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守護の力 九、十話

/守護の力 九、十話

九, 守護の役目とは


地には、三匹の影と柔らかな朱い光が写っていた。風が吹き抜ける度、葉は囁き、チラチラと影は揺れる。
「…そろそろ行きますね」
「ああ、じゃあな」
「ありがと~!」
ロヴィンは手を振って少女を見送る。彼女の姿が、森に消えていってもなお。
彼女の去ったこの場所は、天癒:日本晴れの力が薄れたか、少しずつ闇が包んでゆく。



結局、ピジョン達はあれ以来此処には来なかった。もしかしたら、逃げた、とでも思われているのかもしれない。
当然だろう。手がかりすら消してしまったのだから。
汚れ血を嫌う、少女によって。



手渡された書類には"緊急"と判が押されていた。
同勢力への攻撃…?あれはただ、向こうから始めた戦いではないのか。書類を読んでただ呆れる。
とにかく、聖天に依頼したということは、それだけ捜索の範囲が広がったということ。見つかるのも時間の問題。
「なあ、ロヴィン…?」
「ン?何?」
「これから…どうする?帰還はできそうにないが…」
少し考えた様子だったが、微笑んですぐに答えを返した。
「じゃあ、"覇女"のみんなのところ、戻りたい!いい?」
「ああ。…少し時間はかかるかもしれないが、な」
破壊者の所へ向かうには、視界の問題から地上を歩いて行ったほうが良いのだろう。空さえ翔べれば1日あれば着くのだが。
…しょうがない。歩いて行くか。上空だと戦いを避けることはできなさそうだ。リスクは大きいし、単騎で挑むというわけにもいかない。それに、
少女の正義に背くことになるから。



自分は既に堕ちた守護天使、堕天使。たとえ堕ちたとしても、守護者としての貫く正義がある。
俺が受けた任務、"破壊者の保護"。ロヴィンが望むなら何日かけたって、どこへでも連れていこう。



捨ててしまおう、間違った使命を。ただ任務をこなす、それは、決して守護の役目ではない筈だから。
あの日の誓い。今こそ強く胸に刻むべきなんだろう。



"俺の翼は、誰かを護るためにある。"



十, 堕天使、天に見捨てられ


夜の静寂。今夜の月は雲に閉ざされている。君とのこの空間だけが、世界に取り残された場所であるかのように。
白銀は堕ちた。もう自分は月に見守られる存在ではないのだ。守護の誓いは、堕ちた自分にはもう関係ないのだから。



置き去りの空間には、君の寝息だけが聞こえる。その寝顔は、どこか寂しい。
こいつを送ったら、もう隊には戻れないだろう。この任務で守護者を降りることになるだろう。
だったら、自分の満足できる形でケリを着けたい。
護るべきものを護ること。
堕ちた守護者にそんなことを言う資格は無いのかもしれない。レーシャが聞いたら笑うだろうな。



堕天使は太陽にも見守られなかった。小雨は木々の間から、二匹へと降り注ぐ。土は泥濘み、所々水溜まりも見られる。
ロヴィンはそれらを避けながら歩く。勿論俺にはそんなものを気にする余裕は無く、上空と風の音ばかりに注意して、彼女の後ろを歩く。



…サッ…。
「ん…!?」
聞こえた。葉々を切り裂く翼の音。だが、
「何か聞こえたの?」
「ああ、…ただ何処から聞こえたかは分からねぇが…」
小雨とはいえ、聴覚の妨げになってしまった。
「とにかく、周りに注意しろ。どこから来るか解んねえぞ」
辺りを注意深く見渡し、敵の襲撃を待つ。
音が重なって、騒々しくなった森。いつ襲って来てもおかしくない筈。…だが、待っても来ない。自分の思い違いだったか…?
「ディフッ!上ッ!」
突然ロヴィンの叫ぶ声。
「上…?…!!」
見上げた上空には、既に一つの影が急降下を始めていた。



…ガッ…ッ…ッ…。



「ディフ…?」
「…大丈夫だったか、ロヴィン?」
伸ばした右翼は、その襲撃を易々と止めた。鋼翼:鋼の翼。ピジョンのブレイブバードは、翼を貫通することなく、宙に弾き返されー



「ありがとな。奴の来る所を知らせてくれて」
再びフタリきりになった森。食事として、ロヴィンは木の実をかじっている。
「ううん。ディフだって、あいつの攻撃止めてくれたじゃない?」
彼女を護ること。やっぱり、これが自分が守れるたった一つの誓い。
雨は止み、空には少し雲が残っていた。陽は二匹を照らした。
「ありがと。」



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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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