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夏の日の思い出~last summer~4

/夏の日の思い出~last summer~4

人×ポケです 作 ピカピカ



<第9話 過ぎる時間>
時刻は7時。花火までは後1時間半ほどあるな・・・。そういえばまだイナとラフに何処で見るか言ってなかったな・・・。
俺はそう思って少し後ろにいるラフとイナの方を見た。手を繋いでいたリムも二人を見る。ふと今気づいたのだが、ラフはイナを頭の上に乗せて肩車をしていた。
「何で肩車してるんだ?」
「いや、こうしないとイナの浴衣が汚れちまうから・・・な?」
ラフはそう言うと、イナの方を上目で見る。するとイナが嬉しそうに首を縦に振った。
「案外こういうところで気が利くのよね~~ラフは・・・」
「案外って・・・いつもはそうじゃないって思われてたのか・・・」
ラフはがくっと首を下に向けて、落ち込んでいるように見えた。その様子を見てリムとイナはさっきのようにクスクスと笑っていた。そしてイナがラフに言った。
「嘘だって。からかっただけだよ?ラフはいつも私の事を心配してくれているんだよね~?」
そう言ったイナの顔は、意地悪そうな笑みを浮かべていたが、ラフはそんな事を気にせず(というかイナの顔を見ていないが)顔を元の位置に戻して、いつも通りの顔になった。



「単純」の一言である。



俺がそんな事を思っていると、ラフが俺に話しかけてきた。
「そういえば何で俺達のほうに振り返ったんだ?」
「おっと・・・そうだった・・・。いや実はな、花火を見るところなんだが・・・お前らは何かいい所見つけたか?」
実はもう決まっているのだが、もしラフとイナが先に場所を見つけていたら悪いだろうと思って、ひとまず聞いてみた。(リムも理解済み)そうするとラフとイナは一度互いを見合った後、俺に向かって頷いた。
「そうか!!じゃあそこで見ることにするか!!・・・で、どこなんだ?その場所は・・」
俺が言うと、ラフとイナは再び互いを見合った後、俺に向かってその場所を言った。
「学校だ!!どうだ!?驚いただろう!?俺とイナで考えたんだぜ!!」
しばらくの沈黙・・・再びラフが口を開く。
「・・・あれ?お二人とも?聞いてた?もしかして先に場所見つけてたとか・・?」
ラフがそう言うと、俺とリムは互いを見る。そしてその場で笑った。
「な、何だよ?どうして笑うんだよ!?」
「い、いや・・・実はさ・・・俺達もすでに見る場所決めててな・・・そこが学校だったもんだから、可笑しくて可笑しくて・・・」
俺は笑いを必死に堪えながら、ラフとイナに言った。
「な、何だ・・・そうだったのかよ・・・凄いな、俺達考えてる事同じだったって事か・・・こりゃあ面白いや!!」
そう言ってラフとイナも二人して笑った。まったくもって傑作だ。まぁ意見が食い違わなくてよかったが・・・。
「じゃあ、花火が始まるのは8時半だから・・・まだ時間は・・・って、もう1時間しかないな・・・」
俺は時計を見ながら言った。するとリムがこう言った。
「ここから学校までは10分くらいかかるから・・・また学校で待ち合わせしない?8時15分ぐらいに・・・」
リムがそう言うと、ラフもその意見に賛成するように言った。
「俺はそれでもいいぞ!!何より4人でいるよりはカップル同士でいたほうがいいかもしれないしな・・・なぁ?アノン?」
「な、何で俺に聞くんだよ?」
俺がそう言うと、ラフは耳に口を近づけてこう言った。
「お前だってリムと一緒に居たいだろ?俺だってイナと一緒に二人で居たいし・・・な?」
俺は顔を赤くしていたと思う。本心ではそう思っていたからかもしれない。俺は仕方なく、その案に乗ることにした。ふとリムの方を見ると、嬉しそうな反面、顔を赤くして恥ずかしそうにも見えた。
(もしかして聞こえてた・・・?)
外面は冷静さを保っていたが、そう考えると心の中は恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。そして全員の意見が一致した(イナは最初からオッケーだった)ので、ラフが言った。
「よし!!そうと決まったら早速行くとするか!!いいよな?イナ」
「うん。私はどこでも行っていいよ・・・(ラフと一緒なら・・・)」
最後の方にイナが何か言った様な気がする・・・。まぁ、そこは今は置いておこう。俺は時間を確認するために時計を再び見た。



7時40分・・・待ち合わせの時間までは残り35分か・・・学校まで行くのには10分かかるから残り25分くらいしかない・・・。



俺はそれまでリムと一緒・・・何をしたらリムは喜んでくれるだろうか。
そんな事を考えながらひとまず一同は解散した。



アノンとリムは・・・



リムは俺の手を握って「早く行こう」と催促している。俺はリムの言うとおりにしてついて行った。
「アノン!!何する?」
リムは俺の方を見ながら、聞いてくる。
「ん~~・・・そうだなぁ・・・何かしたいこととかある?出来る事であれば俺がさせてあげるからさ」
俺がこう言えるのはこの日のために貯めた小遣いがあるからだ。欲しいものも我慢して貯めた小遣いを今こそ開放するときが来たからだ・・・。(祭りでそんなに使うとは思えないが・・・)
「本当!!?じゃあね・・・リンゴ飴食べたい!!」
俺は少しがくっとした。と同時に最初にしたいことは食べる事かよ!!と心の中でリムにツッコミを入れておいた。まぁ、いいけどな・・・。
「分かったよ。え~と・・・リンゴ飴の店は・・・あった!!あそこだな・・」
俺はリムと一緒にリンゴ飴の店の前に来た。店の店主はゴーリキーのおじさんだった。
「へい!!らっしゃい!!」
粋のいい声だが、リンゴ飴の店にその声は合うのか・・?俺は少しの疑問を考えながらも、ゴーリキーのおじさんにリンゴ飴を一個注文した。
「毎度あり!!ほら、リンゴ飴!!」
ゴーリキーのおじさんがリンゴ飴を渡してくれたが、注文したのは一個のはずなのに、何故か二個差し出された。
「あの・・・一個頼んだんですけど・・・」
俺がそう言うとゴーリキーのおじさんは笑ってこう言った。
「俺からのサービスだ!!ラブラブカップルへな!!」
「な・・!!お、俺達は別にそんな・・」
「いいからいいから!!受け取っときな!!ほい、毎度あり!!」
俺はゴーリキーのおじさんに圧倒されてつい二個受け取ってしまった・・・。リムの方はというと、顔を真っ赤にしていたが、俺にこう言った。
「よ、よかったね!!サービスしてもらって・・・」
俺は恥ずかしながらもリムに答える。
「お、おう・・・でもカップルだなんて・・・なぁ・・・?」
俺はそう言って、もらったリンゴ飴を舐め始める。リムは少し小さく頷いた後、同じようにリンゴ飴を舐め始める。
(あぁ・・・何か気まずくなってしまった・・・どうすれば・・・)
俺は舐めているリンゴ飴の味も分からないくらい動揺していた。そして、ふとリムの方を見てみれば、舌を満遍なく使って、リンゴ飴の味を堪能していた。俺は何故かそのリムの仕草に思わずドキッとしてしまう。



(変態なのかな・・・俺・・・)



俺は肩を落として、ションボリしていた。自分の不甲斐なさにつくづく情けなくなってくる・・・。つーかリムはあんな事言われて何も考えていないのだろうか・・?さっき少し顔を赤くしただけで、それ以降はずっと何ら変わりなく、平然としている。俺は気になってリムに勇気を出して聞いてみる。
「な、なぁ・・・リム?さっきの事なんだけどさ・・・リムは何とも思わなかったの?」
俺はしゃがんでリムと同じ目線になって聞くと、リムはこっちを見て笑って答えた。
「少し恥ずかしかったけど、あまり気にはしてないよ?」
「そ、そうなのか?」
「うん。だって周りの人から見てみれば私達ってカップルに見えるよ?さっきのラフとイナだってそう見えたし・・・アノンもそうでしょ?」
そういえば、そう見えなくもなかったな・・・確かにリムの言うとおりだ。
「それに・・・」
そう言いかけた瞬間、リムは顔を近づけて俺にキスをしてきた。
「・・・・!!」
ほんの一秒にも満たないキスだったが、それでも俺の恥ずかしさはピークに達する程だった。幸い、しゃがんでいたから他の人には見られなかった・・・(ほっと一息)
リムは静かに唇を離した後、言った。
「こういう事してるんだから、あながち間違ってはいないんじゃない?」
俺は顔の火照りを少し抑えた後、頭に手をやって、やれやれと首を振った。
「お前なぁ・・・少しは場所を考えろよな・・・」
「いいじゃん!!それにいつでもしてやるって言ったのはアノンの方だよ?」
それはそうですが・・・・時と場所を考えろって俺は言ってるんだがなぁ・・・。と言ってもこいつには今何を言っても無駄だな・・・多分。
「じゃあ、次の所行こう?時間もないしね!!」
時間を見てみれば7時50分だった。残りの時間は15分ほどしかない。
「分かった。じゃあ行くとするか・・・」
「うん!!次、私金魚掬いやりた~い!!」
「分かった分かった・・・じゃあ行くか・・・」
そう言って俺とリムは人ごみの中を手を繋いで、二人して歩いていった。



<第9話 過ぎる時間 終>



<第9・5話 過ぎる時間(ラフとイナver)>
アノン、リムと別れた俺とイナは、人ごみの中に紛れて歩いていた。イナは俺の頭の上に手を乗せてはしゃいでいる。
「おいおい、あんまりはしゃぐなって・・・落ちるぞ?」
俺が言うとイナも言い返してきた。
「そこを落ちないようにするのがラフの役割でしょ?」
「確かにそうだけどさぁ・・・」
「だったらしっかりやってね?」
俺はため息を一つついて、仕方なくその役割を全うする事にした。しばらく歩いているとイナが俺の頭をポンポンと叩いた。
「んっ?どうした、イナ?」
俺がイナの方を上目で見ると、イナはある一点の方を見ていた。俺もそのイナが見つめている先を見てみる。
「お、お面屋?・・・もしかしてイナ、お面欲しいのか?」
俺が言うと、イナは、はっとして俺にこう言って来た。
「ば、バカ言わないでよ!!わ、私がそんなお面を欲しがると思う!?」
口調が明らかタジタジじゃねぇか・・・。分かりやすいなぁ・・・昔から。俺はお面屋の方へ向かった。
「ら、ラフってば!!本当にいらないって!!」
イナは俺の頭の上でジタバタしていた。さっきから落ちるって言ってるのに・・・。俺はお面屋のおじさんに挨拶しといた。
「おう!!ラフじゃねぇか!!何だ?イナとデートか!?」
それを聞いたイナは顔を真っ赤にする。(ラフは見えておらず)もちろんラフは冗談だと思っているので顔は赤くならなかった。
「そんなんじゃねぇよ。お面買いにきたんだけどさ・・・イナ?どれがいい?」
「わ、私は本当にいいって・・・」
イナは最後まで意地を貫き通すな・・・このままだと・・だったら・・・
「じゃあ、俺が買おうかな?おじさん、このお面一つ頂戴!!」
俺が指差したお面を取ってくれたおじさんは「ほれ」と言ってお面を受け渡してくれた。
「あんがと、おじさん!!店、繁盛するといいな!!」
俺がそう言うとおじさんは手を振ってくれた。俺もそれを振り返す。
「ほれ・・・」
俺は買ったお面をイナに渡す。
「え・・・?」
「俺が被ってたら目の前が見えないからな・・・イナが持っててくれないか?」
イナはしばらく黙っていたが、静かに頷いてお面を受け取った。
「被っててもいいぞ?」
俺がそう言うと、イナはまた静かに頷いてお面を少しだけ被った。
「ありがと・・・」
イナはラフに聞こえるか聞こえないか分からないギリギリの声でお礼を言った。イナもラフがどうしてお面を買ったかが、分かったから・・・。
「イナ?少しだけ道から外れて休まないか?」
ラフがそう言ってきたからイナは静かに頷く。ラフはイナの了承を得ると、人ごみの中を抜け出してあまり人通りの少ない道に出た。ここは大きな道だから、こういう所も少なくない。ラフは道の隅っこにある椅子に座った。イナはラフの頭から降りた。
「ふ~~・・・少し疲れたなぁ・・・」
よく見ればラフは結構な汗をかいていた。ラフはその汗を服で拭き取っていた。
「もしかして、私が重かった?」
イナがいきなりそう言ってきたもんだから、ラフは少し驚きながらも笑った。
「何言ってんだよ?あんな人ごみの中歩いたら誰だって汗だくになるって。イナのせいなんかじゃねぇよ」
そう言ってラフはイナの頭を優しく撫でた。(少しお面が邪魔になったが・・・)少しだけ手は湿っていてイナの毛を少しだけ濡らしたが、イナはそんな事は気にせず、ラフに頭を撫で続けてもらっていた。しばらくしてラフが撫でるのをやめると、ラフがこう言った。
「そのお面、イナにやるよ!!どうせ、俺は使わないだろうし・・・」
「えっ・・・いいの?」
イナは少しだけ戸惑う。さっきあんなに否定していた自分が貰っていいのかと・・・。しかしラフはそんな事も気にしないで言った。
「いいっていいって!!俺が持ってるより、イナが持ってたほうがそのお面も幸せだろうしな!!」
そう言ってラフは笑った。イナも少しだけクスッと笑った。そして
「ラフ・・・・」
「んっ・・・何だ?イn・・・」
ラフがイナの名前を呼びかけた瞬間、イナはラフにキスをした。人が少しいたが、イナはお面でそれを隠してラフに短いキスをした。
「い、イナ・・・な、何して・・・」
キスが終わって混乱するラフだったが、イナは冷静に笑ってこう言った。
「これはお面のお礼ね?これくらいしかラフにできないから・・・」
イナは恥ずかしさが後から込み上げてきたのか、お面で顔を隠した。落ち着いたラフはイナに言った。
「俺はお前と一緒に居られるだけで充分なんだけどなぁ・・・」
そう言った後、ラフは椅子から立ち上がり再びイナを頭の上に乗せた。イナはラフが言った言葉があまりにも恥ずかしくて、ずっとお面で顔を隠していた。
時刻はすでに8時を回っていたので、ラフとイナは一足先に学校へ向かうことにした・・・。
<第9・5話 過ぎる時間(ラフとイナver) 終>


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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