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不死なる子犬は主を選べず

/不死なる子犬は主を選べず

writer is 双牙連刃

この作品には、若干グロテスクな表現がございます。お読みになる際はご注意下さい。
それは……嫌だなぁ……と、思う方は、迷わずバックボタンをクリックして下さいませ。



 生きとし生ける者全てに平等に与えられるもの……。
『それ』があるからこそ生命は巡り、また、未来は不透明なものとなる。
だが、時としてその輪から外れる者が極稀に現れる。
その存在は自らの運命の先……死の、先を歩む者。終わりを一度迎えし者達。また……元々、死を迎える事の無い者達。
この物語は前者、死の先を歩む一匹の子犬の物語。
幼き身に宿した終わらぬ命……それは、子犬に何を見せるのか……。



「……っくしゅん!」

 う~、くしゃみ出た。誰かが僕の噂でもしてるのかな? ……そんな訳無いか。
まったく……ご主人もポケ遣いが荒いよなぁ。いきなり「オレンの実が食べとうなったから探してまいれ」とか言ってくるしさ。そんな簡単に見つかる訳ないじゃないか。
ってあったー! 目の前にオレンの木を発見! 今日はついてるよ~。この前のモモンの実探しの時は一週間くらい知らない森の中を彷徨ったもんな~。
よ~し早速、ゲットだぜ~!

「へへへへへ……これはまた、美味そうなガーディが掛かったもんだ……」
「へ? んにゃあ!?」

 アウチ! 背中を何かに掴まれたよ? いたたたた! 爪! 爪食い込んでる! 食い込んでるって言うかもう刺さってる! いたいいたい!
何!? 何ナノ!? で、後ろを見てみると……目。あぁ、これクロバットだ。刺さってるの爪じゃなくて牙だった。いやぁ、うっかりうっかり♪
ってウワァーオ! 僕もうクロバットのお口へINしてるじゃないか! オレンの実は罠だったのか……なんかがっかり……。

「ん~? なんだ? 怖がらないのか? お前……これから死ぬんだぞ?」
「べつにぃ? 殺りたきゃどうぞ? この状況で逃げられないのはもう分かってるし」

 あ、クロバットがなんかあきれてる。そりゃあそうだよね。僕みたいなちっちゃいガーディが言うセリフじゃないもんね。
でも、牙がざっくり刺さってるのにもう逃げるのなんて無理じゃない。後は野となれ山となれ、って感じだよね~。

「ちっ、怖がる奴が恐怖にまみれるのを見るのが好みなんだがな……まぁ腹が膨れればどうでもいいか。からっからになるまで血を頂くぜ!」

 おぉ~、傷口からどんどん血が抜けていくのが分かる。体の力が抜けて……いく……。
吸……血……って、結構……しんどいな……。ジュルジュル……言ってるよ……。
に……しても……、咥えた……ままで……よく……喋れる……な……。

「……ぷはぁ、味は中々だったな……ははっ、目開けたまま死んでやがる。とりあえず、ご馳走さん」

 ……………。
どーん! はい僕蘇生~。これだから死ぬのって嫌なんだよね~。どんどん体冷たくなってくのが分かるし、目の前真っ暗になってくしさ。
クロバットは……どっか行っちゃったね。良かった良かった。問題はオレンの実だよ。残ってるかなぁ?
えっと……あ、木に生ってるのがある! 良かった~、また探し回る事にならなくて。
よし、どうやって採ろうかな? 体当たりで落としても良いけど、熟れ過ぎてて落ちた途端にべしゃっ、は避けたいよなぁ。となると……ちょっと木には悪い気がするけど!

「火の粉……いけっ!」

 オレンの実が生ってる枝にヒット! おっとっと、それを落としたら元も子も無い。キャ~っチ!
ふぅ、思わぬ邪魔は入ったけど無事にオレンの実ゲット~! 後は変な邪魔が入る前にご主人の元に帰るのみ! 今帰りますよ~!



「ただいま戻りました~」
「うむ、帰ったかルシカ。して、オレンの実は?」
「採ってきましたよ。採る前に一回死にましたけど」

 実に普通な帰宅の挨拶です。えぇ、変な所なんて無いでしょ?
そうそう、僕の名前はルシカ。健全な牡のガーディです。本当にただのガーディですよ。
で、僕にオレンの実を採ってくるよう命じ、僕が渡したオレンの実を現在進行形で美味しそうに食べているのが……。

「ん? 妾の顔に何か付いてるかえ?」
「そうですね……強いて言えば飛び散ったオレンの果汁ですね」

 大空を統べる者こと、ホウオウ様です。

「なんと!? ルシカ、綺麗にしてたも!」
「えー? 別に自分で拭けば良いじゃないですかー」
「いーやーじゃー! 舐めて綺麗にするのじゃ! ほれ、はようはよう!」
「……しょうがないなぁ……」

 首を僕に方に下げてきたホウオウ様の口(嘴)に付いた果汁を丁寧に舐めとる。何で僕がこんな事を……。
僕が何故ホウオウ様に仕えているかと言いますと。話は三年程前に遡る事になります。



「はぁ……」

 その頃の僕は内気で奥手なシャイボーイ(笑)。しかもガーディやウインディの住んでいない土地に捨てられていたというナイスな状況にありました。
だから他のポケモンを避けるように一匹で暮らしてたんだ。
ある日、僕はその日の食べ物が採れなくて途方に暮れていた。お腹は減ってるし、疲れているしでもうヘトヘト。
そんな時に必ず行く場所があったんだ。なんてことは無い小高い丘。崖って言った方が良いかもね。
そこから見える夕焼けが綺麗で、それを見てると明日は頑張ろうと思えたんだよね。通ってた理由はただそれだけ。
もちろんその日も行ったよ。でも、生憎その日は風が強くてね、雲が掛かっちゃっててあまり綺麗には夕日が見えなかったんだ。
残念だなーと思いながら棲家に帰ろうと思ったんだよ。
そしたらさぁ、急に突風が吹いてきて、僕それに押されてよろけちゃったのね。ま、崖に居てよろけたりしたらもうどうなるか分かるよね?

「ふぇ? ひにゃああああああああああ!」

 まっさかさ~ま~に~、落ちてデ(ry
気が付いたときにはもう崖の半分位まで落ちてたよ。パニック。超パニック。
だってさ、パッと見で落ちたら死ぬだろうな~と思ってた崖に落ちてるんだもん。そりゃパ二くるよ。だから受身もとれなかったさ。
そのまま……全身を痛みが襲う。口や目から血が出てるのが分かるし、右前脚が変な方向に曲がってる。
このまま……死んじゃうのかなぁ……とか思ったまま視界が暗くなっていったんだけど、何にも見えなくなる直前に虹色の光が見えたんだ……。
いやぁ、次に目が開いた時は驚いたよ。だって確実に死んだと思ってたからね。しかも体が完全に治ってるおまけ付き。びびったよ。
とりあえず目の前に居るでっかい鳥には目もくれないで全身のチェック。

「おいっ」

 目もくれないで全身のチェック。

「のぉ、そち」

 目もくれないで全身のチェ(ry。

「話を聞いてたも~! 聞こえておるのであろう!?」

 半泣きになられたので流石に話を聞くことにしたよ。面倒だなぁ。

「くすん……よ、よいか? そなたは……一度死んだ。分かるかえ?」
「死んだって……今、動いてますけど?」
「それはの? 妾の力を分け与えたからじゃ。ようは、妾が蘇生をしてやったのじゃ。ありがたく思うのじゃぞ」

 いきなり死んだって言われたと思ったら生き返らせた? マジで? まぁ、自分を中心に血溜まりが出来ていなければ絶対に信じないだろう。
しかし、そうすると……僕は今、とんでもない力を持つポケモンをシカトしていたことになる。この事には触れないでおこう……。

「え~っと、とりあえず……ありがとうございました」
「うむうむ! よし、そなた。妾の召使いになれ」
「……は?」
「だから、妾の召使い」

 話が飛んだな~。自己紹介とか無し? 召使いって……まぁ生きる以外の目的が無いからやっても良いけどさ。

「えっと……まず、あなたは誰?」
「む? 妾かえ? 妾はホウオウ! この空を統べし者じゃ!」



 ……そんな感じで僕はホウオウ様に出会って、結局召使いなるものをやる事になってしまった。だって……断ったら泣くんだもん。
全くもって迷惑極まる話だよね。突然目の前に現れたと思ったら生き返らせたとか言うし、召使いになれとか言ってくるしさ。
でも、力を分け与えたって言うのは本当だったんだ。僕が死んだって言うのも含めてね。
ホウオウ様に出会った日から僕は……死ななくなった。正確に言えば、死んでも蘇生する。
何でも、力を分け与える事によって、僕とホウオウ様の命とやらが繋がったそうな。ま、実際そうなのかはホウオウ様しか分からないけど。
で、僕はホウオウ様が死なない限り何度でも復活するという体になったわけ。本当にそうかは……クロバットに襲われてたので分かるよね?

「うむ、ご苦労♪」
「やれやれ……他にやる事無いなら僕、寝ますよ?」

 なんで自分の嘴舐めさせてご機嫌なんでしょうね? 僕としては面倒なだけなんだけど……。
このホウオウ様がとにかく厄介。第一に何故か僕に甘えてくる。この嘴舐めさせるのもその一つなんだよね……。
おまけにわがままで泣き虫。よく大空を統べる者なんて呼ばれたもんだよ……。

「うむ。ゆっくり休むがよい」
「ふぅ……では、お休みなさい」

 また「傍に居てたも~」とか言われるかと思ったけど、今日はそのまま眠れそうだ。良かった。



「はぁ?」

 翌日の朝です。どうも皆さんお早うございます。僕は最悪の目覚めを体験中です。
目が覚めたらいきなりホウオウ様の巣じゃなくて空の上でした。僕が今居るのは……。

「おぉ、起きたかルシカ。もうしばらくはじっとしておれ。落ちたらただではすまんぞ」

 ホウオウ様の背中のようです。どうしてこうなった。

「……まず、一つ聞かせてください。何処に向かっているんですか?」
「ん~? ただの散歩じゃよ?」

 何故ただの散歩に僕を連れ出す~! しかも寝てる時に! 僕の安眠を返して!
もう飛んでる以上大人しくしてますか……。ホウオウ様には悪いけど、背中の上で丸くなってよ。
う~ん……日差しとホウオウ様の体温でなんともあったかい。また眠くなってくるな……。

「のぉ……ルシカ? 眠ってしまったかえ?」
「ん……まだ起きてますよ。何ですか?」
「このまま飛んでいるだけじゃ退屈じゃ。何か話してたも」

 ……なるほど。僕は散歩中の暇つぶしの為に搭載された訳ね。そもそも散歩が暇つぶしな筈なんだけどね……。

「僕、面白い話なんて知りませんよ?」
「そうじゃのぉ……不死になった気分はどうじゃ? もう三年になるが、慣れたかの?」
「不死、ですか……毎回キッチリ死んでますけどね。慣れませんよ。痛い思いや苦しい思いはしてますからね」
「そ、そうか……」

 事実、僕のは完全な死が来ないだけだからね。毒を食らえば苦しみながら死ぬし、溺死なんか最悪だよ。
ホウオウ様と同じように死ぬ前に体が回復してくれるんなら良かったのに……。

「そなた……妾の事を……恨んでおるか?」
「え?」
「だ、だってそうじゃろ? そんなに辛い思いを妾はそなたに強いておるのじゃから……」

 どうしたんだろ? なんかいつもよりしおらしいな。

「今更じゃないですか? 別に恨んではいませんよ。あの時死んでたら僕は死ぬ為に生まれてきたようなものでしたからね。……急にそんな事聞くなんてどうしたんですか?」
「いや……気になったのじゃ。そなたの意思を聞かずに力を与えてしまったからのぉ……」

 気になるの遅っ! 丸々三年放置しといて何を……まぁいいや。この際だから聞きたい事を聞いてしまおう。

「ホウオウ様、何故僕を生き返らせたんですか? それも、自分の力まで与えて……」
「……気まぐれじゃよ。話し相手が欲しい所に丁度そなたがおったのじゃ。転生じゃと、あの頭の固いエンテイ達と同じになりそうじゃったから蘇生にしただけじゃ」

 転生……ホウオウ様が使える相手を蘇らせる蘇生とは別の手段。対象を別のものに変える事により蘇らせる奇跡。
ただ、転生させちゃうと記憶は無くなっちゃうらしいから、全然違う存在になるんだってさ。で、そこにお前を生き返らせた~なんて言うと、神がかり的に信仰しだすそうな……僕がやられた訳じゃないから詳しくは知らないけど。
そうなると、神と話すなんて恐れ多いとか何とかって話になっちゃうんだってさ。そんな奴を傍に置いてても詰まらないってのがホウオウ様の考えだって。
相変わらず僕である必要が無いけどさ。僕のままこうして生きていられるのに感謝するべきか。
丸まった体勢から足を伸ばしてうつ伏せに寝転がる。だって、この方があったかいしね。

「ん、どうしたのじゃ?」
「……なんでもないです」

 ……この方がホウオウ様の音が聞こえるからって理由は……心だけに仕舞っておこう。
青い空と白い雲が流れていく……。今日は、死ななくて済みそうだなぁ……。



 散々飛び回った後、いつものホウオウ様の巣に戻ってきた。巣っていうか……山、なんだけどね。
なんか人間が立てて、ホウオウ様がしばらく暮らしてた塔がどっかにあるらしいけど、そっちより静かで居やすいんだってさ。
人間か……。僕も一度だけ見た事あるけど、あんまり関わりたくはないな~。なんか、コラッタが苛められてたところだったんだよね。

「ん?」
「ルシカ? どうかしたかえ?」
「巣に……何かいますね」

 上からだから良く見えない……。紫色の……玉?
何にしても、僕は一応召使いだからな。先に見てきますか。……最悪の方法を取る事になるけど。

「ホウオウ様。僕が先に見てきますんで、もう少し空中に居て下さい」
「いや、あの程度なら妾が行けば、って、ま、待て! ルシカ!」

 聞く前にホウオウ様の上からジャ~ンプ。うわ、気持ち悪……。これから死ぬのが分かってるからなおきついな……。
巣が近付いてきた~。あれは……ドガースかよ……。ドガース一匹の為にワンアウトする僕って……。
てな事を考えてる内に地面にどーん。…………。

「な、なんだなんだ? ガーディが降ってきやがった……。うへぇ、ぐっちゃぐちゃになってやが……る!?」

 ふぅ……。蘇生完了っと。

「うわぁ!? い、いきなり燃え出したと思ったら生き返った!? ば、化け物か!?」

 失礼な奴……。そうそう、僕の蘇生の仕方は、死ぬと体が炎になって、それがまた僕の姿を形作って完成なんだよね。
だからたとえバラバラになろうとも完全な状態で生き返ることが出来るんだ。それなりに便利でしょ? バラバラにはなりたくないけどさ……。って、今まさにぐちゃぐちゃの潰れた死体になったばかりだけど。
さて、この不届きな侵入者を排除するとしますか。

「お前、ここがどういった場所だか知ってるのか? 知らずに迷い込んだのならさっさと出て行け」

 さて、僕の化け物っぷりの見せたのもこの脅し文句の為ですよ。あれを見せた後に脅せば大抵の奴は逃げていく。良からぬ事を考えてる奴じゃなければ、だけど。

「へぇ……ここは、どういった場所なんだい?」

 うわぁ~……後者だったー。絶対にここにホウオウ様が居るって分かってて来てるよこいつ。切羽詰った感じはしないから助けを乞いに来たんじゃないな。
大方、ホウオウ様を倒した者とかの名声が欲しい奴か……。てことは、こいつ一匹じゃないな……。

「ここはホウオウ様の休まれる場所だ。……これ以上滞在するならお前を……殺す事になる。さっさと居なくなってくれない?」
「なるほど……やっぱりここがホウオウの棲家か! お前はホウオウの奴隷って訳だ」
「奴隷じゃない。召使い」
「どっちでも同じさ……お頭!」

 ドガースの一声でぞろぞろポケモンが出てきた。色んな種類が居るな……。一番強そうなのは……ハッサムかな。

「俺たちは……盗賊団、斬鉄! ホウオウを倒し、世界に我等の存在を知らしめる為にここに来た。ホウオウに会わせてもらおうか?」

 やっぱりハッサムがリーダーか。したり顔で語んなよ。ムカつく。ネーミングセンスもいまいちだし。

「本気で言ってるそれ? そんな事させる訳無いじゃん」
「ふっ……この数相手に一匹で挑む気か? 幾らお前が化け物であろうと微塵も残らず消してやれば死ぬだろう? 生きていたければお前がここを去るんだな」

 見渡せば、ざっと二十匹のポケモンが僕を囲んでいる。こいつの見解が間違ってるから別に逃げる事はしない。寧ろ、ホウオウ様に何かあれば僕も一大事だよ。
ホウオウ様は確かに不老不死なんだけど……一度に生命に関わるほどのダメージを受けると流石にやばいらしいんだよね。
その存在を一度リセットして生き返るらしいんだ。つまり、僕の中にあるホウオウ様の力もリセットされるから……僕は完全に死んじゃう訳。冗談じゃない。

 何も言わずに一直線にハッサムを狙う。頭さえ抑えればこんな烏合の衆は瓦解してくれるからね。

「くくっ……愚か」

 成功するとは思ってなかったけど……囲むポケモンの中にモココが居たか……電気ショック、もろに食らっちゃった。おまけに麻痺しちゃったよ。

「お前たち、腹が減ってるだろ? ……食い応えは無いだろうが、やれ」

 うわぁ最悪。動けないからってさぁ、鳥ポケモンけしかける普通? うわぁー飛んできたよ。しかも地上部隊もですか。
痛い&気持ち悪い。僕の体が啄ばまれて……噛み付かれて……食われていく。目とか狙わないでよ……。

「ふふふ……こうなってしまってはもう生き返る事は……!? お前達、どうした!?」
「お、お頭……腹が……体が……内側から……焼かれるぅぅぅぅ! ごぼっ、げっ、ごばぁぁぁぁぁ!」
「な、何だこれは……」

 ……僕なんかを食べるのがいけないのさ。昨日のクロバットみたいに血を吸うだけならこんな事にならなかったのに……。
僕が目を開いた時……見えるのは無数の腹から焼け爛れた死体。そして、僕を口にしなかった数匹のポケモン達。
そう……たとえ食べられようとも僕は蘇生する……。炎となって。その僕の体を食べたりしたんだ。お腹から体内を燃やし尽くされる恐怖を十分に味わえただろうさ。

「後は……お前達だけだね……」
「ひっ! く、来るな……来るなぁぁぁぁ!」
「僕は忠告した筈だよ? まぁ、ドガースにだったけどさ。ここに滞在するなら殺す事になる。さっさと立ち去れって。三度目は……無いよ?」

 最終的に残った5~6匹が逃げていく。これで襲い掛かってきたら本当の馬鹿だもんね。
さて、片付け終わったな……。嫌だな……僕は何にもしてないのにこれだけのポケモンの命を奪ったんだ……。

「……ルシカ……」
「あ、ホウオウ様……すいません、すぐに終わりますんで」
「もう良い……後は妾がする。そなたは少し休んでおれ」

 ホウオウ様が羽を広げると、亡骸を包むように白い炎が燃え上がった。……聖なる炎、か。送られるには十分過ぎる火葬だね。
少し……心が重いかな……せめて、安らかに眠れる事を祈っとこう……。

「……そなたには辛い思いをさせたな……。すまぬ」
「ホウオウ様が謝る事はありませんよ……。空を統べる……ううん、空を護ってるホウオウ様を狙ってきたこいつ等が悪いんですから……」
「分かっておるなら……そなたももう……泣くでない……」
「……はい」

 分かってはいる……でも、勝手に溢れてくるんだよ……。
そんな僕に、ホウオウ様の羽が覆いかぶさってくる。掬い上げられるようにそのまま抱えあげられちゃった。

「今日は妾の背で休むがよい。そのほうが落ち着くじゃろ?」
「……ありがとう……ございます」

 畳まれた羽の中……温かい……。体もだけど、心も……。
このまま……眠っちゃお……。



 僕は、これからもこういう事に出会うのかなぁ? ……出会うんだろうね。きっと、ホウオウ様の召使いである限り。
僕はそれで良いのかな……後悔、しないのかな……。
……分からない、よね。もし後悔するんならその時は……その、時は……。
……考えないようにしよう。今は、ホウオウ様に一応必要とされてる。だから、僕は僕に出来ることをしよう。
きっと僕にも……ホウオウ様が必要なんだから……。

   ~END~


後書き
 ……なんとも不完全燃焼な終わり方になってしまいました……。終わらせ方が分からなかったんです、すいません。
何はともあれ、ここまでお読み頂きありがとうございました。双牙連刃初の(多分ですが)グロテスク表現ありの作品はいかがでしたでしょうか?
本当はあんまり血が出たりするような表現は使わないようにしてるんですが……好き嫌いは良くないと思い書いてみたのがこれです。
これからの作品に反映されるかは……未定! なら何故書いたという話ですね。お目汚し、失礼致しました!

コメント、感想などはこちら!

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • とってもおもしろかったです!
    こういう話が好きなので・・・
    これからも頑張ってください!
    ―― 2010-07-18 (日) 19:18:34
  • のほほんとした感じでありながら、キャラクターの個性がしっかり出て心情もわかりやすくて読みやすかったです。私はグロテスクも大丈夫ですし(笑
    私もまぁ、死なないウインディの小説書いてますがそれとは違う出来で凄く良いですね。関連したものも読んでみたいです
    ――DIRI 2010-07-18 (日) 19:36:18
  • ガーディのキャラとホウオウの言葉遣いにより全体の雰囲気が柔らかくなっていて、グロが入っている小説の中では暖かい内容でした

    不死――よく憧れますが、実際になったら辛い事だらけでしょうね
    ――EV ? 2010-07-18 (日) 22:18:01
  • 皆さんコメントありがとうございます。返事が遅れてすいませんでした!

    >>名無しさん
    面白かったでしょうか! ありがとうございます!
    こういう話はあまり得意ではありませんが……出来れば後、何話か書く予定です! 頑張ります!

    >>DIRIさん
    おぉ、不死キャラ作品第一人者のDIRIさんから……ありがとうございます!
    のほほんとグロは合わせちゃいけないかな~と思ってたんですが、読みやすいと言って頂けて感謝です!

    >>EVさん
    あまりグロを前面に出すと自分が書けなくなってしまうのでこんな感じになりました。悪くはなさそうなので良かったです。
    不死…憧れるけど、辛さもあると言うのが少しでも伝わったでしょうか? そんな感じを出そうとしていたので、伝わっていれば幸いです。
    ――双牙連刃 2010-07-23 (金) 18:31:59
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Last-modified: 2010-07-18 (日) 00:00:00
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