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僕は恋をしたことがない

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作:COM


僕は恋をしたことがない    
                
恋愛(れんあい)は、人間が他人に対して抱く情緒的で親密な関係を希求する感情で、また、その感情に基づいた一連の恋慕に満ちた態度や行動を伴うものである。
フランス語のamour、英語のlove, falling in loveの翻訳語。恋とも。

                                          Wikipediaより引用


「やっぱり調べて出てくるわけがないか…。」
そんな独り言をポツリと呟き、普段あまり使わないパソコンの画面とにらめっこをしていた。
僕の名前はタツ。
普通の高校に通う、ごく普通のフタチマル。
そこそこ勉強ができ、そこそこ運動ができ、何においても普通かそれよりちょっと下ぐらいのポケモンだ。
なぜ僕がこんなことをしているのかというと…。
遡ること今日の放課後、いつものように僕は友達のノブとチャオとくだらない話をしていたんだ。

「アハハハハ!マジかよそれ!嘘だろ?」
「いやいや、これがホントなんだって。嘘と思うなら試してみ?」
ジャノビーのノブとチャオブーのチャオが楽しそうに教室の隅の席に集まって談笑していた。
既に教室にポケモン達はほとんど残っておらず、みな部活に行ったり家に帰ったりしていた。
今日は掃除当番だったため僕は少し遅れてその会話に参加することになった。
「ごめんお待たせ。今なんの話をしてたの?」
楽しそうな二人の会話が少し気になり、自分が新しい話題を持ってくるのではなくその話に入ることにした。
僕が会話に入ってきたことに気が付くと二人は笑ったまま僕に話しかけてきた。
「ああ、聞いてくれよ。チャオのやつチョコレートは媚薬になるから、今度好きな女性に使うって言ってんだぜ?」
ノブはあからさまに信じていない風な口調でそう言い、
「いやいや!ネットで見つけたんだぜ?それでうまくいったって奴もいるしこれならいけるって!!」
それに対してチャオは真剣な顔をしてそう主張していた。
あまりにも真面目な顔でそういうものだからノブは今にも座ってる机から転げ落ちそうなほど笑ってるし、僕もその気迫があまりにも可笑しくて笑ってしまった。
一通り笑い、ようやく落ち着いた時、落ち着いてその話題について話し合っていた。
要するにチャオが「好きな人がいる。」と言い出し、そこでノブがどうやって告白するのか聞いたところ、その情報を出したということらしい。
なんでもノブ曰く、あまりにも自信を持って言ってきたから逆に笑えたそうな。
そのまま話は続き、みんなの好きな人を言い合うという学生ではよくありがちな話題へと変わっていった。
その時だった…
「そういえばタツ。お前って好きな女性は誰なんだよ。まだ俺たちにも話してないだろ?」
ノブが何気ない気持ちで僕にそう質問してきた。
そこで僕は気付かされることになった。
「好きな人…好きな人……まだ好きになった人なんていないや。」
僕がそう笑いながら言うといつものように笑って答えるはずの二人が、静まり返っていた。
「え…!?嘘だろ?」
「いやいやいや…流石に一人ぐらいは…。」
あまりにも長い静寂、二人にとって僕が一度も恋をしたことが無かったのはそれほどの衝撃だったようだ。
石のように固まり、人をまるで世紀末の訪れでも見るかのような目で呆然と見ていた。
二人の反応が意外過ぎて、むしろ僕の方が驚いてしまった。
「タツ。流石にそれは冗談抜きでやばいぞ!」
「恋したことないって…今年の夏休みどうするんだよ!俺らももう彼女と遊びに行く話してたんだぜ?」
「お前はまだ決定事項じゃないだろ!まあ、そう言う感じで今年の夏は遊べるのも最後だし、思い出でも作ろうかなと思ってたんだよ。」
恐らく、世間一般から見れば僕のようなポケモンが居てもなんらおかしくないのだろうが、彼らにとっては天地がひっくり返ってもあってはならないことだったようで…。
長いこと熱弁されるうちにそれが普通、そうじゃなきゃおかしい、そう思い込んでしまった。
そこで洗脳されきった僕は家に帰りながら必死に悩んでいた。
恋をしたことがないのは普通じゃないと。

そして…僕は恋をしたことがないと…。



おおよそのあらすじはこんなところ。
そしていつもは家に帰るとテレビを見るのだが、今日はどうにか女性と恋をする方法を知りたくて現在に至る。
「恋」なんてキーワードで出てきた最初の項目が一番最初の文だった。
ちょっと冷静になって考えれば分かるのだが、その時の僕には恋をしたいという思いで溢れ返っていた。
悶々とした思いで数時間ほどパソコンに向き合い、鬱屈としたその思いから頭を掻きむしり、諦めてベッドに飛び込んだ。
考え込み過ぎて熱くなった頭を冷やそうと、少し横になることにしたが気が付くと夢の世界へ飛んでいってしまっていた。
でも、それが逆に良かったのかもしれない。
次の朝、いつものように起きて朝食を食べ、学校に向かったが、おかげで考え方も変わっていた。
『自然体で行こう。好きな女性に、とりあえず声をかけてみよう。』
そんな軽い思いだが、とっても大事な恋の一歩を思い出した。



学校に着くととりあえずゆっくりとし、クラスの女子が集まるのをいつものように本を読みながら教室の隅の僕の席で読んでいた。
実を言うと一人だけ心当たりがあった。
クラスにいるエルフーンの女の子、エルさんと話していた時だけはとても楽しい気分になれたんだ。
とても小柄で、茶褐色の艷やかな肌、いつもきれいに整えられた真っ白の綿毛、そしてその中に映える美しく煌めく赤い瞳、どれをとっても僕には彼女がとても可愛らしく思えた。
いや、もう寧ろ愛おしい程に!狂おしい程に!!
「どうしたの?」
ふと気が付くと、すぐ横にはエルさんが立っていた。
いつの間にか結構時間が経っており、クラスの人達はほとんど集まっていた。
そんな中で僕は本に顔をうずめてブンブンと振ったり、顔を赤くしたりした挙句、最後には急に立ち上がってしまっていたそうだ。
ガタンと椅子を後ろに吹き飛ばして立ち上がった僕を不思議に思い、隣の席に座っていた彼女が話しかけてしまっていたのだ。
実は彼女は僕の隣の席、クラスでもとても明るくて優しい子だ。
そんな変な行動をとっている僕を見ても優しく接してくれて、そう思えばなお顔は赤く染まってしまい…。
「い、いや…その……えっと…。」
淡い青色の顔が真っ赤になるほど緊張し、しどろもどろに喋っていた。
しかし、何を思ったのか僕はいろんな思いを全部振り切り
「好きです!!付き合ってもらえないでしょうか!!」
言ってしまった……。
全力で礼をし、ただ自分のやってしまったことを全力で後悔しながら、その公開処刑にも似た重苦しい空気をただひたすらと噛み締めていた。
長い沈黙のように感じたその時間。
無限に続いてしまいそうな時間をただひたすら諦めながら返事を待っていた。
「え、えっと……いいんですか…?私なんかで……。」
返って来た返事は僕が予想していたものとは違い、心底驚いていた。
びっくりして顔を見ると、彼女もまた顔を真っ赤にして答えていた。
「え…!えっ…!?」
唐突な愛の告白をした僕に対し、軽蔑の眼差しを送るでもなく、彼女はむしろ麗しい瞳をこちらに向けていた。
まさか両想いだなんて夢にも思うだろうか。
僕の何処を好きになったのかとか、いつからそんな思いがあったのかとか…色々と考えが巡っていたけど。
今は嬉し過ぎて恥ずかし過ぎて…ただどよめく教室の隅っこで何も喋らずに不思議な愛の告白は終わっていた。
僕達の反応を伺ってか、みんなはすぐに僕を取り囲む訳でもなく、若干のどよめきは残したままいつもの教室の風景へと戻っていた。
ただ一つ、顔を真っ赤に染めた二人のポケモンを除いて。



最後の夏、最初の恋の行方は見事に実を結び、初々しいカップルはさんさんと陽の光が降り注ぐ浜辺に遊びに来ていた。
「私、あんまり泳ぐの得意じゃないんだ。」
「大丈夫だよ。僕が教えてあげる。」
僕はエルとそんな会話をしながらノブ達を待っていた。
折角の機会だし、彼女も人が多いほうが楽しいからと喜んでいた。
様々なカップルや家族で賑わう浜辺で他愛もない話をして待っていると、少ししてノブ達がやってきた。
「よー。待たせたか?」
「ちょっとだけね。隣の人は?」
「ああ、紹介するよ。この人が俺の彼女のミミロップのミミだ。」
ノブの横には彼より少し背が高いぐらいの美しい女性が立っていた。
「初めまして!ミミです。よろしくね!」
そのミミという子は元気良く二人に挨拶してきた。
二人でつられて元気に挨拶をしかえし、少しお互いの自己紹介や馴れ初めを話した後、ノブが
「それじゃ、早く泳ごうぜ!」
そう切り出してきた。
「えっ!チャオは?」
僕の質問に対し、ノブは首を横に振っていた。
なんでも本当にチョコレートの効果を信じきり、好きな女性に対して使ったそうだ。
しかし、効果は裏目に出てしまった。
その女の子は甘いものが大の苦手で、チョコを送ったチャオに平手打ちをして去っていったそうな。
そんなわけで、結局二組のカップルしか揃わず、彼は今も必死に女性を振り向かせようと努力しているのであった。
僕の初恋は不思議な形で進んでいきましたとさ。


お名前:
  • >>オレさん

    感想ありがとうございます。
    そうですね、確かに今回は焦って書いてしまいました。
    短編自体あまり書いていないのと恋愛モノ(と勝手に解釈)は初めてだったのが大きいですね
    今度機会があればもっと深くまで書き込めるようじっくり推敲してみます。
    ――COM 2012-07-09 (月) 17:33:31
  •  今回の大会の作品すべてに感想を送らせていただいております。唐突に失礼します。

     表情やしぐさがある程度描かれているところは良かったと思いますが、展開の急さは少々わかりづらくなる部分がありました。短編だから仕方ない部分はありますが、今までどうなって感情を抱くようになったか等の過去がないためか、今一つ踏み込めなかった気がしました。見ていて文字数的にはまだまだ余裕はあったはずなので、その辺りはもう少し挑戦しても良かったような気がします。

     今後どのような作品が出るかを見ていこうと思います。
    ――オレ 2012-07-08 (日) 22:39:38

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Last-modified: 2012-06-30 (土) 00:00:00
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