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夏の日の思い出~last summer~5

/夏の日の思い出~last summer~5

長編小説

人×ポケです。  作 ピカピカ



<第10話 夜空>
時刻は8時5分。そろそろ行かないと・・・。
俺とリムは人ごみの中を歩いていた。リムはさっきやった金魚すくいで金魚を取れた、と言うよりは、あまりにも取れなくて金魚屋の人に特別に貰ったので上機嫌だ。
「家帰ったら何か別の所に移し変えてあげなきゃね、アノン?」
「あぁ、そうだな。それより時間に間に合わなくなるから早く学校行くぞ?」
俺が言った後、リムも頷く。俺達は急ぎ足で学校に向かった。人ごみの中を抜けた後、学校へ走って向かった。だが、リムはさっきと違って走りにくそうにしていた。
「大丈夫か?リム」
「だ、大丈夫だよ。アノンは先走ってて。すぐに追いつくから」
リムはそうは言っているが、俺が見る限りあのスピードだったら間違いなく花火に間に合わない。俺はそう考えた後、しゃがんでリムに背を向ける。
「・・・アノン?」
「ほら、後ろに乗れよ。その足だと花火に間に合わないからな」
リムは少し戸惑いを見せたが、すぐにアノンの背中に乗っかった。(おんぶの状態)
「よし!!全速力で行くぞ!!しっかり掴まってろよ?」
俺がそう言うとリムはしっかり俺の服を掴んだ。俺はリムを背負ったまま学校へと走った。そして10分くらい経って学校の玄関前に着くと、何やら片手に袋を持っているラフとイナがいた。(未だにイナはラフの頭の上にいた)
「間に合ったぁ~~・・・ふぅ・・・」
「お疲れさまだな、アノン」
「お疲れ。アノン」
ラフとイナが言ってきたから俺は一応返事はしといた。
そして俺がしゃがむとリムは俺の背から降りた。そしてこう言った。
「ありがとね!!アノン!!」
俺は疲れていたが、リムの笑った顔を見たら疲れなんかどこかに行ってしまったような気がした。そして玄関の靴箱で、上靴にも履き替えずにそのまま屋上へと向かった。今の時間帯、先生はまずいない。いると言ったら警備員さんくらいだ。ちなみに屋上はいつも鍵がかかっていないから難なく入れる。
「これでよく今まで泥棒に入られなかったよなぁ・・・」
ラフが咄嗟にそんな事を言った。それに俺もリムもイナも同意して、うんうんと頷いた。てかその前に屋上から侵入する奴なんていないか・・・。そんなことを考えながら俺達4人は階段を登っていく。




そんなこんなで屋上に着いた。




「何とか間に合ったな。今時間は8時25分だ。後5分あるぞ」
俺がそう言うやいなや、ラフは持っていた袋から色々取り出した。出てきたものは飲み物やおつまみなどだった。
「買っておいたんだ。俺のおごりだから気にすんなよ?ほれ、アノン」
そう言ってラフは俺に飲み物を投げる。俺はそれをキャッチする。
「悪いな、ありがたく貰っとくよ」
俺はそう言った後、飲み物のふたを開けて飲む。ラフはイナやリムにも飲み物を配った後、自分の分を開けた。
「あっ、私少しトイレ行ってくる」
イナが突然そう言った後、リムもこう言った。
「私も行ってこようかな?」
「おいおい、もう始まるぞ?」
もう花火が始まる2分くらい前だった。イナとリムは「大丈夫」と二人同時に言って、屋上から出て行った。
「まったく・・・さっき行ってくればよかったのに」
俺がそう言うと、ラフも苦笑いして言った。
「ははは・・・女って言うのは分からないからなぁ・・・」
「・・・確かにな・・はは・・・」
俺もラフと同じように少しだけ笑った。そして俺とラフは二人して夜空を見上げた。
「・・・綺麗な夜空だな・・・」
「あぁ・・・綺麗だ・・・」
俺が後になって言うと、ラフがこう言った。
「いつも部活終わったあとはこんな夜空を眺めながら帰ってたよなぁ・・・」
「・・・・あぁ・・・そうだな・・・」
俺は少しうつむき加減で言った。
「あの日の夜も・・・こんな夜空だったな・・・」
ラフがそう言うと、俺は完全に黙りこくってしまった。あの日・・・俺の人生が変わった日・・・そう、水泳をやめるきっかけとなったあの日・・・。
俺はあの日の記憶を・・・忌まわしい記憶を・・・思い出し始めていた・・・。



<第10話 夜空 終>



<第11話 記憶>
そう、あの日・・・海に特訓のために行っていた・・・。居たのは数人の人、そして俺とリム。俺は数日前に控えた大会に向けて張り切っていた。俺は海で泳いでいた。リムも一緒に特訓に付き合っていてくれた。だが、しばらくして天候が急激に悪化し、嵐がふきそうだった。俺はまずいと思って海をすぐ出た。だけど・・・
「リム・・・?どこだ!!リム!!」
俺は辺りを探したがリムの姿は一向に見つからなかった。この嵐がふきそうな中、海にいたりなんかしたら、いくら水タイプでも沖に流されて溺れてしまう。俺は、最悪の事態を予想しながらずっとリムを探した。空からはポツポツ雨が降り出していた。
「リム~~~ッ!!どこだ!!?返事してくれ!!リム~~!!」
もう天気は荒れに荒れ、予想通り嵐となった。海の波が激しい。そして俺はその時、大きな音が耳を横切る中、かすかな声がしたからそこへ向かってみたんだ。
「ぁ・・ノ・・・ン・・・助け・・て・・」
声がする、確かに俺を呼ぶリムの声。そして声がする方向へ行ってみても、そこにリムの姿はなかった。もしやと思って、海を見てみれば遠くのほうにリムがいた。身動きができなかったのか、ずっとそこから動く事をしなかった。俺は何の迷いもなく、海に飛び込んだ。
「リム!!今そっちにいくから待ってろ!!」
俺は波が激しい海に逆らって泳いでいった。少しでも気を緩めたら流されてしまいそうなくらい激しい波に逆らって。そして、俺がリムの近くに着くと、リムは俺に抱きついてきた。
「ヒック・・・怖かったよぉ・・・アノン・・・」
「大丈夫だ・・・もう俺が来てやったから安心だろ?さ、陸まで泳ぐぞ」
俺が言ってもリムはうつむいて、動こうとしない。俺は疑問に思って、リムの足元を見てみる。だが波が激しくて、いつもは透き通って見える海もにごって見えなかった。
「リム・・・もしかしてお前・・・よし、待ってろ・・・すぐ取ってやるから」
リムが静かに頷くと、俺は海に潜った。幸いゴーグルをつけていたから近くのものははっきり見えた。リムが動かない、いや動けなかった理由は、足に何か物が絡み付いていたから。
俺はリムの足に絡み付いている何かを取ってやった。これでリムの足は動くはず、だけどリムの足はかなり時間が経っていたためか、傷ついていた。俺はその傷のことを気にしながらも水面に戻った。
「ありがとう・・アノン」
「礼は後でいいから、今はとりあえず戻るぞ」
そう俺が言った後、リムは今までの疲労で泳げないらしく、俺に掴まる。
「よし!!泳ぐぞ!!」
俺はさっきよりスピードをあげて泳いだ・・・が、その時だった。後ろから大きな波が押し寄せてきて・・・俺は一瞬の事に驚いた。でも同時にリムを抱き寄せて、守ろうとした。俺達は大きな波に飲み込まれた。海の中で俺達は息も出来ずにいた。だけどリムは離さなかった・・・。俺はその海の中で何かが足に当たり、激しい痛みを受けた。
「ぐっ・・・!!ゴポッ!!」
痛みで口が開き、海水を大量に飲み込んだ。だが、そんな痛みに苦しんでいる場合ではないと思い、俺は右か左かも分からないまま泳いだ。
(気が遠くなってきた・・・だけど今ここで気を失ったらリムが・・・!!)
俺は意識が朦朧としている中、必死に泳いだ。そして気が付けば俺とリムは浜辺に倒れていた。そして目を開けてみれば、俺の顔を覗き込んでいるリムの心配そうな顔が視界に入った。
「アノン!!アノンッ!!しっかりして!!」
俺は意識がはっきりしなかったが、足の痛みでそのうっすらとした意識ははっきりしたものになった。
「ぐッ・・!!俺は大丈夫だけど・・・リム、お前は大丈夫か?」
「うん・・・アノンが守ってくれたから私は大丈夫・・・でも、アノン・・・あ、あ・・」
リムが何を言いたいかは分かっていた。俺は優しくリムの頬を撫でた。
「足が・・・!!足が・・・!!」
そう、さっき俺の足に何かが当たったとき、俺の足は骨折していた・・・。数日後の大会に使うはずの足はとうに使えなくなってしまっていた。でも・・・リムを守りたい一身で、俺はもう使い物にならない足を動かしていたんだ。俺はリムの頬を撫でていた手を、今度は頭の方に持っていき、リムの頭を撫でた。
「お前を守ることが出来たんだ・・・そう考えれば足の一本や二本・・・どうってことない・・・」
「アノン・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!!」
リムは瞳から大粒の涙を零して言った。
「馬鹿だなぁ・・・お前は・・・そんな事で泣くなよ・・・とにかくだ・・・誰か人を呼んできてくれないか?病院行かないと足、より一層悪くしちまうからな」
リムはどんどん溢れ出る涙を拭って、静かに頷き、人を呼んできてくれた。俺はすぐさま病院に搬送されて、治療を受けた。リムも足にうけた傷を治療してもらっていたが、医者の話によれば、一生傷が残ると言っていた・・・。母さんもすぐに駆けつけてきてくれた。でも足以外は何ともないところを見て、母さんは安心していた。ラフとイナも俺とリムの容態を心配して来てくれた。個室に運ばれた俺とリム(リムは運ばれたというよりは俺についてきた)は、ラフとイナに事情を説明した。そして大会にも出れないことを言った。ラフとイナはすごくそれがショックだったようで、少し首を下に下げた後、立ち上がって個室の窓から空を眺めた。
俺とリムもそれに加わって、夜空を見上げた。さっきの嵐は嘘のように収まり、俺は今も眺めている綺麗な夜空を見た。
それからだ・・・俺が水泳をやめたきっかけは・・・足が治っても俺はあの海での出来事を思い出してしまい、水に近寄る事を拒み、恐れてしまった。



そして今に至る。俺の記憶が終わったとたんに、少し時間が遅れた花火の一本目が上がった。今まで話を聞いていたラフはしばらく黙って花火を見ていたが、いきなりこう言った。
「いいんじゃないか?」
「えっ・・・?何がだ?」
俺はいきなりのラフの言葉に少し戸惑う。
「お前がまた泳げる日まで俺は待ってる。もちろんそれはイナも同じだ。リムもな・・・」
「ラフ・・・」
「その恐れがなくなったらまたあの場所で勝負しようぜ!!大丈夫だ!!お前は俺が唯一認めた男だぜ?きっと乗り越えられるさ!!」
俺はラフの言葉に何か温かいものを感じた。俺もまた泳ぎたい。あの場所で・・・ラフと・・・。
「・・・ありがとな・・ラフ」
「おうよ!!」
そう俺とラフが話し終わった後、遅れてきたイナとリムが戻ってきた。
「「あ~~!!もう始まっちゃってる~~!!」」
リムとイナがそう言った。
「だからさっき言っただろ?でもまだ始まったばかりだしさ!!早くこっち来いよ!!」
そうラフが言った後、リムとイナは近寄ってきた。それぞれの大切な人に・・・
「リム・・・?」
「イナ・・・?」
リムとイナは互いの大切の人の横に座り、寄り添ってきた。
「「たまにはいいでしょ?甘えたってさ・・・」」
リムとイナが同時にそう言った。俺とラフは互いを見合った後、こう言った。
「「たまにはいいかな、こういうのも・・・」」
「えへへ・・・」
「ふふふ・・・」
俺達はやりとりが終わると4人で花火を見ていた。それぞれに空で散っていく花火一つ一つが俺達4人を照らしていた・・・。



<第11話 記憶 終>



<第12話 互いの心>
花火はかれこれ30分程やっていた。その間リムは俺に、イナはラフに体を寄せていた。昔は感じなかったこの緊張。でも俺はもう18歳だ・・・さすがに異性は気にしてしまう。しかも今その気にしている異性(ポケモンだが)がこうやって体を寄せているのだから・・・たまったものじゃない・・・(汗)
そんな事を考えながら花火を見ていると、花火が終わったのか、空には何も映し出されなくなった・・・。
「・・・・終わっちゃったね・・・」
「あぁ・・・終わったな・・」
リムと俺はそんな短い会話をする。俺の心は未だに緊張をおさまりきれていない・・・。そういえばラフとイナは・・・って寝てるっ!!?
「こいつらは・・・仲良く寝てるな・・・」
気のせいかイナの顔が何か嬉しそうだ・・・。ラフも何か幸せそうな顔して寝てるし・・・。
「起こすのは二人にとって悪そうだけど、起こしてあげなきゃ・・・ね?アノン?」
「まぁ、それもそうだな・・・どれ、おい・・・起きろ。ラフ、イナ」
俺が体を揺さぶると二人は重い瞼を静かに開けて、目をこすりながら一つ欠伸をして起きた。
「いや~~寝た寝た!!」
ラフは起き始めにも関わらず元気にそんな事を言った。さっきまであの真剣な表情をしていたラフはどこに行ったんだか・・・。
「それじゃあ、花火も終わったんだし帰ろっか?」
イナがそう言った事にみんなが賛成する。とにかく今日はみんな疲れただろうな・・・色々・・。多分俺の予想ではラフとイナも相当疲れてるだろうな・・・。
「よし!!それじゃあ解散!!」
ラフはそう言うとイナをまたさっきのように肩に乗せてさっさと帰ってしまった・・・俺とリムが屋上に残された・・・。
「・・・じゃあ俺達も帰るか?リム?」
俺はそう言って屋上のドアまで歩く。だけど後ろからいつも聞こえるはずのリムの足跡が聞こえない・・・あれっ?と思った俺は後ろを振り返ってみる。
「どうしたんだ?早く帰るぞ~?」
「アノン・・・こっちに来て・・・」
リムは俺に確かにそう言った。俺は疑問に思いながらもリムに近づく。
「どうしたんだよ?どこか体調でも悪いのか?」
俺はリムと同じ視線になるためしゃがみ、顔を近づける。リムは俺の質問に首を横に振る。
「じゃあ、どうしたn・・・んっ・・!?」
俺が話しかけたその時、リムは突然俺の唇を塞いできた。驚いて俺は後ろに倒れてしまう。そしてリムは俺の口の中に舌を入れてきた・・・次に俺の舌と絡めてくる。以前にも味わった事があるようなその感覚に俺は何も抵抗する事が出来なかった・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・ピチャ・・・ピチャ・・・」
息に加え、唾液と唾液が重なり合い音が出始めた。しばらくそのキスを続けていたが、リムはまた突然唇を離す。俺とリムの口からは唾液で出来た透明な橋が掛かる。
「リム・・・いきなり何するんだよ・・・」
「ご、ごめん・・・アノン・・・でも私我慢できなくって・・・」
よく見てみればリムは頬を真っ赤に紅潮させていた。そして口の周りにはさっきのキスでついた唾液がかかっていた。
「お前・・・何かあったのか?」
「さっきトイレでイナと話したの・・・分かっちゃったの・・・アノンとイナがキスしたって事・・・さっきはずっと黙ってた・・・凄く辛かった・・・」
俺は驚いた・・・ばれてしまった・・・とうとう俺の嘘が・・・その内本当のことを話すつもりだったのに・・・こんな形でリムにばれてしまうなんて・・・。
「リム・・・その・・・ごめん・・・その内話すつもりだったんだ・・・本当のこと・・」
「・・・・謝るくらいだったら・・・私と「して」よ・・・私だけ見てよ・・・私は・・・アノンの事、大好きなんだよ!!?アノンを私だけの物にしたいの・・・」
リムは涙をながして俺に言う。リムから流れる涙が俺の頬にかかり、その雫一つ一つが俺に重くのしかかる感じがした。そして俺はいつの間にか体勢を起こし、リムを抱きしめていた。
「・・・リム・・・ごめん・・・本当に・・・俺も辛かったんだ・・・リムに嘘をついているのが・・・」
「アノン・・・」
俺が抱きしめていると、リムは俺の気持ちを理解してくれたのか抱きしめ返してきた。そして俺は静かにリムを仰向けに寝かせた。もしかしたら見張りの人が来るかもしれない・・・でも、今はそんな事は気にしない。リムに対する罪滅ぼしが出来るならばそんな事・・。 



<第12話 互いの心 終>



リム「作者は最近忙しいらしいから12話が少し短くなったって言ってたよ?」
アノン「まぁ、しょうがないだろ?何とかなるって!!」
リム「だったらいいんだけどね・・・」
アノン「でも合作の件はどうなるんだろうな?だいぶ設定は決まったらしいけど・・」
リム・アノン「う~ん・・・」


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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