この小説は♂×♂の官能表現を含みます(予定)。
苦手な方はお戻り下さい。
それと、“思春期だから?”の別人物視点になっているので、そちらを読んでないと内容が分かりにくいかもしれません。
written by 多比ネ才氏
俺にだって、好きな奴ぐらいいる。
自分で勝手にそう錯覚してるだけかも知れないけど、確かに好きだと感じてる。
でも、今まで誰にも言った事はない。
言ったところで、そいつと付き合えるようになるわけじゃないから。
なんで、そんな事がわかるか、って?
……。
とにかく俺は、この事だけは胸の奥底に隠したままにしている。
自分の心に嘘を吐きながら。
そりゃあ、あいつが俺だけを見てくれるような未来を妄想したことだって、あるけど。
隠したままで、いいんだ。
それが、あいつにとっても幸せだから。
……俺は、あいつの事を見守り続けていくだけ。
そんな素振りは見せないようにしながら。
だから、今日もこいつと戯れる――
「好きな奴……か」
夕日を全身で感じながら、ひたすら足を進める。
さっきこいつに聴かれた時は咄嗟に答えたけど、俺は本当にあいつが好きなんだろうか?
そもそも、俺は本当に“恋”を認識しているのか?
「……竜火(リュウヒ)、どうかした?」
そういう考えを持つあたり、やっぱり俺らは似てるんだろうな。
だから、互いに惹かれて合ってここにいるんだろう。
「いや、俺達って似てんだな~って思ってさ」
「え? どこが?」
ま、燈貴(トウキ)の疑問はもっともだな。リザードとマグマラシの容姿はかなり違うし、性格も正反対――とまではいかないけど結構違うし。
表立って分かる類似点は性別と属性ぐらいのものだろう。
でも、言葉で説明出来ないような所で。それこそ心の奥底のような場所が繋がっているような感覚があるのだ。
だからこそ、燈貴と出会えた事は貴重に感じられる。
「……いや、なんでもない」
我ながら、らしくない発言だったかな。
別に自分のキャラを作っている訳ではないけど、感傷に浸るなんて事は俺の性に合わない。
でも、燈貴との出会いを大切に思っているのは事実。
だから、俺はこいつとの関係だけは崩したくない。
今のままを、維持する努力をしている。
“親友”という立場が崩壊するのだけは、絶対に嫌だ。
「あ、ここの公園完成したんだね」
燈貴が、俺と目線を合わせる為にしていた二足歩行を止めて駆け出す。四足歩行の方がしやすい体型なのだから無理するな、と言ってはいるのだが、燈貴は「この方が竜火と話しやすい」と言って普段から二足歩行でいる。
俺の事を想ってくれているんだと考えると、妙に嬉しい。
「いくら遊具の設置とかだけで終わりだからって、こうも簡単に思い出の空き地を変えられちゃうのは……なんだか寂しいね」
一週間前までは全く今まで通りの空き地だった場所が、今では真新しい公園となっていた。
小さな頃から2人で遊びに来ていた空き地だっただけに、どこか物寂しい感じがする。
「仕方ないさ。思い出なんかはまた作ればいいだろ?」
公園の柵に前脚をかけて感慨に浸る燈貴の肩に手を置き、声をかける。
「それに、今の俺らには外で遊ぶ時間なんか無いわけだし」
一応受験生なのだから……と言い、燈貴を帰路につくように促す。
これ以上遅くなったら、燈貴にアレを見せる時間がなくなってしまう。
急がなければ。
「ぇっと、かぎ鍵っと……」
自分の家の前で鞄を漁る。
あれ? 確かここに入れといたはず……っと、早速見つけた。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
家の中に入るとそれを追うようにして燈貴の声が。
……ここはちょっとだけふざけてみるか。
「邪魔するなら帰れ」
「……あ、そう? んじゃあ帰るよ。バイバ」
「待て、ゴメン、俺が悪かったから帰らないでくれ!」
失敗だった。
燈貴もふざけて言ったつもりなのだろうが、こいつなら真面目に帰りかねない。家は斜向かいだし。
当の燈貴はけらけらと笑いながらこちらを見てくる。くそう、なんだか負けた気分だ。
そういえばこいつ、いつ頃からか俺をからかうようになったんだよなぁ。ポチエナ(犬)みたいな性格のくせに、ことある毎に俺をイジってきやがる。全く、屈辱的だ。
まぁ、そんな所も好きなんだけどな。
「……って、あれ? 今日は2階で遊ぶの?」
リビングに行こうとした燈貴を階段の方に手招きしたら、疑問の声を上げられた。
「今日は親が帰ってくんのが遅いからな。……それに、見せたいモノもあるし」
「見せたいモノ?」
「ああ。久しぶりに、オカズと知識を提供してやろうと思ってな」
この前こいつにエロ本を貸したのは一月前。そろそろ同じオカズには飽きてきただろうし、燈貴にそっちの知識を教えるのはちょっとした優越感を味わえる。
それに、一応自分達は中学生。本来ならそういう知識やエロ本を持っていてはいけない年齢なのだから、当然後ろめたさはあるわけで。
そんな背徳感を和らげる為にも、こいつには性情報を教えなければならない。
階段を上り、部屋のドアを開けて先に燈貴を通す。
「ほら、入れよ」
「はーい。……って、これは……」
「あ? なんかしたか――ぁっっ! ストップ! 今しまうから――」
マズい。アレを見られる訳にはいかない!!
「バルス!」
「目が、目がぁああ!!」
“見られたらマズい物”が置いてあるベッドに近づこうとしたら、突然視界がブラック★アウト♪
多分、燈貴が『えんまく』でも使ったんだろう。全く、目が痛いじゃないか。
しかし、この程度の目眩ましで屈伏するとでも思ったか?
「ゼ――ット!!」
「うぶぇ!!?」
痛む目を無理やりこじ開けて燈貴にタックルを決める。“見られたらマz(ry”を取り落とすのを狙ったんだが、やっぱりそう上手くはいかないか。
ん? 「どうして目が見えるんだよ!?」みたいな視線で俺を見ても、現実は変わらないぜ。
「ふん。俺は“目に異物が入ってもすぐに立ち直れる程度の能力”を持ってるんだぜ!!」
「随分と需要のない能力だね。それ」
おお、弄りのテクニックだけじゃなくツッコミのテクニックまで上達してるとは思わなかった。
だが、あえてスルーさせてもらう。肉薄したこの状況でなら“見られt(ry”を取り返せるからな!
「させるか!」
あ、気付かれた。
手を振り回して俺に取られないようにしてやがる。って、おい。もっと大事に扱えよ! 俺のだぞ!?
「あ、止めろ! 破れるだろうが!」
「じゃあ見せてよ!」
「お前にはまだ早い!!」
文字通り、早すぎる。
こいつにコレを教えるのは、今は早すぎる――
と、無我夢中で凪いだ爪が“見r(ry”にあたり、ベッドの脇に落ちる。
「「あ、」」
それを確認した瞬間、俺の体温が一気に低下した。
「厄日だ……」
さっきから同じ言葉しか喋っていないような気もするが、本当にそれぐらい最悪だ。
いや、自業自得だと言われればそれで終わりなのだが、それでもやっぱり意気消沈はする訳で。
「……うん、とりあえず、あいつにもこっちの趣味があることを願おう……」
さっき見られたエロ本は燈貴に渡したから、そっちの趣味があるなら今日は間違いなくアレをするだろうし、逆に無いなら明日学校で本を突き返されるだろう。
……もし後者だったら、きっと白い目で見られるんだろうな……。一応そっちの趣味はないって言っておいたけど、そんな言い訳が通じる訳ないし。
「それに、実際にこんな事をしてるしなっっ……ぁ……」
今、俺の左手の爪の一つは後ろの穴に突き刺さっている。
右手は会陰部を抑え、陰茎さえ付いていなければ雌のそれにもみえる格好だ。
前立腺の刺激で快楽を得ようと試み始めたのは1ヶ月前。別にそっちの趣味があった訳ではなかったけど、数十倍の刺激があると聴いてしまっては、思春期の俺はそれを試さざるを得なかった。
……でも、徐々に得られる快楽が増えてはいるけど、1ヶ月たった今でも後ろだけで達した事はない。
一応雌への興味はあるし、今のところは雄への興味はない。それだけは事実。
でも、こんな事をしているとしられたら確実にガチホモのレッテルを貼られるんだろうな……。
「く、ぁ……あ……っっ」
押し寄せる快楽の波に溺れたくて、会陰部に当てていた右手で竿を掴む。
後ろと前の両方から来る刺激ですぐに達してしまいそうになるが、まだ我慢する。
簡単に達したのではつまらない。もっと、もっともっと快楽が欲しい。
擦る度に溢れる先走りが自分のモノを覆い、後ろから発される音と不協和音を奏でる。くちゅくちゅとしたその響きは、限界まで高められた欲望を解き放つには十分過ぎて。
「ぅ、ぁあああっっ!」
達する直前、俺は燈貴に犯される妄想をしていた。
次の日。
「うぁ~……疲れた」
五時間目も終わり、次の授業が終われば下校。そう思うだけで気分は軽くなる。
体を伸ばしながら教室を見渡すと、机にうなだれている燈貴の姿が目に入った。
……そう言えば、今日の燈貴はちょっと変だったな。昨日のあの話もして来ないし……少し、避けられているような気もしなくはない。
でも、俺を突き放すような素振りは見せてなかったと思うし……直接訊いてみるか。
「はぁ……」
「ん? 溜め息なんか吐いてどうしたんだ?」
ちょうど近づいた時に燈貴が溜め息を吐いた。なんだか具合が悪そうに見える。
お、顔を上げた……って、顔がいつもより若干赤いぞ? こいつ本当に大丈夫か?
「おいってば!! 反応しろよ!!」
「……ちょっとトイレ行ってくる」
燈貴は一瞬だけ目を合わせ、すぐにそらすと席を立った。
あれ、やっぱり避けられてる?
「あ? 腹でも痛いのか?」
まあ、そんな事を率直に訊くほど無神経なつもりはないけどな。本当に体調が悪いだけだったら困るし。
「うーん……そんなとこかな」
「そんなとこって何だよ! ちゃんと言えし!」
「禁則事項です」
お前はどこの未来人だと言いたくなったが、そんなツッコミを入れる前に燈貴はトイレに向かいやがった。くそ、華麗なスルーというやつか。
……やっぱり、ホモだと思われてんのかな。
だとしたら、一体どう言い訳しようか。
どうにかして誤解を解かないと関係が崩壊しかねない。とはいえ、その方法が思いつかないとどうしようもない。
「「はぁ……」」
燈貴と俺の溜め息が重なった――って、え!?
「お前、戻って来るの早くね!?」
「……何言ってるの? 多分5分はかかってると思うんだけど」
黒板の真上に掛けてある時計を見やると、確かに5分以上経っていた。
おお、考え事をしてると時間が早く経つってのは本当だったのか。
「おらー、さっさと席付けー」
うわ、早くて数学の先生のバシャーモが来ちゃったよ。まだ時間になってないっつーのに。
名前すら覚えていないバシャーモへの不満と燈貴への言い訳を考えていたせいで、授業の内容は全く頭に入って来なかった。
放課後。
「お前……本当に大丈夫なのか?」
「多分……」
今、俺達は家に帰ろうとして歩いてる訳だが……燈貴が、かなーりつらそうな顔をしている。
何かの衝動を押し殺しているような、そんな感じがするんだが……何を我慢してるんだ?
とりあえず、避けられてはいないみたいだから一安心だけど。
「おいおい、しっかりしてくれよ? どういう風に具合悪いのか知らねーけど」
「そんな事言ったってさ……」
どうして具合が悪いのかは訊いてない。さっき訊こうとした時はなんだか答えたくなさそうだったし。
でも、だと尚更心配にはなってくる。言いたくないって事は何か重大な病気にでもかかってしまったのだろうか。あ、そもそも言いたくないってのも推測か。
でももう空き地だった公園の前まで来てるし、ここから家まではそんなに無いから大丈夫だろう。
って、あれ? 燈貴の足が止まった……
「り、竜火、ちょっと鞄持ってて。トイレ行ってくる」
と思ったら、鞄を投げ捨てて公園の方に走って行きやがった。
「ちょ……待てよ。さっき行ったばかりじゃ」
「さっきは邪魔されたの!!」
トイレで邪魔をされたって、一体何をだよ。
はぁ。溜め息もんだぜ。
とにかく鞄をそのままにするわけにはいかないから拾って、トイレに向かって歩く。真新しい人工芝の感触が気持ちいい。
うん、新しい公園もなかなか良さそうな場所だな。受験が終わったら燈貴と二人で遊びに来ようか。
さて……トイレの前まで来てしまったわけだが、燈貴を待つ間何をしてようか。どうせかかっても5分程度だろうけど。
仕方ない、空でも見上げ――
「うぁあああぁぁあぁぁぁ!!」
突然、燈貴の悲鳴が聞こえた。
「!?」
体が、親友の危機を察知して勝手に動く。
トイレの中に飛び込んで、一つだけ閉まってる個室のドアに手を掛けて。
「燈貴!! 大丈夫か――――!?」
鍵がかかっていると思ったのに、叫びながら押したドアは簡単に開いて。
その向こうには、自身のモノから白濁を垂れ流す親友がいた。
「……ぁは」
燈貴は少しだけ笑みを浮かべた。
それが何故か自嘲を含んでいるように見えて、心に後悔が突き刺さる。
あぁ、早とちりして開けるんじゃなかった。せめて一声かけていればよかったのに。というか、なんで真新しいトイレの鍵が壊れてんだよ。リアルに泣きたくなってきた。
「……今の、見ちゃった、よね」
途切れ途切れにポツリポツリと呟く燈貴の言葉が何故か耳に濃厚に残る。その目は奇妙な程に静かな雰囲気で、まるで悟りでも拓いたんじゃないかってぐらい。それとは対照的に俺の瞳は潤んでいくのに、なんでこいつはこんな目をしてられるんだ?
燈貴が体を起こす。欲情の飛び散ったその状態はホイップクリームが塗られたスポンジを思わせない事もないけど、如何せん量が少なすぎる。俺もデコレーションを手伝えば、綺麗に真っ白に出来るだろうか。
……駄目だ。それだけは駄目だ。何を考えてるんだ。目の前にいるのは、親友だ。冷静になれ。無理な相談だ。精神崩壊だ。思考のスクランブルエッグだ。
――ハヤく、ニゲロ。
……逃げろ? 何から逃げろって言うんだ?
燈貴から逃げるのか? 鬼から逃げるのか? 現実から逃げるのか? それとも――自分から逃げるのか?
顔が強張る。腕が強張る。脚が強張る。全身が強張る。
「そんな目で見ないでよ。……襲いたくなるでしょ?」
反射的に、体が震えた。
襲う? だれが、誰を? いつ? どこで? ……あ。なるほど。よくわかんないけど、俺は燈貴の事を襲ったのか。だから燈貴の腹があんなにべとべとになってて、あんなに静かな視線で俺の事を見つめてるのか。納得納得。よし、これで俺達の関係は破綻――って、ちょっと待て、落ち着け。真面目に。どうしたんだ、俺。
正常な思考が出来ていないのが自分でも分かる。いや、それだと矛盾か。いやいや、どっちにしても変わらないか。
それにしても、一体どうしてこうなってるんだ? 燈貴の事じゃなく、自分が。
燈貴が、徐々に俺に近づいて来る。
俺は、一歩だけ後ろに下がる。
……ああ、そうか。やっとわかった。
俺は、手遅れにならないうちに、逃げなきゃいけないんだ。
自分から。
・・・ ・・・・・・・・・・
自分に、嘘を吐けなくなる前に。
「……ぁ、ご……め」
とりあえず、謝らなきゃ。謝って、謝って、早く逃げなきゃ。手遅れになる前に。泣いてる暇なんかない。なのに涙が流れる。自分が分からない。自分の事なのに分からない。……待て待て。ここまで思考回路がおかしくなってると、本当にヤバいんじゃないか?
「僕の恥ずかしい姿を見たんだから、竜火も恥ずかしいの、見せてよね……」
マズルがくっつきそうな距離にある、藍色と薄黄のコントラスト。それが俺の肩に前脚を乗せた途端、おれの体が小さく跳ねた。
違う。こんなのは俺じゃない。俺以外の別人だ。だから俺は自分になんか嘘を吐いてない。これは嘘だ。全部嘘だ。何もかもが嘘――
「ひぁあ!?」
右頬に、何やら生温い感触。思考が全部ストップし、リセットされる。
そして、何をされたのかをようやく把握。燈貴が、俺の頬を舐め――え?
「ふふ……本当、可愛いんだから」
「ふ、ふざけ――ひぁっ、あ!?」
左頬も舐められ、ついでに体が密着した。そして燈貴のイチモツが俺のその位置に押し付けられてます。うん、状況把握が出来てるって事は正常な思考が戻ってきたって事だな。よかったよかった。いや、全然よくねぇよ。
どうしてこうなってるんだ!? 勿論さっきとは違う意味でだけど、とりあえずヤバいヤバいヤバいってば!
涙は止まったし燈貴が涙を舐めとったのもあって顔は乾いたけど、代わりに体がぐちゃぐちゃぬるぬるってなってるし。
しかも、今し方両頬に感じた温もりが顎に移動しているんですが!?
「止めろっっ、舐め、んなぁっっ!!」
「……止めないよ」
燈貴の舌の暴走は止まらず、首筋や鎖骨まで侵食していく。変な感触に蹂躙され続けているせいで、自ずと鼓動は早まり、冷や汗が滲む。
「く……ぁっ……!?」
「おいしいからね」
この状況には不釣り合いな、純粋な笑顔を此方に向けてくる燈貴。ああもう、マジで勘弁してくれっっ。
「いい加減にしろってゃぁあ!?」
今度は鳩尾から顎にかけてをべろーんと舐められた。卑怯だ。そんな事されたら、否が応でも。
「へぇ……感じてくれてるんだ」
感じないでいられる訳ないだろ!? 十分すぎる程にシチュエーションが整ってて、そんな状態で体を舐めまくられたんじゃ、耐えれる道理が無いだろうがっっ!
でも、そんな事は言わない。言えない。俺にだってプライドってもんがありますから。……いや、雄の象徴をビンビンにしてる時点で説得力はないけどね!?
「ち、ちげぇよ!! こっ、これは……」
「これは? 続きを言ってみてよ」
言い終わった後、首筋に柔らかく噛みつかれました。同時に、互いの雄同士が擦り合うように体を上下させ始めちゃいましたよこの仔。
……こいつ、絶対に続き言わせる気無いだろっっ!
「っ、くぁ、はぁっ……!」
「ぅ、ふ、ぁっ」
反論の言葉が無いってのも本当だけど、それ以上に快楽がありすぎて喘ぐのが精一杯。むしろ勝手に声が漏れる。こんな話聞いてないんだが。
ぬちぬちいいながら絡み合う精液と先走り。それを纏って加速する雄槍。そろそろ本当にまずい。
「や、止めろぉ……出ちまうっ!!」
あと五秒もあればイケる自信があるってぐらいにギリギリだ。1、2、3、
「あー、じゃっあ、止めようかな?」
「――!?」
俺の肩から両前脚を下ろし、燈貴は密着を解いた。って、え? なんで止めんの!?
「あれ? 竜火、どうかした?」
さっきの純粋な笑顔は打って変わって、今度の笑みはニヤニヤと厭らしいものになっている。……このゃろぉ、絶対に分かっててしてんだろが!!
「してほしいの?」
「ばっ、馬っっ鹿じゃねえのか!? 俺が、そんな事を思うわけ――」
「へー……こんなにしてるのに?」
燈貴が、手で俺のモノをなぞった。
「くぁあっっ!!」
それだけで全身に衝撃が走るような錯覚を感じ、尻尾は上に跳ねて体は後ろにのけぞって、直立していた足が崩れてしまう。
反動で前に出て来た尻尾も手伝い、地面に背中をつけてしまう。惨めだ。
「全く、素直じゃないね」
「う、うるせえ!!」
こんなの、誰だって素直になれないだろ。恥ずかしいし。
腕も足もガクガクで、力なんか入りゃしない。ちくしょう……。
「でも、僕はさっき1回自分でしちゃったから、あの程度の刺激だと物足りないんだよね……」
俺に覆い被さるように再び詰め寄り、燈貴は右前脚の指先で俺のモノとその周辺をなぞった。淡い快感。しかし達せない。
「だから――ココ、使うからね」
燈貴の前脚はそのまま下に沿っていき、俺の蕾に指を入れた。
「う、ぁあっ!?」
「……あれ? 意外にすんなり入った……えいっっ」
「ぃいぁぁあ゛っっ!!」
何度も繰り返した行為のせいで、拡張とまではいかないものの広がりやすくなっている後孔。それが故に、ぬめりを纏った燈貴の指を根元まで飲み込んでしまう。
「竜火、ココいじった事ある?」
「…………っっ!!」
そういう質問はもっとオブラートに包んで言って欲しかった。恥ずかしさMAXだってば。
否定は出来ないけど、肯定もしたくない。仕方なしに歯を食いしばって目を閉じて、燈貴から顔を反らして「雰囲気で察せよ!!」的なオーラを出す。
「ふぅん、竜火はそんな事を……」
「ち、違うから!! 誤解するなし!! だ、誰だって、気持ちいいって聞いたら、試してみたくなるだろっ!?」
うわ、まずい。ただでさえ燈貴に主導権を握られかけてるってのに、このままだと一生蔑まれながら居なきゃいけなくなる!
「……それで、こういう事を自分でしてた訳ね?」
「ふぁああぁ!?」
孔に突っ込まれてた指が動き出す。それは、最初はぐにぐにと中をかき混ぜるように、そしてだんだんと腸壁をなぞるような動きに変化していく。
「ひにゃぁあっ!」
経験が無いだろうから、と油断していたら走った電流のような快感に、反射的に声をあげてしまう。やべ、気付かれた!?
「ここ、もしかして前立腺?」
くにっと指が内側に曲がったかと思えば、案の定俺の悦い場所を的確に押してきやがった。
「ぅにゃぁああ!?」
「ビンゴ、だね」
無意識に、普段は出さないような嬌声をあげてしまう。なにこの屈辱。しかもそこばっかり攻めるとかぁぁあぁあ!?
「止めっ、ろぉ!!」
「こんなに感じてるのに?」
「まっだ、後ろだけじゃイケにゃああ!?」
そう。俺はまだ後ろだけではイケない。いった事がない。でも、快楽は感じる。つまり、今の状態は生殺し以外の何物でもないのであって。
うぁ!? ちょ、出し入れすんな! 押すな、抜くな、差し込むなぁあっっ!!
排泄にも似た刺激と普段とは異なる状況とよく考えりゃ誰かに見られる可能性だって高いよなって羞恥と何より行為の相手が親友かつ同性っていう背徳感。それによって普段よりも感度は向上してるしめちゃくちゃ気持ちいいんだけど、あと一押しが足りない。
実際、もうイっててもおかしくないくらいに強い刺激が体中を駆け巡るのに、それでもイケない。こんなの、拷問じゃないかっ。
「も、う、止めて……っ」
自分の下腹部は悲惨な事になってます。射精は愚か、ドライオーガズムというやつにさえ達してないんです。
なのに、ギリギリの状態を維持されているせいで先走りばかりが流れ出て。もずくの汁をぶっかけたみたいになっとりやす。助けて、神様。
「でも、これだけ弄れば大丈夫だよね」
「ひぁっっ!?」
何が「でも」なのかを聞き返そうとするより早く、燈貴は何の前触れも無く指を中から引き抜いた。燈貴の指は、先走りと腸液とでてらてらと光っている。
そして、それが引き抜かれた場所に燈貴の雄があてがわれる。
「ま、まさか……っっ」
今更まさかも何も無いをだろうが、こいつ、本気でするつもりか!?
「そんな顔しないでってば……。 可愛いすぎて、手加減が出来なくなっちゃうからさ」
「だから、まずその可愛いって考えがおかしゅぅぁああ゛っっ!!」
ずぐんっという衝撃。自分の爪よりも長く、燈貴の指よりも硬度と弾力を持ったモノが、俺の中で存在を誇示する。
とうとう、繋がってしまった。
「ヤバい……これ、気持ち、いいっ」
「ふっ、あっ、やぁっっ!!」
先の行為の段階で快感の頂上は見たつもりになってたんだけど、それよりもさらに上を超す刺激が自身に襲いかかる。もはやにゅるんにゅるんの域に達した腸内と菊門は、侵入物を拒む事が出来ない。それでも尚押し出そうとするもんだから、肉棒と中は密着しちゃうわけで。
硬いそれを圧迫すると同時に、俺の中にも強い圧力がかかる。熱い体内で燃やそうとする度、向こうからの熱で燃やされそうになる。
限界なのに、限界なのに。
今の自分はどんな飽和状態の液体にだって勝てるくらいに限界なのに、それでも天国には届かない。
「ひゃらぁっ、やめれぇっっ!」
呂律はまわらず、涎も垂れる。
強すぎる快楽は涙を誘発するってきいてはいたけど、まさか自分がそれを体験するとは思いもしなかった。このまま続けたら本物の天国が見えそうなんだけど。
「じゃあ、竜火も悦くしてあげるよっ」
それは、突然。待ちわびてはいたけど突然すぎるタイミングで。
燈貴の前脚が俺の剛直に添えられ、勢いよくすり付けられた。
「りゃあっっ、ふゃぁああああ!!」
自分にかかっていた制限をいきなり外され、身構える間もないままに強烈すぎる絶頂が全身を呑み込んだ。
「うぁっ!? ぼ、僕も、駄目ぇっっ!!」
後を追って燈貴も達する。
(ぁ……あ…………ぅ……)
中に注ぎ込まれる、親友の雄種。
外に放出される、自分の汚濁。
それはまるで、自分の悪い部分を吐き出しつつ燈貴の色に染まっていくようで。
ずっと絶頂し続けているような錯覚に捕らわれる余韻。
中も外もすっかり白に染め上げられた橙の身体。
射精は未だ止まらない。
ふるふると震える両腕を燈貴の背中にまわし、抱き寄せて。
俺は、目を閉じた。
「てめぇ、いい加減にしろよぉぉお!?」
「いたいいたいいたい痛いからっっ! 謝るから、爪立てるのは止めてっっ!!」
誰が止めるかっっ! お前のせいで俺は散々なんだぞっっ!!
「取り敢えずどけっ! というか抜けっ! 2回目のくせに、何でこんなに出るんだよ……」
腕はそれなりに動かせるようになったけど、それでもまだ力が入る状態じゃない。腹が重たいし苦しいしだから早く抜いて欲しい。
「えー? もう1回ぐらいしたかったのに……」
「や、止めてくれっっ!! 俺が持たねぇから!!」
こ、こいつ、こんだけ出しといてまだする気なのか!?
もう、本当に、勘弁してくれ……。
「……ねえ、竜火」
「あ? なんだ?」
「やっぱり、僕ってホモなのかな……?」
「……」
「こんな事するなんて、やっぱりおかしいよね……」
……おかしくなんか、ないよ。
「……いや、そんな事もないと思うぜ? 思春期の雄には、そういう奴が結構いるらしいし。それに、そういう奴もそのうち異性にしか興味を持たなくなるらしいしさ」
どこから手に入れた知識かは忘れたけど、思春期の不安定な精神ではそういう行き違いも多いらしい。
多分、俺も燈貴も、そういう事なんだろう。
…………って、あれ?
燈貴、泣いてる?
「お、おいおい! なんで泣いてんだよ……。お前に好きな奴が出来るまでは、俺がそばにいてやっから……だから、泣くなよ」
「……うん」
全く。俺の事をさっきまで攻めてたくせに、どうして立場が逆転してんだよ。いや、それとも元々の形に戻っただけか?
どちらにしろ、世話のやける奴だ。
もう一度、燈貴の体を抱き締める。
大丈夫だ。
俺はまだ、自分に嘘を吐け続けている。
……2ヶ月……いや、2ヶ月半、かι
長らく放置していた話の続き、やっと書き終えましたです。はい。すみませんです。
ではでは、あとがきっぽいものを書きます。
ひとまず、ここまでお読み下さったことを心から感謝します。本当にありがとうございますですm(_ _)m
途中に続編に繋がる伏線的なものを詰め込んだら、訳の分からないカオスが出来上がってしまいました←
続編を書く気力なんか残ってやしないのに、どうしてこんなに精神不安定な主人公を描写したのか、自分でも理解しかねます。
というか、あまりにも文章がお粗末すぎますよねι
燈貴視点のほうと照らし合わせないと分からない描写がありすぎて、ちょっと出来が悪すぎたかも。しかし、修正をする気力も残ってはいないのです。
もっと他人のお話を読んで勉強するべきですね……精進します。
それでは、これであとがきを締めさせていただきます。
最後までお付き合い頂き、ありがとう御座いました!
何かあれば、コメントをどうぞ。