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君色の花言葉

/君色の花言葉

作者:ユキザサ


 心地良い穏やかな波の音を聞きながら昼寝をする。マスターが家族と他地方に旅行へ行く兼ね合いで、俺を含む多くのポケモン達もこのリゾートに預けられて休暇を満喫している。まぁ、マスターの付き添いの面々もあっちで楽しんでるんだろうけどな。
「あら、寝ながらなんて行儀悪いんじゃありませんか?」
 豆を口に放り込んで空を見ていると突然顔の前に発色の良いピンク色の顔を笑わせながら一匹のラランテスがのぞき込んできた。一瞬びっくりして豆を喉に詰まらせるかと思った。
「なんだ、ファレお前も来てたのか」
「はい。丁度湯浴みが終わって来てみたら、よく知った顔のジュカインさんを見かけましたので。お隣よろしいですか?」
「別に構わんけども」
 失礼しますとか言ってこいつは俺のすぐ隣に腰かけた。別に聞かずに座っていいのに。変なところでこいつは丁寧というかなんというか。
「てっきりセルバさんはマスターとご一緒に行かれたものだと思っていました」
「わざわざ草タイプの俺が寒い地方って聞いて行くかよ、それに俺は元々ここほどじゃないにしても南国出身だからな」
 草タイプの中にも、マスターにほぼ無理やり一緒に連れていかれたフクロウがいるけど。まぁ、凍死しないことを祈っておいてやるか。
「ふふっ、それもそうですね。でも良かったです、セルバさんがいらして」
「突然どうした?」
「何やらこの後、催し物があるらしいんですがね、二匹一組じゃないと参加出来ないらしくて、どなたかご一緒に参加してくださる方を探していたんですよ」
「そう言う事か。催し物ねぇ、具体的には?」
「二人一組で宝探しをするとしか聞いていませんね」
 宝探しねぇ。なーんか怪しい気がするけど、このままここでぐーたら過ごすよりはいいか。日頃バトルでサポートされてる訳だし、このくらい付き合ってやるか。
「まぁ、それくらいなら付き合うよ」
「ふふっ、セルバさんならそう言ってくれると思ってましたよ。それでは、また後でお会いしましょう」
「あいよ」
 そういやあいつ、なんで俺に頼んできたんだ?別に他にも知り合いは居るだろうに。確かにあいつと俺は同じパーティに居ることも選出も一緒の事が多いし、喋ることも多いけど、パーティの中にはメスのポケモンだっているんだけどな。まぁ、気にしてもしょうがないな。まだ時間はあるし集合時間までもう少し寝てるか。


「参加匹数どれだけいるんだこれ…」
「うーん、ボックスに居るほとんどのポケモンが参加してるのかもしれませんね」
 ボックスに居るやつらほぼ全員ってだいぶいるぞ!?どれだけ大規模な宝探しなんだよ。そもそも、提案者は誰だ。受付はあそこか…なんか、やたらゴーストタイプ多くないか?
「そろそろ行きますか?」
「了解。あそこのオーロット多分ウィザーだろ。聞いてみるか」
 管理人のおっさんが許してるってことは、そんなに危ない事は起きないと思うが、警戒しておくに越したことはないな。同じパーティで見知った顔もいることだし、詳細くらいは俺もちゃんと聞いてておこう。
「おうウィザー、お前は運営側なんだな」
「おっ?セルバの旦那はこういったイベントには参加しないと思ったんだけどな」
「ファレの付き添いだよ。これ二匹一組じゃないと参加出来ないんだろ?」
「ほぉほぉ、まぁまぁ!了解だ!じゃあこれの中から一つ選んでくれ!」
 そう言って、こいつは何枚か紙切れを出してきた。ほーん、コース選択ねぇ。俺はこれといって別にって感じだし、ファレに選んでもらうか。
「どれにする?」
「そうですねぇ。これなんか良いんじゃないですか?宝物の石も綺麗ですし」
「じゃ、それにするか」
「旦那たちのルートは入ってすぐの分かれ道を右に行ってくれ!あと、これランプ!」
「サンキュ」
「おう!楽しんできてくれ!」

 道は俺達二人が並んでも平気なくらいには広いけど、確かにだいぶ中は暗いな。これは安全のためにもさっさとランプつけたほうが良さそうだ。
「あ、あの?」
「どうした?」
「もう少し近づいても構いませんか?」
「ん?別に構わんけど」
 失礼しますと小さく言うとこいつは俺の横にぴったりくっついて歩き始めた。少し歩き辛いけど、明かりは俺の持ってるもの一つだけだし、逸れない為にもこのままの方が良さそうだな。
「し、静かですね…」
「確かに俺達の前にも何組かはこっち来てると思うんだk…」
「「キャァァァァァ!」」
 な、何だ今の悲鳴!?警戒しながら進んでも奥にランプが落ちてるだけだけど…ってか、なんか薄ら寒くて嫌なこの感じ。そして受付に居たゴーストタイプの多さ。なんとなくだが分かった。
「全く面白くないわねぇ!ちょーっと脅かしただけですぐ逃げちゃうんだから」
「やっぱりお前らか」
「あらぁ、ばれちゃった。すぐ後ろにいるなら言ってよぉ!」
 前方でクスクスとわざとらしく笑いながらユラユラと揺れているムウマージ、サレスを見つけ、このイベントの本当の意味を俺は理解した。恐らくマスターが不在で暇を持て余したこいつらが計画した…
「肝試しだな?」
「せいかーい!あっ、でも。一応ゴールにはコース選びの時に書いてあった宝物は置いてあるわよ。ただ、こっちも割と頑張って計画した物だからそう簡単には渡せないけどねぇ」
「つまり、さっきの悲鳴のペアは脱落したってことか」
「そうねぇ。あんまり詳しい事は言えないけど、ある条件を満たしちゃうと、テレポートで強制的に入り口に戻されちゃうの」
 それだけ情報がもらえれば十分警戒出来るし、何より俺達もここから進むのに初見で脅かされるわけじゃないだけまだ何とかなる。そう言えばさっきの悲鳴からファレがやけに静かだな?
「ファレちゃーん?大丈夫?なんか放心状態っぽいんだけど」
「お、おい!」
「だ、大丈夫です…少しびっくりしてしまって…」
 い、一瞬魂が抜けてるかと思ったけど、何とか大丈夫そうだな。なぜか、さっきまで隣を歩いてたのが今度は両手の鎌で俺の右腕を掴むようになったけど。別に良いけど、サレスがニヤニヤ見てくるのがむかつくな。
「あっ、そうそう!こっから先逸れちゃったら、自力で合流するか、どちらかの脱落かゴールでしか入り口に戻れないから頑張ってねぇ!」
 その言葉を聞いた直後から俺の腕をつかんでいるファレの力がより強くなった。


「す、すみません。何かに捕まってないと腰を抜かしてしまいそうで…」
「あ、あぁ。なるほどな」
 結局サレス以降、何か脅かしてくる奴もいないし、今の所は何も問題なく進んではいるけど、唯一気になるのは、進むにつれて俺の腕にかかるファレの力が強くなってく事だけど。おっ、ここは蝋燭の明かりがあるのか。
「私に誘われたとき迷惑でしたか?」
 突然腕が重くなってファレの方を見ると、俯きながらそんな事を言っていた。誘うってこの肝試しのことか?うーん。別に迷惑とは思わなかったな。あのまま誘われなければあそこでグダグダしてただけだろうし、これも少しは運動になるだろうし。それに…
「どっちかって言うと嬉しかったかもな」
「嬉しかった?」
「おう。いつもファレにはバトルの時くらいしか一緒に何かするってこと無かっただろ?こういう、バトル以外の事で頼られるとは思ってなかったからな」
 実際問題なんで俺にパートナーを頼んだのかは今も分からないが、いつもバトルでサポートして貰ってる訳だし、こういった事で手伝えるなら安いもんなんだけどな。正直ファレとは話しやすいし一緒に居て楽しいっていうのもあるけど。ってあれ?突然腕軽くなったな?
「あ、あの!ゴールまで手を握って貰っても良いですか…?」
「手?」
 手を握るってそんな気軽にすることか?と思ったけどさっきまで腕を組んでた訳だし、そんなこと気にするのは今更か。それに明かりに照らされて片手を俺の方に差し出しているファレが少し上目遣いで俺を見てくる。差し出した手を払うのは忍びないし、さっきまで腰を抜かしそうになっていたようなくらいだ、そういう意味での提案かもしれない。そう、自分に言い聞かせて、ファレの鎌を取った。
「ありがとうございます。そ、それともう一つ…」
「?」
「もしゴール出来たらお話したいことがあるんです。聞いて貰えますか…?」
「別に話聞くぐらい全然構わないけど、ゴール出来たらなのか?」
 小さくコクリと頷いた姿を見て、不思議とこれ以上何か聞くのは止めようと思った。ゴールさえすれば聞けるわけだし。
「じ、じゃあそろそろ進むか」
「はい」
 少しの気恥ずかしさを隠すように俺は素早くファレの鎌を引いた。静かな洞窟の中で俺達が歩く足音だけが響いていく。そんな沈黙の時間は俺達の周りを突然漂い始めた火の玉によって、すぐに終わりを迎えることになった。
「いやぁぁぁぁぁ!?」
「お、落ち着けぇ!」
 直後今まで手を引いていた俺がファレに引っ張られる形で俺達はこの火の玉ゾーンを抜ける事なった。

「はぁはぁ…すみません…」
「や、やっと、止まったか…」
 ファレに引っ張られるがまま、開けた場所に出るまで手を引かれて走り続けさせられた。突然の全力疾走で軽くせき込んでしまった。ただ、ルートが一方通行だったお陰でだいぶ進んだ…いや、あれは?
「宝箱?あからさま過ぎて怪しいな」
「でも、もしかしたら本当にゴールかもしれませんよ?実際ここで行き止まり見たいですし」
 確かに道はここで終わっているけど、っておい!もうあいつ開けようとしてるし。少しくらい警戒するべきだと思うんだが…なんだあれ?なんか箱から靄あふれてきてるぞ!?
「ファレ下がれ!」
「えっ?」
「ここに来るのはあなた達が一番でした。でも残念でした!」
 その言葉の直後、目の前は眩い光に包まれた。そして、その光が止むとさっきまで
一緒に居たはずのファレの姿。そして置いてあったはずの宝箱も忽然と消えてしまっていた。
「なっ!」
「あれ?二匹共ちゃんと飛ばしたはずなんだけど…?」
 その代わり俺の目の前に現れたのは、青白い光をうっすらと放つ、この地方の月の使者であるルナアーラの姿だった。しかし、その様子はどこか焦ったようにおろおろと辺りを見渡していた。
「ちょ、ちょっと待て!あいつはどこに行ったんだ!?」
「あっちゃー、やっぱりルインちゃん失敗しちゃったかぁ」
 その質問に答える様に後ろからわずかな冷気と共にけらけらとした笑い声を上げながらサレスが近づいて来た。
「心配しなくても大丈夫よ、テレポートで飛ばされただけだから、場所は…きっとこの奥ね」
「お、奥って、ここは行き止まりだろ?」
「よく見なさいよー、ちゃんとできてるでしょう?」
 そう言われて宝箱があった方を見直してみると先ほどまでは行き止まりだった壁ではなく、奥に進むための道が出来ていた。それなら話は早い。
「ルインちゃんも悪気があった訳じゃないから許してあげて。それと、ここから先これまで以上に道が暗くなるから気をつけなさい」
「ごめんなさい…」
「あいつが警戒なしに開けたのも原因だ。でも後でちゃんとあいつに謝ってやれよ?多分今めちゃくちゃ怖がってるだろうし」
 コクリと頷くルインに少し笑いかけてから、奥を目指して走り出す。ランプを落とさない様に強く握りしめて力強く地面を蹴った。

「セ、セルバさんかっこいいなぁ…」
「え?…これは色々と面白い事になってきたわねぇ、フフッ、ファレちゃんもあんまりちんたら出来なくなってきたわよー」


 サレス達が気を利かせてくれたのか、誰も俺の道を邪魔する奴はいなかった。この泣き声…なんだ、案外近かったな。よかった、無事に見つけられて。
「おーい、この暗闇の中で泣いてる声なんてその方がよっぽどホラーだぞ?」
「セ、セルバさん…?」
「怪我はないか?」
「は、はい…」
 ファレは俺の差し出した手を握って立ち上がったが、すぐにまた体勢を崩した。
「腰が抜けてしまって…すみません」
「ハハッ、お前がこんなに怖い物ダメだったなんてな」
「むぅ!酷いですよ!」
 そう笑って言うとラランテスは頬をふくらませて抗議の眼差しを向けてきたが、それもすぐに笑顔に変わった。泣き顔じゃなくなってひと段落だけど、腰抜けてるこいつを無理に歩かせるのもなぁ。仕方ない。
「ほら、背中乗れ」
「そ、そんな!大丈夫ですよ!?」
「そんな状況で無理に歩くのは危ないだろ?それに時間かかるとまたあいつらが脅かしてくるかもしれないぞ?ほら」
「背中お借りします…」
 少しかがんで背中に乗りやすいようにして待っていると、小さく呟いてファレが乗ってきた。よいせ、体格の差だろうけどやっぱり軽いな。これなら入り口まででもそんなにきつくないだろ。さーて、行くか。
「お、重くないですか?」
「ん?いや別に、お前むしろ軽い方だろ」
 正直にそう伝えるとなぜかこいつは少しもごもごと何かを口にした後に、顔を俺の背中にうずめて動かなくなった。おっ、お出迎えも来たみたいだ。
「無事に見つかったのねー」
「おう、別にケガしてる訳でもなかったし」
「ご、ご心配をおかけしました」
「いやー、むしろこっち側の不手際だったしねぇ。ほら、ルインちゃん、二人共かえって来たわよぉ」
「う、うん…」
 一瞬背中のファレがルインの気配でびくついた。そう言えばこいつは飛ばされただけだから、飛ばした張本人のルインの存在は知らないままだったな。一瞬見てルインって分かって一安心したみたいだけど。
「ファレ一回降ろしても良いか?」
「え?えぇ、多分もう大丈夫です」
「ほらルイン」
「ごめんなさい怖い思いさせちゃって…」
 ハハッ!ファレの奴ポカーンてしてるよ。
「えっと、僕がテレポートさせるの失敗しちゃったから、怖かったでしょ…?」
「た、確かに怖かったですけど、少し個人的に良い思いもしましたし…」
 な、なんでこっちをチラチラ見てくんだ?そんで、サレスもなにケラケラ笑ってやがる!くそっ居心地悪いな!
「?あんまりよく分からないけど、許してもらえる?」
「はい!」
「よ、よかったぁ…あ、後これどうぞ!」
 なんかが奥からふよふよ浮いてこっちに来た。俺の前で止まった。あれ?これどっかで見たな。
「セルバさん!これ彗星のかけらですよ!」
「あぁー景品の奴か。でも俺らゴールしてないぞ?」
「いや、実はあなたたちゴールしてたわよ?ファレちゃんが飛ばされた所がゴールだもの。それに、あなたたちはリタイアの条件も満たしてないし」
「そう言えばリタイアの条件って何だったんだ?」
「これこれぇ」
 フワフワとサレスが俺の持っていたランプを指差しながら俺の周りを回った。ランプがリタイア条件?
「ランプを落とすことが脱落の条件だったんだ。ファレさんが僕の隠れていた宝箱を開けた時ランプが見え無かったからてっきり…」
「そう言う事。あなたたちはゴールまでランプを落とさずにたどり着いた。だから、さっさと受け取りなさい。あなた達にはその権利があるんだから」
「うん。僕としても受け取ってほしいな」
「そこまで言われてて、断ったら失礼だな。おう、ありがたく受け取っておく」
 嬉しそうに彗星のかけらを俺に渡すとルインはクルリと体を回しながら、今浮いてる位置から少し上に上昇した。
「それじゃあ、今度はセルバさん達を入り口までお返しします!」
「離れない様にもう少し近づいた方が良いんじゃない?それと、洞窟の入り口じゃ人が多いだろうし、のびのびリゾートの辺りに飛ばしてあげなさい、ルインちゃん」
「はーい!それじゃ、二匹共準備は良い?」
「だ、大丈夫です!」
「今度は大丈夫だよな…?」
「た、多分」
 少し不安だなぁ。後、ファレそんなに腕回すほど近づかなきゃいけないのか?ルインはルインでなんかムッとしてるし。そんでもってサレスゥ!お前はいつまで笑ってやがる!またあの光か…今度は俺も完全に飲まれてるし、今度はちゃんと俺も飛ばされてるな。少し安心した。


 目を開けると、見慣れた海と浜辺が広がっていた。隣にはちゃんとファレも
「着いたか」
「はい」
「い、いつまで腕回してるんだ?」
「えっ、ひゃあ!ごめんなさい!」
「お、おう。それとこれ」
 さっきルインから受け取った彗星のかけらをファレに渡す。元々ファレがこれを見て、あのコースにした訳だし。俺は特に使わないし持ってても意味ないからな。
「大事にしますね…」
「それと、ゴールしたらって言ってた話、お前が納得してないなら話さなくても良いからな」
 俺も気になってない訳じゃないけど、もし俺がファレだったら納得いってないだろうし。無理に聞こうとはしない。そう思っていると隣から小さく声が聞こえてきた。
「今回の件で良く分かりました。私は守ってもらってばかりだってことに」
「お前はどっちかって言うとサポートよりなんだから、それは仕方ないんじゃないか?」
「もぉ!そう言う事じゃなくて…私は貴方の隣で貴方と一緒に戦いたいんです!」
 そ、そんな事言ったってなぁ?マスターにまずは提案しなきゃいけないし、俺ら二匹で決めれる問題じゃないだろ?って顔近い近い!
「はぁ…私だってこんな事我儘だって分かってるんですよ?でも…」
「でも?」
「今回の事納得もしてないし、弱い私のままこの先は伝えたくありません。でも、ゴールしたら伝えるって言ったのも約束です」
 そう言ってファレは俺の前に一つの花を差し出して、まるでさっさと受け取れとでもいうように静かに俺を見つめてきた。受け取った淡いピンク色の花を月明かりの下で見ると、どこか目の前のこいつに似ているような気がした。
「そのお花、胡蝶蘭って言うんですよ」
「なんかお前に似てる花だな?」
「ふふっ。それはそうですよ、この花は私たちラランテスが擬態する花なんですから」
 へぇ、そんな花があったんだな。見れば見るほど似てるなぁ。でも、さっきの話からなんでこの花が出てくるんだ?
「セルバさんって本当に鈍感ですよね」
「?」
「今私がセルバさんに伝えられる半分がこれです。その胡蝶蘭、私がもう半分を伝えるまで無くさないでちゃんと持っててくださいね?」
「お、おう?」
「最後に…」
 そう呟いた直後、俺の頬に何かが触れた。本当に一瞬の出来事だった。気づいたときにはもうファレの顔は離れてその表情は少し赤らんでいた。
「それじゃ、セルバさんおやすみなさい!」
 そう言って、悪戯をした子供が親から逃げる様に笑いながらファレは楽しそうにこの場から離れていった。
「クッソ…!こんなことされてすぐに寝れるかってんだよ…」
 少し火照った体を夜風で冷ましながら俺は浜辺に腰を下ろした。受け取った胡蝶蘭を風に揺らしながら、この何とも言えない感情が何なのかを考えた。実際、答えはもう出ているようなものだったが。
「たくっ、今度からどんな顔して会えばいいんだよ…」
風に揺れる胡蝶蘭。その本当の意味を俺が知る日がいつ来るのか。その日が来るまでこの心の中にある思いは分からないままで良い。そう決めて俺は満天の星空を見上げた。

後書き 


 花言葉とか大好き人間ユキザサです。
ラランテスちゃん可愛くねって言ったら、一部の方々から激押しされて気づいたら書いてました。
元々魅力に気づいたのはポケカからだったので、相手役はジュカインにすぐ決まり。他の登場ポケモンもカードから選択。
出来上がったものはめちゃくちゃ荒いですが楽しんでいただけたら幸いです。
ファレが渡した胡蝶蘭は自分の色と同じピンクの胡蝶蘭。花言葉は…

感想等、何かございましたら [#2vE0WJw] 

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Last-modified: 2018-08-27 (月) 20:40:42
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