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会者不離

/会者不離

作者GALD


紅葉の始まる季節、炎に飲まれていくかのように歯の色が赤に染まり出している。優しい色で、血で染めてはこうはならないだろう。俺の炎で燃やしたとしても、灼熱に飲まれてパチパチと悲鳴を上げて無残な燃えカスが残るだけ。俺の力では作り出せない色合いを生み出す季節と言うものの、すごさを感じている。けど、この風景も尻尾でも数えきれないぐらい目にしてきているせいで、自然に対しての価値観が色褪せてきている。
一度に九まで数えられるのだが、その思考を何回繰り返せば数え終えれるのか、俺には分からない。何百回季節の境目を経験してきたのか、覚えていないのだから計算のしようがない。
九本の尻尾はそれぞれに意思があるかのように、個々が不規則に揺れ動いているが、互いにうまく連携を取り合って絡まることを見事に避けている。自分の体の一部でありながらも無意識に振り回しているが、もつれ合ったことは記憶にない。呼吸するのと同じように、この行いは自然に定着している。
そして自身で尻尾を動かす以外に、肌に冷たい風が力を加えて煽いでいる。火の温もりでは温まり切らない俺の体に、芯まで吹き込んでくる冷たい風。そう、日の光は体温を上げるには及ばないほど俺の体にとっては温い。
この季節は俺にとっては寒いの部類に入っている。炎で暖を取ればいいのかもしれないが、炎の温さも俺にとってはいまいちなものだった。ただぬくもりとなって残っているのは彼の言葉。
人というものは孤独が嫌いで、誰かと共にありたくて、その渇望に取り巻かれながら俺は独り彷徨っている時であった。偶然だったのか必然だったのか、運命とは決まっている物なのかもしれないが、俺にはそれが奇跡的で輝いていた。
二人でいることで俺は様々な事を触れた。一人の時とは違った価値観や感覚、今まで歩き回っていた世界に何ら変わりないのに、その日を境に全くの別物に姿が変わって映った。
嬉しさを知った、何時何処であっても温かさを与えてくれる。
彼は言葉をくれた、友達であると。それがいつまでも俺の中で燃え続けている。俺の吹きせるような業火には到底及ばない弱火だが、燃え尽きることなく永遠と状態を保ち続けている。
たった一言、その場所その瞬間を思いでなどと記憶の一ページに刻んでしまい込むことができず、俺は毎日のようにその場所を訪れる。今日もそうしようと俺は向かっている。そこに行けば、その時の事がもっと鮮明に蘇って実感がわいてくるから。俺はどこかで、あの一瞬をずっと生かしておきたいのかもしれない。
優しさを学んだ、それは互いに温もりを分け合える喜びに近しい存在だった。
俺は悩んでいれば彼は心配して声を掛けてくれた。俺は内容を話すだけで楽になっていく気がしたが、終わると彼は同情してくれて色んな表情を見せてくれた。それがすごく嬉しくて、俺は楽以上のものを与えられていた。
逆に彼が困っている時は俺は同じように接そうと努力をした。すると、彼は言葉や表情を返してくれて、与える側も受け取る側と同じような温もりを得られた。だから、俺は彼と温かさを共有できている事を理解した。
炎タイプの俺でも感じたことのない炎からでは得られることのできない、優し殻生まれる喜びという異種の暖。これを貰ったことで、喜びを与えてやれる優しさが俺の中にも生まれて、ただ本能的に生きている疎外感に包まれた生活も熱を帯びた。
その始まりの一枚目を思い出になんてできるわけがなくて、俺はその瞬間を頭の中だけでも蘇らせたいのだろうか。
記憶を掘り返している内に俺は記念すべき場所へとたどり着いた。目立った物もなく、目印もなく、辺りには見あきるほど茂る木々。その中でもここだと何故決めつけて訪れるのか、俺の頭の中にある映像と照らし合わせているだけなので、誰かに対して説明をつけることはできない。
大事な瞬間だからこそはっきりと覚えていて、証人はいないけれどもここで間違えないと、俺は言う事が出来る。
取り巻く木々の色が異なっても、木々の配置、息を吹き返す懐かしさが俺にここであると訴えかけている。
何年たっても変わらない見覚えのある光景。色褪せることなく、むしろ季節によって色を変えて、大事な一ページとは異なる事もあり、比較することで自然の変化を楽しめた。
けれども、それは最初の数年間だけの話。結局は色を塗り替えた同じ絵、そして組み合わせも限られているのだから俺は飽きてしまった。
彼の映っているのは始まりの一枚目だけで、何千何万と僅かな変化を繰り返す、落ち葉の枚数などを考慮すると色合い以上の組み合わせがある風景の中に、彼は存在していない。
悲しさを知った、とても冷たくて炎でも温めることのできない心の冷たさ、それが悲しさだった。
彼は突然別れを告げて俺の前から立ち去って行った。再び会うと誓いを立てたまま、あれから一度も会っていない。
嘆き続けたけれども、俺の中はずっと涙と悲しみで一杯で、何回も涙があふれ出した。失ってから知った幸せという存在、それと反対に位置する悲しさが幸せと入れ替わった。
どれだけ火で温まっても温もることのない体、悲しさに俺の体は蝕まれた。何をやってもプラスに受け止めれない自分がそこにあった。
たぶん俺の体から寒波が過ぎ去るころには、彼との再会による温かい風が吹きこむときなのだろう。今も冷たく、未だ春の訪れを知らない俺の体の中にある幸せはずっと冬眠してしまったままだ。
「なぁ、お前あめちゃんもってねーか?」
ふいに背後を取られて言葉が飛んでくる。昔の優しさなど忘れ、日々研ぎ澄まされていく鋭い感覚を持ち始めた俺は、背後の相手を鋭く言葉で突き返そうとした。勢いよく振り返り、九本の尻尾が太い幹の様に音を立てて空気を薙ぎ払う。そして勢いよく言葉の突きを放った。
「持ってるわけないだっ…ん…」
勢いある突きはあっさりと止められてしまう。そしてぬるい感触が離れる。今起こったことよりも目の前の自分に対して、目を丸くしている俺と目線を交わしてしてやったといわんばかりに笑う襲撃者。
「あの時に教えてやったろ?お菓子を用意しとかないと悪戯してやるって。」
懐かしい始まりの切っ掛け、それでも俺の頭にはっきりとした映像が再生される。あの日も背後を取られた。手ぶらの俺に急に物を馴れ馴れしくセがるものだから、俺はイラッと来て突き返したが、彼はなかなか引いてくれなかった。
それが彼と俺との友達の始まり、しかしその時はお菓子ちょうだいなどと可愛い言葉を使っていたが、今は背丈が可愛い枠を超えて、たくましいの域に達している。
「俺が今までどれだけ…」
「こういう日だからな、驚かせてやろうと思った。」
自分でけし掛けれたのならこっちからいってやるつもりだった。けれど、本当に消息が分からなくて俺は今日この時まで彼との時間が停止していた。
今彼との出会いにより熱が生まれて、エンジンが稼働して歯車が回り出して再び彼との時間が起動し始めた。
「俺の前ぐらい私でいいだろ、昔みたいに。」
そういって彼はその場に座り込んだ。久しいからか、彼もそれなりに話すことを持ち合わせているようだ。
「私なんて似合わないだろ。お前はすっかり変わったな。何年ぐらいだ?」
俺も忘れたよと彼は適当に受け流した。
今まで止まっていた時間など私が知る術がない。ただ時間の再起だけを待ち続けてきた私にとって、意味のなさない時間など皆無である。
世界そのものが悲しみで凍ったレンズでしか見渡せることができず、ただ途方に暮れる毎日の中で私は絶望しながらも、死を選ぼうとはしなかった。いつも、彼の言葉が冷めることなく私にとっての唯一の温もりであって、いつかはこの悲しさを溶かしてくれると信じていたのだろう。
結果としては溶かすに前は至らなかったが、毎日の私の支えとなり動力源の役割を担ってくれた。彼は言葉というもので、間接的に支えてていたが、今はこうして目の前で直接支えてくれているそんな気がした。
けれども私の心にあり続けた映像は目の前のと彼はとは異なる。変わってしまったのは身長などの身体的成長だけではなく、私に対する視線も違ってしまったようだ。
前のように無邪気に触れ合っていたころの笑顔はなく、それに座り込んだ場所や返答の淡白さからも私と距離を置いているような気がしてならない。
変な不安が私に目を付けているような感じがして、私はさっきは何であんな事をしたのかと揺さぶりをかけると、やってから後悔してるなどと彼は返してくる。再び私は氷河期を迎えようとしていた。
「勘違いするなって。別に嫌いになったわけじゃないからさ。ただ、今こうして見ると色々驚いてるんだ。子供のころは何にも考えてなかっただろうし。」
やはり成長という段階を通して変わり果ててしまったのだろう。私と彼とは種族の壁も存在しているのだから、遠い存在になってしまっても不思議はない。
「駄目だよね…私…。」
自分にブレーキが私はかけられなくなっていた。当然の事なのだから諦めなければならないのは、私自身重々承知している。
けれども、捨てきれないと言えば正しいのか私は現実を否定したかった。あの別れの時もそう、彼はそういっていないのだけれど、憶測でしかないのだけれども、私には良くない先が見えていた。
私の体から体温を吸って逃げていくかのように、生温い感覚が頬に流れる。強気な事を言っていても、私はやはり弱い存在なのだろう。こうやって、都合のいいように私なんて単語を使って、彼の意思を引こうとする。彼の前だから甘えたくなってしまうのだ。
だからこうして、離れていく彼の存在をなんとかこちら側に引き寄せようと手を打っている。けれども、この涙が私の幸せを吸い取っている事は事実で、私の演技ではない。
離れたくないという私の思いの結晶がこうして具現化して体から漏れ出している。自分でもそうなり得ないと分かっているのに、諦めきれないとは変な話である。
「おいおい、急に女らしくなるなって。」
焦りを感じている様子もなく、問題事に対して冷静に向かい合う彼。そして、ゆっくりと初めて私に触れる。
久々のこの手の感覚、前よりも随分大きくなってはいるが、優しく撫でるこの感覚は記憶の棚にふりかかっている埃をはいてくれる。優しいという単語で片付けてしまえばそれまでなのだが、私にとっては懐かしく思い出のある行為である。
懐かしさが甦るにつれて、昔の様に安心感を得ることが私は出来るようになり、今までの不安が一気に爆発した。
きっとこんな情けない様を見せるの前彼の前だけに限られるだろう、だから今だけ甘えさせてほしい、受け止めてほしいと自分をさらけ出してしまう。
私の悲しみを閉じ込めていた半壊している理性のダムを、更に自ら解き放ち全てを彼に流し出し爆発したものは勢いを増して、彼に流れ出る。
「悪かったな、けれどもそろそろお別れだ。その辺は察してくれよ…な?」
そっと温もりが離れる。そして遠のいて行く彼の面影。駆け出したいという思いはあったけれども、私はその場で止まった。
あの時とは違うちゃんとした別れ、きっとこれをハッキリさせるために彼は再び奇跡的な出会いを起してくれたのだろう。
いつの日かは忘れてしまったのだけれども、その日の出来事は出会った時の様にはっきりと覚えている。
永遠の別れと告げられたわけもなく、ただその日の別れを互いに行ってまた明日と笑い合った、その笑顔の交差が最後。最後の別れが笑顔で互いに向かい合えた事が、良かったのか悪かったのか、今日に至るまでは彼とは一言もやり取りがなかった。
別れてから100も数えるに至らない内に、私は車とか呼ばれる物のタイヤと言われる部位が、地面にひどく擦れて耳に響く嫌な音に襲われた。
この嫌な音に不意に私は眼にしていない光景を悟ってしまった。何度も憶測だと自分にとなえさせながら私は足を急がせた。
森を抜けるとそこには自然ではなり得ない固い線が伸びている。本来ここも昔は土であったが、今はコンクリートという黒い存在に押し固められている。
この上を車がすさまじい速度で走りまわっている様は、私の生活から見ればもはや道路の上は違う世界同然だった。そしてその道路にそって見渡すと珍しく車が止まっている。中から人が下りてきていて、何か必死に取り込んでいる。降りてきている人物はどうでも良かった、ただその場で無残に黒を赤く塗っている存在の方が私には重要だった。
その前に立ちはだかるものには容赦なく牙を剥く鉄の塊共が駆け回るフィールドに、彼は飛び込んでしまったのだろう。彼は光を見ることを止めて、身に纏う衣類を残酷な赤色に染めていた。それが私と彼との終わりの記憶。
二回目の終わりを私は迎えたが、今回は機会もあったにもかかわらず、二回とも私は言えずに時を逃してしまった。ずっと私が持っている飴玉の様に甘い気持を上げられずに。
それが後悔につながって、翌日もまたこうして訪れている。身にしみて習慣と化しているし、未練もあって私はここにきている。
「なぁ、お前…」
このやりとりも習慣、というわけではない。昨日は殺気を込めて振り返ってしまったが、今日は期待で振り向いた。
「おっ、びっくりしてるな。言ったろ、悪戯するってさ。大丈夫、ほら、俺は生きてる。悪いな待たせて…おい、急に飛びついてく…」
一日遅れたが、口の中でずっと飛び出せずにいた飴玉を直接口の中から口の中にほりこんでやった。


全然ハロウィンの意味ないですね。
最初はバットエンドのつもりだったんですが、自分にはそんなことが出来ませんでした。
最後まで読んでくださってありがとうございました。


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Last-modified: 2011-10-31 (月) 00:00:00
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