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今年の正月でしかできないSS集

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正月なのに予定が何にもない…。というわけで短編集を書いてみました。テーマは「正月」です(タイトルには今年しかできないとありますが別に今年やらなくてもいい短編も入っているので)
基本ギャグでまとまっているのでお気軽にお読みください。

2日から載せ、作者名は正月早々駄文を書いてる作者と思われたくなかったため伏せておきました。ただ多くの嬉しいコメントが届きましたため、後書きの最後で明かすことにします。分かっている方もいるとは思いますが、多分間違ってはいませんよ。



作品前解説
ブイズの正月書き初め大会……オチがある意味すごいです。
プラズマ団のお年玉……あのお方のキャラ崩壊に注意してください。
今年は蛇が主役!……とあるカップル(?)の物語。
福袋に入っているのは?……楽しみを求める男の話。


ブイズの正月書き初め大会 



「よし、正月だし書き初めをやってみようぜ!」
 サンダースの一言で、イーブイ達7匹の書き初め大会が始まった。

「ねぇ、グレイシアお姉ちゃん、書き初めって何?」
 まだ幼いイーブイが言った。
「書き初めって言うのはね、新年の初めに墨と筆を使って用紙に今年の目標を書く事よ」
「へーっ! 面白そう!」
「ああ、だが、普通に目標書くんじゃつまらないな。そこで、自分を象徴とした2文字の漢字で出来た言葉を書くことにしよう! 字の上手さは一切問わない。一番象徴的でいいと思う文字を書いた奴には賞品が与えられる、ってのはどうだ?」
「あっ! それは面白いですね!」
 サンダースの提案にエーフィが賛成する。
「でも賞品っていったい何? めんどくさいんだけど」
「大体誰が審査するんだい?」
 ブースターとシャワーズが質問する。サンダースはふふん、と声を出し、こう説明した。
「賞品は俺達のマスターがこっそり隠し持ってる最高級ポケモンフーズ! そして審査員はマスターだ!」
「って何俺を巻き込んでるんだ!」
 マスター――イーブイ達のトレーナーは会話を無視してネットに入り込んでいたが、サンダースの勝手すぎるルールに当然反応した。
「あれは本当に大切なポケモンフーズなの! 賞品にするわけには……」
「そうか、じゃあ俺達今年は働かないからな」
 最高級ポケモンフーズの威力は強烈であり、サンダース以外の6匹はすでにやる気満々のようだ。
「マスター、私達がバトルしなかったらあなたはどうなるかしら? 戦力が一気に乏しくなるわよ」
「マスター、ポケモンフーズ食べたいよ! それにしようよ!」
 全員がポケモンフーズを賞品にしない限りバトルしないと言い出したのでトレーナーは仕方なくそのルールを許可した。

「よーし、紙と筆と墨だ! いいか、発表まで全員見せ合いっこなしだ!」
 7匹がそれぞれ用具を手に取り、互いの間隔を離れて書き始める。なお幼いため漢字の分からないイーブイにはタブンネが補助することになった。
「えーと、こう書いてこう……うわああああ!!」
「よし、俺のテーマはこれで決まりだ!」
「ふふふ、ポケモンフーズは頂くわ!」
 それぞれ苦戦したりしながらも筆を進めていく。そんな中一匹だけ書いていないポケモンがいた。リーフィアである。
「うーん……、どんな言葉にしようかしら? 何か自分を象徴するのに刺激的で斬新な言葉……、あっ!」
 リーフィアの視線の先にはパソコンに目を向けているトレーナーの姿があった。
「まったくうちのブイズ達はいきなりとんでもない事を……、審査で揉めたらまず俺に来るし……、おっ、新作入ってる、読もうっと」
 トレーナーは不満を呟きながらとあるポケモンを主にした小説サイトに入って小説を読んでいた。それを見たリーフィアは、ある2文字が頭に浮かんだ。自分を象徴させる最もふさわしい2文字……彼女はすぐ書き始めた。
「ふふっ、これは最高の2文字になるわ! 確実にポケモンフーズが食べられる!」


「よーし出来たな? 早速発表するぞ!」
 サンダースが仕切って各自に発表していく。
「まずはイーブイ……ってお前の体凄いな! 何があった!」
「失敗しちゃったよ! てへっ!」
 イーブイのいたるところに墨がついている。失敗とは何だったのだろうか。
「僕の言葉はこれだよ!」
 あらかじめ裏返しにされていた用紙をタブンネが全員に見えるよう持ち上げる。紙には、何やら黒い線が何の法則もなく書かれている。
「……何だこれ」
 一同首をかしげる。イーブイは元気よくこう答えた。
「失敗しちゃったけど、ボクを象徴する言葉は『進化』だよ!」
 なるほど、と全員頷いた。イーブイは進化先が多くとても象徴するのにふさわしい言葉である。
「よし、次はブースター!」
「おいらの自信作だよ! よーく見てね!」
 タブンネが用紙を持ち上げる。紙には「唯一」と書かれていた。
「…………」
 一同黙り込む。彼の象徴にそれなりにふさわしく、脱却したい切実な思いでもあるのだから。

 その後、サンダースの言葉は「駿足」、シャワーズは「尾鰭(おびれ)」、エーフィは「太陽」、ブラッキーは「月光」、グレイシアは「吹雪」とそれぞれ発表した。

「……それにしてもグレイシア、『ネクタイ』の方が象徴してると思うんだが」
「失礼ね! 大体カタカナ4文字じゃないの! さあ、最後はリーフィアの番よ!」
 リーフィアは余裕な顔をしていた。
「あなた達にはセンスってものが無いのかしら? 私の優勝は確定ね」
「そんなに自信があるのかよ?」
 6匹とトレーナーの視線が一気に集まる。
「マスターの心を一気につかむ私にとって最もふさわしい2文字の言葉は……これよっ!!」
 リーフィアの用紙が持ち上がった。そこに書かれていた2文字の漢字とは……。


「聖戦」


「……………………」
 一同何も言えなかった。
 そして優勝はリーフィアになったとかならなかったとか……。

――End





プラズマ団のお年玉 


 イッシュ地方でとある組織が人々のポケモンを解放しようとしていた。その組織はプラズマ団と言い、少年Nを王と崇め、ゲーチスら7賢人を組織の指導者にし、演説で人々の心を惑わせたりポケモンを奪ったりしていた。機が熟したその時、伝説のポケモンの力でチャンピォン、アデクを倒し、隠していた巨大な城を地上に出現、もはやイッシュ地方はプラズマ団の手によりトレーナーの全てのポケモンが解放されようとしていた。
 しかし、プラズマ団の巨大な計画は失敗に終わった。理由は一つ、Nと同じく伝説のポケモンに認められた一人の若きトレーナーの存在である。トレーナーは圧倒的強さでN、真の黒幕であるゲーチスを倒す。Nはアデクに説得されイッシュ地方よりはるか北の地方へと旅立ち、ゲーチスら七賢人は少数の部下とともに逃亡。これによりプラズマ団は壊滅……したはずだった。

 今回の話はそれから一年と数か月が経ち、ゲーチスが組織のボスとなり、団員数こそ減ったものの規律や思考が完全に整えられ以前とはまるで違うプラズマ団となり、新たなる計画へと密かに動き始めていた……、その頃の正月の話である。

「ゲーチス様! 明けましておめでとうございます! 今年いよいよ我々プラズマ団はイッシュ地方制圧計画を実行しますね!」
「実行日は6月23日……。壊滅してから辛かったこの1年半! それに加え約半年も待たなければならない! しかし順調に整っています! さあゲーチス様、貴方がイッシュ地方の支配者となる時です!」
 ここは密かに建設中の飛行可能な帆船、プラズマフリゲート。もっとも建設中なので、飛行することはできないのだが。
 船の中の司令室。そこには団員とみられる男女が二人、そして奇抜な服を着て杖を持ち、片目を眼帯で隠した老人がいた。その老人こそ、今のプラズマ団ボス、ゲーチスである。
「ふむ、貴方達……、ワタクシに新年の挨拶とは良い心掛けです。しかし貴方方の言う通り今年は我々プラズマ団がこの地方を制圧する大いなる計画を実行する年。まだ準備は終わっていないのです。さあ、今すぐ持ち場に戻り作業を続けるのです!」
 ゲーチスは目の前の団員二人に尊大とした口調で言い放った。今日は正月だというのにプラズマ団は休日を返上し計画を進めているのだ。

「はい、ゲーチス様! しかし、実は私達はゲーチス様から頂きたいものがあるのです!」
 男の団員がはっきりとした声で言った。その言葉が言い終わると同時に女の団員は同じくと頷いた。
「頂きたいものですか?」
 男の要望がゲーチスには分からなかった。ゲーチスがしばらく悩んでいると、痺れを切らした男の団員がこう発言した。
「ゲーチス様、お年玉です! 私達は貴方にお年玉を頂くためここに来たのです!」
 なるほど、とゲーチスは理解した。しかしすぐ不快な気持ちとなった。
「お年玉ですか……? もう貴方達は立派に自立しているではないですか」
 ゲーチスの問いに二人はこう返した。
「はい、私は親から離れ……というよりもプラズマ団に入っている事を知られないよう一切の連絡を絶ち一人で暮らしています! しかし私はまだ16歳です! 未成年なのです!」
「私も彼と同じです! 私もまだ15歳! お年玉をもらってもよいと思います!」

 彼らのお年玉が欲しいという願いをゲーチスは真剣に受け止めた。彼らはまだ未成年。親に悪事をしていることがばれないようずっと隠し精神が成長しきっていない中辛い団員の仕事をさせてきた。彼らにお年玉をあげる価値は十分にある……と。

「分かりました、お年玉をあげましょう」
 ゲーチスのその言葉で不安そうだった二人の団員は晴れやかな表情を見せた。
「あ、ありがとうございます! ゲーチス様!」
「大事に使わせていただきます!」
 ゲーチスは嬉しそうな彼らを見て笑みを浮かべた。
「では、準備するので部屋の外で待っていなさい」
「はいっ!」

 3分ほどでゲーチスから部屋に入りなさいと声がして、二人は指令室に入っていった。早速彼らはゲーチスから小さな紙袋を渡された。
「ここで開けてよろしいでしょうか?」
「ええ、貴方達の満足した表情が見たいですから」
 二人は袋を開け、中に入っているものを取り出した。


「あの……ゲーチス様、何ですかこれ?」
 明るい表情から一転、疑問と失望感を顔に出した二人がゲーチスに質問した。
 中に入っていた物……それは紙幣ではなく、何枚もの男の写真。若く筋肉質、おまけに上半身裸でカッコよくポーズを決めている。またその写真は白黒だった。

「貴方達が最高にうれしいと感じさせられるもの……それはワタクシの若かりし頃の写真なのです! 滅多に見られないワタクシの輝いていたあの時代! ああ、懐かしい!」
「…………」
 二人は無言で下を向く。
「あのころの闘志とやる気に満ちたかっこいいワタクシ! 毎日眺めていれば元気が出てきます! またお守りとして入れておけば絶対に国際警察などから捕まることはありません!」
「…………」
 ゲーチスの揚々とした説明に一切耳を傾けずがっくりと下を向き続ける二人。ゲーチスはさらに話を続ける。
「いいですか! この写真はお年玉としてただで貴方達にあげたのです! 実は近くこれを組織内で1枚1000円で販売予定なのです! 効果絶大、何よりかっこいいワタクシの写真、すぐに入手困難になると考えているのです! それを貴方達は……」
「…………」


 実はプラズマ団はこの時深刻な資金不足に陥っていた。そこでゲーチスは資金回収の商売としてこの写真をご利益の高いものと偽り販売しようとしていたのである。なお二人は数日後プラズマ団を脱退したらしい。

 ……プラズマ団の大いなる計画がある若きトレーナーにより再び阻止され失敗に終わるのはそれから半年後のことである。

――End




今年は蛇が主役! 


「グースちゃん! 初詣行こうぜ! 早く準備してくれ!」
 はぁ……彼のテンションが異常に高い。いつもはあたしのこと普通にザングースとかイタチ野郎とか呼んでるのに。たった今新年が明けたからって言うのもあるけど。でも一番の理由は……。
「今年は巳年! 蛇の年! 俺が主役だぜ!!」
 そう、巳年になった事。別に強くなるなんてこともないのに、自分が主役だからってうきうきしてるの。彼ハブネークだもん。まったく、いい年して情けないわよ。
「今日の夜はこのままランキング*1観たいんだけど……」
「録画すりゃいいって! 俺はこの神聖な年は年明けたらすぐ初詣に行くって一年前から決めてたんだよ!」
 大体年明けとほぼ同時にあたしの家にやってきて迷惑極まりない。それに普段彼はあんな感じじゃないの。普通の用事であたしの家に来たりしないのよ?
 普段あたしと彼は仲も相性もすごく悪いの。まあ種族も絡んでるから仕方ないわね。お互いが見かけたらバトル。どんな状況でもバトル。やらない時がたまにあるけど一言交わして終わり。子供の時からそれの繰り返し。勿論お互い改善しようと全然思ってない。
 え? 仲が悪いのに何で離れようとしないかって? それはお互い家が隣同士だし彼普段から悪いってわけじゃないし。何より彼ちょっとかっこいい……、いや、別に彼のこと好きって思ってないからね! ハブネークの事よく知らないし!

「グースちゃん! ほらさっさと行く! 何なら手伝ってやるぜ!!」
 そういってハブネークが家に上がりこんできた……って待ちなさいよ!
「何勝手に女子の家に上がりこんでるのよ!?」
「おおっ! 何やら入ってそうなタンスじゃねーか! 覗いてみよーっと!」
「分かった! 分かったから! 行くから早く出てってちょうだい! すぐ準備するから!」
 まったく彼ホント何!? もしかして酔ってる!? いや、まだ飲める年じゃないし顔普通だし。とりあえず家から出さないと……って何冷蔵庫開けてるの!?
「うおおおお!! 旨そうな刺身! 食っていい?」
「ダメーッ! それあたしの明日のおかず! 早く出ていきなさーい!」
「ぐぼぁっ!!」
 長い胴体にアイアンテールを叩き込みひるんだ隙に空いている窓から放り投げる。
 ピシャッ! ようやくハブネークを外に出した。何で大晦日の夜に疲れなくちゃならないわけ? とりあえずする事は後のテレビ全部録画してマフラー出して……。
「ねぇグースちゃんまだー? 俺もう待てない! 早く神社で願い事したいんだよ!」
 見ると彼は窓の外であたしをみながら体をうねらせてた。普通に気持ち悪い!
「ハブネークは先行っててよ! すぐ追いつくから!」
 あたしがこう返事すると酷い答えが返ってきた。
「ダーメ! 初詣は可愛い子と一緒に行くって決めてあるの! それに途中で別のお楽しみもしたいし! やべぇ想像だけで俺のバズーカが大きくなってきた! という訳でさっさと準備してレッツゴー!」
 ……ハブネークが巳年の異常なテンションで変態になった。もう一つやることもできた。準備って何? あたしが純潔を失う心の準備? 窓を開ける。
「準備できたか! 早速「死ね! この変態がぁ!!」
 ハブネークの顎にまず強烈な一撃。そこからインファイトでどんどん殴りつけてっと。
「ぎゃああああ!! イタイイタイ死ぬって!! いやマジで止め……」
「一人で逝ってきなさい、死の世界の初詣に」


 ずるずるずる……。私は瀕死寸前のハブネークのしっぽを引きずっていた。お、重い……。何でこんなことしなきゃいけないわけ?
「あー、まさかグースちゃんに引っ張られながら行くなんて思いもよらなかった」
「アンタが変な事言うからでしょ! いいから動けないんなら大人しくして! 絶対襲わないでよ!」
「ったくあれはほんの冗談だって……ん?」
 神社に近づいていくとともにだんだん道が混んできた。神社に向かうポケモン達があたしを変な目で見てる。まあ当然ね。こんなの引きずってたら。
「ふう……。ハブネーク、そろそろ自分で進みなさいよ! 恥ずかしいでしょ!」
「ふふふ……。分かっているさグースちゃん! さあ、俺は今からっ!」
 うわっ! いきなり動き出した! 何か復活した!
「年始の究極のイベント会場神社! 露店が立ち並びグルメも満喫可能! おみくじで遊び心もばっちり確保! さあ、ヒャッハータイムスタートだぜ!!」
 そういってハブネークはポケモンの集団の中に突っ込んでいった……。まったく、遊園地ではしゃぎまくってるガキじゃあるまいし、ホント付き合いきれない! 行かなきゃよかったかなぁ……。

「愛しのグースちゃあん!! 綿あめ買ってきたぜー!!」
「誰が愛しだぁ!!」
 夜空に(縦方向)吹っ飛んだハブネークが落とした2つの綿あめをうまくキャッチ。へぇ……、私の分まで買ってきてくれるなんて気が利いてるのね。そういえば彼に物を買ってもらうの、これが初めて……。
「イタタ……。早く食べようぜ。あと、俺に言うことがあるだろ?」
「あ……ありがとう……」
 ハブネークに綿あめを一つ渡して一緒に食べ始める。口の中に甘い味が広がっていく。
「綿あめ食べてるグースちゃん……やべえ可愛い! いい顔してるぜ!」
「そ、そう!? あ、あまりじろじろ見ないでよ!」
 ハブネークは食べながら笑顔であたしを見る。普段は怖い顔ばかりで、滅多に見られない表情。かっこいい……。あ、あれ!? この展開まずくない? もしかしてあたし……。

「あ、そうそう1000円ね」

「え、1000円? 何が?」
「俺達の綿あめの代金。 何? 誰も奢るとかタダで買ってくるなんて言ってないぜ! ほら早く早く! 実は財布忘れてきて代金10分以内に持って来いって言われてるんだよ! いいか、今年は蛇が主役だから俺には逆らえないの! ほら早く!」

 あ、ごめん! やっぱりさっきの展開全部なしで! これから始まるのは鮮血が飛び散り断末魔が響き渡るグロ展開! みんなごめんね、悪いのは全部彼だから!
「あれグースちゃん何その不気味な笑み? 何で無言でじわじわ向かってくるの? キャー襲われちゃう! ってか? いや俺じゃなくてグースちゃんg」



~しばらくお待ちください~



 やっぱりすごく混んでるわね。やっぱり寒いのかみんな体を震わせてる。あたしはさっき運動*2したからポカポカだけど。早く願い事して帰ろうっと。結構広い神社だから迷うわね……。えーと本殿はこっち……。

ドンッ!

「きゃあっ!」
「痛ってーっ!」
 いきなり何!? キノガッサがぶつかってきた。
「どこ見て歩いてんだよ! いてーだろうが!」
「ハァ!? あんたが勝手にぶつかってきたんでしょうが!」
「うるせー! お前がぶつかってきたんだよ! ほら詫びやがれ! 慰謝料よこしやがれ!」
 ああ、このキノガッサいわゆる当たり屋ね。もうしょうがない、一撃決めてさっさと……ってあれ!? か、体が急に痺れて……。
「ふっふっふ、俺がただぶつかっただけと思ったか? ついでに胞子をかけてやった。もう抵抗できねーぜ」
 ガシッ! 体が引っ張られていく……。
「ちょっと、どこ連れて行くのよ!」
「人気の無い所。慰謝料としてお前の体を頂くぜ。たーっぷりとな!」
 ええ!? あたし犯されちゃうの……? い、いやぁ!!
「だ、誰か助けてぇ!」
 周りがみんな見てる。でも……、誰もあたしを助けようとしない。
「オラ周りの奴ら見てるんじゃねぇ! さっさと行きやがれ! 俺に刃向うんならボコボコにしてやんぞコラァ!」
 こ、こんな一年の始まりなんて……。あたしは泣いていた。
 これもすべてそう。彼の……。

「待ちやがれそこのキノコ頭!!」
 誰かの大声がした。キノガッサの足が止まる。え……この声って!
「ああ? 俺の事かよ、このうねうねした奴が!」
「ああそうだぜキノコ頭! 俺はグースちゃんの彼氏! グースちゃんを放しやがれ!」
 ハ、ハブネーク!! 何でここに!? ていうか今彼氏って言わなかった? 誰が彼女だぁ!! って今はそんなことどうでもいいの! 早く助けて!
「ふん、やる気か? 俺に勝てると思ってるのか?」
「ケッ、今年は巳年、蛇が主役の一年だ! 俺が主役で最強なんだ!」
 ……正直ハブネークの言ってる事はメチャクチャ。でも、彼が勝たないとあたしは……。もう祈るしかない!
「おっしゃあ!! 死ねうねうね野郎!!」
「こっちのセリフだキノコ頭がぁ!!」
 お願いっ……!


「なあグースちゃん、5円玉貸してくれよ。明日返すからさ!」
「……別に5円位出すわよ。でも良かった。あなたが勝ってくれて」
 勝敗はすぐに着いた。ハブネークが長い体であっという間にキノガッサを締め付ける。動けない間にダストシュート連射……。彼らしい戦い方ね。キノガッサはすぐ逃げだしていった。
 あたし達はようやく賽銭箱の前に近づいてきた。長かった……。
「……ねえハブネーク。聞きたいことがあるの」
「なんだいグースちゃん! 性的な事以外なら何でも話すぜ!」
 いや、誰もあなたの性的な事なんて聞かないから。まったくさっきのカッコ良さはどこに行ったんだか……。
……正直、キノガッサを倒した時あたしを見てにこってしたハブネーク、すごくカッコ良かったの。思わず泣きながら彼に抱きついちゃった!
「もう大丈夫だぜ! グースちゃんの助けてって声がしたから来たけど危なかったな!」
「うわぁぁん!! ハブネーク、本当にありがとう! う、うわぁぁぁん!!」
 ……あんなに泣いたの久しぶり。それにハブネークに泣き顔存分に見られちゃった。は、恥ずかしい!!

「ハブネーク、正月が終わったらまたいつも通りの関係になるの?」
「え?」
 いつも通りの関係……。険悪な雰囲気でバトル三昧を毎日繰り返す。
「あたしは今日のハブネークを見て思ったの! もう前みたいな関係はやめようよ! きょうのあなたすごく活き活きして最高だったの! これからは仲良く生活していきましょうよ!」
「…………」
 ハブネークは黙り込む。しばらくしてようやく口を開いた。
「……実は、俺は前からこんな殺伐とした関係は嫌だって思ってたんだ」
 ええ!? ハブネークは続ける。
「お前は毎日俺と顔を合わせるたび警戒的な表情になる。勿論俺もだが。……実はある時、お前が友達といるところを見たんだ。その時俺は気付かれないようにしていた。種族の因縁からか襲いたい気持ちが出てきたが何とかこらえた。その時のお前の笑ってた顔……とっても可愛かったぜ。さっき綿あめを食ってた時みたいに。俺は思ったんだ。戦ってる最中の獲物をしとめるような怖い顔じゃなくてお前の笑ってる顔が見たいって。でもよ、そんなことお前に言える訳ないし、やっぱ種族の因縁には勝てねえ。ついバトルになっちまうんだ」
 しんみりとしてハブネークはそう語った。
「そうだったんだ……」

前のカップルの次があたしたちの番。あたしは彼を見る。
「じゃあ今年から種族の事は忘れて、仲良くしていきましょう! 今年もよろしくね!」
「ああ! じゃあまた今日みたいに勝手に家に上がりこませてもらうぜ! それから今日からグースちゃんって呼ばせてもらうわ!」
「ち、ちょっと家に上がりこむのはダメ! でも……グースって呼ぶのはまあ……いいわ。でも……その代わりあなたのことをハブ君って呼んでいい?」
 何かすんなりと話が進んできた。あ、あれ? 何このカップルみたいな会話!? 気がついたらあたしの中の何かが熱くなってるような……。い、いやまさかっ! そんな訳ないわよ! まだ胞子の効果が残ってるだけ! 絶対そう!
「おお、ハブ君! 呼びやすいからオッケーだ! それにしてもお互いニックネームで呼び合うなんてカップルだな! よし、帰ったら記念にベッドで……ゴフッ!!」
 いや、気のせいね! こんな変態でバカな蛇を好きになるなんて! あ、前のカップルが賽銭箱から離れた。あたしたちの番だ! 一撃喰らってふらふらなハブ君を正気に戻す。

「はい5円玉! ちゃんとしたお願いしなさいよ?」
「はいよ!」
 あたし達は5円玉を入れ、太い縄を動かして鈴の音を鳴らす。ガラガラと音を立てる。そのまま目をつむって手を合わせて……っと。

「よーし、願い事終了! さーて、おみくじ引きに行こうぜ!」
「ねえハブ君、何をお願いしたの?」
 とりあえずハブ君に聞いてみた。まあ普通は秘密って言うはずだけど……以外にも彼は答えた。
「俺? えーとまず今年は俺が主役だから最強になれますように、美味しいものがいっぱい食べれますように、お金持ちになれますように、それから……」
 彼の願い……欲望感丸出し。無駄に多いし、絶対神様聞いてくれないって。
「あ、グースちゃん呆れてるな? で、お前は何をお願いしたんだよ?」
「あたし? 当然秘密よっ!」
「な、何だとぉ!? 不公平だろが! 教えてくれ!!」
 しつこく聞いてくるハブ君。それに対しにこにこしながらだんまりを決め込むあたし。こんな楽しい初詣になるなんて思ってなかったわ!
 え、あたしのお願い? ふふっ、恥ずかしいんだけど……。こっそり教えるわね。あたしの願い事は……。
「ハブ君と去年みたいな雰囲気にならずに楽しく過ごせる一年になりますように!」

――End




福袋に入っているのは……? 


 俺は今新しい楽しみを探している。ポケモンを初めて受け取って20年……、様々な出来事があった。
 悪の組織を4つも壊滅させた。あまたの冒険を繰り広げ数多くの伝説のポケモンと出会った。バッジもたくさん手に入れ、カントー、ホウエン、シンオウ、イッシュのリーグを立て続けに制覇。俺は周りから最強と呼ばれるポケモントレーナーとなった。……最もそれは昔の話。今じゃ伝説のポケモンを手に入れリーグを制覇したトレーナーは数多くいる。まあ俺の存在が大きいのかもしれないが。
 そこらの道にいるトレーナーとのバトルには飽きた。楽勝すぎるから。そこで当時まだ新しかったバトルフロンティアという施設に挑んだ。最初の頃はその異常な強さに驚き、ポケモンを一から鍛えなおしたり戦力となるポケモンをタマゴから厳選したり、充実したポケモン生活を送った。しかし数年で100連勝位なら楽にできるほどの実力となり、施設を飽きるほど攻略した。その頃から周りから神に最も近づいたトレーナーと呼ばれるようになった。
 バトルに飽きた俺はそれ以外のことに手を伸ばした。ポケモンコンテスト、ポケスロン、ミュージカル……。あの時は楽しかったもののやはり飽きが来た。
 今俺には多くのポケモンがいる。ゲノセクトまでの現在わかっている数の種類は全て図鑑に収めた。色違いも多くいる。バトル用、コンテスト用、ポケスロン用と、当時は育成に非常に苦労したがそれぞれの役目を究めたポケモン達が俺のもとで活躍してきた。。ただポケモンに関する全てに飽きが来た俺は、そいつらを全て別の奴に預け世話をさせている。
 俺は20年間で莫大な資産を貯めた。賞金をジェントルマンやマダムから荒稼ぎしたりバトルポイントを強化アイテムに変換し、それを売り払うことで大金を得るなどしたからだ。恐らく俺の全てのポケモン達を一生預けた費用を引いても半分以上残るだろう。その有り余る金で豪勢な暮らしをしている。毎日が高級料理、豪華な家、50人にも昇る使用人……。しかしそんな生活もすぐに飽き、今も続けているものの全く面白くない。かと言ってポケモン一筋で生きてきた俺は学業も運動もまるで出来ず、する事が無い。
 最早新たなポケモンを作ろうと思えなくなる完璧なポケモン達、一生生活に困らない資金……。
 果たして今の俺が楽しめることはあるのだろうか?


 俺はタマムシシティのゲームセンターを出た。スロットが面白いとは思わなかったが時間潰しになんとなくやった。年始という事もあり道は混雑している。今日はこれからどうするか……、そう考えながら歩いていると俺はある長蛇の列を目にした。
「よう、何だいこの長い列は?」
 俺は興味を持ち最後尾の寒そうに待っている青年に話しかける。
「これかい? タマムシデパートの年始恒例、ドキドキ福袋を買うための行列だよ」
 ドキドキ福袋……。テレビで見たことがある。確か袋の中にバトルの道具、アクセサリーに木の実が安物や高級品までたくさん詰まっている袋だ。勿論開けてからじゃないと中身は分からない。ただその年の十二支に合わせたものが入っている傾向があるらしい。また、大当たりとして十二支に合わせた珍しいポケモンが入っていることがあるとか。
「去年の大当たりは色違いのタツベイらしいよ。僕は3年前からずっと買い続けてるけど未だに大当たりが来ない。まあ毎年いいアイテムが手に入ってるけど」
 青年は白い息を吐きながら言った。特にする事のない俺はその列に並ぶ事にした。まあ大抵……というより全部持ってるかもしれないが何が入ってるかという期待感が楽しめそうだからだ。
「あれ、あんたも並ぶのかい? 一人一袋しか買えないから数は大丈夫だと思うけど……、5万円もするよ。僕もお金が貯まるまで年末ずっと戦って賞金を……」
 俺はそう話す青年に財布から札束を見せつける。すると青年は表情を変え話すのをやめ、列の先の方を向いてしまった。
 販売開始まであと30分のようだ。その位待てる。購入したら早速帰って開けることにしよう。


 小さな田舎町、マサラタウンの一際目立つ豪邸。そこに俺は住んでいる。お袋はもう何年か前に他界し、俺と使用人だけがこの屋敷にいる。もっとも今は正月だから使用人はみんな実家に帰省している。福袋を購入してすぐに帰ってきた俺は、早速開けてみることにした。
 ちなみにこの福袋、ただの袋ではない。大きさ、重さは良く普通の店に売られている福袋と変わらないが、この袋には「主人公バッグの定理構造」が施されている。

 「主人公バッグの定理構造」とは、どんな物も、入れ口に入るまでの大きさなら数に制限されることなく入れることができ、重さも全く変わらない仕組みの構造だ。さらに外部からの衝撃を全く受ける事が無い上、木の実も入れておけば腐る事が無い。俺もトレーナーだった頃、この構造のバッグの中に薬やボールや進化アイテム、木の実なんかを数えきれないほど入れた。多分総量は6桁ほどになっただろう。しかし数年前バッグと共に処分してしまった。
 一体どんな仕組みになっているのか……、ある時俺は本気で考えたことがあるが、その仕組みは国家機密になっていて分からない。バッグを解体すると同時にその構造と中の物はすべて消えてしまうから、絶対に分からない。世間では「中は4次元世界になっている」という考えになっているが。
 とにかく、この福袋の中にはとてつもない量のアイテムがたくさん入っているはずだ。5万円して当然だ。


 俺はテーブルの上に袋を置き、封をしている赤い紐を解く。そして袋の中に手を入れる。早速手に何か物の感触がした。あまり大きくないようだ。それをつかんで引き上げてみる。
 俺は今何が出てくるかという期待に興奮している。珍しいアイテムがくるか、それとも……。正直俺の今の気持ちはバトルタワーの記録を塗り続けているのと同じ興奮に等しいと感じる。
 最初に福袋から出てきたものは……


 かずのこ。


 俺は聞きたいことがある。
「なんでかずのこが福袋に入ってるんだよ!?」

 うっかり大声を出してしまった。俺以外誰にも屋敷にいなくて良かった……。
 しかし福袋にかずのこが入っているなんて聞いた事が無い。しかもこの福袋はポケモン専用の福袋……のはず。そう思い店でもらったチラシを見てみる。

『今年もやります! タマムシデパート恒例、ドキドキ福袋! 貴重なアイテムから安物まで、多くの種類が入っています!!
今年の大当たりも勿論恒例、十二支に合わせた超レアポケモン! 用意した福袋の中に1つだけ入っています! 運試しにおひとつ! 一袋五万円!!

※開封した商品につきましては返品は一切受け付けません。また中身の物がもとで生じたトラブル等につきましては当社は一切の責任を負いません。
なお年末当デパートで売れ残りました商品も一部入っております。おせちの具が入っていることがございますのでなるべくお早めに開けてください。

「なるほど、売れ残った商品を再利用ってか。……じゃねーよ!! ケチるなカントー1のデパートのくせに!!」
 すまない、また1人で突っ込んでしまった。昔旅をしていた時多くのトレーナーと出会い、冒険を共にしてきたことがあった。彼らの思わず突っ込みを入れたくなる癖や発言に俺は笑って返してきた。……しかし今彼らが何をしているかなんて知らない。あの頃は楽しかったな……。
 おっと、福袋に戻ろう。さすがに次におせち類が来ることは無いだろう。この福袋の中身はランダム。来る事なんて……。


 福袋から出てきた物一覧

・かずのこ  ・伊達巻き  ・栗きんとん  ・かまぼこ  ・昆布巻  ・黒豆
・キズぐすり×3  ・オレンの実×2  ・どくけし×2  ・まひなおし×1
・ねむけざまし×2  ・なんでもなおし×1  ・チーゴの実×3  
・ナナシの実×2  ・むしよけスプレー×1  ・シルバースプレー×6
・オボンのみ×1  げんきのかけら×1  モンスターボール(空)×3
・スーパーボール(空)×1  ・プレミアボール(空)×1


 どうやら俺は今年何か悪いものを持っているようだ。出てきた物はおせちセット全てに初心者でも簡単に手に入る道具……。もう笑うしかない。この福袋は大外れというより明らかに狙っている。まあ元は何が出てくるかというドキドキ感を味わいたくて買ったものだ。さて、楽しめたことだし袋を捨てることに…………、
「ん?」
 最後に手を入れて確認すると、まだ何か入っていた。この流れからして安物だろうと思い取り出してみると、モンスターボールだった。ボールの重さからして、何か入っているようだ。

「こ、これって……」
 どうやら前言撤回のようだ。あまりに酷さに神が見放していなかったのか、それとも入れた奴の思惑なのか。中に何が入っているのか、床にボールを投げる。開くとともに光が出てきて、その中から1匹のポケモンが現れた。


「タージャッ!!」



 くさへびポケモン……ツタージャは元気よく鳴き声を発し、そのまま俺を警戒する様子もなく見つめている。手に何か紙を持っている。俺は紙を手に取り、書かれている分を読んでみた。

『おめでとうございます!! 
ドキドキ福袋、大当たりです! このツタージャは最高級の能力値を持ち、毛並みや健康状態もばっちり! さらに特性はあまのじゃく、へびにらみとミラーコートを覚えている非常に珍しいツタージャです!! 性別はオス、人懐っこくどんなトレーナーにもなつきます! ぜひ可愛がってあげてください!』

 成程……。へびにらみとミラーコートを同時におぼえているツタージャなんて見た事が無い。そう思い改めてツタージャを見る。彼はその大きな目で俺を見つめていた。近づいてもいい? と聞く風に。

「ツタージャ、来ていいぞ」
 するとツタージャは俺の胸元めがけ抱きついてきた。手でうまく受け止めると顔と体をすりつかせてくる。草タイプに冬の寒さは厳しのだろう。俺のぬくもりを感じたいようだ。
「可愛い奴だな……」
 実は俺はツタージャを育てた事が無い。図鑑に登録したと言ったがあれは出会ったトレーナーと一回交換して戻す事を行ったためである。俺が回想していると、
「タジャ?」
 声がしたためツタージャを見ていると、不思議そうに俺の顔を見ていた。その可愛い顔、俺はつい見とれてしまった。こいつを見て、ある思いが頭に入った。こいつを育ててみたい、と。

 ツタージャは8キロもある。さすがに重いうえ立ちっぱなしでは疲れるので一回テーブルに彼を乗せ、椅子に座った。福袋に入っていた道具が目に入った。そういえば効果の低い道具を最後に手に入れたの、もうずっと前になるな……。まさにキズぐすりやどくけしを使っていた頃、俺は駆け出しのトレーナーで、進化前のポケモン達と共に旅して……。

 俺はツタージャと道具を見て、あの時の気持ちが甦ってきた。初めて貰ったポケモンと共に新しい街を目指しながら、駆け出し故に絶対勝つなんて確証がなくドキドキしながら挑んだポケモンバトル。あの頃の不安と探究心と緊張感……。思えばあのころが一番楽しかったな……。
 俺はツタージャの頭をなでる。彼は嬉しそうに尻尾を振って「タジャ」と小さく鳴いた。俺はある決断を打ち明けることにした。

「なあツタージャ、俺と一緒に旅に出ないか? ポケモン一筋に生き20年、正直ポケモンにも豪勢な生活にも飽きていたが……、お前を見て思い出したよ。強いポケモンも金もない、新人のあの頃を。あの頃が一番楽しかったよ」
 ツタージャは真剣に俺の話を聞いていた。
「俺は……、今までのポケモンも財産も全て捨てていい、お前と一緒に新しい、本当に一からの旅がしたくなったんだ! 勉強も運動もできない俺が今一番楽しめる事……、それしかないんだ!」
ツタージャは無言で俺を見続けていた。
「快適な暮らしはさせられない。だが……、絶対に危険な目に遭わせたりしない! 俺が約束する!」


「タジャ、タージャッ!!」
 俺が話し終えるとツタージャは喜んで頷いた。
「ツタージャ、本当にいいのか? 俺の勝手すぎる頼みを聞き入れてくれて……」
「タジャ!」
 彼も俺と共に旅がしたいようだ。どうやら俺達はいいコンビになりそうだな……。
「よし、これからよろしくな!」
「タジャッ!」
 俺達が誓い合ったその時、ツタージャから低く間の抜けた音が鳴り響いた。ツタージャは顔を赤らめた。
「やれやれ、そんなに腹が減って……」
 その時俺の腹からも同じ位のボリュームの音が鳴った。……あまり人のことは言えないものだ。時計を見ると12時を指していた。
 作るのも面倒なので入っていたおせち料理を食べることにした。おっと、ツタージャはどうするか……。
「とりあえず……黒豆でも食べるか?」
「タジャ!」


 数日後、俺の手持ちは隣で一緒に歩くツタージャ一匹、持ち物は福袋の中身の道具のみ、ほんのわずかなお金だけを持ちマサラタウンを旅立った。他のポケモンは預けた奴に託すことに、財産はほぼ全て活動団体に寄付した。……一部の大金は何かあった時のために銀行に預けているが。
 なお全てを一新するため俺のリーグやバッジ記録は全て抹消し、本当に一からのスタートとなった。まずニビシティを目指し、そこからバッジを手に入れる過酷な旅となるだろう。20年前のあの時のように。
 だが俺は期待と興奮に満ちている。新たにどんな出会いや発見をするか。ツタージャとどんな冒険を繰り広げるか……、想像はできないがとても楽しみだ。
「さあ、これから頑張ろうぜ、ツタージャ」
「タージャッ!」
 
 福袋に入っていた物、それは俺を新たな冒険へといざなうきっかけという、どんな高く珍しい物よりも最高の「福」だった。こんな事になるとは思わなかったが、福袋が俺の新たな楽しみとツタージャとの出会いを作ってくれた。この出来事は一生忘れないだろう。
 俺の人生第二の旅、毎日が楽しみでたまらなくなるだろう。どんな困難が起こってもきっと乗り越えていけるはずだ。新たなパートナー、ツタージャと共に。

――END


後書き 


ブイズの正月書き初め大会について
まず印象に残ったと思われますのはブースターの「唯一」とリーフィアの「聖戦」ですね。
ブースターはもう色々な所で呼ばれておりますので(泣)予想していた方もいると思われますが…、「聖戦」は誰も考えていなかったでしょう。
今回オチにリーフィア好きの作者様の代表作タイトルを無断で使用させてもらいました。さすがにタイトルだけでも無断使用はまずかったと思っています。しかし本人がコメント欄にて喜んで使用を認めてくださいました。感謝です。
今回のようなネタを次にやる場合は必ず許可が貰えるか事前に話すことにします。

プラズマ団のお年玉について
ゲーチスの非道っぷりが目立ちますね。

今年は蛇が主役!について
巳年という事でハブネークを活躍させてみました。ザングースとうまく結ばれるといいですね。
もしかしたら続編を作る…かもしれません。

福袋に入っているのは…?について
ゲームで主人公が持つ某猫型ロボットのポケットのようなバッグを元に作りました。本当に不思議ですよね。
ポケモン世界にかずのこがある事は疑問に思わないでください。

これで作品の更新は終了となります。楽しめて頂けましたか?
では、皆さん今年もよろしくお願いします。

以上、小説を書いてからまだ1ヶ月も経っていない新人ヘタレ作家の極み、フィッチの短編集でした。


感想、指摘がありましたらどうぞ。

お名前:
  • 作者がバレやすくならないよういつもとは違うコメログページ、「さん」の所を「様」に、>>をつけず返信する事をしていたのです。

    >>7名無し様
    このwikiでしかできない軽く危険なネタです。出来て本当に良かったです。
    一人と一匹の続きですか…。現時点では続きは考えていません。すみません…。
    ――フィッチ 2013-01-06 (日) 07:35:33
  • いやいやいや、リーフィアさん、それはないでしょ(´∇`)。面白かったです。
    なんだかあの三十代のお兄さんを見ているとなんだかあの頃を思い出しますよ。あぁ、今、忙しくなかったらゲームやっていたんだろうなぁ…、一人と一匹の続きが気になります。
    これからも頑張って下さいね、応援しています!
    ――7名無し ? 2013-01-05 (土) 23:36:26
  • 19:25:18の名無し様
    はい、許可は全く取っていません…。その点については反省点です。次に他作者様の作品を使用する時(恐らくもう無いと思いますが。今回タイトルを使用しただけですが自分自身掲載した時罪悪感を感じたので)はちゃんと許可を頂けるか事前に話しておきます。
    楽しめて頂きとても嬉しいです。最後の作品でがっかりさせないようにしたい…です。
    ――作者 ? 2013-01-03 (木) 20:07:25
  • 作品楽しませて頂きました。年始の慌ただしさのなく、ほのぼのとしたストーリーでゆったりと読むことができましたね。
    元気に競い合うブイズの可愛いこと、そしてハブ君とグースちゃんの仲むつまじい(?)こと…(笑)

    ただ1つ。今回はみなみさんが喜んで広い心で認めてくださったようですが、「サプライズ」ということは、許可は事前に取っていなかった、ということでしょうか?
    もしそうなのだとしたら、どんな状況でも事前に確認をとるのが常識ではないかと思われます。扱い方とかそういうのは関係なく。

    使用されている内容はタイトルだけでしたが…やはり勝手にやってしまうのはどうかな…と少しひっかかりました。
    他の状況で例えるならば、「自分のためのものではない人の料理に、許可なく手を出している」状況に近いといえましょう。(少し大袈裟かもですが)

    今回は喜んで認めてくださったからいいものの、皆が皆喜んでくださるとはかぎりませんよね。もし怒られてしまうようなことになれば、いくら他者の方が称賛する作品でも削除せざるをえなくなることもあるかもしれません。
    そうなれば作者側の筆記の苦労も水の泡になりますし、気持ちも沈んだものになりますよね、お互いに。

    確かにサプライズというやり方は面白いものでしたが…その分こういうサプライズは危険も多いです。
    許可の取り方を工夫すれば、バレずにサプライズをすることもできるはずです。(たとえば、みなみさんのとある作品の事を小説に出したい、など)
    まぁそれでも、インパクトは落ちてしまうかもしれないですけどね…(汗)

    しかしもし許可取りをしていなかったのでしたら、これからはもう少し気をつけた方がいいかもしれません。

    その点以外は本当に楽しく読ませていただき、年始の慌ただしさで少々イライラしていた私も、気持ちが綻びました。
    今後のSSも楽しみにさせて頂きます。今年も活動頑張って下さい
    ―― 2013-01-03 (木) 19:25:18
  • クロス様
    確かに聖戦はみなみ様ですからね。文章やキャライメージまでも似ていたとは気付いていませんでした。
    ブースターの2文字は「唯一」しか頭に浮かびませんでした。早くフレアドライブを覚えて欲しいですね。
    ゲーチスのすさまじいキャラ崩壊結構気に入ってます。キャラ構築を高評価して頂きありがとうございます!

    もう一作品(たぶん一番駄作になる予感がしますが)仕上げます。頑張っていきます!
    ――作者 ? 2013-01-03 (木) 19:22:12
  • あけましておめでとうございます。作者様が分からないのですが、ずっとみなみさんと思ってたら違ったんですね。
    みなみさんだと思いこんでた先入観もあってかもしれませんが、文章もところどころ似てらっしゃるので本当に勘違いしてました(笑)
    さっそくですが、感想です。

    ブイズの書き初めということで、それぞれの個性を象徴するような文章でしたね。
    月光などなど、この辺はお約束というか普通なんですが、予想できなくはないものの「唯一」には吹きました(笑)
    また聖戦についてはみなみさんの代表作ということで、これが出てきたがために完全に作者をみなみさんだと思いこんでました。
    下のコメントで喜んでらっしゃいますが、みなみさんは本当に嬉しかったと思います。

    ゲーチスとハブネーク&ザングースの話も、ブイズと同じようにキャラが騒がしさが強調されていましたね。
    頭の中でキャラの姿を思い浮かべて読んでいましたが、デフォルメされたキャラのイメージが思い起こされました。
    この辺が非常にみなみさんと似ているように感じました。公式イメージそのままを活かすのも良い手だと思いますが、(公式に出る人キャラは特に)多少好みは分かれるもののこのように自分流にアレンジするのもキャラを立たせる上で重要だと思います。
    なので、作者様の騒がしいキャラの構築は面白かったです。

    執筆お疲れさまでした。これからも頑張ってください。
    ――クロス 2013-01-03 (木) 12:02:49
  • みなみ様
    正直書き初めオチは掲載時すごく不安でした。作品を酷く扱う訳でもないので(勿論聖戦大好きです)と踏み掲載したもののそこからどんなコメントが来るか不安で仕方がなく…。それで今確認したところまさか貴方様から頂くとは驚きました。
    こんな作品に使用を認めてくれ、さらに喜んでいただき感謝です!
    「一同何も言わなかった」という事で実はリーフィアどころかイーブイも聖戦を読んでいました(笑)トレーナーも隠れてこっそり読んでいれば良かったものを…
    みなみ様も今年も頑張ってください!
    ――作者 ? 2013-01-03 (木) 08:13:54
  • どうも、2作品ともう一つを途中まで読ませていただきましたみなみです。未熟者の極みです(苦笑
    いやー、リーフィアが何を書いたのかとわくわくしておりましたが…まさか、聖戦だったとは……嬉しさで竜の舞積んでおります。ありがとうございます♪
    しかし、あんなもの読むとは、このトレーナーは変態ですなぁ……リーフィアちゃんにももしかして読まれていたのでしょうか。だとしたら恥ずかしさMAXですorz
    タイトルの使用に関しては特に何もありませんよ、むしろ新年で一番始めのサプライズでお礼を言いたいくらいです♪
    作者名がわからないのは少し残念でしたが、これからもがんばってくださいませ♪  応援しておりますよー♪
    ――某戦記物を書いたリーフィアが好きすぎてどうしようもない作者 2013-01-02 (水) 21:15:22
  • 14:05:33の名無し様
    カップルを応援してくれるとはありがたいです。私もそう願っています。
    14:25:50の名無し様
    巳年ということでハブネークを、それに合うポケモンと言えばザングースということでカップルにしてみました。因縁はきっと乗り越えられるはずです。
    7名無し様
    ゲーチスが実際にやっていそうな感じ…ですね。これからも頑張ります。

    現在プラズマ団は不発、ザングースが人気のようですね…。
    ――作者 ? 2013-01-02 (水) 20:29:16
  • ゲーチス、ひどいなぁ。
    ハブ君とグースちゃんが幸せになりますように。 これからも頑張って下さいね、応援しています!
    ――7名無し ? 2013-01-02 (水) 15:14:23

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*1 あるテレビ局で年またぎで放送したバラエティ番組
*2 9分でハブネークを再起不能に、1分で店に向かって全速力で走り代金をギリギリ時間内で支払うという超過酷運動

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Last-modified: 2013-01-04 (金) 00:00:00
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