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二つの月の物語

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二つの月の物語 

by蒼空


人間なんて汚い……。

自分の都合通りに成らなければ何の躊躇いも無く捨てる。

進化する前はあんなに可愛がってくれたのに……。


僕は一軒の家をじっと見ていた。
別に『僕』と言ったけど雄じゃない。これでもちゃんと雌だ。
雄に間違われた事は良く有るけど……。

僕の種族はエーフィ。エスパーでも上位の能力は持ってる方……だと思う。
エーフィに進化してからは間違われるのは少なくはなった。
まあ……エーフィは雌のイメージの方が強いかららしいけど……。
でも、僕のイメージでは自分の事を『僕』って言うエーフィは想像できない。
僕は他のエーフィは見た事無いから良く知らなし自分が『僕』って言ってるけど……。
僕的には『私』って言うのが似合いそうだと思う。
そんな事はどうでも良いや。他のエーフィがどうだろうと僕は僕だし。

何で僕が家を見てるかというと……。
生まれたときから人間に育てられたから狩の方法を僕は知らない。
だから、僕は人間に捨てられてからは空き巣をして生活していた。
そして……今回はこの家が標的って訳。

今日食料を手に入れなきゃ明日も飯が無い。当然の事だ。
流石に腹が減った……。何としても成功させなければ。

「良し! じゃあオレは学校にいって来るから留守番は頼んだぞ」
「うん。いってらっしゃい御主人様」

ターゲットは外出! 手持ちに五匹のポケモンを持ったから……今はあのブラッキーだけかな?
まさか七匹以上のポケモンがいたら手持ちを五匹で外出なんてしないだろうし。
今が侵入のチャンス! ミッションスタート。

僕は人間が出かけたのを確認すると窓の開いた二階から家に侵入する。
まったく。ブラッキーが居るからって不用心すぎるね。
食料を目指し、一階の台所まで忍び足で降りて行く。
ブラッキーは……リビングでテレビを見てる。
本当に不用心だよ……。留守番として役にたってないし……。
このまま食料を盗んでさっさと逃げようかな。
僕はブラッキーに気付かれないように慎重に進んだ。
そして目も前には台所が見えて来た!
今回は楽勝なミッションだね!
そして僕は台所に一歩足を踏み込んだ。

ジリリリリリリィィィ!!!!!

大きな警報音が家中に響き渡る。
なんで台所になんて警報機が有るの? 普通は玄関でしょ!
流石にブラッキーも台所に飛んで来る。

「お前! そこで何をしている!」
「食料泥棒だけど見て解んない?」

僕は当然の答えを言ってみる。
ブラッキーが怒鳴ってくる。まあ当たり前か……。
残念ながら台所への道は一本しかなくブラッキーが塞いでる。
僕は辺りを見渡すけれど逃げられそうな場所は固く閉ざされた窓だけかな。
窓を突き破って逃げるのもやだな……。痛そうだし……。
僕は野生だから怪我はしたくないし。

「まさか御主人様が付けといた摘み食い用のトラップに引っかかるのがいるなんて……」
「で……僕をどうするつもり」

僕はタイプ的に勝てないと思い抵抗しない。
否……抵抗しても僕に勝ち目は無いかな……。
だって僕にはエーフィとしては向いてなかったから……。

そう何故なら僕はエーフィに進化する予定なんて無かった。
僕の性格は意地っ張り。この時点でエーフィに進化させる人間なんていないだろう。
さらに僕は特攻以外の個体値はかなり高い。それは自分でも理解してる。
その代わり僕は特攻の個体値は無いに等しい……。
よって僕はエーフィに向いていない。
そもそも前の人間は僕をブラッキーにするつもりだった。
そのため僕の名前は『ルナ』。
太陽ポケモンにルナなんて皮肉以外の何物でもない。

「まあ良いや……。俺はムーン。悪いけど大人しく捕まってもらう」
「自己紹介ありがとう……。解った。大人しくするよ……」

僕は素直に捕まる事にした。
どうせ抵抗したってどうにもならないし……。

「え? 暴れないの?」
「暴れて欲しかったの?」
「そう言う訳じゃ無いけど……」

ムーンと名乗ったブラッキーは困惑してる。
僕が抵抗すると思ったらしい。互いに無傷せ済めばそれにこした事は無い
そして縄で僕を縛る。

ムーンに変な気は無いみたいだけど縄が胸に食い込んで……。
ちょっと……ほんのちょっと気持ち良いかも……。
って! 僕は何考えてるんだ! 後ちょっとで危ない橋を渡る所だった。

「ところで君……名前は? 何時までも『君』ってもはちょと……」
「僕の名前……」

こいつ僕の名前なんて聞いてきて僕に興味でも有るの?
……でも僕の事ちゃんと雌だって解ってんのかな?

「そう。君の名前」
「僕はルナ。意味は君と同じ月だよ……」

誤魔化しても良かったけど隠しても得なんて無かったから素直に名乗った。

「ふ~ん。ルナか……良い名前だね」

こいつ本当に僕に興味有るの?
名前を聞いて褒めるのはナンパのお決まりだけど……。

ナンパなら僕も雄と雌両方に何回かされた事は有る。
気持ち雌からの方が回数が多いけど……。

「俺、ルナみたいに気の強い雄の友達が欲しかったんだよな!」
「……お、雄……」

一瞬期待した僕が馬鹿だった。いや……僕は期待してたの?
ナンパされてこんなに期待した事なんて無かったのに……。
僕はこいつを……ムーンを好きになった……のかな?

「一つ言っておく。僕はこれでも雌なんだけど」
「……え゛。ルナって雌!?」

本気で驚いてる……。こいつ本気で驚いてる。
なんでだろう……。何時もは性別を間違われても何も言わないのにな……。
多分……ううん。……絶対……。僕はムーンが好きになったんだ……。
これを初恋って言うのかな……。

「御免! 俺……凄く失礼な事……言っちゃった……よな?」
「別に気にしないで……。六割は僕を雄って言うから……」

イーブイの頃は九割だったから六割でも減ったほうだ。
と言っても残りの四割だって雄のエーフィを認めたくないからだけど……。
これじゃブラッキーに進化してたら全員に雄って言われたかな……。
雌のブラッキーこそ全然聞かないし。
僕もスタイルさえ良ければ雄に間違われる事無かっただろうに……。
解ってますよ! どうせ僕は貧乳ですよ! でも決して胸が無いわけじゃ無い。
良く見れば解るはずだと思うんだけどな……。

「ところでムーン。僕はこのままどうなるの?」
「……さあ? 取り合えず……御主人様が帰ってくるまでこのままかな」
「……そう。答えてくれてありがとう……」

それにしてもどうしよう。まだ昼前だし。
多分人間が帰ってくるのは部活に入ってるとして五時過ぎくらいかな……。
それまで縄で縛られたまんまってのもな……。
でも……胸に食い込んだ縄が……気持ち良いかも……。
はぁ~。僕って変態かな……。もう危ない橋は渡ってたか……。

「暴れないんなら縄……解くけど?」
「別に……好きにすれば良いよ」

ムーンが縄を解いてくれるって!? でも、僕は……。
はぁ~。素直に解いて下さいって言えば良いのに……。
僕は変なところで意地っ張りなんだよな……。

僕の言葉にムーンは悩んでるようだ。
多分僕が素直に解いてって言うと思ったのかな……。
僕だって自分の意地っ張りな性格は嫌だと思ってるよ……。
でも……素直になれない。素直になるのが怖い……。
誰かに心を開いて裏切られるが……怖い。
もう、裏切られたくない……。

「じゃあ……好きにさせてもらうよ」

ムーンがそう言うと僕に近づき縄を解く。
何で……。何でこんなにすぐに信用出来るの?
僕には解らない。誰も信じられない僕には……。

「僕は、解いてくれなんて……言ってない……」
「だから……俺の好きにしたんだけど?」

僕は素直にお礼を言いたかったけど……言えなかった。
ムーンなら信用しても良いのかな……。

「なあルナ。一つ質問しても良い」
「何? 答えてあげても良いけど……。答えられればね……」

僕に質問? 一体何だろう?

「そろそろ……お昼だからさ。ルナは何が好き?」
「食べ物なら何でも良い……。三日は何も食べてないし……」
「三日も何も食べてないの!?」
「……そうだけど」

実際、僕に好き嫌いは無い。
まあ……本音を言えば辛いものが好きな方でで渋いものは嫌いな方だけど……。
好んで食べない物を嫌いと言うのなら渋いものは嫌いだ。
ただ、食べれるときに食べないと次に何時食べられるか解らないからね。

「じゃあ……何か適当に木の実を持ってくるよ!」
「うん。任せる」

どうか渋いものを持ってきませんように……。

木の実を取りに行って三十分経った……。
流石に遅すぎるよ。何か有ったのかな?
心配だ。僕も台所に向かおう……。

「ムーン……遅いよ。何やって……」

あれは……グラエナ? 此方に牙を剥き出しにしていて友好的には見えないから侵入者?
良く見れば唯一の脱出口だった窓が割れてるし。確実に侵入者だね。

「ルナ! こいつは俺が引き止めるから逃げろ!」
「お前がこの俺様を止める? 面白いやって見ろよ。
 こいつを始末したらお前も次はお前だからな」

育ちの悪そうなグラエナだな……。
きっとろくな性格じゃなさそうだ……。
しょうがない面倒だけど戦ってみよう……。

「僕……素直に言う事聞くのって……嫌いなんだよね……」
「じゃあ……まずお前から死ねぇぇ!!!」

奴はこのまま突っ込んでくる。
本当にろくな性格じゃなかったよ……。
ならば僕は……。

「遅い……」

別に僕はエーフィとしてはダメでも戦闘のセンスは有る。
トレーナーの用語で言えば努力値は攻撃と素早さの二極で残りは体力振り分けられ、個体値は特攻は0だけど他は三十一らしい。
これでも人間に育てられて来たんだ。こんな単細胞の野生ポケモンに負けるほど僕は弱くない。
あっさりと避けて顔面にアイアンテールを全力で放つ。
全力って言ってもエーフィの全力なんてたかが知れてるけど……。

グラエナが悲鳴を上げたけど気にしなくても良いや。これはルールのあるバトルじゃない野生のポケモン同士の場合は互いの生死を賭けたものだ。
かなり痛そうな音がしたしね。エーフィの尻尾は細いから鞭打ちになるし見た目以上に効いたかな。
これが思ったよりも効くんだよね。相手もエーフィが接近戦をするなんて思わないだろうし。
どうせ侵入者だし重症にしてもしていいかな。……いや流石にそれは不味いか。まあ侵入者は僕も同じだからね。

攻撃の反動でそもまま僕は宙返りをしてムーンの前に着地。
我ながら美しい着地だ。惚れ惚れする。
コンテストでも評価されるに違いない。
バトルに向いてないならコンテストも良いかな?

「てめぇぇぇ!!!! ブッ殺してやるぅ!!」

人が将来の事を考えてたのに空気の読めない奴……。
勝負は冷静になれないほうが負けるのに……。
また考えなしに突っ込んでくる……。それともエーフィに接近すれば勝てるとでも思ってるの?
今度は後ろにムーンがいるから避けやれないや……。

「ルナ! 俺の事は良い! 避けろ!」
「へぇ~。心配してくれるんだ。嬉しいよ……ムーン」

ぼ、僕……何て恥ずかしい事言ってるんだよ!
これも皆あいつのせいだ! あいつがムーンと直線に並ばなきゃ良かったんだ!

「二匹まとめて地獄に落ちろぉぉ!!」
「馬鹿。動きが単純すぎるね」

僕は突っ込んで来るグラエナの腹に潜り込み軟らかい腹部に居合い切りを決める。
散々馬鹿にしてきたため、一瞬殺そうと思ったが思い止まる。僕はわざと急所を外した。

「ぐわぁぁ!!」

ドタッと音を立てグラエナが倒れる。
所詮は野生のポケモン。僕の敵じゃないね。

「もしかして……殺したの? 凄い悲鳴だったけど……」
「まあ……それも出来たと思うけど……急所は外したから平気でしょ……多分」

ムーンはグラエナを心配そうに見る。
さっき殺されかけたのにお人よしだよ……。

「こいつを外に出して早く昼にしよう。無駄に体力使ってお腹減ったよ。
 三日も何も食べないで運動なんてするもんじゃないね。倒れそう……」
「そうだね。俺は木の実を用意するからこれ外に出しといてよ」

ムーンが転がっているグラエナを前足で突くがグラエナはピクリとも動かない。
結局僕が外に出すのね……。まあこれで飯が食べれるなら良いや……。

飯も食べ終わってこれから何しよう。
ムーンは何かするかな?

「ムーン。何か面白い事……」

後ろを振り向くとムーンが背中から血を流し、倒れていた。
爪で切り裂かれたような傷後。多分さっきのグラエナの戦闘で受けたものだろう。
正直ムーンが弱そうには見えないからグラエナに奇襲でもされたのかな?
出血が酷く、顔色が悪い。放って置けば確実に死に至ると思う。

「なんで黙ってたの!!」
「ルナに心配掛けたくなかった……」
「……馬鹿……」

僕に心配掛けたくなかった?
急に倒れや方がよっぽど心配するよ。
僕はそのままムーンを抱きしめた。
死んじゃ嫌だよ……ムーン……。

「ムーン。傷薬は無いの?」
「自慢じゃないが……うちの御主人様は消耗品って嫌いだから……。
 多分……傷薬も無いと思う……」

ダメじゃん! せめて傷薬は置いとけよ!
と、そんな事より傷を何とかしなくちゃ……。

「ムーンって月の光は使えないの?」
「俺はそんなにレベルは高くないんだ……」

僕は朝の日差しを使えるのにな。
これなら暴れれば逃げられたよ……。

「……そう。どうしよう……」
「台所にオボンの実って言う木の実があるから取って来てくれないか?
 あれは傷に良く効くん……」
「ムーン!!」

気絶しただけみたい……。
でも……早くしないと不味そう……。
トレーナーが使うような木の実くらいなら僕でも解るから早く取ってこなきゃ……。

僕は急いで台所に行き、オボンの実を探した。
他の木の実とゴッチャになってた為、思ったより時間がかかったな。
ちゃんと整理・整頓はしておけよ……。
三個ぐらい持っていけば平気……かな?
ムーンが心配だ。早くリビングへ戻ろう。

リビングではムーンがソファーで寝ている……と言うか僕が寝かせた。

「ムーン。起きてムーン」

ダメだ……起きない。どうしよう……。
ここで脳内が瞬時に三つの解答を導き出す。

一 時間が勿体無い。無理やりにも起こしてオボンの実を食べてもらう。
二 安全な方法でいく。ムーンが起きるのを素直に待つ。
三 こんなチャンスは滅多に無い。僕が口移しで食べさせる。

こんなところかな?
って! 三はどう考えても却下でしょ! 僕は何を考えてるんだ!
と言う事で答えは一か二だね。
二は急いでるから却下。じゃあ一かな?

良し。じゃあどうやって起こそう。
力ずくは怪我人には不味いだろうな……。

素直に台所からカゴの実でも持ってこよう……。
結局、脳内の三択意味ないし……。
僕はこの木の実は嫌いな方だな。渋いし。
またあの中から木の実を探すのか……。

僕はまた台所に行き、カゴの実を探す。
今回は上の方にありすんなり見つかって良かった。

僕はリビングに戻り、カゴの実をムーンに食べさせようとした。

「ムーン。ただいま!」

どうやらトレーナーが帰ってきたみたい。
この人間は帰宅部か!? それとも午前中授業だったのか!?
タイミング悪すぎ!! どうする僕!?
ムーンを放っておいて逃げるのもな……。でも捕まるのも嫌だし……。

「返事くらいしろよ! ってお前誰!!」

考えてるうちに来ちゃったよ!
行き成り指差してきて失礼な奴!!
って違う! 今必要なのはつっこみじゃない! いい訳だよ!!
良し! ムーンの友達ですって誤魔化そう! これが一番安全策だろう!
言うぞ!! 誤魔化すぞ!!

「……えっと。……食料泥棒」
「自分で言うか普通?」

……言ってしまった。考えと違う事を。
なんで僕はこんな時まで意地っ張りかな……。

見詰め合う瞳と瞳。気まずい雰囲気がしてる。でも目を逸らしたら負けかと思った。
そりゃ……目の前に知らないポケモンがいて『食料泥棒です』って言われたらどんな顔をすれば良いんだろう……。

「じゃあムーンを倒したのもお前か」
「それは僕じゃない! なんで僕がムーンを……」

しまった! ここでムーンの名前を出すべきじゃなかった!
明らかに僕がムーンを知ってたら不自然でしょ!
いや、この部屋に入るときにムーンの名前は言ってたか……。
でも、どんどん話がややこしくなっていく……。どうしよう……。

「あ……。お帰り御主人様」
「ムーン。その傷どうしたんだよ!」
「これ? 野生のグラエナに襲われた」

ムーンが目を覚まし事情を説明している。
人間が話をしている内に逃げよう。
このまま此処に居ると話がややこしくなる。

「で……ルナ……あのエーフィが助けてくれた」
「ふ~ん。強いんだあのエーフィ」
「かなりね。少なくても俺より強いよ」

どうしてそこで僕の話をする!
これじゃ逃げられないでしょ!!
人間、僕を観察するな!!

「良し! 野生のポケモンならゲットするか! それにようやく見つけたエーフィだしな!」
「僕を……捕まえる気?」

正直バトルは嫌い。弱いからじゃなくて面倒だからかな。
でも捕まったらムーンと一緒か。それも悪くないな。

「相手はエーフィだから接近戦に持ち込めば……勝てる!」
「いや……接近戦はやめた方が……」

人間がモンスターボールを投げてきた。相手はリーフィアだ。
雌だね。当然僕よりも女らしい。まさかムーンの彼女……なんて事は無いよね……。

人間がリーフィアに命令する。
リーフィアの電光石火をギリギリの所で避け居合い切り。
流石に僕も人のポケモンを重症にしたくは無い。だが一撃で戦闘不能で勝負を決める。

「なんで接近戦でエーフィに勝てないの! しかも一撃!?」

結局僕は残りのポケモンも一撃で決めた。全てイーブイの進化系だがエーフィがいなかったね。
だから僕を捕まえようとしたのか。流石にムーンはバトルには出さなかったね。
でも弱い……弱すぎる。僕を満足させる奴はいない。だからバトルは嫌いなんだ。

人間はエスパー技を使わないエーフィに負けたことが相当ショックみたい。
……と言っても僕は特殊技は覚えて無いけどね。攻撃の方が特攻より高いし……。
ちなみに僕の覚えてる技は居合い切り、アイアンテール、噛み付く、朝の日差し。
地面に膝を付きムーンが励ましても反応が無い。ムーンの言葉にも反応しないなんて失礼な奴。

「僕に接近戦なんて……無謀だね。本当の馬鹿だよ。相手がエーフィだからって接近戦で勝てるなんて限らないよ」

僕は人間に言葉による追い討ちを掛けこの場を去ろうと振り向いた。
元々は食べ物が目的だし。目的は果たした。

「ルナ! 待ってくれ!」

ムーン? 僕を引き止めてくれるの?
それともこの展開は『俺が相手だ!』とか?

「……俺が相手だ」
「はぁ~。……本気で言ってる?」

僕は何故か自然に溜息が出てしまった。
ムーンは良い意味でも悪い意味でも期待を裏切らない性格だね。
戦闘態勢を無理にとるムーンの姿は見ていてとても痛々しかった。
こんな姿のムーンを見て戦える訳が無い。仮に戦っても勝負は見えてるし。

「少なくても今の君じゃ僕には勝てないよ。それでもやるの?」
「でも……勝たなきゃルナと一緒にいれないだろ?」

え? 告白……ですか?

「べ、別に深い意味は……無い……けど……。いや、無いって言ったら嘘になるけど……」

僕の唖然とした顔を見てムーンは顔を真っ赤にする。
もしかして僕達って両思いってやつですか? しかも出会った当日に?

「ムーンってお前ホモだったのか!? 道理で他の面子にも……。雌は四匹もいるのに……」
「違うよ! こう見えてもルナは雌だよ!」
「……え? そうなんですか? オレはてっきり雄だと思いました」

はい。ここにも僕を雄だと思った人物が一名増えました。
しかも、あまりにも驚いて自分のポケモンに敬語になってるし。
でもムーン『こう見えても』は余計だよ。

ムーンの当然の告白に僕はどう答えれば良いんだろう……
そもそも食料泥棒で侵入した僕がここのポケモンになって良いんだろうか?
何度考えても僕の答えは一つしか出ない。

「……解った。僕はあんたのポケモンになってあげる。
 でも僕はあんたをトレーナーと認める訳じゃない。
 ムーンと一緒にいるために……」

って僕も勢いで何という事を言おうとしたんだ!
こんなのは僕のキャラじゃないよ!
その性か人間もムーンも唖然としてるよ。

「えっと……御二人様はそういう関係ですか?」
「い、いや。今日会ったばかりだよ。別にそんな関係じゃ……」

また敬語になってるぞ……人間。

「べ、べ別に深い意味がある訳じゃないんだから! 勘違いしないでよ!
 僕はムーンの事なんか何とも思ってないんだから!」

顔を真っ赤にしてこんな事言ったって説得力は皆無だよ僕……。
こんな時こそ意地を張らないで素直にならなきゃいけないのに……。
この一言でムーンとの関係が悪くなったら……。

「いわゆるツンデレという奴ですか……。ツンデレのエーフィって初めて見た……」
「ルナのそんなとこも可愛いと思う」

……良かった。どうやら悪い印象は与えなかったみたい。

「じゃあ、よろしく頼むぞ。え~とルナ」
「世話になるよ。……人間」
「人間ってオレにちゃんとした名前が……」

はぁ~。イチイチうるさいトレーナーだ。

「僕はあんたをトレーナーと認める訳じゃない!
 呼び方なんて『人間』で十分だ!」
「ごめんなさい……。人間で良いです……」

睨みながら言ったから人間も恐怖により素直になったね。
これは長生きするタイプかな?

「ルナ……あんまり苛めないでやって……」
「ムーンがそこまでい言うなら考えとく」

こうして僕はこの人間を二人目のトレーナーとして選んだ。
これで僕はムーンと一緒にいられる。
僕が初めて愛した雄のポケモンと……。

人間が帰って来てから数時間が経った。
人間から他のポケモンの紹介があり僕も少しは此処に溶け込めた……と思う……。
当然バトルで僕が圧勝したため、まだ友好的ではないけど……。

今、僕は屋根の上で月を眺めていた。
今宵は満月でとても美しい。
僕が生まれた日も満月だったらしい。

「限りなく近く……果てしなく遠い。
 手を伸ばせば届きそうで……絶対に届かない。
 僕はその月になるはずだった……。
 でも僕が手にしたのは太陽。僕は太陽になった。
 僕は月になりたくて……月になれなかった。
 限りなく近く……果てしなく遠い……月」

何言ってるんだろ僕は……。
僕自身ずっとブラッキーになると思ってた。
ブラッキーになる事しか考えてなかった。
満月になるたび僕は過去を思い出す。
あんなに優しかった過去の主人は僕がエーフィに進化したら急に冷たくなった。

「……ルナ? こんな所にいたんだ」
「ム、ムーン!?」

ムーンが話しかけてきた事に僕は驚いた。
ムーンが来た事に全然気が付かなかった……。
それだけ僕は月に魅せられていたんだろう。

「家の中にいないから探したよ。まさか屋根にいるなんて思わなかったよ。皆寝ちゃったけどルナは寝ないの?」
「でもそんな事を言っておきながら僕を見つけてるじゃない」

ムーンが僕に近づいて来て隣に座る。
自分から近づいてきたのに緊張して顔を赤くしてるし……。

「ルナは月……好きなの?」
「好き……だね。いや……憧れかな。
 僕は月になるはずで……月になれれなかったから……」

さっき独り言でも言った言葉……。
僕は月に憧れている。自分が手に出来なかった月に……。

「俺は……正直嫌いかな……。
 この寂しい光を見てると……全て失うんじゃないかって……不安になる。
 そんな事無いはずなのに何時かそうなるんじゃないかって……。
 可笑しいよね。自分が手にした力に不安になるって……」

確かに月は太陽と比べれば寂しい光だろうな……。
何か良い言葉が浮かばない……。何も言えない……。
僕は何も言わずにただムーンに口付けを交わしていた。

口付けをされたムーンが目を見開き、顔を真っ赤にして驚いている。
自分らしからぬ行動に僕自身も驚いてるけど。
唇同士が重なっただけ軽いキス。それでも今日会ったばかりの僕等には十分。
月は僕自身の心さえも変えてしまうのか?
それとも月の力を持ったムーンに嫉妬したから?

「ルルルル、ルナ!? なななな何をイイイイイイキナリ!?」
「夜に愛し合う二匹が二人きり……。これって最高のシチュエーションじゃない?」

こうなればヤケだ! もうどうにでもなれ!
この時僕はどんな顔をしていたんだろう……。
顔を真っ赤にしていた? いや、多分冷静な表情だったろう。
自分自身に焦りを感じない。それどころか嬉しいと感じる……。
僕はこのままムーンを仰向けに押し倒した。
力は僕の方が上のためムーンは呆気無く倒れる。

「ムーンも案外弱いんだね。それとも昼の怪我……まだ痛む?」
「痛まない……と言ったら嘘になるかな……。でも大丈夫だと思う」

僕はムーンの言葉を聞いて顔を近づけもう一度キスをする。
今度は唇が触れ合うだけのキスなんかで終わらせない。
ムーンの口をこじ開け舌を侵入させる。
ムーンもスイッチが入ったのか僕に舌を入れかえしてくる。
互いの唾液を交換し合った。傍から見たら雄同士に見えるんだろうな……。

どのくらいそうしていただろう……。
数秒にも感じたし……数分にも感じられた。

「……暴れないんだムーン」
「暴れて欲しかったの?」

ムーンがニヤニヤしながら言い返してくる。
それ僕が昼間に言った言葉……。一語一句間違ってないよ……。

「じゃあムーンを僕の物にしようかな……」
「ルナに俺の全てを捧げる……」

僕はムーンも意思を確認し微笑んだ。
この笑顔……僕の今までの人生で一番雌らしかっただろうな……。

僕は前足をムーンの胸から股の間までゆっくりとなぞっていく。
ムーンはビクッと体を震わせ足を閉じる。

「……ルナ……そこは……」
「そこは何?」

僕は妖艶な笑みを浮かべムーンの耳元で囁く。
この間に前足はムーンの股をこじ開け刺激を与える。

「うわぁ!!」

ムーンが顔を赤くして声をあげる。
僕はムーンの悲鳴にも似た声を堪能しモノを踏みつけるように弄り回す。
踏みつけられたムーンのモノは段々大きく、硬さを増し天に向かって反り立つ。

「ムーンは踏み付けられて感じるなんて相当のMだね」
「そ、そんな事……言われても……」

ムーンが僕に言われた事が図星を突かれたからか声を出さないようにする。
我慢する顔を見ているとこっちはさらに苛めたくなるよ。
ムーンが相当のMならば僕はそれ以上のSだらうな……。
そう……もっと滅茶苦茶に……もっと淫乱に……もっと壊したくなる。
ムーンを僕だけの物に……僕だけの人形に……僕だけの玩具に。
もう僕無しでは生きられないような体に……。ムーンの全てを僕に……。

踏みつけられているモノの先端から先走りが流れてくる。
ムーンの表情も段々余裕が無くなってくる。
僕は更に弄り、ムーンの射精を促がす。

「ダメ! お、俺……もう……で、出るよ……出ちゃうよ……出るぅうう!!」

予想通りの言葉に僕はモノの先端をムーンの顔に向ける。
ムーンが涙目になりながら自らのモノから白濁の液体が飛び散る。
モノが僕によって押さえ付けられていたため、僕にかかる事は無く寧ろムーンが自身の顔を汚すハメになった。

「結構出たんじゃない? どう自分の精子の味は?
 ……勿論これで終わりだと思ってないよね? 僕はまだ満足してないよ」

僕はムーンの小さくなったモノを再度刺激し大きくさせる。
大きくなったムーンのモノが再び天に向く。
僕は大きくなったムーンのモノの先端に自分の秘所を当てる。
いわゆる騎乗位ってやつだ。

「ムーン。今更だけど本当に僕なんかで良いんだよね?
 正直、僕より綺麗な雌なんて世の中いくらでも居ると思うけど……」
「……それは違うよ。俺はルナで良いんじゃない……ルナじゃなきゃダメなんだ……。
 そうじゃなきゃこんな事になる前に抵抗してる……」

この時既に、僕のSのスイッチは切れて、不安の方が大きかった……。
はっきり言うと僕は処女だ。雄にばっか間違われてきたのだから当然と言えば当然だけど……。
初めてで不安にならない方が変なはず……多分。

ムーンが僕の異変に気が付いたのか心配そうに顔を覗いてくる。
こうやって誰かを気遣える彼に僕は心惹かれたのかもしれない。

「その……やっぱり、此処でやめる?」
「……僕は……此処で……」

ムーンの言うとおり此処でやめる事も出来るかもしれない。
僕は……誰かに必要とされたい……誰かを必要としたい……。
だから此処で終われない……終わらせたくない。僕はムーンと一つになりたい。
初めて僕と言う存在を能力ではなくパートナーとして必要としてくれた彼と。

「……やめない。もう大丈夫。ムーンは優しいんだね」

もう僕は迷わない。今は不安よりも期待の方が大きい。
僕は覚悟を決め、ゆっくりと腰を落としていく。

「……ルナ……」
「……っう……」

正直……痛い……苦しい……でもそれを超え……嬉しい。
僕は今、愛する者と一つになろうとしている。
少しづつ……しかし確実に。

ムーンのモノが僕に半分くらい入ったところで何かにぶつかる。
到底、奥まで入ったとは思えない……。
僕自身の純潔の証。今それを破ろうとしている。
そして、僕は一気に腰を落とす。

「あぁぁ!!」
「……ぃい……」

鋭い痛みが全身に走る。でもそれはムーンと一つになった証でもある。
『痛い』と叫びそうになったが必死に堪えた。この事でムーンに心配を掛けたくなかった。
しかし身体は正直で秘所から少量の血液が溢れていた。

「ルナ……血が出てるけど平気なの?」
「平気……だよ……」

正直、顔を苦痛で歪ませながら言っても説得力ないよね。
意地っ張りな僕は口で言った以上は此処で弱音を吐き痛みが惹くのを待つわけにはいかない。
僕は無理して腰を上下に動かす。
ムーンのモノが僕を突くたびに痛みは快楽へと変わっていく。

僕とムーンの肉と肉がぶつかり合い卑猥な水音を立てる。
今更だけど僕達こんな事を外でしてるんだよね……。
でもそんな事はどうでも良い。今はただムーンを感じていたい。
僕は更にスピードを上げ一気にラストスパートをかける。
激しい快楽で段々意識が薄れていく……。
身体は既に自分自身の意志で動いていない。
これが本能ってやつか……。

「ルナ……離れて……また出るぅう!!」
「……このまま、出しちゃいなよ。僕は困んないよ……。
 だってムーンの子供なら拒む理由は無いよ……」

僕はこのまま運動を続ける。
ムーンの顔に余裕が無くなっていく。
悔しいけどそれは僕も同じ事。
二匹とも口から涎を垂らしだらしない顔をしている。

「好きだ!! ルナァァァァァ!!」
「僕も愛してるよぉぉ!!」

ムーンが絶叫を上げ先に果て僕の中に大量の精子を注ぎ込む。
僕も柄に無く絶叫を上げる。
子宮の中に注ぎ込まれる精子は僕を熱く焦がす。
その精子はどんな炎タイプの技よりも熱く感じた。

僕はムーンのモノ抜く。僕の中から愛液と精子の混じった液体が垂れる。
騎乗位だったため垂れた液体がムーンを汚す。
僕はムーンの胸の中に倒れ込む。
僕達は抱き合いながら深い眠りに落ちていった。

朝、僕は目を覚ます。
何時もと同じ朝。でも昨日までとは違う。
もう僕は一匹じゃない。隣には愛する雄がいる。
今、その愛する者は寝息を立ててぐっすりと眠っている。

前の人間に捨てられたのはムーンに会う為だった。
そう考えればブラッキーになれなかったことは不幸ではなく幸せだったのかな?
もしそうならばこの大地を照らす太陽にも感謝しなきゃ。
僕をエーフィにしてくれた太陽に。

「幸せは太陽の恵みのように全ての者に平等である」

この言葉をどこで聞いのたかは覚えてない……。
僕はこの言葉が嫌いだった。
何故なら僕は太陽になったから不幸になったと思っていた……。
でも今ならこの言葉の意味も解るような気がする。

愛する者が近くにいる。
愛する者が僕を必要としてくれる。
愛する者と一緒にいる事ができる。
誰かに必要とされる事がこんなにも嬉しいなんて。

当たり前のようで大切な事……。
そんな事すら僕は忘れていた。……違う、知らなかった。
……いや、能力だけで育てられてきた僕に愛は必要なかった。
だから誰にも愛されず……誰も愛さずに育ってきた。
彼はそんな僕に当たり前事を教えてくれた。
戦う事しか許されなかった僕に愛という当たり前の事を……。

彼に会わなければ僕は戦う意味さえも知らずにいただろう。
彼に会えたから僕は変わることができた。

「……愛してるよムーン……」

僕はムーンの頬にキスをした。

終了


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Last-modified: 2018-05-22 (火) 22:58:43
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