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孤独なある子の物語

/孤独なある子の物語

MMH``F

短編に挑戦してみました。
うまく書けたかどうかはわかりません…
どうか生暖かい目で読んでください。
今回は純恋愛ものです。
楽しんでいただけるとうれしいです!





私は孤独。


生まれた理由なんて、わからない。

人々はみんな私のことを嫌っている。



私の近くになんて誰も寄ってこない。

もちろんそれはポケモンも例外なく。

私に勝負を挑むトレーナーやポケモン達もいるけれども、大抵勝てる。
勝負の一瞬は楽しいけれど終わってしまったらただ悲しいだけ。むしろ勝負する前の何倍も悲しい。
今日も私は一人だ。
誰も居ない木の影で静かに、どこを見つめるのでもなく本当にただ、座っているだけだった。
多くの日をここで過ごした。
やる気もなくこの世界の空気を吸ったり、吐いたり。

私がボーッとしていると、視線の端に何かの影が見えた気がした。
いや、でもどうせ見間違いだろう。
私に近づいてくる人なんて、誰も――――


「ああ、やっと見つけた」


「!?」
私は驚いて、声のした方へと視線を向けた。
近づいて来たのは1人の若い人間だった。
人間は恐れるでもなく私に近づいて来るのだ。……私を捕まえに来たのだろう。
私は勝負するために身構えた。
「おっと……僕は別に君を捕まえに来たわけじゃないから、そんな怖い顔して睨みつけなくってもいいよ」
顔は生まれつきよ、と言いそうになったがやめた。
私を捕まえに来たわけではない……?
じゃあ何をしに来たのか、この男は。
「隣、いいかい?」
「……」
私は男の問いかけには答えない。
ますますわからない男だ。私の隣に座る?何を考えているんだ。
そんなことをを私に言ったのはきっとこの男が初めてであろう。

男は言葉通りに私の隣に座り、聞いてもいないことをぺらぺら話し始めた。
「いや、君を探すのにずいぶん時間が掛かってしまったよ。何せどこにいるのかわからないのだから。でもまさかこんな普通の場所に居るなんて。しかも真っ昼間に。……ん?何?その不審そうな顔。……あ、そうか。そういえばまだ自己紹介をしていなかったね。えっと、僕の名前は……」

「違う」

私は男の声を遮った。
名前なんてどうでもいい。
どうせすぐに居なくなるに決まっているんだから。
「木陰で休みたかったなら、どうぞ。……私が退くから」
くるっと向きを変えてこの場所を離れようとした。
こんな目的もわからない男となんて一緒にいられない。
いつ、私を捕まえようと攻撃してくるかもわからない。

「……驚いた。君、女の子だったのか」

――――なんて失礼な奴だ。

「何、ですって……」
私が振り返り男へ向けて言うと、男は悪びれた様子もなく笑いながら言った。
「いや、見た目から、勝手に男だと思っていたよ。ごめんね」
――――確かに、よく間違えられることは多い。
いやむしろ9割方の人は私の姿を見て男、と答えるだろう。
イメージの問題もあるかもしれない。
今まで沢山の人の散々言われてきたが……なんだかこの男に言われると腹が立つ。
「見た目で決め付けないでよ」
「ごめん……傷ついた……?」
「……」
傷つく?
確かに傷つくのだが――――もう慣れたはずだった。

「それは……そうでしょ。女が男に間違われるなんて……褒め言葉でも、なんでもないもの」
なぜか、強く言ってしまう。私はこんな風に言いたいわけではないのに。
「そうだよね……本当にごめん」
男は申し訳なさそうに言った。
「別に……」
それから2人とも黙ってしまった。
こうゆうふうな沈黙は嫌いだ。
どういう顔をしていればいいのかわからなくなる。

……それより、どうしてこの男は私に近づいてきたのだろうか。
まさかただ単に雑談とか……そのような落ちはやめて頂きたい。
それにそんなはずはない。私と、雑談、だなんて……

ふと気がつくと男はじっとこちらを見ていた。
 
何?何が言いたいの。

私は我慢できずに口を開いた。

「「あのさ」」

綺麗に2人の言葉が重なった。
なんというか、恥ずかしい。
「あ……」
「お、お先にどうぞ」
彼が私に譲ったので私は彼に対しての疑問を尋ねることにした。
「あのさ……なんで私と話そうなんて思ったの?普通の人は私を避けているのに。おかしいわよ」
「おかしい……のかな。僕はただ、君と友達になりたいだけなんだけどなぁ」
「は!?」
思ってもみなかった単語が男の口から飛び出した。
なので思わず大きな声を出してしまった。
「君の話を聞いてから、どうしても友達になりたいと思ったんだ。そして……」
「ふざけないでっ」
「え?」
「私と友達になりたい?そんなの嘘よ。どうせ私を油断させて捕まえる気でしょう?騙されるものですか」

言ってしまった。

言ってはいけない。
こんな言葉を相手は言って欲しくない。
そんなことわかってる。
本当は私も誰かと友達になりたいと思っているはずなのに。
「今までに、何度かあったわ。友達になろうと笑顔で近づいてきては……私のことを騙す」
男がなんとも悲しそうな顔をした。
それでも私の口は止まらない。思ってもいない言葉が次々と溢れ出て行く。
「あんただってそうなのよ!友達になりたいなんて嘘に……」
「嘘じゃないさ」
男が静かに言った。
「嘘じゃないから。それを証明するために、僕は毎日ここに来てやってもいい。君が僕と友達になると言うまでずっとね」
何言ってるんだ。この男は。
友達になるまでずっとって……強引すぎるでしょ。
「……」
私はもう話す気も失せ、方向転換し、この場を離れた。
「明日もここに来るよ!絶対ね!」
男の叫ぶ声が私の後ろからずっと響いていた。





「……」
あれから3日後。
あの男はあれから本当に毎日ここに来ている。
別れ方があんなんだったので私はずっと陰で見ているだけだが。

1日目は青空が広がっていた。
とてもお昼寝日和だったのにあの男のせいで出来なかった。

2日目も晴天だった。
男はこの日も来た。
うざいと思いつつも、明日も来てくれるのだろうかとうきうきしている自分もいた。


今日は前日とは打って変わってどしゃ降りだった。
今日はさすがに来ないだろうと少し落ち込んでいた私を裏切り、彼はここに来た。
傘も差さずに、1人で。
なんてやつだ。
いくらなんでも無理がある。
馬鹿だ。ただの、馬鹿。

本当に私が友達になるまで続けるつもりなのだろうか。
そんなの、体が持たないだろう。あいつは普通の人間なのだから。

逆に、友達になれば止めてくれるのだっろうか。
ならいっそ、なってしまったほうがいいのではないか?
そうすれば、彼はこんな風に体を張ることなんて終わりにするだろう。
それが、いい。
だから声をかけて――――
「っ……」

それが、出来なかった。



翌日。
雨はすでに止んでいた。
私はいつものようにあの場所へ行く。

何故行くのか。
嫌ならば行かなければ良いのに。

最近はそんな自問自答ばかりしている。

いつも私の答えは見つからない。


彼はいつも通りの時間に来なかった。
やっと諦めたか。
私はほっとした。
それなのに、来なくて清々したのに、何故か泣きそうになった。
何で。
私は友達なんか作らない。いらない。
それでいいと自分で納得したじゃないか。
なのに、何で泣くんだよ。

――――友達になりたいと思ったんだ。

男の声が頭に響く。

そうか。
私はこの言葉を言われたとき


うれしかったんだ


そして、そう言ってくれて、ここ来てくれる彼が、好きなんだ


そう気づいた瞬間、私の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。
地面にぽたぽたと垂れていく。
彼に、伝えたい。
でも、もう気づくのが遅すぎた。

彼は来ない。
もう、ここには……


「泣いているの?」

「――――っ!?」

上を向くと、あの男がこちらを心配そうに見つめていた。
「な、な何で!?あなた、もう来ないんじゃ……」
「誰が来ないなんて言ったのさ。来る途中で綺麗な花を見つけたから」
「え、ええー……」

とんだ私の恥さらしじゃないか。

「あなた、花なんてっ……!?」
突然彼が私の頭に手をやった。
「何……?」
「うん、やっぱり似合うね」

私がそっと手を頭に伸ばすと、そこには一輪の花があった。

「似合うと思ったんだ。だからほら、こんなに……」
男の手には、沢山の花が握られていた。
白い、綺麗な花だった。

不意に、先ほど止まったはずの涙が出てきた。
「ど、どうしたんだい?」
「わ、私に……あくタイプの私に、白い花なんて似合わないよ……」
本当、私に花なんて。

「似合わないわけないじゃないか。こんなに、かわいいのに」

……不意打ちだった。
私が、かわいい?
そんなはずない。馬鹿じゃないの。
そう言おうと思ったけど口がそうは動かなかった。

「……本当?」

私の口からはそんな言葉が滑り出していた。
何言ってんだ私。さすがに恥ずかしいじゃないか。
自分の頬が赤く染まるのがわかった。

しかし、男の口からはもっと恥ずかしい言葉が出てきた。

「本当に決まってるよ。君には何でも似合うよ。なんたって……僕の好きな人だもの」

「え……?」
私はその言葉を聞いて固まった。
「そ、そんなの、嘘よね?」
「嘘じゃないよ。正真正銘、ほんとの気持ち。今度ははっきり言わせてくれ。君のことが好きだ。ポケモンだからなんて関係ないよ。だから、僕のそばにずっといてくれないかな……?」


そんなこと、いきなり言われても。
まだ出会って4日しか経ってないんだよ?

でも……でも。

私の気持ちは決まっているじゃないか。

私がさっき見つけ出した答え。

それは、私が初めて経験した気持ち。

この気持ちを伝えるために、私は口を開いた。
 

「もちろん、です……」


「ほ、本当かい!?」
「え、ええ」
男は今までに無い位の笑顔を見せた。
私もその笑顔を見て微笑んだ。
「そ、そういえば自己紹介してなかったね……」
彼はハハッと笑った。
「そんなことすらしていなかったのに告白なんて、僕は馬鹿だなぁ……」
そう言って頭をかいた。
その後にしっかりとした顔をした。
「遅くなったけど。僕の名前はルーグ。君の事はなんて呼べばいいのかな?」

「私……私の事は、そのままでいいよ」
「そのまま……ということは種族名でいいの?」
「ええ」
「それじゃあ……そう呼ばせてもらうことにするね……」
そう笑って、彼は私の種族名を呼んだ。




「ダークライ、これからよろしく」



私はダークライ。
人に悪夢を見せさせるというポケモン。

でも本当は。

本当はただの女の子なんだよ……?


孤独な私の物語も、ここで終わり。
これからは2人で歩いていこう。


ダークライ.JPG




こんにちわ。MMH``Fです。
今回は孤独なダークライのお話を書かせていただきました。

ある日、フツーにポケモンで遊んでいる時にボックスの中のダークライをふと見て、この子がもし女の子ならどんな感じなのかなあ…
と思い立ったのがこの話のルーツになります。
はじめからこの女の子がダークライだということをばらしてしまうとどうしても固定概念が抜けないかな、と思って最後の最後でばらしました。
いつこのポケモンの種族がわかるんだよ!と思った方々、すみません。

短編は初挑戦なので、どんな風に締めるかが一番の悩み所でした。
これから経験を積んでいきたいと思っています。

これからもどうぞよろしくお願いします。



何かあれば、どうぞ。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 女の子のダークライですか!?驚きました!
    短く出来ており、とても読みやすい小説だと思いました!
    ――T ? 2011-11-13 (日) 18:28:29
  • Tさん、コメントありがとうございます。
    読みやすいと言っていただけて、うれしいです!
    よろしければこれからも僕のことを生温かく見守ってやってください!
    ――MMH``F 2011-11-16 (水) 18:54:09
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Last-modified: 2011-11-13 (日) 00:00:00
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