written by cotton
最終話, 守護の誓い
「…おい、大丈夫か!?」
「いやぁ~…逃げられてしもうたわ…。ディフはん、聞いてたんより強いですなぁ…」
先程の場所に倒れていたヨルノズクの元へ飛び寄るピジョン。逃げられた、その知らせに舌打ちをする。
「まぁ…催眠術は当てといたんで、捕まえるんは簡単やと思うで?」
「…そうか」
「そうや、一つ頼んでもかまへん…?」
「…何だ?」
「破壊者の娘(コ)は逃がしたってや…?せやないとディフはん、悲しんでまうから…」
風の中を滑る。森の中だろうと構わない。背中には、牙の少女。
「ディフ!?いきなり翔ぶぞって…どうしたの?」
「このまま…帰るぞ!」
ー急がないと。
「このまま…!?」
眠気はまだ残る。だが、躊躇している暇はない。
「このままだとお前を送れそうにないから…。誓いは果たせそうにないから…。」
羽根が時々幹に叩きつけられる。怯みはしない。いつか見える光を目指して、ただ前へ。
「…ロヴィン」
ーそうだ。
「ん?」
「もうすぐ着く。今までありがとな。」
ーこれで、別れなんだ。
「こちらこそ、ありがと。」
ー涙よ乾け。この別れには、涙など要らないのだから。
光は…、見えた。
闇を抜けた俺達の前には砂漠が広がる。破壊と守護の境を示す関。
「着いた…んだね…」
月はそれを、幻想的に映し出していた。
「守護者、名は?」
エレキブルが近づいてくる。恐らくこの辺りを守る破壊者だろう。
「聖天、種族名エアームド、ディフです」
「隣は…破壊者か?」
「えっと…覇女、クチートのロヴィンです」
緊張しているのか、その声は震えているようだった。
「ロヴィン…?行方の知れなかった班か…。これで、全員揃ったことになるな…」
「全員…!?みんな無事なの!?」
「フフッ。良かったな、ロヴィン」
「うん!」
少女は笑顔で応えてみせる。…良かった。最後までその笑顔を見れて…
ー…ッ…!!
俺達に突きつけられた現実は、あまりに残酷で。
俺達の別れの時は、あまりに辛くて。
「ディフ?…!!ディフッ!!」
君の涙は、どんなものより俺の胸を締め付けた。
ーハアッ…!ハアッ…!
「目標を捕縛。麻酔投与開始」
『了解!』
数匹のピジョン達が周りを囲む。背中にブレイブバードを受け、痛みでどうすることもできない。無茶が祟ったか…?
「ディフッ!返事してッ!ディフッ!!」
君の声は、どんなものより俺の心に響いた。
ー…アッ…!…アッ…。
倒れた俺に触れる砂はただ冷たくて。流れる風はただ肌寒くて。
「イヤッ…!イヤだッ!!このままお別れなんてッ…!!」
そんな君に、俺は何も言えなくて。
ー…ッ…。…ッ…
「麻酔投与完了。帰還する!」
『了解!』
苦しさはやがて、眠気に変わっていった。
「ディフッ!!」
瞼がただ重くて。体は言うことを聞かなくて。
ー…ごめんな。
最後に見た君は、今までに見た君の中で一番悲しい顔をしていた。君との別れは、今までで一番辛いものだった。
ーでも、いいんだ。
俺にできるただ一つのこと。君を護り通せたんだから。
白銀は闇に堕ちた。その闇の中でも、強い輝きを放っていた。
1章後書 翼、その後へ。
気になった点などあれば。
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