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失われた感情8

/失われた感情8

作者名:風見鶏 ?
作品名:失われた感情6

前作:失われた感情1 ?
   失われた感情2 ?
   失われた感情3 ?
   失われた感情4 ?
   失われた感情5 ?
   失われた感情6 ?
   失われた感情7 ?

・官能表現があります、苦手な方は退避してください。


 目の前には顔を伏せたままのフィアがいる。
 僕は、いったいどうなってしまったのだろう?
 体がまったく言うことを聞かない。
 夢のなかにでもいるような、自分の体ではないような感覚。

 どういうことだ、いったい何をした?

 問いただそうとしても言葉が出ない。

 それどころか、意識が遠くなってきた。

「おやすみ、フィフス」

 誰かがそういった。





 誰かが、僕の体を愛撫している。
 感じたことはないけれど、まるで母親に守られているようなやさしさ。

 でも、その手は、少しだけ震えている。

 やがて、僕の体から手が離れ、ぬくもりが離れていく。

 いったんぬくもりを覚えてしまえば、そこに残るのは、寂しさだけだ。


「目が覚めた?」
 おぼろげな意識のなか、聞き覚えのある声が響く。
 
 この声は……、いけない。

 だが、体は思ったような反応はしてくれなかった。
「……」
 目の前の敵に、声を上げようとするが、それもできない。

「まだ頭がさえない感じ? 仕方ないわね、痺れ薬をのんだんだから」
 そうか、痺れ薬を飲まされたのか、だから。
 声の主はレイだった。
 なぜ、ここにいるのか、どうしてジュースの中身の詳細を知っているのか。
 聞きたいことは山ほどある。

「あなたが何を思っているか、大体はわかるわ、教えてあげる」
 表情一つ変えないで、レイは静かに言葉をつむいでいく。
「……あなたもうすうすわかっているんじゃない?」
 その言葉を理解したくはなかった。
「フィアは、私たちの仲間よ」
 瞬間、どこかから息をのむ気配がした。
「正確には、フィアの姉、シアが私たちの正式な仲間だったけどね。
フィフス、あなたも聞いていたはず。私たちが四匹組のチームだってことを。
いずれにしても、警戒するべきだったんじゃない? いまさら、遅いけどね」
 淡々と話すレイの後ろで、フィアの姿があった。
「フィフス、悲しいでしょうね。でも安心して、すぐに楽にしてあげるからね」
 のしかかるような体制でレイは体を密着させてくる。


「もうあなたを生かしておく必要もないから」
「……!」
 その言葉に、凍りつきそうになる。
「大丈夫、苦しくなんてないよ。たぶん、何も考えられないまま死んでいくから」
 その言葉のあと、レイはフィフスの唇を無理やり奪った。
 二匹の舌が絡まりあう音が、洞窟の中に響く。



「手が早いのね」

 しばらくたったあと、また聞き覚えのある声が聞こえた。
 そして、ようやく長い接吻から開放される。
「もう、私たちに残された時間も、短いからね」


 レイの背後にはルゥが目を細めたたずんでいた。
 心なしか若干やつれて見えているのは気のせいではないだろう。
「そう、ね、リオのほうは戻ってきているのかしら? 姿は見てないけど」
 そうつぶやくルゥの瞳が怪しく輝く。
 半ばぐったりしながら見つめていたフィフスは確信していた。

 本当に、殺される。

 死にたくない。
 そう思っているのに、体のほうはまったく反応してはくれなかった。
「リオは、子供たちを船に運んで行ってるところよ。そのうち戻ってくるわ」
 ……子供?
「……言ってなかったわね。私たち、あなたとの子を産んだのよ、少し前にね」
 一瞬理解できなかった。
 頭の中が真っ白になる。
「……まぁ、その子供を見ることもないけどね」
 そういうとレイは再びフィフスを抱き、熱い口づけをする。
「んぅ……!」
 口をこじ開けられ、容赦なく舌を絡ませられる。

「ん……ふ……ぅ……ん……」
 だんだん焦点が合わなくなる。
 やがて唇が離れ、自由になったとたん、僕は力なく倒れこんでしまった。

 僕は、完全に彼女たちの思うままになってしまうのだ。

 そんなのいやだ。

「フィフスのほうも、もう準備ができているみたいね」
 皮肉にも、体のほうはもう完全に調教されてしまった。
 もう、快感に抗うこともできない。
「私ももう我慢できない」
 レイの体が、フィフスにのしかかる。

 そして、いやらしい音とともに、フィフスの肉棒はレイに飲み込まれた。

「あぐっ……!」
「ん……ぅっ!」
 しばらく二匹は硬直する。

 だが、しばらくして、レイが体を激しく揺さぶり始めた。
 動けないフィフスにとって、その行為はただひとつの感覚。
 強烈な快感がフィフスを襲う。

「うああああっ!」
 悲鳴とも嬌声とも言えない声でフィフスはあえぐ。
「んん……く……!」
 同じくレイも、欲情に満ちた表情で快楽をむさぼっていた。

「あ……!」
 限界が訪れる。
「うっ……あああっ!?」
 子種がレイの子宮に注がれる。
 まるで意識が溶け出していくような、そんな感覚に襲われる。
 快感の、虜になってしまう……。

「あ……は……あぁ……」
 知らずのうちに、僕は甘い声をあげていた。

 そんな、快感に浸るわけにはいかないのに。

「……もっとほしいの?」
 思考をさえぎるようにレイが問いかける。
 動くたびに、飲み込まれている肉棒が締め付けられ、なんともいえない快感が再びフィフスを縛り付ける。

「いいよ、おいで」
 再び、唇は奪われた。
 あと何度、僕はレイと舌を絡ませあうのだろうか。

 そのさなか、一瞬だけ唇が離れる。

「一緒に、堕ちよう。何もわからなくなるところまで」
 その言葉は、狂気が宿っている。

 だが、それ以上に深い、レイの悲しみ、絶望、そして見えない何かを求める渇望があった。

 レイが忘れたなにか。

「ん……ぅ」

 言葉を交わせるならば、伝えたい。
 もし、言葉がレイに届くならば。

「――っ!」
 だが、その思考さえ、もう、押しつぶされる。
 快楽の衝撃で、体がのけぞり、唇が離れる。
 目が大きく開かれ、呼吸が苦しくなる。
 フィフスの視界に入ったレイの瞳には、疲れ果てた表情の僕以外、何も写されてはいない。
 むしろ、僕の姿すら、もう正確には捉えていないのかもしれない。
「んんっ――! う……はぁ……」
 だんだんと、レイの吐き出す嬌声も獣じみてくる。
 
 だが、そのさなかでもフィフスは確かに捉えた。

 レイの頬には涙が伝っているのを。




 忙しい時期なので更新のほうができない状況が続いております。
 できる限り書いていくのでどうかよろしくお願いします。

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Last-modified: 2012-01-22 (日) 00:00:00
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