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健全の館

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 健全の館
作:からとり

注意:この作品は健全ですが、1行目からR-18表現を含みます。あしからず。






「わたしのおまんこ、どうお? ねぇ、エレーガくぅん……」
 甘い声で語りかけながら、仰向けになりその両手で雌の割れ目をパカっと開いてみせる1匹のエンニュート。とても健全とは思えないこの状況を目の前にしているぼくは、無意識の内にスリットからペニスを反り立たせていた。
 この世に生を受けてから、未だかつて味わったことのない高揚感が脳裏に湧き上がってくる。身体が、まるで彼女の燃えたぎる炎でオーバーヒートしてしまったかのように熱い。ただ、物心ついた頃からぼくの中に形成されていた、性行為への嫌悪感のようなものが、必死にその熱を冷却しようと抵抗を始めていた。噛み合うことのない熱気と冷気に、ぼくの心は苦しめられていた。
 そもそも、どうしてこうなった!? 本当に、どうしてこんなことに……
 数時間前には想像すらつかなかった事態に、ぼくの心は抗議するかのように激しい雄叫びをあげていた。


×〇×〇×〇×〇×


「エレーガ、今日はここに行こうか」
 そう言って、ご主人は1枚のチラシをぼくに手渡してきた。

 “~健全の館~” “進化したばかりのポケモンを、手取り足取り優しく教えます” “これであなたのポケモンも立派な成獣に!”

 怪しい……一通りチラシを読み終えた後、真っ先に浮かんだ感想がそれであった。なんか、一部の文章が黒く塗りつぶされていて読めないし……
 懐疑的な視線を向けるぼくに感づいたのか、ご主人は少し慌てたように弁明する。
「お前ずっとずっと、早く進化して立派になりたいって言ってたじゃないか。こうしてお前が必死に頑張った結果、他のポケモンと比較してもかなり早い段階で進化できたわけだしな。一生懸命なお前を見て、俺もお前が立派になれるように手助けがしたいと思ったんだよ」
 うーん。まだ腑に落ちないところはあるけれども、その必死に伝えようとしているご主人の姿に、嘘は言っていないのだろうと思えた。まあ、ぼくが立派な成獣になれるためにご主人が用意してくれた好意なのだから、ここは有難く受け取っておこうか。立派な成獣に早くなりたい! というのはぼくの本心でもあるし。


 ぼくはつい先日、”たいようのいし”を使って待望の進化を遂げた。でも、それはご主人が用意してくれた石ではなくて、ぼく自身が頑張って手に入れたもの。ご主人は”お前にはまだ早い!”と言って、ぼくに石を与えてはくれなかった。
 それでも、どうしても早く進化したかったぼくは、ご主人が大学に行っている間に街へと繰り出しては、周囲にいるポケモン1匹1匹に”たいようのいし”に関する聞き込み調査を行っていた。まるで、どこぞの探偵、いや名探偵を思わせるくらいには必死にやっていたと思う。
 幾度の苦難の末に、”たいようのいし”を持つポケモンにようやく巡り合うことができた。こちら側の事情を話した上で、彼の悩みも解決してあげた結果、無事に”たいようのいし”をゲット。晴れてぼくは進化を遂げることができた。
 ご主人が帰ってきて、新しい姿のぼくを見た時のあんぐりとした表情は今でも忘れられない。まあ、何の音沙汰もなく突然進化しているパートナーのポケモンを見たら、誰でも同じような反応をすると思うけれども。それでも、ぼくが事情を話し終えた後には、”頑張ったな、エレーガ。本当におめでとう!”と進化したぼくを受け入れて、ギュっと抱きしめてくれた。やっぱり、長年一緒に過ごしているご主人に祝福されることは多少照れくさくとも、とても嬉しいものだ。ぼくは進化の象徴ともいえるその襟巻きを目一杯広げて、喜びを爆発させた。


 ついこないだオープンしたばかりの超高層商業施設に、世界的にも有数の規模を誇るポケモンセンター。その周囲には、ポケモンと一緒に楽しめるアトラクション施設や、ポケモンが大好きなフーズを取り揃える飲食店などが立ち並んでおり、まさにトレーナーとポケモン双方が楽しい時を過ごすにはうってつけの繁華街。今回行くことになった”健全の館”はそんな繁華街……から少し離れた場所にある、人通りがほぼ皆無な薄暗い裏路地の奥にひっそりと拠を構えていた。
 ご主人に着いたぞと声を掛けられた時は、何かの間違いかとただただ呆然としてしまった。思わず、入り口付近に立て掛けてあった看板の文字に目を凝らす。

 “健全の館”

 ……間違いない。ここが”健全の館”なのか。しかし、館と名乗るには不相応な場所と外観に、抱えていた不安がさらに膨らんでしまっているのを感じていた。看板に書かれている文字にも、何だか違和感を覚えてしまうし……
「だいじょーぶだって! ちゃんと下調べもしたし、お前もここで立派な成獣になれるって」
 わざとらしいくらいに明るいトーンで語り掛け、ぼくの手を引き館の扉を開けるご主人。うう、もう事前に予約も済ませてしまったみたいだし、腹をくくるしかないのかな。何をするのか未だに分からないのだけれど、やるからには頑張らないとね。立派な成獣になるためにも。


 薄汚い外観に反して、館の中は意外と綺麗だった。建物自体は決して新しい感じはしなかったけど、清潔な管理を心掛けているという印象だ。ご主人は真っ先にカウンターへと向かい、館の管理人さんと思わしきおばあさんに予約していた旨を伝える。
「はいはい、そちらのエレザードだね。だったら、お相手はエンニュートがいいかしらね?」
「はい、大丈夫です。ではうちのエレーガをよろしくお願いします」
 おばあさんに代金を支払い、頭を下げるご主人。どうやら、手続きも無事に終えたようだ。
「じゃあ、終わる頃には迎えにくるからな。エレーガ、ちょっと大変かもしれないけど頑張れよ。逃げちゃ駄目だぞ」
 しゃがみ込んで、ぼくと顔を突き合わせてエールを送るご主人。至って真剣な表情に、ぼく自身も思わず、キュッと引き締まった顔つきにさせられた。強く頷いたぼくの様子を見て、安心したように踵を返し歩き出したご主人。手を振ってご主人を見送ると、最後に一度振り返って手を振り返してくれた。


 この時のご主人の顔は、どこかニヤついていたような気がしたけど……ぼくはまだ、その真意など知る由もなかった。


 館の主である、おばあさんに案内されてぼくはとある個室へと足を踏み入れた。”ここで少し待っていてね”とおばあさんは一言いうと、そのまま扉を閉めて立ち去ってしまった。ぼくは若干厚みのあるカーペットの敷かれた床面へと腰を下ろした。辺りを見渡してみるが、驚くほど部屋の中には何もない。あると言えるのはせいぜい、床一面に敷かれているカーペットと、奥の端に積まれているタオルくらいであった。
 しばらくして、再度扉が開く音が部屋に響く。そこから現れたのは、ぼくと同じような体躯をしている、薄黒い体色に特徴的な薄紅模様が印象的な1匹のポケモンであった。
「あなたがエレザード君ねぇ。わたしは、エンニュートのエンロ。よろしくねぇ」
「初めまして。ぼくはエレーガと言います。今日はよろしくお願いします」
 何だか、軽々しいポケモンだなあ。失礼な気もしたが、それがエンロさんに抱いた第一印象であった。それに、変な匂いも漂っているし……
 一方の彼女はぼくの身体の全身、足から頭までを念入りに見渡していた。その姿はまるで、ぼくを値踏みをしているかのように思えた。
 しばらくして、エンロさんは顔を近づけてくる。あまりにも突然の行動に、ぼくは咄嗟の反応ができずに、気がつくと彼女の顔がすぐ前に迫っていた。
「……かわいいっ」
 エンロさんがそう呟いたと認識した時には、既にぼくの口元は塞がれていた。
「ん、んんっー!?」
 エンロさんとぼくの口が重なり合っている。これは……キス!?
 そう認識すると、ぼくはすぐに彼女を引き離そうとした。しかし、2匹の口は一向に離れることはない。ぼくの頭が、彼女の両手によって強く押さえつけられていた。必死に抵抗しようと暴れるが、彼女の力は凄まじく、まるで歯が立たなかった。
 少しして、ようやくぼくはエンロさんのキスから解放される。咄嗟にぼくは数歩後退り、先ほどまで重なっていた口元を手で拭った。
「……ちょっとー、その態度は流石にないんじゃないの? お姉さん、傷つくわぁ」
「あなたこそ、いきなり何なんですか!? 見知らぬ者同士がいきなりキスなんて……破廉恥ですよ!」
「あー、もしかしてあなた……この館のことご存知ない?」
 あまりにも衝撃的な行為への動揺からか、怒鳴るような口調で反論するぼくに、どこか哀れみのような眼差しをしてエンロさんは問いかける。
「そりゃあ、知っていますよ。ここは健全の館。進化したばかりのポケモンを、立派な成獣にするために手取り足取り指導してくれる場所じゃないんですか?」
 胸を張ってそう答えたぼくの姿に、エンロさんは何故かクスッと笑い声を漏らした。何だろうこの状況は。もしかして馬鹿にされているのだろうか?
「ああ、笑ってしまってごめんなさい。あなたの言うとおり、ここはポケモンを立派な成獣へと導くお手伝いをする館よ。今やったことも、その指導の一環ではあったのだけれども」
「そんな……こんな破廉恥な行為の、どこか指導になるんですか!?」
「だってぇ、ここは性を知らずに身体だけ立派になってしまったポケモンに、一から性を教えてあげる場所なんだもの」
 その言葉に、思わず自分の耳を疑った。今のぼくからすれば、それは到底信じられるものではなかったから。
「え……すみません、もう一度言ってもらってもいいですか?」
「分かってもらえるまで、何度でも話すわ……ここは、健全の館。性行為を全く知らぬまま、あるいはコンプレックスや嫌悪感を抱きながら進化して、性機能だけが発達してしまったポケモンに、一から性を教えてあげる場所よ」
 これまでとは打って変わって、かなり真面目なトーンでエンロさんはぼくに語り掛ける。
 ぼく自身少し落ち着きを取り戻したところで、ようやく今の状況を徐々にだが理解し始めた。ただ、それは到底受け入れられるものではないのだが。
 この館の立派な成獣にするという定義は、どうやら性行為をしっかりと身につけさせることであるらしい。そうであれば、エンロさんの先ほどのキスは合点がいくものであり、彼女がぼくに非難される謂れはない。ただ、その事実を知らず、騙されたかのようにこの館へと足を踏み入れたぼくは、すんなりとその事実を受け入れることができない。そして今、思い浮かんでくるのは騙した張本人の顔であった。
 なぜ、ご主人はこのような破廉恥な場所に、わざわざチラシを偽装してまでぼくを連れてきたのだろうか。この場所での経験が立派な成獣となるための一歩になるとは、到底ぼくには思えない。ご主人に対する、疑念や怒り、そして哀しみの感情が渦巻きぼくの心を締め付けていった。


「まあ、折角ここまで来たんだし。今日は思う存分楽しみましょう。ねえ、エレーガくぅん……」
 再び、顔を寄せてきたエンロさんはぼくを誘うように声を掛ける。先ほどまでとは異なり、この場所が性行為をする場所であると知ってしまったぼくはその甘い声に、そして彼女の発する匂いに、思わずドギマギしてしまう。
「ちょっと恥ずかしいかもしれないけど聞くね。エレーガくんは、オナニーをしたことはある?」
「なっ……!?」
 いくらこの状況を理解していても、やはり今まで意図的に遠ざけていたであろう単語を出されると思わず赤面してしまい、言葉に詰まる。
「いや、聞いたことはありますけど……やったことはありませんし、そもそもやり方も分かりませんよ……」
「やっぱり、そうなのね……大丈夫! お姉さんが1から教えてあげるからねえ」
 そう言ってニッコリと微笑むエンロさん。”まずはペニスを大きくしなくちゃね”と呟くと、突然彼女はぼくの前で仰向けに寝転がり、両足を広げた。そして股座にあるであろう雌の象徴である割れ目を、両手を使ってゆっくりと広げていった。
「わたしのおまんこ、どうお? ねぇ、エレーガくぅん……」
 その、あまりにも直接的な言葉に加えて、目の前には雌の割れ目の中が、ピクピクと蠢いている様子がはっきりと見えるこの状況。未だかつて味わったことのない高揚感が脳裏に湧き上がってくる。身体全体が、まるで彼女の燃えたぎる炎でオーバーヒートしてしまったかのように熱い。気がつくと、ぼくのスリットからはペニスが、はちきれんばかりに膨張していた。
 こんな風にペニスが大きくなることは、はじめての経験であった――
 いや、駄目だ! 物心ついた頃から、形成されていた性行為への嫌悪感が、必死にそれを抑えつけようと抵抗を始める。決して交わることのない2つの気持ちが争い始め、ぼくの心は苦しめられていた。
 ただ、身体だけはある意味正直であったようで――反り立っているペニスは一向に勢いが衰えることもなく小さく震え、今か今かとその時を待っている。
 正直よく分からない――でもとても気持ちの良いことが、待っているような気がする――
 これまで抱いていた、性への拒絶反応。今日だけは、それを取り除いてみよう。ぼくは本能のまま、彼女に性を教えてもらうことを選んだ。


「いい調子よ。きみのペニス、なかなか大きくってお姉さんも興奮するわぁ……それじゃあ早速」
「ふわっ!?」
 あまりの不意打ちに、思わず腑抜けた声をあげてしまう。ぼくのペニスは、いつの間にか起き上がっていたエンロさんの両手によって包み隠されていた。ぼくの間抜け面を見て、彼女は満足げに口角を吊り上げると、両手でペニスを擦りつけ始めていった。
 普段は尿のみを放出していた雄の器官の、奥から湧き上がる快感に思わず喜悦の声を漏らしてしまう。ああ、ただただ、気持ち良い。このまま続けば、確実にとてつもない快感が得られることをぼくは確信していた。ああ、早くその時よ、訪れよ。訪れよ――
「……へ?」
 つい、拍子抜けしてしまった声を出してしまった。ただ、それもそのはず。エンロさんは知らぬ間に両手をぼくのペニスから離して、ただぼくの様子をじっと観察していたのだから。
「ちょっと! 何で途中でやめちゃうんですか!?」
「あなたは今回の趣旨を誤解しているわ。これは、自分自身の手で性欲を発散するためのオナニーの勉強なのよ。私がこのまま気持ち良くさせ続けたら、意味がないのよ」
 ……そうだった。ぼくはあまりに興奮してしまい、目的を忘れてしまっていたのだ。ああ、何ということだ。穴があったら入りたい……けれど、ぼくは穴を掘れない。だから、襟巻きで顔を隠したい……くらいには恥ずかしかった。
「まあ、私もこの手でエレーガくんをイかせたかったけれどもね」
 そんな色香を含んだ小さな呟きに、ぼくは思いきり反応してしまいエンロさんの顔を覗き込む。少しばかり頬を染めた彼女は、少し照れくさそうな表情を浮かべていた。正直、とても可愛らしいと思った。
 気を取り直して、ぼくは自らの両手を使って、震え続けているペニスを擦りつける。目の前にはうっとりとした表情をしながらぼくを見続けているエンロさん。彼女がぼくのオナニーを見守ってくれている……そんなことを思うと、自然とぼくの手は加速を続けていく。そして、ついに――
「あっ……う、うわああぁぁ!!?」
 いつもの尿とは明らかに異なる、濃厚な白濁液がペニスから勢いよく放出された。その白濁液はカーペットを、そしてエンロさんの身体を白く染め上げる。未知の快楽に浸りながらも、エンロさんをぼくの白濁液で汚してしまったという事実に、胸が痛くなってしまう。
「エンロさん……ごめんなさい。ぼくの汚いもので……汚してしまって」
「いいのよ。そもそも、この精液は汚らしいものではなくて、とても美しいものなのだから」
 息を切らしながら謝るぼくの言葉を手で制すると、エンロさんは身体に付着したぼくの精液を舐め始めた。魅惑的な顔つきで、ぼくの身体から生まれたものを口に含むエンロさんに、収まったはずのペニスが微かに反応を示していた。
「……うん。エレーガくんの白いの。とても濃厚で美味しかったよ」
 あっという間に精液を平らげて、身体を綺麗にした彼女はにこやかに笑う。舐め回した箇所が、照明の光に照らされて微かに煌めいて見えるのが、より一層彼女の可憐さを引き出していた。


「じゃあ、次のステップにいきましょう。次は、雌を満足させられるようにすること。早い話が私のおまんこを、エレーガくんに貪ってほしいの」
 そう言って、再びエンロさんは仰向けになって、雌の割れ目をぼくに委ねてくれる。以前のぼくならば、それを汚らしいモノと思ってしまったかもしれない。けれども今のぼくには、彼女を早く満足させてあげたいという慈しみしかなかった。
「勿論ヤらせていただきますよ。それで、ぼくは何をすればいいんですか?」
「おまんこぉ、手で触れたり舌で舐めたりして、気持ち良くしてほしいのぉ」
 待ちきれないように、艶めかしい声でエンロさんはぼくに訴えかける。ぼくは即座に、彼女の股座に顔を寄せる。その、薄紅色をした割れ目はどこか神秘的で、眺めているだけで身体がふわふわと火照ってしまうようだ。そんな神秘を、彼女を傷つけぬように最善の注意を払い、ぼくは慎重に指で撫で回していく。
「はぁ……んっ」
 エンロさんは淫らな声で喘ぐ。同時に、彼女の割れ目もピクリと反応を示す。その反応がとても可愛らしく、何より気持ち良く感じてくれていることがとても嬉しくて――ぼくの手の動きは自然と素早いものとなる。そして、遂に自らの舌を繰り出し、割れ目を丁寧に舐め回していく。
「ひゃあぁん!?」
 突然生温かいものへと変化を遂げた刺激に、エンロさんはさらに色気を含んだ喘ぎ声を響かせる。そして割れ目からは、徐々に甘い果実のような液が湧き出てくる。ぼくはそれを、ジュルジュルと音を立てながら夢中になって舌で舐めとる。特に味はしなかったのだが、それでもどこか甘く感じられたのは、その液が彼女のものであるという事実があったからかもしれない。もう、ぼくの舌は止まらない。
「あっっん、いくぅぅ!!!」
 気がつくと、ぼくはエンロさんのその液を顔面に目一杯浴びせられていた。ビクンと身体を震わせている彼女の顔を見ると、虚ろな瞳で口元をだらしなく開いたまま、それでもどこか幸せそうな表情でその悦に浸っているようだった。そんな彼女を見ると、ぼくの心まで幸せで満たされそうだった。


「エレーガくん、ありがとう。とっても気持ち良かったっ……さて、いよいよ最後だよ。エレーガくんのペニスを、私のおまんこに入れてぇぇ……」
 エンロさんの愉悦を隠し切れない声に、ぼくは無言で大きく頷く。いくら性行為を不愉快なものと捉えていたぼくだって、本番行為の方法くらいは知っている。エンロさんの上に覆いかぶさり、うねり続けているペニスを彼女の割れ目へとあてがう。
「イきますよ……痛かったら、すぐに言って下さい」
「うぅん、いいよぉ。早く、きてぇ……」
 一気に彼女の中へと押し込みたい――そんな身勝手な気持ちを抑えつけ、彼女になるべく痛みを与えぬように、慎重にペニスを侵入させる。
 彼女の中は、そんなペニスを歓迎してくれるかのように、ギュギュっと締め付けてくれる。そんな彼女と繋がれたという事実が、ぼくにはとても嬉しかった。

 ぼくは昂った声で彼女の名前を呼ぶ――
 彼女も愛おしい喘ぎ声を漏らしながら、ぼくの名前を呼ぶ――
 この瞬間――身も心も、とてつもない快楽を味わっている――
 こんなに、幸せなことを――ぼくは、一方的に不健全なものと思っていたなんて
 でも、今ならはっきりと言える。性行為は、恥ずかしいことでも、いけないことでもない
 とてもとても、素敵なことなんだって――

 彼女の中に白濁液を解き放つ。彼女も呼応するかのように強く包み込んでくれる。
 ありがとう――ぼくはこれで、成獣への一歩を踏み出すことができたんだ――




「起きて、エレーガくん!」
 快活な声に促され、ぼくは腰を上げた。視線の先には、静かに微笑むエンロさんの姿があった。
「あ、エンロさん。おはよう」
「もう、私の中に入ったまま気を失っちゃうなんて……イケナイ仔なんだから」
 その言葉で、ぼくは気を失う前のことを鮮明に思い出した。ということは、その後の片づけは全てエンロさんがやってくれたのか。よく見るとぼくの身体も、エンロさんの身体も先ほどまでの行為の形跡がサッパリと消えてしまっている。身体の湿り具合から、どうやら濡らしたタオルで拭き取ってくれたのだろう。意識のない間に、ぼくのそういった部分までお世話させてしまったと考えると、とてもとても恥ずかしい……
「ごめんなさい……迷惑かけてしまって」
「気にしないで。あ、でもエレーガくんを拭いていた時に、電気が私に漏れてきちゃって。それはすんごく痛かったけれどもね」
「本当、ごめんなさああい!!」
 僕は襟巻きを広げ、勢いよく頭を下げる。襟巻きを広げることが誠意になるかは分からないけれど、ぼくなりの強い謝罪の意思表明だ。
「冗談よ。確かに電気は流れたけれど、チクッとしただけだから」
 そう言っていたずらっぽく笑うエンロさん。何だか最初にあった時とは随分と雰囲気が違うような気がした。もしかすると、これが彼女の本来の姿なのかもしれない。
「ねぇ、エンロさん。最初にあなたに会った時のぼくは、何も知らなくて。知っていたような気になっていて。ただ、性交は破廉恥で不健全なことだと思い込んでしまっていて……あなたにも酷いことを言ったのに、優しくぼくを導いてくれて。本当に……ありがとう」
 性行為に関して変な嫌悪感を持っていたことも今思うと、本当につまらない話であった。ぼくが幼い頃に、たまたま町に捨ててあった官能的な雑誌を興味本位で意味も分からずに眺めていたら、通りすがりのルージェラにこっぴどく叱られて、そういったものは不健全だから一切触れるなと強く念を押されたことがきっかけであった。そのルージェラも、ぼくのことを考えて言ってくれたはずなのに、ぼくがそのことを変に意識してしまったせいでここまで無駄に引きずることになってしまった。本当にぼくは身体だけは真っ先に立派になったのに、精神は幼稚なままであったのだ。
 でもそんなぼくを、エンロさんは見捨てずに導いてくれた。勿論お金を貰っているプロだから、という見方もできるかもしれないけれども。それ以上の親身さが、確実に彼女にはあったと思う。
「フフフ……ありがとう、エレーガくん。そういってくれると嬉しいわ。……性行為を知ることは、自分のためにも、相手のためにもなるのよ。これからも、エレーガくんらしく性に向き合って、立派な成獣になって……そして、幸せになってね」
 うん。やっぱりエンロさんは本当にぼく個人を見てくれている。ここまでぼくのことを思ってくれているのだもの。彼女の教えを無にしないためにも、これからは真摯に性に向き合っていかなくちゃな。
 あ、そうだ。お金を払ってまでぼくをここに連れてきてくれたご主人にも、一応お礼は言わないと。勿論、騙したような手法は許せないのだけれど……素直に伝えられていたら、おそらくぼくは絶対にここには来なかっただろうし……。そういう意味では、これが正解だったのかもしれない。
 あっという間に終了の時間を迎え、にこやかに手を振って見送ってくれるエンロさんに一礼し、ぼくは個室を後にする。
 さあ、心身共に立派な成獣になるためにも、これからもっともっと頑張っていくぞ!


×〇×〇×〇×〇×


 私がエンニュートに進化してすぐに、その悲劇は起こった
 想像を絶する苦痛は、今でも思い出される。そして、それは私の身体に永遠に刻まれている
 もう私は、仔を宿すこともできない――
 後悔してもしきれないそれは、私の性に対する無知が引き起こしたものであった

 自暴自棄になりかけたし、もう生きることなどできないとも思った
 それでも、私は拾われて今ここで希望を持って働いている
 1匹でも多くのポケモンが、性に対して健全に向き合って、幸せになって欲しいから

 この活動を不健全だとか、けしからんと文句を言ってくる人もいる
 店の看板に”不”の落書きを付け加えて”不健全の館”とか、嘲笑うポケモンもいる
 一歩間違えたら、確かにそうなると思う

 だから、そうならないように、私は真摯に彼らに向き合って導いてあげたい
 今日のエレーガくんのように
 これまでも、そしてこれからもずっと――
 ここで巣立った仔の幸せが、私の幸せであるから――


 健全の館 END



ノベルチェッカー

【原稿用紙(20×20行)】 30.9(枚)
【総文字数】 9968(字)
【行数】 194(行)
【台詞:地の文】 21:78(%)|2125:7843(字)
【漢字:かな:カナ:他】 31:61:4:1(%)|3184:6124:492:168(字)



○あとがき

 同率優勝とは……ありがとうございます!
 wikiに投稿したものとしては、今年はじめての作品となりましたが本当に嬉しいです! 結果出た時は思わず震えました(?)
 ここ最近は文字数が途中で足りずに思いっきり端折るようなことも続いていたのですが、今回はある程度書きたいことを作品として表現できた気がしています。
 これからも思い描いた物語を上手く作品に出来るよう、頑張っていきたいと思います。

○作品について

 「ぜん」というテーマですが、エントリー当日までは全く別のキーワードで考えていましたが全くまとまらず……
 当日なってようやく、「健全」と「不健全」という対義語でお話がまとまってきました。

 子供に性を見せるのは「不健全」だとは、良く言われますよね。
 勿論その通りだとは思うのですが、身体が成長したら性欲は確実に出てきますし、その時に知識が全くないのは逆に良くないと思うのです。
 性への嫌悪感を持って本能とのギャップに苦しんだり、よく分からず行為をして相手を傷つけてしまったりなどもありえますからね……
 程々に関心を持って、そして知識を学んでおくことはそういう意味では「健全」とも言える……そんなことを考えて、物語を作っていきました。
 ただ、あまりシリアスで重い感じにはしたくなかったので、全体的には楽しげに。官能表現もストレートにまとめました。

 エレーガについて
 元々アニメで見た、襟巻きを広げて無邪気にはしゃぐエレザードが大好きだったのでいつか作品に出したいと思っていました。
 石進化と言うことで、精神的に幼くても身体的には成熟しているという設定に合いますし、エンニュートとトカゲ同士でカップリングとしても美味しい
 深い意味もなく早く大人になりたい。大人に怒られたから性に対して嫌悪感を持つ。少年心は純粋ですね。そんなキャラクターです。
 いきなり館に放り出された時の心情、少しずつ向き合っていく姿。こういうの、堪らないですね。

 エンロについて
 名前の由来はエンニュートの「エン」にエロの「ロ」
 行為中はフェロモンで魅惑的でエッチなエンロさん。でも、普段は誠実で優しい方なのです。このギャップが堪らないですね。
 過去のことを少しだけここで触れると、進化直後に自身のフェロモンのことを理解せずに盛大にばら撒いてしまい、その悲劇は起こってしまいました。
 本当に苦しんだと思うのですが、最終的に前を向いて「こんな辛いことがもう起こらないように」と健気に頑張るエンロさんは本当に素敵です。
 
○コメント返信

 > 読みやすくて好き。強いて言えば、交尾に対して嫌悪感を抱く理由がさらっとでも最初の方で触れてあれば、
   頑なに抵抗を示すシーンに入るときの違和感が少なかったかなぁと思いました。 (2018/05/25(金) 21:07)さん

 読みやすいと言っていただけるのはとても嬉しいです!
 確かに、性に関しての嫌悪感は早めに触れた方がスッキリしたなと思いました。貴重なアドバイス、本当に有難いです。

 > とても健全すぎる場所なので、私も行ってみたいですね (2018/05/26(土) 00:13)さん

 とてもとても健全な場所ですよね!! 私も行きたいですけれども、まずはポケモンにならないといけないですね……ポケモンになりたい。

 > 不健全さを表にはださずに健全な視点で読める官能小説ってのがとても新鮮でした。 (2018/05/26(土) 02:50)さん

 エレーガくんとエンロさんがお互いに思いやりを持っていたからこそ、健全と思える官能になったのでしょうね。
 新鮮に感じていただけて、嬉しい限りです。

 > すごくエッチなでした!!!!(語彙力
   色々な理由での行為がありますが、やっぱり純粋に淫らな行為で始まって終えるのはすごく読みやすくていいですね。 (2018/05/27(日) 22:35)さん

 エッチ!!! 嬉しい!!!!(語彙力
 純粋に一直線に進んでいく行為ですものね。私も大好きです。

 > 最後に全部持って行かれました。そうですか……
   タイトルと中身でてっきりそのまま行くと思っていたので、だからこそ最後の裏切りが効いていた気がします。 (2018/05/27(日) 22:52)さん

 エンロさん視点のエピソードに触れたかったのもありますし、何より最後にインパクトを与えたかったためこのような流れになりました。
 狙っていた部分でしたので、その部分で何か感じていただけたのであればとても嬉しいです!

 > 恥じらうエレーガが可愛い。 (2018/05/27(日) 23:48)さん

 思いっきり恥ずかしがりながら、行為の快感に包まれて幸せを感じるエレーガくんは可愛い(確信)



お読みくださった皆様、投票やコメントをくださった皆様、そして大会主催者様。
本当にありがとうございました。



 感想、意見、アドバイス等。何かありましたらお気軽にどうぞ。

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Last-modified: 2018-06-02 (土) 19:10:39
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