわぞわとして。腐った果実が浸透するような快楽が、じわじわと身体中に広がっていく……
「んあっ、ひゃうっ……」
ヌルヌルの触手が膣内にさっきまで入っていたために。割とスムーズに入ったが、さすがにこつりと中に当たったときに、若干の痛みを伴った。快楽だけではなく、痛みも伴うということまではさすがに知らなかった。
「うくっ、いつっ……」
さっきまでこわばっていたのか、以外にぐいぐいと奥まで言ってくれない。しかし今飲み込まんとする巨大な男根は、今や遅しと未知の世界の地図作製に余念がない。先程からびくりびくりと反応して、たまに跳ね上がる。
「ふゃあっ、あうぅ、ちょっと、落ち着いてください!!」
「うおおっ、駄目だ、もうまてん。そぉい!!」
「うきゃあっ!?」
そんなことを言って、繋がったままダークライは私を一気に押し倒し返した。高等部にねちょりと飛び散っていた精液が引っ付いて、何だか気分が悪くなった。
「シェイミ……」
「は、はい?」
「プラグインっ!!!」
「えっ?」
そういった瞬間に、半分くらいまで入っていた男根を、一気に奥まで突き刺した。何かが破れるような感じ、いきなり巨大なものが入ってくる痛みに、私は声にならない訴えを口から漏らした。
「ぁskちwsldkgじおうtkがんgj;いおっ!?」
「おお、何語だ?シェイミ語か?」
殆どの言葉が口からもれ出た空気と一緒に潰れたようなしゃがれた声しか出なかったが、いきなり繋がったダークライは、はぁはぁと喘ぎながら私に気にすることなく言葉を紡いだ。
「いやぁ、もうちょっと焦らしてからのほうがいいと思ってたんだけど、無理ですね、俺が我慢できないしね!!……大丈夫だシェイミ、気持ちよくするから!!」
にっこりと微笑むダークライ。うぞうぞと蠢く触手。これはまるで輪姦ではないか…………
だが、自分の言葉を思い出す。自分の責任は、自分で――――
そう思って、やめた。今はそんなたいそうなものではない。結局のところ、自分も気持ちよくなりたいという本能が、理性よりも打ち勝っているという事実がある……
若干の痛みは伴ったが、好きな人にこんな風にされるというのは嬉しいものだった。何しろ相手はあのダークライなのだ、嬉しさもより一層あるものがある。
「は、ハイ……その、優しくしてくださいね?」
「駄目だ!!」
「え?」
「俺はどっちかって言うと嫌がるシェイミの膣内に無理やり出して萌えたい!!」
「いまさらそんなムード作れるわけないでしょ!!」
何を言い出すのかと思ったら、さっきと何ら代わらない言葉の投げあい。デッドボールがまだ続いていたのだった。
一瞬でも身を任せようと思った矢先にこれである。精神的ダメージが結構来た。
「まぁ、ですよねー……」
ダークライは納得したのか、うぞうぞと触手を動かしながら……そのまま触手で私のお尻の穴をやたらと刺激し始める。
「ひゃあっ!?ななな……何するんですか??」
「いやぁ、このままアレですわ、動いても多分痛いと思ったから、後ろの穴をちょっと刺激して痛みを和らげようかと思いましてですね――」
「ひゃあんっ……あうぅ、そんな気遣いいいですよぅ……」
ネチャネチャの触手がやたらと菊門を刺激して、尻肉を愛撫する。ねっとりとした先っぽの液体が、夜話やわとしまっていた入口をこじ開けていく。それに連動するようにダークライもゆっくりと腰を動かし始める……
「ぎゅぅっ……うぐっ、げほっ、あうぅ……」
「しっかりしろ!!そんな蛙みたいな声を出してたらアレだ、もう蛙ポケモンだぜ!!」
「そんなこといったって、痛いものは――ひゃっ!?はぅぅっ!!!」
そんなことを言っているうちに、一本の触手がお尻の穴に入り込んだ。ヌルヌルの粘液がお尻の穴を滑りやすくして、痛みよりもむず痒さが頭の中にじゅくじゅくと入り込む。
「ふえぇん、あっ、ひゃああっ…………っ!?」
ごぷ、ごぷぷ、ごぷごぷごぷ……
お尻の穴に違和感を感じた。何かの液体がお尻に入っていく。冷たい感触と、ヌルヌルした感触。お腹の中が大きくなって、妊婦のようになる。
「はにゃああっ!?…………ひゃうぅ……」
「どう?痛くなくなった?動いていい??」
大きくなったお腹を撫でながら、私を見下ろすダークライはやたら爽やかな顔をしている。静かに縦に頷くと、ダークライが腰を動かし始める……ゆっくりとした動きだったが。痛みは殆ど消えていた。
ずっ、じゅぷっ、ぬちゅ、ぐちゅ、ずぷっ……
「ふあぁ、ひゃああん、あっ、やぁっ、はぅぅ………ああっ、お、お尻の穴も、おしっこの穴も、気、気持ちいいですぅ……」
ぐちゅぐちゅと混ぜ合わさせるような音、菊門に入った触手がうねうねと中の肉壁をくすぐり、刺激を与える。お腹の中に溜まった液体が、どろどろと渦巻いて、間接的な快感を与えて、陰部に繋がったダークライの男根がピストン運動をどんどん早くする。身体が蕩ける様に熱くなり、頭の芯がくしゃくしゃになって錯綜する。
「ひあっ…………あっ、ああっ……お、お尻の穴、ほじほじしちゃやですぅ…………」
「シェイミ顔がえろーい。全く、この擬似妊婦さんは俺を萌え殺す気ですね、けしからんな!!これはしっかり膣内に出して本物の妊婦さんにしなければ!!」
「ひゃあっ、あうぅ、ふあっ……」
ダークライの肉棒が膣内でわななく。触手がぐちゅぐちゅと奥まで入り込んで、腸を直接刺激する。射精が近いのか、両の穴に入ったものがびくりと跳ね上がる。
「あうぅっ!!……ハァッ……」
「くぅ、うおおあっ!!」
もう何かを考えるのも馬鹿らしくなって、私は私自身を放棄して、獣のように快楽を貪った。
「うああっ……はぅうっ!!……だ、ダークライ……しゅ、しゅきでしゅぅ……だいしゅきぃ……!!」
「ああ、俺も大好きだ!やっぱり俺とシェイミは愛称抜群だな!!」
ろれつが回らないうちに出た、口からの無意識な告白、頭の中では、言う場所とタイミングなんかを考えていたのだろうか……
結果はこんな結果になってしまったが、うそでも答えてくれたダークライが嬉しくって、彼を自分から強く抱きしめる……
「うにゃああっ!!……はぅっ、もう、放しません、絶対に放さないもんっ!!」
「ああ、俺も絶対に放さない!!ずっと一緒だ!!」
大きくなったお腹がきゅっと潰れて、お尻から黒い粘液がちょっとだけ漏れる。頭の中はもうダークライでいっぱい、彼のいろんな顔が、浮かんで消える……
「ふああああああっ!!!」
「ぐぅぅぅうううっ!!」
びゅく、びゅるびゅるっ……どぷどぷどぷっ!!!
お腹の中がお尻の穴とは違ったぬめりが満たす。頭か完全にショートして、意識が宵に支配される……
「ダークライ…………」
完全に意識を手放す前に、彼は笑った。
「シェイミ、大好きだ」


☆☆☆


翌日――
「シェイミ…………」
「ダークライ」
向き合った二匹……
一方は普通の表情だ。機能のことがあったからといってそこまで動揺はない……
もう一方はやつれた顔をして笑った。
にこり
釣られて出る笑顔……
にこり
「シェイミ、僕、死ぬね……」
「わぁああああああっ!?!?何してるんですかダークライ!?」
やつれた顔をしたダークライは、徐に懐から毒薬を取りだして、飲もうとした。
私は血相を変えてそれをとめようと、とにかくダークライを羽交い絞めにした。
そう、昨日の夜のことを、ダークライは完全に覚えていたのか、今までの行為を記憶にしっかりと残していたために、自分が何をしたのか、私に何をしたのかを完全に覚えていたのであった……
それらを踏まえたうえで、自分自身が許せなかったのだった。
「放してぇ!!死なせてぇ!!後生だから逝かせてぇ!!!」
青色の綺麗な瞳から、ぽろぽろと大粒の涙を流しながら、ダークライは泣いて喚いて、とにかく死のうとした。
「だあああああっ!!だから私は気にしてませんってば、しょうがないでしょう?発情期だったのは事実だし、知らなかった私も悪いんですから!!」
「うわああああああん!!何も知らない君をあんなにめちゃくちゃにして、膣内にいっぱい出しちゃって、綺麗だったシェイミを汚しちゃったあああぁぁぁっ!!お願いだから死なせてぇええええ!!!」
さっきからこんなことの繰り返しである。だが、昨日はちゃんと危険だから帰れといってくれたではないか、それを思い出したシェイミは大きな声で喚いているダークライに必死に話しかける。
「大丈夫ですってば、昨日ダークライは私に危険だから帰れといっていたではないですか!!!あの行為は全て私の責任ですってば!!」
「…………で、でも、やっぱり僕が許せない。こんな風に、好きな人にこんなことするなんて……やっぱり死にたい……もう駄目だ!!僕は生き物として終わってる!!」
「え!?えええ!?わ……私のことが好き??……そ、それは、友達として?」
「違うよ……異性として、女の子として好きだったんだ。なのに、なのに……僕は、僕は……うわーんっ!!!!」
羽交い絞めにしながら、私は唖然とした。ダークライが、私のことを、好き?
自分が一方的に思っていただけではなかった、それが分かって、顔が自然にほころんでしまう……
「そ、その、う、嬉しいです……わ、私も好きでしたから、ダークライのこと……」
「片思いだって分かっても、こんな風に――え?」
「好きですよ、ダークライのこと、男の子として…………」
「しぇ、シェイミ…………」
「だから、あのことも、私は嬉しかったです……行為の最中に、不恰好だったけど告白して、嘘でもそれに答えてくれて。それで今、嘘じゃないって分かりました……私は、とっても嬉しいです……」
「…………やっぱり死ぬ!!」
「えええええっ!?」
「両思い、凄くいいことだと思うけど…………僕は好きだって言ってくれた君に、あ、あんなことや、こんなことを…………うわあああああんっ!!」
昔あったときと何ら変わらない。泣き虫で、気が弱い彼だった。私が羽交い絞めの力を緩めたとたんに手に持っていた毒薬を飲み干そうとした。
「だああああああっ!!!」
私は思い切り毒薬ごと彼をひっぱたいて吹っ飛ばした。凄まじい音がして。彼は家の壁に突っ込んだ。
「痛ぁっ!!いきなり何するのシェイミ!?」
「そりゃこっちの台詞です!!何いきなり死のうとしてるんですか!!?」
「だって、だってぇ………もし妊娠してたら、ぼ、僕のせい……うわぁああん!!」
ここまで泣き虫だと思わなかった。なぜ彼は地図師という危険な仕事が出来たのだろうか?アレか、好きな人の前だからなのか??
「大丈夫ですってば、私は何も起きてませんよ。ほらほら…………」
「…………ほんとに?」
「大丈夫ですって……私は気にしてませんから、ダークライも、気にしないでください……」
「…………で、でも…………」
「大丈夫ですよ」
「う、うん……」
私はとにかくダークライを落ち着かせた。とりあえず大丈夫だろう。と、自分でも思っている。


☆☆☆


「おめでとうございます。六ヶ月です」
この村で医者をしているグレイシアが、にっこりと笑いながら眼鏡をかけなおした。
「…………マジですか?」
「ええ、マジです。火事でも親父でもありません……マジです」
大きくなったお腹を押さえて、私は半信半疑にそう言った。グレイシアは崩れることのない笑顔を、私とダークライに向けてくれた。
隣にいるダークライは、呆然として、その言葉を聞いていた……
六ヶ月たって、食欲が著しく落ちたり、学校を休校したり、やたらと寝込んだり、お腹が膨らんできたりしていたが、まさかこんなことになるとは予想が出来なかった。
「ダークライさんの持ってきてくださった医療危機のおかげで、この村の医療も結構進みましたよ。誰と誰の子供かが分かるくらいになったのもダークライさんのおかげですね……そんなダークライさんが、お父さんになるなんて、それに、お相手は仲良しのシェイミさんですから、きっと村中が祝福してくれますよ!!」
嬉しそうに笑ってはしゃぐグレイシアとは対照的に、ダークライの体は小刻みに震えている。
「だ、ダークライ??」
「シェイミ……逝ってきます……」
ダークライはそういうと、どこから出したのか結構切れ味がよさそうな日本刀をずんぬらりと自分のお腹に押し当てた。
「わーわーわーわー!!!だからやめなさいってば!!」
「いやあああああっ!!やっぱり僕のせいだぁぁあああっ!!切腹させてぇえっ!!」
「ちょ、ちょっとちょっと、妊婦さんが暴れてはいけません!!それに、命を取り扱う場所で命を散らすのはやめてくださいよ!!」
ぎゃーぎゃーと暴れるダークライを押さえつけようとして、それをグレイシアが制して、代わりにグレイシアがダークライから刀をひったくって、取り押さえる。案外力持ちなんだと思った。
この数ヶ月間ダークライの心の中に積もってきた罪悪感のダムが、おめでたという言葉で決壊したのか、ダークライは涙を流しながら必死に言葉を紡いだ。
「もう森に帰る。そこでひっそりと死ぬぅ!!こんな最低の屑野郎がいる場所なんて、この村にはないよぉぉ!!!」
「何言ってるんですか、ダークライさんがいなくなったらみんなが悲しみますよ!!」
「やだやだぁっ!!おねがいだからしなせてぇえええ!!!」
じたばたと暴れるダークライ、それを組み伏せて説得しているグレイシアを横目で見ながら、私はため息をついた。
そこまで責任を感じているなら、いっそのこと思い切って私と一緒にいてほしいのに…………
そんなことを考えながら、大きくなったお腹をさする。とても温かくて、命の鼓動が流れていた。
おめでたという言葉を聞いて、私は嬉しくなった。本当はできてほしいと思っていたから。
やっぱり、好きな人の子どもだから、嬉しいに決まっている。だからあの夜のことも、きっといい思い出になるだろう。
深い宵の中で、一緒になれた、ちょっとした出来事で、一緒になれた……
「ウフフ、新月に、感謝感謝ですねっ♪」
にこりと笑って、外を見た。お天道様はさんさんと降り注いで、今日はちょっと暑い日になるだろう。
悪い方向に考えては駄目だ。いい方向に考えよう。そうすれば、どんなことでもきっといい方向へ進んでいくのだから……
「おねがいだからしなせてぇええええっ!!!」
「駄目ですってば!!落ち着いてくださいっ!!!」
ダークライの泣き声が、昼間の空に木霊する……
今日も一日、この村は平和であった…………

おしまい


あとがき
ごめんなさい。ちゃんと今度から考えて投稿した方がよろしいということだけが頭の中にぐるぐる渦巻きました。やっぱりでないほうがよかったなぁとも思いましたが、まさかの三位。
嘘かと思ってほっぺを抓ったりしましたが。痛かったのでほんとでした。凄く嬉しいです。よくもこんなキチガイ小説に投票を……orz
ありがとうございました。
今回はギャグ要素、そしてたとえ下品だと思われようがとりあえず下ネタ全開で逝って見ました。
はっきり言って見苦しい文章だったことを深くお詫びいたしますorz
今度からはやっぱりオブラートに包むのがいいよね。直接表現好きだけど仕方ないね。
書き直したいところがいっぱいありすぎて迷走したお話でしたが、楽しめたかたがいたことが本当に嬉しかったです。
さいごにもういっかい。本当にありがとうございましたorz



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Last-modified: 2013-07-24 (水) 00:00:00 
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