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命の尽きと命の造り

/命の尽きと命の造り

まえがき
!エーフィ♀×キノガッサ♂
!♀側の意志による♂を操って逆レ
!R-18要素
!受精・孕ませ描写
を含みます、苦手な方はお気を付け下さいませ。

はじめまして、こちらにははじめて投稿させていただきます「特ルリ」と申します。
まだ不慣れなところはございますがもしよろしければ拙作をお楽しみいただければ幸いです。
御読みいただいた全ての方に感謝を、ありがとうございます……!
……果たして自作品で皆様に表現したいことが伝わるか些か緊張しております、先人の皆様やwikiを管理してくださっているお方にも感謝を!









「命の尽きと命の造り」

―もしも自分の強権で以てして、あらゆることを意のままに出来たら。
その様なことを考えたことが無い者は、おそらくこの世にいないであろう。
その様な者が現われることを恐れない者も、そしてまた同じく。

―自分は。
―そういうもの、だと思われていた。

「……そのわざで望みの奴を眠らせて……あとはどうとでもなるじゃあねえか、全て思いのままだろう?」
「羨ましいぜ、それがあればきっと……好きな奴にも『既成事実』で迫れるんだろ?何人食ったんだ?」

お尋ね者ではあるが、探検隊の仕事で偶然一緒になったグラエナやエモンガはそう云う。
―やめてくれ。
―僕は「そういうの」じゃない。
―「そういうの」じゃないんだ。
「なんでえ……そんなことはやってないっていうのか?勿体ないぜ……くさタイプと、眠らないやつ以外は意のままだろうに」
「誰にもなびかないようなミミロップちゃんだって無抵抗にできるだろうに……なあ」
牙が立派に揃い、開かれるその灰色の口を見ると―多くの嫌悪と共にほんの僅かな同調が心の中で起こり。
それがまた、彼の心を乱すのだ。
―僕は、「そういうの」になりたくなかったんだ。
―なりたくなかったから、「そうした」んだ。
―キノガッサのそういったイメージが、凄く憎かったから。
―誰も好きにはならないし、誰とも交わりはしないし……そして、進化する時に「そうした」。
―それでも、自分の本能は種族とは関係なく。
―このまま誰とも交わらずに終わってよいのか、と問うてくる。
―自分の代で子孫の連鎖を終わらせていいのか、と苛んでくる。
ゆえに、彼は矛盾の園。
ゆえに、彼は苦境の夢。
ただその尾を高々と夏の空にあげれば。
悪の彼岸も、善の此岸もすぐそこにある、積乱雲の中。






「『キノコのほうし』を覚えていない?……それでこの依頼は達成できるのですか?」
「僕はそれを覚える前に進化しました……それでも、それ以外のわざはほかのかくとうタイプと遜色ないほどに行えます、護衛の仕事もお任せください」
―この説明をするのは何度目で。
「……少し不安ですけれどお願いしますね、でも……変わったキノガッサさんもいるものですねえ……?」
―こういったニュアンスのことを、依頼主から言われるのは何人目でしょう。
思わず、持たざる茸はその傘を帽子のように目深にかぶりたくなる。
―やっぱり、キノガッサは。
―「そういうもの」なんだ。
―『キノコのほうし』ありきと思われていて……それでどうとでもなってしまう、と思われているんだ。
―祖父の言っていた通りだ。
―くしくも、護衛の場所まで同じ……

<<そうじゃの……『キノコのほうし』は、覚えていないことで苦労したもんじゃ遠い遠い、長い長い昔。>>
<<お前と同じ探検隊だった頃……依頼主の護衛をしていての、切り立った高山地帯に来ておった>>
「そこには1本だけ異様に曲がりくねったオレンの木があって、それ以外は荒涼たるものじゃった……か」
「……どうかしましたか?」
「ああいえ、昔祖父が来ていた場所と同じのようでここは……血は争えないんだなあと」
たわいもない世間話の間にすぎるのは、節くれだって曲がりくねる奇妙なオレンの大木。
<<そこで儂はおびただしい数のやせいポケモンに襲われた……当然『キノコのほうし』を覚えてから進化、などと悠長なことは言っていられなかった時代、依頼主を独りで守り切るのは……とても不可能に思えた>>
―話を盛っているのだろう、と思ったものだ。
―今の瞬間までは。
「……下がっていてください!幸い相手はあくタイプ……かくとう技でなんとでもしてみせます!」
「だ、だ、大丈夫なんですか……?お任せします!ありがとうございます」
依頼主と彼が抱えている商品を守るように勇ましく躍り出たはよいが……ゆうに1ダースを超えるその数に、どう一人で立ち回れるというのだろうか。
その場にいる者をすべて眠らせてします『キノコのほうし』があるならともかく。
―きっと悪意なく、ただの心配として依頼主の眼はそう言っていて。
―改めて自分の選択に、少し後悔までしてしそうになってしまいます。
―だって、僕には祖父のような幸運は……
<<……その時じゃった、とてもよく通る凛とした声がした>>
「……大丈夫?助太刀するわよ!」
<<大丈夫?助太刀するわよ!という……儂は思わず、天を仰いだよ>>
―僕は思わず、天を仰いだ。
―中天に輝くその太陽の彼方。
高台より、ひらりと紫色が飛び降りたのだから。
<<その子は……エーフィじゃった>>
―そのポケモンは、エーフィだった。
<<目の覚めるような紫色で、はっとさせるようにしなやかで、毛並みはビロードのように柔らかい……今でも、思い出せるものじゃ>>
―自分の傍に降り立ち……光を蓄える毛並みと、しなやかな尻尾を高くあげて……僕一人では対処できないやせいポケモンに、果敢に向かってゆく紫色だった。
<<気づいたころにはやせいポケモンは逃げ去っていた……そして何かお礼を言う前に……儂をしばらくじっと見つめてから無事を確認すると、そやつもひらりと飛び上がって谷底へ消えていったのじゃ……あれは、もしかすると……夢じゃったのかの>>
「……」
―……こんなことはあり得ない。
―余りの事に立ち尽くす依頼人以上の衝撃を受けて、その身に根が張ったように動けなかった。
そのエーフィは。
その現実性のなさと体躯故に……いっそキノガッサに性的な興奮さえ与えていたのだから。
「……もしも、あなたが」
思い出の通り……大きく跳躍して谷底に消える……その直前に彼女は言う。
彼の耳元で、ひそやかに。
「あなたが私を「終わらせてくれる」のなら……今晩、谷底まで来なさい 梯子を掛けておくわ」
……後はただキノガッサの前にあるのは。
飛び去った幻の後の……谷に吹く風だけ。
                 *




「……ようこそ」
その目は、一体何を見る。
その尾は、何のために歓迎の意を示す。
全ては無明に、蒙昧の中にある。
世界中の海より尚深いかと錯覚する、風吹く谷底。
そこには一軒の、おとぎ話からでてきたかのような木造りの家があって。
梯子を決死の思いで降りてきたキノガッサを歓迎するかのようにそこにそのエーフィはいた。
「……私をようやく終わらせてくれるのね、あの子の子孫が」
「……子孫……ですか?」
―出された飲み物を大人しく飲むと、少しきつい香辛料の香りが僕の嗅覚をついた。
木造りの卓の向こうでは……昼間と変わらぬ、相手を見透かすような目つきをしたエーフィが一匹。
まるで世間話でもするかのように、物騒な言葉を発する。
「あなたの……父上?おじい様?どちらか知らないけれど、年数なんてもう覚えていないけれど……そのキノガッサに、私は一目ぼれした」
まるでたわいもない話かのように、淫猥な言葉を発する。
「でも彼は……私を見て欲情しなかった、私の膣内に精液を放って、自分の子を孕ませたいと思わなかった」
「……えっ?」
「あなたの眼の中には、確かに私を見た時に一目惚れのような……いやもっと強い獣欲のようなものがあって」
がたり、と大きな音が背後からすると、いかなる原理でそうなったのかその場は藁の寝床へと変わる。
「それを否定したいと、それを否定すべきと……」
「そう考えて、きっと『キノコのほうし』も覚えなかったのでしょう?」
―畳みかけるようにそう言う彼女に、まるで時代さえ超越しているかのようなエーフィの異常性に恐怖さえ覚えて。
―ごちそうさまでした、もう帰ります……と扉を引こうとしても。
―その扉は決して動くことはない。
「誰かに必要とされ、認められたい……その誰かの全てを得たい……そんな気持ちを、自己の能力さえ押さえつけ、抑圧してきたあなたこそ」
「……私を終わらせるのに相応しいのよ、キノガッサさん」
―僕には、最初からこのエーフィさんから逃れる手段などなかったのかもしれない。
獲物を狩る肉食獣のように、彼女は荒々しくキノガッサをその場に組み伏せた。
……マグカップから、つんと来る香りの赤い液体が床に零れ……そうして静かに板にしみこんでゆく。




「……ふふ、お薬の効果でとても聞いちゃいないでしょうけれど……っ……す、少し、話していいかな……」
押し倒された者と押し倒すものが逆しまになっている、夜の帳。
ずちゅっ、ぬちゅうっ……と激しい水音だけが響くそこで、快楽に言葉を途切れ途切れにさせながらエーフィはささやく。
「わたし……ねっ……ん、ふああっ……生き物の役目を果たさないと、終われなかったの」
全ての箍(たが)が外れたように腰を乱暴に押し付け、ビロードの毛並みが乱れるのもお構いなしに目の前の雌を犯す彼がきっと我に返った時……覚えていないとしても。
「わたしは……好きなポケモンを幼馴染に取られて、願っちゃったの……子孫を残さないから、未来なんて憎いから……永遠の命を、んっ……く、くれって……」
その目が映すは、生命が何度となく繰り返してきた繁殖の儀式。
それをそういったものから限りなく遠いキノガッサに無理やり行わせている事に、サディスティックなものに近い快感を覚えるが……
―きっと「その気持ち」も、私と一緒に消える。
―ようやく、私は終わることが出来る。
もう何十年ぶりかもわからない発情期を迎えたエーフィの膣内は、雄より受ける刺激で排卵し……子を成す準備を整えていた。
それを彼女は知ることはなくても……直感で分かる。
「永遠に生きるなんて……誰にも愛されないまま、永遠に生きるなんて」
―湿ったものを打ち付ける音と、興奮するようにぴんと立つ尻尾がいっそ愛らしい。
―そんなことを今想っても、全ては手遅れだけれども。
―全ては消えるのだけれど、愛など空しいのだから愛のない子作りを求めたのだけれど。
「そんなことは―」
―ただ、空しいだけなのよ。
そう言おうとした言葉を塗りつぶすように。
「エーフィさん……エーフィさんっ……!!は、孕めっ、僕の子を産めっ…‥!」
ぶびゅうううっ!びゅくうううっ!どぷううっ!と、信じられないほどの量の白濁がエーフィの膣内に注がれる。
腰をぐっと押し付け、息を切らせたキノガッサから。
「……ふふ、言われなくても……っ、ふ、ふあああっ……!!」
―言われなくとも、貴方の赤ちゃんを、タマゴを産むわ。
―きっとポケ生最後の快楽として、ポケ生最後の窮極の愛として。
―私はそう言いたかったのでしょう。
だけれど代わりに。
―私ね。
―そもそもとくせいが「マジックミラー」なのよ。
―『キノコのほうし』もたとえ覚えていても跳ね返っちゃうし……どう頑張っても私を犯すなんて不可能だったはずよ。
―そんな雌の子孫を残せることを……光栄にね?
―そんな言葉を、残してゆく。
―徐々に意識が戻りつつある、彼へと。




「……見つけたんだね」
夜の帳、エーフィとキノガッサのその遥か彼方。
眠ったままの星の子が、眠り続ける星の子が、それを理解する。
「『それ』を見つけたんだ……よかったね」
「だったら、エーフィさん」
エーフィの卵管内で……放たれたキノガッサの精子が卵子に群がりつつあることも、理解する。
直ぐにそれがタマゴになるであろうことも、また。
「これは……命のおまけ」
「……たまにはズルしても、許されるでしょかがやきさま?」
ジラーチの前に光り瞬く光輪が現われ。
それは頷くように瞬きを強くする。
「真実の愛……なんて大げさなことじゃなくてもそれに近いものを……命の果てに見つけたんだ」
「これは「おまけ」……ボクとかがやきさまからの大サービス……どれくらい生きられるかは自分次第……限りある命を、大事にね」
光からの許可を得たことに満足したかのように、星の子の第三の眼は開き。
そうして、まばゆい光の柱を―
一軒の家に向かって、放った。





―数日後。
「……えらいべっぴんなエーフィさんだな、やっぱりアレで好き勝手して……か?羨ましいなオイ!!」
「……え、ええまあ……そんな感じ、です……ヨイさんとの出会いは」
「かなわないわねー、無理やり迫ってきてさあディーナくんったら」
そうからかうグラエナに、『キノコのほうし』こそ使っていないが言ったようなことをしてしまった故に気まずそうに微笑むディーナと。
依頼の掲示板の前で大事そうにタマゴを抱えるヨイが意地悪そうにそういうのだが……
それはまた、「おまけ」のお話。



                                                                               了










あとがき
拙作をここまで御読みいただきありがとうございました、あとがきを先に読むタイプのお方はネタバレにつきUターンを推奨いたします。
キノガッサって進化してしまうとキノコのほうしを覚えなくなるのですよね、本編の第8世代以降に登場すればきっと彼も思い出せるのでしょうが。
生命とは次世代に命を残すために存在している面もあるでしょう、しかし……きっと、それだけではない。
それだけのために命はあるにあらず。そう信じたいです、人間でない架空のものが好きな故にそれが不可能な作者自身からしても。
だから、きっとジラーチがこうした理由は……新しい生命のためだけではなく―
御読みいただいた全ての方に感謝を、ありがとうございます!
よろしければコメントでご指導ご鞭撻、あるいは応援を頂けましたら幸いです。
                                                                            特ルリ

コメント返信
>wikiに投稿していただけるなんて……! ありがたいばかりです。
おじいさんの語りと目の前で起こっている光景のシンクロが小説らしい表現で描かれていて楽しいですね。まるで副音声のように聞こえてきました。
ポケ一倍子作り願望の強いキノガッサくんの、自制してひた隠してきた欲望を手解かれてからの豹変っぷりが凄まじい。ふだん物腰柔らかな雄が「は、孕めっ、僕の子を産めっ……!」なんて獣欲むき出しに迫るのわたしちょう性癖なのでなんというかありがとうございました……!

こちらこそ拙作をお読みいただきありがとうございました!時代を超えても未練や執念は変わらず、変わらないのは自分だけ……と思っていたエーフィからすれば……変わらなくても受け継がれるものを見ていたのかもしれませんね彼女はその時。
こういう穏やかな子が乱れるのって素敵ですよねって……それが人工的に理性を飛ばされた故のものであるにせよ、目の前のそれを望む雌に自分の子孫を残したいと、自分の全てを託したいし託されたいと思う気持ちは素敵なものです、と思うのです 性癖に合致しましたか!凄く嬉しいです……!


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  • wikiに投稿していただけるなんて……! ありがたいばかりです。
    おじいさんの語りと目の前で起こっている光景のシンクロが小説らしい表現で描かれていて楽しいですね。まるで副音声のように聞こえてきました。
    ポケ一倍子作り願望の強いキノガッサくんの、自制してひた隠してきた欲望を手解かれてからの豹変っぷりが凄まじい。ふだん物腰柔らかな雄が「は、孕めっ、僕の子を産めっ……!」なんて獣欲むき出しに迫るのわたしちょう性癖なのでなんというかありがとうございました……! -- 水のミドリ
  • 独特のテンポで進んでいく地の文と会話文の語りにそれこそいつの間にかありえないエーフィの幻に惑わされていくような錯覚を覚えました。紛れもない現実なのに深層心理を見透かされて獣性を曝け出し、まるで夢の中で交尾しているような不思議な感触。

    だからこそ最後にディーナくんとヨイさんが実際にタマゴを得たのが印象的です。 --
  • 拙作をお読みいただきありがとうございました! 文体は一種自分ルールと言いましょうか、独特のものがあると思います自分自身でも……連続で「」を使うなどがどうしても不格好に見えてしまいまして、というメタ的な事情はともかくといたしまして……そうなのですよね、生きるという事への意味を失ったと「思っている」彼らにとってはとても夢心地であり……しかしだからこそ夢ではないものであり、タマゴという具体的な形とハッピーエンドで収束する そういうものなのだと思っています勝手に……! -- 特ルリ
  • 作品、読みましたよ!
    自分のあり方に思い悩むキノガッサの姿や、生き物としての終わりを迎えられないエーフィの苦しむ姿など、それぞれが感じている苦痛の描写がとても素敵でした!
    最後は無事に幸せを手に入れることが出来た二人。どうか末永く幸せに暮らしていただきたいです -- てるてる
  • 拙作をお読みいただきありがとうございました!
    自分というものへの答えの出る事のない悩みというのは、ある意味においてこの作品を象徴するものであるかもしれなくて……そうであるからこそせめて作中のふたりには幸せな結末を迎えてほしかったのですって思います きっと幸せにやっていますし今日もグラエナさんにからかわれている事でしょう! --
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Last-modified: 2020-10-13 (火) 17:05:18
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