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否定

/否定

書いた人GALD


兄、姉、私よりも先に生まれてきた先駆者達、もうみんないなくなってしまった。どれぐらい死んだのかは記憶にない。
だが今、妹、弟といった後継者達がいる。昨日はざっと5といったところだったが本日で9ぐらいにまで増えた。
そろそろ私が消える番なのだろうと、なんとなく察しがついていた。先に生まれてきたものが先に死ぬ、当然の摂理。
生きるために何かを殺して、生きるために殺される、自分が残るか犠牲になるかの二択を迫られる日々にようやく終止符が打たれる。
別になんとも思うことはない。感情と呼ぶようなものの意味は理解しているが、存在はしていない。
日々に量産される存在の中における一個の個体が私なだけな話であり、私一人が欠如したところでなんの支障もなく組織は循環していける。
ここの社会において、それぞれは違う容姿を持ち違うことができ、それぞれにしかない固有の能力が備わっていた。
しかし、共通して戦いそしてそれによって生きる選択肢を手にして言っていた。
それならば勝敗はどちらがどうなるか、コインを投げるようにどちらにもわからない。能力の良し悪しや相性もある中で、確実に先代だけが刈り取られる理由にはつながらない。
原因は明白だった。明らかな段差が戦う両者に存在するのである。普通の話なら戦って経験を積んだものが有利であるというのが常識である。
その壁がもしなくなるとすれば、一体どうなるのだろうか。お互いが互いに同じ経験も持ったとすれば、それは公平な戦いになるのだろうか。思考の差や性格の差が行動に差を生み出すのではないのだろうか。
私たちの属する集団に、個性といったものなどは存在せずに単一化されている。それゆえに、正確的にある行動に偏るということはない。
それでもある状況下に置かれた時に行動方法がいくらかあるとするなら、全員が同じ選択をするのだろうか。そんな疑問を解決するために私たちが戦わされているというのは随分前の話である。
そんな問題は私が生み出される前に解決され、様々な分岐がデータに圧縮され今私たちにインプットされている。現段階ではどれだけ完璧に戦えるようになるかを求められている。
そう、先駆者の経験を後者に与え、そして後者が戦いまた新しく分岐していく。そんな何万選択肢がある中で、それの積み重ねがどこに収束するのかを探しているのである。
ここで、経験の差というものが存在しないのは明らかとなったわけだが、それでは一体何が差を生み出しているのか。簡単な話である。
先駆者は複数体いるわけで、同世代に生まれた先駆者達は互の経験を共有することはできない。しかし後者はその世代すべての経験を飲み込むことができる、これが差である。
しかし、いずれはこんなループもありとあらゆる選択を全て行ってしまえば新しく学ぶ知識もなくなり、後者と先駆者には差がなくなり、結局は運といえば変ではあるが先駆者が勝つことだってあるだろう。
その結局の結論に至るまでの過程に生み出されたのが私である。こんな答えの見えない問題に、いつ答えが訪れるのかは知らないからこそ後者に対しては勝算が見いだせない。
故に私は死を覚悟しているのである。私がもしその生き残れる分岐点になり得るとするなら、それは一体どれぐらいの可能性なのだろうか。
考えて答えが出るのならこんな非効率な犠牲のつきまとう実験に頼ることもなくなるのだろうか。出ない答えを探ったところで無駄である。
戦いに集中し、少しでも進展に貢献することが使命である以上、別にこれといって心残りもない。感情という言葉を素敵るのが最善だと判断された。
さて私という存在個体の紹介が抜けていた。それがなければ私という存在が何を描いてきたかを説明することができない。
もともとコリンクという個体から始まった。上半身は青色で下半身は黒色と、体の一定の場所にラインが引かれ、尻尾の先は黄色く四方向に尖り、目は黄色とほかの種との違いはあったがコリンクの個体数が多く、無個性であるために結局は誰がいつ死んだか私の中にそんな情報はない。
そこから何匹が糧になとなり、今の私が導きだされたかは知らないが分岐が起こりコリンクという種は先へ進んだ。
依然とベースは青色と黒色であることに変わりはなかったが、コリンクの時では前足に黄色いラインを一本しか巻いていなかったのが、二本ひかれるようになった。
頭の青色位部分を取り込むかのようにして黒い毛で頭の側面から背面を多い、後頭部の毛はピンと立ち重力に引かれたものは三角系を描くように広がった。
全体的に体格も大きくなり、一層戦闘に強くなる道へと進むことになる。しかし、これは別にコリンクだけに限る話ではない。
最初に分岐を見つけ出したのは虫のような個体だったとデータにはあるし、最近では幻想動物のように扱われたドラゴンのようなものが高みへと駒を進めたともある。
結局私の種にどれぐらいの期待があるのか、標本として飼われている程度しかないのはわかっている。経験を積ませるためのサンドバック、餌のような存在である。
そんな中で存在意義を叫んだところでかすれて聞こえるのが虚しいが結末で、だから今もこうして対峙しているのである。
真っ白な部屋の中で、どこまでも白が続くかのような床から天井壁までが白で、無。ただ一箇所だけガラス張りのような壁があるのを覗いて。
相手はこちらよりも体格は大きい。大きな翼を有しており、最近データにあるドラゴン型のような容姿。全身はオレンジ色で、尻尾の先に炎を灯している。
翼を持っているというのなら、電気である私に対しては不利であるかのせいもあり、まだ捨てたものではないのかもしれないが楽観主義になった覚えはない。
何の意思もなく、ただ機械のように私を瞳に移しても尚、鋭い目つきから恐怖を覚えることはない。
鋭い爪が鈍く光るも、危険性が認知出来るだけで、痛そうだとは思わない。その爪が赤色に鈍く光る、そんなビジョンが見えるような気がする。
ただ戦うことが義務、そんな課せられた理由を背に、私はうなった。本来畏怖を抱かせる牽制も、違和感なく受け止められていまっている様子。
効果があったのかなかったのか、真偽を確かめる前に足は進んだ。どうするか、相手の能力がわからない以上はとりあえず食らいつこうと飛び込んだ。
白い床から黒い塊が離れるまでの時間はそこまでない。俊敏に飛び出し軽めに先制を決める、そういうヴィジョンが見えていた。しかし、そんな映像が目に入るのを、映写機の光を遮るかのように大きなしっぽが横から私という個体を払い除けた。
あと出しのような反応の良さを知るまでには大きく距離をはなされていた。遠い、能力さを語るかのような間合いを作り出される。尻尾を時計回りに降ったドラゴンはそのまま回転に任せて尻尾を一回転振り切ると、二回転目に入ると同時に飛び上がった。
大きな足を前に出してこちら側へと急速に直線の進路をたどる。全体重をかけた一撃が私へ踏み落とされる。
数秒遅れて相手の行動を読みそこねていたら、右に転げ込んだとしても体の左側が持って行かれていた可能性は十分に存在していた。床のタイルの破片をかぶりながらも、振り払う時もなく私は大きく噛み付いた。
この詰められた間合いを生かさない訳も行かなく、恐怖が立ちはだかることのない頭は果敢に飛び込んだ。
完全に相手の側面を取った。背後とは言えなくても、反応が正面の時より遅れるのは明白である。後ろ足でタイルを砕く気持ちで蹴り出し、前足を大きく伸ばして獲物を抑える。
そんな未来を軽くまたいでしまうような足取りで、体を30度ほどひねり片目で私をはっきり捉えると拳を私の顔面に叩き込んだ。
ただの拳ではなくて、尻尾のように燃え上がった握りこぶしのストレートが叩き込まれる。跡形が焼き付けられるような暑さとで拳をめり込まされて地に落ちた。
刻印のごとく、大きな痣を焼き付けられてそのまま痛みにもがいていればそれは死を受け入れるに等しい。幸いにも物理的な攻撃であるので私の初動のかいあってダメージはすくなくはなっているはずだ。
そう、まだダメージは少ない動けると、立ち上がることでそう自分に暗示をかけた。そんな懸命な様に相手は感動を覚えるわけでもなければ、呆れているわけでもなく、ただこちらに向いて冷たいといえば語弊があるような、何もない視線を合わせる。なめているわけでもなくて立ち上がるのを待っている。
接近戦が駄目なら、自分に何も手立てがないというわけではない。ただ、種族柄接近戦に持ち込む方が戦いやすいというだけであって、距離を置いて攻撃できないというわけではなかった。
大きく息を吸い込み、体の中にエネルギーを収束させて、吸い込んだ空気を叫び声に変えて吐き出してエネルギーを拡散させる。目で捉えれるほどの黄色い衝撃波が数本一直線に進ませる。
速度はそれなりにあって、棒立ちのような無防備な相手にかわせるタイミングなどやれるほど遅くはない。図体が大きいことがここに来て裏目にでたと、ダメージを期待した。
変にかわそうとしたところで当たることに変わりないと、相手も察したようで腕を十字にして身構え更にその上に背中の大きな翼を重ねて二重にシールドを展開した。
二重といっても厚いのは一枚目だけで中は大したことはない。翼にどれだけの損傷を与えれるかが問題になっている。煙が落ち着き、徐々に影が映し出される。
影ははっきりとその場で形はとどめており、倒れている様子も伺えない。しかし、まだ傷をつけられていないという根拠も絶たれているわけではない。
希望にすがるというのには語弊があるが、目標の生存が確認される限り戦いも終われない。薄暗い煙に飲み込まれていた中から、オレンジ色が部屋の照明に照らし出される。
現れたオレンジの翼は先端から全体にかけて焦がされたような黒い跡が出来てはいるのだが、肝心の顔や内側は閉ざされたままで外傷しか目視できない。
そして幽閉された空間が光を受け入れたとき、大きく広げられ内側の紺色が見せびらかされる。翼の開いた勢いで周囲の煙は弾き飛ばされ、獰猛な龍の頭が叫び声を上げる。
咆哮による威圧で数秒固まった瞬間、そんな僅かな隙間に不自然にも煙を弾いた風は翼を未だに取り巻いておりそのまま翼で空を扇いだだけだった。研ぎ澄まされた空気は鋭利で容易に私の肉を切ってかかった。
刃の風に吹かれた時には間に合わない、風圧に押さえ込まれながら周囲から切りかかられる。切りつけられるというよりも、切り抑えられている感じから抜け出せない。痛さもだんだん薄れてきて、切られているのにそうでないような気がする。
薄れていく感覚、体が遠ざかるような、倒れている姿が遠目に映るような、終止符を受け入れる時が来たのだろう。幸いにも風との相性もよく、電撃を微量ながら体から放出しているためにダメージの軽減を図れている所ではあるんだが、抜け出せない分なぶり殺しにされている。
このまま意識を手放せばこの肉体にも手を振ることになる。そう、ここで終わりなのである、長い戦いもここで終止符を打つことになる。役割をもう終えて、この世界にもお別れを告げて楽になれる。
……死にたくない。
なんで、どうしてそう思うの?って自分に聞いてもわからない。与えられたことだけをこなせばいいだけなのに、そんな存在なのに、どうしてそんな感情を覚えるのか。
……そんなことは俺が否定する。
わからないけれども、生きたい。それだけが今の明白な答え、それに導かれるように立ち上がろうとした。
失われた体力がなんだかみなぎってくる。まだ翼は空気を切り続けているのに、風圧に抗うかのように立ちがあった。
自分が自分でなくなるような、それでも意識はちゃんと生きている。立ち上がるとなんだかいつもよりも視線が高くなった、もちろん地面に並行している。
そんな視野を歪める吹き荒れる風に向かって、大きく吠えると思っていた以上の電流が空気を裂いて変化した声に驚くよりもそちらに気が刈り取られてしまう。
風を引き裂き、刃を砕く雷撃がなりびく。衝突と言えば、あまりに一方的に雷撃が炎龍の下までたどり着いてしまう結果に終わる。
相性を考えれば当然のことなのだが、先程までの差が相性などいうものを無視するかの如く理不尽なものだったのを考えれば今の目の前で起こっていることが双方腑に落ちないのも無理はない。
猛威を振るった鋭利な風を刃こぼれで収まらずに、砕いてしまったために威力は軽減はされてはしまったものの、先ほどのようにカードされた時よりもはるかに効果的なダメージを叩き出し、炎龍は初めて声を出した。
そののけぞった時間を無駄に投げ出すつもりもなく、俺は床をけった。俺は生きる、しにたくはない、それが今の分岐を見出した答えがこの風に吹かれるような鬣を与えた。
「後者に食われるのが世界だというのなら、それを俺と言う存在が否定するッ!」
口元にに電撃を密集させて、牙を光で輝かせた。体の反応が間に合わない炎竜は炎を生成するまでの時間が足りない上に、羽ばたかせても風で打ち落とせる自信がなく躊躇いを覚えた。
そこで反撃にはしっぽで叩き落とすというあがいた選択に甘えてしまう。そんなことにも怯えずに光が走る……。
「私が最初じゃなかったんですね……。」
「は?何言ってるんだお前は。あれは作り話だぞ。えーがだ、映画。」
「え?私はてっきりあんな非道なことをしていたのかと思っちゃいましたよ。」
ふぅ、と不安から安心を得た巨大な犬はため息で胸を撫で下ろした。流石にそこまで信用されてないと思っていなかった男性は逆にショックで沈んでしまった。
「あのな、俺はあんな虎を作った覚えはないし計画した記憶もない。想像の世界だ。」
「いやー安心しましたよ。私もてっきり何万と殺した上に成り立ったものなのかと心配で……。」
「心配するな、そんな血なまぐさい実験に俺は手を出していない。」
そう言って二人は並んで館内から出た時に受ける日光に、いつもよりのまぶしさを覚えた。


何となくこう言うおちがやってみたかっただけなんです。


何かありましたらどうぞ。

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  • まさかこんなオチだったとはww  でも、「後者に食われるなら~」のセリフがかっこいいと思いましたー。
    ――ぱせり ? 2013-06-07 (金) 00:07:47
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Last-modified: 2013-06-03 (月) 00:00:00
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