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初めての旧友

/初めての旧友

ヤシの実
第五部作です。重くないかしら?

初めての旧友 



まだ日が昇っていない深夜、時計は午前3時をさしている
一階の通路には使用人専用の部屋がづらりとならんでいる、一部屋3人ほど使う事ができる
使用人だけでなく、調理師、警備員、執事用の部屋などもある
屋敷の人達はまだ起床時間でないため外を警備にあたっているポケモンと警備員を覗いて、全員寝ている
深夜交代でこの時間帯は4匹のグラエナ達はすでに寝床に入っている
今は他の警備員のポケモンが深夜の警備にあたっていた、ここ最近の出来事があるだけに辺りの警戒に余念がないようにしている
当然、イーブイのリセオやエーフィのナリアの無断外出を防ぐ事もこれ以上に厳しく注意を払っている
そんな厳重な警備によって守られている屋敷の中、一室である事が起きていた

「ふぁぁぁ…」
他の使用人が起きていない中、紫色の髪をした男が覚ます
年齢はまだ19の青年だ、髪の色同様の紫の目色をしている
まだ深夜だということを自覚しているのか、眠たそうな目をしながらもベッドから起き上った
あくびをすると左右のベッドで寝息を立てている他の使用人の顔を覗き込み、起きていないかを確認する
「起きていないな、さてっと…」
男は使用人の服を着用すると、ベッドの下に隠してあったアタッシュケースを身につけ、『1-03号』と書かれてある部屋を出る
誰も起きないように静かにドアを閉める
「よし…出て来い」
モンスターボールを掲げ、ザングースを繰り出す
ボールから出てきたザングースは寝息を立てていた
「スー…スー…」
寝ているザングースの耳に起きるようにつぶやく、他の使用人に気づかれないように…
「おい、起きろ!ザンサ!」
「ん…あ、マスター…?」
ザンサと呼ばれた雄のザングース
前髪が目に被りそうなほど長く、少し邪魔っぽいようにも見える
それをカバーするような端整な顔つきのうえ、クロイズに負けないほどの美形の持ち主だ
「起きたか、あの森へ出発するぞ」
あの森…ザンサは少し戸惑った
「いいんか?断りも無くあそこいくの…、マジでやばそうなのでそうなんだけど…」
「構わないさ、少し外出するだけだ、起床時間にまでは戻れば問題は無いさ、それにいざと言うときの用意もしてある」
そう言い、腰につけてあるいくつかのモンスターボールを見せる
ザンサ用の空のボールと、それと合わせて4つのモンスターボールが着けてある
余裕の笑みを浮かべ、ピクニックを待ち遠しい子供のような主人の前に呆れるザンサ
まったくこの男にはあきれるやら歓心するやら…
確かに前はトレーナーでもあり、また冒険家でもあった
この男は危険な場所をかえりみず、まるで無茶を楽しむかのように進み、それに付き添われたものだ
「よし、そうと決まれば出発だ!」
「ん~…まだ眠いけど仕方ないな…」
目を擦りながらも、言うとおりについてくる
主人は他の使用人に気づかれずに足音を立てずに移動した
夜の屋敷の通路は暗くて少々不気味なせいか、お化け屋敷を連想させる
…そういやリセオ様も幼い頃一人でトイレに行けなくて他のポケモンに一緒に連れてもらってたな
しかし主人は違う、オカルトマニアなのか、単なる冒険バカなのか…
こういう危なそうな場所は自分から行くんだもんなぁ…俺もよく苦労したもんだ…
「さて、どんな森か調べさせてもらおうか」
期待の目を光らせながら、眠たそうなザンサと共に通路を歩く
やがて調理室にたどり着く、調理師が生ゴミ等を出すための裏口のドアに近づく
内側から閉まっているロックをあける、念のためにそっと顔を出し誰もいないことを確認する
主人は泥棒の如く、足音を立てず風のように庭を駆け出した
ご主人の自慢の足技だ!旅資金が底をつき、飢えてパンを盗んだのがばれても逃げきるあの華麗な逃げ技をおもいだすぜ!
…ってなんて馬鹿な事を考えてるんだろ、さっさとご主人の趣味に付き合ってそして帰って寝たい…
警備には地上にエネコロロとピカチュウのシノ、上空にはオオスバメとオニドリルがいる
この警備の目を掻い潜らなければ目的の地にはいけない
「ザンサ、これを被るんだ」
緑の風呂敷をザンサに手渡す、風呂敷と言ってもとても幅が広く、人間一人を覆う事ができるほど大きい
そして二人して黄緑の風呂敷に身を包み、芝生の背景に溶け込む
「これぞ忍法、背景同化の術!」
風呂敷の中で主人が叫んだ
術じゃねぇよこれ、恥ずかしいって…って言うか叫ぶな、ばれるぞ…
自分の行動に情けなく思いながらも、以外に効果はあるようだった
芝生と同じ色した黄緑の風呂敷は見事警備しているポケモンの目を欺けていた
一瞬シノが何かに気づいたような目をするが、気のせいだろうと目をそむける
「まさかこんなにうまくいくとは…」
呆れながらも結果に驚く、まさに主人はある意味忍者だ…
「ふ、そうだろ、これくらい抜ける方法などいくらでもあるさ!」
自慢げに言う、恥ずかしくないのだろうか?
黄緑の風呂敷を身にまといながらササッと警備ポケモンから走り抜ける

やがて広い草原にたどり着く
月がまだ明るく、深夜の風が二人を包み込む
相変わらずそこの草原は風でサワサワと静かな音を立てている
屋敷が遠く見えるまで進むとザンサは風呂敷を被ったまま安堵の息をついた
「あ~、はずかった…」
「まぁそういうな、これであの森へいけるって訳だしな・・・よっと」
二人、正確には一人と一匹は同時に大きな風呂敷をたたみ、アタッシュケースに収める
「さぁ行こうぜ!」
活気の良い声をあげる、素直に「おーっ」っとでも言わせたいのだろうか?
眠気と戦いながらも草原を歩く主人についていく
視界いっぱいに広がる緑一色の草原、太陽の光で照らされてよけい綺麗に写る、だが退屈だ…
どうせなら眠気を吹っ飛ばしてくれるような出来事が起きてくれたらいいな
全く元気な主人にたいし、眠そうな表情を浮かべる
「ふわぁ・・・でも大丈夫なん?あそこは遭難率がとても高くて迂闊に入ったら出られないかもしれないんだぞ?」
「心配ないさ、そのための準備もしてある、ほら」
服の中から地図みたいなのをザンサに手渡す
どうやら森の構成図のようだ、道のりから広さまで細かく描かれており、方角も記されている
「これって・・・何処から手に入れたんだ?」
地図を受け取り、不思議そうに見つめる
そもそもこの暗闇の森は複雑かつ危険でもあり、地図を作るのは不可能とされていた
行ったことは無いが、あの森が安全な場所でもない事くらいザンサも知っている
疑問に思うザンサににこやかに主人が答える
「いやぁ、これ手に入れるの大変だったんだよ、休日知り合いにさ、ずっと前に暗闇の森を通ったって奴がいたんだよ
 森の構成図を書くためにその森を通ったみたいだけどさ、そいつにもらったんだ」
「へぇ~…」
興味深い目で地図を眺める、とても良く出来ている
「だけどさぁ…そいつ何故かこう言うんだよ…『あの森には絶対に行かないほうがいい…!』ってさ…」
「そんなに怖い森なの?」
「あぁ、何でも異常に危険なポケモンばかりだと言っていたな・・・」
主人が険しい表情で言った、ザンサ再び地図を見つめると、入り口辺りから細かく書かれているが、よく見ると雑に記されているところもある
これは構成図を描いてる途中で襲われ、動揺したのか、恐怖しながら掻いたのだろう・・・
地図の雑に描かれている部分を見て、顔が険しくなる
「その…この森のポケモンは普通のとはどう違うんだ?」
持っている地図を睨みながら尋ねる
「そこは…う~ん、あいつそこまでは話してはくれなかったしなぁ…」
「だったら、そんな危険な場所へわざわざ行く必要はないぞ?正直今回ばかりは無意味にあんなとこ行きたくないんだが・・・」
「無意味って事はない、まぁ行ってみたい気持ちはあるが、それとここ最近起きてる事件は全部野生のポケモンが関係しているんだ
 それもリセオ様が襲われた時からまるで狙われているように連続で事が起きている
 そんな事するポケモンがどんなのか、見てみる必要もあるだろ?」
そう言うと主人は歩き出す、それに続きザンサも考えながら進みだした
確かにそれもそうだ…
理屈的に話す主人に少し戸惑いながらも納得する
そもそもザンサはおかしく感じていたのだ、リセオがあの時ボロボロに倒れて戻ってきて…
その次にマッチが誘拐されて、その次の日ナリアが屋敷のポケモンになった
…まぁそこまでは関係ないのだが、だがひとつ疑問に思っていたことがあった
リセオがナリアに対するあの態度…みんなの前じゃ姉弟当然みたいに振舞っていたが、時折困惑した表情を浮かべていた時もあった
マッチを救ってくれたのだからリセオはナリアに好意を持ってくれてもいいはずだ
人もポケモンも、自分の友達を救ってくれた人には好意を持ってくれるもの…だが、それが条件つきだったのなら話は別かもしれない
…てまぁこれはあくまでもしもの話しだが…考えても仕方が無い…そんな訳ないのだから…
考えるのをやめると前を向き、ただ広い草原を歩きながら、暗闇の森へと進む
大分歩く、後ろの屋敷は小さく見え、遠くまで歩いたと感じさせる
だが前の草原は暗闇の森までまだあるのか、ただ広い緑の光景が続く
「ほんっと広いなぁ、この草原は~」
主人が草原の広さに驚き、感心する
「確かに広いなこの草原は、それに静かだし…」
おまけにこんな光景だ、夜だけにあって草原は月の光に照らされてとても美しく写る
草原の光景を楽しげに見る、いつの間にか眠気はふっとんでしまったようだ
「お、見えてきたぞザンサ」
目の前に写る場所に歓喜の声をあげ、ザンサはそっちのほうに目を向ける
草原の先に森が密集しているのが見える、主人が行きたがっていた暗闇の森だ
主人は小走りで向かうとザンサも続き、森の入り口辺りにまで着く
「これが暗闇の森か~、確かに中は暗そうだなぁ」
「って言うか気味わりぃよ…いかにも何か出てきそうな感じだぜ」
美しい草原とは正反対に、陰気な雰囲気を漂わせる
「友達から聞いたんだが、この森には住むはずのないポケモンも現れるらしいから
 ここで強いポケモンをゲットしようとして返り討ちにあって大怪我したトレーナーが後を絶たないそうだが
 どういう事かまでは教えてくれなかったがな…ん~…」
手を顎に当て、暗闇の森を見上げる
風になびかれ、木の葉を一斉にワサワサと揺らす音を立てる
まるで森の侵入者に歓迎するような、あるいは警告するような葉音に驚く
…考えすぎたな、少し暗い森だこんなの…危ないのはこの中のポケモンのほうなのに…
「ん?どうしたザンサ?」
主人が心配そうに話しかける
「…何でもない、けど危なくなったらすぐでるぞ、この森を…」
「ふっ、怖いのかな?」
「ちげぇよ!危険な目にあいたくねぇだけだよ!」
からかう様に言う主人に少しムッとして返す、しかしほんとの事言うと少し怖いかもしれない…
「そうか、そんじゃ俺先に行くわ」
「あ、ちょっ…」
ザンサが待てと言う前に森を早歩きで入り、慌ててザンサもそれに続いていく
やがて二人は暗闇の森の中に消えていき、風に吹かれた木の葉が不気味にざわめく…

同じ頃、他のポケモンや人が寝静まっていて患者以外誰もいない屋敷内の病室
一階の大きな入り口に2~3部屋分使うほどであり、ベッドルーム部屋の隣に集中治療室がある
ここは身内や使用人、ポケモンなどが怪我をした時に使用される部屋である
部屋は清潔にされており、一度に10人と10匹が収容可能なほどの広さがある
病院には劣るが、設備も万全である
今はアブソルを覗いて誰も使われていない
窓のカーテンは開けられており、月の光がアブソルのエナに差し込む
それは月の祝福を受けた女性のように輝かしかった
「スーッ…スーッ…」
寝息を立て、今は気持ちよさそうに眠っている
だが、体中は包帯で巻かれていて、その姿は痛々しい、医者から絶対安静を強いられているのだ
あの時、体中傷とあざだらけで戻り、医者と駆けつけたジョーイのおかげで対したことなくすんだのだが…
その時、ドアを開ける音が静かに聞こえくる、この時間寝ているはずの警備犬のグラエナ、クロイズがドアを押し開けエナだけしかいないベッドルームに現れる
エナが起きないよう、ドア音を立てずに静かに閉じる
「………」
静かにエナに近づき、その寝顔を覗き込む
気持ちよさそうに眠っている、治療が早かったおかげで外傷はないようだ
しかしクロイズはそのエナの体を見て、表情が暗くなる
このエナの傷やあざ、それは自分の甘さと迂闊によって招いてしまったものだ・・・
ショックを受けた…まさかラグジー達に気づかれ、それを負っていたなんて…
落ち込んでいたクロイズはますます落ち込む
エナだけでなく、ラグジーやラン、シノやリセオもただ事じゃない様子で戻ってきて、まさかと思った
唯一自分が傷つけてしまったナリアだけ無事だったが、表情に明るさが無い、何かあったに違いない…
「…エナ…自分のせいで…」
悔しそうな、泣きそうな声で静かにエナに詫びる
その痛々しい体を見る度、心が張り裂けそうになる、謝って許してくれるとは思えない…
なんでこうなってしまうんだろう…ナリア様を傷つけないように言うとおりにしただけだった…
いや、それが良くなかったのだ…野生のポケモンがどれほど危険なのか、自分がよく知っていたはずなのに…
「畜生…すまない…すまない…」
エナを見るたび、聞こえていない謝罪の声を何度もあげる
自分の責任と不甲斐なさに押しつぶされそうになる、少しでも叫んでいないとどうにかなりそうだった…
だからと言ってエナの睡眠を邪魔するわけにもいかない…
ここに来て…エナに謝りたかったのだ…
「自分は…誰一人守る事が出来ないのか…」
誰一人守れない…でもマッチ様は助けられたはず!
―――いや、今思えば自分はあの時ナリア様がいたからこそ守れた事…
自分は誰かに頼らないと守る事すら出来ないのか…?
それどころか勝手な判断で仲間すら傷つけてしまった…
悔しい・・・これではあの時と何も変わらない、強くなってなどいない…やはり自分は…
「うぅ…クソォ…畜生ぉ…!」
押し込めていた感情が溢れるのをクロイズは抑えられない
エナのベッドにしがみつく様に呻くような泣き声をあげる、エナが起きてしまうかもしれないのに…
頬が涙を伝うのが分かる、今自分が泣いているのだと教えてくれる
守るためにここまで強くなった、そしてその実力を買われてここに来た
それなのに守る事が出来ず、これでは何の為に警備犬をしているのか分からなくなる
眠っているエナの前で泣きいた、謝る気持ちをひたすら込めるように…
「泣いていても仕方ないな、起こしたら悪いし…」
やがて目を擦り、落ち着きを取り戻す
するとベッドの近くの台の上に飾ってあった花が落ちてあるのを見つけ、その花をエナのそばに持っていく
まるで花に寄り添うように添え、花はエナの唇のすぐそばに置かれた
こんなので罪滅ぼしをするつもりはないが、今はゆっくり眠っていてほしい…
花を添え、クロイズはそのまま何も言わず、ベッドルームを後にする
ドアを静かに閉め、暗い表情のまま寝室に戻ろうとする…すると
「クロイズ…」
後ろからの声の主にビクッとした、その馴染んだ声をクロイズは知っている
恐る恐る振り返ると、そこにミロカロスのラーナがいた、月の光に照らされたその姿は綺麗に写る
彼女は悲しげな表情を浮かべ、クロイズを見下ろす
「ら、ラーナ様…こんな時間に起きていてよろしいのですか?」
それは自分も同じだなのだが、ラーナがこんな時間に起きている事にさすがに驚いた
ラーナはクロイズの言葉を振り切るように口を開く
「エナのお見舞い?」
寂しげな表情を残すも、優しい笑みを浮かべる
反対にクロイズはうつむきながらも「はい…」とだけ返す
「そう…あまり気にしないでね…」
「自分が…!自分が勝手に通してしまったせいで、エナに…大怪我をさせてしまい…」
焦るような声で自分を責める、こうなってしまった責任を強く感じているのだ
しかしラーナは黙って首を振り言う
「それはあなたのせいじゃないわ、ナリアが勝手にしたことだもの…
 大丈夫よ、ナリアにはちゃんと注意したから…だから落ち込まないで…」
柔らかい声でクロイズの心の傷をいやそうとする
いつも厳格そうな顔で強くてたくましい姿を見せてくれるクロイズ、しかしラーナは知っていた…
人やポケモンを守るために力を尽くしてきた彼はいつも真剣でいた
しかしその心意気もむなしく、近頃度々起きる不幸な出来事に守ることさえ出来なくて自分を責めてしまう…
救われない彼の心はいつもボロボロでいまにも壊れそうだ…
「……失礼します、おやすみなさい…」
ラーナの言葉を聞いたクロイズ、しかしその表情に笑みは戻らなかった
軽く礼をしてラーナに挨拶をする、頼りない後ろ姿を向けたまま、クロイズは自分の寝室に戻っていく
「クロイズ、待って…!」
静かに、さみしそうに歩くクロイズにラーナはほっとけなかった
「エナをあんなにしたのって…もしかして暗闇の森の連中…?」
「自分はよくわかりません…しかしナリア様達が森のほうから戻ってきましたので…」
その言葉にラーナは顔をしかめる、心当たりがあるようだ
「そう、わかったわ…おやすみ、クロイズ」
顔を戻し、いつものようにニコッと笑い夜の挨拶をする
クロイズはおやすみなさいと返し、その場を後にした
その寂しげな後姿を見送りながら、彼女は考えていた
このままではいけない…これ以上の犠牲はクロイズを更に傷つけてしまう…
ラーナは今一度、注意を払わなければならないと決心する
「安心して、クロイズ…私も守るわ、あなたもね…」
もはや姿の見えない先に、ラーナは決心した様子で呟いた

同時、窓のカーテンは閉め、部屋一面は暗闇の一色で染まっていた
リセオの部屋でリセオとナリア、二匹は気まずそうな雰囲気でベッドの上で横たわっている
まだ眠ってはいなかった、不思議に眠気は不安と心配で眠りたいという気分ではなかった
ベッドの上でナリアと寝ている、リセオに寄り添いながらも背を向けたまま
ナリアはここに着てからいつもリセオの部屋に来て寝ている、自分の部屋を与えられてもめったにそこで寝ようとはしない
…今日はめずらしく何もない、相手もそんな気持ちではないかもしれない…
リセオは気になっているのか、体を少し起こし、ナリアのことをチラチラと伺っている
後ろ姿を見るだけではナリアが起きているかどうかも分からない
しかし寝息の声が聞こえない、もしかして起きているのか?
ほんと言うと安心して眠れることを感謝すべきかもしれないが、やはり気になってしまう…
もし寝ているとしたら起こさないほうがいいかもしれない、しかし確かめずにはいられなかいリセオは小さな声で呼んでみる
「…ナリアさん…起きてます?」
「うん」
「わっ!起きてたんですか…!?」
自分から声を掛けたくせに、即答で返すナリアに思わず驚いてしまった
「…どうしたの、こんな時間に?」
それはナリアも一緒だが、リセオは小さな声で言う
「えっと…今日は…その…何にもしてこないですね」
何か喋ろうと焦って何故かこの話題に触れてしまった、触れないほうが良かったかもしれない…少し後悔した
「したいの?リセオ…」
後ろ向きのまま、やる気の無い声が届く
ナリアは軽く溜め息をつくと色気の無い声で言う
「したかったらいいよ、口は汚れるから嫌だけど、下のほうなら好きにしていいよ…」
「いぇ、僕はそう言う事で言ったんじゃ…」
尻尾をリセオの尻尾の上に絡めるように乗せる、その後ろ姿はいつでもどうぞと言わんばかりに無防備でいる
「それじゃ何?私の体じゃ不満?」
「ち…違います…、ナリアさんがあの時の事を気にしていないかが聞ききたかったんです!」
ナリアのいい加減な言葉にリセオはいつになく声を荒げた
っと言っても迫力はなく、子供の叫び声当然のリセオの声をなんともなく受け止める
「あの時?別に気にしては無いわよ、でもラーナ姉さんにはかなり怒られたけどね…」
「気にしてないって…」
気にしすぎるのはよくないが、大して気にしてないのも問題だ
そもそもナリアさんの勝手な行動で屋敷のポケモンまで巻き込んでしまった事なのに…
「仕方ないもの、私だって着いてくるなんて思わなかったから…
 でもエナには悪いことしたとは思ってるよ、さすがにね」
「ナリアさん…」
リセオは身を起こし、後ろ向きのナリアの背中を見る
その声からして伝わってくる後悔の感情を、リセオには少しながら感じた
ナリア自信も、自分を信頼してくれた仲間と呼べそうなポケモンが友達と戦って傷ついていく事に何にも感じない訳ではなかった
「リセオと気持ちいいことしたかっただけなのに、何でこうなったんだろうね」
「……」
後ろを向いたまま溜め息交じりの声で言う、その言葉にリセオは何も答えられない
やがてお互いなにも喋らず、眠れないままただ一刻に時間が経つ
なんとなく居心地の悪さを感じる、早く眠ろうと目をつむるが、眠る気がしない…
たまらず、リセオはナリアに声を掛ける
「その…ナリアさんは…野生だった頃…どんなポケモンだったんですか?」
不意な質問にナリアは身を反転させ、さっきまで落ち込んでいた表情とは反対に笑みを見せる
「ふふ、知りたい?」
「…うん」
可愛く首をかしげるナリア、聞くのが怖い気もするがリセオは頷いた
間をおいて息づいた後ナリアは語り始めた、自分の野生だった頃の生活を…
「私はね、イーブイだった頃リセオみたいな誰かに守られながら生きていなかったの」
「…?」
「あの時言ったでしょ、住処や縄張りを守らないといけないって?
 そして自分の身も自分で守らないといけないの、それが野生の掟だから…」
「野生の…掟?」
掟という意味が分からなかった、リセオにはその掟とかルールと言ったものにしばられず、自由気ままに過ごしてきたからだ
ナリアは微笑み、昔話をするようなしぐさで続ける
「私もね、昔飢えた雄共に襲われそうになったの、まだイーブイだった頃結構いい雌と噂されてね…
 だから私は自分の身を守るために強くならないといけなかったの
 どんどん強くなって、ほしいものは自分の力で手に入れる、それが私の住んでいた所では常識だったのよ」
リセオは驚いた、憧れていた野生の裏の事情に唖然とする
ナリアは付け加えるように口を開き、驚くような事を言う
「私が住んでいた所はとにかく過激だった、他の野生のポケモンがすんでいる地域とは違ってね
 ほしい物の取り合いで激しいバトルが繰り返されることもしばしあったの、それは時に命の取り合いってのも珍しくないわ」
その言葉を聞き、少しゾッとした
リセオのイメージしていた野生のポケモンとはとにかく暖かく、強く、みんな仲良く暮らしている、そうだと思っていた
だがナリアの言葉から聞かされる現実にリセオはショックを受ける
「…僕は、そんな甘い気持ちで野生の世界に憧れてたなんて…」
リセオは自分自身が恥ずかしくなり、また虚しくなる
現実と言う言葉を突きつけられたような気持ちになり、表情が暗くなる
「ふふ、そんなにがっかりしないでリセオ
 これはあくまで私の住んでいる地域での事だからさ、他の所はそんなにひどくないよ」
リセオの気持ちに気づくと不安を消すような優しい口調でリセオを頭を撫でる
「え、そうなんですか…?」
意外なナリアの答えに驚くも、衝撃の事実を聞かされた後だったためナリアに再び聞き返した
ナリアは柔らかな笑みを浮かべ、手を離すとコクンッと頷いた
リセオは安心したのか、自然に笑い顔がこみ上げてくる
「そうなんだ、良かった~…」
希望の光が戻ってきたような感じがして安堵の表情を浮かべた
そうだ…野生のポケモンにだっていい人はいるんだ!
ナリアさんだって最初は怖いポケモンだったけど、本当はいいポケモンなんだ!…今はちょっと苦手だけど
たまらず嬉しくなり、思わずクスクスと笑い出した
「そうだよぉ~、リセオ…」
リセオの笑い顔がナリアには愛らしく写り、冷えていた欲望に火をつけた
頬を赤く染めながらリセオの首に手を回すとそのまま抱きついてきた
「ふぁっ…、ナ、ナリアさん…」
ギュッと抱きつき、尻尾だけでなく、離れないように足もからめてリセオの自由を奪う
「うふふ、リセオったらほんとに可愛いね、だから私リセオが欲しくなっちゃう」
子供が玩具を大事そうに抱えるようにリセオを抱き寄せる
微笑みを浮かべるナリアに対し、リセオは恥ずかしそうだ
「ナリアさん…胸があたってる…」
「馬鹿ねぇ、わざと当ててるのよ、気持ちいい?」
二つの膨らみがリセオの体に遠慮なく密着している
たわわで弾力のあるやわらかなマシュマロのムニュッとした感触にリセオは混乱する
ナリアはからかうようにリセオを抱いたまま体を上下に動き、それに伴い密着した胸もリセオの体の上ですべる
「はぅ…ナリアさん…やめ…」
「ダメ、もぅリセオが可愛すぎるからついイジワルしたくなっちゃうじゃん」
上目遣いで見つめる、その視線を避けようにも首に手を回されてどうしようもなくなる
「ふふ、私のおっぱいそんなに気持ちいい?」
擦り付ける胸にリセオは甘い吐息を吐く、その吐息をまじかで感じ、ナリア自信も興奮が高まる
「ナリアさん…駄目…だよ…」
「やめてほしかったら自分でどうにかして見せてよ?」
リセオの叫び声を無視し、抵抗するように言う、だがそう言われても適うはずない…
相手が雌なのにも関わらず、その力の差は歴然だ
ただ抱きつかれたまま恥ずかしそうに、また不安そうな表情を浮かべる
するとナリアは顔を近づかせ、声色を使いながらこう言った
「駄目ねぇ、そんなんじゃやられるばかりよ」
「そん…な…ん…」
抵抗をしないリセオに面白半分に言う、不安そうな表情を浮かべるリセオをまるで獲物を見るような目で見やる
「それとひとつ教えてあげる、たとえ野生に憧れても私が前に行ったあの森には迂闊にいかないほうがいいよ
 あそこ森の連中はとぉっても危ないポケモンばかりだからさ~
 もし迂闊に入っちゃったら襲われて大変な目に会うよ、特にリセオみたいなかわい~子はさ…チュッ…」
「ひゃぁ…!」
警告の言葉を発しながら頬にキスする、目は潤み、すぐにでもやりたいそうな笑みを浮かべた
「可愛いよ、リセオ…私絶対あなたを離さないから…ウフフ」
愛しそうに毛並みのいいリセオの毛を優しく撫でる、一本一本をまるで自分のものみたいに扱う
天使みたいな…または悪魔みたいな自分の笑みが、リセオの目に映る
彼女の抱くその手はとても暖かく、そして何か違和感があった……
お互いに、不安そうな顔と、愛おしいそうに笑う顔が見詰め合っていた

いつまでも太い大木と見えない先の夜道が続く森
不気味な雰囲気を漂わせる森をまるで心霊スポットを楽しむような若者みたいな様子で警戒なくルンルン気分で歩き続ける主人
「何か出ねーかなー、珍しいポケモン」
…違うだろ、そりゃこの森には変わったポケモンは住んでいるだろうけど当初の目的が違っているぞ…
呆れた目で主人を見つめるザンサ、こんな気味の悪い森の何処が良いのか俺には全くわからない
当然ここに住むポケモンも理解できないが…
「さっきからずっと歩いているのにな~んにも出てこないじゃんか、もしかして寝てるんじゃね?」
退屈のあまりあくびしながら口走る
「ん、そうか?この時間帯でも起きている奴がいてくれればいいが…」
地図を確認しながら次の方向を確かめる主人、大分奥までいったのだがいまだ一匹のポケモンすら発見できていない
懐からいくつかのモンスターボールがチラついて見える、それも高級のハイパーボールを見えるだけで6個は確認できた
多分ゲットするつもりらしいが…大丈夫なのだろうか?
「もし俺がここのポケモンゲットしたら、みんな俺のこと見直すだろうな~」
「その前に驚かされて泣いて帰るのがオチじゃないの?」
「な…馬鹿にすんな、絶対に一匹くらい捕まえてやる!」
怪しい雰囲気に合わず、そんなやりとりをしていた二人、だがその光景を大木の木の枝から見下ろしている影には気づくいてはいなかった
「………」
それはずっと前からつけていたようだ、ザンサ達が森に入っていた時から…
獲物を見つめる目を光らすポケモン、音も立てず枝から他の枝へと飛び移る
「…ん?」
一瞬何かが動く気配を感じた、気づいたザンサは警戒態勢を取った
振り向いた先には何もいなかった、気のせいだろうか?だが気配は確かに感じた…
「どうしたザンサ?」
「いや、さっき何かがいたような気がしたけど…」
ザンサが辺りを見回しながら言うと、子供みたいにパーッと明るくなる
「おお、早速第一匹のポケモン登場か!?」
カブトムシを探す少年みたいに大木の一つ一つを見上げる
呆れながらザンサも一緒に探した、だがどこを探しても見つからない、それにさっきの気配も消えている…
暗い森の中を散々と探し回り疲れてきたが、主人は意地でも見つけようとした
それでも見つからずただ時間だけが過ていく
「くそ~、一体どこにいるんだよ~森のポケモン~」
幾度探しても主人が求めていた野生のポケモンは影すら見せない、ただ暗い森の中を焦りながら探し続ける
まぁこんな時間だから見つかりにくいのは仕方がないかもしれないが、それにしても一匹くらい見つかってもいいはずなのだが…
草むらや洞窟とは違って出現する種類が不規則であるこの森で何が出てくるか主人が興味を持つのも分かる
さっきまでの警戒心を忘れたザンサはひたすら何かを見つけようと必死になったいた
「ん?あそこは…?」
暗い地面に目を凝らし、眺めてみた
「おーいマスター、ちょっと見てくれよ」
すかさず呼び、急いで駆けつけた主人に見せた
そこには活気のない草の一部が炎で焼かれた後を見つけた
「これって火で焼かれた後のようだな…」
真剣な眼差しで焼けた土を軽くつまんだ
土の焦げ目からすると大分前の物のようだ、少なくともここでバトルか何かがあった事を教えてくれた
何より森であるはずのこの場所で炎ポケモンが生息している可能性があると思わせてくれる
「ふ~む、どうやらこの近くにいそうだな…よし、もうちょっと奥へ行ってみよう!」
そう言い、アタッシュケースの中から地図を取り出した
指差した場所はザンサが睨んだ部分、恐怖で震えながら描いていたと思われる場所だ
少々雑で分かりにくかったが、地図どおりにいけば何てことはないはずだ
「分かった、でもあんま行き過ぎるなよ、地図を描いた奴だってとんでもない目に会っているんだから」
「大丈夫、行き過ぎなければどうと言うことはないよ」
ザンサの警告を軽く受け止め、再び足を動かした

一線の光も通さない森の中で地図を頼りに奥に進む
地図の記されている方向どおりに森の中を進んだ、以前暗い闇だけが続いていた
ここまでの道筋はなんとも無かった
だが、進むにつれザンサはじょじょに何者かの気配を感じ始める
警戒の姿勢を崩さずに主人に声を掛ける
「マスター、誰かに見られているような気がする」
「ん?何処にいるんだ?」
振り返りざまに辺りを見回すが何もいない
「誰もいないぞ?また見間違いじゃないのか?」
「嫌、今度ははっきり分かるんだ、1匹…嫌3匹くらい!」
焦りの表情が浮かぶ、そいつらはすでに二人の存在を知っていたかのように密かにつけていたのだ
「え、マジで!?ボールボール…!」
慌てて懐のボールを取り出そうとした、危機感が無いのか今自分達が置かれている状況を理解して欲しい…
呆れながらも、警戒の姿勢を崩さない
何処にいるかまだはっきりしない中、いつでも戦えるように構える
「(何処で見てやがる、出てくるのなら出てきやがれ…!)」
未だ姿の見えない敵に鋭い視線で探す、だが姿かくして気配かくさず…まるで襲うタイミングでも待ってるかのように姿を現さない
焦りが募る、そんな時に主人は木の枝にひっかかったポケットをはずすのに専念していた
のんきなものだ…さっさと他のモンスターボールで仲間をだしてほし…!?
その時ザンサはハッとした、木の枝の上から主人を見下ろす黒い影に気づいたのだ
薄っすらと笑みを浮かべそれは高さ14メートルもある木の枝からバランスよく立っていてた、すると…
「ハッ!?」
なんとそいつは音も立てずに鋭い爪をたて、こっちに向かうように枝から飛び降りた
目掛けて飛び降りた先はザンサ…じゃない!主人のほうだ!!
主人はひっかけたポケットを外していてて気づいていなかった
そいつは獲物を仕留めるような笑みを浮かべ、主人の背後に迫る
「危ないぃっ!!」
とっさに叫び、大きく跳躍する
主人の首本に爪がえぐろうとするその瞬間そのポケモンにタックルをかました
「ぐはぁ…!」
そのポケモンは叫びと共に強く地面に叩きつけられた
主人の目の前で着地し、構える
「え、何が起きたザンサ?」
とっさの事に事態が読めていない主人だが、ザンサの睨んでいる方向にポケモンがいることに気づいた
姿形からして、どうやらニューラのようだ
それも何故か頭にサングラスを乗せている…
「はぁ…はぁ…」
息を切らしながらそのニューラを睨むザンサ
ニューラは激突の衝撃で体をよろめかせながらもゆっくりと立ち上がった
「ッチェ、仕留めそこなったか…」
不適な笑みを浮かべながら自分についたドロを払いのけ、頭に乗せてあるサングラスの位置を直した
「おぃ…お前、今マスターを狙っただろ…!」
「え?」
主人が意味不明そうに驚きの声を上げる
ニューラは反省した様子もなく、爪を構えニヤリと笑う
「あんた達さ、よそ者でしょ~?
 ダメだなぁ~まるで襲ってくださいって言ってるようなもんね~」
「くっ…襲うのなら俺でも良かったはず…!」
よつばいの格好で言う、こいつが狙っていたのは主人だった…
「え、どういう事??」
「マスター、指示をくれ!こいつは危ねぇぜ!」
怒鳴るように指示を求める、主人はまだよく理解していない中あわてて指示を飛ばす
「あぁ、ザンサ!電光石火!」
指示を聞き、地面を蹴るように駆け出しすぐさまニューラに体当たりをかます…が寸前の所で横に飛ばれ空振りした
ニューラは素早い身のこなしで大木を蹴るとその勢いにまかせ、ザンサ目掛けて連続で切りかかる
みだれひっかきだ、左右に体を動かしそれをかわし続ける
焦りの表情が浮かぶ、みだれひっかきのひとつひとつが正確かつ素早く、ザンサを捕らえようとする
「ザンサ!後ろへ飛んできりさくだ!」
主人の次の指示が飛ぶ、その通りに後ろへ飛んで体制を整えるとすぐさまニューラにきりさこうとする
だが爪が届く寸前に相手の爪で防御される、すぐさまニューラはもう片方の爪でザンサの真顔をとらえようとした
「ザンサ避けろ!」
言われるまでも無くザンサはぎりぎりの所で左に避けた、だが完全に避けきれず頬から血が伝う
「…チッ!」
舌打ちしながら相手を睨みすえる、対象に相手は余裕の笑みを浮かべていた
雌相手苦戦するなぞ、雄として情けないが余裕かまして戦える相手ではない
「結構やるね~お前、でもまだまだかな?トレーナーもポケモンも…」
「何?」
二人同時に叫んだ、するとザンサはその意味を悟り、驚いた
「マスター後ろ…!」
「な…!!」
今までニューラに気をとられていて忘れていたが、今度は分かりやすいほどに気配を感じた…迂闊だった…
後ろを振り向いた二匹は冷や汗を流す、大木の間からポケモン3匹が現れた
シャワーズ、ハクリュー、ゴースト…
息を呑んだ…主人の後ろががら空きないま、いつ襲われてもおかしくなかった
主人があっけにとられ、出てきたポケモンを見つめた
「シャワーズにゴースト…それにハクリューまで?」
こんな暗い森の中、ゴーストならまだしも、イーブイ系やドラゴンまでも出てきて驚いた
「やはり噂は本当だったんだ…」
その言葉は恐怖か、または感激の声が含まれていた
するとシャワーズが笑みを浮かべながら口を開いた
「あらあら、こんな所に人間がなんのようかしら?」
シャワーズの言葉に続き、ゴーストが下劣な笑いで続く
「ケッケッケッ、今度の獲物はコイツラかなぁ~~?」
「えっ…あっ…」
「馬鹿、ボーッとすんな!他の奴等を早く!」
ザンサが激を飛ばす
噂が本当なら、コイツらはマスターすら襲うかもしれない…!
「あっ…!えぇい!」
ハッとした主人は慌てて腰につけたモンスターボールに手を掛け、3つ同時に空高く放り投げた
ボールから一線の閃光が放たれ、そこからポケモンが出てきた
こっち側のポケモン、プラスルとマイナンとカメールを繰り出した
ザンサのチームメイトだ、昔から主人と共に危険なたびに付き合った仲間だ
「ふわぁ…なんですか~…?」
プラスルが目をこすりながら主人を見つめる
「ザンサさん、こんな所で何を…?」
3匹とも寝ぼけ眼で状況を把握できていない
目を覚ますようにザンサが大きな声をあげて伝える
「起きろ、今大変な状態なんだ!!」
「あ、はい!!」
カメールの方が素早く状況を判断したらしく、眠気を払うように首を振るとプラスルとマイナンに水鉄砲を軽くかける
「ぶはぁ!な…バトルですかぁ??」
完全に目を覚ましたプラスルが絶叫する、目の前に写ったいかにも怪しい目つきでこちらを見るポケモンに驚いたようだ
「と、とりあえず頼む、囲まれている見たいなんだ!」
慌てて指示を飛ばす、すかさず3匹は警戒態勢をとる
これで形勢は五分五分と言った、だがシャワーズは余裕の表情を浮かべる
「ふふ、人間を狩る前にちょっと遊ぶのもいいわねぇ」
「人間を狩るだと…?ふざけるな!」
あまりの言葉に思わずザンサが怒鳴る、それをなめるような態度でゴーストが前に出る
「ケッケッケッ、まぁそう怒るなよぉ、結構楽しいぜぇ~?」
「…ふざけた野郎ですね、こいつは僕が仕留めます!」
クールなカメールが睨みながらザンサに言う
「分かった、そいつは任せた!」
「プラスとマイナはシャワーズとハクリューを頼む!」
「分かりましたぁ~!」
主人に指示されて二匹同時に活気よく返事を返す
プラスルのプラスとマイナンのマイナの二匹は体中から電気を帯び、やる気の態度を見せてくれる
「あらあら可愛い子達ね、ウフフ、私が遊んであげるからかかってらっしゃい」
子供をあやすような声で誘う、その態度に二匹はムッとして答えた
「うるさいです!おばさんなんかに負けないです!
「お…ちがぁぁう!」
プラスのビシッと言ったセリフがシャワーズの怒りに触れた
「プラスゥ~、どう見てもお姉さんのようにしか見えないですょ?」
「はれれ~…?」
マイナに突っ込まれ、決まっていた表情が崩れる
…どうやらまだ寝ぼけているようだ
殺伐とした空気の中、プラスが調子を崩してくれた、隣にいるハクリューが思わず吹いてしまう
「ケーッケッケッケッ、初めておばさん呼ばわりされてなぁシェアリー」
ゴーストもからかうように尋ねるシェアリーと呼ばれたシャワーズは睨みながら怒鳴る
「うるさいわねぇ、もう!こんな子達早くやっつけちゃいましょ!」
「オッケー、俺はそっちの青いガキをやらしてもらうぜ」
さっきまで怪しい笑みを見せた表情は苛立ち、その視線をプラスとマイナに向けた
雄を散々虜にさせ、貢物させてた自慢の美貌とスタイルがボケたプラスルなんかに言われたのが腹が立った
「ふふ、ちょっときついお灸を据えないといけないようねぇ…!」
落ち着きを取り戻し、その美しく笑みから殺気を込めた目が向ける
プラスはシェアリーと呼ばれたシャワーズの睨まれ、その気迫に押し潰されそうになりながらも睨み返す
「ま、負けないです…!」
横目でニューラを警戒しながら見ていたザンサが不安になった
プラスとマイナはまだこっちに入ってから日が浅い、双子の雌であるが、当然実力も知れているため少々荷が重いかもしれない
でもがんばってくれ…こいつを倒したらすぐにそっちを援護するから!
ザンサはマイナにアイコンタクトで伝える、マイナをすぐにそれを察知して頷いた
「なぁぁにやってるんだよぉ、行くぜぇケーッケッケッー!」
先制をきったのはゴーストだ、気味の悪い笑い声をあげながら両手からシャドーボールをカメール目掛けて放った
「バブルこうせん!」
カメールは口から大型の泡を連続に吐き出し、シャドーボールを相殺させた
だがゴーストは怯むことなく次の攻撃を繰り出してきた
「ケッケッケッ、シャドーパンチィィ!」
「うあぁっ!」
霊気をまとったパンチがカメールを捕らえた
強い…!主人はその強さに焦りを見せる
「ホラホラ、よそ見してると危ないよ!?」
カメールに気をとられ、ニューラが鋭い爪で接近してきた、ザンサは舌打ちしながらそれに応戦する
「ザンサッ!」
驚きに主人がザンサの名を呼んだ
するとザンサは振り返らず「プラスとマイナを…!」と呻き声みたく言った
ザンサを心配するも、「分かった!」と返すとプラスとマイナに振り返る
すでに戦闘は始まっていた、シャワーズのハイドロポンプ、ハクリューの叩きつける攻撃をただ慌てて避けながら応戦していた
だがバトル経験の少ない二匹は反撃するまもなく、一方的に攻撃に晒されていた
「プラス、シャワーズとハクリューに10万ボルトを、マイナはおうえん!」
主人の命令を聞いたとたん、二匹の目つきは変わった
マイナはすかさずプランをおうえんしだした、プランはその効果により自分の力を向上する
「いくです!10万ボルトォォォ!」
体中が発光し、普通の10万ボルトより強い電撃が放たれた
小さい体で放たれたとは思えないほどの巨大な電撃はまとまっていた二匹を包むように襲い掛かる
焦ったシャワーズとハクリューは左右に散り、回避した
「続いてマインはじゅうでん、プラスはでんこうせっかでかく乱しろ!」
次の指示が飛んだ、マインは体を力ませ電気を溜め込みだした
そしてプランは左右に散ったシャワーズとハクリューを素早い動きでかく乱させる
「ウッ、こいつっ!!」
小さいだけにあって大きい体じゃ捕らえることは難しく、焦って尻尾で叩きつけるがどれも空振りする
右に行ったと思えば左にいたり、見事な動きでハクリューをかく乱している
「何してるのよ!そんな子相手に!」
シェアリーが怒鳴り、距離を置いて素早く動くプラスに冷凍ビームを放った
冷気をまとった光線が空気を冷やし、まっすぐにプランに向かってくるのに気づいたプラスはとっさに方向転換し跳躍する
しかし、運悪く石につまづいて体制を崩して無理に動こうとしたためか、左足をもろにくらってしまった
「キャアアア!」
いてつく寒さに悲鳴をあげ、足を押さえながら小刻みに震える
「プラス!」
じゅうでんを終えたマイナはすぐにでも攻撃準備に入る
「マイナ、プラスを助けろ!プラスはおうえんだ!」
すぐさま主人の指示が飛んだ、尻尾で叩きつけるハクリューに突っ込みプラスの元に駆けつけたマイナは一心不乱に強烈な電気を帯びた体、スパークをハクリューにぶつける
バリッっと大きな音と閃光を放ち、強烈な電撃の衝撃に悲鳴をあげたハクリューは勢いで大木へと叩きつけられた、プラスと応援とじゅうでんの効果でスパークは驚くほどの威力を見せてくれた
「チッ!」
さっきまで逃げ惑っていた二匹がうって変わり、舌打ちをしながらハイドロポンプを動けないプラスへ放った
プラスは圧倒する水の勢いと動けない足のせいで青ざめた、やられる…!
…だがそのハイドロポンプはプラスには命中しなかった、横から割って入ってきたマイナがかばってハイドロポンプを受けたのだ
強烈な水圧をもろに受けたマイナは宙を舞いながら大木へ衝突した
「マイナァ、大丈夫!?」
「うぐっ…大丈夫…です…!」
「次は外さないわよ、ハイドロポンプッ!!」
まだ足を動かせないプラスに再度ハイドロポンプを放った、まるで大砲の玉のように範囲の広い水圧が襲ってくる
マイナは水圧で衝撃を受けた体を起こそうにもすぐには動けずにいた
「プラスゥ…!」
「(フフ…)」
今度こそあたる!勝利を確信したシャワーズだが、その確信は突然横から割り込んできた一線の光線によって裏切られた
その光線は主人の真横を彗星の如く冷たい空気を残して通り過ぎ、強烈な水圧のハイドロポンプに命中した
急激に冷やされた水はたちまち凍りつき、プラスに命中する寸前の所で凍りついた

水圧はたちまち一線の美しいつらら状に形を変えて動きがとまり、地面に砕けるように落ちていった
「な…!」
シェアリーは驚愕した、自信のこもった一撃がイレギュラーな方向から来た一撃によって止められてしまった
信じられないような顔をするシェアリー、プラスも同じ気持ちでいた…
二匹とも驚きの色を隠せないまま目の前で落ちた氷の柱となったものを見つめ、シェアリーが冷凍ビームの来た方向を睨んだ
「…!!」
「え、何だったんですか今の!?」
それも睨んだとたんまたもや驚愕する、プラスとマイナも同じ方向を見つめるが、暗くて全く目には映らなく
暗闇に慣れているシェアリーだけがそれをはっきりと見えていた、使用人の後ろでとぐろを巻いて写っているポケモンをシェアリーは知っていた
「あいつは…クッ!」
まるでシェアリーを誘うように睨んだ後、とぐろを解くと森の奥へと逃げていくように消えていく
「フフ…逃がさないわよ、…ナ!」
「えっ!?」
さっきまでクールな笑みは怒りを混ぜた笑みへと変わっていき、凄い速度でそれを追いかける
プラスが「待てです!」と言う叫ぶ声も聞かずに風のような速さで森の奥へと消えていった
聞き取れなかった最後の言葉が気になりつつよろめきながら立ち上がるハクリューに視線を戻した
「クソ~、シェアリーの奴…いきなり何処へいきやがる…たくっ…!」
「こいつ…まだ動けるのか!?」
ゲットの瞬間を狙ってハイパーボールを構えていた主人が焦りの表情を浮かべた
さすが暗闇の森のポケモンっと言ったほうがいいか…確かに半端な強さでない
カメールもゴースト相手に苦戦しているようだ、ザンサの方も同じように…
「プラス、マイナ!こいつは二匹でやるぞ、加減して倒せる相手じゃないからな!」
「もちろんです!」
足を凍てつかせた氷を自力で割り、マインと並んだ
2対1とは卑怯で不本意だが、今じゃそうは言ってられない状況になってしまった
「しゃ~ねぇな、二匹まとめて相手にしてやるよ!」
二匹相手にたじろく様子もなく、薄笑いながら突っ込んできた
ドラゴンと言う体格を覆すプラスとマイナの姉妹パワーを信じて、主人は指示を飛ばした…

・・・・・・・・・

暗闇の中
進む道の障害となる大木を素早い身のこなしで避けて進み、強い冷気をまとった光線を暗闇に慣れた目つきでそれを狙い続ける
だがそのポケモンも巨体な割りに動きは素早く動きながらそれを避け続ける
撃ちまくった冷凍ビームは大木に命中するだけでそいつには命中しない
「いつまで逃げ続けるつもり!?」
シェアリーの猛攻に反撃する様子もなくひたすら誘うように逃げ続けている
目つきを鋭くさせ次にハイドロポンプを放つ
だが目標はそれではなく、大木の中にあるまだ育ちきっていない木にに命中させた
木は強力な水圧に負け、根っこごと引き抜かれて押し出されるまま逃げるポケモンの目の前に木の葉を撒き散らしながら倒れていった
そのポケモンがはっきり見えるまで近づき、逃げ道を塞がたポケモンは観念したのか振り返る際にこう言った
「久しぶりって所かしら…シェアリー」
シェアリーと呼ばれたシャワーズはニッと笑った、それは昔の幼じみを見るような目でミロカロスを返事する
「そうねぇ何年ぶりかしら、ラーナ?」
その正体がはっきりした、魅了するような艶と体をした屋敷の人達が知っているラーナだった
「まさかこんな形で再開なんて正直びっくりよ」
「そうね…せめてまともな形で会いたかったわね、私達…」
久しぶりの対面にも関わらずその空気は重く、友達同士の再会のような感動的な雰囲気ではなかった
二匹は互いに見つめあい、やや間をおいてシェアリーがクスッと笑い
「あなたが急にいなくなってから私、とっても寂しかったのよ?
 あの時はあなただけが私の信頼できる友人だったからね…」
「そうね、私もそうだったわ…」
「覚えている?私がまだイーブイであなたがなりたてのミロカロスだった頃
 私達は信頼できる仲間がいなくて、そこへ私と同じ気持ちでいた時私に声をかけたのを…」
ラーナは黙って頷いた、その目はまさに幼馴染を見る目でいた
「あの頃は楽しかった
 私とあなたはお互いに気持ちを知って、それで仲良くなってはいろいろしたわね…」
「えぇ、二人で助け合って…ほしい物は協力して奪っていた…それは今でも覚えているわ」
ラーナの返答にシェアリーの表情が変わった、シェアリーの感情から敵意が消えた
「私がまだ弱かったミロカロスの頃、仲間に虐げられて一人で落ち込んでたときね
 あなたが小さかったあなたが泣いているのを見てそれで声を掛けたのが始まりだった」
 私達弱い雌は雄に弄ばれ、お互いに苦痛の人生を送っていた事を慰めあっていた…」
それはラーナとシェアリーの過去の話だった
言葉を続けようとしたラーナ、それを割ってシェアリーが口を開く
「私達はいっつも思った、なんでいつもいつもこんなにつらい目に会わなきゃならないんだってね…」
 今となっては分かりきった話しなのにね、それは弱かったから…」
ここで弱いと言うことは負け犬と同じ、強くなくては自分の身も守れない…そういう所だった
語るにつれ、強張った表情で続ける
「私はバトルが苦手だった…臆病だったから…
 それで他のポケモンから馬鹿にされて、時には狙われたりした…
 私はいっつも悔しかった、そう涙を流していたらあなたはこう言った」
 ―――…あなたもそんなつらい目に会っていたのね、私もあなた見たいにされていたわ…
 ―――でも…私、このままじゃ嫌…ねぇ…あなたと私で力を合わせてやっていけば…そしたらもうつらい目に会わなくていいかもしれないわ…
 …私は驚いて、そして頷いた、それからよね私達がコンビを組んだの」
それからラーナとシェアリーは互いに力を発揮させた
力が無い二匹だったが、ラーナとシェアリーはそれぞれ技能が備わっていた
シェアリーはこの時から考える力が強く、作戦を練る事が出来た
そしてラーナは巨体な割りにすばしっこく、相手に気づかれないように行動する技能が備わっていた
二匹はそれらの力を合わせ、馬鹿にした雌の秘密を探って弱みを握り、散々貢物をさせた
襲ったりする雄はシェアリーの策士をあてに相手を誘い込み罠にはめて動けなくし、報復をした
最初はうまくいったりする事はなかった、だが繰り返し続けていくうちに力をつけ、確実に相手を追い詰めていくほどにまで強くなっていた
時には近隣の町で人間を奇襲し、その持ち物を戦利品としていただき、成功と勝利でお互いよく笑っていた
「私達は闇のラーナとシェアリーとして恐れられ、誰も私達の事を舐めてかかる奴がいなくなったね」
「そうね…あの時は私も楽しかったわ、邪魔する者もなくとても充実していたわ」
「それからね、私は策士として十分に力を発揮させて今は他の友達と一緒にいろいろ楽しんでいるの」
シェアリーは微笑み、誇らしげに語る
だが対象にラーナはそんな誇らしげに語るシェアリーを哀れむよな目で見る
ラーナから見る限り、シェアリーは昔より綺麗になり、そして何かが大きく変わっていた…
「シェアリー…私が何を目的でここに来たわかる?」
静む声で訴えるような眼差しを向ける
「ううん、それよりラーナは急に私の前からいなくなたの?」
ラーナの質問を押し切りながら笑みを浮かべていた表情は静かな表情へと変わり、質問してきた
落ち着くような声で、だがその声には微妙ながら怒りの声が混じっていた
「シェアリー…」
「あの時私はあなたを待った、いくらでも待った!そして時には探しにも言った!遠くまで…
 …でもあなたは帰ってこなかった…見つからなかった…私は気が狂いそうになるほど泣いたわ…
 あなたは私のベストパートナーと思えるくらいの親友だったから……!!」
じょじょに怒りをあらわにする、その怒りの視線をラーナに向けたまま…
そんな様子に少したじろくもラーナは首を振り、静かに口を開いた
「ごめんねシェアリー…」
「ラーナ…何で何も言わずに私の前からいなくなったの!?
 あなたとなら何でも出来るってそう信じていたのよ…!」
怒りの声はやがて涙声に変わっていき、ラーナだけが知っていたシェアリーに戻ったような気がした
何も言わず、シェアリーを悲しませた事に罪悪感を感じた
そしてラーナはゆっくりと口を開き、自分の過去の話をした
それは空が真っ暗だった雨の日
いつものようにシェアリーとつるんで人間を襲撃したあとの事だった、運悪く人間の車に引かれ重大な怪我を負った…
その車は逃げ去るようにさっていき、ひたすら血が流れた…
あの時は自分に対する天罰か不幸と思い、死を覚悟した
だがその時もう一台の車が止まり、高貴そうな人間が駆けつけてくれた事が始まりだった、その人間は私を助けようとした
最初は暴れたが、すぐさまポケモンセンターに連れてってもらい一命を取り留めた
私は助かった、それは今までにない生への喜びを教えてくれた、そしてその人間は笑って頷き私のポケモンにならないかと言ってくれた…
私は人間の優しい心に討たれ、うんっと頷きこれからはこの人間のもとでをしようと思った…
数日後傷が完治してシェアリーも一緒に住もうと誘おうと思った、けど私が探しに行ったときはすでにシェアリーは遠くに行き、どこにもいないと言われたのだ…
それからずっと待った、窓からでは遠すぎて見えないあの森でアナタの事をずっと…ずっと…
「っと言うわけよ…」
「………」
ラーナの話が終わり、しばらく沈黙が続いた
シーンっとした重苦しい空気が辺りをただよう、その空気の中で先に口を開いたのはシェアリーだ
「ラーナは、私の知らない間に人間のポケモンになっていたのね…」
震えるような声、まるで自分が置いてけぼりになった気持ちになる
「えぇ…あなたも一緒に住もうと誘おうとしたけどその時にはすでにいなかった…」
悲しそうに見つめる、他に何を言ったらいいのか分からない
数日間と言う期間が二匹の距離を離してしまったのだ
互いの心は離れ離れになってしまい、寂しさと孤独感で胸を締め付けられる思いをした
そしてシェアリーは自分がいなくなった後でも、新しい仲間と一緒に前と変わらず策士を続けている…
ラーナは真剣な眼差しでシェアリーに訴える
「シェアリー、もうほかのポケモンや人間を傷つけるなんてもうしないで…
 もうこれ以上誰かを傷つけていく姿なんて見たくないよ…」
自分の気持ちを伝えるように、シェアリーの心に呼びかけた
その声、その自分を見る目はまさにあの時のラーナと同じ目だった…
シェアリーは下を向き、その肩をフルフルと震わせた
アンリやフレム、ナリアと言ったイーブイ進化系の友達を作ってもなお、シェアリーの心の奥底ではラーナの事を思い続けていたのだ
「シェアリー…?」
泣いているのだろうか…ラーナは少し心配した後、暖かい微笑をシェアリーに向けて言った
「大丈夫…私達はいつまでも親友だから…ね…だからもぅ…」
「勝手すぎるわよぉ!そんなのぉ!」
シェアリーの怒りのこもった叫び声がシーンとした森中に響き渡った
思わず顔をハッとさせ呆然とする
ゆっくりと顔を起こしラーナを睨み、声を荒げる
「あの時、あなたの方から誘っといて…そしてあなたの方から消えて…何を今更…!」
ラーナの優しい言葉に憤りを感じたシェアリーは唸るような声で言う
その表情からは怒りと悲しみが痛いほどにラーナに突き刺さった
「シェアリー、私…その…!」
ラーナが言い終ええる前にシェアリーは落ち着きを取り戻す
無理にを作り笑みを浮かべるとシェアリーは驚くべき言葉を発する
「まぁいいわ…今更どうにかなるものじゃないからね…」
 ウフフ、そういえばラーナの家は向こうの屋敷みたいねぇ、案外近いじゃないの…
 これも偶然かしら…クスクスッ」
語るにつれ、冷笑を浮かべてラーナを威圧する
明らかに怪しく笑うシェアリーにラーナは背筋にヒヤッとしたものが走った
まさか何か知っているのでは…!?
「可愛いわよねぇ…リセオ君ってさぁ?」
…え…今何て…!?
ラーナの驚いた表情を見て余裕の笑みを浮かべ唇をペロリと舐める
「あんな可愛い子なら私もほしいわね…クスッ」
「な…なんでリセオの事を知ってるの!?」
思わず声を上げ、シェアリーに近づこうとする
だがその瞬間シェアリーは冷凍ビームを足元に放ちたちまち地面を凍らした
「待って…シェアリー!!」
名を呼ぶ声も彼女は聞かず、一瞥した後そのまま森の奥へと逃げて行った
自分の思いが伝わらず、暗闇の先へ消えていく彼女の後を悔しそうに、また悲しそうな目で見送る事しかできなかった
だがここで足を止めている暇はなかった…
ラーナは再び体を動かし、消えていった方向を惜しみながらその場を後にした

地図を頼りにひたすら暗い森を走る
泥まみれになった服で息を切らし、傷だらけのザングースと一緒に森を駆け出していた
「はぁ…はぁ…」
後ろには誰もいない、だがここで立ち止まれば奴等が襲ってくる…!
汗だくになりながら懸命に走る、疲労感と目眩ですぐにでも倒れてしまいそうなほど…
だが無常にもその奴等はやってくる…まるで血に飢えた化け物みたいに…
「ケッケッケッ、待てよ人間~~~!」
不気味な笑みを浮かべながらすごい速さでゴーストがやってくる、それにハクリューも続いていた
振り返る事もなく懸命に走り続けた
戦力となるプラスとマイナとカメールはすでに力尽き、唯一残るザンサはニューラとの戦闘で傷ついている
クソッ…何なんだこいつら…!全力で戦ったのに平然としてやがる…!
「あっ…!」
「マスターッ!!」
走る途中大きな石につまづき、派手に転ぶ
全身が泥でさらに汚れ、顔面にも付着していた
息を切らしながら足を動かそうとするが転んだせいで足をくじき、その場で足を押さえる
「クソォ…!」
「へへっ、もう逃げられないぜ?」
足が動かない主人にハクリューがじりじりとよってくる
適うはずないと知りながら爪を構えるザンサ、表情には焦りと絶望が入り混じっている
「チィッ、このぉ!」
懐から落ちたハイパーボールに手を掛け、むやみにハクリューとゴーストに投げつけた
だがどれも外れ、または弾かれて悪あがきにしかならなかった
「荷物をもらった後この人間はどうするかな~?」
「お楽しみコースで楽しもうぜぇ、ケッケッケッ」
「ぐっ…!」
もはやこれまで、せめて相打ちでしとめるしかないか…
相打ちを覚悟したザンサ、だが…
「グワァァァァッ!!」
「えっ!?」
その瞬間、真横から水の波動が現れ、ゴースト自信気づくまもなく命中した
また助けられた!?その言葉が頭によぎる、その次の瞬間、どこからか透いた綺麗な声が叫ぶように聞こえる
「逃げなさい、今のうちに!」
姿形の見えない声の主を探すが、どこにいるか分からない
とにかくザンサは敵の注意が反れているのをチャンスに主人を起こすと肩を貸しながら急いでその場を移動する
「おい逃げるぞ!…ゴースト!?」
「グガガガガガガッ!ゲッゲッゲッゲェェ!」
頭を抑え付け、狂うように悶えている
混乱だ、さっきの水の波動がゴーストを混乱させ逃げる時間を延ばしてくれた
うまい事声の主のおかげでゴースト達の目から抜け出せた
やがて二人は寄り添うように急ぎ、暗闇へと消えていった
「グゥゥゥゥッ…!」
尚も混乱しているゴースト、ハクリューは目つきを鋭くさせ技を放った主を探す
「チィッ!何処のどいつだ!?」
「(よし、今のうちに私も…)」
辺りを探し回るハクリュー、大木の影に隠れていたラーナは気づかれないように後ろを見せ、すばやくその場を立ち去ろうとした
…だがその瞬間、空気を切るような速さでラーナ自信気づくまもなく、それは背中に突き刺さった
「キャアアアアァーッ!!」
まるで背中を刃物で刺されてような痛烈な痛みが走り、悲痛の叫び声をあげた
そしてその場に崩れるように倒れ、荒い息づきをしながら恐る恐る痛みを感じた背中を見る
それは刃物ではなく、茶色をした羽のようなものが突き刺さっていた
「まったく…叫ぶんならもう少し静かに叫んでよねぇ~」
痛みに気をとられ、上の存在に気づかなかった、慌てて見上げると羽の手入れをしながら見下ろすピジョンの姿があった
「シェアリーが言ってた不審者ってアンタの事?」
「クソッ!冷凍ビーム!!」
顔をしかめ、冷凍ビームを放ったがピジョンはそれを難なくよけ、翼を翻すと羽を2・3枚抜きラーナに投げつける
カッターを投げつけたような鋭い羽を横に飛んでかわす、鋭い刃は地面突き刺さる
「へ~、結構すばやいね~」
「何を、堕ちなさ…キャッ!?」
ピジョンを睨みつけ再度冷凍ビームを放とうとした瞬間、後ろから強烈な締め付けをうけた
蛇のように体を締め付けるそいつはハクリューだった。
「へへっ、さっきの技はお前のだったか!」
「ドジね~、後ろにいるのも気づかないでさ」
ハクリューが長い体を巻き付けて締め付けてくる。多分さっきの叫び声で気づかれたのだ。
ラーナは歯軋りしながら締め付けを解こうと暴れる、だが全身に食い込むような締め付けは中々解けなかった。
「クソォッ、離れなさい!このぉぉ!」
全身をくねらせ、じたばたするがそれでもハクリューは離さなかった
「五月蝿い奴だなぁ、少しいたぶってやるか…」
口元をニヤッとさせるとラーナの頬を舌が走らせる
「ヒィッ、やめろ…気持ち悪い…!」
厭らしい舌のすべりに鳥肌を立てる、ハクリューは目の色を変え、生贄でも見るような目でラーナを見る
「でんじは!!」
「グァ・・・!?」
体から電磁波を発生させ、絡みついたラーナに伝わらせる
避けることも出来ず、でんじはをもろに受けたラーナは体全身が痺れが走り、抵抗力が一気に奪われる
そして体を解かれると力なく、その場で倒れる
「ぐぅ…しまった…!」
息を荒くし、動かそうにも体は痺れて動く事ができなかった
迂闊だった…ピジョンに気をとられて背後のハクリューの気配に感じられなかった…
自分の迂闊を呪いつつ、見下ろしてくるハクリューを睨む
「どこの誰だかしらねーけど、邪魔したから少しお仕置きしねぇとなぁ…」
目つきを鋭くさせ、薄っすらと笑みを浮かべる
ハクリューはラーナの体をジロジロ見ると、う~んと唸る
「中々上等な雌じゃないかぁ…こりゃ楽しみだぜ!」
そう言うとハクリューはラーナの下半身に顔を近づけると、雌の証である割れ目を舌で舐める
「ひゃぅっ!?」
いきなり何が起こったのかわからなかった、下半身に刺激がはしり、思わず跳ねる
「中々いい声で鳴くなぁ、たまらないぜ…」
厭らしく言うと舌を秘所に自分の舌をあてがい、舌の先でチロチロ動かす
「ああぁっ…何…してるの…!!」
「何って、エッチな事だよ」
「ってかアタシの目の前で平気でする普通?」
ピジョンは呆れるもハクリューは気にせず自分の欲望を満たそうとする
「いいじゃね~かサラ、結構美人だし、もっと感じさせてあげるよ」
「それじゃーさ、この実食べさせて大人しくさせようよ」
サラと呼ばれたピジョンがハート型の木の実を取り出しハクリューに投げつける
それを口で受け止め、ニヤッっとすると間髪をいれずに無理やり口移しで食わす
「んぅ…!?んぐぐ…」
驚き、口移そうとする木の実に違和感を抱いて押し戻そうとするが、麻痺したせいで押し返す気力はなく、なすがままに喉に通してしまった
木の実はあらかじめ噛み砕かれていてのどに詰まらせることは無かったが、知りもしない雄との口付けでショックを受ける
不適な笑みを浮かべ、再び顔を秘所に持っていくと舌を入れ、中で暴れる
「んぅ…イヤァ…やめ…てぇ…」
秘所から伝わる快感で威勢がなくなる、恥辱に顔をしかめる
慣れたような舌使いで滲み出てくる愛液を舐めとり、奥へ奥へと舌を進ませる
「んぁっ!そこ…アッ…イッ…ダメェ…」
「はぁ…はぁ…チャプ…チャプ…ピチャ…ピチャ…」
愛撫され続け熱い吐息を吐く、抵抗しようにも体は痺れたまま…
さらに押し寄せる快感の波にラーナは抵抗力までも奪われる
熱い…この快感に耐えられないよぉ…
「はぅ…やめ…てぇ…変に…なっちゃぅ…!」
加減のない攻めにラーナは気が狂いそうなほどの快感を味わう
じょじょに秘所は愛液が溢れ、ハクリューの口元を汚す
「ジュル…ピチャ…ピチャ…チャプ…」
鼻息を荒くし届く限り舌を挿入させ、奥で愛液をすくい舐める
ハクリュー自信も興奮が増してきたらしく頬が赤く染まる
「アッ…アッ…熱いぃ…アンッ…もう…アァッ…!」
しだいに目を細め、舌の攻めにそって甘い声が漏れる
体温がじょじょに熱くなり、息遣いが荒くなる
「ピチャ…チャプ…気持ちいいか…チャプ…」
生暖かい鼻息が敏感部分に触れ、それさえも感じる
「ダメェェ…そんなに…激しくしちゃぁ…イ…イっちゃ…」
震えながら言葉を発するが続けて喋れない
痺れが薄くなったラーナ下半身をくねらせる
だが抵抗しようとする気は無かった、ラーナ自信の欲望がこの快楽から逃れたいと気持ちに迷いが生まれる
「イっちまぇよ…チャプ…チャプ…」
激しく出し入れし、低い声でラーナを絶頂へと誘う
それに答えるように高まる感情を抑えきれず…
「イッ…だめぇぇぇ…やあぁぁぁぁっ!!」
絶頂を迎え、舌で押し広げられた秘所は潮を吹き、ハクリューの顔面に掛かる
熱を感じた分絶頂が長く続いた、愛液を舌で舐めとったり吸ったりする
「ぷはぁ…ククッ…すげぇぜ…派手にイったなぁ…」
ベトベトになった口の周り舐め取り、うっすら笑みを浮かべる
滅多にみない上等な雌に下半身の逸物は物欲しそうに大きく膨張しきっていた
「ほらよぉ、今度は俺のをご奉仕してもらおうかい?」
不適な笑みを浮かべ、まだ息の整っていないラーナの目の前に膨張したモノを現す
………!
その時、ラーナは熱くこみ上げるものを感じた
何故か分からない…でもそれを目にした瞬間、自分の中で欲望が渦巻いていく…
体が熱い…何これ…?
頬を染め目を反らすことなくじっと逸物を見続ける、ハクリューは意外そうな表情を浮かべる
「噂どおりすごい効き目だな~、ちょっとは楽しくなりそうだな…
 ほらぁ、咥えろよ!」
尾をラーナの顔や首に巻きつけ、無理やり逸物を咥えさした
「あぐ、んぐぅぅ!?うぅん…!!」
「うおぉ…なかなか気持いいぜ…」
ラーナの熱い唾液の入り混じった口内の感触にハクリューは身震いする
ハクリューはそのまま遠慮なしに腰をゆっくりと動かし、ラーナの口内へとねじり込ませる
「んぐぅぅっ…んん…んむ…!」
息を整える間もなく、膨張した逸物が口内に淫靡な音を立てながら侵入する
根元までゆっくりと出し入れを繰り返す
「はぁ…はぁ…どうだ…おいしいか?」
荒々しくし息をしながらながらじっくりとフェラチオを楽しみ、薄笑いした笑みを浮かべたまま悪戯に訊く
そんなハクリューの言葉に表情が強張る、恥辱を楽しむような笑い声にイライラが募る
ん…誰がこんなもの…はな…せ…
首を振って逸物から離れようとする…だが顔が固定され、迫ってくる逸物から逃れられない
「ふふっ、綺麗な上になかなか抵抗するなぁ…そっちの方がグッとくるぜぇ…!」
興奮が増したハクリューは更に気持ちよくなろうと、根元までラーナの口内にグッと押し寄せる
「んぐぅ…んんっ…!」
さっきより喉の奥に突かれ、思わず吐き気を感じる
だがそれに動じずに何とか耐えようと、こみ上げるものを抑える
しかし、別にこみ上げるてくる熱まではどうしようもなく、それはラーナの理性を覆う…
それは逸物を出し入れを繰り返されるたびに沸き起こり、じょじょに抑えが効かなくなり、体全身が熱くなる…
あぁ…何なのよ…体が熱い…おかしくなっちゃう…助けて…
頭の中で助けを求める、だがその思考は今自分が咥えている物に気をとられた
潤った瞳でそれを見続けていた…
「んぐ…んぐぅ…んんぅ…」
さっきまで鬱陶しく汚らしくみえたその逸物が、いつの間にか愛おしく、また興奮を誘う…
今はただハクリューにされるがままに口内に咥えさせられているが…それでけでは我慢できない…
「ふぅ…へへ…そんなに俺のモノがうまいかぁ?」
しだいにラーナは自分からハクリューの逸物をゆっくりとしゃぶっている
頬は赤く染まり、瞳は快感を求めるかのように瞳が潤い、無言のままハクリューに顔を向ける
「よしっ、お前から動かせ!はぁ…はぁ…」
ニヤリと笑みを浮かべ、動かしていた腰の動きを止める
咥えさせられた逸物から逃れようともせず、額に汗を流しただジーッと逸物を見つめる
そうしている間にも、体中が熱くなる感覚は収まらず、時間が立つにつれ感情さえも支配されそうになる
抑えが効かなくなった感情はラーナ自身の欲望のまま、さきほどまで嫌がっていた逸物を物ほしそうにしゃぶりつく
「ンチュ…チュル…ジュル…」
卑猥な音を立てながら、味わうようにゆっくりと口を動かしていく、唇の感触とあたる舌に体がビクッと震える
「んっ…はぁ…はぁ…いいぜ…もっと奥でに咥えるんだ!」
快感に表情を変えつつ、ラーナにもっと迫るように指図する
その指図に答えるように逸物を口の奥へと咥える、時に舌を絡め、先端につつき逸物を刺激していく
まるで飢えた雌のように膨張した肉竿を求める、ただ熱くなるこの感情を沈めたいのか…それとも…
「(ん…駄目…私はリセオとマッチの姉なんだから…こんな事しちゃ…)」
残った理性が欲望と戦う、だが理性が勝る事はなく体が勝手に動く…
「くぅ…はぁ…はぁ…いいぜぇ…気持ちいい…」
思い通りになった人形を楽しげな笑みで見下ろす、気高いラーナにとって屈辱だ
何でこんな奴の為に私が思い通りになっているんだ…
だけどこの体の疼きを逆らう事ができない…喉が渇く…
欲求不満がラーナの口の動きを更に早くさせる、ハクリューはかすれるような呻き声をあげながら自分からも腰を動かす
「くくっ…そろそろ…出すぞ…ウッ…!!」
呻き声と共に逸物から白い液体がラーナの口内へと放たれる
「んん…んぐぅぅぅぅぅ!?」
初めて味わうそれに目を大きく開かせ、驚く
とても苦くて、ネバネバした液体が脈を感じながら口の中に広がっていく
白濁液に嫌気がさし、我に返ったラーナは逸物から離れようとする
だが首を強く固定され、無理やり根元まで咥えさせられる
「ぐっ…何やってんだよ…ちゃんと飲めってよぉ…」
顔をしかめ、苦しむラーナに飲ませようとする
押さえ付けられ、白濁液を吐き出すことも出来ず口内に溜まっていく、とても気持ち悪い…
「んん…んんぅ……っ!!!」
唸り声をあげ、逃れようと暴れるが力及ばずただ受けるしかなかった
瞳から涙を流す、飲み込もうとしても吐き気がし、吐き出してしまう
口外に溢れた精液は地面にボタボタと落ち、ラーナの口の周りを汚した
「…うぅっ…あっ…はぁ…はぁ…」
射精が収まり、ようやく逸物を離す
離した瞬間、激しく咳き込みながら口内に溜まっていた精液を口から垂らす
「うぇ…ゲホッ…ゲホッ…」
苦しそうに咳き込むラーナにハクリューが満足そうに笑みを浮かべる
まるで羽をもがれた鳥でも見るような目で見下す
…だがまだ満足などしていない、お楽しみはこれからだ…!
「よぉし…次はこっちも満足してやるか…!」
そう言うと獲物を捕らえる蛇さながらに長い体を巻き付ける。
「い…いや……今度は何よ…!」
強気に叫び睨むが、瞳からは涙を浮かべたまま体は微弱ながら震えているのが分かる
体の疼きもまだ治まっておらず、今は怒りで抑えているが愛液は誤魔化しようがない…
「ククッ、これで終わりだと思うなよ?」
全身をきつく締め付け、抵抗を許さない
呻き声をあげ歯軋りをする、すで体力はほとんど残っていない
それを悟ったハクリューはニヤッとすると巻き付く力を緩め、下半身から覗く射精したばかりとは思えない逸物を秘所にあてる
「ひゃあぁ…!」
逸物が秘所に触れた瞬間、ビクッと体が跳ねる
「もぅこんなにビショビショにしやがって、これならいけるなぁ」
「な…離せ…もうやめなさぃ…!」
あくまで抵抗しようと強気になるが、こんな時にまた体が疼き始めた、顔が赤くなる
また熱くなってきた…お願いだから治まって…
「すぐに楽にしてやるよ…いくぜ…」
鋭い目つきでラーナを見すえた次の瞬間、赤く膨張している逸物を秘所の中へ挿入していく
「アァッ…!!」
溢れていた愛液で、ハクリューの逸物がゆっくりと進んでいく度にとズププっと淫靡な音を立てる
さっきまでの強張った表情が一気にくずれ、顔をしかめる
湿っぽい膣と締め付けを感じながら進ませていく…がその時、先に何か壁があたるのを感じた
それが何なのか、ハクリューが理解するのに時間は要らなかった
「へぇ~…お前って処女だったんだなぁ、こりゃいいや
 俺って処女相手するの初めてなんだよなぁ」
「うぅ…やめて…抜いてよぉ…!」
処女と聞くと途端に体を震わせ、不安そうな顔をする
震えるラーナに下劣な笑みを浮かべたまま…
「安心しな、痛いのは最初だけだからよぉ……イくぜぇ…!」
掛け声をあげるハクリューにラーナは止める様に叫ぶが、聞く耳を持たなかった
逸物で一気に突き上げ、プツンッと音をたてて処女膜を突き破った
「っ!?…キャアアアァァァッ!!!」
処女膜を突き破られた瞬間、激しい激痛に叫び声をあげた
その声はサラと言うピジョン以外誰もいない不気味な森中に響き渡った
初めて味わうものに、頭の中が真っ白になり、痛みが体全身に伝わっていく
一匹サラは、それをにやけたまま何も言わず、それを見つめている
「ぐっ…すげぇ…きついぜ…処女ってこんなに気持ちいいのかぁ…」
想像以上の快感とあまりにきつい膣に、かすれた声で言いながら強張った笑みを浮かべる、
愛液でヌレヌレだった膣は引きちぎらんとばかりに逸物を締め付ける
激しく痛がるラーナにハクリューは躊躇することもなく、欲望のまま出し入れを始める
「ぐぅ…オラ!…どうだぁ…!?」
「い…痛い…いやぁ…痛いよぉ!!」
逸物が出し入れを繰り返す度に痛みが沸き起こる
泣き叫び、結合部からは愛液に血が混じって溢れ、痛みのあまり目をあけられなくなっている
痛い…痛いよ…助けて…誰か助けて…
頭の中で誰かに助けを呼ぶ、だがこの暗闇の森の中で頼りになる者はいない…
「うぅっ…すげぇ…たまんねぇ…はぁ…はぁ…」
ラーナの泣き叫びに目を細めますます興奮する
血の着いた逸物を気にも留めず、速度をあげて秘所に突き上げる、打ち付ける度に激しい音が響く
ハクリューの中のケモノが欲望に従えと命令し、その通りに動く
「イヤ、イヤァ…駄目ぇ…止めてぇ…!!」
首を横に振り、叫ぶも、ケモノを興奮させるようなものだった
痛みが全身を駆け巡る、ラーナはそれをひたすら耐えるしかなかった…
今のラーナは痛みと恐怖が体を支配している…
やがてハクリューは、時にゆっくりと深くついたり、角度を変えさせては小刻みに突いたりと、我欲のままに行為を楽しんでいる
「ふぅ…ふぅ…いいぜぇ…気持ちいい…」
「アァッ…ウッ…ウゥゥッ…」
ひたすら痛みに耐え、やがて叫ぶのを止める、涙が頬を伝う
しかし、しだいに痛みが引いていき、そして妙な感覚が責められるにつれ沸き起こってくるのが分かる
やがて息が荒くなり、じょじょに痛みは引いて、今度はラーナが求めいていた快感に変わっていく
「ひぃ…アッ…アッ…ウゥッ…アァァッ…」
涙目だった瞳はゆっくりと半開きになり、口は吐息と甘い声と変わっていくのが分かっていく
しだいに体は快感を求めるようになり、止めてほしいと言う気持ちが薄れていく
責められ続けるにつれ、理性が食われ、頭の中でそれを求めてしまう
「ふふ…気持ちよくなってきたか?」
ラーナの様子を悟ったのか、秘所への責めを止めずに尋ねる
違うと頭の中で言い訳するように首を横に振る、だが押し殺そうとした声もハクリューの激しい責めに耐えれず、甘い声が度々漏れる
あの木の実の効果が続いていたのか…頬を赤くし、必死に逃れようと考えるが体が言うことをきかない…
私は求めているの…?この快感を…
嫌…駄目、私はリセオと…マッチ…ナリアの姉なんだから…
私がしっかりして…あの子達を守らなきゃいけないのに…
こんな奴なんかに…屈したりなんか…!
「ククッ…無理するなよぉ…チュゥッ」
追い詰めるような目で薄らと笑い、ラーナの唇を奪う
「んんぅ…!?」
突然の口付けに驚くも、ハクリューは躊躇いなく舌を厭らしく絡めてきた
迫ってくる舌を拒もうとするが本能と欲望に逆らえず受け入れてしまう
ネットリした唾液と唾液が絡み合い、厭らしい音が響く
全身が熱くなってきた、角度を変え、ラーナを上にするように立ち上がらせる
熱い口付けを交しながら、腰の動きをさらに加速し、ラーナを快感の渦へと引き込ませる
「んん…チュク…チュク…んふぅ…!」
暖かい吐息を吐き、行為から逃れようとする気が失せる
頭の中で理性を保とうと気を強く持とうとするが、性欲に支配され、求める意識が強くなってくる
体が熱く、沸き起こる欲求を解消したい…
もはや成すがままに、ハクリューがくれる快感に身をまかしてしまう…
「んぐ…んはぁ…そろそろ…マジでいくぜ…!」
体にしっかり巻きつき、固定すると一機に突き上げる
「アッアッアァッ…イ…イヤ…だめ…アァァッ!!」
秘所への集中的な責めに抑えていた声が漏れる
逸物が子宮へと届き、肉同士が激しくぶつかりあう音が響いていく
「ウッ…ウゥ…はぁ…はぁ…いいぞ…もっとしてやる…!」
下劣な笑みを浮かべていたハクリューは顔を強張らせる
逸物は子宮目掛けて激しく突きまくる、愛液が溢れる
それに答えるように子宮は逸物を熱い愛液とともに、まるで逸物を離さないかのように締まっていく
口からは唾液が垂れ、清楚で美しい面影はなくなり、そこにはラーナと言うミロカロスではなく、快感に浸る一匹の雌と化していた
抵抗力はなく、また逃れることもなく、ただ欲望のまま従っていく…
「アッ…い…アッ…ひあぁぁぁ…イイ…アァッ…!!」
「ぐぁ…すげぇ…たまらねぇ…すごく気持ちいいぞぉ…!!」
快感の波にまともに声が出ず、甲高い声を叫びだけを発し、乱れるラーナ
思考さえも今この快感をひたすら感じる事だけでいっぱいになる
興奮が最高に達し、ハクリューは最高速で突き上げる
「ウゥッ…ハァ…ウゥゥ…たくさん…感じさせてやる…!」
「アアァッ…ダメ…アァッ…くるっちゃう…アァァッ!」
激しい打ちつけに耐え切れず、目が潤み、目は何処を見ているのか、自分でさえ分からない…
熱い吐息、乱れる体、甘く激しい声…それらに終止符をうとうと、絶頂が迫ってくる
ハクリュー自身ももはや余裕などなく、絶頂を迎えようとしている
「あぁぁっ…いっ…いくぞぉ…中に…ウッ…ぐうぅぅぅ!!!」
「だめぇ…アッ…アッ…アァッ…あああぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫と共に絶頂を迎え、ハクリューの逸物を締め上げ、さきほどのフェラとは比べ物にならないほどの熱い精液が子宮へと注がれていく
ビクンビクンっと中でハクリューのモノが脈を打ちながら自分の中で精液を放っているのを感じている
とても熱く、そして気持ちいいものが自分の中へと…
初めて味わったエクスタシーにラーナはただ黙って精液を受ける
すぐにいっぱいになった子宮は逆流し結合部から溢れるように飛び散る
「ククッ…中々いいぜぇ…お前の中よぉ…はぁ…はぁ…」
満足そうに笑みを浮かべ、逸物をゆっくりと抜いていく
栓をしていた物が抜かれ、精液は重力に従い地面に垂れ落ちていく
「あぁ………」
目は光を失い、まるでぬいぐるみのよう息だけして、ただジッとするしかなくなった…
ようやくハクリューは巻きつけていた体をほどき、ラーナを自由の身にする
すでに力の残っていないラーナは抵抗なく地面に崩れ落ちていく
「へへ、こいつは中々いい玩具じゃねぇか」
「どうするの~、この女さぁ?」
ずっと小枝で見ていたサラがようやく嘴を開いた
虫の息状態のラーナを見下ろしながら、う~ん…と考え込む
見ると見るほど綺麗な体に魅了する顔つき、何より乱れるそのしぐさと美しい声…
このまま帰すには惜しい雌だ…
やがてピンッとした表情をすると
「よぉし、こいつは森のどこかにでもで監禁して仲間の慰み者にしてやるかぁ…クククッ…」
下劣に笑い、ラーナに顔を近づかせる
体力の残っていないラーナは、ハクリューの言った言葉も耳には入らず、だんだんと意識が薄れていく
「(あ…あいつが来る…逃げ…なきゃ…でも…もう…だ…めぇ………)」
やがて完全に意識を失い、気絶してしまう
最後にまぶたに焼きついたシェアリーの顔を思い浮かべたまま…


「さ~ってっと、俺の巣にでもしばりつけとくかな」
楽しそうな笑みを浮かべたままラーナを担ぐ
これからの毎日の楽しみに顔を歪ませ、上機嫌なまま森の奥へと進もうする
その瞬間…ハクリューの真後ろから冷気をまとった光線が空間を劈いた
それに気づき、ハッ…と驚いた顔をするがすでに遅い…
まっすぐ自分に迫ってくる冷気に対応する間もなく、顔面から直撃し、顔から体全身にまで凍りつき始める
ドラゴン族にとって弱点である氷技をもろに受け、頭が真っ白になり、やがて思考までも停止を告げる、何も知らないまま…
勢いでラーナの体は地面に横たわる、その隣には瞬時に氷の像と化したハクリューがいた
いきなりの事に呆然として見ていたサラは驚き、振り返り構えた…だが更に驚いた
冷凍ビームを放った犯人、それはサラがもっとも知っているポケモン…
静かに足音を立てながら、無表情にラーナに近づいていくシェアリーだった
突然ハクリューにした事になにも悪びれた様子も見せず、ラーナを見つめる
すでに意識なく、貶されたその体を見つめ、哀れむような…また悲しむような表情を浮かべる
シェアリーは静かにラーナを担ぎ…
「似合わないわ…こんな姿…」
昔のラーナの美しく笑う顔を思い出し、寂しそうに呟く…
彼女は乱れる姿より、昔見たいに綺麗に、自然に笑っているほうが似合っている
ハクリューによって汚された顔を一瞥し、何も言わず歩き始める
「ちょ…ちょっとシェアリー?どうしたのアンタ?」
慌ててサラが降りてきて声を掛ける
知らないポケモンを大事そうに抱えるシェアリーの姿が信じられなかったから
振り返らずに、足を止める
「サラには関係ないわ…」
その一言だけを言い放ち、また歩き出す
呆然とその様子を眺めていたサラは、その後姿を見送る
冷や汗を流し、後ろのハクリューに向き直る
暗い夜の森に照らす美しい氷の像
だがハクリューの苦痛に顔を歪めているせいでその美しさは半減している…
それは氷の芸術と言うより、氷の監獄に監禁された囚人のように映った
再びシェアリーに向き直り、何も言葉を掛けずにミロカロスと共にシェアリーはサラの視界から消えていった…

暗闇の森をぬけ、静かな風だけが出迎えてくれる
足元を見ると、複数の足跡が屋敷の方へと向いているのが分かる
途中で人間がこけた様な後も見られた、どうやら逃げ切ったようだ
だがシェアリーはそんな間抜けな人間を想像して笑う事もなく、無表情に少々重たいラーナの体を担ぎながら、足跡をたどる様に進む
意識の戻らないラーナを背中を感じながら、昔の事を思い浮かべていた…
二人でコンビを組み、悪巧みを繰り返しながらその成功を笑いあっていたあの頃…
満月の夜でよりそうようにお互いの友情を確かめ合った自分達…
まだイーブイだった頃、危険が迫ったとき、その大きい体を駆使し自分を何度も助けてくれた勇敢なラーナ…
戦略を組み立ててその指示を素直に受け止め、笑みを浮かべて頷いてくれたあの表情…
自分より大きく、見つめていたラーナの横顔は今も昔も変わってはいなかった…
望むのならまた…あの頃のように笑い合い、話がしたい…
そしてまたいろいろして、二人だけで勝利を噛み締めたかった
だが彼女は変わっていた、自分の知らない所で、そして自分もラーナがいないこの森で変わった…
月日が私達を変えていった…あの頃の思い出が色あせるくらいに…
あなたは私のいるここには居てはいけない…私自身もあなたの所へはいけない…
だから私は、ラーナとは一緒にはいられない…彼女には暖かい居場所がある…そして私には…
自然と…その瞳から一筋の水が頬を伝った…
進む視界が揺らぐ、その水滴を拭う事もなく背中に感じるそれを担ぎながら歩いた
自分が今、無表情に泣いている事にさえ気づかずに…
久しぶりの再開、出来れば喜び合いたかった…
あんな冷たい言い方でしか出来ず、再開を喜べなず、ラーナの言葉を聞かなかった自分が情けなかった…
一歩、また一歩、ラーナの背中の温かさと吐息を感じながら思い出と共に歩く…
………………………
どれくらいの時間が過ぎたのだろうか…時間の経過を忘れていたせいで長くも短くも感じた
目の前にはナリアと一緒にリセオを抱いたこの場所から見える屋敷が目の前に広がっていた
不意に足を止める…屋敷の方から一匹、羽を羽ばたかせながら寄ってくるポケモンを見つける
それは静かによってきて、シェアリーとラーナを確認すると目の前で飛ぶのをやめ、降りる
思わず睨んだ…このニコニコした面構えをシェアリーは忘れてない
調子の狂うようなのほほんとした笑みを当たり前のように浮かべるイルミーゼ…
二匹の間にピリッとした感覚が走った、イルミーゼ自身笑っているままだが、わずかに警戒心を感じ取れた
互いに黙ったまま見つめあう…いや、睨みあっていた
「ラーナ様を帰しに来てくれたんですか?」
先に口を開いたのはイルミーゼのほうだった、相変わらずのほほんとした笑みを浮かべながら
「えぇ…そうよ…」
冷静に返答を返した、この場で争う気などないから…
担いでいたラーナをゆっくりと地面に下ろす、イルミーゼは表情を変えずラーナに歩み寄る
「ひどい目に会われたのですねぇ~、あなたが助けてくれたんですかぁ?」
黙ってコクンッと頷いた…あくまで警戒心を解かずに…
するとイルミーゼは丁寧にゆっくりとシェアリーにお辞儀をした
「どうもありがとうございましたぁ、私一人では不安だったものですから」
以前微笑みを浮かべたまま淡々と言う
互いが敵だと言うことを忘れていると思わせるようなのんきさに呆れる
「私は敵なんじゃないの?あなたにとって…」
思わずそんな言葉が出てしまった、あの時暗闇の森で戦った事を思い出す
しかしイルミーゼは表情を変えない
「でもラーナ様を助けてくれた事には違いありません
 だから私も安心してお礼が言えるのですよぉ」
その言葉に相手の警戒心がなくなったのに気づく、するとシェアリーは表情を戻す
どうやら争いになる事はない、安心してラーナに返す事ができる…
「出来ればお礼とかしたいんですけどぉ…この時間ですし」
「そんなのいらないわ、それより早くそいつを持って行ったほうがいいんじゃないの?」
そう言うとイルミーゼは黙ってラーナを担ぐ、そしてシェアリーに向き直り
「それじゃぁ誰かに気づかれると大騒ぎになりますのでぇ、コソッと戻しますのでこれでぇ失礼します」
笑みを浮かべたまま、再びお辞儀をし、後ろを振り向く
同時にシェアリーもラーナを見ることなく元へと来た道へ振り返ると口を開く
「それと、こいつに言ってくれないかしら…二度と来るなって…」
振り返らずにイルミーゼがえぇっと返す、そして再び来た道を戻るとき、今度はイルミーゼの方から声がかかった
「私もいいですか?…なぜアナタは泣いていらっしゃったのですか?」
それはシェアリーを見つけた時点で気づいていた、涙の後を拭いたらしいが、瞳には泣いた後が残っていたのだ
シェアリーはイルミーゼの質問に答えることもなく、その場から逃げるように駆け出した
風のように、吹いた道をたどり、消えていった…
イルミーゼはシェアリーが消えたのを知ると、溜め息をついた
「ふぅ、これで全員がお戻りになったって訳ですねぇ
 しかし次からは気をつけてくださらないと…」
笑みを浮かべたまま呟き、自分も屋敷に向かって歩き出した
出来れば何事も無かった事にしてほしい、イルミーゼの中でそう願いつつ…

・・・・・・・・・・・・・・・・

朝の強い日差しが窓から差し込む
まぶたに強い光があたり、うぅん…と声を上げながらエナがゆっくりと目を開ける
体と頭に包帯を巻きながら起き上がると軽く背伸びをし、あたりを見回す
すっかり見慣れた医療室のベッドルーム、自分一人しか居ない事を確認させてくれる
相変わらず、ベッドの上で安静するしかないこの現状に溜め息をつきたくなる
「はぁ、早く直らないかな…」
流石に無理をしたなと、自分の中でそう思いつつあった
あのサンダースの技をみくびり、油断した結果がこれなのだから…
数箇所の打撲による怪我は完全に完治するまでまだ少しかかるようだ
再び溜め息をつき、怪我をしている自分の体を見下ろす、するといつも寝ているベッドの上で見慣れない物があった
「これって…」
それはシノ達がお見舞いに飾ってくれた花が何故か自分のすぐそばに置いてあった
不思議そうに花を手に取り、花に近づけさせる
すると花の香りとは別の臭いに気づき、顔をハッとさせる
それは見舞いにすら着てくれなかったクロイズの臭いが僅かながらしたのだ
するとエナはゆっくりと笑みを浮かべた
「来てくれてたんだ…」
私が怪我をしたとき、何故か彼はお見舞いには来てくれ無かった…多分警備で忙しかったのだろうと思った
みんなはクロイズの事を無神経だの無責任だと非難していた、だけど…こうやって私が眠っている間に、彼は来てくれたんだ…
エナは思わず花を胸元に優しく抱き寄せる、彼の臭いと心遣いに思わず頬が赤くなる
今はこうやって花を通じて彼を感じていたい…
するとドアが開く音が聞こえる、シノが入ってきた
「エナ姉、おはよう~」
「シノ、おはよう」
軽く会釈し、朝の挨拶を告げる
シノはエナのベッドに飛び移り、顔を覗く
「体の調子はどう?」
「えぇ、もう大分よくなってきよ
 早く元気になって戻りたいな」
「うん、でもまだ完治してないから無理しちゃ駄目だぞ
 それとご飯はしっかり食べるんだぞ」
大人ぶってシノが言う、兄にでもなったのか、いつものように調子に乗る
「分かってるわよ、まったく調子いいんだからアンタは…」
ツンッとつつくとシノはヘヘッと笑う、それにエナもつられて笑った
いつものように振舞っていると、またドアの開く音が聞こえ、誰かが入ってきた
すると傷ついたザンサがラグジーに担がれたまま入ってきた
「いててて…くそぉ…」
「ったく、なんでこんなに傷ついてるんだよお前…」
所々包帯とバンソウコを張っているザンサに二匹は唖然とした
「どうしたんだよ、ザンサ…その怪我は?」
シノがベッドから降り、ザンサに駆け寄る
「何でもねぇよ…ただ夜中に派手に転んだだけだって!」
「派手に転んで引っかき傷なんかできるのかよ?」
ラグジーの突っ込みにザンサがウッ…と冷や汗をかく
「何があったんだザンサ?」
「だから…夜中に派手に転んで自分の爪で自分を引っかいてしまっただけだってよぉ…」
変な理屈で言い訳するザンサにラグジーとシノが首をかしげる
…どうやったらそんな器用に傷がつくんだ…っと思いながらもベッドに寝かせる
傷はそれほどでもないらしいから少し休めばまた元通りになるだろう
「ほら…たくよぉ、寝ぼけて派手に転んで怪我するなんてそうとう間抜けだな」
「うっせぇよ…!」
舌打ちをしながら睨む、だが仕方があるまいとすぐに睨むのを止める
「大丈夫、ザンサ?」
心配するエナにザンサは振り返らずあぁっとだけ返す
その時、また誰かが入ってきた
ラーナだった、リセオと一緒にエナとザンサの見舞いに来てくれたのだ
「あ、おはようございますリセオ様、ラーナ様」
慌てて姿勢を但し、二匹に挨拶をする
「うん、おはよう」
リセオが笑顔で返す、ラーナだけは少し元気が無い声で返す
なにかぎこちない動きでエナに近寄っていくシノ達は不思議そうにラーナの動きに注目する
ラーナは気にせずにエナに声を掛ける
「容態はどう?」
「はい、もう少しで直りそうです」
シノと似た質問にエナは軽く会釈し、返す
ラーナはそう…っと静かに言うとザンサに振り返る
「それとザンサ、その怪我は大丈夫?」
「え?あ、はい、こんなの大した事ありません…」
驚き、自分に巻いてある包帯をチラチラと見ながら返す
「そう、ならいいんだけど…」
なんとなく元気の無い声でラーナは医療室を出ようとする
ザンサが乗っているベッドを過ぎようとする時、ザンサの耳元でボソッと呟く
「二度と行っちゃだめよ…あそこには…」
静かに、警告するように言う、その言葉にザンサがビクッと目が開いた
他の連中には聞こえなかったようだ
やがてうな垂れると、すみませんっとだけ返す
リセオは意味不明そうに首をかしげ、ラーナとザンサのやりとりを見る
「行きましょう、リセオ」
「え、もう?」
入ってからまだそんなに経ってないのに、リセオはラーナの後をつけながら言う
コクンっと頷き、医療室をリセオと一緒に出て行った
ラーナが出て行った瞬間、ザンサはすぐさま布団を被り、全身を包み込んだ
まるでお化けを怖がる子供のように…
ラグジーとシノは不思議そうに見つめているが、やがて二匹は二人の後を追うように自分達の仕事に戻って行く

長い廊下をリセオとラーナが進む、これから朝食に行くためだ
すれ違いにナリアと会い、一緒に行く
ナリアはリセオに頬ずりしながら、リセオは迷惑そうにやりとりをしていた
そんなリセオにラーナは度々チラッと伺った
あの時、シェアリーが言ってた言葉…もしかしたら…
「あの、リセオ…」
「ねぇ、ラーナ姉さん」
リセオに声を掛けようとしたとき、ナリアが割って口を開いた
「なんか動きが変だけど、大丈夫?」
思わずハッとし、ナリアに目を向ける
気づかれないよう気を使っていたが、ナリアにはばればれのようだった
昨日の行為が残っていて、痛みがまだ消えてなかったのだ
しかしラーナは悟られないように作り笑顔で二匹に言う
「何でも無いわよ、ほらマッチが先に行ってるから早くいきましょ」
そう言うとリセオはうんと返す、ナリアはなんとなく首をかしげラーナの様子を伺っていた
だがそれほど気には留めず、リセオと一緒にマッチの所へと向かう
二匹の背中を見送り、ラーナは安堵の溜め息をつく
そして、雲が映っている空を見上げ、悲しげな表情を浮かべた
…シェアリー…また…会えるよね…
あの後ランが教えてくれたけど…例えあなたが二度と来るなと言っても…私、またアナタに会いたい…
そして、また一緒になりたいよ…あの時のように…
瞳が潤み、空の上でシェアリーの顔を浮かべる
離れ離れになった友達…もう二度と元通りになる事はないのだろうか…?
いや…まだ大丈夫…また一緒になれる…そう信じていたい
あの時気絶していた中、確かにシェアリーの温もりを感じていた、多分ハクリューからすくってくれたのもきっとシェアリーだ…
例え変わってしまったと言ってもシェアリーはシェアリーのままだ、だから彼女を信じていたい…
今度はもう消えたりしないから…シェアリー…
再び再開を心のそこから願い、名残惜しそうにかつて自分が住んでいた暗闇の森の方向を見つめながらリセオとナリアの後を追って行った

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  • なんでこうなったんだろうねだと?wwwwwwいや、wwww全部お前のせいじゃないかwwwwwマジで呆れた…イーブイもイーブイだ。バカかこいつは?目の前にいるメスブタとその仲間のせいで周りの人は被害を受け、アブソルは大怪我をしたというのになぜ怒らないんだ? --
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Last-modified: 2018-01-24 (水) 18:09:24
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