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夏の日の思い出~last summer~8

/夏の日の思い出~last summer~8

長編小説

人×ポケです。 ピカピカ


<第18話 結束>
朝8時半頃に食堂で朝飯を食べた俺たちは、9時から練習を始めることにした。
そして部屋に戻るときイナからある話を聞いた。
「何か今日朝にトイレに行ったらね、変な匂いがしたんだけど・・・」
「(ギクッ)き、気のせいじゃないか?」
「う~ん。そうなのかしら・・・何か嗅いだことのあるような匂いだったんだけど・・・」
嗅いだことあったら色々ヤバクないか!?と俺は心の中でそう思いながら部屋に戻った。
つーかイナってまだ処女なのか?ラフとはどうなってんのか分かんないし。そんな事気にしても俺には関係ないが。
そして部屋に着くと、俺は自分の荷物のある所まで歩いて座り込んだ。何となく今は清々しい気分だ。色々欲求不満が解消されたからかもしれない。ちらっとイナと話しているリムの方を見る。
楽しそうに話してるな・・・さっきまでの事が嘘のように。何事もなかったかのように。
そして何故だかふとアルと目線があう。アルは俺にニコッと笑ってみせた。隣ではゼルが俺にメンチをきっていた。はっきり言って怖い。

(二人とも気づいてる?)

いや、それはないだろうと思いながら俺は首を横に振る。
まず気づいてたらアルはともかく兄のゼルが黙っちゃいない。うん。
それから数十分後、練習時間がやってきた。
俺は部室で水着に着替え、練習場であるプールへと向かう。しっかりと水張りのされた綺麗なプールだ。俺を含む部員たちはまずストレッチをする。練習中に足の筋肉や手の筋肉などが痛んだりしたら大変だからな(以前にストレッチせずにやったらそうなった事がある)
そしてストレッチが完了し、部員が着るシャツを着たリムがタイムウォッチを持ってやってくる。
「じゃあ台に上って!!50メートルのタイムを計るよ!!」
台の上にラフ、アルが乗る。ゼルは最初から水に浸かっていた。俺はゴーグルをつけ、深呼吸をする。台に上がると大体緊張してしまうからな。
「すー・・・はー・・・」
大丈夫だ。俺は昨日より早く泳げる。そんな気がするんだ。
「じゃあ行くよ?よーい・・・」
リムが片手にストップウォッチを持って片手を挙げる。俺は構えを取る。心臓の鼓動音がやけにはっきり聞こえる・・・。

ードックン・・・ドックン・・・ー

「ドン!!」
俺はプールへと飛び込んだ。水の弾ける音がして俺はプールの水面へと体を浮かせる。
そして俺の最も得意とする泳ぎ。クロールで泳ぎ始めた。
クロールで進みながら俺は皆を見た。皆も得意とした泳ぎ方でやっていた。
ラフはバタフライ、アルは平泳ぎ、ゼルは背泳ぎ。皆それぞれかなり早かった。
負けていられない!!俺は心の中でそう叫び、ひたすら目の前を泳いだ。

そして4人が泳ぎ始めた頃。リム達は・・・。
「ちょ、ちょっと・・・今日皆早くない?アノンも・・・」
イナが驚くようにそう言った。リムは黙ってそれを見ていた。
「昨日までとは別人のようね、アノン。何かあったのかしら?」
「あれが本来のアノンだよ?イナ。やっと戻ってきてくれた・・・」
イナはリムのほうを見た。そしてリムの頬からは一筋の雫が零れていた。
そして4人がターンをして残りの25メートルを泳ぐところでリムは雫を拭い、呟いた。
「お帰り・・・アノン。本当に・・・」
そして4人はほぼ同時にタッチした。リムはストップのボタンを押した。

「リム!!タイムは!?」
俺は着いて早々リムにタイムを聞く。リムはタイムを見て言った。
「25,6秒!!皆早いよ!!」
リムが笑って言った。俺は水面を叩いて叫んだ。
「よっしゃあ!!」
俺がそう叫ぶとラフやアルが寄ってきた。
「やったな!!アノン!!」
「昨日とは別人のように早かったね!!」
ラフとアルが交互にそう言ったのに対し、俺は大きく頷いて応えた。
そして遅れてゼルが寄ってきて言った。
「最初からそのタイムをだせよな~まったくよぉ!!」
ゼルは嫌味を言うように言ったが顔は笑っていた。多分ゼルなりに誉めてくれてるのだろう。
「悪かったよ」
俺はゼルに答えるようにしてそう言った。ゼルは笑った顔をまた俺に見せてくれた。
そしてラフが手を挙げて叫んだ。
「よーし!!この調子で大会勝つぞ!!」
「当たり前だ!!俺たち4人で頑張って大会優勝だ!!」
俺たち4人はその場で手をがっしりと組み、決意を固めた。
その様子を見ていたリムとイナは少し呆れたように笑ってため息をついていた。
<第18話 結束 終>

<第19話 大会前日>
あれからというものの、調子は大分前みたいに戻ってきていた。
以前のタイムには程遠いが。俺の最後の大会は一体どうなるんだろうな?
今そんなことを考えたところでどうなる訳でもないけどさ、まぁとにかく全身あるのみだよな。
それで俺たちは今、明日の大会に向けてミーティングを行ってる最中。よくもまぁ朝っぱらから練習ほっぽり出して出来るよなぁ。
別に練習し終わった後にやっても遅くはないと思うけど。そこら辺はつっこまないけどね(面倒だから)
「で、明日のメドレーリレーのことだけどさ・・・っておい、アノン?聞いてるか?」
ラフが少しぽけっとしていた俺を見て言う。俺は慌てて答えた。
「あ、あぁ。大丈夫、聞いてるからさ」
「そうか?じゃあ話の続きを言うぞ」
俺は少し頬を掻いてからラフの話を聞くことにした。皆は部屋の真ん中で円を作るようにして話をしていた。そしてラフが説明を始める。
「メドレーリレーにはもちろん俺、アル、ゼル、そしてアノンの四人で出場だ」
メドレーリレーには俺たち三年とゼルが出場か。ポケモンのゼルも出場できるなんて随分水泳のルールも変わったと俺は思う。てか、ゼルが出たら絶対勝てる気が・・・。
いや、もしかしたら他校の奴らもポケモンを出してくるかもしれない。ポケモンは一匹だけ出してもいいと言う制限がかかってるけど、他校がゼルよりも早く泳ぐ水タイプの奴を出してきたとしたら勝敗の行方は五分五分ってところだな。こりゃあやっぱり一筋縄では行きそうにない。
そして俺が頭の中で考えている間にもラフは話を続けた。
「知ってのとおり、泳ぐ順番は背泳ぎ(ゼル)→平泳ぎ(アル)→バタフライ(ラフ)→自由形(アノン)だ。だけど自由形はバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ以外の泳法で泳がなきゃいけない」
ラフが説明していると横からゼルが口を挟んでこう言った。
「だったら大丈夫じゃないか。何てったってアノンの得意とする泳法はクロールだからな!!」
ゼルは腕を組んで(いるのか?)大いに笑った。喜んで受け取ってもいいんだよな?今の言葉。そして続くようにアルが言った。
「アノン、頑張ってね?僕たちもなるべく楽させられるように差をつけるつもりだからさ」
「あぁ。ありがとな、アル。俺も頑張るから」
俺がそう言った後、ゼルが続いて言った。
「まぁ、俺の背泳ぎがありゃあ絶対勝つの間違いなしだけどな!!」
アルの言葉に続いて言ったのか、ゼルは胸をドンと叩いて胸を張っていた。(強く叩きすぎて少し苦しそうに見えるのは俺だけだろうか?)
「こらこら、ゼル。そんなに自信過剰にしてたら痛い目見るぞ?」
ラフが苦笑いしながらそう言ったのに対してゼルは少し頭を掻いていた。
「へいへい、分かったよ。ラフが言うんだからそうなるかもしれないしな」
何気にゼルはラフの言うことには従うよな。昔からそうだけど。そしてラフがまた説明を続ける。
「とにかくだ。俺たちは勝たなきゃいけないんだ。今まで頑張って続けてきた歴代の先輩たちが手にしてきた栄光の証をな」
ラフが珍しく良い事を言っている。まぁ、今まで言い忘れてたけど部長なんだから当然のことなんだが。ちなみに副部長は俺。今までは代理でアルがやってくれていたらしい。
そしてラフが説明を一通り終えた後、手を円の中心に持ってきて言った。
「ついこの前もやったアレをするぞ。皆、一年も手を出せ」
この前もやったと言うと、あれか?俺たちがプールでやったあの手を皆でがっしりと組んでやるあの円陣のパクリみたいな?
俺がまた色々考えをしているうちに手を出していないのは俺だけになった。
皆は俺を見て早くと言わんばかりに目を輝かせていた。俺はそれに応えるように手を出して、皆の腕とがっしり組み合った。そしてラフが言った。
「俺たちの目標はただ一つ!!」
そうだな。俺たち水泳部員の目標はただ一つ。
「大会に優勝して栄光の証を手に入れることだ!!」
「オーッ!!」
皆は一斉に叫んだ。俺もその中に入って一緒に叫んだ。柄にもなく・・・(汗)
それから俺たちは合宿最後の練習を、いや俺たち3年にとって最後の練習をひたすら頑張った。
明日の大会で勝てるように、悔いの残らないようにと・・・。
<第19話 大会前日 終>

<最終話 夏の日の思い出(前編)>
合宿最終日を終えた俺たちは翌日、大会場所である所へと向かっていた。
俺たち三年生は無言だった。それも当然だよな。これが最後の大会なんだから。
俺も気持ちを切り替えなきゃいけない。目指すは優勝・・・だけじゃなく、俺にはもうひとつ目指さなきゃいけない事があった。

それは優勝する事とリムの笑顔を一番最初に見ることだ。

俺が勝っても負けてもリムは俺に笑って見せるだろう。でもそんな事をされてもただ悔しいだけ。
負けて笑顔を見るくらいなら、絶対勝つ。いつも見る笑顔とは違った別の笑顔。最近はそれを忘れていた。だから大会に勝って、今日その笑顔を見るんだ。
俺は手を胸に当ててぐっと拳を握った。決意は固く俺の中でゆるぎないものとなった。
そして大会場所に着いた俺たちは揃って目の前で立ち止まった。そしてラフが全員に言った。
「みんな!!行くぞ!!」
皆は大きく頷いた。そして再び歩き始め会場の中へと足を踏み入れた。
中は騒がしい雰囲気が漂っていた。他校の奴らが睨んでいるようなプレッシャーまで感じる。
ストレッチをする人、会場内を走って体を温めてい人、各高校によってアップの仕方が違っていた。
俺たちは控え室まで行き、荷物を置いた。そして他の高校もやっていたようにアップを開始した。
いつでも最善の状態で泳ぐためにはアップは欠かせないのだ。それはどのスポーツでも共通することだけど。

ーピーンポーンー

「お知らせします。競技は九時から開始させていただきますので、競技に参加される選手の方々は10分前にはプールの方に行かれるようお願いします」
アナウンスが流れたので俺は手につけていた腕時計を見る。
「八時半か・・・ラフ、後20分しかないぞ?」
「大丈夫さ!!20分もあれば十分なアップは出来る!!ひとまず走って体を温めるぞ!!」
「そうだな。じゃあ走るか!!」
俺とラフが言葉を交わした後、ラフのズボンの裾をゼルが引っ張っていた。
「なぁ?俺も走るのか?」
「当たり前だろ!!さぁ、行くぞ」
「やっぱりそうだよなぁ・・・」
昔からゼルは走り込みが嫌いだから今のようなことを聞いたのである。アルがゼルの肩をポンと叩いて元気付けていた。ゼルは小さく頷きしぶしぶ走り出した。

それから10分後・・・

だいぶ体は温まった。つーか息切れ激しいな、俺。やっぱり体力落ちたかな。
まぁゼルやアルよりは衰えていないが、それでもやっぱりキツイ。後は体を冷やさずに、適度に動いておけば安心だろう。さて、ちょっと早いけどプールへと向かうか。
「ラフ。少し早いけどプールへ向かうか?」
「んっ?お前がそうしたいならそれでもいいけど」
「じゃあ行くとしますか・・・ってあれ?」
俺はある事に気づいた。ラフが顔を傾けて聞く。
「どうしたんだ?」
「いや、悪い。ちょっとゴーグル忘れたから取りに行ってくる。先行っててくれ」
「分かった。遅れるなよ?」
「分かってるって」
俺は控え室に戻ることにした。多分バッグの中に忘れたのだろう。
早く取りに行かなきゃな・・・。
<最終話 夏の日の思い出(前編)終>

<最終話 夏の日の思い出(中編)>
俺は走ってから30秒位してやっと控え室についた。所定の位置に置いた自分のバッグを見つけて中を探る。ゴーグルはすぐに見つかった。
「さて、急いで戻らないと」
そしてゴーグルを片手に控え室を出ようとしたそのときだった。俺の足に何かがドンッとぶつかった。俺は大してよろけなかったが、ぶつかったそれはしりもちをついていた。
「いった~・・・」
リムだ。ぶつかったそれの正体はリムだった。リムはお尻をさすりながら静かに立ち上がった。
「悪い、リム。大丈夫だったか?」
リムはぶつかった人が俺だったからなのか、何ともなかったかのように頷いた。
「うん、大丈夫だよ。私こそごめんね。ラフからアノンが忘れ物取りに行ったって聞いたから来ちゃったの」
「そっか。わざわざありがとな、リム」
俺は少ししゃがんでリムの頭を撫でてやる。リムは目を細めて気持ちよさそうな顔をした。
ちょっとの間そうしていただろうか。俺は少し緊張していたからなのか少し気が安らいだ。そして手を離し再び立ち上がってリムに言った。
「それじゃあ急がなきゃいけないから俺行くぞ?リムも観客席に急げよ?」
「うん。しっかり応援するからね?負けちゃダメだよ、アノン?」
「・・・分かってるって。頑張るから」
「じゃあもう一回しゃがんで?おまじないかけてあげる!!」
俺は時間はなかったがリムの言うことを聞いてあげることにし、もう一回しゃがんだ。
「アノン、目を閉じて」
俺は静かに目を閉じる。目の前の視界が暗くなり何をされるのだろうかと少し疑問に思っていた。
しかしその疑問はすぐに解かれることになった。急に俺の唇に何かが重なった。俺はその重なったものが何かをすぐに理解した。
そう、リムは俺と唇を重ねたのだ。しかし俺は抗うことはまったくしなかった。
そして唇がふっと離れる。俺は薄っすらと目を開け、目の前のリムの顔を見る。リムは今、自分がしたことに対し急に恥ずかしくなったのか顔を赤らめ、体をモジモジさせていた。
「リム、今のがおまじないか?」
「う、うん。大したおまじないじゃないけど、やらないよりはマシかなって」
俺はフッと笑うと、再びリムの唇にそっと自分の唇を重ねた。
「んっ・・・」
すぐに唇を離した。だけど今の行為によってリムはさらに顔を赤らめた。俺は再びリムの頭を撫でながら言った。
「ありがとな、リム。俺にとっては今のは最高のおまじないだよ」
「アノン・・・」
俺は時間の事をひと時の間忘れてしまっていたが、それをすぐに思い出して急ぎ足でプールへと走った。リムは俺が走っていくのをずっと見ていてくれた。
そしてアノンが見えなくなるとリムは手で自分の唇に触れた。
「急がなきゃ」
そう呟いてリムは観客席へと走っていった。観客席には沢山の他校の人たちが応援に駆けつけており、盛り上がっていた。リムは自分の高校の指定されている席まで向かい、そこでイナと合流した。
「遅かったじゃない、リム」
「ごめんね、ちょっと色々あって」
リムがそう言うと、イナはクスッと少し笑ってから言った。
「激励、してきたのね?アノンの事」
「うん・・・。出来たのか分かんないけど・・・」
「ふふ、そうでもないと思うけど?」
「えっ?」
リムがイナの方を見ると、イナは一点の方向を指差した。指差した方向にはアノンがいて、随分と顔が遠くから見ても分かるくらい穏やかに見えた。
「さっきまでとは全然顔つきが違うもの。ちゃんとリムの気持ちは伝わってるよ?」
「イナ・・・。うん、そうだね。ありがとう」
「どういたしまして。さぁ、そろそろ始まるわよ?まずは個人競技からね」
競技はアナウンス通り九時から始まった。コールが流れ、試合が始まる。

「行けぇ~~!!ラフ~~!!」
イナが珍しく叫んで応援している事にリムは驚いていた。
あの九時からの開始以降、アル、ゼルの二人の試合があった。結果はアルは三位。ゼルは二位。
二人ともしっかりとした結果は残していた。そして今はラフが競技中で、間もなくゴールする。
やはり三年生なだけあって皆必死だった。他校の力も一年前に比べれば全然違う。勝負の先はまったく見えないものである。
そしてラフが僅かな僅差で先にゴールし、一位を取った。
「よっしゃ~っ!!」
ラフはプールに入ったままそこで歓喜の声を上げていた。そしてラフはイナに向かって手を振っていた。イナもその手を振り返す。リムが横目でちらっと見れば、イナは少し涙を頬につたわらせていた。
(よかったね・・・イナ)
リムは心の中でそう呟いた。リム自身も嬉しかった。しかしイナに比べればその喜びなど全然歯がたたない。リムはそう思っていた。
リムが喜ぶ場面はもっと後に取っておくのである。それはやはりアノンがメドレーリレーで勝つことだろう。アノンは個人戦には出なかった。体力を消耗したくないかららしいが。
アノンは他の皆が勝つことに一緒になって喜んでいた。アノンもこれからその喜びに一緒に入るのである。次の最終種目「メドレーリレー」で。

「さて、この大会もいよいよ最後の種目となりました・・・」
アナウンスが入る。俺は今まで上に羽織っていたウィンドブレーカーを脱いだ。
「次は最終種目、メドレーリレーです。選手の方は指定位置についてください」
俺を含む四人。ゼル、アル、ラフは飛び込み台の前へと向かい、そこで止まった。
そして一番手のゼルがプールに飛び込み、構えを取る。

「位置について・・・よ~い」

ードックン・・・ドックン・・・ー

「ドンッ!!」
一斉に全員が泳ぎだした。
「ぜ、全員ドンピシャ・・・」
ドンピシャ、つまりは飛び込みがうまく出来たときに言うこと。全員が同時に飛び込み、泳ぎ始める。ゼルは負けじと必死に他校の奴らと張り合っていた。
(くそっ・・・さすがメドレーリレー。一筋縄じゃいかないな)
アノンは思わずくっと歯を食いしばった。それでもゼルがターンの時に一位の奴と頭一個分追い抜き返した。
「ゼル!!頑張れ!!」
「お兄ちゃん!!頑張って!!」
遠くからイナとリムが応援している声がする。
そして次にゼルが壁にタッチをすると、次のアルが飛び込み、平泳ぎを始める。
「うまくアルにバトンタッチ出来たが、他校の奴らは俺たちの作戦を読んでる」
アノンがそう言うとプールから上がったゼルが言った。
「それは俺達ポケモンを上手く使ってるってことか?」
「そう、ゼルは泳ぎが速いから差をつけられると思ったんだが、他校の奴らはそれを見抜いてゴルダックなんか入れてきやがった。この勝負どうなるかわからないな。」
アノンが悩むようにそう言うと、ゼルは自信ありげにこう言った。
「大丈夫だって!!何たって今泳いでるのはこの俺のパートナーだぞ?負けるはずがない!」
「ゼル・・・。そう、だよな。俺達はただ仲間を信頼して、繋いでくれたリードを引き継いで泳ぐだけだよな。」
「分かってんじゃねぇか。だったら絶対負けんなよ?」
「分かってるよ。」
そこで戻ってきたアルが壁をタッチすると、バタフライのラフがスタートした。一位との差はあまりない。三位との差もだ。気を抜けば一瞬で抜かれる。そしてアルとゼルが台の上に上った俺の肩をポンポンと叩く。
アルとゼルは観客席の方を指差した。リムが何かを叫んでいる。俺は耳を澄まして聞いた。
「アノン!!最後のお願い、聞いてくれる!?」
俺は静かにリムの方を見て頷いた。するとリムは思いっきり叫んで言った。
「全力で行っけぇぇっっ!!!」
「!!」
俺は両頬をバチンッと叩いて構えを取った。
(リムに言われなくても・・・)
「そのつもりだっ!!」
俺は飛び込んだ。今まで一位だった奴と同じタイミングで飛び込んだ俺は、水の中へと飛び込んだ。
俺は得意のクロールで全力で泳いだ。
歓声などはまったくといって言いほど聞こえない。聞こえるのは水の弾ける音だけ。俺はがむしゃらに泳ぎ、そしてターンをする。他校との差はまったくない。
(負けられない!!この試合に勝って俺は・・・俺は・・・!!)
俺は心の中でもう一度決意を呟き、残りの距離を泳いだ。
後、15m・・・10・・・5・・・。

壁をタッチした。俺は掲示板を見る。
三位、二位、一位・・・俺の名前は・・・。
「一位はアノンだぁっ!!」
ラフが先に叫んだ。俺はタイミングを完全に逃した。一気に歓声が沸きあがる。
ラフやアル、そしてゼルがプールから出た俺に飛び掛ってくる。
「よくやったな!!アノン!!」
「凄いよ!!二位との差は僅か0,3秒しかない!!」
「大した奴だぜ、お前は!!」
三人から一斉に声を聞かされ、俺はひとまず歯を出して笑った。
そしてプール場へとリムとイナがやってきた。
リムは迷わず俺に飛びついてきた。俺はそれをしっかり抱きしめてやった。
「ひっく・・・ひっく・・・」
「お、おいおい?泣いてるのか?リム」
「だ、だって・・・だってぇ・・・アノンが勝ったんだもん。涙が出ないわけないでしょ・・・」
「笑ってくれよ、リム。お前の笑顔が今見たいんだ。頼む」
リムは抱きつくのをやめると、俺を見て笑ってくれた。そして今まで疑問に思っていた事がやっと理解できたのである。
(そっか。こういう事だったのか・・・)
今まで疑問に思っていたこと、それはいつも見るリムの笑顔の違いだった。
今見ているリムの笑顔はいつもとは違う。こんなにも頬を濡らして笑ってくれているリムの笑顔だったんだ。
「ありがとな、リム」
「へっ・・・?何が?」
「いや、何でもないよ・・・」
試合が終わってもなお、歓声は沸きあがり続けていた・・・。
<最終話 夏の日の思い出(中編)終>

<最終話 夏の日の思い出(後編)>
あれから表彰が終わり、館内から出た俺たちは帰路についていた。
それにしても未だに信じられない。あんなに部活を休んでいた俺があそこまで出来るなんて。
遅れてきたカメックス先生も驚いていた。それと同時に泣いて喜んでくれていたが。
「さて、と。俺たちはここでお別れだな」
あれこれ考えているうちにアル、ゼルと別れる道についていた。俺は何か忘れているような感覚がしたのだが・・・とそこでリムが俺の服の袖を引っ張って小さい声で言った。
「お兄ちゃんに私たちのこと言わないの?言うなら今しかないと思うけど」
そうでした。まだその問題が残っていた。俺にとって水泳の事よりも重要な問題が。
確かに言うなら今しかない。アクアジェット覚悟で行くしかない。よし、言うぞ。
「ゼル。ちょっと待ってくれないか?」
「あん?何だよ?」
「大事な話があるんだ。ラフ、悪いけど先帰っててくれるか?」
俺が頼むとゼルはアルに一言言って来てくれた。ラフも一応俺の事情が分かっているらしいので、コクリと頷いて手を振って先に帰った。そしてゼルが俺を見上げる。
「で、話って何だよ?」
「い、いや・・・あの。実は俺とリムの事で・・・」
「お前とリムの事ぉ?」
少しゼルが睨みをきかす。ヤバイ、怖い。マジで怖い。足震えてる。背筋が凍る。もはや腹痛くなってきた。まだ喰らってもいないのに。
えぇーい、構うものか。今言わないとこれから言えないかもしれない。
「それがだな・・・実は俺とリムは」
「お前とリムはぁ?」
「俺とリムは・・・その、付き合っています。はい」
ヤバイよ、言っちゃったよ。さぁどう来る!?腹か?腹に来るのか!?来るなら来い!!
「へぇ」
は?何そのリアクション。全然予想してたのと違うじゃないか。何で怒らない?あんたの可愛い妹取られたんだぞ?俺が素っ頓狂な顔をしていると、ゼルはニヤニヤして答えた。
「俺が知らないとでも思ったのか?何年お前たち見てきたと思ってるんだ?伊達にリムの兄貴やってねぇよ。久しぶりに会ったその時からお前たちの事見てピーンと感づいていたぜ?」
恐ろしい。さすがはリムの兄貴。妹がそうならば兄貴もそうだ。でもアクアジェットは免れたな。
「まっ、別に気にすることはねぇよ?可愛い妹のリムに似合うのはアノン、お前ぐらいの男しかいないぜ?但し、泣かしたり悲しませたりしたらその時はアクアジェットで殺すからな?」
「は、ははは。大丈夫だって。そんな事ないから」
「じゃあ俺は行くぜ?アルを待たしちまってるからな。じゃあな、アノン、リム」
そう言ってゼルは走ってアルの元へと走っていった。俺はそれを最後まで見送った後、リムと並んで二人で帰った。その途中でリムが俺にこう言った。
「よかったね。アノン」
「ああ。殺されるかとおもったけどな」
「ふふ、それはないよ。私のお兄ちゃんだもん」
リムは少し笑いながらそう言った。てか、お前の兄貴だからそう思ったんだけどな。
黙っておこう。殺されそうだから。
「でさぁ・・・アノン?」
リムがいきなり俺の方を見て頬を赤らめる。
「あの、今日帰ったらさ・・・」
「リム。言わなくていいよ。そのつもりだったから」
「ほ、本当?」
「あぁ、本当だ」
リムは凄く嬉しそうにしている反面、顔を真っ赤に染めていた。今のリムの行動はすべて俺にとって興奮させるものである。下半身はそれを訴えていた。
(バレなきゃいいけど・・・)
俺は平然を装いながら家まで帰った。リムと俺は家に帰るまでずっと無言だった。
そして一週間ぶりの家の戸を開け、元気に俺とリムは言った。
「「ただいまぁっ!!」」
その声を聞いて母さんはすぐに出てきた。そしてニッコリと笑って俺たちを出迎えてくれた。
家に帰り、久しぶりに母さんの声を聞いて、ご飯を食べて、風呂にも入った。
全てが何故か懐かしく感じられた。たった一週間だったはずなのに。凄く懐かしく感じられた。

そして夜は更けて・・・
俺とリムは床に敷いた布団の上で寝そべり、キスをしていた。
「んっ・・・んんっ・・・」
俺たちは互いに求め合うかのように舌を絡ませ、しばらくそのキスを繰り返していた。
俺は仰向けの態勢で、リムは俺の上に乗っかっていた。もし態勢が逆だったら大変だし。
「ぷぁっ」
口を離して互いに興奮していたところで、リムは体の向きを変え、俺に秘所が見えるようにし、リム自身は露になった俺のモノを見る態勢になった。
「そういえば初めてアノンのモノを舐めるなぁ」
リムはそんな事を呟き、俺のモノを丹念に舐め始めた。まるで飴でも舐めるかのように。初めて舐められた感覚は何ともいえない。ただ下からジワジワとリムの舌の温かさに加え、ザラザラとした感覚が伝わってくる。
だが俺も負けてはいられない。俺もそのパックリと開いた秘所を舐め始める。途端にリムは腰をビクッと動かしたが、それを俺が手で押さえる。そして貪る様に愛液をペチャペチャと音を立てながら啜っていく。
「んんっ!!ジュルッ・・・はぁっ・・・」
リムも負けじと俺の先走り汁を啜る。俺もそれに思わず情けない声を出してしまう。
「んぁぁっ・・・リム、いいよ」
「ほ、ホント?うれひい・・・クチュ・・・」
しかしここで快感に身を委ねすぎてリムより先にイッてしまっては男が廃(すた)る。
俺は少し奥の手を使わせてもらうことにした。リムのもうひとつの性感帯であるお尻の穴に腰を抑えていた手の指を伸ばし、一本挿入する。

ーズブゥ・・・ー

「あひぃっ!!ちょっ・・・と・・・お尻はだめぇ・・・んひゃあんっ!!」
俺はリムが言うのも無視し、手の指を前後に動かす。そして同時に秘所を舐めるのも再開させる。

ーズッズッ・・・ピチャァー

「ひぐぅ・・・ら、らめだよぅ・・・そんなにされたら・・・イッちゃ・・・あぁ・・・」
「何が駄目なんだ?もうお前の尻は感じてこんなに濡れてるぞ?」
「ひぃ・・・イジワルぅ・・・あんっ!!」
「ほらほら、お前の口でもっと舐めてくれよ。動きが止まってるぞ?」
俺が言うと、リムは体を震わせながら再びモノにしゃぶりつくが、どうにも快感のせいで舐め方が荒くなっている。俺はため息を一つつくと、無理やりモノをリムの口から引き抜き、リムの腰に手を置いたまま体を起こす。すると自然にバックの態勢となる。
「あ、アノン?もしかして・・・」
「我慢できないからな。お前のここを使って慣らさしてもらうからな?」
そう言って俺はリムのお尻の穴付近を指でグニグニとほぐす。そして有無を聞かずにモノを宛がう。
リムは依然として体を震わせ、俺を見る。少し涙で濡れたその顔は堪らなく愛しかった。

ーグッ・・ズブブ・・・ー

「あっ!!あぁっ!!い・・・たい・・・!!」
「やっぱり締め付け方が凄いな・・・う、動くぞ」
「やっ・・・!!まだ慣れてな・・・ひぁっ!!」

ーズブッ・・・グプゥッ!!ー

さっき慣らしたおかげか、滑りはそこそこ良く、以前よりはあまり痛みを感じない。
リムは前と同じように舌を出してひたすら喘ぐ。
「あぐぅっ・・・お、おひり痛いよぉ・・・アノンのがおっきすぎてリムのお尻壊れちゃうよぉ・・・ひぐっ・・・うぁっ!!」
「り、リムっ!!リムッ!!」
俺は我慢できずにリムの胸に手をそっと添える。そして優しく揉んだ。
「ひゃっ!!・・・あっ・・・」
やがては突起物を親指と人差し指を使ってクリクリと弄繰り回し、先端をプニプにと押しつぶす。
「な、何か今日のアノン・・・激しいよぉ・・・ひんっ!!ひゃあんっ!!」
「しょうがないだろ?こんなにもリムが愛しくて・・・欲しくて堪らないんだからさ」
俺はそう言ってリムの腰に再び手を置き、更に激しく腰を前後に突き出す。
「んぐっ!!もう私イッちゃいそう・・・」
「あぁ、俺もだ・・・出すぞ?」
俺は限界が来てモノを引き抜きリムのお尻付近に満遍なくかける。
「あっ・・・あぁ・・・アノンの熱いよぉ・・・」
「良かったよ、リム」
「はぁ・・・でもちょっと強引過ぎたと私は思う。まだお尻がジンジンするもん」
リムは少し膨れっ面で言う。
「わ、悪かったよ。やり過ぎたから謝るよ」
俺は手を合わせて頭を下げて謝った。するとリムはそれを待っていたかのようにいきなり俺を押し倒した。
俺は布団の上に仰向きに倒れるようになってしまい、その上にリムが乗っかる態勢になった。
「私ばっかやられてたんじゃ女が廃るから、今度は私から行くよ?」
「ふぅ、お好きなように」
確かに今までは完全に俺のペースだったからな。リムのペースに合わせてやるのもいいだろう。
「ほら、アノン。私のココを見て。さっきからアノンのモノが欲しくて堪らなくてウズウズしてたんだよ?ちゃんと責任取ってよね?」
「分かったよ」
リムの秘所は淡いピンク色に加えて言葉どおりピクピク動いていた。
そしてリムが俺の胸に手を置き、静かに腰を下ろしていく。ズブズブと音を立ててリムの秘所に飲み込まれていく俺のモノは完全に飲みこまれてしまった。
リムの膣はさっきの穴とは比べ物にならないくらい温かく蠢いていた。
ピクピク動くたびに俺のモノは締め付けられ、それだけで絶頂をむかえそうになってしまう。
「入ったぁ・・・全部アノンのモノが・・・動くよ?」
「あぁ、任せるよ」
俺から了承を得るとリムは腰を上下に振り始めた。さっきよりも水のはじけるような音が響き、何とも言えない淫音を奏でる。

ージュプッジュプッ・・・ー

「リム・・・リムぅ・・・」
「あ、アノン・・・アノン・・・好きっ・・・」
「俺もだ・・・好きだよ・・・」
俺たちは言葉を交わした後にキスをする。舌を絡ませながらもリムと俺は互いに腰を振る。
「んんっ・・・んぐっ・・・ふぁぁ・・・」
上の口も下の口も重なり合い、俺たちはひたすら求め合った。そしてやがては互いに絶頂が近づき・・・
「アノンっ・・・私、もうイクッ・・・!!」
「俺もイキそうだ・・・」
「私の中に沢山出して・・・ね?」
「あ、あぁ・・・くっ!!うあああっっ!!」
「ひにゃっ・・・!!あああぁぁぁっっ!!!」

ードクッドクンッ・・・ー

俺とリムは同じタイミングで絶頂を迎えた。そして俺はリムの中に精を放った。
中で俺のモノはまだ脈を打って精を放ち続けていた。
「はぁっはぁっ・・・」
リムはモノを引き抜くと、俺の上に寝転がった。俺はそれを優しく受け止めてやった。
「よかったよぉ・・・アノン」
「俺もだ、ありがとな。リム」
リムは俺を見つめて軽くキスをした後、眠りに入った。俺はリムが寝付くまで頭を撫でてやり、やがてリムが眠ると、あらかじめ用意しておいたタオルで体を拭き、静かにベッドに寝かせてやった。匂いが染み付くだろうが別に構わない。
俺も体を拭き、衣類を着る。そして眠りにつく前に部屋の窓を開けて空を眺めた。
「やっぱりここから見る空は綺麗だな・・・」
星空はいつもどおり綺麗に輝いていて、あの日と同じ空だった。
俺はもうこれで水泳とは縁がなくなるのかな?別の道を歩いて普通にリムと暮らすのかな?
俺はこの過疎地域にいつまで住んでぃられるんだろうか?そんなものはわからないだろう、誰に聞いたって。
でも、確かなことは一つ。

俺はここで確かに水泳をやって、ラフやイナ。アルやゼル。そしてリムとの大切な思い出

そう、「夏の日の思い出」を作ったんだ。

だから、この先どんなことがあろうと俺はそれに立ち向かっていくだけ・・・。


そしてそれから数年後
「さてこの日本選手権大会の王冠を手にするのは誰なんでしょうね?」
「分かりませんよ~?今ここにいる選手の皆さんはだれもがその昔に好成績を治めている人たちですからね~」
「じゃああなたの注目の選手は?」
「それは当然でしょう。もちろん・・・」


「スー・・・ハー・・・スー・・・ハー・・・」
深呼吸。これは何年たっても欠かさない。緊張するからな。
「位置について・・・よーい・・・」
台に手をつく。
「ドンッ!!」

ーザパァンッ!!ー

「「アノン選手」でしょう!!」
「ですよね!!パートナーも近くで見ているって話ですからね」
「いったい誰なんでしょうね~?」

「アノン~~ッ!!頑張れ~~ッ!!」
声が聞こえる。俺の大切な人の声が・・・。
だから俺は・・・もっと頑張れる!!




そして何年か経った今でも・・・今日もどこかで俺は・・・

泳ぎ続ける。

夏の日の思い出を振り返りながら・・・

fin



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Last-modified: 2013-02-16 (土) 00:00:00
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