writer is 双牙連刃
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零次達を身を呈して守ったライト。しかし、その時のダメージによってライトは目覚めぬ眠りに落ちてしまう。
その事に責任を感じ動き出す零次達、葛木家一同。ディヴァインガイダンスは何故学校を襲ったのか、真の目的は……未だ、謎の中に。
~四日目 ???~
「そうか……なら、DGが拠点にするつもりなのはやっぱりその町なんだな」
……バンガードが行方を追い続けていたターゲット、ディヴァインガイダンス。それがまさか、あそこに根付くことになるとはな。
俺がすぐにでも駆けつけたい、家族に会ってどれだけ罵られようとも、あの三人を助けに行きたい。でも……俺が追いかけている奴も野放しには出来ない犯罪者だ。組織の為にも、勝手は出来ない。
だから、お前達に託す。あいつを……零次や母さん達を助けてくれ、ダイル、バシャーモ、シンボラー……。
「あぁ、その三匹は強い。それに、お前の事も信じてるからな」
うん、任せてくれって言った言葉に偽りは無さそうだ。バンガードの中でも腕利きの一人だ、そう簡単にはやられる事も無いだろう。
「でももう長いんだろ? お前に影響は出てないのか?」
……ははっ、ずっとこの組織を捕らえる事だけを考えて、今もそれは変わらないか。まったく、筋金入りだな。
「じゃあ、気を付けて。……負けるなよ、ベンディ」
「当然だ。これまでなんの為に奴等の為に働いてたと思う。根絶やしにする為さ。……お前のパートナー達は、三匹とも無事に返す。俺の、バンガードとしてのプライドに誓おう」
「心配なんかしてないさ。……いや、お前がやり過ぎないかは心配かもな」
「ふん、言ってろよ」
そんな軽口の後に、通信は切れた。あの分なら大丈夫だろうが、ディヴァインガイダンスはバンガードでも実態が掴みきれてない厄介な組織だ。何も無ければいいんだがな。
……それにしても、俺が知らない零次達を守ったって言うサンダースと少年って、一体誰なんだ? あの町で……一体、何が起ころうとしてるんだ。
零次、父さん母さん……無事で居てくれ……。
~四日目 小河原家前~
現在俺達は、雪花が荷物を取りに来た付き添いで小河原家の前に来てる。家の中に入ってもいいかとも思ったが、雪花が一人暮らしをしている家だしって事で前で待つ事にしたんだ。
「しかし、小河原さんは高校生なのに一人暮らしをしてるなんて、大変なんだね」
「まぁ、うちもその事情を知ってるんで、母さんが色々しようとしてるって言うのもありますからね」
「状況が状況なのだ、雪花殿を我々の家に招いたのは得策だったろう。一人にはしておけぬしな」
あぁ、蒼刃の言うとおりだ。町の中がざわついてる今、一人で居るよりは皆で居た方が安心出来るし、どんな事があっても皆で対処出来る。
しかし、ここまでは歩いてきた訳なんだが、町を出歩いてる人が極端に減ったのが見て取れる。そりゃあ、高校一つの人間がほぼ全員拐われるなんて事件が起こったんだ、無理もない。
居るのはマスコミらしいインタビューをしている奴等と、多分警察かな。何か見なかったかを聞きまわってるから多分そうであろう人達が歩き回ってる。
「それにしても、拐われた者達は一体何処に消えたのだ? 警察でも、行き先は見失ったと聞いたが」
「そうなんだ。追跡をしていたパトカーは、多分奴らの仲間だろう黒い車に妨害されて、高校生達を拐った車に逃げられたって報告されてる」
「学校に来た奴等も相当数居たって言うのに、まだ仲間が居るのか……厄介だな」
三人で一斉に溜め息を吐いた。やる気になったのはいいが、相手は全容の見えない軍団だ。正直、まずはどう手を出して行くべきかな?
っと、家のドアが開いた。雪花の奴が用意出来たかな。
「お待たせ。どれくらいになるか分からないけどお世話になるし、これくらいで足りるかしら?」
荷物は、大きめのリュック一つか。まぁ、それくらいあれば足りるんじゃないか?
「結構大荷物だね。よし、本官が持ってあげよう」
「いえ、これくらいなら……」
「いいじゃないか、折角の申し出なんだから持ってもらえよ」
「うーん……じゃあ、お願いしていいですか?」
「もちろん! 正直、本官はこういう事でしか役に立てそうにないしね」
「自分を卑下するのは、あまり良い事ではありませんよ、常呂川殿。貴殿が居るからこそ、我々もある程度自由に出歩ける。でなければ、自宅を出るのも難しいのではないかな?」
蒼刃の言う通りだ。警察である常呂川さんが俺達に協力してくれてる事は大きなメリットだ。役に立たないなんて、冗談でも言えないさ。
「い、いやぁ……そ、そうかな?」
「はい。頼りにしてます、常呂川巡査」
「あはは、そう言われちゃうと、頑張らないとならないね。皆、ありがとう」
なんとなく流れで常呂川さんを励ます事になったけど、とりあえずここでやる事は終わったな。家に戻るとするか。
でも、戻った後どうするかな? 今分かってる事は纏めてあるし、次の行動に移るって言っても指針が無いんだよな。
うーん……ここで考えてても仕方無いか。とにかくまずは雪花の荷物もあるし、家に帰る事を優先しよう。
帰り足になりながら、ふと考えてみた。ライトは何故、スナッチシステムやダークポケモンの事を知っていたのかを。それに、あのライトの力……あれは、普通のポケモンで出せるものなんだろうか?
「ん? どうした、零次」
「いや、少し疑問に思ったんだよ。ライトって、一体何者なんだろうって」
「確か、私達を助けに来てくれたあのサンダースよね? それだけじゃないの?」
「見てなかったのかよ、あのトンボとの戦い。あのスピードで、グレイシアやユキメノコは戦えるか?」
「トンボって……あぁ、あのメガヤンマね。いや、あれと戦えって言われたら、まず私の連れてる二匹じゃ歯が立たないわ」
「だよな? そのメガヤンマと、ライトは互角に戦ってたんだぞ? どう考えても強過ぎるだろ」
「互角、か……これは我の予想でしかないが、恐らくライト殿はあのメガヤンマ以上の力を有していただろう。相手を見極める為に、敢えて互角程度まで加減をしていたように見えた」
な!? あれが、加減をしてたって言うのか!? 俺なんか、交差する一瞬を目で追うのだってぎりぎりだったんだぞ!? それ以上が出せるって言うのか!?
「我が刹那とはいえ、本気で斬撃を放ったというのに、ライト殿は苦でもないように我の刀身を砕いてみせた。普段剣を見てやってる零次ならば、これがどういう事かは分かるな?」
「ライトは、本気になった蒼刃以上の力を持ってるってこと、なのか……?」
「少なくとも、我だけで対峙したのではライト殿は本気を出してはくれまいて。正直なところ、我もライト殿を捉えられる絵が頭に描けん」
蒼刃にここまで言わせるって事は、ライトの実力は本物って事か。それはそれで恐ろしい存在なような気もするんだが……。
「それって、あのサンダースは蒼刃を本気にさせたって事? まさかでしょ?」
「いや、それは本当だ。俺も蒼刃の聖なる剣が砕かれるの見てるし」
「え、う、嘘だぁ」
「雪花、お前が蒼刃の強さを疑わないのは分かるが、事実だ」
「我としても、剣を瞬間的に見切られるとは思わなんだしなぁ……思い出すとこう……はぁ~」
あ、いかん。蒼刃がダメな感じになるモードに入った。この話題に触れ過ぎるのは地雷だな、これは。
なんにせよ、ライトの力は今のメンバーの中で一番高い。あれに勝つには、よっぽどの手練を相当数揃えないと無理だろうな。
いや、そもそもライトと戦う事を想定しても仕方無いのか。目を覚まそうとしてる相手と戦う時の事を考えてどうするってな。
でも……ライトはなんで、蒼刃を退けられる力を使わなかったんだ? 蒼刃が気付いたライトの力が確かなら、あのメガヤンマにあの一撃を喰らわずに勝てたんじゃないのか? ……うん、その辺りは少し分からないな。
それはライトにしか分からない事なのかもしれないな。なんとなくだけど、それは……俺達が触れていい事じゃない気がする。本当になんとなく、だけどな。
~四日目 ライト心象世界~
道も無く、ただ青い中を歩いていくのにも大体慣れてきたぞ。まぁ、進んでるのかは、景色が変わらんから掴めないんだが。
相変わらず、俺は昔の俺の姿をしてるイーブイの後をついて行く。俺の無意識を名乗ってるこいつだが、まぁ多分、それとは違うものなんじゃないかと思ってるんだけどな。
ただ、こいつが俺に害意を持ってないのは分かってるからついて行ってる。しかし、なんなんだろうな、こいつは?
なんて思ってるのももう分かってる筈なんだが、それについての返答をこいつがしてくる様子は無い。はてさて、一体何を隠してるんだかね?
「……あ、ようやく見えてきたよ、ライト。あそこが、心域への扉さ」
「ん、ようやくか。……まぁ、普通の扉だな」
まだ遠くに、真っ白な扉が見えた。あれがどうやら心域って奴への扉って事らしいな。
「そういやよ、まだ名前しか聞いてないんだが……なんなんだ? その心域ってのは」
「あれ、言ったと思うけど? 君の心の中でも特に重要な部分、言わば根幹さ。広がり成長し続ける心の中で、唯一生まれた時から変わらない、君の本質」
「俺の、本質だって? なんなんだそりゃ?」
「ま、行ってみれば分かるよ。ここの扉を開けられるのは、君か僕だけだしね」
ほぉ、俺とこいつだけね。まぁ、開けれなかったら来る意味無いわな。
無意識の奴が軽く駆け足になったんで、俺もついて走った。俺達のスピードで走れば、軽くでも扉の前にあっという間に着くわな。
さて、俺はどうすればこいつを開けるんかね? 取手も何も無いようなんだがな?
「ん? 何してるのさ? 触れてみなよ」
「触れる? この扉にか?」
……おぉ! 触れたらなんかピカっとして、重そうな音しながらゆっくり開きやがったぞ。
それで、その先は……な、なんだありゃあ……。
「ようこそ、心域へ。と言っても、基本的には今までのところと変わらないけど」
「いや待て、どう考えてもおかしいもんがあるだろ! なんだあの馬鹿でかい光の玉は!? た、太陽?」
確かに目の前のこいつが言う通り、周りの風景は依然として青空のような空間だ。でも、その中央らしき所に巨大な光の玉が浮かんでる。さっき表現した通り、まるで太陽だ。
いやだが、この玉が発してる光、これは……まさか!?
「……気付いたみたいだね」
「まさか、これが……消滅の光の本体か」
「当たり。君が使える光は、これからあの扉をすり抜けて僅かに出た、淡い光程度だよ」
「おいおい冗談じゃねぇぞ。あれで、漏れ出た程度の光だってのか?」
「そう。君が進化した時に起きた事故……あれも、この光の力が歪められた形で発露してしまった結果起きてしまった事なんだ。……君は、この光を恐ろしい力だと思ってるよね?」
「当たり前だろ。俺は、この光で……」
全てを、消しちまったんだ。そんな力が、どうして危険じゃないなんて言えるよ。
俺がそう思うと、目の前のこいつは少し悲しそうな顔をした。……依然として、俺が考えた事はこいつにも分かってるようだな。
「消滅、か……確かにこの光の役目はそうだよ。でも……本当は、ありとあらゆる物を消すなんて事の為にあるんじゃないんだよ」
「? どういう事だ?」
「この光は、『創造』と対を為す世界の理。創造された存在を見守り、生まれてしまった『陰』を、光へと還すもの……」
世界の理、だと? それに、生まれた陰を光に還すって、どういう事だ?
「簡単に言えば、物が年数を重ねて劣化したのを一旦分解、そして創造の力でリバイバルってサイクルを生み出す為の力がこれって事。長年形を持っていた物って、どんな形であれ陰、つまりは劣化を起こしちゃうものだから」
「それは、物なら分解、生命なら……死、って事か?」
「うーん、ちょっと違うかな。確かに命の終わりなら死って事になるけど、そっちには眷属みたいな管理者がちゃんと居るしね。この力はあくまで消滅。その気になったら……死っていう概念すら、消す事が出来るんだよ」
は? が、概念を、消す!? おいおい、どういう事だよ!? そんな力、馬鹿げてるにも程があるだろ!
ひょっとして……俺の消滅の光ってのは、俺が思ってた以上にとんでもない力だったのか? 俺はただ、物質を原子レベルに分解して消滅させるもんだと思ってたんだが……。
「形ある物を消せるのは副次効果みたいなものだね、あくまで。物質も世界を形作る構成要素の一つだから」
「その言い方だと、本来はその世界の構成要素とやらを消すって言うのが、この光の力か?」
「簡単に言えばね。……時、空間、死、生……この世に生まれたあらゆる物を、新たに創造のサイクルに乗せる為に一度消滅させる。それが、創造の対となるって事さ」
「ははは……スケールが大きすぎて、よく分からんくなってきたぞ俺は」
「難しく考えなくたっていいよ。作るためには、何かを壊さなくちゃならない。その壊すっていうのを担当してるのがこの光って事さ」
そんな解体屋みたいな軽いノリでいいのかよ……まぁ、理屈はそうなのかもしれんけどさ。
しかし、こいつが俺の心を治すのにどう関与してくるんだ? ここには、その為に来たんだったよな。
「……そろそろ話していいかな。君の、心を治す方法を」
「そうだ、俺はその為にここに来たんだよ。でも、あったのは消す力であるこいつだ。どうやって治すってんだよ」
「簡単だよ、君の心がダメージを受けたって事実を消去する。心の受けた傷自体を消滅させれば、心は元通りになる」
「はっ!? そんな事出来るのか!?」
「不可能じゃないよ。あらゆる事象、概念に触れられるって言ったでしょ? その気になれば、あらゆる痛みも傷もリセット出来るさ。ただし、それには一つ条件があるけど」
条件だと? なんなんだそりゃ?
「……君が、この力を信じてくれる事。全てを滅ぼす破壊の力じゃなく、全てを救う可能性を秘めた、希望の光だと」
「全てを救う……希望の、光?」
「そう、この力を、恐れないで。君が望めばこの光は……君が望む全てを、守ってみせるから」
~四日目 葛木家~
家に帰ってくると、受話器を持って何かを話してる親父の姿があった。電話か、親父の研究所からかな?
「そうか……分かった、ありがとう」
「親父、なんか残念そうだけど……何かあったのか?」
「あぁ零次、お帰り。いや、ライト君に大見得を切ったのに宛てが外れてしまってね。オーレ地方に居る知り合いと連絡が取れないようなんだ」
それは確か、スナッチシステムの事を知ってるって親父の知り合いの事だよな? それと連絡が取れなかったのか……。つまり、これ以上スナッチシステムの事は分からないってことなのか?
ん? でも受話器を置いた親父は深刻そうな顔をしてる。まだ何かあったのか?
「親父、まだ何かあるのか?」
「あぁ……連絡が取れないだけならばまだ良かったんだけど、ね。少し、嫌な事を聞いてしまったんだ」
「嫌な事? 父君、それは一体?」
「その知人が忽然と消えた時に、彼が研究していた物が二つ、一緒に消えているらしいんだ。……詳しくは、皆の前で説明させてもらうよ」
これは、相当な事みたいだな。親父の顔が真剣そのものになってる。一体、何が起こってるんだ?
帰ってきた全員と親父を加えて居間に入る。特に変わりはないみたいだな。
「零次達はお帰り。あなた……何かあったの?」
流石だな母さん、自分の夫の変化は分かるって事か。親父は気不味そうな顔をして、テーブルに着いた。
「少し、ね……」
「ライトに話してたっていう知り合いと連絡が付かないんだったよな? それがなんでそんなに不味そうな顔をする事になるんだ?」
「連絡が付かないだけなら問題は無かったんだ。ただ、彼と一緒に無くなった物が問題でね……」
そこまで言って、歯切れが悪いように親父は口を一時的に噤んだ。そして、その次の言葉が出る事で、この場に居る全員が驚かされる事になった。ただし、悪い意味でだ。
「彼と共に、研究中だったスナッチマシン……スナッチシステムを運用する為の装置と、ある結晶体が無くなっていたんだ」
「!? スナッチシステムって、今奴等が使ってる装置じゃないのか!?」
「そう、そして、消えたもう一つの物は……闇の水晶と名付けられた物の欠片。その水晶が発する力は、近くに居る生物の精神に影響を与えるとされているよ。具体的に言えば、生物の『負の感情』を増幅する、そう言われてるんだ」
お、おいおい……どういう事だよ? なんで、そんなにここで起きてる問題と繋がるワードが出てくるんだ?
親父の知り合いが居なくなって、それと一緒にその二つが無くなった。それなら、普通に考えてそういう事、だよな。
「それって、箕之介さんのお知り合いがそれらを持ち出して消えた、って事ですか?」
「考えたくはないけど、そうなるんだろうね。どちらの物の事も一番熱心に研究していたのは彼だったから。……モリオーネ、君に一体何が起こったんだ……」
「モリオーネって言うのが、親父の友達の名前なのか?」
「あぁ、ダニエル・モリオーネ。本当に熱心な研究者だったよ……。一体彼に何があったかは分からないが、どうも嫌な予感する」
嫌な予感か……もしの話ではあるけど、その親父の知り合いの研究者の人がディヴァイン・ガイダンスに関係してるとしたら、少なくともあいつ等がスナッチシステムを使える理由には納得がいくのかもしれないな。
「親父、そのモリオーネさんってどんな人なんだ?」
「私もそこまで親しい仲ではないけど、とにかく人の悪意や犯罪思想について鬼気迫る程の気迫を持って研究をしていたのが印象に残っているかな」
「それまたどうして?」
「……妻とたった一人の娘さんを、強盗によって亡くしたと聞いたよ。それから、犯罪者は何故生まれるか、どうすれば犯罪をこの世から無くせるかを本気で研究している……冗談交じりに、彼はそう言ってたかな。でもあれは、冗談なんかじゃなかったのかもしれないな……」
犯罪を失くす為に……そんな研究が、あんな奴等に利用されるなんてあんまりじゃないか。まぁ、本当にモリオーネさんの研究があいつ等の使ってるものだったとしたらだけど。
「消息不明となると、モリオーネ君がディヴァイン・ガイダンスに関与してない事を祈るしかないね……それに、スナッチシステムについては正直手詰まりになったとも言える。これじゃあ、私はライト君に顔向け出来ないな……」
「親父が悪い訳じゃないんだし、こればっかりはどうしようもないだろ。今は出来る事からやってかないとな」
「……零次の言う通りだな。とはいえ、現状出来る事というのは相当制限されてるんだがね」
それなんだよなぁ。相手の正体が少し分かったと言っても、何処に居るかも分かってないし、何が目的なのかも全然見当もつかないのが正直なところだよ。もう少しヒントがあれば違うんだけどな。
そう言えば……ライトが調べようとしてた事がまだ一つ残ってたっけ。確か、最近この町で起こってる犯罪だったかな? なんでライトがそれを知ろうとしたのかは分からないけど、何か意味がある筈だ。確認しておくか。
「そういえばさ、常呂川さんの持ってたメモはどうなったんだ? あれも確か、ライトに頼まれて調べた事なんだよな?」
「あぁ、あのメモならもう乾いてるわよ。確か、最近この町で起きたポケモン誘拐以外の事件だったかしら」
「はい、そうです。でも調べてみて驚きましたよ……目に見えて大きな犯罪はそう増えてないんですけど、喧嘩や万引きの類が、先月なんかと比べると倍以上増えてるんです」
「犯罪が増えている? それはどうして?」
「分かりません……急ぎだったんで犯罪件数までしか調べられなかったんですよ」
これには全員で首を傾げるしかなかった。増えてるからって、それの原因なんて見当も付かないよな。
「……犯罪って、つまりは悪い事ですよね?」
「ギラン君? いやまぁ、そうなるかな」
俺がそう返すと、ギラン君は何やら考え込み始めた。
しばらくそのままで居たと思ったら、その表情は少し不安そうなものに変わった。何があったんだ?
「これは、あくまで僕の予想でしかありません。間違ってるかも……ううん、出来れば間違っててほしいんですけど……」
「どうしたんだい? 間違ってて欲しい予想って?」
「ライトさんが言ってましたよね? ダークポケモンと、ポケモンをダーク化させる方法を」
「確か、ポケモンに無理矢理嫌な事や悪い事を見せるんだったかしら?」
「見せる、でも間違ってはいませんけど、正確にはポケモンが抱えきれない程の負の感情を与えるんです。そして、負の感情って言うのは、簡単に言えば……悪意です」
ギラン君の言葉に、その場に居てその言葉の意味を理解した全員が息を飲んだ。そして、ギラン君が何故それを言うのを渋ったのかも分かった。
ダークポケモンを作る為に必要なものは悪意、そしてダークポケモンは実在する。つまり、今も何処かでポケモンがダーク化されてるって事だ。
もし、そのポケモンをダーク化する為の悪意っていうのが、漏れ出して人にも影響を与えていたらどうなるか? 答えは……そういう事、なんだろうな。
「心ある者、その心には常に光と闇がせめぎ合い、だからこそ命は移ろい、だからこそ命は尊い……」
「ギラン君?」
「僕の育ての親に当たる方から教わった言葉です。でも、その心の光と闇のバランスが崩れれば、心ある者は恐ろしい者になるとも教わりました。それは光であっても、闇であっても」
「……今この町では、そのバランスが明らかに闇……つまりは負の部分に傾きつつある。これは、その事を示唆する紛れもない証拠という事だね」
「だとしたら、犯罪数が増え始めた頃にディヴァインガイダンスはこの町で動き出した、という事になるんでしょうか?」
今の常呂川さんの言葉を聞いて、俺の中で閃いた事がある。奴等が動き出した時期が大よそ分かったんなら、その時にこの町で何か変化があったんじゃないか、そうは考えられないかな?
「ん? どうした、零次」
「いや、その話が正しいとしたらさ、その頃に何かあったんじゃないかと思ってさ。あれだけの団体がこの町に来たなら、それ相応の隠れる場所とかも必要だよなって」
「確かにそうね。でも、そんな事あったかしら?」
「……あ! ちょっと待って下さいよ? このメモから言えば、こういう犯罪が増えたのは二ヶ月前辺りからだから……」
常呂川さんはそう言って、何処かへ電話を掛けだした。何か心当たりがあるみたいだけど、何処に電話を掛けてるんだ?
にしても、一つ何かが分かる度に事態が俺達の予想よりずっと深刻だって言うのが浮き彫りになっていくな。人にもポケモンにも影響を与えるダーク化、それを利用する連中……そんなのがなんでこの町に来たんだ?
大体、この町はそこまで大きな町じゃない。そりゃあ、親父が働いてる研究所みたいな施設はあるけど、他はそれと言って目立つ物も無いしポケモンが他のところより多いなんて事も無いしな。本当、なんでここだったんだろうな?
常呂川さんの電話はまだ続きそうだな……帰ってきてから休んでないし、とりあえず一息吐こうか。
~四日目 ライト心象世界・心域~
ぼんやりと馬鹿でかい光の玉を眺めながら、俺の頭はもやもやした悩みを消そうとしては余計もやもやするっていうのを続けてる。
消滅の光……こいつを信じろって言われても、やっぱり俺の中で引っ掛かりがあるんだよ。あの時の事が。
「なぁ、俺が覚えてる事はお前も知ってるんだろ?」
「うん、覚えてるよ。……優しい、本当に、優しい人だったよね」
「あぁ……」
「君を始めて信じてくれた人。君と一緒に歩んでくれた人。そして、今の君がここに居る切欠をくれた、大切な人」
「だからこそ俺は、俺自身を許せなくなった。ハルから全てを奪った俺自身と、この光を」
俺の隣に来て、並んで光を眺めるイーブイと俺は今、同じような顔をしてるんだろうな。泣きたいけど泣けない、そんな顔を。
「そして君は、あの扉を心の中に作った。自分への戒めと後悔によって」
「ここを閉ざす事によって、この光を外へ出さないようにする為に、か」
「あの扉によって、消滅の光は君の心に触れられなくなった。どんなに涙を流しても、それを拭ってあげる事も出来なくて、頑張ってる君を助けようとしても、ただ見ている事しか出来なかった」
「それが、俺の心が傷ついた事によって、僅かに扉を抜けて出てこれたか。それこそ、イーブイ一匹分、な」
「……君が消えてしまうなんて、それを見ているだけなんて、出来ないよ。今僕がここに居られるのは、君が『君』で居てくれたからなんだから」
もう隠す気は無いみたいだな。薄ら思ってた通り、こいつはこの光の化身というか、意思疎通を取るための媒体ってところなんだろう。俺の昔の姿で出てきたのは、さっきの無意識って位置付けの為か。
「当たりだよ。まぁ、君が望むならハルさんやレンちゃんの姿で出てきても良かったんだけど」
「勘弁してくれよ。で? なんでそんな嘘まで吐いて俺に接触したんだ?」
「君を警戒させないようにって言うのが本音だよ。君自身の心の中に存在する者が、君と全く違う姿だったとしたら、まず間違い無く君は疑ってたでしょ? 現に、この姿でも君は凄まじく警戒してたし」
「当たり前だろ。いきなり自分の心の中に居ますって言われてはいそうですかにゃならんだろうに」
「だよね。だからそれを一割でも緩和する為にこの姿になったんだ。概ね目標は達成出来たでしょ?」
まぁ、他の姿で出てこられるよりはな。これで俺の会ったことのある奴の姿で出てきてたら真っ先に偽物だって言ってただろうしな。
なるほどねぇ……どうやら本当に俺に何か害するつもりは無いようだ。これだけ言わせたら流石に俺だって警戒は緩めるって。
大体の知りたい事は分かった。ここがどういう場所かも、どうして俺がここに来る事になったのかも、こいつが何者なのかも。けど、まだ分からない事があるんだ。ずっと……それこそ、俺が生まれた時からの疑問があるんだ。
「なぁ、一つだけ、聞かせてくれないか?」
「……君だった、理由?」
「あぁ……どうして、俺だったんだ? ポケモンは、いや、心を持った生物は他にも幾らでも居るだろ。その中で、どうして俺だったんだ? お前さんが宿る入れ物が」
「その言い方は感心出来ないけど? 僕は君を入れ物なんて風に見た事は無いよ。けどその質問には答えようか」
ん、周りの景色が変わった? 人やポケモン……それだけじゃない、見た事も無いような生き物まで、様々な生物が周りに映し出された。これは?
「僕は今まで、創造の力によって生み出されてきたものをずっと見守ってきた。時には干渉した事もあったし、君のように宿る事もあった。けど……」
「けど?」
「過ぎた力である僕を受け止められる、受け止め続けられる者は居なかった。そりゃあそうだよね、どんなものにでも干渉し消滅させられる力なんて手に入れたら、それこそ神にでもなったと錯覚してもおかしくない。そうでなくても、自分の勝手を通す為に使いたくなるでしょ。どんな心にだって、欲望は必ずあるんだから」
まぁ、そりゃあ分かる。現に俺だって、叶えたい願いや変えたい現実を少なからず持ってるしな。
「うん……けどね、僕が出来るのは『消滅』だけなんだ。使い方に寄っては、確かに出来る事もあるよ。けど、万能とか絶対とかいう力では決してないんだ。それでも、過去の僕の所有者達は全てを願ってしまった。僕の……消滅という存在に」
「消滅させる力に全てを願ったって……まさか!?」
「結果は、君が考えた通りだよ。消滅の力を開放して全てを望んだ者は、全てを手に入れるどころか、全てを消滅させる。僕自身には今まで、今君に話しているような明確な意識や意思が無かったから、所有者が望んだ通りに力を発現させてしまっていた。……もしも今のような意識をもっと以前に持てていれば、消さなくて済んだ世界も、きっと一つや二つじゃなかったと思う」
……世界を消す、か。さらっと言ってくれるが、それがどういう事か、どれだけ重い事か分かってんのかね? いや、分かってなかったら最後の方の言葉が出る訳ないか。
だとしても、ならなんで俺なら大丈夫って事になるんだ? 俺だって、他の奴と同じように世界を消し飛ばしちまうかもしれねぇじゃねぇか。まだ答えになっちゃいねぇぞ。
「焦らなくても、これから話すよ。……君だった理由はね、君はどんな未来に進んでも、誰かを救う、救おうと出来る者だったからだよ」
「? どういう事だ?」
「本来僕が存在し続けていた事象の果てって場所はね、どんな空間にも時間にも繋がった場所なんだ。厳密に言うと、時間や空間の終わりがそこに繋がってるって感じなんだけど。そこから、一番他のものを慈しめる者、守り通そうとする者を探したんだ。消滅って力を、自分の為じゃなく他の誰かの為に使えるような……そんな存在を」
「おいおい、そんな奴居たのかよ?」
「候補は結構居たよ。けど、その中には君も居た。厳密に言えば、今の君じゃない別の選択をしながら生きていった君だけどね。パラレルワールドの君ってところかな」
パラレルワールドの、俺? 俺が選択しなかった選択の先に居る俺って事か?
「イグザクトリィ。その先で君はブースターだったりシャワーズだったりと、まぁ色々違う者だったし強さもマチマチだったけどさ。けど、その根幹は他者を守り慈しむ心だった。それで、これならって思ったって訳」
「なんか実感ねぇなぁ……いや、そもそもが俺じゃないんだから実感出来なくて当たり前か」
「まぁね。それに、君は僕……というか、消滅の光を心の内に取り込んだ結果、それまでの定められた運命から逸脱した存在になっちゃったから、完全なオリジナルの運命を歩む者になっちゃってるしね。ぶっちゃけると、君の運命は君が歩む足元に出来ていくって感じ」
おいこらこの野郎、結局俺に影響出まくりじゃねぇか! テヘペロしたって許されるレベルじゃないからねそれ!? いやでも、消滅なんて力抱えながらそれを持ってない運命なんて歩めんわなそりゃ。
「とまぁ、君を選んだ理由はそんなところかな。でも結局君の運命を消してしまう事になっちゃったし、君には重荷を背負わせる事になっちゃったね……本当に、ごめん」
「謝られても、実質的に俺はどうこう言える立場にはねぇしなぁ……そもそもだ、お前って言うか、消滅の光を抱えてるからこそ、俺って奴は『俺』になれたって事でもあるんだろ? ならまぁ、全部が悪かったとも言えないんでねぇの?」
「……ふふっ、そうやって受け入れられる君だからこそ、今も僕は君の中に居られる。一緒に多くのものを見てきたから、僕も今君に語り掛ける為の意識を持つ事が出来た。君が意思をくれたから……僕は本気で、君を救いたいと思えるんだよ」
? なんだ、俺の前に前足なんか差し出して。手を取って、って言うか分からんが、握手の真似事か?
「一緒に、行こう。もうすぐ、この世界は大変な事になる。でも、君がここに居る。世界が望んだ終わりを告げる者……けど君なら。君だから。終わりじゃない、終わる世界に未来を創れる」
「終わるって……! ギランや零次達が居る世界がか!?」
「そう、この世界はもうすぐ終わりに向かって動き出す。だからこの世界も、全てを消してリセットさせる為の存在である僕を呼んだんだ。まぁ、僕を宿してる君を巻き込む形にはなったけど」
それが、俺が世界を超えた理由……? この世界を消す為に、俺はここに飛ばされたってのか? 悪いが、そんなのは御免だぜ。
「僕だけだったなら、この世界を消す事でしか救えなかった。けど、君が居る。終わりが始まるその始まりを打ち消す事が出来れば、世界もそこに暮らす全ての命も未来を紡いで行ける。君になら、いや君にしか出来ない事なんだ、ライト」
「俺だけに出来る事、か……本当に、俺にそんな事出来るのか?」
「出来るさ。君は一匹じゃない、僕も一緒だ」
オーケー、世話になった零次達やギランの為でもあるんだ、怖がってる暇なんかあるめぇよ。それにこいつは、消滅の光は、俺を本気で助けようとしてくれてるんだ。それを信じてやれないなんて、寂しいもんな。
差し出された前足に、俺の前足を重ねた。覚悟は出来た、後は……前に進むだけだ!
「なら行こうぜ、相棒! 俺がもし暴走するような事があれば、お前が止めてくれよ」
「そんな事、絶対にさせないさ。君の心は、僕が守ってみせる!」
!? 触れ合わせた前足が光りだした!? あ、その光があの扉の方に向かって飛んでいったと思ったら、扉が……開いた。
「よし、これで君の心の修復を始められる。少し時間は掛かるけど……」
「お、おいおい、大丈夫なのか? 大事な時に間に合うんだろうな? さっきの世界の終わりって、恐らくあのディヴァインガイダンスって奴らに関係してるんだろ? 奴等はもう動き出してるんだぞ?」
「大丈夫、本来の時の流れでは手遅れになってるところだけど、君がこの世界に介入した事で運命は変わりつつある。それに寄って世界の終わりが始まる時間は大幅に遅れてる。今からなら、十分に間に合うよ!」
俺によって運命が変わったって? え、俺別に大した事してないけど? なんかそんな凄げな事したっけ?
「ま、詳しくはあっちに戻った時に確認して。さーて、急ぐよ!」
おわっ!? 消滅の光が今までより強く光り始めた!? ちょっ、ま、眩しっ!
~四日目 葛木家~
「! これって……」
「ん、どうしたんだ心紅?」
「いえ、微かになんですけど、今ライトさんの心が見えたような……」
それって、ライトが回復したのか!? でもどうやって?
「あ、でも一瞬何かが光ったようなイメージが流れてきただけで、その後はまた何も見えなくなってしまったんではっきりとは何も……」
「そ、そうか……ごめんな、ライトの世話を任せちゃって。また何かあったら教えてくれるか?」
「大丈夫ですよ。私が出来る事ってそんなに無いですし、出来る事はやらせて下さい。零次さん達、皆今頑張ってるんですから。ライトさんに何か変化があったら、また呼びますね」
心紅にも大分迷惑掛けちゃってるな。まぁ、そのお陰で俺達はかなり動き易くなってるんだけど。
でも変化があったって事は、ライトは自力で回復してるって事になるのか? こうして見てると、そんな感じは無いんだけどな。
それにしても、本当にこうして見てるだけなら普通のポケモンと変わらないんだけどな。何処からあんな力が出てたんだか疑問で仕方無いぞ。
「このサンダースが蒼刃を、ねぇ? 確かに凄かったけど、こうして見ると普通ね」
「っておいおい、いきなり何を撫でてるんだよ雪花」
「いや、なんというか、この揺れる毛並みに惹かれたというか……あ、なにこれ凄い。学校でちょっと触ったけどあの時は濡れてたしね。こんな滑らかな毛触り、始めて触ったかも」
ライトが寝てるのを良い事に勝手するなこいつは……まぁ、起きてたらこんな簡単に撫でられない気もするが。
「せ、雪花さん、気になるのは分かりますけど、ライトさんは今安静にしてないといけないんですから程々にして下さいよ」
「いやそこはもっとしっかり止めような心紅。雪花も、暇だからってライトを弄るなっての」
まぁ、これだけ弄られても起きないんだから多少は大丈夫か、後がちょっと怖いが。
しかし、する事が無い上に外出にも制限があるとなると、暇を持て余す気も分からなくない。常呂川さんも何やらあちこちに電話を掛けてるみたいだし、何もする事が無いなら大人しくするのも手か。
「ふぅー……皆さん、朗報というか分かりませんけど」
「常呂川さん? 何か分かったんですか?」
「あぁ、ひょっとしたら、ディヴァインガイダンスの隠れ家を特定出来たかもしれないんだ」
な、えぇ!? 俺達が寛いでる間に常呂川さんそんな事調べてたのか!? しかも特定出来たって!?
「あ、いや、そこまではっきりしたものじゃないんです。ただ、二ヶ月程前に確か、郊外の使われてない工場が何処かの製紙工場に買い取られたなんて話を思い出しまして、それの現在の所有者なんかを警察本部に調べてもらったんです」
「で、その結果は?」
「その所有者……存在しない人物だったんです。住所も名義も偽造、しかも販売元の土地の所有者が、居なくなってるんです。……昨日から」
昨日って、俺達の学校が襲われたのもそうだぞ? その日に人が居なくなるとは、普通なら単なる偶然で済ませるところだが、妙にタイミングが良過ぎる気がするよな。
「なんか妙にきな臭い話じゃない? 零次達の学校が襲われたのも昨日だし、ちょっとホットな話題よね」
「はい、事情を伝えたら、警察本部でも調べてくれたんです。で、明日その工場を調査する手筈になったようです。所有者が偽名だった時点で、捜査は可能ですから」
明日、か……もしそれが当たりだった場合、ダークポケモンやディヴァインガイダンスと警察が衝突する事になるんだよな。危険じゃないか?
「常呂川君、もちろんその工場の場所は分かってるのよね?」
「え? はい、まぁ」
「だったらやる事は一つね。道着とか何処にあったかしら」
「え? 母さん? どうするつもりだよ」
「決まってんでしょ、私達もその工場に行くわよ。その……ダークポケモンだっけ? それを作ってるところなら、治す方法も分かるかもしれないじゃない」
「えぇぇ!? ダメですよ葛木さん! 危険かもしれないんですから!」
「それなら逆に使える人員は多い方がいいじゃない? それに、うちの息子とそのクラスメイトに手を出した落とし前はきっちり付けさせて貰わないとね」
全く、うちの母さんは武闘派な事で。けど、確かにダークポケモンの治し方が分かれば、ライトの回復に役立つかもしれない。だとしたら、選択肢は一つだな。
「相手はスナッチシステムを持ってるんだし、知子が言うように、私達も行くべきかもしれないね。それに……個人的にも、私は行きたい。もし、モリオーネ君がこの事件に関与してるとすれば、彼を止める役目を担うのは、彼を知る私だと思うからね」
「親父……まぁ、それなら決まりだな。もちろん俺も行かせてもらうからな」
「箕之介さん!? 零次君まで!? ……はぁぁ、これは駄目だと言っても無理そうですね。分かりました、私も同行します。ただし、危険過ぎると思ったらどうやってでも皆さんの事、止めさせて貰いますからね」
妥協点としてはそんなところだろうな。常呂川さんも警察として、一般人である俺達を守らないとってところはあるだろうし、俺達もそれを超えるような事は出来ないだろうし。
よし、そうと決まったら明日の準備しないとな。もし本当にディヴァインガイダンスが相手になったとしたら、ちょっとやそっとじゃ勝てる相手じゃないもんな。
「ふむ……零次、我らはどうする? 全員で動くのも構わんが、ライト殿の世話やここの防衛にも割くべきかと思うが」
「そうだな。とりあえず、心紅と拳斗、それからギラン君はライトの傍に居てやってくれ。ギラン君が居れば携帯で連絡が取れるし、心紅達がここを守ってくれるならこっちとしても安心だ」
「ル! 分かった!」
「分かりました」
うん、心紅もラティアスである通り実力は相当だし、拳斗もかなり戦える。ここの守りは二匹で大丈夫だろう。
『って事は、私と蒼刃は零次に同行って事でいいのかな?』
「うむ。スナッチシステムの驚異はあるが、我々は戦列に加わった方がいいだろう。相手もポケモンを用いてくるだろう事は分かっているしな」
「あぁ、頼む」
「……零次あんた、こういう仕切り役出来たのね。我が子ながら、多少なりとも成長してるのねー」
「あのな……」
「うーん、私はどうするべきかな?」
「雪花はここを頼む。トレーナーが居た方が、心紅や拳斗も動き易いだろうしな」
「それもそうね。分かったわ」
とまぁ、大体こんな感じの割り振りでいいだろ。海歌にはちょっと申し訳無いが、心紅や雪花にあまり無理もさせられないしな。
皆もそれで納得してくれたようだし、今日は明日に備えてしっかり休もうって運びになった。明日、か……鬼が出るか蛇が出るかは分からないけど、備えておいて間違いは無さそうだな。
~四日目夜 葛木家~
「はぁ……」
守るべき対象のライトさんからは守られて、特に何か出来る訳でも無く葛木さん達のお世話になって。僕って……何やってるんだろう。
確かに元の姿を晒すのは色々不味いかもしれないけど、これでもギラティナ、異世界の管理者をやってる。けど、今の僕はライトさんを助ける事も出来ずにただ時間を費やしてる。
先代様から管理者を受け継いだって言うのに、これじゃあ管理者失格だよ。アル様から任された役目も果たせないで、ただ時間ばかり……。
「どうしたんですか、ギラン君。なんだか元気が無いみたいですけど」
「あ、心紅さん……」
今のライトさんのお世話だって心紅さんに殆どお任せしちゃってるし、本当に、役立たずって言われても仕方ないよ。はぁぁ……。
「何か、悩み事ですか? 私で良ければ聞きますよ」
「あ、いえ……悩みとかじゃないんです。ただ、僕……ここに居ても何も出来ないなって、思っちゃって」
「そんな事無いんじゃないですか? 話し合いの時だって、ギラン君のヒントから明日行く工場が分かったんですし」
「それは……そうなんですけど……」
それだって偶然常呂川さんの知ってる事に繋がったからで、もしここに常呂川さんが居なかったら、悪戯に皆を怖がらせたって結果になってたと思いますしね。
そんな事を口にする前に、僕の顔を見ていた心紅さんが何かを閃いたようにして台所へと行っちゃいました。どうしたんだろ?
少しした後、心紅さんは何かを持って戻ってきました。マグカップだ。何か入ってるのか、中からは湯気が出てる。
「落ち込んじゃったり、元気が無い時は温かくて甘い物なんてどうですか?」
「これは?」
「ただのココアですよ。でも、飲んだらきっと少しはホッと出来ますよ」
差し出されたカップをそのまま受け取りました。あ、本当だ温かい。
一口飲むと、優しい甘みが口の中に広がった。うん、なんだか少し気持ちが落ち着いたかも。
「……確かに色々あって、怖かったり落ち込んじゃったりしちゃいますよね。私も正直、どうなっちゃうのかなって、凄く怖いです」
「心紅さんも、ですか?」
「えぇ。でも、皆が頑張ってるんだから私も出来る事を頑張ろうって思うんです。無理をするんじゃなくて、自分の出来る事を」
「自分の、出来る事……」
僕が出来る事。でもそれって、一体なんだろう? 元の姿でもない僕が出来る事……。
「とぉう! ダイレクト転送!」
「へ!?」
「きゃっ!? って……アルスさん?」
「ふぅ。ギラ君の居る座標に行けば間違い無しだと思ってやってみたら大成功! お待たせギラ君、なんとか出来たよー」
あ、アル様!? それに、その手の中にあるのは……間違い無い、命の宝珠だ!
「……あれ、零次さん達は居ないのかな? あ、心紅さんこんばんはでーす」
「こ、こんばんはです……」
「あ、えっと、零次さんや他の皆さんは今、それぞれ別の部屋で明日に備えてお休みになってます。僕と心紅さんはライトさんのお世話があるんで居間に残ってたんですけど」
「明日? 何かあるの?」
とりあえず現在の詳しい状況や調査結果と、明日怪しい工場へ零次さん達が向かう事を伝えました。アル様、凄く真面目な顔してる……。
「なーるほどね……その変な気配とかを遮断しちゃう素材ってのの所為でこっちでも負の感情が集中してる所を特定出来なかった訳だ。それを突き止めるって、ライトさん本当に凄いサンダースだね」
「えぇ、それは間違い無く。でも、今ライトさんは……」
「これも確かダークポケモンの攻撃を受けたからなった状態なんだよね? だったらなんとかなるかも。ギラ君、ライトさんに命の宝珠を近付けてみて」
「え、あ! はい!」
そうだ、ライトさんの症状がダーク化と関係あるなら、命の宝珠で治療出来るかも! 上手くいって欲しいな。
ライトさんに宝珠を近付けてみると、淡く宝珠が光り始めた。効いてる、のかな?
「宝珠が反応してる。けど、これは……?」
「ど、どうなんですか、アル様」
「いやなんか、寧ろ宝珠が活性化されてる、ような……いやようなじゃないね、明らかに宝珠の方が力を貰ってるよこれ」
えぇ!? な、なんで!? 治すんじゃなくてライトさんから力を貰ってるってどういう事!?
「た、多分って事にはなるけど、ライトさんの力が宝珠より大きいのかも……いや、そんな事本来有り得る訳無いんだけど」
「だって宝珠はこの星の力をアル様が集めて固めた物ですよね。そんな、星の力を超える存在なんてある訳……」
「無い、んだよね。異世界とか関係無く、星の力を超える一個体なんて規格外にも程があるよ」
「えっと……私にはよく分からないんですけど、ライトさんを治すにはその宝珠というのでもダメなんでしょうか?」
「逆に宝珠が強化されるくらいだから、寧ろ治ってるんじゃ? とも思ったけど、ライトさんは寝たままなんだよね」
依然、ライトさんの目は開きません。あれ? でもライトさんの顔……心做しか、笑ってるような気がする。
「え……? ライト、さん?」
「心紅さん? どうしたんですか?」
「今、ライトさんの心の声が聞こえたんです。大丈夫だ、って」
「大丈夫……」
そう言えば、ライトさんは大丈夫とか、心配するなってよく言ってた。そしてそれは、本当に大丈夫だって、信じられた。
信じる……そうだ、今の僕にも出来る事はある。ライトさんなら大丈夫だって、信じられる。ライトさんの事を、信じる事は今でも出来る。
「……ライトさんがそう言ったなら、きっとライトさんは大丈夫です」
「ぬ? ギラ君?」
「僕にも確証なんて無いですけど、なんだかライトさんが大丈夫って言うと、本当に大丈夫だって思えるんです。理屈じゃないと言うか、なんて言えばいいか分からないんですけど」
「けど、私の空耳だったのかもしれないですけど……」
「ううん、空耳なんかじゃないと思います。だってライトさんの顔、笑ってますし。あんまり僕達が心配するから、心配しないようにそう言ったんじゃないかなって」
うん、ただ眠ってるだけだった時より、確かに穏やかな表情になってる。見間違いなんかじゃなく、僕はそう信じる。
「本当だ……確かに、笑ってるように見えますね」
「はい。だからきっと大丈夫です、ライトさんは目を覚ましますよ」
「……なんだかギラ君、見ない内にちょっと大人になった感じだね。この家に預ける時はあんなに緊張してたのに」
「そ、それはだって、まだ葛木さん達の事も知らなかったし、ライトさんがどんなポケモンなのかも分からなかったですし、僕だって不安だったんですよ」
慌ててそう言ったら、心紅さんとアル様に笑われちゃった。……なんだか、変に気落ちしてたのが馬鹿みたいだよ。
落ち込んでなんていても事態は好転なんてしない。けど行動出来るような事も無い。なら、残ってるのはたった一つだ、ライトさんが目を覚ますって、ただ信じる。そして起きたライトさんにお早うって言うんだ。元気に、ね。
なんだ、簡単じゃないか。その後の事はライトさんと一緒に決めればいい。そもそも、僕だけで悩む必要なんか無いじゃないか。
皆が、一生懸命に戦おうとしてる。けど、僕はそれを信じられない、人やポケモンだけじゃ解決出来ないと思った。時空に異常を与えるようなものが、どうにか出来るとは思えないって。
でもそうじゃない。僕やアル様はこの世界の管理者として高い力を持ってる、けど僕達だけでこの事件を解決出来るかなんて分からない。
だから、皆で力を合わせるんだ。皆の力を信じて、皆で戦う。そう、頼るんじゃない、信じるんだ。皆で頑張れば、絶対に上手くいくって。
「そうだ……僕は一人じゃないんだ。皆が居る、ライトさんも」
「ギラ君?」
「大変な事が起こってるけど、それを解決しようとしてるのは僕達だけじゃない。何も出来ないんじゃなくて、出来る事を出来る時にやればいい。そうすれば、きっとなんとか出来ますよね」
「そりゃあ、そうだろうけど……どしたの?」
「ライトさんが大丈夫だって言ったっていうのを聞いて、変に焦ってたのが落ち着いたんです。それで、落ち着きついでに僕も大丈夫だって、信じようと思ったんですよ」
ライトさんは笑ってる。なら、僕も笑ってみよう。心から大丈夫だって思えるように、誰かを安心させられるように。
「……ギラン君、元気出たみたいですね」
「はい! もう大丈夫です!」
「はぁ……なんだかよく分からないけど、ギラ君の元気が出たならいっか。さて、と。工場への突入は明日だったよね? 私は一旦戻って、ディアっちょやパルっちにも情報共有してくるね」
「了解です。何かあれば、こちらからまた連絡します」
「お願いね。じゃあ、我、帰還致す!」
そう言って、アル様は時空転移で移動しちゃった。多分、空中庭園の自宅だろうね。
恐らくって事にはなるけど、明日の工場調査にはアル様達も参加すると思う。どういう形でかは分からないけど。
よし、そうとなったら僕も休もうかな。ライトさんが起きた時に僕が動けなくなってたらそれこそ役立たずだ、そうはならないようにしないと!
~ライト心象世界~
「よし、っと。外部への連絡、心紅ちゃんには俺の声が届いてたっぽいから大丈夫だろ」
「多分ね。でも驚いたよ、命の宝珠にあそこまでの浄化能力があったとは。排除出来てない侵食してきてる闇をすり抜けて来れるとは思わなかった」
そう、ついさっき俺達の所に外部から光が届いて、何事かと思ってる内にギラン達の話し声が聞こえてきたんだ。どうやら、外側からの治療で俺の体と心のリンクが復旧したらしい。
もしこっち側からの治療が始まる前にそれがやられてたらちと不味かったそうだ。心の深部、つまり俺達が居るここの領域は侵されてないが、上っ面の部分を支配してるのはまだ俺を侵食してる闇の部分だ。それが体を操って何をやらかしてたか分かったもんじゃなかったんだと。
今はその侵食する闇を消去しつつ、喰われて無くなっちまった部分を復帰させてるところだ。厳密に言えば、心の消された部分の消されたという事実を消してるらしいがな。
「どうやらギラン君も元気無くなってたみたいだけど、上手く立ち直ってくれたみたいだね」
「あぁ。……しかし、まさか話が進展してるとは思わなかったぜ。明日、何処かに突入とか言ってたな」
「らしいね。工場って言ってたけど、そこがもしビンゴだったとしたら」
「不味いな、奴等とかち合ったら零次達も唯じゃ済まない。復旧は終わらないのか?」
「ごめん、最速でやってもまだ後半日は掛かる。下手に急速な回復をしたら闇が心に残ってジャミングみたいな影響が残るかもしれないし、そうなると、折角開放出来るようになった君の力を今まで以下の状態にしてしまうかもしれない。ディヴァインガイダンスを相手取るのなら、そのマイナスは避けたいでしょ」
「確かに……ちっ、こればっかりはしゃあねぇか」
「世界の終わりが起こるのには間に合うけど、その工場突入に間に合うかは微妙かも」
どの道、俺がきちんと動けるようにならねぇと最終的なヤバイ事態ってのは止められねぇらしい。それを止めないと、この世界はアウト。そうじゃないにしても、この町を救うのは不可能になるそうだ。そんな事は出来ねぇだろ。
けど知っちまうと焦れったいもんだ。知り合いが危険だと考えられる場所に向かおうってのに、何も出来ないなんてな……。
「心の復旧とは言ってたが、一体どういう部分がやられてるんだ? 記憶に異常は出てないと思うんだが」
「主要な記憶や感情なんかは君をここに形成する時に切り離したけど、それ以外の……例えば、体が覚えてる反射的な行動とか体術時の四肢の動かし方なんかの細かな記憶領域なんかが侵食されてるんだ。だから、今体に戻ってもそれが阻害されていつも通りの動きが出来ないと思うよ」
「マジでか。確かにそりゃあ、戦闘時には大分障害になりそうだな」
「でしょ? だから復旧が必要なんだよね。急ぐ気持ちは僕も分かるけど、まずは完全復活しなきゃ」
って事はだ、現在の俺は戦闘スキルを取り戻してるところって事になるんだな。
「取り戻す? ちょっと違うかなー」
「はい? いやだって、今の説明はそうだろ?」
「確かに今までの君の使っていた技能も元に戻るよ。けど、君は扉を開いた。君自身の力を封じていた扉を、ね。これが何を意味するか、分かるでしょ?」
「俺の、封じていた……力?」
「君は気付いてる筈だよ。僕、つまり消滅の光をその身に宿す事で、君は限界の無い存在になっている事を」
限界が、無い……それは今までだって身体能力的にそうだった筈だ。いや……まさか?! 身体能力以外の限界も無くなるって言うのか!?
「そう、君を縛るどんな枷も存在しない。それが君が今まで培ってきた経験と結びついて起こる事象は、僕でも想像しきれないよ」
「俺にそこまでの力があるって言うのか?」
「世界の運命を変えられる存在なんだよ? それくらい出来たって不思議なんかじゃないさ。寧ろ、それくらい出来ないと多くの生命の運命が絡み合って生み出されてる世界そのものの運命なんて、一匹だけで変えられる訳無いよ」
寧ろそんなもんを改竄出来るとか規格外なんてレベルじゃねぇな。自分の化物っぷりに若干引くわー。
その表情を見て笑うかこいつは。ぶっちゃけ笑い事じゃないだろうにな。
……ふと思ったが、普通にこいつとか消滅の光の化身とか言ってたが、名前とか無いのかね? あると呼び易くなっていいんだけどな。
「そんなのあると思う? 君とこうして話をするまでは、僕は純粋に力としてしか見られてなかったんだよ? そんなのに名前決めてくれる存在なんて居た事無いよ」
「そうなのか? なら、ついでだしなんか考えるか?」
「え……いい、の?」
いや、そんなに期待したような視線を送られるとは思わなかった。そこまで期待に答えられるような名を付けれる自信は無いんだけどなぁ。
まぁ、もう候補はあるんだけどな? 簡単だし、そんなに捻りとかは無い名前だけどさ。
「なんでもいいってんなら……イレイス、とかって呼ぼうかなーと思ってたんだけどもよ」
「イレイスって。まんま消すって意味じゃない?」
「分かり易いだろ?」
「いやまぁ、これほど分かり易い呼び方無いかもしれないけどさ、もうちょっと捻りがあってもいいんじゃない?」
なんて言いながら、まんざらじゃ無さそうにクスクス笑ってら。これは、それでいいって事だと取らせてもらうからな。
しっかし俺ってば、自分のもそうだが……名前付けるの下手だな、改めて考えると。これは、ちょっと考え直してみるかなぁ?
「ま、いいんじゃない? 君って欠点が異常に少ないんだし、それくらいあっても」
「そうかぁ? 割と欠点て言えるとこあると思うが」
「訂正、欠点が霞むレベルで優秀な点が多過ぎるんだよね。神だの無敵だの最強だの言われるポケモンがマッハで土下座するくらい」
「どういう状況それ!?」
なまじ冗談にならないから問題なんだよな。実績的に伝説のポケモン倒したりダチになったりしてるし。それがいつもの俺で、それが更に強化されたらマジでそうなるかも。
いやでも他にする事無いからって駄弁ってるしかないってのがもどかしいぜ。体の感覚は戻ってきてるっぽいし、早く回復してくれんかなぁ。
~五日目 葛木家~
……幾ら気合いを入れてるって言っても、日の出前に全員が臨戦状態になれる我が家ってなんなんだ。俺もだけど。
「よーし皆、しっかり食べるのよ。もし何かあったらお昼とか食べられないかもしれないし」
「いや、知子さん、まだそうと決まった訳ではないですし」
「いや、恐らくですけど、ビンゴですね。さっき見せてもらった地図での位置からして、内部を透過出来なかった建物がある位置にその工場がありますから」
「あれ、パル様先に調べたんですか?」
「軽くね。流石に私だけでそれ以上調べるのは危険だったから出来なかったけど」
「本当にパルっちは頑張り屋だねー。もうちょっとリラックスしていいんだよ?」
って言うかなんでアルスさんが普通に居るんだ! それもなんか知らない女性と男性も連れてるし! 朝普通に玄関から入ってきたけども!
と、とにかく、工場の調査にはアルスさん達も参加するそうだ。頭数が増えるのはいいんだが、アルスさんって……確か創造主とか蒼刃が言ってたよな? それがダイレクトに介入していいのか?
家組はこのまま残ってもらうからいいとして、調査組はしっかり準備しないとなぁ。危険だと思われる要素は散々出てるんだし、気を付けておくに越した事は無いだろ。
「そうだ常呂川さん、警察は何時頃動くかって分かりますか?」
「人員と用意をしてからだから、早くても8時以降になると思うよ」
「今からだと、約3時間だね。焦っても仕方無いし、しっかり準備は進めよう」
うん、俺がわざわざ纏め役をやらなくても、締める所は親父が締めてくれるから任せてもいいな。俺はポケモンの皆に軽く今出来るだけの説明をしておくかな。
さて……長い一日になりそうだ。
~後書き~
……何時ぶりの更新だよ! と自分でツッコミを入れる程長い事更新が滞っていた新光外伝更新にございます。本当にね……すいませんでしたぁ! orz
話の構成自体は完結まで出来てるのですが、如何せん本文を書く時間やら肉付けやらで時間が掛かってしまっております。ダメ作者で申し訳ありません。
さて、いよいよディヴァインガイダンスとの決戦か、ライトも復活かというところまで来ましたが……次の更新は早めにしたいものです。マジ頑張れ私よ。
この後はコメントコーナーです! ここまでお付き合い頂き、誠にありがとうございます!
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