今回の作品はピカチュウ大好き人間さんからのリクエスト作品です。
この作品には官能描写、破瓜の表現があります。
大丈夫な方はそのままお進みください。
作者:COM
僕の名はヒカリ。今年で丁度二十歳になるが今だピカチュウのままだ。
高校を卒業してすぐに家からすぐ近くのパッとしない中小企業に就職してパッとしない人生を送っている。
でも、そんなことは関係ないだろう。人生というものは誰もがとてもドラマチックというわけではない。
ごく平凡な人生を送り、ごく平凡に家庭を持ち、ごく平凡に天寿を全うする。それはごく平凡な幸せの在り方だと僕は思う。
でも時に人は言う。『そんな人生に何の刺激もない生活で何が楽しいのか』と僕に聞いてくる。
確かに他の人から見れば僕の人生には刺激が足りないと思う人もいるだろう。
でも、僕にとってこの幸せは何よりも望んでいるものだ。人が何と言おうとね。
「お疲れ様です。お先に失礼します」
そう言い、もう手馴れた業務を終えてまだ残って仕事をこなしている同僚や先輩に挨拶をして会社を出た。
「かー。ヒカリは仕事速いな! 俺なんて全力でやってこのザマだってのに」
同僚でリザードのホノオはまだ机の上に数十枚残ったままの紙の山を叩いて僕の仕事の速さを褒めていた。
二年もここにいれば仕事は自然と早くなる。
同僚といっても歳だけで、実質は後輩にあたるホノオはまだ仕事を覚えている最中なのだから仕方がない。
最後にほんのり笑顔を浮かべ、ぺこりとお辞儀をして部屋を出て行った。
今日は急いで家に帰らなければならない。なんと言ったって今日は僕の妻、こちらもピカチュウのオレットとの結婚記念日だ。
高校を卒業して、働き始めて一年、出会いの乏しかった僕に舞い込んだそれこそ他の人たちが羨ましがるようなドラマチックな出会いだった。
といっても豪雨が降りしきる中、スッと傘を差し出しただけだったのだが彼女にとってはその現代から忘れ去られた優しさが嬉しかったのだろう。
彼女の家まで送るとそのまま美味しく戴かれるという男としてはなんとも情けない出会いになってしまった。
その後は交際を経てしっかりと僕からプロポーズはしたのだが、どうも食い気味な彼女としては嬉しかったのだろうが僕が先に言い出したのが不満だったようだ。
その後は普通の家庭と特に変わりはない。イチャイチャして、一緒に笑って、たまに喧嘩して、結局すぐに仲直りして……。
互の嫌な場所はすぐに言い合える仲だったためか、結婚してから幻滅するということもなかったようだ。
「ただいま」
いつものように家に帰ると彼女は料理をしている最中だったようだ。
「おかえりー」
家事に勤しむ生活音に紛れてそんな声が聞こえてきた。
仕事の鞄を机に置いて、素知らぬ顔でテレビを付けた。所謂ちょっとした悪戯だ。
料理を終えると彼女はパタパタと走ってきてソファの横にちょこんと座り
「ねえ、今日が何の日か知ってる?」
と想像通りの反応を見せてきた。
わざと首を傾げて夢想に耽るフリをすると彼女はやはりぶすくれていた。
「勤労感謝の日?」
わざとそう言うと間髪入れずにビンタ。案外、この女性らしくない逞しさが僕にとって彼女の魅力だったりするが痛いからやめてほしい。
「知っててわざとやってるでしょ? あなたは元々嘘とか下手なんだから演技はやめなさい」
僕が知っていると分かっているのなら最初からそう聞かなければいいだけなのだ。僕はそういう彼女を見るとちょっと悪戯したくなるのは最初からだったはずなのだから。
「アイタタ……知ってるよ。結婚記念日」
そう僕が頬を摩りながら言うとわざとらしく彼女は嬉しそうに微笑んでいた。先程までの鬼のような形相が嘘のようだ。
そのまま上機嫌で踊る様はただの剣の舞にしか見えないが、ピカチュウは使えない。それでも攻撃力が上がっていたのかと疑いたくなるほどの強烈な右フック(ビンタ)だった。
その間にこっそりと鞄から小さなプレゼントを取り出し
「はい。君へのプレゼント」
そう言って渡した時には目をキラキラ……いや、ギラギラと光らせていた。おお怖い。
プレゼントは何の変哲もない雷の石、それをセットで入れていた。
先程までの異様なテンションの盛り上がりは何処へやら。彼女は素直に喜んでいた。まあ、約束していたものだったからね。
「ありがとう……二人で一緒に。って約束してたもんね」
彼女は光り物が好きだがそれよりもこの方が喜ぶだろう。そう思った僕の考えは間違ってはいなかったようだ。
「ねぇ~。勿論プレゼントはこれだけじゃないわよね?」
が、彼女の変なスイッチも入れてしまった。
さっきまで真横から僕の顔を見ていたのに、わざわざソファから降りてまで上目遣いで話しかける。以前から言ってはいたが彼女が一番欲しいものは子供だ。
久し振りの熱い視線に思わずドキっとするが、まだ僕の稼ぎも一人増えても大丈夫と言えるほどではない。
「しょ、将来的にはね! 今はこれが精一杯だよ!」
「じゃ、気持ち良くしてくれるだけでいいわよ♪」
彼女も知っていて聞いたのだろうからこの反応。初めから狙っていたとはいえここまでグイグイ来られると本当に驚く。
夜のために精をつけないと明日の仕事にまで支障が出そうだ。
――――
これが僕の平穏な日常。何事もなく、少し不自由があって満ち足りた日々。
そんな僕にも人には言えない秘密ができてしまうのはこれから数ヶ月経ったある日のことだった。
「お疲れ様です。お先に失礼します」
いつものように先に業務を終え、帰路についた僕は携帯の着信音で驚いた。
高校卒業以来、仲の良かった友人などとは疎遠になっていたが、久し振りにその内の一人から電話が掛かってきたのだ。
「もしもし?」
電話の相手は小学生からの親友、ミネズミのランドからだった。
『よう! 久し振り! 相変わらず元気そうだな』
僕なんかよりも数倍元気そうな声が電話越しに聞こえてきたが、やはり友人と久し振りに話すととても落ち着く。
「ランドもね。急にどうしたの?」
ランド自身、用もなければ電話もメールもしないような人だからその急な連絡にはさらに驚かされていた。
そもそも僕の電話に掛かってくる電話は仕事か家からぐらいだ。
『いやな。近々同窓会を開こうって話になったんだ。それでお前にも連絡したんだよ。勿論来るだろ?』
それはとても嬉しい誘いだった。
疎遠になっていた分、やはり友人たちの顔を見たいという思いは次第に強くなっていた。
しかし、自分は社会人。まだ学生の人たちはいいだろうが、僕のように既に社会に出ている者はなかなか会う機会というものを作れないのだから。
そのまま話を聞いていると、別にまだ決まっているわけではないので参加者全員の都合の良い日程を聞き、その日にするそうだ。
僕はまだ有給も使っていなかったため何時になっても問題がないのでよかった。
その旨を伝えると『助かる』と一言だけ言っていた。その感じからすると恐らくランドは進行役の内の一人なのだろう。
追々決定したら連絡を送ると言い、電話を切った。
僕も急いで家へ帰りその事を伝えなくちゃ彼女から雷が落とされてしまう。
「えー。同窓会? それじゃあその日は帰ってこないの?」
早速家に帰って同窓会について話すと彼女は不貞腐れていた。
「多分、帰ってきても次の日の朝ぐらいになると思うよ。積もる話もあるし」
こういうことははぐらかさずに正直に言わないと彼女は怒る。僕もそれを知っていたし、後で怒られたくないので先に釘を刺しておく。
まあこうしておけばたとえ早めに終わったとしても帰ってきて文句は言われないし、逆に遅くなっても文句は言われない。彼女の場合は文句では済みそうにないが……。
最初の内は駄々をこねていたが、諦めたのか納得してくれた。
その後、案外早く日程は決まり、会場まであっという間に決まってしまい、会社の上司に有給を使わせてもらうのを言うのが遅れて少し怒られてしまった。
元々仕事を頑張っていたためその場は何とか許してもらったが、次からは早めに言うようにと釘をこちらからも刺されてしまった。僕のせいじゃないのに……。
それからはあれよあれよという間に同窓会の日になっていた。
「お疲れ様です。お先に失礼します」
いつものように業務を終えたが、今日は誰よりも早く、いつもより早めに仕事を切り上げた。
「あれ? 今日はいつもより早いね。何かあるの?」
普段なら僕よりも先に帰っている先輩のサンドパンのクリームさんが不思議そうに僕に声を掛けてきた。
彼女は僕よりも長くここにいる、まさにベテランのキャリアウーマンだ。
今日は同窓会があるので僕は仕事を少し残しているが、クリームさんは僕よりもいつも二時間ほど早く仕事を完全に終えて帰るのだ。僕も将来はあれくらいにはなりたい。
「はい。今から同窓会があるので一足先に失礼しますね」
ぺこりと頭を下げて、そう言って出ようとした僕をクリームさんが引き留めた。
「珍しいわね。あなたがそういう用事で早めに帰るのって。てことはまだ仕事終わってないんでしょ? 残りやっておいてあげるから私に残りを教えておいて頂戴」
こういうことをするからあなたの会社での株は高いんですよ。とはいえ正直、とても嬉しかったが彼女に迷惑をかけるわけにはいかない。
「いえ! そんなに残ってるわけでもないので。少し早めに来ればいつも通り終わらせられる程度なので……」
そう言い必死に断るが
「こういう時は素直にお礼を言って出ていくもの。折角の再会なのにその後の事考えたくないでしょ?」
彼女も決して退かない。というよりも結局ほぼ強引に僕の残りの仕事も聞きだされてしまった。
どうしてこうも女性に対して常に頭が上がらないのかと自分の不甲斐無さを身に染みて感じさせられるが、今は素直に感謝して集合場所の近くの居酒屋へと急いだ。
有給を取ったのは明日だ。どうせ朝まで飲むことになりそうだったし、次の日の仕事に支障が出るのは目に見えていたからだ。
それに僕のように仕事をしている人たちの事を気遣ってか、集合時間もかなり遅め、場所も交通機関がきちんと整っている場所を選んでいてくれた。
嬉しい限りなのだが僕はいつも徒歩なので寧ろ遠くなったのはここだけの話。ここは全員に合わせるのが大人の付き合いというものだ。
――――
「おー! ヒカリ久し振り!! 変わってねぇな!」
「ランド? わー! 進化したんだ! でも面影残ってるから良かったよ」
着替える時間もなかったのですぐにその居酒屋へ向かった。本当ならタクシーを使えばいいのだろうが、僕は別に間に合うと分かりきっているものに無駄なお金は使いたくない。
集合場所に着くと、見慣れた顔ぶれや、逆にランドのように進化してギリギリ誰だったかが分かるような者もいた。
それでもやはり長らく会っていなかった友人や知人に会うと仕事で疲れていた僕のテンションも自然と上がっていた。
積もる話は全員が集合しきる前から居酒屋の前で行われ、少々お店に迷惑かとは思ったがそれ以上に旧友との話は楽しいものだった。
時間になった時点で場所を居酒屋の中へと移しただけでその談話は僕を含め未だ続いていた。
やはり幹事であったランドはみんなの話の輪から抜けてひとまず全員のオーダーを聞いて回っていた。
当たり前だがお酒は飲み放題。これからお酒が入ればさらに会話はヒートアップしていくだろう。
でもそんな中、僕は一人の存在に気付き自然と口が止まっていた。
そこには初恋の女性、イーブイのミウがいた。
「ひ、久し振り……」
僕は気が付いた時点で声を掛けたが、彼女はどう思っているのだろうか……。
意識しないつもりで声を掛けたがやはり気になって仕方がなかった。
それは決して初恋の相手だからなどではない。ならば失恋したからなのか? と聞かれてもそういうわけでもない。
「久し振りね。ヒカリ……」
彼女とは……将来を誓い合っていた仲だったのだ。
古くからの幼馴染。恐らくこの場にいる誰よりも古い付き合いだろう。だからこそ気まずかった。
しかし、そんな僕の心境とは裏腹に彼女は怒っているのかと思ったが表情はどう見てもそういうものではなかった。
寧ろ懐かしんでくれているような……。それなら僕も変な気を使うのは避けた方がいいだろう。
特に気兼ねせずに僕や彼女も混ぜた、いやみんなで楽しく飲み、笑うその酒の席を心の底から楽しんでいた。
お酒が入るにつれてやはりあまり喋らなかったような人も喋り始める。
「そういえばお前らグレイ覚えてるか?」
ふと向かいに座っていたキリキザン(元コマタナ)のイブシが不意にそう話をみんなに振ってきた。
グレイは僕も覚えている。少し突っ張っていて社会に歯向かおうとしてたズルッグの友人だ。
そんな地味に不良じみた奴だったけど悪い事もしないし少しそうやってつやを付けていたぐらいだったから僕たちでも仲良く接することができていた。
そんなこともあってかみな頷いたり思い出してあ~と声を出している者もいた。
「あいつな、今何やってると思う? 驚くぜ、あいつ父親の仕事継いで一会社の社長やってるんだぜ?」
こんなカミングアウトを聞いて驚かない者がいるだろうか? 勿論いないが彼がこの席にやってきていないこともようやく理解できた。
「あいつの親父さん。確か上場企業の社長だよな? 継がせたってことはあいつやっぱめちゃくちゃ頭良かったのか」
グレイと親友だったレントラー(元ルクシオ)のスパークがそんなことを言いながらしみじみ彼の事を思い出していたようだ。
世の中、人は見かけによらないというがそこまで外見と差があると生き難くはならないものなのだろうか。
とはいえ、話を聞くところによると事業を継いだのは二年前、丁度僕が就職したのと同じ年に継いで今も仕事をしているそうなのだから本当に元々そういった才能があったのだろう。
「イブシは今何してるの?」
少し気になったので僕はそう聞くと彼はにっこりと笑いながら
「フフフフフ……よくぞ聞いてくれた。今俺は知る人ぞ知る都市地下鉄のバトルサブウェイで働いてるぜ!」
「ついこの間まではただのニートだったけどな」
立ち上がり、自信満々にイブシはそう言ったが、横からスパークがボソッと余計な補足を入れたせいで一気に素直に喜んでいいのか分からない状況になってしまった*1。
「うるせぇ! 俺のバトルの腕を見込んでの大出世だろ! そういう余計な事言うんじゃねぇよ!」
元々仲の良い二人だったからこの程度で済んだだろうが、普通なら喧嘩でもおかしくはないだろう。
しかし、彼らのやり取りのおかげでみんなが笑っていたのだからこれはこれでいいのだろう。
僕も今何をしているのか聞かれたが、近場の中小企業で働いている。と言ったら驚かれてしまった。
「お前てっきり大学に行ってもっと勉強してるもんだと思ってたよ」
昔からこのグループの中ではかなり勉強はしていた方だった。
勉強自体が好きだったし、彼らに分からないと言われる場所を教えている内に自分自身ももっと勉強になっていたからだ。
確かにもっと勉強したかったが、親にあまり負担を掛けたくなかったことともう一つ理由がありすぐに仕事を始めていた。
もう一つの理由についてはもう少しだけ後で話すことにする。
そんな感じでみんな今の自分や昔の関係を思い出し、しみじみしたりワイワイ騒いだり、そんな感じでどこにでもいるような普通の五月蝿い集団客になっていた。
が、そろそろ全員酔いが回ってきたのか大体こういう席なら恒例の話題になっていた。
「そういえばイブシ。お前まだあの子と付き合ってんのか?」
そう、色恋話だ。
そう聞かれたイブシは顔を大きく横に振っていた。
「ニートやってる間に愛想尽かされた」
分かってはいたがごく普通の理由だったため反応に困る。
「ニートに彼女がいたら同じような境遇の奴が発狂するぞ?」
彼らは本当にいいコンビなんだろうと見ていて感心する。スパークのおかげで場の空気が悪くなることがない。
そのため本当にいい感じに笑いへと昇華されていくのだ。
一人ずつ聞いていくとやはりまだ付き合っている者や、既に別れた者、逆に新たに恋が始まった者など様々だった。
そうやって話を聞いているとやはり僕の方へ話が回ってきた。
「そういえばヒカリはまだミウと付き合ってるんだろ?」
「いや……今はもう別の人と暮らしてるよ……。結婚もしてる」
今日の今までの話の中で一番全員が驚いていた話になってしまった。
それほど僕とミウの仲はよかった。自他共に認めるほどに……。
「別れたのかよ!? しかももう結婚してるって!?」
この歳での結婚は早い方かもしれないが、それでも確かにこの中には一人も結婚しているものがいなかった。
そのため僕の話題は更にヒートアップしていく。
「ミウは? こいつと結婚するって言ってただろ?」
「うん。だけど……色々あってね。今は他の彼氏と付き合ってるよ」
彼女はそう笑顔で答えていた。その顔を見て僕はどうしようもないほど切なくなった。
裏切ったわけではない。そして決して捨てられたわけではない。
よくある話だ。僕とミウとの間ですれ違いが発生してしまったのだ。
このことも後で詳しく話そうと思う。
それでも僕は心の何処かで少し嬉しかった。
彼女が僕の事を諦めきれたようで、新しい人を見つけられたのが本人の口から聞けて良かった。
この話題が今日の酒の席で一番色んな意味で盛り上がった話になった。
とはいえ、お互い後腐れのない関係だったから盛り上がりはしたが話が尾を引いたわけではなかった。
そのまま話題も恋話からお下劣な話や逆に将来に関するような真面目な話などへ変わっていった。
お酒も大分入っていたし、やはり寝てしまう者やまともに話ができない者が現れだしてそんな流れでその日の同窓会は終了した。
ランドともう少し話したかったが、『寝た奴らと酔い潰れてる奴らを家に送らないといけないから』と言って彼は完全に伸びきった人を連れて去っていってしまった。
他のメンバーも明日仕事がある者や、この後の予定がある者など様々でみな殆ど散っていった。
「んーこの人数じゃ二次会できそうにないな。俺も帰るわ」
そう言ってイブシも若干左右に揺れながら一人で歩いて帰っていった。
保険をかけた意味がこの瞬間になくなってしまったが、この二次会もなく散り散りになったことが原因で保険の意味が現れてしまった。
「ねえヒカリ。少し時間ある?」
その場に残されていた数名の内の一人だったミウは僕に話しかけてきた。
別に時間がないわけではないが、あまり遅くなるとオレットが怒りそうだ。
「終電までぐらいなら大丈夫だよ」
そう言うとミウはとても嬉しそうな顔をしていた。
ミウの笑顔を見るのは本当に久し振りだな……。そんなことを思いながら彼女の後をついていった。
ミウについていくとたどり着いたのは少し離れた場所にあった公園。昔はよくここに二人で来ていた所謂思い出の場所だ。
「ごめんね」
公園に着くとミウはいきなりそう言ってきた。
何を持ってのごめんなのか僕には理解できなかったが、彼女は急に僕の胸へと飛び込んできた。
「ど、どうしたの?」
状況が飲み込めないまま彼女を支えていたが、彼女は肩を震わせて泣いていた。
この様子では話すこともできないだろうと思い、ひとまず彼女が泣き止むまではじっとしていることにした。
ようやく落ち着いた彼女と公園にあるベンチに二人で腰掛けひとまず話をすることにした。というよりも一方的な独白だったかな?
「やっぱり、あの時にあんなこと言うんじゃなかったな……って今日あって思っちゃたの。覚悟を決めて言ったはずだったのに……」
僕にはすぐに彼女の言うあの時の意味が分かった。
彼女が別れ話を切り出してきた時のことだろう。
仕事をすぐに始めたもう一つの理由、それはこのことだった。
なぜこうなったのか……それこそが前に言ったすれ違いのことだ。
ここで全部話そうと思う。
――――
「わたしね。大きくなったらヒカリくんのおよめさんになるの」
「ぼくも大きくなったらミウをおよめさんにするよ! やくそくだよ!」
遠い昔、まだ物心がついたばかりの幼い二人の会話だ。
この位の歳の子供なら誰もが一度は言うだろう幼子の戯言のようなものだ。
でも、僕とミウの場合はこれがただの戯言ではなかった。
それからさらに大きくなって小学生。あいも変わらず仲の良いままだった。
ここまでなら誰でもそんな冗談を言っているで済まされたのだろう。だが、僕とミウは本気だった。
最初の言葉もそれからも、いつも変わらずに本気の言葉を交わしていた。
中学生になっても僕らは変わらず将来を語っていた。
ミウはとても可愛らしい子だったからやはり他の男子から何度か声を掛けられた事があったようだが
「私にはもうヒカリ君がいるので。ごめんなさい」
そうきっぱりと言って断っていたらしい。
それが元で僕とミウの関係は周りもとりただすほどになっていた。
ランドやイブシたちが僕とミウの関係を知っている理由はこれが原因だ。
そして高校生、これが僕たちの関係を変える出来事になった。
違う高校へと進学したのだ。それでも僕とミウの語る事に変わりはなかった。
高校に入って同じ通学路を歩くことはなくなったが、それでも僕はミウと必ず連絡を取っていた。
そう、変わらなかったんだ。僕は……。
高校三年生。ミウは急に連絡を絶った。
理由は分からなかった。彼女の家は知っていたため、何度か足を運んだが、彼女は決して姿を見せることはなかった。
もしかするとミウは他に好きな人が出来たのかもしれない。それならそれで僕は構わなかった。
彼女のことが本当に好きだったからだ。
そのために自分からは連絡を取らないようにした。もしミウが嫌がっていたのならそれは僕のただの押し付けがましい行為になるから。
彼女が何を思っているのか。それだけは知りたかったが、言うつもりがあるなら自分から言い出すだろう。そう思い連絡を待ち続けたがミウからの連絡はなかった。
高校生ももう終わりに近い頃、既に就職は決まっていた僕はある決断をする。
彼女がどう思おうとも構わなかった。それでも彼女の口から彼女なりの答えが欲しかった。
「僕は今も君を愛している」
携帯の留守録に残した僕の伝言は聞いてくれたのかは僕には分からなかった。
その答えを知るのは社会人になって一年経ってからだったからだ。
「私はあなたを愛していた」
あてつけのように僕の携帯の留守録に入っていた伝言だった。
僕が悪いのだろう。彼女に寂しい思いをさせすぎたのだろう。
今までの関係が近すぎるぐらいだったから少し離れただけだったのに、それが途方もなく彼女には遠く感じられたのだろう。
吹っ切れたという言い方が正しいのかもしれないが、僕にはそれで踏ん切りがついた。
就職を選んだ理由も半分は彼女への未練に近い自分の思いを振り切るためだ。
答えが聞けたためか僕の中ではすっきりしていた。彼女を恨むなんて気持ちはない。
そうやって少しだけ気が楽になっていた僕はいつの間にかオレットに詰め寄られていた。
彼女を送ってあげた日はその伝言を聞いた数週間後だった。僕にとってもミウにとってもいいことだったし、オレットのことは本当に好きだったから気が付けばあっという間に結婚していた。
何事も待つのが嫌いな彼女の性格のせいか、僕も次第に彼女に合わせてテキパキとものをこなせるようになったのは正直感謝だ。
そこで僕も律儀な事にミウに電話を掛けていた。将来を約束したはずの相手に僕は結婚したことを報告していたのだ。
でも僕にとってそれは彼女への最後の未練だったのだろう。
少しでいいから声が聞きたかったが、やはりそれ以来電話が掛かってくることはなかった。
――――
はずだったのだが……。
「あなたが結婚した。って聞いた時、私はとてもショックだった」
彼女は僕に愛想を尽かしたのだと思っていたがどうやらそうではなかったようだ。
色々と聞きたいことはあったが、僕はそのまま彼女の話に耳を傾けていた。
「本当は今も変わらず愛している。出来ることならすぐにでもあなたの元へ走って行きたかった。
でも高校生になって離れて思ったの。私がヒカリを縛り付けてるんじゃないか? って。
自分勝手だよね。好きだって、手放したくないって思ってたのに、なのに自分が邪魔してるかもしれないって勝手に思って一方的にあなたを突き放したようになって……。
連絡が来なくなってからは嬉しかったけどとても悲しかった。やっと忘れてくれたんだって。でもあなたはそんなことなかった。
だから私も覚悟して愛してたって言ったのに……そのすぐ後に結婚したって聞いて私、いつの間にか泣いてた。
それからは忘れるために新しく恋も始めた。だけど忘れられなかった」
次第にミウの声は小さくなっていって、いつの間にかまた泣き出していた。
結局すれ違いだったんだ。僕たちの関係は……。好きだからこそ離れないといけない理由が彼女にはあったのを僕は知っていてそれでも愛したから。
親が原因で彼女まで借金を抱えていた。到底一人の人間では返せないような額だった。
それでも良かったのに……彼女はそれが嫌だった。大好きだから、愛していたから苦しませたくなかったから突き放して一人で泣いたのだろう。
小さい頃はよく分からなくて、ただ本気で恋を語って愛を紡いていた。
二人とも次第に大きくなっていって現実が身に染みて分かるようになってしまって余計な物がいっぱい見えるようになってしまった。
彼女はそのまま啜り泣くように小さな声で『今の彼氏にも別れを切り出さないといけない』ととても申し訳なさそうに言っていた。
決して彼女のせいではない。でもそれはたとえ彼女のせいでなかったとしても解決せねばならない問題。
彼女なりの苦渋の決断であり、僕を突き放した理由だ。
なんだか僕が予想していたこととは違って驚いてはいたけれど、それでも彼女の気持ちが変わっていなかったのはとても嬉しかった。
しかし、今の僕にはもうオレットがいる。すれ違いは既に修復できないところまで進んでしまっていた。
後悔はしていない。それはオレットに対して失礼だ。ミウを愛しているように僕はオレットに同等の愛を誓っている。そうでなければ僕は告白なんかしなかっただろう。
今の僕に彼女に掛けられる言葉は残っていなかった。だから僕はただそっと彼女の頭を撫でてあげた。
彼女も安心したのかようやく泣き止んでくれた。
「ねえ、私を抱いてくれる?」
急にこんなことを言い出すとは思っていなかったため心の底からドキっとした。
僕もミウももうそんな歳だ。その言葉の意味がただの抱擁でないことぐらいは僕にも分かる。
「ごめんね。僕には今はオレットがいるから……。彼女も傷つけてしまうことになるから」
だからそう言った。今、僕が劣情に流されれば悲しむのは僕やミウだけじゃない。もう僕にもミウにも大事な人がいる。
ミウとその彼の問題は今の僕ではどうしようもない。金銭的にも関係的にも……。これを解決するのはミウとその彼だろう。
「今日はありがとう。君の気持ちが聞けて嬉しかったよ」
そう言って去ろうとした僕の尻尾を彼女はしっかりとその前足で捕まえた。
「お願い……たった一日、この一晩だけでいい……二人だけの秘密にして……。今だけ……あの時と同じ時間に戻して……」
僕はとことん弱いポケモンだ。彼女のその懇願する顔を見ていると断るに断れない。
元々僕は嘘が苦手な方だ。もしオレットに詰め寄られたら言い訳できないだろう。もしそうなったら彼女に対して僕は嘘をつくことはできない。正直にこのことを話せば彼女は傷つくだろう。
それでも僕は目の前の彼女も好きで堪らなかった。本当なら今すぐ彼女と何処か遠くへ逃げても構わないほどに。
だから僕に一日だけ悪い神様が知恵を与えてくれたのだろう。『終電に乗りそびれたから友人の家に泊まって帰る』という僕らしからぬ言い訳を思いつかせてくれたのだろう。
彼女の家へと向かう途中、ポツポツと立ち並ぶ少し暗い街灯の明かりを頼りに、何時振りかの二人の帰り道を歩いていた。
5年……。それは長いようであっという間の日々だった。
学校も充実していた。仕事もそれなりに辛いことはあったけれどオレットのおかげで明日も頑張れた。
そうやって二人横並びで歩く無言の帰り道は僕にオレットへの罪悪感を募らせていた。
所詮、そういう悪いことができないポケモンなのだろう。そう思えば思うほど回れ右して帰りたくなるが、何処からその原動力が湧いてくるのかミウも悲しませたくなかった。
それは僕の欲なのか、情なのか定かではない。一つだけ言えることがあるとすれば、ミウを同じだけ今も愛しているからだろう。
数十分歩いただろうか、そこには既に僕の見慣れない彼女の家があった。
なんでも大学に進学する時に親元を離れて一人暮らしを始めたそうだ。
僕も知っている。彼女の親のことを……。だからこそその家を見た時、少しだけホッとした。
部屋も彼女らしく綺麗にまとまっている。無駄なものもなく、必要最小限に抑えられた必需品の数々を見ているとやはり家を離れられた分、生活はさらに苦しくなっているようだった。
おしゃれをしたい年頃のはずの彼女はとても質素だった。それを素の美しさと言えばそれで終わりだが、彼女には選択肢がないのだ。
壁にかかっている時計を見ると針はほぼ真上。電車もバスもそろそろなくなる頃だった。
少しだけミウに静かにしてもらって僕はオレットに嘘の電話をした。
いつもならすぐにバレるはずの僕の嘘はバレることなく彼女の少し不満の籠った声が聞こえてきた。
電話を切ると同時にどうしようもなく罪悪感に苛まれたが
「ごめんなさい。私の我侭に付き合わせて……」
彼女のそんな一言で少しだけ紛れた。
そう、これは彼女の我侭。僕は彼女に付き合っているだけ。そんな邪な思い込みで良心を誤魔化した。
「ううん。これは……僕の我侭だから」
それでも嘘はつけない。ミウにもオレットにも……聞かれたら正直に答えるつもりだ。
だから、僕はそう言った。周りのせいにしようとする、僕の我侭な思いを正直に打ち明けた。
――――
ひとまずシャワーを借りて体を綺麗に洗い流した。
「ふー……お風呂ご馳走様」
そう言い、体を拭き上げて彼女のところへ行くとその瞳に様々な感情を抱いて遠く彼方の方を見ていた。
僕が声を掛けたことに気が付くと、表情は複雑で分かり難かったがそれでも申し訳なさそうな顔と期待の籠った顔だけは覗えた。
実を言うと将来を誓い合っていた二人なのに僕とミウは一度たりともそういった経験をしなかった。
単に分からなかった時期も確かにあったが、中学生の後半は既にお互い少しは意識していた。
「大きくなったら」
二人でそう約束していたからそういうことをすることはなかった。
けど僕はオレットの存在が出来てからは既に経験済みだ。もしも彼女が初めてだった場合、ミウの今の彼氏に申し訳ない。
「ミウは……その……もうシたことあるの?」
念のためにそう聞くと案の定というかなんというか首を横に振った。
流石に今付き合っている彼がいるというのにいくら昔から好きだったとはいえ僕が初めてをもらうのは気が引ける。
「私にとって初めてはヒカリしかいないから……」
本人の口から聞き、さらに申し訳ない気分になる。これ……オレットには不倫になるし、ミウの彼氏にとっては寝取られたってことになるんだよなぁ……。
「や、やっぱり出来ないよ」
良心の呵責というかこういう状況は気弱な僕には背徳的とも感じない。犯罪そのものじゃないか。
自分からここまで来ておいてなんだが、どうしてもそういうことをしていい気になれなかった。
「今日だけは私と恋人でいて……他の事なんて考えないで」
そうは言われてもどちらにも傾ききれないしょうもない自分がいた。
でもここまで来たということは元よりそのつもりだったはずだ。聞けばまだ彼にはそういう話もしていないから隠せばバレないとのことだった。僕の心はさらに痛む。
そんなあと一歩が踏み出せないどっちつかずな僕とは裏腹に彼女は既にソノ気だったようで、僕が次に何かを言う前にまだ晒したことのない綺麗な秘部を僕に見せてきた。
「あなたと一つになりたいの……心も体も……」
ここまで言われれば流石に僕の蚤ほどの小さな本能が呼び覚まされる。
すぐに僕もベットへと上り、彼女に仰向けになってもらいその秘部の肉を少しだけ横にずらした。
綺麗なピンク色をした彼女の秘部はまさに百合の花弁のように美しく、まだ穢れを知らないため濡れてもいなかった。
そんなあられもない姿のまま自分の大事な部分をまじまじと見ている僕に流石に恥ずかしくなったのかミウは少し顔を背けていた。
「すごく……綺麗だよ……」
そんな言葉しか思い浮かばないがそれ以上の喩えようがない美しさがそこにはあった。
ゆっくりと顔を近づけていき、舌先でその綺麗な秘部の枠をなぞるように舐めると彼女がピクンと反応した。
「ま、待って! その前に……キスをさせて」
初めての経験だったためか彼女は少し息を荒くしていた。それとも僕が目の前にいるからだろうか。
ゆっくりと彼女の唇に自分の唇を重ねるとそのまま数十秒、静かな時間が流れていた。
そしてその静寂を破るように彼女が僕の口の中へと舌を滑り込ませてきた。
彼女の僕を求める小さな舌に僕の舌を絡めると、全てを飲み込むかのように縦にくっつけていた口をずらしてさらに奥まで舌を伸ばしてきた。
それはもう僕の口なのか彼女の口なのか分からないけれど、それでもお互いを確かめ合うように相手の根元まで届きそうなほどに絡めて奥まで伸ばしていった。
口をゆっくりと名残惜しそうに離すと彼女は恍惚とした表情を見せていた。それは僕も恐らく変わらなかっただろう。
どんな形だったとしても僕はミウとこうして一つになる事を望んでいたはずなのだから。
言葉はなかった。だけど僕の想いは伝わったのかそのまま静かにもう一度深い深いキスをしていた。
息も荒く、まるで貪るようにお互いを求めていた。僕はそのまま押し倒して挿れたいほどの衝動に駆られたが、初めての彼女にそんなことをすればどうなるかぐらい僕には分かる。
それでもそこまではいかなかったにしろ、僕の興奮はそのまま彼女をゆっくりと押し倒す程のものはあった。
ベッドへゆっくりと沈み込む彼女の柔らかな毛並みの感触を味わいながら静かに彼女の胸の辺りを僕は小さな突起を探してまさぐっていた。
硬い物に触れると彼女の体が少しこわばったのを感じた。初めてではそこまで刺激はないはずなのだが彼女は乳首で感じやすいのだろう。
そのまま優しく指の先で転がすと、明らかに彼女の息が荒くなっていった。
大きく荒い息と共に口を離すとスウと細く透明な橋がかかり、名残惜しくもすぐに消えてなくなった。まさに今夜の僕たちの関係のようだ。
そのまま指で優しく弄ると僅かに艶のある声を恥ずかしそうに我慢しながら出していた。
「小さくて可愛い」
彼女はとても敏感なのか言葉にも反応し、乳首は少しずつ固くその突起を大きくしていた。
指で一つを弄りながらもう一つを舌で舐めると押し殺したような媚声と共に腰を浮かせていた。
舌で舐めたり、吸ったりすると彼女は毎回違う反応を見せてくれる。
これだけでも十分に僕は満足していたが、あまり弄りすぎると彼女が満足する前に終わってしまいそうだ。
口と手の動きを止め、そのままスッとしたへ降りていき、彼女の僅かに濡れた秘部へ顔を近づける。
指で左右に肉を優しく引っ張ると先程より僅かに赤みを帯びた綺麗なピンク色が現れた。
その時点で彼女の足の筋肉はこわばっていたが、ゆっくりと舌を淵をなぞり、勃起したクリトリスをペロッと舐めると今までで一番体を反り返らせて反応していた。
恥ずかしいと思っているのか彼女は決して声を出さないように必死にシーツを掴んで耐えていた。
そういった点も含めて改めてミウの可愛さを自覚した僕は、もっと彼女の可愛い反応が見たくてそっと舌を奥の方へと伸ばしていった。
中で舌を動かす度に、腰をビクビクと反応させて応え、動きを止める度に荒い息が聞こえてきた。
相当恥ずかしいのか気が付けば彼女の足を抑える手にかなり力が入るほど彼女は足を必死に閉じようとしていた。僕の顔潰れちゃう……。
ちょっとだけ悪戯したくなり、かぶりつくように舌を奥まで入れて中で早く動かすと遂に彼女は悲鳴のような金切り声のような媚声を上げてイってしまった。
ガクガクと震え、潮を吹き出し、そのまま少しして彼女はぐったりとなった。
「ご、ごめん! 大丈夫!?」
息も荒く、完全に脱力しているが、彼女は力なく首を縦に振っていた。
どうしてもオレットではこういう反応が見れないため少し楽しくなっていたが、彼女の体力や初体験であるということを忘れて一人楽しんでいた。反省。
息が整うと彼女の方は完全に準備が出来たようで秘部も周辺の毛も僕の顔も濡らして僕を真っ直ぐ見ていた。
「じゃ、じゃあ……今度は私の番?」
何処から聞いたのかは知らないがなかなかそそる台詞を彼女は言ってくれた。
勿論僕の方も十分過ぎるほどに勃起していた。オレットは満足させられているから実は少しだけ自信がある。
が、初めての彼女にとってそれは少し恐ろしく感じたのかギョッとした表情を一瞬見せた。
充血し、いきり勃つモノをまじまじと観察して彼女は前足でチョンと先の方をその柔らかい肉球でつついてきた。
ピカチュウの手では感じることのできないその柔らかさは思わず声を漏らしてしまうほどだった。
ピクリと反応し、先走りの透明な液を漏らす僕のモノを彼女は好きなだけ視姦し、ゆっくりとその柔らかな前足で挟み込んだ。
まさに極上。柔らかな肉球の感覚と間に生える毛のくすぐったい感覚が絶妙な刺激を与えていた。
彼女ほど耐久力のない僕はすぐに声を漏らしたが、初めての彼女にとって僕の反応は指標になっているのか、何処で感じてるのかを少しずつ場所をずらしながら確かめていた。
そして彼女は見つけたのか、先端を肉球でキュッと押し、先走りを手に馴染ませるように伸ばしながらモノを器用に肉球と肉球の間に挟まるような位置で上下にゆっくりと力強く動かした。
初めてとは思えないその手つきに思わず男とは思えない甘い声を漏らしてしまう。正直オレットより気持ちいい。
そのまま手コキでイかされたとしても全く問題に思わないほどその動きはとても気持ちが良かった。
が、本能なのか刺激もかなり良く、今にも出てしまいそうだったその瞬間に手を離した。
少しその興奮と刺激の余韻が醒めるまで僕は仰向けになって息を荒くしていた。
少し余裕が出てくると、またしても僕は何も言っていないのに知っていたかのように彼女の小さな口で咥えてきた。
とても温かく、絡みつくような彼女の舌と口内の感覚は何度も経験したはずの僕の腰を浮かせるほどだった。オレット越えた。
そのまま彼女は初めてなのにも関わらず、かなり奥まで僕のモノを飲み込んだ。
恐らく喉まで届いて苦しいはずなのにそれでも彼女はそんな様子を微塵も感じさせないほどに小さな舌でモノを舐り、口全体で大きな上下運動をしていた。
元々少ししかなかった余裕はそんな予想を遥かに超える快感であっという間に限界ギリギリまで引き上げられた。
「ま、待って! 出る! 出るって!!」
彼女は初めてならそれも辛いだろうから早めに自分の限界を言ったが、彼女はそんなのお構いなしに吸い上げてきた。
そんなことをされれば僕もひとたまりもない。呆気なく果ててしまい、彼女の口内に白濁をぶちまけていた。
やはり苦しかったのか、すぐに咥えていたモノを口から出すが、勢いは止まらない。そのまま勢いよく彼女の顔へと白濁をかけていた。
最初の頃は殆ど毎日のようにオレットの相手をしていたためか、僕は自分でも疑うほどの量を彼女の口内と顔に向かって吹き出していた。
が、イったばかりで荒い息の僕には彼女に言葉をかける余裕はなかった。
「話とかで聞くよりも……嫌な感じはしないわね」
少しケホケホとむせていたが、それでも彼女は言葉通り満更ではない顔をしていた。話で聞いただけでこれだけのことができるのはある意味凄いと思った。
これで一応二人ともおあいこ。一度ずつイかせていることになる。なのでヒカリは聞いた。
「やっぱり……挿れた方がいい?」
聞くまでもないといった感じで彼女は首を縦に振った。
ならここまで来ていかないのは男として恥だ。覚悟を決めて彼女と交わることにした。
さっきまでも前戯で戯れたはずなのに、改めて正面を向き合うとお互いの心臓の鼓動が聞こえそうなほどに緊張していた。
彼女は分かるがまさか僕までそうなるとは思っていなかった。それが好きということなのだろう。
「君はイーブイだし、後ろからの後背位と前からの正常位ならどっちがいいの?」
負担の感じ方や、性的興奮も恐らく変わってくるはずなのでそう聞くと
「ヒカリの顔が見てたいな」
彼女はそう要求してきた。てことは正常位か……。
自分で言っておいてなんだがそんなことを意識していなかったので少し恥ずかしくなる。
だが、自分でその二択にしたのだから素直に彼女の要求通りにするため、彼女を仰向けに寝かせ直した。
改めて彼女の秘部を見るとピンク色は大分充血し、十分な湿り気もあり今なら挿れても痛くはないだろうと思える程だった。
が、彼女は初めてならその先に必ず痛みを覚える場所がある。最初で最後の初めての痛みを……。
「ちょっとだけ痛いと思うから我慢してね?」
そう言い、僕はモノの先端をその綺麗な秘部に宛てがうとお互いに深く息を吸い込ませた。
そのまま僕はゆっくりと腰を前にずらしていくと、まだ誰も受け入れたことのない彼女の秘部は僕のモノを少し拒絶しているかと感じられるほどに固く閉ざされていた。
だがそれでも少しずつ力を込めていくとあるところでスルリと彼女の秘部は僕のモノを受け入れた。
途端に彼女が全身をこわばらせ、恐怖を紛らわせるためか僕の背中へと回した彼女の前足に力が入ったのが分かる。
表情もあまり気持ちの良いといったものではないが、口からは確かに甘い声を漏らしていた。
そのままゆっくりと進むと遂に僕のモノを受け入れた秘部はもう一度僕のモノを止める。穢れを知らない証拠、処女膜だ。
こういう時、僕はどうしたらいいのかを知らない。一気に奥まで挿れた方が痛くないのかそれともゆっくりと挿れた方が痛くないのか……。
オレットの時は既に初めてではなかったためわざわざそういった心配をする必要がなかった。というか襲われた。
だからよくは分からないが、あまり激しくするとオレットでさえ次の日が辛いと言っていたのだからこのままゆっくりと挿れてあげるのが一番いいのだろう。多分。
「いくよ?」
一応確認を取ると彼女は既に歯を食いしばっていた。痛かったのかな? ならばもっと慎重にした方がいいだろう。
腰を今までよりも緩やかに奥へ奥へと進めていく。
処女膜に当たって動きの止まった僕のモノは少し彼女の中で押しつぶされて痛かったが、そんなものは恐らく彼女の痛みに比べればどうということはないだろう。
ゆっくりと進んでいくとついにミチッという音のような感覚が僕のモノを通じて伝わってきた。
それは本当にまだ通しちゃいけないのではと思われるほど強い抵抗だが、同時にその感覚がゆっくりと奥へ行くにつれて少し押しつぶされていた先端を早く受け入れようと掴んで離さない感覚にも感じた。
水に濡らしたスーパーボールを手でギュッと握るようなあの感覚といえば分かってもらえるだろうか。兎に角怖い。
彼女の前足にもかなり力が入っている。爪が飛び出していないといいがそんなこと彼女には関係ないだろう。
ゆっくりゆっくりと奥へ進んでいくとコツンといつの間にか一番奥へとたどり着いていた。どうやら既に処女膜は貫通していたようだ。
今度はゆっくりと腰を引いていくと、絶対に離さないとでも言っているかのように彼女の中は僕のモノを締め上げていた。
しかし、それでも腰を引いていけばあっさりとその力を緩めてくれる。そんな不思議な感じだ。
初めてだからかは分からないが、ミウとの初めての体験はまるで交尾という感覚ではなかった。
もう一度、お互いを確かめ合っているようなそんな感覚。その表現が一番正しいだろう。
ゆっくりと腰を引いていけば挿れる時よりも意外と痛くないのか、彼女の体にも力はあまり入っていないように感じられた。
一度スルリとモノを引き抜くと案の定そこには破瓜の証拠である血が付いていた。
一応、近くに用意しておいたティッシュで自分とミウの秘部に付いた血を拭き取り、きれいにしてあげた。
「思ってたよりも痛くなかった。やっぱりヒカリだったからなのかな?」
と少し荒い息のミウは嬉しそうに言っていた。どうやらよかったようだ。
まだ秘部は十分に湿っていたのでそのままもう一度挿れても問題はないだろう。そう思いもう一度先端を宛てがった。
今度は先程と違い、ミウは全然緊張した様子ではなかった。やはり口ではどう言っても初めては怖いものなのだろう。
ゆっくりと僕のモノがもう一度彼女の秘部を押し広げていくが、先程よりも抵抗が少なかった。
それでもまだオレットと比べれば引っかかる感覚は強い。ならば余計に無理はしてはいけない。
「ゆっくり動くよ?」
そう言い、僕はここで初めて彼女の背中へと手を回し、本格的に後尾の態勢をとった。
ゆっくりと挿れていくと彼女の甘い声が聞こえる。それで僕の興奮も少し盛り上がるがあくまで冷静に。彼女を傷つけるようなことをしないようにゆっくりと動かすことだけに集中した。
そうやってゆっくりと奥まで挿れ、ゆっくりと入口付近まで引き抜くを繰り返しているうちに、絡みつくような感覚が強くなってきた。恐らく彼女も慣れてきたのだろう。
少しだけその動きを早めると抵抗はなく、彼女の艶のある声も聞けた。そろそろ僕もしっかりと彼女との行為を楽しめそうだ。
あまり早くしすぎないように、しかし今度は自分もその行為を楽しむように彼女との一体感を味わっていた。
次第に僕も彼女も荒い息遣いが聞こえるようになりだしたが、その声には間違いなく苦しさは感じられなかった。
クチュッ! クチュッ! と奥へ挿れる度に性交独特の卑猥な水音が聞こえるようになりだし、彼女のこわばった体は次第に快楽から来る跳ねるような動きになっていた。
出来ることならこのまま中で果てたい。だがそんなことをすればどうなるかぐらい分からないわけではない。
少しずつその動きを早め、先に彼女をイかせようと腰全体を使って彼女に刺激を与えると今までよりもさらに大きな声で喘いでいた。
体が大きく反ったと思うと彼女は既にイってしまっていた。少しやりすぎたようだ。
腰の動きをどんどん早くし、今度は僕が気持ちよくなっていく番だ。既にイってしまった彼女は僕が腰を動かす度にダメと言っていたがここは聞かない。流石にお預けのままは辛い。
全力で腰を振っているとついに僕も限界の感覚を感じた。
そのままの勢いで一気に引き抜き、彼女のお腹へと勢いよく僕の白濁を出し、そこでようやく僕も果てた。
「ハァ……ハァ……気持ちよかっ……た?」
そう聞こうとしたが、彼女が初めてであることをすっかり忘れて腰を振っていたため彼女は失神してしまっていた。
これがトラウマにならなければいいと少し自分の浅はかさを反省しながらひとまず彼女のお腹に付いた精液を拭き取り、彼女を背負ってお風呂場へと向かった。
――――
「意地悪。意地悪。意地悪!」
「ごめんってば……」
ようやく気が付いた時は既に僕も疲れて眠ってしまっていたためか、次の日の朝だった。
案の定、無理を通してヤってしまったため、彼女は少し不貞腐れていた。
あまり無理をすれば後処理は色々と大変になるのでみんなも気を付けよう。
とそこで僕にはあともう一つ大変な後処理が残っていることを思い出す。オレットだ。
「それじゃミウ。僕はもう帰るよ?」
これだけ聞けば僕はただのヤり逃げだが彼女も了解の下だ。
急いで身支度をし、彼女の部屋を後にしようとするが
「待って!」
そんな声に呼び止められた。
振り返ると彼女は少し切なそうな顔をして
「私は今も愛してるから……!」
そう言ってくれた。
それは僕にとってもとても嬉しい事だ。
あの時から僕も彼女も想いは変わっていなかった。それだけで十分だった。
でも、思いは変わらなくても状況は変わっていく。大人というのは子供の頃に思い描いていたほど自由ではないことも今までも、今も思い知らされる。
だからこそ僕はあえてこう言ったのだろう。
「ありがとう。僕も愛していたよ」
彼女なら分かってくれるはずだ。その時の僕の表情はとても複雑なものだっただろう。だけどあえて笑顔でそう言った。
思いは変わらない。でも僕にはもう守らなければいけない今がある。
だから今度は僕が彼女を手放してあげないといけないのだろう。
本当に好きだから……。彼女にも幸せになってもらいたかったから……。
家のドアを出る時、僕は彼女の顔を見ることができなかった。
そうすれば絶対に僕の心には迷いが生まれただろうから。
だから真っ直ぐに帰った。
「お帰り~! 昨日一日寂しかったよ~」
彼女の慣れない猫被りも今の僕にはとても安心できるものだった。
はいはい。と軽くあしらって鞄を机に置くと彼女は横に座り
「他の女の匂いがする」
と一番ギクリとすることを言ってきた。もうバレたのだろうか?
そう思っていると彼女は
「当たり前か! 同窓会だし他に女の子だって来るわよね!」
そう言って自分で笑って誤魔化していた。助かった。
でも、もし聞かれたとしても話すつもりだ。昨夜のことは。彼女も僕にとって大事で大好きな人に変わりはないから……。
そう思って過ごしていた日々から既に十年。時とはあっという間に過ぎていく。
今、僕の横にいるのは今も変わらずオレットだ。尻に敷かれているのは変わらないが、僕にとっては優しい奥さんだ。
既に僕もオレットもライチュウ。昇進を機に僕たちは進化し、今では子供も一人いる。
ようやく生活に余裕が出てきた頃に進化して彼女がずっと欲しがっていた子供も作ったのだから彼女は本当に幸せそうだった。
仕事場でも今僕は沢山の新人を教育する重要な役割に。今だにクリームさんには何度も助けてもらって頭が上がらない。
一方のミウの方はというと、僕との一日があった後、彼女は僕のことも含め彼に全て打ち明けたそうだ。
僕とは違い勇気のある行動は報われたのか、今ではその彼と夫婦になっているから僕もようやく胸を撫で下ろせた。
それどころか……。
「お久し振りオレット。お邪魔するわね」
「あら! お久し振り~! ミウもヤズキも元気そうね」
今では夫婦ぐるみでのご近所さんだ。
今ではミウも綺麗なエーフィ。旦那さんのブラッキーのヤズキさんと並べるととても映える。
そしてそのヤズキさんは僕とミウの関係を知っているはずなのに
「お久し振りヒカリ。ちょっと旅行に行ってたんだけどこれお土産」
そう言って笑顔でお土産をくれるとても心の広い人た。ああ、心が痛む……。
まあ、冗談はさておき。僕とミウはその一件以来、本当にただの一度もご近所さん以上の関係は持たなかった。
単に彼女の幸せを壊したくなかったし、ヤズキさんなら必ず彼女を幸せにできるからだ。
本当にミウのことが好きで、財力も僕とは比べ物にならないほどにあった。
そう言った意味では悔しかったが、彼には敵わない。
そのため彼とは一対一で話し合ったが
「ミウのことを愛してくれる人が他にもいてくれるなんて嬉しい」
そんなことを言える人がこの世にはいるのだ。おかげで僕も彼らは全力で応援できるようになった。逆もまた然りだそうだ。
僕も将来、できるなら心だけでも強くありたいが
「私も早く旅行とか行きたいな~。近場じゃなくて海外とか~」
「……善処します」
こんな様子では何年かかるか僕にも分からない。
それでも彼女は僕にとって大事な人だ。いつか彼女の願いを全て叶えてあげたい。
そんなことを考えていた矢先
「そういえばヒカリ。今日何の日か覚えてる?」
ヤズキ夫妻が帰った後、オレットは急にそんなことを聞いてきた。
僕はマメな方で記念日やら祝日やらは忘れないのだが、今日が何の日なのかは見当がつかなかった。
首を素直に横に振ると
「あなたが十年前に不倫した記念日~」
そう彼女は不敵な笑みを浮かべて言った。本当に焦った。
「何処で知ったの!?」
人は焦ると素直に思っていることしか言えなくなるらしく、何故彼女がそれを知っているのかだけが気になって仕方がなかった。
「どこで知ったも何も、本人が言いに来たからね。驚いたわ」
あっさりネタばらし。どうやら怒っているわけではないようだ。
というよりもミウの方だ。あれだけ二人の秘密にすればいいとか言っていた彼女の方が先にみんなに言っているのが少し驚いた。僕の小心者の努力は……。
聞くところによると、なんでも近所付き合いを始めだしたほとんどその日に全て打ち明けていたそうだ。
あまりにも普通にミウが全てを打ち明けていくためポカンとして聞いているしかなかったそうだが、おかげで二人に対する怒りはこみ上げなかったそうだ。
「でさー、正直な所。私とミウ。どっちが本当に好きなの?」
興味津々で聞いてきたのは意外にもそんなこと。
「怒ってないの?」
「全然。だってあなたが誘ったわけじゃないんでしょ? それに昔からの付き合いで将来まで約束してたって……よくそこに私が付け入る隙があったと思うほどよ。で。どっち?」
彼女は純粋にどっちの方が好きなのかが気になるようだ。
こういう時ははぐらかさずに正直に答えるのがいいのだが……。
「正直に言った方がいい?」
一応そう聞くと
「勿論。あ、でもそれで捨てられるのなら嫌だな」
なんて彼女らしい冗談を交えながらそう言ってきた。
おかげで正直に言う決心がついた。
けど、多分みんなも笑うと思うけど……
「二人共。優劣はつけられないよ」
それが正直な僕の答えだ。
そういうと彼女は笑って
「優柔不断であなたらしい」
そう言ってくれた。そんな関係が僕とオレットだ。
お互いの良い所も悪い所も言い合えるからこんな答えを彼女は許してくれるのだろう。
時が経って状況も思いも変わったけれど、そこに僕の嘘はない。
「でも今まで隠してたお詫びが欲しいな~」
ミウもオレットも大事な人には変わりはない。
「またそのパターンですか……」
でももうミウは僕にとって大事な人であり、大事な女性ではない。
「今度は男の子は欲しいな~」
もう僕には大事な
「分かったから……」
人生の転機は数多くある。僕には同窓会はそのいい転機となったのだろう。
「今度はあなたに攻めてもらいたいな♪」
今は君よりも愛する人ができたけれど、それも二人の人生を変える機会になったのであれば良しとしよう。
「いつもは嫌がるくせに」
同窓会にて……。僕と君の関係は変わったけれどこれだけは言おう。今も愛している。
今回は少し切なくてでもどこか心の温まる話にしたかった。って感じです。
読んだ人が少しでも心がホッコリしてくれたら嬉しいですね。
そして今回リクエストしてくれたピカチュウ大好き人間さん。あなたのおかげでピカチュウの可愛さを改めて感じました。
みなさんは同窓会などに行かれましたか? 行った方は少し懐かしい出会いがあったりしたと思います。
そんな自分に当てはめて考えるのもまた一行かと。
更新はなんとか暇を見つけての作業なので早かったり遅かったり。安定しなくてすみません。
それでも執筆はやめないと思うのでこれからも他の作者共々、このWikiを盛り上げていきたいです。
それではまたどこかで会えた時に、(´・ω・`)ノシ
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