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初めての性

/初めての性

ヤシの実

思いつきばかりで執筆してると、自分でも何を書いているのか分からなくなります……

初めての性 


 夏を過ぎた季節、緑色だった木の葉は衣替えして紅色の木の葉へと変わっていく秋の季節。
 小枝に付いてた葉が枯れ、カサカサとした感触となって小枝から散る様もまた秋の風習。
 熱い日差しの変わりに、少々肌寒い冷たい風が吹くようになった。
 夏の象徴とも言える蝉達の五月蝿い鳴き声も、今はすっかりと無くなっている。
 一言秋と言っても、色々な秋がある。例えば、世間では実りの秋とも言われて柿や梨、他にも松茸と言った秋の代表的な食べ物が美味しい。
 他にも、芸術の秋。読書の秋。スポーツの秋。月見の秋。行楽の秋。食欲の秋など人によって様々だった。
 人間以外の生き物、ポケモン達にとっては秋と言われれば、やはり食欲の秋と言える。冬を越す為に皆食料を蓄えたりとかで忙しくなる。
 とある山では人気の無いそこは、幾百年とその姿を変えずにいる自然の姿が有りのままに存在する木々が生い茂る森。
 沢山の人の住む都会と言う場所とは違う。工場から排出される有害な廃棄物や、車のクラクションの鳴る騒音となどの人工物の一切無い。ここはポケモン達にとって楽園の場所だった。
 その森は秋になると必ず木々から沢山の木の実が成る。有り余るほどの木の実の数に飢える生き物は決して出ない。また熟成された木の実の味はまた格別と言えるほどの美味だ。
 そこに生きるポケモン達は色んな場所を生活の場とし、その中には木の穴に入りそこに住む者もいる。危険も滅多に無いこの森は、楽園と言って良い世界だった。

 今、木の穴を居住区として住んでいるのが一匹いる。穴から可愛らしい赤い耳を無防備に突き出しているポケモン。
「おーい、いつまで寝てるんだよ。さっさと起きなよ」 
 暗い穴の中から自分を呼ぶ声が聞こえる。その声を耳にはするが、起きたいと言う気分には慣れない。むしろもっと寝ていたい。
 瞼が重い中、眠気に勝てず外の声を無視して眠りの世界へと入り込んでいく。安眠を誰にも邪魔されたくないと思いながら。
 しかし、その安らかな安眠を妨害する様に外の声は大きく響く。
「起きろったらぁ~、早く起きろぉ~」
 彼は五月蝿いなぁと思いつつも、決して瞼を開けようとはしなかった。たとえ世界が戦争の火に焼かれる事態になっているとしても、この安らかな眠りだけは覚ましたくない。
 意地でも寝てやろうと、外の声を無視し続けた。誰であろうとこの一線だけは譲らない、そう誓った。
 しかしその誓いは、たったほんの十秒で終わった。
「オキロオオオオオオオオオオオオォォォォネボスケエエエエエエエェェェェェェ!」
 鼓膜が破れそうな暴音が穴中に響いた。あまりの五月蝿さに堪らず耳を強く抑えた。凄まじい声に、キーンと耳鳴りがした。
 そのおかげで安らかな安眠は完璧に崩れてしまった。目をグルグル廻しながらふら付く足元を、扱けない様に気を付けながら立ちあがる。
 ぼやける視界の中、暴音の主の形がはっきりと見て取れない状態だった。
「やっと起きた! お前、今御天と様がどれほど昇っている頃だと思う。聞いているか!?」
 怒り口調で五月蝿いくらい大きな声で喋る。その声を五月蝿く思いながらも、徐々に視界が回復していく。そして、声の主がようやく分かった。
 彼を睨むのは、おしゃべりポケモンのペラップのラッパだった。ラッパと言っても、人間の使う楽器の事じゃない。
 羽が青く、また腹の辺りが黄色くと緑の色を纏ったてカラフルな体毛をし、首周りに白の体毛を生やしている。赤い嘴に、音符のような顔をしているのが特徴なポケモンだ。
「何だよラッパか、何時も五月蝿いんだよ君の声は……はぁ……」
 叩き起こされて少し不機嫌そうに瞼を擦るポケモンは、おうえんポケモンのプラスルのプララ。木の穴の中で生活しているポケモンだ。
 もちもちとした肌色に、丸くて細長い赤い耳。そして赤い十字の尻尾と頬模様が特徴的で真ん丸い瞳が愛らしいポケモンだ。
「何時までたっても起きないのが悪いんだろーが! お前の親友が下で待ってるぞ! はよ行け!」
 ラッパに急かされて、鬱陶し気に穴から顔を出して下の様子を見た。そこにはプララと似た外見をした。青いポケモンがいる。
 外見はほとんどプラスルと変わらない。マイナスの形をした尻尾と頬模様以外が特徴なポケモン。マイナンのヒクだ。少々変わった名前だが、プララの親友だ。
 人から見れば、プラスルとマイナンと言う種族はほとんど外見が似ている為、区別できる点と言ったら、一部の色ぐらいしか見分けが付かない所だ。
 プララとヒクも同様人から見れば外見は似ているが、ヒクは前髪が少し長く、風に吹かれるとサラサラと靡く。プララは頭にアホ毛みたいなのが付いているのが特徴だ。
 そんなヒクは、プララがこっちを見た事に気づくと自分も下から手を振った。
「プララー、長老のお話が始まるよ。遅刻するとまた怒られるぞ~」
「そんなもん……聞かなくてもいいよ。僕は僕で自由にしていたいんだし……」
 面倒くさそうに遠慮するプララにヒクは困った顔で言う。
「そんな事言っていっつもサボってるじゃないか。お迎えに来ている僕の身にもなってくれよ……」
「今日はお前とヒクに関する大切なお話があるんだぞ! お前いっつも長老の話しサボって何も知らないままだぞ! 着いて行け!」
 二匹の説得にプララは観念してふぅと溜め息を付いた。プララはいつもこの調子なのである。
 ここには人が作る物は無いものの、ポケモン達はこの森を『村』と呼んでいる。元々そんなにポケモンがいなかったこの森は多種多様のポケモンが集まり、共に生活を共有していく内に『村』と言う形となった。
 この村には村長がいる。人間の通う学校と言う物は当然無い為に、幼いポケモン達は村の教えとして毎日村長の話を聞きに行くのが決まりになっていた。そのおかげで知らない知識を話で学び、成長していくのである。
 そして今日はプララとヒクに大切な話をする為に、今日と言う日はどうしても話しに参加しなければならない。サボりの常習犯なプララなだけに、何が何でも絶対話を聞きに行かなければならなかった。
「長老がわざわざ僕達の為にお話すると言ってくれてるんだよ。だから今日は来てくれよ。な?」
「んぅ……わかったよぉ……」
 二匹の説得に、プララはようやく観念して長老の話を聞きにいく事にした。
「よぉし、遅れるから走っていくぞ。プララ、付いて来い!」
 急かす様に言いながらヒクは駆け出した。寝ぼけ眼のプララは慌てて巣穴から飛び出し、地面に着地する。そしてヒクの後を付いて行く様に駆け出した。


 森の木々を幾つも通り過ぎ、ヒラヒラと紅色の木の葉が綺麗に舞い散る後景を見ながら、長老の元へと走る二匹と一羽。
 紅色の木々を過ぎるとその先に、木々に囲まれる様に円の形したとても広い場所にへと出た。
「着いた着いた。プララ、ちゃんと挨拶するんだぞ」
「はぁ……面倒くさいなぁ……」
 ヒクに押されてだるそうに文句を言うも、前に出る。
 広場の中心にはキャンプファイヤーが出来そうな台があり、その奥には森の木々から孤立している大きな老木がある。その老木の根元は大きな窪みがある。そこが村長の住みかとなっている。
 二匹は老木の前まで来るとそこで一度立ち止まる。そしてラッパが老木の枝に下りると、大声を上げて叫んだ。
「ソンチョーーー、ヒクと怠け者のプララを連れてきましたああああ」
 プララに対してだけ皮肉込めて村長を呼んだ。ラッパが叫んでも、老木の窪みからは反応が無い。二匹と一羽はただジッと待っている。
 やや間を持って、老木の窪みから静かな足音を立てながら、顔中しわだらけの痩せ気味なキュウコンが姿を現した。
 顎鬚を長く伸ばし、黄金色の体毛は穂のかに薄れ、白の混じった体毛をしている。九尾ある尻尾はようやくと言った感じにユラユラと立っている。いかにも老体と言える体を小刻みに震わせながら三匹の前に出た。
 森の村長をしているキュウコン。彼は大昔からこの森に住んでいる長寿な住人。古い知識を十分に備え、森の住人が困った時には何時も彼の知恵を借りる。時に問題が起こった時にもキュウコンの知恵がそれらを解決し、それを繰り返す内にキュウコンはこの森の村長として森の住民に親しまれるようになった。
 人間が通う学校と言う建物の無いこの森では村長のお話が森の子供達にとっての教科書だ。だから森の子供達はみんな村長の元にやってきては昔話や色々な事を聞いては学び、成長するのだ。
 年齢ははっきりしないが、900歳前後らしい。
「ほぉぉ……ヒク、ラッパ。ご苦労であった。プララよ、久しぶりだな……」
 枯れるような声で二匹に言った。ヒクは笑顔で頷き、反面プララは面倒くさそうな顔をしながらも黙って頷いた。
「キュウコン村長。今日は大事な話があると聞いてやってきました。どんな話ですか?」
 年配に対する失礼無い態度でヒクが尋ねる。その後ろで、興味無さそうに欠伸をするプララ。いつもなら、そんなプララを叱り飛ばしていたキュウコンだが、今回は見逃して真面目な顔で言った。
「うむ、二匹とも今年でいくつになるか……?」
「18になります!」
「じゅぅ~はち……」
 二匹同時に応えた。二匹の態度の差を感じつつもキュウコンは気にすることなく続けた。
「うむ、ヒクとプララよ。その年となればお主等も大人としての自覚を持つ頃になるだろうな。すでに二匹とも異性に対する関心があろう……。いずれお主達は雌と交わり、家庭を持つ身となるじゃろう……
 そこで、今日はそれに関する話をしようと思う……だからプララよ、今度も逃げようなどと思わず、関心は持たずともせめて聞くだけはしてくれんかの?」
 キュウコンの指摘に、図星を突かれたように額から汗をながすプララ。どうやら途中で逃げようと企んでいたのがばれたみたいだ。
 他にヒクとラッパの冷たい視線が突き刺さり、困惑してしまう。プララは観念して、逃げると言う馬鹿げた考えを捨て、話を聞こうとした。話だけは……
「よろしい、では始めるぞ。昔から人もポケモンも異性と言う者に引かれる。そして互いに添い遂げ、夫婦となり子供を作る。そこから家庭と言うのが誕生するのじゃ
 雄にも雌にも、それぞれ家庭を守る為の責任がある。雄はその家庭を守る為に子を働き、養う。そして雌は雄を支え、子を育てる。子は親の愛情を知って成長していくのじゃ
 生きていく上では幾多の困難に見舞われる。それらの困難を乗り越えてこそ、家庭と言うのは守られ、築いていくものじゃ。何処でもある家庭とは、決して楽なものではない
 途中で放棄する事は許されない。夫婦で助け合いながら、長い間に無事に子が成長するまで養い、守りとおしてやらなければならん。やがて子が成長した時。親としての役目が終わり、そして死んでいく……
 そして、成長した子がまた新しい命を造り、家庭を作り、守り、育てていく……分かるな?」
 キュウコンの中で、自分が過去に経験してきた家庭の姿を有りのままを思い浮かべ、語っていた。
「はい」
「ふわぁぁ……」
 関心しながら聞くヒクに対し、詰まらなそうに欠伸をするプララ。異なる態度を取る二匹を見ながらキュウコンは続けた。
「生きている者なら誰でも訪れる……だからこそ、お主等には知ってほしいのじゃ。愛する者を見つけ、そして家庭を築くいて、その命のバトンを繋いでほしいのじゃ。分かるな?」
「はーい、質問~」
 話の途中で、面倒くさそうにしていたプララが突然手を上げた。
「ん……? なんじゃプララ」
「さっきさ、愛する者って言ってたけど……それって何?」
 プララの唐突な質問に、キュウコン、ヒク、ラッパの三匹の表情が一斉に『はぁっ?』となった。
「だからさぁ、愛する者って何って聞いてるんだよ」
「そりゃお主、愛するものと言ったら……好きな雌にきまっとるじゃろ?」
 キュウコンに好きな雌と言われるも、プララは意味が分からなそうな顔で、首をかしげた。
「なぁプララ、お前雌と雄の違い……分かるか?」
 キュウコンとプララの間に入りるようにヒクが聞いた。するとプララは承知のしている様な顔で。
「当たり前じゃないかヒク、えっと……オとメが違うだけだろ? 最後のスは同じだけどな」
「……プララ、呼び方の違いじゃないんだ。性別の違いって分かるか?」
 どや顔で知った気げに言った。キュウコンとラッパが目を点に、ヒクは目頭をつまみながら尋ねた。
「だからあれだろ? コイルみたいなのとそうじゃないのと。メタモンとそうじゃないのと。だろ?」
「コイルみたいなのってお前、コイルやメタモンに性別はないぞ?」
「え? あるだろ、ほら、真ん丸くてキーンとしたのと、グニャグニャしてるのが。あれだろ?」
「お前は何を言っているんだ?」
 聞いていられなくなったラッパが思わず突っ込みを入れた。プララの語る性別の意味が全く理解出来ない。そもそも意味が違っている。
「好きな雌? あぁ、好きなのなら沢山いるよ。隣にすんでるコラッタのらっちゃんとか、いつも森の倉庫番をしているガルーラのガルガのおばちゃんとか、それと、えーっと……」
「馬鹿者、そういう意味での好きではない! 自分が一生をかけて愛せる異性の事じゃ!」
 プララの馬鹿げた解釈にキュウコンは呆れながら言った。しかし、プララは間の抜けた笑顔で首をかしげた。そこでヒクが、プララの両肩を掴んで再度尋ねた。
「なぁプララ、お前恋とかした事あるか?」
「こい? 知ってるよ!」
 それを聞いて安心したヒクは安堵の息を吐いたが、しかし次に帰ってきた言葉に裏切られた。
「こいはコイキングのこいだろ。常識じゃないかぁヒク~」
 あまりにも馬鹿げた回答に、ヒクは目頭を強く抑えた。まさかこんな親父ギャグが帰ってくるなんて思いもしなかった。
「お前、本気で言ってるのか……?」
 呆れ果てたラッパが疑い半分に聞いた。プララは自分が何か変な事言ったかみたいな表情をしている。
「プララよ……お主は雌の体を見て、何か感じる事とか無いか?」
「はぁ、別に? これと言って……そうだ、最近木の実大好きピカチュウのピカリが太った事なら!」
 もはや話にならない。プララの知識には雄雌の性別と言う感覚が全く無い。今まで何をやって生きていたらこうなるのか。キュウコンやラッパまでもが目頭を押さえてしまった。
「コイツいつも村長の話をすっぽかして遊びに行ってたから、性別の知識が全く無いんですよ……」
「普通なら叱り飛ばす所じゃが、ここまで無知だったとは。もはや哀れむばかりじゃのぅ……」
「プララ、俺は親友としてこれほどまでに君を情け無いと思った事は無い……」
 3匹の冷たい視線と哀れみの言葉をもらい、プララは居心地の悪さを感じた。日頃からキュウコンの話を無下にしてきた付けが回ってきたのだ。
 プララと同世代の者は、ポケモンによって異性と付き合いがあったりなかったりはするが、プララみたいな異性に対する知識も感心も無いものは居ない。
 一体どれだけ自由気ままに生きてきたのか、計り知れなかった。とは言え……
「はぁ……このままじゃこやつは、一生を遊ぶか食って寝るだけの人生を過ごして一生を終えてしまうじゃろうなぁ。う~む……」
 結婚相手がいないのならまだマシな方だが、異性のあり方すら知らないのではあれば、このまま生きていくのは余りにもあんまりな気がする。何よりプララ本人のためにならない。
 今から性別の事について教えてやった所で意味が無い。何故なら異性との付き合いは、教えてやる事は出来ても、経験を積む事は己自信がしなくては意味がないのだ。
 プララに口から教えていくのではきりが無い。これは生きている者がごく当たり前の様に通っている事。それがプララには何一つ無い。
 このままでは、プララは童貞未婚異性無知として生涯を閉じる事になってしまう。それは余りにもあんまりだ。キュウコンは伸びた顎鬚を撫でる用に触れながら、プララの為に何か救済方法を考える。そして、ある答えに辿り着いた。
「それならば、プララを例の場所に通わすしか無いな……」
「例の場所? そこでプララのアンポンタンに何をさせるのです?」
「いずれ雄ならば雌と添い遂げる時にする行為じゃ。無知なプララには大人の階段一段二段飛び越して駆け上がる形にはなるがな……」
 首を傾げるプララに、興味津々なラッパもキュウコンを伺った。ヒクだけはキュウコンの言葉に驚き、困惑な表情を浮かべた。
「村長、いくらなんでもプララには刺激が強すぎるのでは。今のプララじゃ、オレンの実を主食とする子供に、マトマの実をそのまま食べさすようなものですよ?」
「わしもそう思うのじゃが……今から異性に関心を持たせても、こやつには幾分手遅れ過ぎる。こうなれば荒行事だが、体で異性を教えるしかあるまいが」
「それは、そうかもしれませんが……」
 今一乗り気で無いヒクに、止む得ない表情をするキュウコン。プララとラッパだけが何の話だが分からないままだ。それに、何だか馬鹿にされているような部分が含まれてる気がした。
「ソンチョー、連れて行くって……プララのお馬鹿を何処に連れて行くんですかー?」
「馬鹿は余計だぞ」
 悪口混ぜてラッパが尋ねる。ムッとしたプララが横目でラッパを睨む。
「ヒクよ、明日は満月じゃ。満月が真上に来た時、プララを例の場所へと連れて行ってくれ」
「ソンチョー! プララのアホを何処へ連れて行くんですかー!?」
「黙れよお前……」
 プララはおでこに血管を浮かしながら手を強く握る。一層の事ラッパに渾身カミナリでもぶち当てて黙らそうかと思った。
「プララよ……お主は明日の夜、黙ってヒクに従い着いて行くのじゃぞ。わかったな?」
「あ、はい」
 何時に無く真剣な眼差しを受けたプララは逆らう気がしなかった。むしろ従ったほうが無難だと本能的に理解した。
「プララ、明日の満月の日。自分の家で待ってくれ。分かったかい?」
 ヒクの表情もキュウコンに劣らず真剣な眼差しをしていた。意味はさっぱり分からないが、自分にとって重要な事だと何となく理解できた。
 しかし、プララは性別の意味と雌と言うものを知らないだけで、何でここまで心配されるのか。そして、ヒクとキュウコンが話してた例の場所とは何か、疑問に思う。
「そう言うことじゃ。話の続きはプララが芯の意味で大人になってからするとしよう。プララ、絶対に途中で抜け出すでないぞ……!」
「逃げるなよプララ!」
 ヒクとキュウコンの二匹が同時にプララを威圧するように睨んだ。プララの表情が引き攣った。その言葉通り、もし面倒くさそうな事だったらいつも通り途中で抜け出そうと考えていた所だ。
 枝の上で見ていたラッパに言葉はなかった。自分だけが取り残されている気がして、何となく面白くなかった。
「何さ、おれっちだけ空気かよ。こうなったらこっそり後に着いて行ってやろう」
 三匹に聞こえないような声でラッパが呟いた。
「それじゃ、三匹ともご苦労だった。今日はもう帰って良いぞ。ヒクよ、頼んだぞ……」
「はい、それじゃ村長。ありがとうございました……」
 それだけ言うと、キュウコンは踵を返す。辛そうなくらいのふら付く足取りで自分の巣穴へと戻って行った。窪みの影に覆われ、その姿を消した。その背後に目を反らす事なく最後まで見送った。
「はぁ、これで終わりか。さっさと帰って木の実をかぶりつきたいよ。ふわぁ……」
 プララはキュウコンの姿が見えなくなると、緊張の糸が解けて大きなな欠伸をした。起こされてから朝食を食べていない為に腹の音が鳴る。
 重要な話と言う割には、プララの異性関心の無い事を議論するだけで。本来するはずの話は後回しにされて終わってしまった。プララとしては面倒な話が短縮されたから良しと思った。
 しかし、急な予定を入れられた分、面倒臭い。だからと言っていつものように脱走する事は許してもらえそうに無い。
「プララ、戻るよ」
 プララの横を切ってヒクが先頭となって来た道を戻った。その背後に着いて行くプララとラッパ。ちらちら舞い散る紅色の葉が、来た道を帰る二匹と一羽を見送るように舞い散った。


 帰りの道中、いつも通りの静けさを守る森。しかしプララには、この道中が何時も以上に静かだと感じていた。耳に入るのは枯れた葉を踏む音のみ。
 ふとプララは前を走るヒクの背後をジッと見つめた。何の変わりも無いヒクの背後だ。けど、なんとなく感じてくる重苦しい雰囲気。それとは別に、キュウコンとヒクの会話で気になっていた部分があったプララは思わず口を開いた。
「ねぇヒク。村長が言ってた例の場所って何さ?」
 プララの問いにヒクの耳がピクッと動いた。しかし、言葉を耳にしても口は開かず、沈黙を守りながらひたすら前を走っていた。
 無視されたのかと思ったプララはムッとした。
「自分達が絶対に来いって言ってたじゃないか。それってどういう所なんだよ。教えてよ!」
「……」
「体で教えなきゃいけないって、それってどう言う意味なんだよ? ヒクー?」
「……」
 多少強めの口調で問いただすが、それでもヒクからの返答はなかった。相変わらず沈黙だけを守る。ヒクの様子が微妙に様子がおかしいのに気づいてはいる。だが、無視され、苛立ちにプララの表情が歪む。
「何か応えてくれよヒク! 僕に関係する事だろ? 何で黙っているんだよ!」
 それでもヒクは応えなかった。村長との会話以来ヒクはだんまりを決めた。いい加減プララは憤りを覚え、走る速度を上げてヒクの背後との距離を縮める。
 やがてヒクと並ぶ様になると、プララは無視するヒクを横目で睨みながら問い詰める。
「僕には逃げるなよと言っておきながら、自分は僕の言葉から逃げるのかい? 自分から言っておきながら、それでも雄かよ!」
 つい最近まで性別の意味と区別がつけなかったプララに言われ、ヒクはその場で張り付く様にピタッと止まり、走るのを止めた。その様子を見たプララとラッパが、急ブレーキを掛ける様に止まる。
 止まったまま下ばかり見つめるヒクに、プララは言葉をなくす。ラッパも何事かと心配そうに、ヒクを見つめていた。
 やや間を置いてヒクは表を上げた。その表情からは、不安と戸惑いが見えた。怒った様子は全く無く、じっとプララだけを見つめていた。ただ見つめているだけかと思ったら、今度は深い溜め息を吐いた。
「プララ、君は今まで誰かの事を好きになった事はなかったの?」
 それは唐突な質問だった。聞かれたプララはキョトンとするばかりで答えなかった。
「僕の言っている事は極単純な事さ。その年の雄ならばみんな雌を抱いてみたいと思うはずさ。
 ポケモンには好みに違いはあるけれど、皆そう。発情した雄ならば雌を抱きたいと言う気持ちが存在する。これは極自然な事なんだ。
 だけどプララだけはそれが全く無い。僕はそれが信じられないんだよ……」
 再び表をあげたヒクの表情は、悲しみに満ちていた。親友の異性に対する無知が、彼をここまでに悲しみに暮れさせた。
 しかしプララはなんでそんな事の為にそこまで悲しまれなければならないのか、理解ができなかった。
「なんだよ、そりゃ村長の話をすっぽかしたからその性別とか、異性とか訳分かんないけどさ。けど、そんな事がそんなにいけない事かよ?」
 そんな事……その一言がヒクを余計に悲しませた。
 異性を抱きたいと言う気持ちは、生きている者ならば決して無視する事の出来ない感情の一つ。決して意地汚い欲望では無く、生きている者が将来、子孫を残す為に大昔から持っている感情。それを先祖達は繰り返し繰り返し、今に至るまでその命を繋いできたのだ。
 常識的で尚且つ、とても重要な事なのだ。それを、プララにとっては『そんな事』に過ぎなかった。
 愛する者と生き、共に暮らし、子供を作り、家庭を築く。ヒクにとって、そんな生き方こそ生き物にとって最大の幸せであり、人生の有り方だと信じていた。無論自分も、将来このような人生を過ごして生きたいと願っている。
 だからこそ、その生物にしか手にする事の出来ない特権を、プララが無下にし、雌を知る事も家庭を持つ事も知る事なく、その生涯を閉じていくのがヒクには堪らないのだ。
「プララ、君は今とても充実しているかい?」
「へっ?」
 再び質問をされたプララは、目を点にしていた。充実しているかと聞かれ、首を傾げた。
「別に、今とても充実しているよ? 怖い事なんて無いし、木の実は沢山あるし、家に帰ればぐっすりと眠れるし」
「そう言う事じゃないんだよ! 雌と抱く喜びが君には無いのかって聞いてるんだよ!」
「だ……だから雌ってのを抱いて、何がうれしいんだよ? ヒクの言う事がいまいち分からないよぉ……」
 プララの中で雌を抱くと言うイメージがさっぱり出来ない。何が嬉しいのか全く理解し難い状態だ。
「……そうかい、やっぱり村長の言うとおり、君をあそこに連れて行って、知ってもらうのが一番だね」
 そう言ってヒクは肩を落とた。疑問に思って言ってみたが、これほどにまでプララは異性に関する関心が全く無いのを、ヒクは改めて把握した。
「だからさー、村長やヒクが言ってた例の場所ってどういう所? さっきから聞いてるじゃんか~」
「そこに行くまで教える訳にはいかない。そこに関する事は言語道断ときつく押されてるからね。でもプララ、遅かれ早かれ君は知る事になるさ……」
 ヒクはゆっくりとプララに近寄り、頬を撫でながら優しい口調で言った。そして次に出た言葉は……
「抱かれてみるがいいさ、そしてら気づくよ……」
「え、どういう事?」
 冷静な口調で言い放ったヒクの言葉。プララは戸惑いながらも聞き返した。しかし、ヒクはそれだけ言うと再び走り出した。
 急な発進にプララは慌ててその後を追った、今度はプララにも追いつかれないような速さで走ってた。
「ねぇヒク、それってどういう事だよぉ」
 必死に追いながらプララは尋ねるも、ヒクはこれ以上は喋るまいとプララを振り切るように駆け抜けて行ってしまった。
 すばやさではヒクの方が上な為に、ここまで早く行かれてしまったらプララに追いつく手段は無い。ただ先を行くヒクの背後を目に収めながら追いつきもしない足でその後を追っていった。
 やがてヒクの姿は見えなくなり、置いて行かれる形になった。すばやさでは勝てないと知っていても置いて行かれるのは癪だ。行き慣れた道だから、置いてかれた所で家路に着くかの心配はいらない。
 しかし、プララにはヒクが最後に残した言葉が気がかりだった。抱かれてみるがいい……。この言葉が、今日一番の疑問だった。
 難しい事を考えるのは好きではないが、その一言ばかりが気になりつつ、家路に向かって行った。

 約束の日が来た。日が沈み、森の紅色の紅葉は夜の闇色に塗りつぶされ、辺りを照らす光は満月の照らす一寸の以外何も無い。
 漆黒の闇を照らす唯一の光である満月は、真上を見上げる角度に位置している。人間の時間帯で表すのであれば、今午後10~11時ぐらいだ。
 村の住民は昼の活動を追え、明日に備えての十分な睡眠。夢の中にいる。寝静まった村は、ホーホーの小さく鳴く様な声だけが、森中に響いていた。
 ほとんどのポケモンが寝ているこの時間帯で、何時もなら眠りの中にいるプララが今日だけは真ん丸い瞳を半開きにしながらも、自分の住みかである大木の根元でちょこんと座っていた。
 約束の時間だった。月光が照らす夜道を眠たそうな瞳でただ真っ直ぐ見ながらヒクを待っていた。
「ふわぁぁ……」
 これで何度目の欠伸だろうか。本当なら夢の中にいるはずだったのに、キュウコンとヒクの厳重にまで言われた約束を守る為に、いまこうやって眠らずにいる。
 欠伸が出るたびに、プララは頭の中で睡魔と闘い、まだかと待っていた
 キュウコンが大切な話を途中で切ってまで行かせようとしていた例の場所とはどんな所なのか。昨日から考えていた。
 そしてそれが今夜、その場所にへと案内される。
 しかし、今思うと難儀な事だ。今日に至るまで関心を持たなかった性別に関しての事。雄とか雌とか、同じ生き物でもその性別のおかげで違う存在であると言う事。
 それが一体何だと言うのだろうか。ヒクは、自分が今まで雌に関して何の知識も興味も感情もなかった事をひどく嘆いていた。
 そしてヒクが最後に言っていた言葉。雌に抱かれて見ろ。その言葉が今でもプララを理解不可能の境地に置いた。
 抱くと言われても、何かそんなに特別な事なのか分からない。人間でもやっているような、「ハグ」とは違うのだろうか?
 考えると考えるほど、疑問は尽きなかった。もともと性に関する知識の欠片も無いプララには、その疑問を解くだけの要領は無いが。
 そんな事を考えているうちに、月光が照らす夜道に、生き物の影らしきものが映った。プララ自身はそれに気づかずにいた。影は、ゆっくりとプララの方に歩み寄る。
「プララ、待たせたね」
 何時の間にか眠気で虚ろ状態だったプララは、口から垂れている涎を拭う事無く顔をゆっくりと上げた。
 視線の先には、こんな時間に至るまで自分を待たせたヒクが何事も無い表情でそこに立っていた。
「ひくぅ……?」
 声ではヒク本人を認識しても、虚ろな瞼がヒクの姿を歪んで見せていた。両手で目を掻きながら言った。
「こんな夜中になるまで僕を待たせて……本当に何をしようって言うんだよぉ……」
 小さく愚痴りながらもプララはゆっくりと腰を上げた。ヒクはそんな様子に構う事無く言う。
「ほら、急ごう」
 急かすヒクだが、プララは寝ぼけ眼が抜けず。ふら付くような足取りだった。
「まってよひくぅ、僕おしっこ行きたひぃ……」
「そんな事している暇は無いよ。着いたらやってもいいから、ホラちゃんと立って」
 ヒクに両手を持たれ、プララはようやくちゃんと地に立つ事ができた。
「僕もちょっと用意が遅れたから急がないと。走るよ?」
 プララの返事を待つ事なくヒクは四つん這いになって地を駆け出した。寝ぼけ眼のプララも慌ててその背後を追うように、四つん這いになって駆け出した。
 早い足取りで漆黒の森の中を走る二匹。そして闇の中へと消えて行った。
 そんな時、プララの住みかである木の上で、誰も居ないはずのこの枝に、一羽の影……
「ふわぁ……よーやく動き出したか、おれっちも後を付いていこーっと!」
 二匹の後を追う為に、プララに気づかれずにずっと子の枝でジッと待っていたのはラッパだった。夜行性では無い為にこの時間帯の活動はつらいものがあった。
 しかしラッパは、どうしてもプララを連れて行くその場所の事が気になっていた。だからこそ辛いこの時間帯に起きてまで待っていたのだ。
 そして遂に尾行のチャンスが来たのだ。ラッパはヒクとプララに気づかれないように羽を広げ、羽ばたいた。羽音をなるべく立てずに、二匹との距離を取りながら後を追っていった。
 沈黙の夜を二匹とそれを追う一羽が音を立てずに進んでいく。誰も起きているはずの無い沈黙の森、しかし、今から二匹と一羽の行く先に、夜眠る事の知らない宴が待っていた……


 漆黒の森の中を進むヒクとプララ。唯一、闇を照らす満月の光も、進むにつれて複雑に入り込む木々の木の葉の傘に隠れ、漆黒の闇が徐々に広がっていく。
 その場所は、プララの住んでいる木のずっと先の北西に位置する森林。ずっと暮らしてきた森とは違い、プララが通った事の無い複雑な道だった。
 時間的に、もう1時間以上も走っていた。流石に手足が疲れてきた。こんな場所あったっけと思いながら、すっかり眠気の覚めたプララが周りの背景を気味悪そうに走りながら見ていた。
 気のせいか、周りの木が自分達の事を睨んでいるような錯覚を覚える。自分達が住んでいた森と同じ森だが、プララが暮らしていた村とは、雰囲気も背景も全然違っていた。
 更に進むにつれて、プララの内心に恐怖感が膨れていく。僅かに差し込んでいた満月の光が徐々に不気味に聳え立つ大木達が一線の光さえも通さんと木の葉の傘が全ての光を遮断していく。
 やがて進んだその先は、一寸の光さえも無く、不気味なくらいまでに暗い漆黒の闇が広がる森林に辿りついた。そこは昼でも暗いままでいそうな森だった。
 そこは洞窟並みの暗さとはまた違う意味での暗さがあった。例えるならば、洞窟なら周りが見えなくて何処に壁があるのか分かり辛い暗さなら、ここは大木と地面だけはようやく視界に納める事が出来る程度の暗さだ。
 しかし、そんな中途半端な暗さのおかげでそこら中の大木は、元々あまり好ましい形をしていない分、その不気味差を増していた。いかにも、何かが出そうな雰囲気だった。
 こんな村はずれの場所に、どうしてヒクが知っているのか。そして、こんな所に来てまで行く『例の場所』とはどんな所なのか。プララは想像するのも怖くなり、自然に体が震えてきた。
 進む最中、時折誰かの視線を感じる。大木の隙間と根っこの傍で、誰かが二匹の事を監視している気がした。その視線の中に、明らかな『敵意』とか『獲物』を見る様な視線を感じた。
 用事でも無ければ一刻も早くこの森を出たほうが良いと、プララの本能がそう告げていた。しかしヒクは、不気味な雰囲気を放つこの森に対してそんな様子を見せる事なく、涼しい顔でひたすら前を走っていた。
 プララとしては直ぐにでも引き返したい所だが、今更一匹でこの森引き返すのも難しい。複雑に入り組んだ大木で阻まれ、迷子になる事は間違いない。
 何より、こんな所で一匹でうろつくなんて余りにも危険な気がする。結局プララは、内心に不安と恐怖感を煽られながら黙ってヒクに着いて行くしかなかった。
 進めど進めど、まだ目的の地には到着しない。自分とヒク以外の生物が存在しない。見えるのはずっと続く暗い道、不気味な大木の列、時折視界に入る元気の無い雑草。
 まるで死刑執行の階段を上らされているような、そんな大げさな恐怖感がプララに纏わりつく。もういい加減に帰りたい。早く用事を済ませて、一秒でも早く家の中で安眠につきたい。
 思わずプララはヒクに帰りたいと声を掛けようと口を開く。だが、恐怖心から思う様に声がでず、口をパクパクさせるだけで終わった。すると……
「ここに来るのは初めてだよね」
「あ……」
 ヒクの唐突な声に驚く。自分の住みかから此処まで来るのに二匹は一度も会話をしていなかったのだ。そしてこの漆黒の闇である森の中だ。少しの事で驚いてしまう自分が情けないと思いつつも、内心少しホッとした。
「ねぇ、ヒク……例の場所ってあとどの位なの……?」
 プララは恐る恐る聞いた。いつも一緒にいるヒクに対してそんなに怖気づく必要なんて無いのに、何故だかこの不気味な森を平然として進んでいるヒクが、別人に思えたのだ。
「後少しだよ」
 それだけ言う。プララの方には振り向かないままヒクは、ひたすら前を進む……
「そのさ、随分遠くまで来たけど、ここ何て所……?」
 プララはとにかく喋った。出来るだけ喋ろうと思ってた。じゃないと、この森の雰囲気押しつぶされて、どうにかなってしまいそうだったからだ。
 ヒクは答えないまま進んだ。プララは置いて行かれない様に後ろ姿を見ながら着いて行く。しかし、プララはヒクの背中に何か違和感を感じた。気のせいか、ヒクの後ろ姿が何となく怖い……
 根拠は無いが、ヒクの後姿が『そんな事を聞くな』っと、言っている様な気がした。
 プララは押し黙った。何時までも続くと思える様な先の見えない森の奥を、ヒクに案内されるがままに着いて行く。
 そして、あれから30分ぐらい走った。森は相変わらず一筋の光も通さない漆黒の闇が続く。ヒクとの会話も無いままだ。
 プララの中で、これは何かのお仕置きじゃないのかと思い始めた。子供の頃から、今まで村長の話を無下にしてきた自分への罰。だからこんな所に連れて来たんじゃないのかと思った。
 どんなお仕置きがあるのか? この森に置き去りにされて、一匹孤独にされるのか、それとも、この森に居る連中に、自分を襲わせるのだろうか等と、被害妄想に走っていた。
 怖い、怖い……、怖い……!
 根拠の無い妄想が、何れ訪れる現実の様に思えてきて。プララは怖くてしょうがなかった。
「怖いかい?」
「べ、別に……」
 不意に掛けられたヒクの言葉にビックリしながらも、プララは返す。無理に強がっているせいで声が裏返ってしまった。
 しかしヒクは、そんな様子に構う様子も無く、プララに振り向かずに言った。
「プララ、今日君はその場所に言って、色々教えてもらうんだ」
「色々って具体的には?」
「体の事さ。プララは雄として知らない事が多すぎる。だから今日一晩で体で教えるのさ」
 ヒクの口調はいつも通りだが、その喋り方に冷たい物を感じる。
「どうされるの?」
「行けば分かる。それとプララ、今からボクのいう事を重大な事情と思って聞いてくれ」
 そう言ってヒクは、唐突に足を止めた。それにつられてプララも足を止めた。そこで、ようやくヒクは顔をプララに向けた。
 いつも通りなヒクの涼しい表情だった。しかし、今日だけはその表情が曇っている様に思えた。
「一つ目は、前にも言ったと思うけど、絶対逃げ出さない事。途中で臆病になって抜け出す事はそこでは許されない
 二つ目は、そこで会う人達に余計な詮索はしない事。あそこの連中は何かを探ろうとする者を容赦なく……そこは皆までは言わない
 三つ目は、詳しくは言えないけど、万が一、どうしようもないそ状況に置かれてしまったら。せめて気を確かに持て。それだけだ」
 プララは一つ目の言葉は理解出来た。しかし、その二つについては、到底理解できなかった。
「ヒク、気を確かにって……」
 言いかけた途中で、ヒクは身を翻して先に進みだした。
「あ、待ってよ!」
 余りに一方的過ぎるヒクに少し違和感を持ちながらも、その後ろを追って行った。
 再び二匹に沈黙が流れる。しんっとする暗い闇をひたすら走り、プララはまだかまだかと思いながらも走り続ける。
 やがて、ずっと続くと思っていた闇の先に、穂のかにオレンジ色に光る小さな明かりが見えてきた。
 それに気づいたプララは、ほんの僅かだが心に安らぎを感じた。ずっと暗闇ばかりの道で、心細かった分、安心感が生まれたのだ。
 とにかくもう、こんな道はうんざりだ。早く行こう。どんな所か、どんな事をするのかは想像したくないが、少なくともこんな気味の悪い通りよりはマシなはず。
「もうすぐだ。早くこんな道とおさらばしたいよ」
「待ってプララ」
 オレンジ色の明かりが徐々に大きくなり、もうすぐと言うその時、ヒクは急に足を止めのだ。急に何事かとプララも足を止めた。
「どうしたんだよ、まだ何かあるのかよ……?」
 プララの問いにヒクは答えなかった。そして、ゆっくりとヒクはある大木の見上げる様に上を向いた。プララも不安そうに上を向く。
 見上げた先には何も無かった。見えるのは暗さではっきりとは見えない木の枝ばかりであった。しかしヒクの顔は、明らかに何かを見つけたような瞳だった。
「僕だよ、ヒクだ。予定通り連れて来たよ」
 空に向かってヒクは叫んだ。明らかに誰かを呼んでいる様子だったが、叫んだ先の返事は無く、声が木霊するだけで終わった。
 すると、やや間を置いて、プララの耳に何かが羽ばたく音がした。それはゆっくりと、確実にこちらに向かって降りてきているのが分かる。プララはとっさに四つん這いのまま身構えた。
 羽音の主は暗い闇の中に現れた。目が暗闇に慣れてきたお陰で、その存在を視界に収めるまで時間が掛からなかった。上空から静かな羽音を立てながら降りてくるのは鳥ポケモン。
 体系は鳥ポケモン類では中型のサイズに当たる。茶色と白の沿った翼の、茶色の背中と反対に白い腹。赤い鶏冠の下の獲物を狙う鋭い目と、付け根から先まで赤く染まっている鳥の尾が特徴的な鳥ポケモン。ピジョンだった。
 ピジョンはヒクの目の先で翼を畳んで降りると、真っ直ぐヒクに歩み寄る。
「予定より遅刻よヒク」
「ごめんサラ。でも約束通り連れて来た」
 口調からして、サラと呼ばれたピジョンは雌らしい。プララの事を紹介されると、鉤爪で真っ直ぐとプララの方に歩み寄ってきた。
 身長の高さと目つきから伝わる、威圧的な物を感じたプララは思わず後ずさりした。
「これが連れね?」
「うん、今回はあくまで教育の一環だから。余計な入れ知恵だけはしないでよ?」
「分かった分かった。それじゃ先に進んで良いわ」
 そう言ってサラは翼を左だけ広げ、先への移動を進めた。その表情に不適な笑みが浮かんでいるのにプララは気づいた。
「うん、それじゃプララ。行くよ」
 再びヒクは走り出した。サラの事を横目で見ながらプララは、その後を追って行く。
「ねぇヒク、今のポケモンは何だったの?」
「ただの門番だよ。あれでも、君より年下だよ」
「え、そうなんだ……」
 先ほどまで怖くて後ずさりした自分が恥ずかしくなってきた。しかし、何だか威圧的だったから、しょうがない部分もあった。何よりあのサラの不敵な笑みが、微妙に頭の中で残り続けている。
「プララ、あの程度で臆していちゃこの先きついぞ」
「……五月蝿いな」
 忠告され、見っとも無い自分を刺されたプララはムスッとした。
 後少しでオレンジ色の明かりの先に到着するその手前で、ヒクは再び足を止めた。プララはまたかと、頭の中で不満に思いながら走るのを止める。
「ちょっと待ってね、もう一匹に話を通してこないといけないから」
 そう言って、少し先に居るポケモンに向かって二足で歩いて行った。
「またかよぉ……」
 さっさと目的の地に着いて一安心したいのに、じれったい。不満で頬を膨らませながらヒクの前にいたポケモンを遠めで見た。
 遠いせいで姿ははっきりしない。だけど、明かりに照らされて映るそのシルエットは、プラスルやマイナンにほど近かった。ヒクはそのポケモンと喋っている。
「はぁ、今度は一体誰なんだよ」
 愚痴を垂れながら律儀にも待った。本当なら面倒くさくて途中で帰ってしまう所だが、こんな森で迷子になるのも嫌だ。心労と眠気でプララは深い溜め息を吐いた。本当なら家の中でグッスリなはずなのにと、プララは今日と言う日を呪った。
「おーいプララ、こっちに来いよ」
 話が終わったヒクの呼ぶ声が聞こえた。はぁっと溜め息を吐き、呼ばれるままに向いて行く。
「終わった? もう何でも良いから早く終わらせて家に帰らせてよ。こんな気味の悪い場所なんか――」
「気味が悪い場所でごめんなさいね。プララ君」
 言いかけた途中、落ち着いた綺麗な声が割って入った。優しく響く透き通る声、プララは喋るのを止めて優しい声のする方へと向いた。
 声の主は、身長はプララと同じくらいだ。整った黄色の毛並みに背中の茶色の縞模様があり、丸く長い耳は先端部分が黒く、少しポッチャリとしたお腹とお世辞にも長くない手足が返ってその魅力を引き出している。付け根部分がが茶色の稲妻模様のギザギザの尻尾と赤丸の頬が特徴的なポケモン。
 今人間界ではアイドル並の人気の高い、可愛いポケモン類の中で代表になっている電気ねずみのピカチュウだった。
 尻尾の先がハートの形に似ているからして、このピカチュウは雌だ。
 雌に対して関心の無かったプララは、声の主であるピカチュウを前に魅入っていた。
 声だけでなく、その外見も可愛かった。草食動物の様な大人しい口調。半開きな黒真珠の様に輝く瞳と整えられている綺麗な黄金色の毛並みに、クスッと優しい微笑みを見せた。プララはさっきまでの不満を忘れていた。
「始めまして、私の名前はエレンって言います。ヒクさんからは話は聞いていますわ。よろしくね、プララ『君』」
「おいエレン、プララは僕と同い年だよ?」
 ヒクに注意されたエレンと呼ばれたピカチュウはハッと口を手で隠した。
「あ、ごめんなさい。私よりも年上だったの……。それなら、プララさんと呼びますね。私の事は、エレンって呼んでください」
「え、あぁ大丈夫だよ。僕の事もプララで良いよ。それにしても、綺麗だなぁ」
「気に入ったかいプララ?」
 ヒクに問われ、気に入ったかと言われるととてもノーとは言えない。綺麗な声と整った顔立ちに、丁寧な口調がとても好印象だった。
「ウフッ、気に入ってもらえてうれしいです。でも私は、プララさんとお呼びしたい。いいですよね?」
 エレンの綺麗な顔で迫られ、プララは抵抗もなく黙って頷いた。
「ありがとうございますプララさん。私もあなたに気に入ってもらえないかと心配でしたの。だから―――」
「あぁ、大丈夫だしょ。年は違うかもしれないけど、僕そういう事を気にしない性質だから。その、気軽に話してもらえたらいいな」
「……わかりましたわ、ありがとうプララさん。私もあなたの事が気に入りました。うふっ」
 嬉しそうにエレンは満面の笑みを浮かべた。プララも少し照れながらも笑みを返した。エレンの方も、プララに対してとても好印象の様だ。
「どうやら、お互い直ぐに仲良くなれて良かったよ。それとプララ」
 間に入ったヒクが、二匹の会話を中断させてプララに声を掛ける。
「何、ヒク?」
「ここへ何をする為に来たか覚えているかい?」
 その問いにプララは、うぅんと頭を悩ませた。そもそもある目的の為にここに来たのだ。わざわざ遠い所に来てエレンを紹介してもらう為に来たのでは無い事を、プララは思い出した。
「えっとぉ、何だっけ?」
 アホ毛をクリンッと跳ねてそう言った。朝あれだけ言ってた当初の目的をプララはすっかり忘れていた。
「はぁ、あれだけ村長と話したじゃないかもぉ……。今更初めから説明するのも面倒だし。それじゃ簡単に言うけどさ。プララ
 君はこれからその先に行って、エレンとセックスするんだ」
 唐突な物言いに、プララは首を傾げた。そもそもヒクの言う『セックスする』と言う意味が分からない。
「エレンと、せぇくす?」
「まぁ口で言っても分かるだけの知恵は無いしね。だから彼女に教えてもらうんだよ」
「はぁ……」
 今一状況が飲み込めていないプララ。そんなどうしようもない雄にエレンが割って入る。
「プララさんって女の子の事よく知らないって聞かされたから、私驚いちゃって。だから私が体を使ってプララさんにエッチの仕方を教えますの」
「そう言えば村長が、雌を抱けって言ってたけどそれと何か関係があるの?」
「そう、プララさんは本当に雌と抱き合った事が無かったのですね……。ちょっと可哀想です」
 エレンはそう言って、その端整な顔を悲しみで歪ませ、黒真珠の瞳を僅かに潤ませた。そんな顔を前に、プララは自分が同情されている気がして気に入らなかった。
「エレン、余計な同情はいいよ。どの道今夜知る事になるんだ。だからリードは君に任せる。君は何もしなくてもいいから、彼女に身を委ねるんだよ。いいね?」
「あー、うん。分かったよ」
 まだ頭の中で理解出来ないまま、プララはとりあえずヒクの言葉通りに従ように返事した。
「任せてくださいヒクさん。満足してもらえるように頑張りますから。だからプララさんも、その……」
「おっと、余計なお喋りは終わりにして、もうそろそろ行かないとさ」
「はい、それじゃプララさん。行きましょ」
 エレンはプララの手を取り、先に進みだした。ヒクも二匹の後を続いていく。
 明かりの先までもう僅かな所に来た。わざわざ四つん這いになって走る必要も無い三匹は、ようやくキュウコンの言っていた『例の場所』に到着した。
「ここが、村長の言ってた場所?」
「そうだよ」
 そう言われてプララは先にある物を見上げた。大木の間に挟んで、折れた枝や荒削りした木の板を張って繋いだ粗末な作りのしたそれは、形的には『門』と言うべき建物だった。
 仕上げはずさんで、門と言うよりある種のオブジェと呼ぶ方が似合っている。それでも出入り口のある建物は、門としては一応機能はしていた。
 明かりの原因となっていたそれは、重力の法則を無視して浮かんでいる無数のオレンジ色の火の玉だった。門を照らすようにその火の玉は浮かんでいたのだった。
「なんで火の玉が、もしかしてここってお化けがでる場所じゃ……」
「ほら、こっちですよ」
 再び恐怖心を思い出しかけたその時、その疑問を解いてあげる事なく繋いである手を強く引っ張った。エレンはプララの手をしっかりと繋いだ手を離さず、人間の大人がギリギリ入れるサイズの門を潜る。
 疑問が解決しない内に門の中に入ってしまったプララは、背後をチラッと見ながらもエレンに引っぱられるままに奥へと進んだ。そして、門を抜けたその先は……
「何だここ……?」
 プララは驚きのあまりに、瞳を大きく開いた。そこは広場だった。大宴会でも開けそうなくらいな広場の周りを木々で囲んだ、晒しにされた地面と僅かに生えている草程度の何の変哲も無い自然的に作られた大きな広場だった。
 そこには、沢山のポケモン達が居た。皆、種族、タイプ、性別、それぞれ違うポケモン達が広場に集まっていた。それだけなら、まだ普通だった……
 しかしプララが驚いたのは、その広場の事ではない。驚愕した原因は、その光景にあった。
「何、これ……」
「うふっ、驚ろきましたかプララさん? 始めて見るもの、驚いて当然かも知れませんね」
 性を知らなかったプララからして、それはとても奇妙な光景だった。幾多の雄と雌がペアで、または複数で、抱き合い、交じり合っていた。
 腰を上げて肉棒を求めて甘い声で鳴く声。性と言う名の肉を貪り、甘酸っぱい臭いのする液をすくい舐め、すする音。雄雌区別無く、無遠慮に性を互いにぶつけていた。
 雄雌達の甘ったるい喘ぎ声と吐息の音が広場中に充満している中、何匹も居ようポケモン達が異性を相手に自らの欲望を解き放ち、乱交に浸っていた。
 その上に、当たりに漂う鼻腔をくすぐる甘ったるい臭いが漂ってきた。その原因となるものが、広場のいくつかに置かれてある壷から放つ異臭だった。
「何なのこれ、皆一体何をしているの……?」
「ただ楽しんでいるだけですよ。この森ではね、時々みんなで激しくエッチして乱れるんです。今から私達も同じ事をするんですよ、いっぱいね……」
「はぁい、来たのねエレン。全くお盛んな事~」
 絶景に目を取られていたプララと、この光景をうっとり眺めているエレンの間に割ってはいる雌の声。
 振り返るとにこやかな表情のキルリアがこちらを見ていた。
「こんにちわお客さん。エレンのお相手が君ね~?」
 案内役のキルリアは顔をプララの唇に触れそうになるくらい近づき聞いた。まだ頭の中で整理がついてない状態のプララは、黙ってコクンッと頷いた。
「そう、綺麗な相手を見つけて、今夜も燃えそうですね~」
「うふっ、それはそうと、私とプララさん、そしてヒクさんの少人数でいれる場所に案内してもらっていいですか? 何せ今日のお相手は特別ですから」
「分かりました~、それじゃあなた達はこちらに案内しますわ~」
 キルリアは手招きをして、今居る広場から外れた小さな道へと誘った。
 着いた先は、何かで切られて横たわっている一本の巨木と、切り口を残して根っこだけ伸びた切り株だった。
 歩いて五分ほど、広場から少し離れたその場所は大勢のポケモンの喘ぎ声が聞こえてこない。切り株が休憩場所として利用でき、静かに過ごすにはもってこいな場所だった。
「はぁい、ここですわ~。それではごゆっくりお楽しみくださいね~。それと、ヒクさんもお二人とご一緒にするのですか~?」
「いや、僕は見届けする役目があるから、二匹の行為をここで見させてもらうだけにするよ」
「そうですか~、結構ですよ~。けど今日は満月ですから、セイカンの実の多く使ってるのでこの臭気は半端無いですよ? ここまで匂いが来るくらいですもの」
「そうだね」
「もし~、お相手が見つからないのでしたら、私がお相手してもいいのですよ~?」
 誘う言葉にまだその気はないと冷静に答える。そんなツンなヒクに、キルリアは僅かに頬を膨らませた。
「私達の事は御気になさらず、誰かとヤってきてもいいんですよ? うふっ」
 エレンの言う通り、広場で臭ったあの甘ったるい匂いがここにも漂ってきている。そのせいかヒクの顔がほんのり赤い。ヒクだけでなく、言ったエレン本人の顔もほんのり紅色に染まっている。
「あぁ……もしヤりたくなったら自分で探すよ。だから先に初めてくれないか?」
「うふっ、ありがとう。それではプララさん、切り株に腰を下ろしてくださいな」
「え、うん。でも、この臭いは何なの……? それに体が熱くなってきて……」
 言われるとおりに切り株に腰を下ろすプララ自身も、二匹同様に体が徐々に火照ってくるのを感じた。だが、どうしてそうなるかプララには分からなかった。
「安心してください、この臭いは皆さんをエッチな気分にさせているんですよ。だから私達もそろそろ……ね、プララさん」
「え、わっ!」
 エレンは、切り株に腰を下ろしたプララと手を繋ぎ、そして火照った顔で笑みを浮かべたままやんわりと押し倒した。プララの頭部が切り株の真ん中に触れる。
 そして、プララの目の前には、視界いっぱいに広がるエレンの火照った顔。花のように可憐な顔が紅色に染まり、他の雄から見てその色気を十分に引き出していた。
「うふっ、緊張しなくていいですよ。じっくりと、気持ちよくなりながら教えてあげます。軽いキスです、だから十五秒ほど息をせず、あなたの『最初』を私にください……」
「ちょっとま……んぅ……」
 何か言おうとしたプララの口に、エレンは返事を待つ事なくその綺麗な唇を塞ぐように、優しく重ねた。プルンッとした柔らかな雌の唇が、プララの唇越しにその感触が伝わってくる。
「ん……!」
 生まれて初めて触れた暖かく、弾力のある唇にプララは困惑した。自分が今何をされているのかまだ理解ができていなかった。当然、それがキスと言う事も知るはずがない。
 性に関心が無いはずのプララの胸の鼓動が高鳴ってエレンの胸越しに伝わっていく。
「プララ、今君がしているのは口づけ。キスと言うものだよ。好きな雄雌同士は、皆こういう事をするんだ。素敵だろ?」
 倒れた大木から跨る様に乗っていたヒクが、二匹を見下ろしながらプララに今の行為を丁寧に説明してくれた。
 だがプララにその言葉は届かなかった。何故なら、エレンはキスが初体験のプララに遠慮無かった。最初は軽いキスのはずが、徐々に唇同士が僅かな間も作らないくらい深く重ねられているからだ。
 呼吸を忘れさすような、柔らかく、とろけるほどの熱い口付けをプララは体験していた。恥ずかしくて、やんわりとした心地の良さが何とも言えなかった。
 目をパッチリ開けながら頬を赤めるプララと、黒真珠の瞳を閉じ、キスの初心者の感触を味わっているエレンの二匹。やがて密着した口は、エレンの方からゆっくりと離れた。
 短く、また永遠とも思える口付けを終えたプララの顔を見てエレンはニッと笑った。愛らしい微笑みを前にプララの胸がドキッとした。
「初めてのキス……気持ち良かったですか? プララさん」
 そう言って自分の唇を小さい舌で、ペロッと舐める。
「今のがキス何だ、ちょっと変な感じ……」
 不思議そうにプララは自分の唇に手を当てて、先ほどまでの唇の感触を思い出していた。
「ウフッ、プララさんの唇って柔らかいです……私、もっとしたくなってきました」
 プララの手を取り、押し倒されていた体を優しく起こした。体制を戻したプララの目の前にエレンの顔が再び唇に触れそうなほどの距離にある。ずっと見てて飽きないくらい端整な美しい雌のピカチュウが。
「今度は、あなたの方からしてください」
「え……僕から? さっき見たいに?」
「はい、女の子からするってちょっとおかしいですし、これも勉強だと思って……ね。お願い……」
 最後の言葉にエレンは甘えた声をする。半開きした潤いを含めた優しい瞳でお願いをされ、唯でさえ赤い顔を更に赤く染め上げる。それはプララにとって、雌を意識する感情が芽生えた瞬間だった。
「わかり……ました」
 あまりの緊張に、年下のエレンに敬語で答えてしまう。不器用ながらプララは、微弱に震える両手でエレンの端整な顔に触れると、そっと自分の方に寄せる。
 そして口をパクパクさせながらも自分のペースで、先ほどエレンからやって貰った事を真似し、口付けを待つその唇にゆっくりと重ね合わせる。
 再び重ねられた二匹の口。今度はプララから仕掛ける形になる。その様子を見守っているヒクは幾分嬉しそうだ。
 しかし、過去に性行為の経験が全く無いプララからするキスは、当然ながら不器用だった。緊張から来る震え、気づかない内に荒くなるプララの鼻息。
 生暖かい鼻息がエレンに掛かり、支えている両手も緊張のせいか肩に無駄な力を入る。唇も僅かに震えている。当然と言えば当然だが、あまりにも不器用で不便。無論その感触を楽しむ余裕も無い。
 仕方が無いとは言え、エレン自身も流石に肩で溜め息を吐いた。これではあまりにも不憫過ぎると思ったエレンは、とある悪戯を思いつき目で笑う。
「ん……ふぅ……ちゅくっ」
「ん……!?」
 突然の事にプララは驚き、目を見開いた。懸命な行為の最中、口内に何かが侵入する異物に戸惑い、止む得ず両手をバッとエレンの顔から離した。
「はぁ……はぁ……」
 激しい呼吸をしながら、プララは自分の唇に触れた。異物の感触に気味悪げに困惑する中、ふと顔を上げるとエレンが悪戯っぽい笑みを浮かべて舌を出していた。
「エ……エレン?」
「クスッ、ごめんなさいプララさん。あんまり緊張していたのでちょっと悪戯してみたしたの」
 クスクスと笑う。エレンは緊張しながらキスするプララの口内に自分の舌を入れたのだ。
「エレン、あまりプララをからかわないでくれよ。雌と普通に抱き合った事もない奴なのに」
 ヒクが溜め息混じりにエレンに注意をした。それに対してエレンは『ごめんなさいね』と謝るも、反省の態度を見せず笑っていた。
「……」
「あらプララさん、ご機嫌損ねてしまいました? それは失礼な事をしてしまいましたわ。だからお詫びに……」
 一生懸命やったのに悪戯されて不貞腐れるプララに、エレンは言い出した言葉を最後まで言わずに三度、プララの唇に触れた。
「んぅん……!」
 咄嗟の行為にプララは戸惑った。今度はエレンからの強引なキスだった。エレンの両手にプララは後頭部から抱かれ、そのまま引き寄せられるままに口付けをされたのだ。
 再びその柔らかな感触が唇越しに伝わる。だが今度のは違った。エレンからする二度目の口付けは最初とは全然違った。
 力強く傷つかない程度に深く重ねられ、その上に口内に再び異物が入る感触がした。抗う間も与えられなかったプララはまんまとエレンの舌の侵入を許してしまう。
 エレンの唾液を混ぜた舌が、プララの舌と交じり合う。唾液同士が絡み合い、厭らしい音が口内から発生する。
 複雑な動きで触れてくるエレンの舌は、プララの口内で厭らしく動き、舌同士を巻きつこうとする。まだ抵抗のあるプララは思わず逃げようと身を引こうとするが、後頭部に抱かれた両手がそれを許さない。
 エレンの犯さんばかりの舌使いに、逃げ道の無いプララは口の間から喘ぎ声が漏れ、成すがままに弄ばれた。アマチュアのプララとベテランなエレン。両者の口付けの技量差は圧倒的だった。
 口内で淫らに交じり合う唾液音は徐々に大きくなり、二匹を繋ぐ唇の間から唾液が漏れ出た。
「んふ……んはぁ……あんぅ……ちゅぅ……」
「んむぅ……んはぁ……んん……」
 エレンは一度唇同士を離し、再度重ねた。そして再び口内で舌同士が巻き付き合い、唾液の量を増やしていく。今のエレンは、一種の飢えた雌獣と化していた。
 プララはまるでギガドレインを食らった気分になり、今ある抵抗力を吸われる様な脱力感を覚える。
 ピチャッピチャッと卑猥な音を発しながら、二匹の長く深い口付けは続いた。慣れていないプララからすればあまりにハードだった。息苦しささえ覚えるほどのディープキス。
「おーい、そんないきなりハードなのを教えろとは言ってないじゃないか。プララの身が持たないよ」
 ヒクの静止する声が聞こえ、夢中になっていたエレンは我に帰り口内に侵入させていた舌を引っ込ませ、激しい口付けで少し苦しそうなプララの顔を見ながらゆっくりと身を引いていく。
 唇を離した二匹の間には唾液が交じり合って出来たネットリとした白い糸が、互いの口から引いていた。
「ウフッ、そうでしたね。ちょっとがっついちゃいました……」
 エレンは肩で呼吸をするプララを見ながら厭らしい笑みを浮かべる。その笑みは、最初に出会った時の純情そうだったエレンの面影は無かった。
「チュゥしてばかりだとプララさんのお勉強になりませんものね。今度はお口以外の所も可愛がってあげませんと……」
 そう言うとエレンはプララの頬に口を近づけ、赤い丸十字の頬をその可愛らしい舌でツーッとなぞる。
「ふあっ……」
 エレンの生暖かい舌が頬に触れ、プララは背筋がゾクッとする快感を味わう。
「んふっ……プララさんのほっぺ、可愛いです……ちゅっ……」
 暖かい吐息を頬で受ける。それと同時にエレンの舌が頬を伝う。
「ふぅ……ん……エレン……」
「うふっ、どうしました? もっとしてほしいのですか」
 そう言うとエレンは頬を舐めるだけでなく、加えて頬にキスもしだす。エレンの柔らかい唇が頬に伝わる感触がまた心地よかった。
「あ……くすぐったい……」
「んふっ、プララさん可愛い反応しますね……何だか苛めたくなってきます……ちゅっ」
 エレンはキスと愛撫を繰り返しながら、頬から次第に下半身の方へと下がっていく。エレンの愛撫をした後の場所には、ぬめりとした唾液が残っていた。
 愛撫の場所が下半身に移るにつれ、プララの体は敏感に反応した。腹の部分にまで愛撫が来ると、快感が頭部にかけて伝い、恥ずかしさと気持ちよさに表情が歪んだ。
 時折、エレンは自身の電流を愛撫越しにプララの体に流す。痛みほどの威力の無い微弱な電流が、返ってプララに快感をより強く与えた。
「ふぅっ……エレン……変になりそう……それ……」
「んっ……ピチャッ……プララさんのお肌、ぷにぷにしてて何だか気持ちいいです……このままもっと舐めさせてください……」
 エレン自身もまた、雄にしては柔らかい肌を唇や舌で味わい、その感触の虜になっていた。言葉通りエレンは遠慮なくプララの体中を愛撫する。
「んくぅ……そんなにやったら、駄目だよ……こんなの初めてで……」
「駄目ですか……でも止めたくないです……私愛撫が大好きで、この感触……癖になりそう……チュゥ……」
 徐々にエレンは舌に愛撫を早くし、その上に唾液を加えてプララの体を汚したくなり、その厭らしい舌をより激しく動かす。
「んぁっ……何で……それ以上やられたら……僕……おかしくなりそう……!」
 敏感な肌が、より激しく愛撫するエレンの舌を感じ過ぎて、プララの中で何かが弾けそうな感覚に襲われる。
 それでもエレンは、プララが弾けてしまうのを期待し、愛撫を止めようとはしなかった。より厭らしくプララのお腹に舌を滑らす。時に肌に強く吸い付き、わざとらしくプララの肌に口付けの後を残した。
「こ、こんなのが続いちゃうと……本当におかしくなって……」
「んふぅ……私って……こんな成りですけど……厭らしい事が大好きで……好き過ぎて……チュッ……自分でも止められないんです……
 だから、プララさんが私のお口でそんなに感じてしまうと……私、止められなくなっちゃいます……お願い、もっと苛めさせてください……」
 エレンのとろけた瞳がプララに懇願する。その答えを聞く間もなく、愛撫を続けながら身をを屈め、プララの腰部を目指した。
「あ、そこは……!」
 エレンの行こうとする場所にプララは慌てて両手で隠そうとすると、エレンはその両手を尻尾で払いのけた。
「隠しちゃ駄目ですよ、恥ずかしがってたら気持ちよくなんてなれませんよ……」
「でも……そこは……駄目だよ……」
 沸騰しそうな気持ちが込み上げる。雄ならば誰でも持っている『大事な物』だからだ。それを始めて会うポケモンに触れられるのはプララでも恥ずかしい。
「駄目ですか……では尚更やりたくなっちゃいます。うふっ……」
 エレンは顔をプララの腰部に移動すると、両手で『それ』を挟んで隠そうとする邪魔な足を無理やり開かせた。
「ふあっ……み、見ないでよぉ……」
「嫌です……うふっ、プララさんったら、もうこんなに大きくなって……他のポケモンよりも大きい……素敵です……」
「本当かい? エレン、僕も見せてよ」 
 興味をもったヒクが、跨っていた大木から下りて、一緒になってプララの大事な物を目に映した。
 ふわふわな毛の芝生から一本の竿が突き出る様にその姿を見せていた。それはプララの体格からして、少々太いサイズの物だった。血液が集中している肉の竿は赤くピクピク震えていた。
 ヒクはそれを凝視しながら、ちょっと羨ましそうに口を開く。
「へぇ~、異性に興味ないくせに中々良いの持ってるじゃないかプララ……ちょっと妬けちゃうな……」
 微妙な嫉妬心を込めてヒクはプララの肉の竿をツンとつついた。その瞬間、プララの体は大きくビクッと震えた。
「ふぅん、どうしてこんなに大きくなったんだい? 答えてご覧よプララ」
「エ……エレンにキスされて、変な気分になったと思ったら……僕のが……急に大きくなって……それで……」
「それで、君は今どんな気分だい。それも言ってご覧」
「うぅ……とっても、ビクビクしてて……抑えたくても……全然縮こまらなくて、エレンが舐めたり口付けたりするから……もっとひどくなって……」
 ヒクの意地悪な質問に、プララは顔から火が出そうな思いで何とか答える。その最中にも、興奮は高まっていく。
「それじゃ最後に、どうして欲しい?」
「うっ……」
 最後の質問だけは答えられなかった。どうして欲しいか自分にも分からない。だが、己の肉体がどうして欲しいかを、知っている気がした。プララはそれを答えたくなかった。
「ふぅ……そこは言えないんだ」
「もぉ、プララさんは正直な方じゃないんですね。でも私、そういうの好きですよ。だって苛めたくなっちゃいますもの……」
 エレンは何かを思いついたのか、小悪魔な笑みを浮かべながら口を開く。
「こぉんな大きいおちんちん、私が奉仕すれば良いんですよね。そしたらどうして欲しいか自然と言えるはずですから」
「えっと……どういう事? よく分からないよ……」
「分からなくていいんですよ。だって、これから体験すれば、嫌でも知る事になるんですもの。だからほら……」
 エレンは再びプララの腰部に顔を近づけた。
「あ、やっぱり駄目……汚いよ!」
 プララは慌てて両手でエレンをとめようとするが、ヒクにその両手を取られ、妨害される。
「あ……ヒク!?」
「駄目だよプララ、ちゃぁんとエレンのご奉仕受けないとさ?」
 そう言ったヒクの表情が、少し闇色に染まる。これからの展開への期待と、僅からながらの嫉妬心が表情に出ている。
 そしてエレンは、うっとりとしながらプララの肉の竿を眺める。やがて、小さな口を大きく開き、プララの物の先を咥える。
「うっ……あぁ……」
 エレンに咥えられた瞬間、キスで体験した生暖かいヌルヌルした感触が、股間から伝わる。あまりの感触に、喘ぎ声が漏れる。
 プニプニな柔らかい唇が膨張した逸物を刺激し、その快感が頭を目掛けて電流を走らせる。
「んむっ……うふっ、プララさんのおちんちん、また大きくなってきたわ……」
 膨張しきっていなかったプララの逸物は、エレンの唇によって膨張し、その強度を増していく。
「へぇ~、羨ましいもんだよプララ。僕もそれほどあれば自分に自身が持てたのにさ……」
「私もこんなに大きくなるおちんちん初めてです……私、興奮してきました……」
 エレンは興奮まかせに逸物にむしゃぶりついた。逸物の先端を唇で愛撫し、舌で先端部分をチロチロと嘗め回す。
「あっ……くぅ……お、おかしくなる……何なのこれ……」
「へぇ、こんな大きな物を持つくせに、結構敏感なんだ。よぉしエレン、もっとプララを苛めてあげようよ」
 ヒクの言葉にエレンは咥えたまま、ニコッと頷いた。エレンは逸物の先を舌で舐めながら、口内で出し入れを繰り返した。
「ひっ……んっ……あっ……あぁっ……」
「んふぅ……ちゅるっ……チュプ……チュプ……」
 エレンの唾液が逸物に絡み、そこからリズミカルな口の動きから発する卑猥な音が生まれる。
 柔らかい唇と湿り気のある暖かい口内で逸物が弄ばれる。厭らしい舌使いが逸物の先端を刺激し、激しい快感がプララを襲った。
「どうだい、エレンの口の中は。凄く気持ちがいいだろ?」
「う……んぅ……変な気持ちになるぅ……僕のあそこが、エレンに……あぁっ……」
 肉竿から生まれる快楽が電流となって体中に駆け巡る。喘ぐ声が自然と漏れ出る。
 脈打つ鼓動と太くて硬くなる逸物に興奮したエレンは、プララに気を使う事なく思う存分に先走りの液と一緒に雄の肉を味わう。
「プララしゃんのおちんちん、おいひい……ちゅぅ……こんな大きいの初めてしゃぶります……」
 やがて逸物の先端を愛撫するだけじゃ飽き足らず、逸物を自分の口内の奥深く入れ、根元まで咥えた。
「ひぁ……そんな……だめ……そこまで舐めないで……気が……狂いそうに……」
 先の部分だけだったのが、今度は竿の根元部分にまで刺激が走り、それに伴い生まれる快感もまた膨大なものになる。口内で弄られ、尿道を吸われ、舌が逸物の竿や先端に触れる。
「あむぅ……おいひい……わたひの……お口いっぱいに……プララしゃんのおちんちんが入ってりゅぅ……」
 黒真珠の瞳が潤い、我を忘れるほどにプララの逸物を貪り食う。軽く扱うつもりが、何時の間にか飽きる事の無い物に変貌し、肉食動物の様にむしゃぶっていた。
「えれぇん……そんなに……激しくしないでぇ……苦しいよぉ……うあぁっ……!」
 今まで快楽に浸った事が無い為に口から出た言葉が『苦しい』だった。必死に耐えようと気を持つも、エレンの容赦無い快楽攻撃にその気力は微塵も無かった。
 こんなのが後十分以上も続かれたら、本当に狂ってしまいそうだ。
「んちゅ……ぷららひゃん……きもひいいでふか……わたひも……しゃぶってるのに……きもひがいいでふ……もっとひゃぶりたい……」
「ひあぁ……えれ……ん……おねがい……もう……とめ……てぇ……狂っちゃう……くるっちゃぅぅ……!」
「ふふっ……狂うにはまだ早いよ、まだ始まったばかりなんだよ。しっかり耐えないとさぁ?」
 ヒクの呟きに、プララはこれでもまだ序の口だと教えられる。
 気が遠くなりそうな気分になるも、それでも今受けているこの快楽からは逃げる事は出来ない。しゃぶられ続ける毎に沸き起こる快感は肥大化していく。
「ひぅ……もう……なりゅ……おかひくなるぅ……!」
「いいでふよ……ぷららひゃん……もっと感じて……おかひくなってくだひゃい……んちゅぅ……」
 そう言ってエレンは口内の出し入れの速度を速める。ピストン運動を繰り返す。
 時に口から一度離し、唾液でベトベトになった肉竿に何度も口付けし、根元から先端に向かって舌でなぞり、舌を上下に繰る。
 竿全体に伝わる口淫の数々の攻撃に、プララは喘ぐだけで防ぐ手段は全く無かった。
「んっ……何か……きそうぅ……」
「ん、もうイきそうなのかい?」
 繰り返される舌攻めの効果で、プララは己の中で何かが爆発しそうな違和感を覚える。
「んふぅ……れも、まだイかせてあげません……ちゅぅっ……もっと私のお口を感じて貰わないと……面白くないですもの……あむぅ」
 膨張しきった竿の先を再び咥えた。しかし、舌は使わず。
「ひっ!?」 
 針に刺された鋭い痛みが駆け巡った。暖かく柔らかい心地のする快感とは全く違う刺激にプララは大きく目を開いた。
 痛みの原因はすぐに分かった。ピンと張り詰めた竿の先端部分に、エレンが歯を立てたのだ。
「あっ……あぁっ……痛い……」
「んぐ……痛いだけですか……? 気持ち良いんじゃありません……?」
 そう言いつつエレンは歯を立てることを止めず、傷つけない程度の力で甘噛みをする。
 前歯で先っぽをコリコリと弄り、時に歯を離しては噛んだ所を舌で嘗め回すなど、鞭と飴と言った手法で来たのだ。
「ひぅ……あっ……くぅ……痛い……のに……熱いの、止まらないぃ……」
 最初は拒絶したが、それでも次第に心地よい快楽に変わっていく。泣きたくなる様な快楽の渦に飲まれ、プララの瞳は今にも涙が零れてきそうだった。
「痛くて、気持ち良いでしょ……私も本当に食べてしまいたいくらい、美味しいです……」
 痛みや快楽に一々過敏に反応するプララと、太くて熱い熱を宿す雄の象徴にエレンは堪らない様子でこれを繰り返した。
 興奮が過ぎて、時に甘噛みする中で加減を忘れて強く噛んでしまう。
「痛っ! ……止めてよ、本当に痛いよ……!」
 快感を超えた激しい痛みに涙声の悲鳴をあげる声を耳にし、エレンは意地悪そうに微笑を見せる。
「んちゅる……ごめんなさいね、プララさんが余りにも可愛い声で泣くものですからぁ……」
 エレンは完全に当初の目的であるプララに性を教える事を忘れ、すっかりプララを玩具みたいに可愛がって、苛め遊んでいた。
 やがて遊ぶ事に飽き、再度竿の根元まで咥える。
「ん……あっ……も、もうだめぇ……何か……来ちゃうぅ……!」
 弄られ、しゃぶられ続けた肉竿はもはやその我慢の限界が近づいて来た。今にも爆発しそうなくらい全体がピクピク動いている。
「んふぅ……出ちゃいそうですか?」 
 絶頂が近いと察知し、肉竿を一度開放する。
 唾液のべったりと着いた逸物はテカテカと光って映る様をうっとりとした表情で見つめる。
「いいですよ。プララさんが始めてイく所を……私に見せてください……」
 そう告げると今度は両手で竿を優しく包み込んだ。 
 触れた手が、自分の唾液と我慢汁で汚れるが、それに構わず肉竿を撫でる様に扱った。
「うわぁ、プララさんのおちんちん、暖かくて、ビクビクしてます……相当我慢してたんですねぇ、素敵……」
 逸物の現状を語りながらエレンは両手でプララの肉竿を上下に扱き出した。
「うっ、あっ……そんな……だめ……だめぇ……」
 プララは擦られるたびに生じる快楽に襲われ、熱い吐息と共に悶える。エレンもまた、頬を赤く染めて興奮しながら物を遠慮なく扱いていく。
「はぁ……はぁ……気持ち良いですかプララさん……」
 液の付着したまま手で肉竿を擦るたびに厭らしい水音が響かせる。
 扱く速度を休める事なくプララに激しい快感を与え続ける。
 プララは迫る続ける快感に耐えれず、微弱に痙攣する様をエレンの前で見せる。
「あああぁぁ、え……れんぅ……もう……抑えれない……何か出る……でちゃうよぉ……!」
 絶頂が近くなったプララは涙目でエレンに訴える。それがエレンに性的な興奮を誘う事になり、彼女は両手で扱く速度をより激しく動かした。水滴音と共に、甘い吐息が肉の竿を扱く度に漏れ出る。
「良いですよ……出して……いっぱい出して……私の顔や体に……いっぱい掛けてください……イって、可愛い声を聞かせて……イってください……!」
 竿の先を真上に向け、来るべき絶頂に備える。どれだけ濃いいのが、どれだけ出るのか、それだけの期待感が、エレンを興奮度をハイにした。
「だめ、だめぇ、僕、あっ……あああああっ!!」
 激しい快楽に耐え切れなくなったプララは絶叫した。熱が先端に集まり、今日まで一切放出せずに溜まりに溜まっていたものが爆発した。
 肉竿がブルッと震えた瞬間、先端部分から弧を描く様に白濁液が飛び出た。一度二度に留まらず、逸物が痙攣するたびに何度でも放出する。
「チャァッ……凄い勢いで出てる……プララさんすごい……!」
 竿を掴んだまま離さないエレンに、プララの体液が容赦なくその容姿に降り注ぐ。
 目に入るのを恐れて両目を瞑る間にも、肉の竿は留まる事を知らずに射精を続ける。
 勢いは凄まじく、可憐な花の様なその顔に、熱い性液が赤い頬や小さい鼻、閉じた瞼にも場所を選ばずに、耳や頭部にまで白濁液が付着した。
「熱い、プララさんのがいっぱい掛かってる……私のお顔を汚してるの……!」
「あっ、あっ、ああぁ……!」
 絶頂するまで耐えていたのが打ち破られ、その反動は凄まじいまでにプララを快感の渦へと落とす。射精を繰り返す度にその顔は快楽に敗北し、だらしが無いまでに表情が崩れる。
「うっわぁ、すごいな」
 親友の射精姿を始めて目にしたヒクはその光景に見惚れていた。
「んふ……顔をこんなにベチャベチャにされたの始めてです……」
 竿から弾け跳ぶ液もやがて勢いが無くなる。エレンは肌に付着する白濁液の感触が無くなるのを知ると保護の為に閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
 だらしの無い表情で始めての快楽を終えた雄を前に満足そうな笑みを浮かべる。こうなるまでに感じさせてやったと言う優越感に浸っていた。
 握っていた雄の象徴は先から根元まで精液がダラッと垂れて自分の手も白く汚していた。その手を離すと、付着した部分が白い糸を引く。
「初めてで気持ちよすぎたんですね。うれしいです……」
「おめでとうプララ、これで君も雄としての通過点を通れたよ」
 快楽のショックで未だにぼやける頭にヒクの賞賛する声を耳にし、プララは残った意識を視覚に集中する。
 射精後に初めて目にしたのは、穢れを何一つ知らないほど整えられた綺麗な顔立ち、半開きの眼がまたひとつのチャームポイント。とても魅力的な雌のピカチュウ……だったものだった。
 垂れ下がった耳は黒色の先端が白色に染まり、重力に従い時間を掛けて地面に垂れ落ちる。
 特徴の丸くて赤い頬にも、本来の色を白濁液で濁している。なにより、その可愛らしい天使の様な顔を、自分が吐き出したものによって汚れていた。
「あ……あぁ、ゴメン……」
 たまらずプララは謝罪した。肩で息をしながら、脱力感でふらつく左手をエレンの頬に触れる。
 僅かに震える左手で、エレンの頬に触れる。頬に付着した白濁液が温度と共にそのドロドロした感触が伝う。
 不可抗力とは言え、決して汚してはいけないとプララ自身が思うほど、綺麗なその顔を台無しにしてしまった。罪悪感さえ覚えた。
「あら、プララさんったら私の顔の心配してくれるのですか? 純情なんですね、本当に素敵……」
 エレンは自分の頬に触れるその左手を、後から重ねる様に触れる。プララの体温が頬越しに伝わりうっとりした瞳で見る。
 年上とは思えないほどの快楽弱者。射精でまだ脱力感から抜け出せずに微弱に震えているその様をエレンは愛おしいとさえ思った。
「その……僕どうしたらいいの……?」
 ドロドロにしてしまった事に罪悪感を覚えるプララ。困惑した声を耳にしたエレンはふと考え込む。
「それじゃぁ、プララさんだけが気持ちいのもずるいですし。今度は私を気持ちよくしてください……」
 体を開放するとエレンは体を後ろに倒し、自分から仰向け状態になる。
 そして、多少頬を赤くしながら、小さな自分の指を下半身に移動させる。
「プララさん、私のここ見てくれます……?」
「わぁ……!」
 プララは初めて目にするそれを前に言葉が出なかった。エレンが見せたのは、下半身の股座にある割れ目の部分だった。
 何時の間に湿っているそこは割れ目の間から滲み出ていた。僅かな光でテカテカ光るその液は、排泄したのが流れ出ているのではない。放っている甘い臭いがそれを証明した。
「すごい、濡れてる……」
「プララさんのおちんちんが凄いから、舐めながら疼いちゃったんです……今度はあなたが私のアソコを舐めてください……」
「ぼ、僕が……?」
 聞き返すとエレンは黙って頷く。小さな指を湿り気で濡らしながら、割れ目の間に入れると左右に広げた。
「うふっ……見えますか?」
 エレンの問いにプララは言葉はなかった。初めて目にするそれに返す感想が思いつかなかった。
 広げて中から見えたのは、淡いピンク色をした肉の壁だった。割れ目と同様ねっとりとした液で湿っている。雌の放つ甘い匂いが鼻を燻った。
「……」
 目を点にしながらもエレンの性器をまじまじと見続けた。時を忘れ、穴が開きそうなほどエレンの秘所をじっくりと。
「んもぅ、そんなに見つめられるとちょっと恥ずかしいです……」
「プララ、何をボーッと見てるんだよ?」
「えっ……?」
 じれったそうにヒクが言うと、プララは言葉を耳にしてようやく我に帰る。
「今度は君の番だろ? いつまでも女の子を待たせるんじゃないよ」
「でも、僕どうやったらいいか……」
 エレンには舐めて欲しいと言われたが、自分の物とは異なる形をしている性器を前に、どうすれば良いのか迷った。 
「そこに舌を入れるんだよ……まったくじれったいんだから……」
 ヒクはこのままじゃプララは何もせず、性器を見続けるしか出来ないと判断した。親友として行為を援助しなければと思い、その背中を押した。
「あっ……」
 体制を崩し、顔がちょうどエレンの足元に来る様に前のめりで倒れる。目の前に秘所が顔が触れそうなほど近い。
 間近で異物の侵入を待ちわびる肉壁の迫力に、プララは思わず咽をゴクリと鳴らした。
「プララさん、来てください……」
「あっ、うん……ペロッ……」
 甘い声音で頼まれ、プララは覚悟を決めた。今まで木の実や水を飲む時にしか自分の舌を、初めて雌の性器に触れた。
「チャァッ……!」
 舌が割れ目に触れた瞬間、エレンの体がビクッと震えた。何かまずい事でもしたかと思い、舌を引っ込めて尋ねた。
「エ、エレン? 大丈夫……?」
「うぅん、ちょっと感じ過ぎちゃっただけです……止めないで続けてください……」
「う、うん……」
 小さく頷き、再び割れ目に当てる。熱のこもった肉壁を感じながら舌の先で舐める。
「ん……あん……んぅ……」
 喘ぎ声が耳に入る。割れ目の間に不器用ながら舌を上下に動かす。生暖かい膣内が舌越しに伝わり、付着している甘酸っぱい愛液を味わう。
 舌を上下に動かす度に水音が響いた。慣れない行為で微弱に震える舌を割れ目から更に奥にへと進ませる。それに伴い、愛液の量は増えていく。
 プララは自分の舌や口周りを汚す愛液が少し鬱陶しく感じ、それを舐め取ろうと舌を膣内で回す。熱い液が舌全体に絡む。
「あっ……んぁっ……ちゃぁぁ……」
 喘ぎ声が徐々に大きくなっていくエレンに構わず、付きまとうネットリとする液を全部舐め取ろうとした。しかし、愛液は無くなっていくどころか、むしろその量を増している。
 舌を回し続けて舐め取る行為を繰り返すも一向に減る気配が無く、口を汚さんばかりに止め処なく溢れ出てくる。
 プララの
「プララさぁん……私のおつゆ、そんなに好きですかぁ……」
 プララは答えなかった。代わりに口内で唾液と愛液が交じり合った液体を飲み込み、秘所への愛撫を続ける。どうしてか分からないが、咽が渇く感覚を覚える。
 エレンの溢れる液で咽の渇きを潤わせたかった。無意識に愛撫を続けては愛液を舐め取る。
 舌全体を熱い肉壁に押し進め、鼻の先が秘所の突起物に触れる。その時だった。
「ちゃぁっ!」
 エレンの体が仰け反った。喘ぎ声とはまた違う甘い悲鳴。プララは思わず舌の動きを止めた。
「はぁ……はぁ……どうかしました?」
 エレンの声は何事も無い様に言うが、その声色は弱々しかった。プララはさっき触れた場所に原因があると考えた。
 その是非を確かめたい為に、プララは舌を一度秘所から抜き、鼻に触れた突起物を舌先でつつく。
「ひゃん……!」
 再びエレンの甘い声色が聞こえた。プララはその突起がエレンの弱点だと考えた。そう思うと自然に口が動き、舌先で突起物をコリコリ弄る。
「ちゃぁっ……ひぅ……プララしゃ……そこは……あっ……!」
 エレンの吐息と声色が荒くなるのを耳にしながら、プララは遠慮なく弄り回した。秘所から更に溢れ出る愛液で口内がグショグショになるのにも構わず。
 愛撫に慣れてきたのか、舌先で強く突いては、いちど離し、次には突起物の周りを舐め回すように動かしていく。
 それに伴い、エレンの声も一段と甲高い悲鳴を上げる。癖になりそうなほどの快感だった。
「ひゃぁ……そこ弄られるの……だめぇ……!」
 摩擦や圧迫を続ける毎にエレンの体が痙攣する。何時までも耳に入る声色が心地よく響いた。
 さっきまで淫口されていた立場と逆で、今度は自分がエレンを苛めている。
 プララはふとある事を思いつき、秘所から舌を離した。そして、さっきの仕返しと言わんばかりにプララは舐めていた突起物に歯を当てる。
「あうぅ……プララさん……それは……」
 エレンの声が震えている。どうやら彼女もこれは勘弁して欲しいと言っている気がした。しかしプララは先ほどの逸物の痛いまでの快楽を思いし、僅かな躊躇いを消した。
 もっとエレンの甘い悲鳴を聞きたい欲望がプララを動かす。突起物を歯で擦る。
「んっ……あぁ……あっ……」
 歯を上下に当てる度にエレンが喘ぐ。柔らかな舌とは違う、硬い歯で擦られる快楽が彼女を刺激している。
 これだけでも気持ち良さそうだ。ならば、噛んでみたらどうなるか、そんな好奇心に駆られてプララは突起物を傷つけない程度に甘噛みした。
「ひあぁっ!」
 思ったとおり、エレンの甘い悲鳴が森中に響いた。とても良い声だ。
 止める事無くプララは突起物の甘噛み攻撃を続ける。余りの快感にエレンの足がビクビク震えているのがわかる。
「だめぇ……そんな所噛んじゃぁ……」
 振り絞って吐いた言葉もプララは耳を貸さない。もっと仕返してやろうと歯を左右にずらして愛撫した。
「ひぅっ!? ……いやっ……プララさん、そんなにされたら……私、でちゃうぅ……」
 エレンの言う事に何が出るのか分からないけど、自分が絶頂する手前に出てしまった言葉を思い出す。今のエレンはその時の自分と似た感覚にいると考えた。
 自分がされた事を、今度はエレンにもそうなってもらおうとプララは突起物に夢中になっていた。再び突いたり、甘噛みを交互に繰り返し続けた。
「あっ……もう……イっちゃう、イっちゃう……! チャアァァッ!」
 絶頂に至ったエレンは森中に響きそうな叫び声をあげた。それと同時に秘所が痙攣し、舐めた場所から愛液が飛び散る。
「ふわっ!? んんっ」
 初めて目の当たりにする雌の絶頂を目の当たりにして驚き、思わず目を閉じる。
 エレンの噴出した液が付着し、射精を食らったエレンと同様プララの耳や顔全体を甘酸っぱい香りと共にその顔面をビシャビシャに汚されてしまった。
 下に垂れ落ちる愛液が、切り株の断面を透明な液体の湖を作った。
 ふとプララは顔を上げた。エレンは何も言わず肩で呼吸をしながら、涙目の瞳でプララの顔を見つめている。やがて口を開き。
「……私がこんな風にイっちゃうなんて」
「えっと、その……ごめん……」
 プララは再び謝罪する。こんな綺麗なピカチュウを調子に乗って苛め返して優越感に浸っていた自分が情けなく思えてきた。
 しかしエレンは怒る様子を見せず、涙目ながら笑みを浮かべた。
「うふっ……何で謝るんです? とっても気持ちよかったですよ。ちょっと驚いちゃいましたけど……」
 謝罪をする声を耳にしながら、身を起こしたエレンはプララの事を年上ながら可愛らしいと思った。
 エレンは未だ涙を拭いわないでいた瞳を閉じ、プララの愛液で汚れた口を、柔らかな唇によって塞いだ。
「んん……」
 やんわりとした口付け。舌同士の絡み合いはなかったが、プララの鼓動が鳴っていた。
 聞いた程度で全く知識の無い単語が頭に浮かぶ。
 恋人と言う単語だった。その意味が確かかどうか分からないが、プララは今エレンとそんな感じでいる気がした。やがて口付けはエレンの方から離れる。
「私達、ぐしゃぐしゃですね……」
「うん……」
 二匹の顔は、互いの体液でベトベトに汚れている。しかし、エレンの表情は、白濁液で汚されていても尚その魅力を失う事なく魅惑的だ。
「でも、プララさんのおちんちんがまたこんなに大きくなっちゃいましたよ……ウフッ」
 エレンに指摘され、ハッとしながら自分の下半身を見た。無意識のうちに逸物は膨張した。前と同じ太さに成長していた。
「な、何でだろう。エレンの声を聞きながらアソコを舐めてたら……変な気分になっちゃって……」
「それでいいんですよ。私も、今度は舌じゃなくて、あなたの下で気持ちよくしてください……」
「えぇ……まだするの? 僕ちょっと疲れてきちゃって……」
 顎や口、体中の筋肉が慣れない行為で疲労が溜まっている事を告げた。
 もともと眠たい時間帯だった為に、瞳は眠たそうに閉じかけ、今にも眠りの世界へと入ってしまいそうだった。しかしエレンは、それを許す事なく、
「だぁめ、ここからが本番なんですから……」
 本番と告げられるとプララは面食らうも、エレンは構わずプララの身を抱いて逃がさないようにした。密着する肌同士から熱気が伝わってくる。
 甘い雌の液の臭いで元気を取り戻した股間が、その柔らかいお腹に触れた。
 まだ雌の味を知らない雄の肉棒を肌で楽しみ、片手で優しく触れるとエレンは自分の状態を起こし。
「年上の初めて……いただきまぁす……」
 舌を可愛らしくチョロッと出しながら、今まで何処も攻めた事のなかった雄の象徴に、エレン自らが受け入れる。
「あっ……エレン……」
「ふぁ……気持ちいい……ですか?」
 初めての感触にプララは身震いし、エレンに抱きついた。
「き……きもちいい……」
 ヌメリとした雌の肉壁に、性に無知だった雄の肩は震わせながら悶える。
 瞳が快楽のあまりに閉じかけ、僅かに開いた視界の中で、肉棒によがるエレン。しかし、快楽で歪んでもその可憐さは失われず、むしろ淫らに悶える姿さえ可憐に映る。
「ウフフ、私の中でビクビクしてますよ……」
「だって……エレンの中が、締め付けてきて……くぅ……! ふわぁっ……!」
 肉棒を全て受け入れた膣内で収縮し、情けない声をあげながら、身を震わせた。
 健全な思考と理性が宙を飛び、これだけで今にも果てそうになった。
「あらぁ、まだ入れたばかりですよ……これからもっと気持ち良い事するんですから。我慢してください……」
 年下の雌に制され、年上ながら恥ずかしい気持ちになる。
 自身で果てないようにと堪えるも、逸物を圧迫する膣と、間近に当たる雌の甘い香り。そして、魅惑的な瞳のエレン。プララの自制力はほとんど効果が無い。
 今こうして雌と繋がっている、そんな状態に耐えるだけで精一杯だった。ちょっとでも油断すれば、すぐにもエレンの甘美な仕掛けによって、絶頂に陥ってしまう。
「駄目だよ……これ以上……何かされたら……また……」
 喋るのも辛そうな口調で答える。
「しょうがありませんね、あなたは……」
 すっかり年上目線のエレン。初めての強烈な快楽に身動きが出来ないでいるプララに、初めてだから仕方がないと苦笑するエレンだが、表情は微笑ましいと言わんばかりに笑みを浮かべていた。
 反対にプララは、セックスを始めてから主導権をエレンに奪われていたままで、ほぼ一方的に自分がやられている事に情けなくなってきた。
 初めてとは言え電流のように体を駆け巡る快楽に酔い痺れる。屈辱と羞恥心が僅かな理性を埋めた。
「自分からするのが難しいのでしたら、私からやってあげますわ……んぅ……」
「はっ……あぁっ……!」
 必死に耐えるせいで自分の呼吸が乱れる。じれったいプララに痺れを切らしたエレンは自分から腰を浮かす。逸物を抜き、そして半場の所で下ろす。
 挿入した時の逸物がエレンの肉壁に摩擦される度に快感が生まれてプララを襲う。
「あんっ……プララさんの……太くて……イイッ……」
 エレンは抱いている華奢な腕の力を入れプララの体を強く抱いた。
 荒いと息をプララに掛けながらリズミカルに腰を上げては降ろすのピストン運動を繰り返す。
 雄肉を性器で感じながら、快楽に悶える雄の歪んだ表情を楽しんでいた。
「エレ……ン……だめっ……耐えれないよぉ……」 
 プララもエレンを強く抱きかえす。襲い来る快楽の並を必死に耐えれず、すぐにも絶頂してしまいそうな状態だった。
 表情を強張らせているに対し、エレンは快楽に悶えながらも余裕の笑みを浮かべたままだ。
「だめですぅ……んっ……もっと……我慢しなきゃ……つまらないでしょぉ……」
 すぐにでも絶頂が迫っている雄肉に、過酷な注文を押し付ける。
「でも……だめっ……僕……僕ぅ……! 出ぇ……出るぅ……」
 強張った表情が崩れ、口を開けたまま、オーガニズムを迎えようとした……がっ――
「あぁもぉ……まだダメですってばぁ! 早いですよぉ……」
 今まで肉竿を一身攻めていた雌の肉壁が突然動きを止める。絶頂が間近だった雄肉が、中でビクビクと痙攣したまま状態を維持していた。
「エ……エレン……何でぇ……?」
 一歩手前に来てお預けを受けたプララは目に涙を浮かべたまま生殺しに苦しむ。そんなエレンはムスッとした顔で言う。
「私が満足しない内にイっちゃダメです! イくなら一緒にしないと、セックスの本質を理解するまでイかせてあげません!」
「そ……そんなぁ……止めないでよぉ……」
 見っとも無い声を出してエレンに悲願するもエレンは聞き入れない。情けない顔で快楽を欲求する様をエレンは優越感を感じながら。
「嫌です。私のアソコですぐイってしまうおちんちんなんて、少しはお仕置きしないといけませんねぇ。うふっ」
 エレンは倒れた巨木に座って今までの行為を見てきたヒクに振り返る。
「ヒクさんちょっといいですか?」
「何だい?」
「近くに紐見たいなのありませんか? 出来れば頑丈な物が良いんですけど……」
 突然な要求に何故そんな物が必要なのかとヒクは首を捻る。やや間をおいてその意味を理解して頷いた。
「わかったよ。これもプララの為だもんね……」
 ヒクは巨木から下りて何か縛る物が落ちていないかとウロウロしながら探し始めた。
「あ、これなんか良いんじゃないかな?」
 ヒクは笑顔で自分が拾った物をエレンに見せた。それは植物の蔓だった。
「それは大丈夫なんですかぁ?」
「この通り。ピンピンしててちゃんと縛れるよ」
 植物の蔓を両手で持って左右に力いっぱい伸ばす。蔓はヒクが引っ張っても千切れることなくピンッと伸びていた。
「これならプララさんのモノを縛ってあげられますね」
「ま、待ってよ……縛るって何で……?」
「理解出来ないかなぁ? ちょっとの間イくのを我慢してもらわないと君も経験にならないだろ?」
「え……?」
 ヒクの言う事が理解出来ず蔓を持って来る様子を不安になりながら見つめる。
「エレン、いいかな?」
「はい。ちゃんときつく縛ってくださいね……んっ……」
 エレンは抱き合ったまま性器同士が繋がっている場所から腰を浮かした。愛液でテカテカに輝る逸物がヒクの前に現れる。
 ヒクは恥ずかしげもなく蔓を持ってそれをプララの肉竿に掛ける。
「うあっ……ヒク……何をするの……!?」
「ちょっと黙ってなよ。動くなよ?」
 親友に大切な性器に触れられて恥ずかしさの余りにもがこうとするが、エレンに抱きつかれた状態で身動きが出来ない。
 そんなプララの羞恥心を他所にヒクは肉竿の根元の所に蔓で輪を作るとギュッと結んだ。
「あっ……いぎぃ……!?」
「そんなに痛い程でもないだろ。それで今度はこうやってっと……」
 結んだ蔓が肉棒に食い込んでいく。あまりの苦痛に表情が強張った。
 構わずヒクは一度結んだ蔓に更に手を加えると、器用に蝶々結びが完成した。
「はい、これでいいよエレン」
「ありがとうございます、これでプララさんが嫌でも我慢できるようになりますね……うふっ……」
「痛いよぉ……ほどいてぇ……!」
 やりすぎと思えるほどに強く縛った蔓が食い込み、プララは悲痛な叫びをあげる。
「大丈夫ですよ、これなら思う存分気持ちよくなれますから……」
 痛がるプララを前に、エレンは何一つ罪悪感無く……いや、むしろ楽しそうに顔を綻ばせている。
「良い顔ぉ……ますます素敵です……んっ……あんっ……」
 エレンは苦痛に歪む様を見て悦に入りながらピストン運動を再開する。
 卑猥な水音を鳴らす。雄肉は痛みを含んだ快楽が電流となって体中を走る。
「ふぐっ……あっ……くぅ……!」 
 再び襲う快楽に顔をしかめては声を漏らさんとかみ殺すも自然と声が漏れ出てしまう。
 一時的にお預けをもらってしまって萎えてかけていた逸物は、待ってましたと言わんばかりに快楽を伝わせてくる。
 もうすぐにでも、自分の雄たる象徴が耐えれずに爆発しそうな感覚にいる。
 絶頂寸前だった快楽が再び湧き上がり、多分、ものの数秒しない内に果ててしまうだろう。
「あっ……んぁっ……プララ……さん……」
 目の前で甘美な喘ぎ声をあげるエレン。唇同士が触れそうなほど、いっそこの柔らかな肌に触れながら絶頂するのも悪く無いと思った。
 プララの口が、自然とエレンの可愛らしい口元に吸い寄せられる。沸き起こる欲望にまかせて、荒々しく唇を重ねた。
「んぅ……んぅ……んっ……んっ……」
 絶頂手前のキス、最初の時のと比べて、とても官能的で甘酸っぱく感じた。
 後はエレンが起すピストン運動の刺激によって、欲望を解放させるだけだった。
 何時でも果てる覚悟だった。すぐそばでエレンとの行為を見ているヒクの存在が気にならなくなる。何かも忘れるくらいにまで気持ちよくなろと、快楽にまかせて――
「んっ……んっ……んくっ……!?」
 この時、プララにある疑問が襲った。何時まで待っても、迸る欲望が発散されない。
「んっ……どうかしましたぁ……? もしかしてイけないとかで……んぁっ……」
 プララの様子を察知したエレンが自分から唇を離して、厭らしい笑みで言う。
「もう……出ちゃいそうなのに……あそこがぁ……」
 下半身から沸き起こるモノが、ヒクが縛り付けた蔓のせいで射精が止められている状態だった。
 快楽の絶頂を味わえず、無駄にエレンの肉壁を擦る快感だけが沸き起こる。
 天国に昇る一歩手前の所で塞き止められ、一変して無限の快楽地獄に落とされた。
「ヒ……ヒクゥ……お願い……この蔓はずしてよ……」
「駄目だよ。君はすぐにイってしまうから、それじゃ相手に失礼だろ?」
 プララの心底なお願いを蹴る。
 快楽と言う名の地獄が続く中、エレンは絶頂に苦しむプララの表情を楽しみながら腰を落とす速度を上げた。
「あっ……んっ……そんな顔をしなくても……んっ……気持ちいい事が……んぅ……続いて……良いじゃないですかぁ……」
「エレン……くぅ……でも僕ぅ……苦しい……よぉ……」
 絶頂手前の快感ばかりが、長く続く。それはプララにとって、気持ちが良い以上に生き地獄だった。
 エレンが絶頂するまでプララが果てる事は許されない。狂いそうになる思考を、必死に抑えた。
「苦しい……? んっ……そう……あんっ……本当に……んっ……おかしく……してあげよっか……んぅ……」
 瞳をトロンとさせ、快楽に喘ぎながらエレンは恐ろしい事を口にする。その言葉にプララは悶え苦しみながら、一瞬震えた。
 エレンが言っている事……もしかしてこのまま絶頂せずに、自分を無限な快楽地獄を味合わせる気じゃないかと……
「私……さっきイってしまいましたから……んぁっ……イくの遅いかも知れません……だから……んふっ……ごめんなさいね……」
 小悪魔的な笑みを見せる。舌をチロッと見せるその様は、性的な意味と意地悪な意味を含めたていた。
「あっ……うっ……くぁぁっ……!」
 まだ余裕のある雌に、見っとも無いほどに顔をしかめている雄の方。
 エレンが感じている快楽とは比にならないほどの刺激をプララは受けている。
「いいですよぉ……その苦しむ顔……もっと見させてぇ……んっ……」
 様子を楽しんでいるのか、秘所に肉棒を沈める動きを速めてきた。それによりプララはますます締め付けられる快楽に苦しむはめになった。
 この快楽地獄に耐えれず、紛らわそうとエレンの背中を力いっぱい抱いた。
「ふぐっ……あぅ……おね……がい……もう……耐えれ……なひ……」
 ついにこの快楽地獄に耐えかねたプララが口を開く。その表情からは涙が止め処なく溢れ、震える口元はだらしなく空いたままだった。
 助けを求めるような、雄としてのプライドをかなぐり捨ててこの状態からの解放を求めた。
「プララ……んっ……さん……」
 そんな哀れな雄を目にして、エレンから笑みが消えた。それでも動きは止めないまま……
「えりぇ……んぅ……ひぐっ……」
 涙の粒をポロポロと零す。眺めていたヒクは溜め息混じり言う。
「オーバーだなもぅ。気にする事はないさエレン、我慢する事も必要だって事を知らないとね……」
 泣くプララを心配する欠片も無く、口にした言葉をエレンに向ける。
 掛けられた言葉に振り向くことなく、小さく喘ぎながらプララの表情をジッと見続けている。
「プララさん……んっ……あんっ……」
 エレンの様子の変化に、ヒクは気づく。トロンとした瞳が潤み、息遣いも荒くなっていた。
 さっきまで余裕だった表情が消えて、上下運動の激しさが増した。分泌液が滑りを良くさせ、その為にリズミカルに弾む。
「んあぁっ! あぐぅ……!」
「あっ……プララ……んぅっ……イきそうっ……!」
 本格的な動きにプララが快楽にひどく悶える。エレンもまた表情を強張らせた。
 ヒクは突然のエレンの変化に驚きつつも、絶頂が近くなったエレンに近づいた。様子を確かめに行くのではなく、二匹が同時にオーガニズムを迎える為に蔓を離す準備だ。
「あぁぁぁっ! ひぐぅっ、うあぁぁっ……!」
 悲鳴とも聞こえるプララの喘ぎ声、塞き止めていた性が今まさに爆発せんとばかりに暴走している状態だ。
 そんな状態でも、解放しなければ死ぬわけではないとヒクは蔓を解かず、エレンの絶頂をまった。
「ヒクさ……私、イきそうですっ! 蔓……解いてぇっ……!」
「あ……うん、わかった」
 エレンの声が嘘を言っている様に思えなかったヒクは、結合部からはみ出して竿を縛っている蝶々結びの蔓を、左右に出ている輪と一本線。その内の片方の一本線に手を掛ける。
「中に出しても大丈夫なの? エレン?」
 プララが果てたら、その性の行き先は今の状態で考えて当然エレンの子宮内に向かう。それについて聞くと。
「いいっ! 私……プララさんの……欲しい……私の中で……熱いの出して欲しいのぉっ!」
 すでに理性が崩壊したエレンの口調は荒く、雄肉を食らう獣のように体全身を激しく上下に動かす。
「よし……えいっ!」
 エレンの了承を得たヒクが今までプララを苦しめていた元凶をようやく解く。蝶々結びされていた蔓は一本線を引いたことによってその形を崩した。
「イくっ……イっちゃぁ……チャァッ!」
 蔓の解放と同時にエレンの膣が肉竿をきゅっと締め付けた。
「あっ、ああぁぁぁぁぁっ!」
 二匹の絶叫が暗い森中に響いた。
 長く続くと思われた快楽地獄に解放された肉の竿。体を仰け反った体制で、絶叫しながらプララは塞き止めていた性を雌の中で放った。
 塞き止めていた分、濃厚でドロドロとした熱い液体が竿の痙攣と共に何度も発射された。
「あぅっ……プララさんのがビュクビュクしてる……熱ぃ……」
 目に涙を浮かべるエレン。嬉しそうに笑みを浮かべながらプララの放つ精液を堪能する。
「えれ……あっ……あぁっ……」
 波のような射精の快楽の前に、まともに言葉を話すことも叶わない。痙攣と震えと共に、ありったけの白濁液を自分を苛めてきた膣に吐き続ける。
 並外れた勢いにエレンの下半身の一部が、ぽっこりと膨れ上がっていくのが見えた。
 プララは涙をポロポロと流しながらも、収まりきれなくなった量が結合部から漏れ出し、プララの下半身が白濁液によって薄く白色に染められていく。
「くっうぅぅ……すごい量……ですぅ……あっ……」
 勢いが衰えた頃に、エレンはプララの体を離すと、ゆっくりと肉竿から秘所を引き抜いた。
 解放されたプララは力なく背後から切り株の上に倒れる。エレンはその後、だらしなく切り株の上で股を広げた状態で座った。
「はぁ……はぁ……もう入らない……プララさん、出しすぎですよぉ……」
 口ではそういうも、その表情はとても満足そうだ。
 二匹が繋がっていた秘所からは、プララによって放たれた性がドロッと出て、切り株の上で広がるように白く染めた。
「卵出来たら……責任とってくださいねぇ……うふっ」
 疲れた表情でフフッと笑う。
 乱らに雄とまぐわっていた後でも、潤んだ黒真珠の瞳は健在し、花のような可憐さは全く損なわれてはいない。
 それに比べ、涙の後を残したままの雄はだらしが無いまでにぐったりとしていた。肩で呼吸をし、エレンの言葉にも返事が返せないでいた。
「以外だなぁ、君はこんなに早くイくなんて」
 二匹の行為を今まで見守っていたヒクが意外そうに言うと、エレンは照れ笑いしながら舌をチロッと見せる。
「すみませんね。もうちょっと長く楽しんでいたかったのですが、思ったより心地よくてつい……」
「……まぁいいよ。これで一人前の雄になれたんだ。なぁ、プララ?」
 言葉の矛先がプララに変わる。当の本人は未だに絶頂の後遺症から抜け出せず、肩で息をしていた。疲労にうっすらと開いている視線の先は、空の背景を遮断している大木ばかりに向けられている。
 ヒクの言葉に聞いているのか聞いていないのか、その判断が難しいほどの様子だ。
「おぉいプララ?」
「あ、待ってください」
 プララと対照に、体力的に余裕を見せたエレンがヒクを呼び止める。その言葉に振り返ると。
「プララさんの事は、私が責任持って面倒をみますので」
「え、でも……」
 突然な好意にヒクは戸惑った。そんな様子をエレンはフフッと笑いながら続ける。
「ヒクさん今まで私達のしてるのを見てきたでしょ。冷静そうにしてますけど、本当は辛いのでしょ?」
 意地悪な笑みを浮かべるとエレンはヒクの股間部分を指した。甘い熱帯夜を見続けた結果、反射的に起きてしまった「それ」を指摘される。ヒクは慌てて股間を押さえた。
 青かった頬がうっすらと紅色に染まり、目を点にした。
「ほらやっぱり、ヒクさんだってしたくて堪らないのでしょう?」
 図星をつかれ、ヒクは言い返せずに口を~の字に曲げる。指摘された分と、ここまで香るセイカンの実を煮た臭いで、その顔がますます赤くなった。
「わかった、わかったよ。今日は見守るだけにする予定だったけど……ちょっとその辺で済ませてくるから待ってよ……」
「あら、ご自分でしなくても、誰か見つけえくればいいじゃないですかぁ?」
「急に言われても、誰とすれば……」
「なら~、私とヤりましょう~。ヒクさ~ん」
 突然背後から抱きつかれる。驚いたヒクは首を後ろに向けると、そこにはプララ達をここまで招いてくれたキルリアだった。
「わっ……君、今まで見ていたの?」
「この森に遊びに来てくれたお客様ですもの~。気になってずっと茂みの中で覗き見してました~」
「うふ、ちょうど良かったじゃないですか。しばらく遊んできてくださいね」
「いや、ちょっ……僕と君じゃ体格と相性が全然違うじゃないか」
 キルリアの抱き付き方に苦しみながら、性の相手として不具合があると忠告する。しかし、キルリアはその事に全く動じない様子で。
「そんな理屈、この森のポケモンには通用しませんよ~。エッチさえ出来れば、誰とでもOKなんですから~。だから観念、し な さ い 」
「えぇ~……ちょっと……うわっ!」
 慌てて何か言おうとすると、最後まで聞かずキルリアはヒクの手を取って走り出して行ってしまった。
「ヒ……ヒクぅ……」
 気力を一部取り戻したプララはキルリアに引きずられ遠くなっていくヒクの姿を目にし、震えた手を伸ばす。その手をエレンが受け取った。
「ようやく邪魔者いなくなりましたね。プララさん」
「え?」
 手の平を返したように居なくなってしまったヒクの事を邪魔者呼ばわりした。プララはその理由が分からず首を捻った。
「どういう事……? エレン?」
 理由を問うプララに対して、クスクスと可憐な笑みを浮かべる。やがてその笑みが黒く変わっていく。
「だってぇ、今度はプララさんが私のお願いを聞いてくれる番ですもの」
「お、お願い? そんな事いつ約束したの?」
 答えた言葉の意味が分からず、訳が分からなくなる。それに構わずエレンは突然辺りを見回した。
 もともと人気の無い場所なだけに連れて行かれたヒクを除いて今ここにはエレンとプララの二匹しかいない。
 改めてそれを確認するとプララに向き直る。
「私と抱きあって満足しましたか?」
 笑み浮かべながらそんな事を尋ねてくる。その真意がはっきりしないままプララは正直に頷いた。
「なら、今度は私を満足させてくださいね」
 そう言ってエレンはある物を取り出して見せた。それは、先ほどまでプララを苦しめる原因となった蔓だった。
 よく見たらその蔓は分泌液によってベトベトしている。これは、エレンの愛液によるものだ。
「そ、それでどうするの……? もしかして、また僕のアソコを縛るの!?」
 嫌な予感がしたプララは悲鳴に近い声をあげる。にんまりとするエレンは、違うと首を横に振る。
 その様子に安堵の息を吐いた。しかし、次の言葉が安心して宙に浮いたプララを気持ちを裏切る。
「でも縛るのは合ってますよ。うふっ」
「え……それじゃ!?」
「口で言うより、体で教えたほうが分かりやすいですね。えいっ!」
 口で説明するのが面倒臭くなり、エレンは蔓を口で咥えると、いきなりプララに襲い掛かった。
 突然の乱暴に、快楽の後の脱力感と疲労で反応が出来なかった。エレンに押し倒されて、プララは切り株から落ちた。
 顔から地面にぶつかる。痛みで呻く間に、その背中にエレンが乗りかかる。
「うぐっ!」
「これでよしっと、じっとしててくださいね……」
 乱暴にプララの両手を無理やり背後に持ってくると咥えていた蔓を持つ。その蔓で両手を縛り始めた。
「い、痛いっ! 止めてよエレン!」
 痛みを訴える言葉を無視してエレンは愛液で滑りそうな蔓を器用に扱い、プララの両手を縛った。
「これでよしっと。フフフ、その姿とっても素敵ですよ」
 エレンはようやく痛がるプララの両手を離した。
「な、何だよこれぇ!?」
 プララは絶句した、今のプララは両手を縛られていて自由に動く事が出来ない状態だ。
 四足で走るポケモンにとってこの体制は非常に不自由極まりない。
「うっ……くそっ……!」
 不愉快な気持ちになり両手を縛る蔓を噛み切ろうとして口元に持ってこようとする。しかし蔓は思いの他頑丈で、その上歯が上手く当たらずに千切れない。
「無駄ですよ。アナタじゃこれは解けません」
「なら解いてよっ!」
「嫌です」
 にっこり微笑み、サラリとプララの要求を蹴った。エレンは続ける。
「先ほど言ったとおり、私を満足させてくれたら解いてあげますよ?」
「な、何をすればいいの?」
 勝手な言い分とは思うも、下手に逆らうのは得策じゃないと判断したプララは素直に従う。
「簡単な話です。ただ魅せてくれたらいいだけですから……」
 魅せてくれればいい――その言葉の口にした途端、エレンの顔が怪しく曇る。
 一欠けらの邪気も感じさせない可憐な花のような彼女が大きく一変し、プララは今まで見た事もないその表情を前にして寒気が走った。
「エレン、何だか怖いよ?」
「ふふっ……怖いですか? さっきまであんなに抱き合ったのにですか?」
 その怪しい雰囲気を纏う彼女に向かって思った事を言ってしまった。しかし彼女は怒る様子は無い。むしろ恐れるプララを楽しんでいた。
 じりじりと寄って来る。まるで処刑人が執行の行進を進むが如く……
 プララは恐れ、両手が塞がれた状態で体を引きずりながら後ろに下がっていく。
 理屈では説明出来ないが、自然にある言葉が脳裏に浮かぶ。怖い、エレンが怖い……っと。
「逃げないでください。私だってアナタの為にこの体を捧げたじゃないですか」
 今になってその理屈を出され、逃げ口を失った。
「それは……でも……僕頼んだ覚えは無いし……」
 元々ヒクと村長に言われて、そして来てみればエレンと抱き合う事になった。そう思った事をつい口にしてしまった。
 するとエレンは足を止め、彼女の顔から笑みが消えた。
「何ですかそれ、余りにも自分勝手な理屈ですね……」
「……え?」
 エレンは責めるような言葉を放った。その声は余りにも冷たく、鋭い棘を含めていた。
「ヤるだけヤって後は用済みですか? プララさんってそんなにひどい無い雄だったのですか? ねぇ?」
「あっ……それは……違うっ……」
 冷や汗を掻くプララを前に、無表情のままゆっくりと歩み寄りながら続ける。
「どう違うと言うのですか? 今まで雌を知らなかった見ず知らずのあなたの為にキスはして、恥ずかしい所舐められ、エッチして、中にも出されました
 これだけしてもらっておきながら、そんな事を言うのですか……」
「うっ……でもっ……!」
 次から次へと吐き出される責める言葉の数々。プララは徐々に追い込まれていく。
「私なんてプララさんからしたら性の捌け口程度の価値の無い雌だったのですね。プララさん見たいなあそこの大きい方なら他の雌にも不自由しないから別に構わないんでしょうね」
「そんな事っ……」
「今までのうのうと過ごして、お節介なヒクさんに誘われては私のようなピカチュウを抱いてさぞかしご満悦でしょうね。
 童貞を卒業して後は気分が良いままゆっくりと住処に帰ってぐっすりと夢の中。羨ましいですよ。私も雄になればよかったです。アナタみたいに傲慢に振舞えるのですから……」
「~っ!」
 言葉の刃が容赦なくプララの心をグサッと突き刺す。精神的にもはや耐えれなくなり俯く。恐怖とは別の意味で震えた。
 泣いているのか、怖がっているのか、怯えているのか……全部の感情が入り混じって混乱しているのか。
「私はあなたが異性を知らないのを同情してセックスする事を請け負いました。普通ならありえない事ですよ。こんな事、あばずれと呼ばれてもおかしくない行為です。そこまでした私の恩を無下にするんですか。
 雌の体を遠慮なく汚して、そしていざとなったら逃げる。……あぁ、なんて素晴らしいんでしょう。今後は一体どれほどの女の子を泣かしていくのでしょうね?」
「も……もうやめてぇっ!」
 堪らずプララは叫んだ。耳を塞ぎたくなるほどの酷な言葉に責められ、自分が悪人に思えてきた。
 もともと気の強い方じゃないだけにこれ以上何か言われたら、何かが砕けてしまいそうな恐怖に駆られた。
 観念してプララは表を上げる。
「わかったよ……逃げないから……我侭でも何でも聞くから、これ以上はやめて……」
「いいのですね? プララさん」
「……うんっ」
 瞳を潤ませてコクンと頷く。するとエレンの表情が元の華やかな笑顔に戻り。
「ありがとうございます」
 にっこり微笑み、優しくて花のような笑顔の似合う元の彼女に戻っていた。
 しかしプララの気は晴れない。その優しい微笑みからはとても想像出来ないほどの冷たい表情を見てしまった。
 そのショックは大きくて中々立ち直れそうに無い。雌ってこんなにも怖い存在なのかと思うくらいに……
「今はもう私たちだけですから……今度はもっと、楽しい事をしましょう。ね?」
 元気なく垂れ下がった先端の赤い耳元に、再び雌の甘い囁きを拾う。
 それは落ち込み、傷ついた雄の心をドキッとさせた。疲労で萎えたはずだった雄の感情を呼び戻し、血を再び滾らせた。
 ほのかに紅色に染まる頬をピカチュウの可愛らしい舌がチロッと触れる。
「んぅ……でも、エレン……」
「はい?」
 耳元で暖かい息を吐きかける返事にゾクッとしながらも、プララは続ける。
「こんな状態で……何をするって言うの?」
 縛られた両手を前に出して尋ねる。エレンはフフッと笑いながら。
「何もしなくていいんですよ、あなたは。さっき言ったとおり、魅せてくれるだけでいいんですからぁ……」
 そう言い、雌の華奢な方手がプララの頬に触れる。黒真珠の瞳が、鏡となってプララの姿を映す。
 トロンとした官能的な瞳がまっすぐとプララを捉える。自然と吸い込まれそうな黒真珠を見続けている内に、雌の唇がそっと近づく。
 再び始まろうとする甘い熱帯夜。プララは黙って迎え入れようと、瞳をゆっくりと閉じた。
 視界が漆黒色に染まり、エレンの柔らかな唇を待った……
「……」
 しかし、中々来ない。またエレンの意地悪されていると思った。その次の瞬間……

 ガリッ

 鈍い音が、一瞬耳に入る。柔らかい感触を待ち構えていたプララの思考に強烈な電流が走った。その衝撃で目がパチッと大きく開かれる。
 視界の先には、エレンの顔が無い――っと言うより、正確には彼女の赤丸の左頬が視界の隅に残る。
 鈍い感覚に取り残されたまま、左頬に沿ってエレンの顔を追った。彼女の顔はプララの唇に向かわず、何故か左腕に当てていた。
 何をしているのかと、時間がスローになった空間でその様子をはっきりと目にしようとした。そして、信じられない光景が目にした。
 頭の中が真っ白になる。彼女の小さな口は、肉を食らう獣ほど大きく開けられ、プララの左腕に……その牙が突き刺させられていた。
 制止する時の中で映る。肉を抉る牙から飛び散る、己の血潮が瞼に焼きつく。その様子を信じられないまま、時間の流れが元に戻った瞬間、強烈な電流は、大きな衝撃にと変わった……
「あああああああああああぁっ!!!」
 静寂な森の中、一匹の雄が痛烈な悲鳴が響き渡る。鋭い感覚が頭を刺激するそれは、間違いなく痛みそのもの。
 ショックのあまり思考は遮断される。今まで味わった事の無い、生きている中で最も痛みと思えるほど。
 本能的にこの痛覚から逃れようと腕を振って逃れようとする。しかし、何時の間に左手をしっかりと掴んだエレンの手が離さない。
 鈍い痛覚がじわじわと迫る。お構い無しに牙が突き刺した肉からは、たらりと血の筋が描く。
「あぁっ……あぁぁっ!」
 呻き苦しむ悲鳴をあげ、焦点の合わない目から涙が零れる。
 身をばたつかせるも一向に離れる事の無い痛み。その間にも雌の鋭い牙がプララの腕に沈み、痛覚は徐々に増していく。
「痛いっ! 痛いっ!」
 一時的に正気を取り戻した頭が今の状態を口にする。
 縛られて満足に動かせない両手の代わりに、短い足を懸命にばたつかせる。
「エレンっ、離して! 痛いよっ……血が出てるよぉ!」
 既に腕の下にまて垂れ下がった赤い液体がいくつか模様を描き、重力に引かれて、粒となって下に落ちているのが目に入る。
 今まで悲鳴を無視して肉を噛む顎の力が抜かれる。肉を抉り続けた牙が、ゆっくりと引き抜かれる。
 ヌチャッと液体の音を鳴らし、赤い糸を引いた牙がチラついて見える。
「うっ……ううっ……」
 傷ついた穴から血が滲み出る自分の腕を見てすすり泣く声をあげる。
 未だに現実味の無い、幻覚とも思えるエレンの行為。しかし、この誤魔化しようのない痛みが、現実だという事を教えてくれる。
「血が出てるぅ……怪我してる……痛いょ……」
「ペロッ、いい声ですわ。胸に沁みます」
 口に付着したプララの血を、厭らしい舌で舐め取り、不敵な笑みを浮かべるエレン。
「直さないと……血が止まんないよぉ……」
 肩を震わせながら流れ出る血を
 プララのすすり泣く声や傷つき腕から垂れ落ちる雄の血、痛みで歪む表情を見る。
「うふっ、それですよ。いいですわぁその表情。怖がる顔……痛いしいその体……もう素敵です……理想ですよぉ……」
 エレンのおかしな言葉にプララは困惑する。視界いっぱい埋まる艶かしい表情。それは見る者を魅了する色。
 しかし、黒い何かを含めた怪しげな視線の前に、プララはゾッとする。まるでキンキンに冷えた物で、背中をツーッとなぞられる様な怖気に、背中の毛を逆立てた。
 本能が逃げろと告げている。縛られた蔓が肉に食い込む痛みを無視してでもと。
 それは考えだけに終わった。考えを実行に移す前に、エレンの顔が急接近してきた。怯えたプララは両手を前に出して顔を守る。
 すると……
「あっ……!」
 再び、塞ぎたくなるような嫌な音を耳が拾う。
 エレンの赤い鮮血を纏う牙が身を引く間もなくもう片方の腕を捕らえた。
 先の尖った鋭い歯が、やわらかな肉にズブッと刺す。甘噛みとは違い、容赦ない顎の力が肉を食いちぎらんばかりに加わる。
 信じがたい光景を二度も目にし、ショックで鈍くなっていた頭が痛覚を思い出し……
「うああああぁぁぁっ!!」
 再び悲鳴が響く。逃げ出したくなる苦痛が容赦なく襲い、プララの目から涙が玉となって散る。
 肉に食い込む痛々しい音を発し、肉を貫き、深く抉る牙が血管を傷つける。そこから赤い液体が流れる。
 血で染まる、エレンの歯と、プララの両手。悲鳴をあげる雄の声。
 対象に、その痛々しい叫びを耳にして、うっとりと潤んだ瞳をする、雌の顔…… 
「ぐちゅっ……ちゅぅ……んはぁ……」
 二度に渡って体を傷つけた牙がようやく離れた。その後に残ったのは、治まらない苦痛。
「あぁぁっ……僕の……手がぁ……」
 ぐしゃぐしゃに歪む視界の先で、くっきりと歯の後が残った両手からつぅと流れる続ける血を目にして怯える。 
「これでもう、嫌でも逃げられませんね……」
 唇に付着してしまった血を厭らしい舌使いで舐め取って、エレンはふふっと笑い、言った。
 傷ついてしまった両手は、エレンの言うとおり使用できない。それは、プララにとって逃げる事が出来ない事を意味した。
「痛いよぅ……痛いよぅ……」
 エレンの前で子供のように泣くじゃくる。年齢的に考えて見っとも無い姿だが、年の差を気にしていられる様な状況ではなかった。
「ふふっ、痛いですか。でもその姿、とっても素敵ぃ……」
 エレンは弱々しくしている雄を前に頬を紅く染めて言う。
「酷いよぉ……何で……何でこんな事するの……?」
 少しだけ理性を取り戻し、涙声で抗議する。血が流れる両手を震わせながら、キッと睨む。
「だってぇ、私のお願いはプララさんの苦痛に悶える、その姿そのものですからぁ……ふふふっ……」  
 その言葉を耳にしてプララは一瞬痛みを忘れた。彼女のいった言葉を半信半疑で聞く。 
「存分に気持ち良い声を聞かせてくれたので、もうそうしている必要はありません」
 その言葉の次に、チャームポイントであるギザギザ型の尻尾を光らせ、鋭利な刃物のように硬くさせる。
 鋼の強度と威力を誇る、アイアンテール。予告無しに体を半回転させて尻尾をプララに向けた。
 暗い森の中で恐ろしいまでにピカッと光らせて見せる。プララの血の気が引いた。今度はこれで自分を痛めつけるのかと想像してしまった。
 しかし、鋭利な刃物は一瞬にしてプララの目の前を通り過ぎるだけで何も傷つけず、一瞬の出来事で終わった。その次に、両手を縛った蔓が瞬時にバラバラに切り裂かれる。
 予想外の出来事に、涙を流したまま何処か安心感を覚える。もしかしたらここで止めてくれるのかと、僅かながら希望を持った。
 アイアンテールを終えてゆっくりとプララに向き直る。彼女はニコッと微笑みながら。 
「見てください……ジャ~ンッ!」
 高い声をあげて見せた物、それはただの長い蔓だ。ヒクが見つけた、今はプララの両手を縛る蔓よりも更に長い蔓だ。
 何時の間にみつけたそれを目の前で左右に伸ばして見せる。同じ蔓なだけにしっかりと張っていた。
 状態の良さに納得したエレンはうんうんと頷き。
「今度はこれで……プララさん、じっとしててくださいねぇ……それっ!」
「うわっ!?」
 怪しい笑みを深める。蔓をピンと張った状態のまま再びプララに飛びついた。
 行き成りの行為に抵抗もままならず、成すがままに己の体に頑丈の蔓が巻きつかれた。
「確か、これをこうやって……こうしてぇ……うんっと……」
 自由を奪われた体は、人形のように抵抗がでなくなる。
 蔓はプララの全身を縄のように掛けられ、複雑に絡み、手足や尻尾を縛った。出来上がった格好は、人間界の言う『緊縛』にされてしまった。
「あはっ、練習したかいがありました。結構うまくいくものですね」
 ねっと言われても、完全に身動きできない状態にされてしまって、同調できるわけがない。
 手が後ろに行ってしまい、他にも強く縛られた部分を蔓が食い込み、肉をぎゅっと締め付けた。食い込む痛みに耐えかねてあがくプララだが、余計痛むだけで逆効果であった。
「くぅ……あっ……!」
「無駄ですよ~、無理に外そうとしたら余計に食い込んじゃいますよ~」
 苦しむ様を余興でも見ているように笑いながらわざわざ忠告してくれたが、プララはそれに怒りを覚える。
「どうじてこんな事するの? エレンってこんなひどい子だったの!?」
「えぇ、異性が苦痛で悶える姿ってとても甘美的ですもの。見ているだけで濡れちゃいます……」
 責める言葉を受け取りながらも余裕を見せる。っというよりも、とても興奮している様子だった。
「そんな、おかしいよそれってぇ……いたっ!」
 身を起こそうとして立ち上がるも不安定なおかげで体制を崩れてしまい、仰向けに落ちてしまう。
 自由を取り戻そうと懸命に努力をしようとするその姿。エレンはキャタピーでも見る様な目で笑い、足でプララの腹を踏みつけた。
「がっ……あぁ……」
「おかしいですって? 結構ですよ、私は普通じゃありませんもの……うふふ……」
 体重を乗せた華奢な足が柔らかな腹の上で沈んでいく。呼吸を忘れ、声が裏返る。
「ほらほら、息苦しいですか? 何か喋ってくださいよ~プララさん」
 そう言いながらも彼女の足はより深く腹の中に沈み、腹を圧迫する苦しさに呼吸が出来なくなる。
 言葉にならない嗚咽で、必死に助けを乞う眼差しを向ける。それを前にして、うふっと笑い……
「これだけじゃ退屈ですね……はいっ」
 エレンが飽きた様子で言うと、ようやく足がどけられた。
「はぁ……はぁ……」
 プララは踏まれた腹を縛られた両手で押さえ、苦痛な表情を浮かべながら新鮮な空気を取り入れた。
 圧迫の苦しみから解放され、安堵している中、再び衝撃が走った。アホ毛が乱れ、頭が茶色いした土に押し付けられた。 
 土が顔の半分を汚し、気持ちを整理するゆとりも与えず、半場混乱状態の雄が呻き声を漏らす。
 訳が分からないまま、閉じてしまった瞼を開く。首を振って確かめようにも動かない。
「あははっ、プララさん知ってますぅ? Mな人って顔を踏ん付けられると喜ぶんですよ」
 確かめる前にエレン自身が教えてくれた。彼女はプララの横顔を強く踏みつけていた。
 足で顔全体をグリグリと押さえつけられ、苦痛のあまりに嗚咽が漏れた。
「やめ……てぇ……顔を……踏まないでぇ……」
「あれれ~、嫌なんですかぁ? 本当は嬉しいんじゃないですかぁ?」
 思っても無い事を勝手に言う。正直の所、今のエレンには相手の気持ちなどなんの関係も無い状態にあった。
 悶え苦しむ雄を前にして、華奢な雌の体から足から細長い耳の天辺にかけてゾクッとするような快感を覚えていた。その証拠に尻尾が自然とユラユラと揺れている。
 しかし、それだけでは飽き足らずエレンは一度横顔から足を離して、再び足を元の場所に降ろした。
「あぐぅぅぅっ!」
 頭部が強烈な痛みに襲われ、悲鳴をあげた。
「んぅぅ~、良い声ぇ……プララさんは私を喜ばしてくれる素質がありますよぉ」
 そう言って横顔をグリグリと踏みつける。次第にプララは痛みと陵辱に耐えれなくなり屈した声で言う。
「お願い……やめて……苦しいよ……痛いよぉ……」
 ブルブルと震えてエレンの暴力に怯える。さっきまで自分を暖かい笑顔で接してくれた相手とは、とても思えないまま……
 許しを乞う眼差しを向ける。目線の先にいる雌は、そんな哀れな雄に対して許す態度を見せず口を開く。
「そんなに怯えなくても、存分に可愛がってあげますよ……大好きなプララさん」
 最後の台詞で、首を捻りニッコリと微笑んで見せた。しかし、その笑みがプララに更なる恐怖心を煽った。
 理由は全く無いが、エレンの花のような笑顔がプララの本能が危険だと告げている。根拠の無い不安が徐々に膨らんでいく。
 恐怖のあまりに流れ出る涙は止まる。暴力の時以上に体が震えだした。視線がエレンに向けたまま離れない。
 エレンは足を頭部から足を離すと口を開き。 
「今度は何処を踏んであげましょっかぁ……」
 トロンとするような口調で言った。危機感を覚えたプララは縛られた状態で上手く逃げれず、虫ポケモンの様に蠢いていた。
「うふふっ、まるでキャタピーみたいですね。そんな無様なあなたには、こうっ!」
 虫ポケモンの様に動く事しか出来ない状態のプララに、エレンは容赦なく、今度は股間目掛けて足をゆっくりと降ろした。
「ひぐっ!?」
「ほらほらぁ、あそこを踏まれてどんな気持ちですかぁ?」
 プララは大事な場所を踏まれて悔しい気持ちになるよりも先に、踏まれる感触に悶えた。
 雄の大事な所を、揉むように上下に足を動かしていく。
「うんぅぅっ……あぁぁっ……!」
 強弱を付けた足の動きに喘ぎ声が漏れる。痛みや性行為とは違う別の快感に襲われる。
 体をくねらせて抵抗を試みるが全く意味を成さなかった。エレンの足はしっかりとプララの股間を捕えて離さない。
 次第に熱いものが込み上げてきて、雄の象徴に変化をもたらした。
「あらあら、私の足で何かがムクムクしてますよぉ? 私に踏まれてエッチな気分になっちゃったんですね。変態さん」
 口調が徐々に変わっていく。敬語なのは相変わらずだが、喋り方に侮辱が含まれていく。
 悔しいはず……なのに、プララの中で興奮が高まっていき、股間の方はほぼ半勃ち状態になっていた。
 訳が分からないまま、確かに感じるこの快楽のあまりにモゾモゾと動く。
「あははっ、もうこんなに硬くなってる。おまけにモゾモゾ動いちゃって情けないですよねぇ。まるで虫ポケモンみたい」
 エレンはにんまりと笑いながらも足で硬くなっていく竿のマッサージを忘れない。
 上下だけでなく、グリグリと回す。時折意地悪に足に力を入れて強く踏ん付けていく。そうするたびにプララは卑猥な声で叫ぶ。
「あっ……! ぐぅっ……や……あぁっ……」
「何てだらしの無い顔……さっきまで踏まれて痛がってた癖に。
 あなたなんてプラスルじゃありません。虫ポケモンのキャタピーです。おちんちん踏まれて興奮する変態のキャタピーです」
 プララの乱れ悶える姿にエレンは容赦ない言葉をぶつけた。黒真珠の瞳をきつくして目の前の雄をゴミか虫でも見る様に見下す。
「あっ……うぅっ……ふわぁ……き……気持ち……うっ……」
「なぁに? はっきり言ってくださいよ。気持ちよすぎて喋る事もままならないのですか? 情けな~い」
 両者ともその様子が徐々に変わっていく。踏まれ続ける快楽によがり狂うプララ。冷笑を浮かべて自分よりも年上のポケモンを罵倒するエレン。
 興奮にまかせて雌が股間を扱い変化が現れた。優しく踏んでいたはずが、力加減を無視して体重を掛けていた。
「あっ……あがぁっ……うはぁ……えれ……ん……」
「馴れ馴れしく呼び捨てしないでください、何様ですか? うふふっ」
「で……でもぉ……ふあぁっ……えれん……」
「黙りなさい! 甚振られて喜ぶクズポケモンの癖に!」
 怒鳴り声をあげて大事な性器を一度離し、再び体重を掛けて踏ん付けた。
「ああぁっ!! ご……ごめんなさい……!」
 激しい苦痛に悲鳴をあげた。しかし、その反対に痛めつけられた性器は今の一撃ではち切れんばかりに膨張している。
 まぎれもなく、痛みの中で快楽を見つけている証拠である。
 エレンはそれを視認すると口元を歪ませて深く笑う。火照った顔が更に紅く染まる。
「痛がってるくせにさっきよりも硬くなってますよ……? サイテー……ペッ」
 明らかに喜んでいる反面、軽蔑の篭った台詞を吐き捨てるとプララの顔面に向かって唾を吐いた。
 悶え狂うプララはそれを避ける間もなく……いや、避けようとも思わず、エレンの吐いた唾液が付着する。
「あっ……あぁぁぁっ……!」
 その時、プララはだらしの無い弱々しい叫び声をあげた。膨張した肉棒から白濁液がビュッビュッと迸る。
 竿の先は顔面に向けられていて、飛び散る白い体液を自ら降り掛けた。
 唾に加えて濃厚な精液によって白く汚され、なんとも言い様の無い無様な姿になり果てたプララを見てエレンは。
「蹴られてイってしまうなんて、アナタってなんて変態さんですかぁ? 信じられません。プララさんてどうしようもない畜生ですわ……」
「ぼ……僕は何で……!?」
 欲望を吐き出し理性を取り戻した頭が冷静に機能する。
 さっきまでエレンに踏まれて苦痛でしかなかった感覚がおかしくなって、絶頂を覚えるほどの快感になっていた。
 苦しみの中でプララが不本意で見出してしまった、己の醜い欲望。
 これが自分なのかと、顔に付着した唾液と白濁液を拭うのも忘れ、プララは自己嫌悪を覚える。
「あーあ、私の足が汚いあなたの白い汁で汚れてしまったわ。どうしてくれるんです?」
 射精後で萎えていく肉竿を見下ろしながら厭らしい笑みで言う。次の視線をプララに向ける。
 よく見れば、黄色の短足にもネバネバした液体が付着しているのが分かる
「ほらっ、ボーとしていないで汚れてしまった私の足を綺麗にしてください。汚いでしょう?」
 エレンは乱暴にプララの腹に乗りかかり、精液が粘着した足を押し付けた。
「ぐむっ……ぅぅ……」
「丁寧に舐めてくださいね。変態なあなたのせいで汚れてしまったのだから」
 紅色の笑みを崩さないままグリグリと押し付け、顔面に付着していた液体を押し広げた。
「足の裏全体を丁寧に舐めてくださいね。中途半端なのは許さない。分かりましたかクズポケモンさん」
 そう言って足を僅かに浮かした。
 困惑状態のプララ。しかし、不思議と躊躇いがなかった。
 命令する雌の声に吸い込まれるように舌を出し、半泣き状態の瞳でネバネバする液体が付いた足に滑らす。
「んちゅっ……ちゅっ……ちゅる……」
「そう……ふふっ……私の足の裏全体を舐めるように舌を滑らすの……」
 言われる通り微弱に震える舌先を白い液体に向けて走らせ、すくい取る。それを戻すとねっとりとした自身の白濁液の苦々しい味が口の中で広がった。
 とても飲む気になれない、気持ちの悪いそれに若干吐き気を覚えそうになるも、しっかりと咽を鳴らして飲み込んだ。
 体内に濃厚な精液が入り込んでいく違和感を覚えながらも、次の箇所に舌を繰り出す。
「自分の精子の味はどうかしら変態さん。嬉しそうに咽を鳴らしちゃって、気持ち悪いですね」
 耳が罵る声を拾う。完全に屈辱的に思えるこんな状態でさえ、今のプララは逆らおうとする気が全く起きない。
 ただ命令された通り甘い蜜を舐める犬の様に行為を続けた。
「ふふっ、綺麗になりましたわ。ヘタレのくせに言う事はちゃんと守れましたね……」
 唾液を除き、全ての粘着液が舐め取られて満足そうに言う。続けて口を開き。
「よく出来たからにはご褒美をあげないといけませんね……」
 きつくしていた瞳がやんわりと半開きに戻り、唇に手を当ててクスッと笑う。
「ご……ご褒美って何……?」
「変態なアナタが喜ぶ事ですよ。ほら、お尻を向けて」
「へ……変態じゃ……!」
 今更な事を力ない声で反論する。説得力は全く無い言葉にエレンは気に掛けることなく口調を荒げる。
「いいから、モタモタしないでさっさと向けなさい!」
 悔しそう顔をしかめながらも、蔓が肉に食い込む痛みを堪えながら欲情した雌ガーディの様に自分のお尻を突き出してエレンに向ける。自分自身でも見っとも無い格好とは思っていてもエレンのきつい視線と口調に逆らえなかった。
 それだけじゃなく、彼女の言う「ご褒美」と言う物に対して醜い欲望が惹かれている。
「うぅ……これでいい?」
 恥ずかしそうに赤面しながら十字文字の尻尾をピンピンと跳ねて見せる。雄としてあまりに無様な姿を晒している。
「なーに尻尾を振ってるのですか? そんなにご褒美が楽しみなんですか?」
 クスクスと雌に笑われて更に赤面した。気にせずエレンは続けて言う。
「まぁいいです。これをこうして……」
 エレンは向けられた尻に対して自分も背を向けた……
「ふぐあぁっ!?」
 トーンの落ちた悲鳴をあげる。何が起きているか分からない疑問に駆られるプララはそれを確かめる術が無い。確実に分かるのは、自分の尻に異物が入り込んでくる事だ。
 腰がガクガク震える。苦痛と言うには生ぬるいほどの激痛が襲う。
「え、え、えれんぅぅ……!」
「うふふっ……ここも初めてですよねぇ。私の『尻尾』はどんな味がしますぅ?」
 意地悪に返したその言葉は、激痛に苦しむプララの疑問を晴らした。今自分の中に強引に侵入しているそれは、エレンの尾だった。
 ピカチュウの尻尾は繋ぎ目は小さいが、先端部分は人間の手の平サイズまで大きい。それを挿入しているのだ。
 今プララに挿入されているのはハート型に割れた先端部分の半面の所だ。
「あっ、あがぁぁぁっ!」
 異物の正体を知るとなお更に激痛が走る。
「あははっ、ほらほらぁ」
 尾をそのままに可能な限りプララに向き直る。苦痛の叫びを楽しみながら挿入物を更に奥へと押し広げるようにねじ込んでいく。
「ひぎぃ……ああぁぁぁっ!」
 進むたびに想像を絶する激痛に、血走る目からは涙の筋をいくつも作った。
 エレンの尾はハートの形が見えなくなる所まで進行していた。
「すごいすごい。私の尻尾の大きい部分が全部入っちゃいましたよ? プララさんのお尻って広いのですね~。はははははっ」
 高笑いを上げる雌の声。その声を聞くだけの余裕も無い。ご褒美とは名ばかりの拷問だ。
「ひがぁぁっ……ぬ……ぬひてぇぇっ!」
 意識が薄れて今にも眼球が白目を向いてしまいそうな中、悲鳴をあげる形で助けを乞う。
「いや~。もっと中で行きそうですもの。それにプララさんのアソコ、大きくなってますよ。本当は嬉しいのでしょう?」
 プララ自身傷かぬ間に逸物がはち切れんばかりに欲望を主張している。助けを乞うとは裏腹に、醜い欲望が痛みを欲しがっていた。
 エレンはその醜い欲望の期待に副い、すでに先端の半分を埋め込んだ尾をギザギザに折れた箇所まで押しやる。
「あがぁ……ぁ……ぁぁっ……」
 限界を超越した侵入にプララは声を出す事すら叶わなくなった。柔らかなお腹の形が異物を埋め込まれた形をくっきりと残している。
「ふぅぅ、流石にこれ以上は私もきついですわ……尻尾が潰れそうですよぉ……」
 エレンの笑みが僅かに歪む。無理に入れた尾は体内の圧迫力に押され、潰されていくのを尾で感じていた。
「ちょっと抜きましょっか……んぅっ……」
 エレンは尾に力を入れてプララの体内からゆっくり抜いていく。腹の形が後退する様を写しながら。
「んがぁ……あああぁぁっ……!」
 プララの方は異物が抜かれていく激痛に震え、悶えていた。
 痛みと快楽で支配されている最中、僅かに残っている理性が安心感を得ていた。これでようやく尾から開放される。しかし、またもやその期待は裏切られた。
「やっぱり止めた~。お尻の入れ具合がいいからもっと入れちゃいますわ」
「えっ……!?」
 小悪魔の呟きを耳にして絶句した。途端場で止まった尾をそのままにされた雄は恐怖で顔が引き攣る。
 予想通りの反応と言わんばかりに柔らかな唇を吊り上げて笑う。可憐な雌は容赦の一欠けらも無いまま先端の太い尾を繰る。
 一度抜きかけた尾が雄の体内に再度侵入する。
「あっ! あっ! あがぁっ!」
 雌の尾は膣に肉竿を入れるが如く出し入れを繰り返しながら暴れていく。
 入れる入れられるの立場が逆転し、今エレンはプララの体内を蹂躙している喜びを噛み締めながら言う。
「プララさぁん、異性の物が自分に入れられる気持ちが分かりますかぁ? 私も始めての時は多分あなたほど痛かったんですよ」
「あひぃっ! い、いだいぃっ!」
「ふふふ、痛いですか。でも大丈夫ですよ。徐々に気持ちよくなりますからぁ……」
 エレンの言うとおり、苦しいでしかない苦痛の最中、痛みは次第に心地良いものに変わっていく。
 体からトゲが抜けるような気分になる代わりに異物の侵入がプララに快楽をもたらしてくれる。
「あぐっ、あぁっ、あはぁっ、えれ……ん……きもひいい……!」
 激痛でえ歪んでいたはずの顔が緩み、だらしなく舌を出したままエレンの尾を存分に感じていた。
「ほぉら。変態なあなたにぴったりなご褒美でしょ? このままイかしてあげますわぁ」
 小悪魔な笑みをより深め、尾を自在に操ってはその速度を上げていく。
 プララは激しく出し入れされる快楽に身を任せる。涙目になりながら、その顔は喜びに満ちていた。
「あはっ……ああぁっ……いい……いいよぉ……もっと……尻尾ちょうらいぃ……」
 性の乞食にでもなったのか尻尾を振って更に求めてくる。お望みどおりとエレンは尾を可能な限り奥にぶち込む。
 いつしか苦しみと恐怖を忘れ、苦痛は快楽と変わっていた。今プララはエレンによがる性奴隷に成り下がっていた。
「あははっ、もう変態ポケモンと言うより変態そのものねぇ。気に入りましたわ、そのまま絶頂してくださいなぁ」
 エレンは出し入れするだけでなく体内でゴリゴリと痛めつける。それもまたプララを喘がせた。
「あ……がぁ……あはぁぁぁぁぁっ……!」
 情けない声と共に焦点が上を向く。あへ顔と呼ばれる見っとも無い顔の雄は絶頂を迎えた。
 膨張しきった肉竿が白い性をビュクビュクッと地面に向かって吐き出される。茶色の土が白い湖を作造り出した。
 雄としてのプライドをかなぐり捨ててまで得た快楽は、エレンとのセックス以上だった。
 満足そうに薄ら笑みしているエレン。彼女の尾はすでにプララの体内から抜かれていた。それにも関わらずプララは竿から延々と尽きる事なく己の欲望を吐き続けている。
 それを確認する事も無く。永遠に続くと思われる射精の快感に酔い狂う。
 口元はヘラヘラと笑いながら目からは涙を流したままと言う、なんとも無様な姿を雌の前で晒していた。
 精液によって作られた湖は大きく輪を作った、本人の足にとどく。
 やがてプララは絶頂の衝撃で体制を維持できず、足から崩れ落ちる。地面に溜まった精液を全身に付着させながら。
「あっ……あぁ……こんなの……はじめてぇ……」
 涙と快楽でくしゃくしゃにした顔で言う。凄まじい脱力感と開放感の前にプララは正気を失っていた。
「うふふっ……気持ちよかったですか? 変態さん」
「すごいよぉ……もう僕……おかしくなってしまいそうぅ……」
 生き続けていた中で味わった事の無い、性の味。それも過激とも呼べるほどのを知ってしまった。
 頭の中でエレンの不適な笑みと暴力的な快楽が焼きついて離れない。
「顔、汚れちゃいましたね……」
 エレンはそう言ってプララの顔に近づく。顔を跨いではグチョグチョに湿った秘所をプララの目の前に持ってくると……
「……んっ」
 エレンが力むと湿った秘所の突起物から黄色の水がチロチロと放水した。
 鼻腔をきつく刺激する生暖かい水がプララの鼻に当たると顔全体に広がっていく。
 涙と唾液が洗い流され、プララの顔の周りに穂のかにすっぱい臭いのする水が湖を造り、すでに造られていた精液の湖と混じっていく。
 微弱にその水を口で受け取る。甘酸っぱいような味を確かめた。
 やがて放水が終わると、プララの顔はエレンの体液によって僅かに湯気を立てながら顔全体を濡らしていた。
「ふぁ……え、エレン……」
「ふぅ……いい顔ですよ……私に傷つけられて汚されたプララさん……」
「僕はもう、何されても……君を憎めないよぉ……」
 震えた声で黄色の水滴に汚された虚ろな瞳を向ける。
 両手に残された噛まれた後、足で踏まれた体全体、強引に押し広げられて未だヒクヒクする肛門。すべてエレンによって傷つけられた体。
 無残とも言っていいその姿を、彼女は愛おしい目で見つめ返えす。


 生きた心地のしなかった長い夜が終わり、切り株の上で座る雌と、未だに縛られたまま疲労で目を閉じかけている雄の二匹。
 プララにとって始めての雌との交わりが過ぎ、今度は沈黙ばかりが続いた。しんとする中、エレンが口を開いた。
「ねぇ、プララさん……」
 沈んだ口調で話を掛ける。
「へっ……?」
「私の事、ひどい雌だと思いました?」
 突然の一言に、疲れた顔でエレンを見つめる。返答を待たずしてエレンは続ける。
「せっかくの初めてなのに、あんなに痛めつけちゃって……嫌いになったでしょう?」
「どうして、そんな事を急に言い出すの?」
 見せた事のない困惑した表情を見せられ、プララは呆気にとられた。
「私、今までいろんな雄と付き合いました……でも、どれもこれも失敗続きで……その理由は私がこんな性格だからです……
 普通のエッチじゃ満足できず、どうしてか分からず、悩んでいるうちにある事に気づいてしまったのです。それは、自分がサディストと言う性癖の持ち主だからです。
 相手を痛めつける事で初めて本当の快楽を見出してしまう為に、それを嫌がった雄達は皆私から離れていってしまいました……
 本当の私を受け入れてくれる雄がいないまま、いつも一人ぼっち。とても寂しかった……だからいつも当てずっぽうに雄を求めてはこの繰り返し……」
「エレン……」
 エレンは内心、自分を最低な雌だと責め、表情を暗くさせる。今にも泣き出しそうな顔で己の内を曝け出す。
「今回の事も、ヒクさんからプララさんの事情を聞いてはお受けしました。決して善意とか興味本心ではないのです。
 あの時私は『あなたが異性を知らないのを同情してセックスする事を請け負いました』って言いましたけど、本当は孤独が嫌で、自分の寂しさと欲求をアナタにぶつけたかったのです……
 私こそ最低な雌です……あなたと言う純情な雄を自分の欲望の捌け口にしてしまいました……」
「そうだったんだ……」
 エレン黒心中の瞳から一筋の涙が流れる。本心を耳にしたプララはそれだけの言葉を返す。
「やってはダメだと思ってはいました。でも、いざ気持ちが高まると、ついやってしまって……こんな私を、あなたは受け入れてくれますか……?」
 プララは沈黙する。自分に性を教えてくれた理由は、彼女に玩具にされるために利用されただけだと知り。複雑な気持ちになった。
「……無理ですよね。変な事を言ってごめんなさい、ひどい事をした事も謝ります……
 ヒクさんを呼んできます。こんな様を見せたら、多分責められると思うけど……プララさんをこのまま放置する訳にはいきませんからね……」
 エレンは後ろを振り向き、申し訳なさそうな雰囲気を纏いながらヒクが連れ去られた方角へトボトボと歩き出した。
 そんな彼女の後姿をプララが止めた。
「待ってよエレン!」
 プララの声に反応し涙目の彼女が踵を返す。
「無理な事なんて無いよ……確かにひどいと思った事はあった……でも、僕の方も君を抱いている内に、その……好きになった!」
「え?」
 最初はもじもじと呟くしゃべり方をした。しかし、最後の言葉だけははっきりと言えた。
 エレンは驚き、半開きの瞳を大きく見開いた。そして聞き返す。
「いいのですか? もしかしたらまた、あなたを傷つけてしまうかも知れないのに……」
「いいよ、構わない……今日まで異性を知らなかった僕に、何て言うかその……こんなにもドキドキした相手はエレン、君が初めてだ。君と出会わなかったら、僕は一生好きになる幸せを知らないまま過ごしていた……」
 語りながらプララは村長と別れた後にヒクが言った言葉を思い出す。
 ――プララ、君は今とても充実しているかい?――
 うん、エレンと言う素敵なポケモンと出会えて、今日ほど充実した事はなかった。ヒクの言うとおりだと……
「もう一度言うよ、エレンが好き……もうエレン無しじゃ生きていけない……」
 見っとも無い格好で、しかし迷いの無い口調で言った。
「……プララさん!」
 次第に満面の笑みになり、縛られて不自由なはずの雄の体に飛びつく。
 初めて出会ったばかりの二匹は抱き合う最中、いつのまにか互いの事を好きになってしまった。
 ひどく汚れた顔の雄と了解を得てとても嬉しそうに喜ぶ雌の顔。
 一寸の光も差さない森の中、暗闇の中見つめあう雄と雌。二匹は互いに愛を誓う事を了解し、無言のまま枯れ切った唇同士を交わす……
「んふっ……プララさん……」
「何……?」
「私、また濡れちゃいました……すごくウズウズしちゃって……また、あなたのあそこを私の中にぶち込んでください……」
 涙の後を残し魅力的に潤んだ瞳を前に、プララは半開きの瞳で笑む。
「いいよ……僕が好きになった相手だから……存分に苛めて欲しい……僕もいっぱいエレンを感じたい……いいよね?」
 聞き返すプララ。エレンは小悪魔な笑みでなく天使の笑顔で微笑んだ。
「んくっ!」
 愛を確かめる為の過激な口付けを交した。スポンジのように渇いた舌を絡めあう。
 エレンの舌がプララの口内で暴れる。負けじと自分も不慣れながら積極的に舌を口内に押しやる。
 押し負けした雌は自分の口内の侵入を許してしまう。しかしエレンは待ってましたと言わんばかりに目つきを鋭くさせ……
 グチュッ……プララの瞳がブルッと震えた。頭の芯にまで届きそうな刺激が巡ってくる。
「んぅ……んんぅ……!」
 喘ぐと言うより、呻くに近い声を漏らす。彼女の口がプララの舌を受け入れた途端、歯を立てのだ。
 プリプリした小さい舌が微量に加減を入れた鋭い歯に刺さり血を滲ませる。エレンはもっとプララを痛めつけたいという願望を膨らませていた。それでも、プララは抵抗しようとは思わなかった。なぜなら、これはエレンの独特的な愛情表現だと知ったから。
 どんなに痛めつけられても、どんなに虐げられても、全て受け入れれるほど好きになっていた。苦痛や苦心以上の嬉しさが広がる。今彼は、愛する雌の愛情の中にいる。
 瞳からまた涙の後を作る。それもまた嬉しさから沸いてくる愛情表現に対するプララの応えだった。
「んはぁ……プララぁ、大好きぃ……んぅ……!」
「エレンぅ……もっと……んっ……!」
 これまで性を知らなかった雄は、めでたい事に愛する事の出来る雌を見つけた。生涯を共にしたいといえるほどの大好きな相手を……
 その日の熱帯夜は一度二度では収まらなかった。愛し合う二匹の獣は何度も乱れ、一つになり、そして傷つけた。
 朝の日差しを迎えない暗闇の森。プララとエレンの愛の形を末永くせんと永遠の漆黒の夜を守る……



 永遠に続くと思われた漆黒の闇を抜けた先は、広々とした草原の出口。夜を照らす満月の姿はすでに存在しない。代わり大地を照らすのは暖かい太陽の日差しだった。何時お天道様が昇ったのか、そして今どのくらいまで高く上っているのか分からない。
 夜の睡眠を終えた生き物達が目覚め、新しい一日の活動を始めている中、一匹のポケモンが闇の中から現れる。そのポケモンは眠れぬ長い夜を過ごしていた為に疲労の表情を浮かべている。
 特別な日の夜に、ある雌の拉致と種族を超えた熱帯夜を過ごし、体はほとんどボロボロだった。
 四つん這いではぁはぁと息切れを起こしながら、長くて暗い森をようやく抜けた顔が安堵の表情に変わる。お天道様の光に恵まれてそのポケモンは崩れるようにうつ伏せに倒れる。
 大きく広がる空を見るために動かすのも辛い体に鞭を打って仰向けに体を向けた。
 苦しい思いをして見上げた空はなんとも言えない、風に流されてふわふわと浮かぶ白い雲以外、穢れなき青い空。見る者の心を埋め尽くすその広大さは、まさに自然が作り出した芸術。
 しかし、そんな芸術を瞳に映してもそのポケモンの心に出来た穴を埋める事は叶わなかった。
 ゆっくりと流れていく雲を目で覆いながら一匹のマイナンと一羽のベラップ。その内一匹のポケモンがは悲しそうに溜め息を吐いた。
「はぁ……」
「元気をだせよー」
 後から付いて来たベラップのラッパが寝転がったままのマイナンのヒクを慰める。返事をせず、顔だけをくるりと方向を変える。視線の先には自分が置いて行った森の方角を向いていた。
 昨日まで一緒に同じ道を歩き、同じ時を生きた掛け替えの無い親友を……
「これから君はあの子と同じ道を進むんだね。おめでとう。親友として嬉しい限りだよ……」
「本当にそう思ってるのか?」
 ラッパの言うとおり、祝いの言葉とは裏腹に、親友と別れる限りない悲しみがマイナンを覆う。
 出来ればこれまでもずっと変わらず親友と共に人生を過ごしたかった。今ではそれも叶わない。
 まさかこんな形で別れるとは思わなかった。そう思わせたのはこの森に出る際、こっそりと付いて来てしまったラッパから聞いた伝言だった。

 ――ヒク、突然だけど、君と一緒には帰れなくなった。僕の事を必要としてくれる素敵な相手を見つけたんだ。僕もまたその子の事が好きになった。
   君が紹介してくれた彼女は、優しかったけどちょっと意地悪な子で、でも本当は寂しがりな子だった。僕はその子を全力で守ってあげたい。
   僕と一緒に村に行こうと言ったら、彼女はこう言ったんだ。離れられない、他の場所では誰にも必要とされない。自分の居場所はこの森だけだって……すごく悩んだ。そして決めたんだ。僕は彼女と一緒にこの森に住む事にしたんだ。
   この広くて暗い森の中、急な話で僕達は住処を見つけるために遠くを探す事になったんだ。それもこの森の更に奥の方に、だからこんな形でお別れをいう事になった。
   僕はこの森の住民に受け入れてもらえた。これからはこの森で彼女と共に過ごし、危険な数々を乗り越えて、子供を作って、育てて、年を取っていく。村長の教え通り、命のバトンを繋いでね……
   ヒクと別れるのは辛い、だけど、いずれこうなる事はヒクも分かっていると思う。だって、僕よりも賢いからね。
   離れ離れになっても僕達はずっと親友だ。だから、涙を流すような別れだけはしないで、笑って僕達の門出を祝ってくれ。あ、門出って言葉はエレンから教わったんだけど、村長には内緒だよ? 多分笑われると思うからさ。
   それじゃ、風邪ひかずに元気で……さようなら。そして僕に、雌を抱く喜びを教えてくれてありがとう……愛するヒク――
 
 坦々と思い浮かぶ、伝言越しに伝わってくる親友の気持ちに思わず涙が零れ落ちそうになった。
 やがて小休憩を済ませると沈む気持ちに喝を入れて立ち上がり、親友との別れを告げた森を見つめながら呟いた。
「元気でな。君も風邪をひくなよ」
 ほのかに笑顔を浮かべ、一匹のヒクは自分の住む村へ帰ろうと草原を駆け出した。 
 自分も親友に負けないように、素敵な相手を見つけて、愛し合い、子供を作って、命のバトンを繋いでいこうと心に誓う。
「あ、待てよー」
 勢い良く駆けるヒクの後を追いかけるラッパ。
 広大な草原を駆け抜けていく。秋の涼しい風を身に沁みこませながら、祝福の言葉を思い浮かべた。

『末永くお幸せに、プララ!』

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  • スタァアド!! 一番ッ!!

    ……ふぅ


    さて、ヤシの実さんが"何か"を執筆している雰囲気は前々から知っておりました。
    ですのでトップにタイトルが載った時はハイテンションすぎて小指を机に。

    今回はいつもにまして過激な行為を描かれましたが………正直、エレナがプララの腕にあんな事した時は苦笑しました。
    自分も大学生の時にやられたワケですよ、犬に。ガリッと。痛かったです。

    それでも、エレナと一緒に歩む人生に着いたプララはよっぽどエレナを愛していたのでしょうね。
    素直な純愛に感動しました!

    最後に
    【プララの口を汚さんばかりに止め処なく溢れ出てくる。
     プララの
    「プララさ】
    何故か「プララの」が孤立してましたので報告しておきます。

    感想がまるで中学生の作文のようになり申し訳ないです。
    では、執筆お疲れ様でした。
    ―― 2011-04-22 (金) 02:27:39
  • 雌怖ぇ・・・・・怖すぎる・・・*1)ガクブル
    ―― 2011-04-22 (金) 03:49:34
  • 今までの中で一番印象に残ったw 
    ―― 2011-04-24 (日) 19:23:33
  • 一週間経たない内にhitががが……

    今回は官能メインに執筆した訳ですが、とても喜んでもらえて幸いです。
    いつも無理やりな行為ばかりでしたがちょっと頭を切り替えてSM物を入れてみました。
    正直、初めて性行為するプララにとってSMなんてきついだけだと思う人もいるかもしれません。
    しかしそんな激しい行為の中でも芽生える感情がある!っと無理やりな考えを小説に持ちこんでました(笑)
    ナリア見たいな一途な愛やエレンのような過激的な愛など、愛情表現は様々です。まぁそれを受けてしまう雄達は悲惨でしかないですけどね(笑)
    自分としても”その手”の官能を書きつつ、恋愛や恋などの感情を活かし、次の作品に入れてみようと思います。もしかしたらそれが次の作品を作る最大のヒントとなるかもしれません。
    沢山の観覧どうもありがとうございました。今後とも応援よろしくお願いします。

    ミスの報告については遅れながら修正を致しました。ご報告ありがとうございます。
    ――ヤシの実 2011-04-27 (水) 00:59:38
  • 自分の中のMが飛びだしてきそうだ!
    ――恐らく名無し ? 2012-03-03 (土) 00:45:44
  • ぜひアフターストーリーを!!!
    ―― 2012-03-06 (火) 02:42:24
  • >おそらく名無し様
    SM系は初めてでこれで受けてもらえるかどうか分かりませんでしたが、そう言って頂けるとSMにした甲斐があります。

    >名無し様
    まさかのリクエストでプララ再臨の予感!
    リセオ物語を進めたい気持ちもありますが、他の主人公達のアフターストーリーを作るのも面白いかもしれません。
    気が向いたら是非やってみようと思います。
    ――ヤシの実 2012-12-26 (水) 01:09:08
  • 作中の思わずこの後どうなるんだろう……! と思わせる地の文が随所に散りばれられていて、終始ドキドキさせられますね。
    長編なんですけど、最後まで高いテンションを保ったまま一気に読み切ってしまいました。
    性のお話から命のバトンを引き継ぐと言った道徳的な話が出てきたり、闇の森を疾走したりと、何処と無く童話の様な世界観なんですよね。

    主役のプララですが、まさかこんな終わり方をするとは夢にも思いませんでした。お前はキーファかw
    童貞超絶無知でスタートしたプララがたった一日でレベルアップし過ぎてすんごいヒクが不憫なんですけど、当の本人は満足だったみたいで良かったです。
    何処かで聞いたんですけど、人は社会と言う組織で生きるために普段は仮面を被っているけど、夫婦になれば仮面を外して素性を全て晒さなければいけないそうです。プララもエレナも互いの素性を目の当たりにした上で同意してますし、過激な性癖だけどとても相性の良い夫婦になりそうですね♪
    そして夜な夜なSMプレイ、と(爆)。私もSMは好きですよー。
    苛烈プレイの末に芽生えた純愛と、ラストの友情が美しい作品でした。
    凄く面白かったです! 
    ―― 2012-12-29 (土) 02:52:26
お名前:

*1 (゚Д゚;

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Last-modified: 2011-04-21 (木) 00:00:00
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