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兄妹の夢の始まり

/兄妹の夢の始まり

ポケモン不思議のダンジョンマグナゲートが出たころに書いた作品です。
内容としてはマグナゲートの話の外伝的なものとなってます。
楽しんでいただければ幸いです。

作者ラプチュウより



―1―

 雲ひとつない晴れ渡った青空の下、明るい声が聞こえている。ここは身よりのないポケモン達が集まるガルーラハウス、今日も元気にポケモン達が遊んでいた。

「皆ぁ、そろそろお昼ごはんの時間だよぉ!」
「はぁい!」
「ぼくがいっちばぁん!」
「あっ、ずるぅい!!」

 一匹のガルーラが広場で遊ぶポケモン達に声をかけると、広場で遊んでいたポケモン達は一目散にすぐそばに建っている小屋へと集まっていく。その様子を見送ったガルーラは、広場のとなりに広がる花畑へと視線を向けた。

「リュカ! シフォン! 戻っておいでぇ! お昼にするよぉ!」

 ガルーラが花畑に向かって声をかけると、花畑の隙間から黄色い耳が立ち上がるのが見える。その直後、一匹のピカチュウが花畑の中から顔を出した。

「はぁい、今行きまぁす! シフォン、ご飯食べに行くよっ」
「うんっ! シフォンお腹すいたぁ」

 ピカチュウに声をかけられて、花畑からピチューも顔を出す。

「リュカ兄ちゃん、早く行こっ!」
「あっ、待ってよシフォン!」

 いち早く花畑の中をかけ出したシフォンを見て、リュカも慌ててその後を追いかけていった。その途中で、リュカはふと空を見上げて立ち止まる。

(……そういえば、お父さんとお母さんがいなくなって、もうすぐ一年だなぁ……)

 いつしかリュカは、自分達がガルーラハウスに来ることになったいきさつを思い出し始めていた……。

―2―
 
 二匹がガルーラハウスにやってくる一週間程前の事……その日は、朝からひどい雨が降り続いていた。

「雨ひどいねぇ、ママ」
「そうねぇ……今日は皆で一緒に木の実を獲りに行こうと思ってたのに……」

 シフォンが窓際で外の様子を見ながら、後ろで昼食の準備を進めているライチュウへ声をかける。ライチュウは残念そうな表情でシフォンに答えた。

「木の実が地面に落ちなきゃいいが……今年は少し出来が悪いようだしなぁ」

 葉っぱの上に座っているバクフーンは少し心配そうな表情でつぶやく。

「悪くなってなければ木の実ジュースにでもすればいいわよ、それよりもお昼にしましょうか。リュカ、そこのリンゴ持ってきてくれる?」
「はぁい」

 ライチュウに言われて、リュカがリンゴの入ったかごを持ちあげる。そのすぐ後、家の扉を誰かが叩いた。

「あら? 誰かしら……悪いけど誰か出てくれない?」
「俺がでるよ」

 手が離せないライチュウの声に、バクフーンが答えて立ち上がる。少しして扉をバクフーンが開けたとたん、中に傷だらけのエーフィが倒れ込んできた。

「お、おいあんた!? どうしたんだ一体!?」

 突然の事に驚きながらも、バクフーンは倒れ込んできたエーフィを慌てて支える。バクフーンの声に何事かとライチュウ達も集まってきた。

「きゃあっ!? ど、どうしたのその子!?」
「とにかく手当てが先だ! リュカ、救急箱持ってこい! シフォンは店からオレンのみを取ってくるんだ!」
「う、うん分かった!」
「は、はぁい……」

 のどかなお昼ごはんの風景は、一転してあわただしく変わっていった。

―3―
 
「う、うぅん……」
「あ、気が付いたよお母さん」

 エーフィの寝ているそばで様子を見守っていたリュカが、いち早く気がついてライチュウへ伝える。

「こ、ここは……? いたっ……」
「まだ寝てなきゃだめだ、ひどい怪我なんだから……」

 起き上がろうとしたエーフィをバクフーンがなだめて寝かせなおす。少しして、ライチュウがオレンのみを持ってきた。

「はい、オレンのみよ。元気になるわ」
「……ありがとう」

 エーフィはオレンのみを受け取ると、ゆっくりと食べる。食べ終わったエーフィの表情は、少しだけ和らいだ。

「私はリオッシュ、こっちは妻のコカリナに子供のリュカにシフォンだ。よければ、一体何があったのか聞かせてくれないか?」

 リオッシュと名乗ったバクフーンは、エーフィに事情をたずねる。エーフィは、少し間を開けてゆっくりと話し始めた。

「詳しくは……話せませんけど……私はある研究のために各地を回っているんですが、その研究を悪用しようとする連中がいて……これまでにも何度か私の研究を奪おうとしてきたんですが……」
「じゃあ、その怪我はそいつらにやられたってこと?」
「はい……どうやら強い用心棒をやとい入れたらしくって……これまでは上手く逃げきって来れたんですけど、今回はそうもいかなくて……近くにあったこの家に……」

 エーフィはそこまで言いおわると窓の外に目を向ける。外は相変わらず雨が降り続いていた。

「助けてくれてありがとう。……でも、私がここにいちゃ皆さんに迷惑が掛かっちゃいますから……出ていきますね」
「そんな怪我してちゃ無理よ、あなたをつけ狙う連中に見つかっちゃ逃げきれないわ」
「私達の事なら心配しなくていい。とにかく今は怪我を治すんだ、いいね?」

 出て行こうとするエーフィを、コカリナとリオッシュは引きとめる。元々、こういった状況に出くわすと無視することはできない性格の二匹にとっては、今の状態のエーフィを送りだすことなんか到底できなかった。

「で、でも……」
「大丈夫だよっ! パパもママも強いんだから、ねぇリュカお兄ちゃんっ」
「うんっ、それに外はすごい雨が降ってるから雨がやむまではここにいなよ」

 戸惑いを見せるエーフィに、リュカとシフォンが笑顔で話しかける。家族の気迫に押されぎみになったエーフィは、本意ではないものの動けるようになるまではこの家族の世話になることにした。

―4―

 エーフィがリュカ達の家に身を寄せて五日が過ぎた。リオッシュは何者かに追われているというエーフィを守る為に、エーフィが迷い込んできた日の翌日から営んでいる木の実屋を閉めていた。エーフィは相変わらずリュカとシフォンに対しては自分の事を多くは語ろうとしないものの、会話の合間に笑顔を見せる程度には親密になっている。エーフィの怪我もだいぶ良くなり、食事の準備を手伝ったり部屋の掃除を行えるまでには回復していた。

「パパ、ママ、お姉ちゃん、おやすみなさぁい」
「おやすみなさい」
「うんっ、おやすみなさいシフォンちゃん」

 夜も更け、就寝の挨拶をするリュカとシフォンにエーフィは笑顔で返事を返す。

「あぁ、おやすみ」
「リュカもシフォンもおやすみ、いい夢が見れますように」

 エーフィと一緒に部屋の中心に座っているリオッシュも笑顔を見せながら声をかける。コカリナはリュカとシフォンのそばに歩み寄り、そばにしゃがみ込むと二匹の額に優しくキスをした。寝室に向かう二匹を見送ったコカリナが、リオッシュとエーフィのそばへ移動して座る。

「……それで、やっぱり昨日話してくれたことは……」
「……はい、本当の事です」
「そうか、君もいろいろと大変だったんだな……」

 子供たちがいなくなった部屋の中で、三匹はいつになく神妙な表情で話し始めた。

「ごめんなさい、私があの時この家に来なければこんなことには……」
「もう言わないで、たしかにつらい決断だけど……あの子達を守る為だもの、仕方ないわ」
「リュカ達にしばらくつらい思いをさせてしまうことになるのだけが申し訳ないが……」

 三匹の話はその後もしばらく続いた。窓の外にはただ、静かな闇が広がっていた。

――――――――――
「……じゃあ、この子たちの事をお願いします」
「えぇ、この私にどぉんと任せときなさいな!」

 翌日、リオッシュ達はリュカとシフォンをガルーラハウスに連れて来ていた。若干戸惑い気味のリュカとシフォンのそばに立つリオッシュとコカリナは旅支度を整えている。リオッシュの言葉に、ガルーラが自分の胸を叩きながら元気よく答えた。

「ごめんね、これからパパとママはエーフィのお姉ちゃんをおうちまで送っていってあげるからここで待ってて欲しいんだ」
「え~、やだやだシフォンも一緒にいくぅ!」

 コカリナの言葉に、シフォンは駄々をこねている。その横で、リオッシュがリュカの頭に手を当てながら顔を見つめていた。

「お前達を一緒に連れていくわけにはいかないんだ。……わかるな」
「うん……」

 リオッシュの言葉に、少しさみしそうな表情を浮かべて静かにうなずく。リオッシュは、黙って笑いかけるとリュカの頭を軽くなでて立ち上がった。

「よし、そろそろ行こう」
「なるべく早く戻ってくるからね」

 そういい残して、リオッシュ達は旅立っていった。泣きじゃくるシフォンをなだめながら、リュカは両親とエーフィの後ろ姿をガルーラと一緒に見えなくなるまで見送っていた。

――――――――――
「……ちゃん……リュカ兄ちゃんっ!」
「え?」

 自分を呼ぶシフォンの声に気がついて、リュカが我に返る。シフォンの方へ目を向けると、自分をきょとんとした表情で見つめるシフォンの顔があった。

「どうしちゃったの? ボーっとしちゃって……早くご飯食べに行こうよぉ、皆待ってるよ?」
「あ、うん、ゴメン」

 シフォンに促され、リュカは小走りでガルーラの待つ小屋へと向かっていった。

―5―

 ある日の昼下がり、ガルーラハウスに一匹のウインディが来ていた。ガルーラに何か紙を渡していろいろと話している。

「……では、くれぐれもお気を付け下さいっ」
「えぇ、ご苦労さま」

 ウインディは一礼すると、その場から走り去っていく。それを少し見送った後、渡された紙を見つめながら少し不安そうな表情でガルーラが戻ってきた。

「怖いわねぇ……」
「どうしたの?」

 ガルーラの様子を見て、リュカが問いかける。ちなみにシフォンはガルーラハウスに身を寄せているポケモン達とお昼寝中だ。

「いやねぇ、最近この近くに住んでるポケモンがいなくなる事件が何件か起こってるらしくってねぇ……物騒になったもんだねぇ」
「いなくなるって……誰にもなにも言わないで?」
「だから事件になってるんだよ……子供がいなくなったってとこもあるらしいわぁ……皆無事だといいんだけどねぇ……」

 ガルーラはウインディに渡された紙をじっと見つめたままため息をつく。少しして、紙を机がわりの切り株に置きながらリュカの方に視線を向けた。

「リュカ達も気をつけておくれよ、あんた達に何かあったら私はあんた達の両親に顔向けできないからねぇ」
「うんっ、気をつけるよ」

 ガルーラを心配させないようにと、リュカは真剣な表情で大きくうなずいた。

――――――――――
 翌日、ガルーラハウスにいるポケモン達は近くの山にやってきていた。ガルーラハウス恒例の木の実採りである。山の中腹にある木の実の森には、今日も多くの木の実が実っていた。

「それじゃあ皆、私の目の届かない場所には行かないように! いいわねぇ!」
「「「はぁい!!」」」

 ガルーラの呼びかけに元気よく返事したポケモン達はそれぞれ目当ての木の実を採り始めていた。リュカとシフォンも楽しそうに木の実採りを楽しんでいる。

「……あれ?」

 シフォンが、大きなオレンの木に登ってオレンの実を集めていた時の事だった。

「シフォン、どうしたの?」
「リュカ兄ちゃん、シフォン達以外にも木の実集めに来てるポケモンいるんだね」

 そばに駆け寄って声をかけたリュカに、シフォンが指をさしながら答える。リュカがその指の先に目を向けると、確かに見慣れないポケモンが数匹集まっているのが見えた……だが、その様子はどう見ても木の実採りに来ているようには見えなかった。

「う~ん……でもあのポケモン達どう見ても……って、シフォン?」
「おーい」

 リュカが気がついた時には、シフォンは見つけたポケモン達の方へ歩み寄っていた。リュカが慌ててその後を追いかける。

「ん、なんだこいつは?」
「アナタ達も木の実集めにきたの?」
「ちょっとシフォン!」

 シフォンに気が付いたポケモン達が少し険しい表情でシフォンを見つめる。そこにリュカが慌てて飛び出してきた。

「駄目じゃないか、他のポケモンの邪魔しちゃ!」
「え~、でも皆で集めたほうが楽しいよぉ?」

 少し焦り気味のリュカに対し、当のシフォンはきょとんとした表情で答える。

「邪魔しちゃってごめんなさいっ! ボク達は戻りますから……行くよ、シフォン」

 ポケモン達に頭を下げて謝ると、リュカがシフォンを連れてその場から離れようとしたときだった。

―6―

「おい、ちょっと待て!!」

 その場から離れようとするリュカ達の前に、一匹のグラエナが行く手をさえぎるように立ちはだかる。リュカは体をびくんとさせて立ち止まった。

「悪いが、はいそうですかと返すわけにはいかないんだよなぁ」

 一緒にいたゴーリキーが指を鳴らしながら後ろから近づいてくる。リュカはとっさにシフォンを守るように抱え込んだ。

「痛い目見たくなかったらおとなしく一緒に来てもらおうか」

 別方向からはクリムガンも両手を広げながら近づいてきている。リュカ達をすっかり取り囲んだ三匹に、リュカがシフォンを守る為に動き出そうとした時だった。

「リュカ兄ちゃんをいじめるなぁ!!」

 突然、リュカを振り切って飛びあがったシフォンが[ほうでん]を繰り出す。不意をつかれた形のグラエナ達はまともに電撃をくらってしまった。

「うぎゃぁぁぁっ!?」
「ばばばばばっっ!?」
「うおっ!?」

 グラエナとゴーリキーは突然の電撃でしびれてしまったが、クリムガンはタイプの相性的にひるんだ程度である。[ほうでん]を終えたシフォンはその場で目をまわして倒れ込んでしまった。

「ふみゅぅぅぅ……」
「あっ、シフォンっ!?」

 目をまわしたシフォンを、リュカが慌てて抱き起こす。そのそばに地面を強く踏み締めながらクリムガンがやってきた。

「この……ガキぃっ!?」
「ひっ!?」

 怒りに震えたクリムガンが腕を振り上げる。リュカがシフォンを抱きよせながら目をつぶったその時だった。

「やめなさぁいっ!?」
「ぐはぁっ!?」

 すぐ近くの茂みから飛び出してきた影が、クリムガンの横顔に思いっきり蹴りを入れる。怒りで周りが見えなくなっていたクリムガンはまともに蹴りをくらって吹き飛ばされた。リュカがおそるおそる目を開けると、目の前に一匹のビリジオンが華麗に着地するところが見える。

「キミ達、大丈夫? 怪我してない?」
「……あ、うん……」

 目の前の展開について行けず、リュカはぽかんとしながらもビリジオンに返事を返す。そこへ、茂みからさらにエモンガとノコッチが飛び出してきた。

「ビリジオン! あいつらは?」
「ほら、あそこよ」
「あれぇ? もうカタがついてんのかよぉ」

 息を切らしながらたずねるノコッチに、ビリジオンはすでにのびて倒れているクリムガン達を指しながら答える。クリムガン達の様子を見たエモンガは戦いを想定していただけに拍子抜けした様子でつぶやいた。

「リュカ! シフォン! 大丈夫かいっ!?」

 そこに慌てたようにガルーラが飛び出してくる。ビリジオン達は飛び出してきたガルーラにとっさに身構えた。

「あ、ルナおばさんっ!」
「シフォンは……ただ目をまわしてるだけみたいだね……やっぱりさっきの電撃はシフォンのだったんだねぇ、とにかく二匹とも無事でよかったよ」

 ルナと呼ばれたガルーラはリュカ達の様子を確かめた後、緊張が解けたように胸をなでおろす。その様子を見ていたビリジオン達は、敵ではないと判断して構えを解いた。

―7―

「助けてくれてありがとうっ!」
「ありがとうっ!」

 リュカとシフォンがビリジオン達にお礼を言う。当のビリジオン達はノコッチだけが少しだけ恥ずかしそうだった。

「おたずね者を捕まえることも探検隊の仕事だから気にしないで。それに、ほとんどあなたが倒しちゃったんだから今日のヒーローはシフォンちゃんよ」
「え、えへへ……」

 ビリジオンは笑顔でリュカ達に答える。ほめられたシフォンは照れくさそうに自分の耳を触った。

「ホントにありがとうねぇ、この子達に何かあったらリオッシュさんとコカリナさんに合わせる顔がなかったよ」

 ルナが笑顔でつぶやいた言葉に、ビリジオン達は驚いたように目を見開く。

「え、リオッシュとコカリナって……じゃあキミ達が二匹が話してた兄妹だったんだね!」
「ビリジオンさん達、パパとママの事知ってるの!?」

 ノコッチの言葉にシフォンが目を輝かせる。

「知ってるも何も、俺達の仲間のエーフィを助けてくれた大恩人だよ。今は俺達のパラダイスにいるけどな」
「じゃああのエーフィのお姉ちゃん、アナタ達の仲間だったんだぁ」

 エモンガがシフォンに答えると、それを横で聞いていたリュカは両親が無事であることを知って胸をなでおろす。

「あなた達の事、とても気にかけていたわ。大丈夫、もうすぐ会えるわよ」
「もうすぐ会えるって……どういうこと?」

 ビリジオンの言葉にリュカが問い返す。ビリジオンは笑顔のままで続けた。

「エーフィが誰かに追われてたって言うのは知ってるわよね。実はこの間、エーフィを追いかけ回していたおたずね者を捕まえる事ができたの」
「お前達にも危険が及ぶかもしれなかったからリオッシュ達にはパラダイスに残ってもらってたんだ」
「でももう皆が襲われる心配がなくなったから、リオッシュ達は今キミ達を預けたガルーラハウスに向かってるとこだと思うよ。もちろんエーフィも一緒にね」

 ビリジオン達の話を聞いて、リュカとシフォンの表情が一気に明るくなる。

「やったぁ!! リュカ兄ちゃん、パパとママ帰ってくるんだ!!」
「うんっ、また皆で一緒に暮らせるんだね!」
「本当によかったねぇ……リュカもシフォンも、元の生活に戻れるんだねぇ」

 お互いに手を取り合って二匹は喜びの声を上げる。その様子を見ていたルナは目に浮かんだ涙をそっとぬぐった。

―8―

 それから数日後、ガルーラハウスの前でリュカとシフォンが首を長くして両親の到着を待ちわびていた。前日にペリッパーがリオッシュからの手紙を届けてくれて、それによると今日にはガルーラハウスに到着することと、今までずっと手紙を送れなくてすまなかったという一文が書かれていたからだ。

「パパとママ、まだかなぁ……」
「お昼頃には迎えに行くって書いてあったからもうすぐだよ」

 そわそわと落ちつかないシフォンをなだめながら、リュカも両親の到着を待ちわびていた。やがて、一年前に両親の姿を見送った道の先に影が三つ見える。

「あっ!!」
「パパ!! ママ!!」

 遠くに影を見つけたシフォンが思わず走り出すのとほぼ同時に、リュカも自然と飛び出していた。少し遅れて、遠くに見えていた三つの影もリュカ達に向かって走り出す。やがて、道の真ん中でコカリナとシフォンが目に涙を浮かべながらお互いに抱きついた。

「ママっ、ママぁ!!」
「シフォン! ごめんねっ、さみしかったよねっ!!」

 自分の胸の中で泣きじゃくるシフォンを、同じくあふれる涙を抑えきれないコカリナは強く抱きしめた。やや遅れて、リュカも涙目になりながらリオッシュへ抱きつく。

「パパ! おかえりなさいっ!」
「あぁ、さみしい思いをさせてすまなかったな、リュカ」

 リオッシュもまた、目を潤ませながら抱きついてきた我が子を優しく抱きしめる。その様子を、少し離れた位置でエーフィがつられて目にあふれた涙をぬぐいながら見守っていた。

――――――――――
「お世話になりましたっ!」
「なりましたっ!」

 ガルーラハウスの前で、リュカとシフォンが深く頭を下げる。ルナは笑顔でリュカ達を見つめていた。

「またいつでも遊びにおいで、おばちゃんいつでも歓迎するよっ」
「本当にありがとうございました」

 コカリナがルナにお礼をいいながら頭を下げると、リオッシュは合わせるように目をつぶって静かに頭を下げた。そうしてルナと別れてガルーラハウスを後にすると、久しぶりの我が家へ帰りながらリュカがエーフィに話しかける。

「ねぇ、エーフィのお姉ちゃん」
「ん? なぁにリュカ君」
「ボク決めたんだ、お姉ちゃんやお姉ちゃんの仲間みたいに立派な探検隊になりたいっ!」

 きっとキミならなれるわよ。満面の笑みで答えてくれたエーフィの表情が、いつまでもリュカの心に残っていた。

~fin~


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Last-modified: 2017-10-21 (土) 09:42:15
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