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今宵私の手の中で 九話

/今宵私の手の中で 九話

written by cotton



今宵私の手の中で 九,



ー意識が、薄れてゆく…。
開始の合図と共に見えるようになった、首に掛かる大きな手。冥王は私を少しずつ、地獄へと引き込んでゆく。
怖い?
夜が明けるまでに決めて。すぐに終わるから。
ー悪魔」の唱う声…。契約の始まり…。
嫌とは言わせないから。
私と毎晩、
楽しく遊びましょう?
ーもっと遊びたかった。もっと一緒にいたかった。
死にたくないでしょ?
逃れることはできないよ。
ーこのまま、死ぬのかな…。
手に入れたいの、貴方のこと。
望んでいるの、楽しい生活。
ーあっちで、お母さんに逢えるかな…。
泣いても無駄。
帰らせはしない。
ーみんな…さよなら。
出会ったことを、
「ハーブッ!!」



「誰!?」
「貴様…!ハーブを、よくもッ!」
「わッ…!と、危ない危ない…『悪の波動』、か…」
波動は避けられた。だが、呪いへの集中力は切ることができた。その場に静かに倒れる彼女。
「…はあッ…!はあッ…」
「ハーブ…」
ー間にあった。
彼女の苦しそうな表情が、胸を締め付ける。…でも良かった。どんな表情でも、君の顔をもう一度見ることができて。



「…邪魔しないで。契約違反よ?」
「…これを見ても、そんなことが言えるか?」
マントを広げてみせる。漆黒のその向こうを見て、彼女は動揺し出した。
「へぇ…大した覚悟ね。痛くなかった??」
「どうせ蝕まれた腕だ、失っても痛くねぇよ」
「そう。それなら…」
また「悪魔」は、不敵に笑い出す。
「左胸に呪いをかけたら…どうなるかな?…アハハッ☆」
「はァ…?」
ーなんて奴だ。発想がもう気違いじゃねーか。
「右手抜きのハンデ"だけ"で俺に勝てると思ってんのか?」
「あら?誰があんたに呪いかけるって言った?」
「は…?ってお前、まさか…!」
「一度契約を結んだ相手とはもう契約はできないからね。だからアタシが契約したいのは、」
ーそうだった。
「その娘☆」
全てを一瞬で理解した。
彼女はもう逃げる体力さえ残ってないこと。つまり、彼女を抱きかかえて戦わないといけないこと。
ーそう。そうすれば、自分にはもう自由に使える腕は無くなるということ。
「早ク見タイナァ☆呪イニ苦シムソノ娘ヲ。大切ナモノヲ失ッタ悲シミニ打チヒシガレル貴方ヲ…」
「クソッ…!」
此処から、逃げねぇと…!
「逃ガサナイ…!アハハハハハハ☆」
駄目か…!「黒い眼差し」。もう、此処から逃げることはできない。
ー終わった、か…。
三匹の残された空間だけが、ただ闇だけに囲まれていた。
「フフフッ…☆」
その不気味な笑い声だけが響く。
左手は彼女を抱きかかえ、使えない。更に安定もしないため、本来の素早さを発揮できない。
「『シャドーボール』☆」
無数の弾が迫る。正面では受けられない。背中で受けるしかなかった。
「くッ…そ…!」
ー星空が、綺麗だね。
ーああ、そうだな。
「マダ行クヨ…!!アッハハハハ☆」
ー右手、ホントに大丈夫?
ー心配いらねぇよ。
「ぐァッ…」
ーたとえ左腕だけでも、お前を護ってみせるから。



最低だな、俺。
した約束さえ、守れないのか。
愛したヒトさえ、護れないのか。
笑ってくれ。こんな頼りねェ俺を。
許してくれ。こんな「悪魔」と契約した俺を。



雲よ、森よ、木々よ。このヒトリの罪人を、影で消してくれないか。



十話へ。



気になった点などあれば。

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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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