名も無き人間
皆様お久しぶりです!名も無き人間です!
もう忘れ去られているとは思いますが戻って参りました。
「直ぐゴハンにするから待っててね。大好きな木の実を一杯使うからね。」
「フィ! エ~フィ!」
中に入ると僕は真っ先に台所へ向った。お昼ご飯を作る為にね。
今朝は急いで家を出たから何も食べてないから、結構お腹が減ったんだ。
エーフィに直ぐにご飯にするって伝えて、僕は袋の中の木の実を取り出した。
買った木の実はエーフィの好きな物ばっかりだったから嬉しそうだったよ。
ご飯と言っても、木の実とポケモンフードだけなんだけどね。
僕は簡単にパンを焼いてから目玉焼きを作って、サラダも用意した。
何か朝ご飯みたいだけど、いつの間にか作っちゃったんだよね……
「エーフィ、出来たよ。はい、一杯食べるんだよ。」
「フィ~……エ~フィ~……」
「こらこら、くすぐったいよ! それじゃ…いただきまーす!」
「エ~フィ~!」
僕の朝御飯をテーブルに運んでから、エーフィのご飯を運んであげた。
エーフィは普段ポチエナが過ごすマットの上で寛いでたよ。
目の前に置いて撫でてあげると、エーフィは嬉しそうに顔を舐めてきたんだ。
このままじゃ顔を洗わないとご飯が食べられないから、直ぐに顔を離した。
そして食べる前の挨拶をしてから、少し早めのお昼ご飯を済ませたんだ。
それから暫くは二人でじゃれ合ったりして遊んでた。
「まだこんな時間か~……良い天気だし公園にいこっか?」
「エ~フィ!」
ふと、時計を見るとまだ時間は一時を過ぎたばっかりだったんだ。
このまま家でゴロゴロしてても仕方ないから、僕はエーフィを公園に誘った。
エーフィは少し眠そうだったけど、笑顔で頷いてくれた。
それを確認した僕はエーフィの水と木の実を持って、公園に向ったんだ。
平日だから子供は居なかったけど、それでも疎らに大人がポケモンと遊んでいた。
「う~ん……やっぱり晴れた日の公園は気持ち良いな~……」
「エ~フィ~…フィ~……」
「エーフィも気持ち良さそうだね。来て良かった。」
僕は近くのベンチに腰を下ろして暖かな陽気を楽しんでいた。
エーフィも隣で大きく伸びをして居眠りを始めたんだ。
暫く座ってると、向こうから小さなボールが転がって向かって来たんだ。
そしてそれを追って向ってくるポケモンも。
「っ!? ……レ…オ……?」
「コン?」
そのポケモンは良く見慣れた姿だった。アイツと同じロコンだったから。
勿論、ロコンがパートナーの友達も何人か居たよ。
だけど今居るロコンは……アイツ…レオにソックリだったんだ。
瞳の色…少し茶色に染まってる前髪…そして……何より表情がソックリだったんだ。
今まで色んなロコンを見て来たけど…こんなに似てるのは初めてだった。
「すいませ~ん! つい手元が狂ってしまって~!」
「……。」
「あの~? ロコンが何か?」
「あ…すいません。前にパートナーだったロコンとあまりにも似てたので…つい。」
少ししてからロコンの飼い主が走って来たんだ。ボールの投げっこをしてたんだね。
けど僕はロコンを見たまま気付かなかったんだ。
するとその人は首を傾げながら僕を見てきたんだ。ずっと見てたから気になったのかも。
僕はハッとして、前のパートナーに似てたと伝えたんだ。
「そうだったんですか……それで、今はそこのエーフィがパートナーなんですか?」
「あ、このエーフィは友達のポケモンで、一日だけ交換してるんです。」
「そうですかぁ……あなたのロコンを見たかったけど、残念だなぁ。」
「いえ……もう居ないんです。ある事故に巻き込まれて……」
それを話すと納得してくれたみたいで、隣の椅子にロコンと座ってきたんだ。
そして眠ったままのエーフィをパートナーかと聞いてきた。
僕は一日だけ交換している事を伝えて頭をそっと撫でてあげたんだ。
するとその人は僕のロコンを見たかったと言って残念そうにした。
勿論その人は知らない人だったから過去の事も知らないのは当然。
僕はもうロコンが居ない事を伝えたんだ。
「あ……ごめんなさい! 辛い事言ってしまって……」
「いえ、良いんです。……あの、ロコンを抱っこしても良いですか?」
「良いですよ。良いよねロコン?」
「コン!」
僕がそれを言うと、その人は直ぐに謝ってくれたんだ。頭を下げてね。
だけど僕は首を横に振って気にしないようにって伝えた。
そしてロコンを抱っこして良いか聞いてみたんだ。
するとその人は直ぐに頷いてくれて、ロコンも笑顔で返事をしてくれた。
そしてロコンは僕に飛び込んできたんだ。
「ロコン、抱っこ大好きだもんね~。ふふ、甘えん坊なんだから。」
「アイツも抱っこが好きだったんです。良く飛び付いて来ました。」
「そうだったんですかぁ。……あ、そろそろ帰らないと、仕事があるので。」
「お引止めしてすいませんでした。またねロコン。」
「コン!」
その様子を見ると、笑いながらロコンは抱っこが好きだという事を教えてくれた。
やっぱりって思った。レオも抱っこが大好きだったから。
その事を伝えると驚いた様子だったけど、時計を見ると時間だと言ったんだ。
見た感じ会社員みたいだったからお昼休みに来たのかな。
僕はその人に挨拶をしてから、ロコンの頭を撫でてあげた。
ロコンは笑顔で返事をしてくれると、二人は公園を後にしたんだ。
「レオの筈無いのに…何で…こんな気持ちになるんだ……レオ……」
「フィ~……! ……フィ?」
二人を見送ってから、僕は複雑な気持ちになってたんだ。
昔の僕が背負っていた気持ちが少し出た様な…そんな感情が。
何度頭を振っても、浮かぶのはレオの顔。もう迷わない筈だったのに……
「エ~フィ~?」
「ごめん……帰ろう。」
「フィ……? フィ~……」
いつの間に起きたのか分からなかったけど、エーフィが心配そうに覗き込んできたんだ。
多分ずっと寝てただろうから知らなかったんだね。
僕はエーフィに帰る事を伝えると、歩き始めたんだ。
エーフィも心配そうな表情のままで、僕の横に付いて歩き始めてくれた。
家に帰ってからも僕はさっきの事を忘れられずにいたんだ。
今までロコンを見て来たけど、あんなに似てるロコンは初めてだったから。
「ごめんねエーフィ。僕から公園に誘ったのに……」
「エ~フィ!」
「ごめん。少しだけ…一人にしてくれないかな?」
「……。」
僕は傍に座ってたエーフィに謝ったんだ。誘っておいて直ぐ帰って来たからね。
だけどエーフィは笑顔で返事をしてくれてジャレ付いてきたんだ。
いつもなら遊びたい所だけど、今はそんな気になれない。
だから僕はエーフィに一人にしてくれって伝えたんだ。
するとエーフィは無言のまま目を瞑ったんだ。怒らせちゃったのかな……
「まだレオの事で迷ってるの? 一度は吹っ切ったと思ったのに……」
「だ…誰!? どこに……」
「此処よ此処! 私以外誰が居るって言うのよ!」
「え…エ…エーフィが喋ったの……!?」
すると直ぐに誰かの声がしたんだ。澄んだ綺麗な女の人の声だった。
僕は直ぐに辺りを見渡した。けど誰も居なかったんだ。
するとまた声がして、エーフィが僕の足を突いて来た。
一瞬何が何だか分からなかったよ。まさかエーフィが喋るとは思わなかったから。
僕はエーフィが喋ったのかと確認したんだ。フィ? って言ってくれるのを期待して。
「当たり前でしょ! アンタがいつまでもシャンとしないから喋ってあげたの!」
「あ…あの…エーフィ…だよね? いつもジャレてくる……」
「ハァ…アンタが勝手にそう思い込んでるだけでしょ! 私は私よ!」
「……。(エーフィってこんな性格だったのか……)」
だけどエーフィは極普通…いや、人間の言葉を喋ったんだ。
その喋り方がエーフィらしくなくて、僕はもう一度聞いたんだ。エーフィだという事を。
するとエーフィは溜息をしてから自分は自分だって答えたんだ。
僕はエーフィの本当の性格を知って少し残念だったんだ。もう少し可愛いと思ってから。
「こんな性格で悪かったわね! なんならいつもみたいに甘えましょうか?」
「ごめん…そういう積りで思ったんじゃ…って何で思ってる事を!?」
「私はエーフィよ? 心を読むなんて楽勝よ。ま、普段は読まないけどね。」
「じゃあ…さっきの公園の事も……」
するとエーフィは怒った様子で、考えてた事を反論したんだ。
僕は直ぐに謝ったよ。傷付ける積りは無かったから。
けど、ふと思ったんだ。考えてた事を何で知られたのかを。
その答えはエーフィが直ぐに答えてくれた。心を読んだってね。
普段は読まないらしいけど、今は読まれたみたいだ。
僕はエーフィにさっきの公園での事も聞いてみたんだ。
「読むも何も…私はずっと起きてたわよ。ただ目を瞑ってただけ。」
「え!? そうなの!?」
「いくら公園だからといって無防備に寝たりしないわよ。襲われたらどうするのよ!」
「ま…まぁ最もだけど……じゃあ…知ってたんだ。あのロコンの事。」
するとエーフィはずっと起きていたって言ったんだ。目を瞑ってただけだってね。
僕は寝ていたとばっかり思っていたから驚きを隠せなかったよ。
そしてエーフィは安全な公園でも無防備に寝たりしないって言った。
まぁ確かに100%安全っていう保障はないからね。
僕はそれを聞くと、ロコンの事を聞いたんだ。起きてたなら知ってるはずだから。
「勿論知ってるわよ。まぁ…似てはいたけどレオじゃないわよ勿論。」
「それは…分かってるけど……」
「だったら何に迷ってるのよ? だらしないわね。アンタはそんな人間だったの?」
「……。」
勿論の様にエーフィは頷いて答えると、似てはいるけどレオじゃないって言ったんだ。
僕もそれは分かってた。だけど何故かレオの事が頭から離れなくなってるんだ。
するとエーフィは何に迷ってるのかと聞いてきたんだ。呆れた表情でね。
僕は答える事が出来ないで只、俯くしか出来なかった。
「この際だから言うわ。レオから預かった言葉を。正直、言おうか迷ったけどね。」
「レオから…預かった言葉?」
「彼が死の前日に私に遺したのよ。御主人様に伝えてくれってね。」
「そうだったんだ…レオが……それで、何て?」
少しすると、エーフィが言ったんだ。レオから預かった言葉を言うって。
勿論、初耳だったよ。エーフィが傍に居たのは知ってたけどね。
エーフィはレオが死の前日に遺したと教えてくれた。
内心怖かった。僕の事を恨んでるかも知れないって思ったから。
だけど僕はエーフィに言葉が何か聞いたんだ。
「教えてあげるから感謝しなさいよね。アンタの為じゃなくレオの為だからね!」
「うん。」
「じゃあ言うわよ。遺した言葉は……」
『僕の分まで生きて。そして新しいパートナーを愛してあげて。』
「これがレオの遺したメッセージ。これを聞いても…アンタは未だ迷うの?」
エーフィはレオの遺した言葉を言い終わるとまた迷うのかって聞いて来たんだ。
その短い言葉でも…僕にはしっかり届いた。レオの想いが。
きっとレオは予想してたんだ。こうなる僕を。
だからエーフィに新しく出来るパートナーを大事にするように伝えたんだ……
「ありがとうレオ……だけど…君の事は忘れないよ。ずっと大好きだよ。」
「ちょ、ちょっと! 私に言われても困るじゃない! だ、大好きなんてっ……」
「ごめん…嬉しくて…レオの想いが聞けて…ありがとう、エーフィ。」
「べ、別に私はアンタの為に言ったんじゃ……ま、まぁ気持ちは受け取っておくわよ。」
初めて知ったレオの想いを知って、僕は涙が出そうになってた。
だけど袖で拭ってから僕の想いをエーフィに言ったんだ。結果は見えてたけどね。
当然の様にエーフィは顔を真っ赤にして言われても困るって答えたんだ。
僕はレオの言葉を聞いてくれた事に感謝して頭を下げた。
けど、エーフィは真っ赤な顔のまま、僕の為じゃないって言ったんだ。
うん。ポケモンにもツンデレって居るんだね。ポチエナがツンデレだったら嫌だな……
「だ、誰がツンデレよ!? べ、別にデレてなんかいないんだから!」
「はいはい。でも…本当にありがとう。何か御礼しないとね。」
「気持ちだけで良いわ。私よりも、ポチエナに本当の表情を見せてあげなさいよ。」
「本当の表情?」
また考えてる事を読まれたみたいだ。ツンデレというのを完全否定してる。
まぁ…こういうエーフィも可愛くて良いかもね。
僕は軽く受け流して、エーフィに御礼をしたいって伝えたんだ。
だけどエーフィは必要ないって言って、ポチエナに本当の表情を見せろって言ったんだ。
勿論、僕は言ってる事が分からないから、聞き返したんだ。
「さっきポチエナが言ってたわ。いつも悲しげな表情を浮かべてるって。」
「ポチエナが…そんな事を?」
「えぇ。ポチエナには分かるのよ。内面の表情がね。」
「気付かなかった…ポチエナに悪い事しちゃってたんだ……」
エーフィは部活中にポチエナから聞いたって答えてくれた。
普段の中で僕がいつも悲しげな表情をしてるって言ったんだ。
まさかポチエナがそんな事思ってるなんて知らなかったから、もう一度聞き直した。
だけどエーフィは直ぐに頷いて、内面の表情が分かるんだって言ったんだ。
勿論知らなかった。自分では本当の表情を浮かべてる積りだったから。
「まぁ無理ないわ。急に出来たパートナーに本当の表情を見せるなんて難しいもの。」
「だけど……」
「大丈夫よ。表情が分からなくても、凄く優しくて温かいって言ってたから。」
「ポチエナ……」
だけどエーフィは急には本当の表情を見せられないから気にするなって言ってくれたんだ。
でも僕はポチエナに気付かないところで傷付けてしまったと思ってた。
それを察したのか、エーフィはポチエナの思っている事を教えてくれたんだ。
僕はそれだけでポチエナの優しさを知る事が出来た。
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