Lem
この作品にはR-18ならびR-18G要素が含まれています。
苦手な方は戻りましょう。
規則という言葉がある。
法が規律を作り、常識を整備し、いつしか人はひとつの『物』となる。
それを歯車とも呼べばネジとも呼ぶ。潤滑油とも接着剤とも。何だっていい。形容する存在たれというのがこの世界を形作る。
けれどそれは僕ら人間がそう
本当はそんな物がなくても世界は循環し続けている。
人が人で在るために法ができた。
それは人とポケモンが別物だと分かつための
本当はそんな物、何処にも無いのに。
窓ひとつのない長方形。間取りは広いものの家具の数と配置が閉塞感を生み出している。
人一人分しか隙間が無い空間。均一性が損なわれた書物の羅列。
されど不規則という言葉は仕舞われていない。
順送りの頭文字。アルファベット。ナンバー。
杖の音。
暫く進むとやや手狭ではあるものの、資料を読み耽るには十分なスペースだった。
そう思わされるのは家具の配置が織り成す演出効果によるものなのかもしれない。
目当ての物は奥に。見つけたらここで読み、用が済んだら必ず資料を元の配置に戻す。
当たり前ではあるけれどとても大事な規則。
肯定を礼にして返すと老人はゆっくりしていきなさいと優しく頷き、再び閉塞感の中へ戻るとやがて扉の音とともに見えなくなった。
机の下にショルダーバッグを置く。重い物は下へ置くのがマナーである。軽い物は上へ。
片手に持ったままのそれをじっと見つめる。
割れた封蝋を重ねると花を象る中心に『M』と刻印されていた。
さて、探し物を見つけるついでにこれまでの事を振り返ろう。
自分が今ここにいる経緯からもう少し遡った辺りがちょうどいいだろうか。
事の始まりは数週間前。
TVのニュースを流し見ながら朝食を済ませている最中である。
天気予報、本日の運勢、大まかなニュースのピックアップ。
その中に興味深い一文を見つけた。
『M博士の招待状』
この近隣に住んでいる研究者の名前で著名な人らしく、毎年この時期の恒例ゲストとして出演している。
最初のゲスト出演の時はガラル粒子の発見者として大々的に報道されていたが、人の興味はうつろいゆくもので日々年々と沈静化し、今ではこの通り。それでも名前だけはあやふやではあるが知っている。
新人がトレーナーを目指す際、必ず傍らには相棒と呼べるポケモンの所有が義務付けられている。
これはこの地方に限った規則ではなく、全世界での共通項として義務教育に組まれている。
言わば常識でもあり、これを知らない等と宣う輩はやや頭の障害を疑われても詮無き事だ。
この新人の相棒であるが、通常は両親からの贈答、または知人や友人。
何れにも該当しないケースに限り、各地方に住む博士から贈答される決まりとなっている。
そう、決まり事。
国が研究費を出す条件として、研究者達は一定数のノルマとして新人トレーナーの希望者を輩出する。
その流れはそこで終わりではなく、研究者は新人トレーナーに別の条件を提示する。
新人トレーナーは研究者の顔となり、広告塔として。主にフィールドワークの助手として任に就く。
そういったWin-Winの関係を築くことでこの流れは完成する。
新人トレーナーは旅の過程で得た知識を逐一報告し、また働きようによっては特別報奨も出る為、固定給と歩合給を路銀に換えている。
それを支えるのは国が各地に建てた店舗の数々であり、こうして金は廻るというわけである。
また助手の任に就いている者は身分証明書ないし社員証としても扱われる。
一部の未開拓地帯は危険度によっては一定数の経験を積んだトレーナーか社員証を持つトレーナーのみ探索許可を許されており、この辺の件は保険が絡むため割愛するが概ね優遇されているものと捉えていいだろう。
こうした特性からか、対象は主に貧乏な暮らしを強いられている仔供たちに贈られる事が多い。
勿論その例外もある。あくまで優先されるというだけだ。
だからか自分はそんな夢のある話に対してあまり期待していなかった。
両親が旅に出たいかどうかの探りを入れてくるまでは。
両親はトレーナーでも何でもない普通の一般人で、普通の常識人で、普通の両親だった。
そんな両親だからだろう。
旅に出る条件として、僕に約束事を持ち出してきた。
『ポケモンと付き合うならば最後までその責任を持つ事』
如何にも両親らしい言葉だった。
即答はせず、少しだけ考えてから言葉の真意を図りつつ。
普段通りに、けれど内心は秘めた熱を燃やしながら。
肯定の頷きとともにコップの水を飲み干した。
招待状を持つ者の義務とは何か。
世の中の仕組みを博士は毎年仔供たちに解説するものの、大半は話半分にしか分かってない仔供が殆どだそうだ。
それでも重要な部分だけ分かっていれば良いらしく、博士もそこまで口煩くは咎めないらしい。
「あなたはとてもお利口さんね」と朗らかに話す博士は続けて軽く研究についての話等、脱線寄りの雑談を交わしていた。
今後の冒険についての指標になるだろうとも考え、話の節々に博士がどういった情報を欲しているのか探るべく最後まで付き合った。
老人の対話は確かに長いが、自分はそれが嫌いではなかったし、知識が深まるこの瞬間も好きだったので最後まで相槌を入れてしまった。
脱線した本題が戻る頃には昼を過ぎていた。
申し訳なさそうに謝る博士を良い勉強になりました等と顔を立てる。
本当にお利口さんねと再三言われてしまった。
自分は普通に話を聞いているだけなのに。
閑話休題。
席を離れて暫くすると博士が何やら籠を手に下げて戻ってくる。それを机の上に置いてから中の物を取り出した。
赤みがかった球体から果実を連想したが、かちりと小さな音を鳴らすと中から光が零れ出す。
TVで見たことのある光景が今まさに目の前で起こっている。続けて二度、三度。
「お待たせしちゃったわね。さぁ、あなたの相棒を選んで頂戴」
彼等から博士へ、博士から彼等へと視線を戻す。
兎、猿、蜥蜴だろうか。
野生でも人に友好的なポケモンをしばしば民家で見ることはあったが、彼等は初めて見るタイプだった。
こちらが見ている間、あちらもこちらをじっと見ている。
期待と不安が入り交じる感情が彼等に伝搬したのか、長いこと双方は視線を外せずにいた。
そんなやりとりに飽きたのか、兎を筆頭にして他の二匹も机から降りてそのまま何処かへ行ってしまった。
「あらあら。あの子等はお気に召さなかった?」
相槌と同時に首を横に振る。正直に自分が抱えている迷いを打ち明けると、老人は気を悪くせず黙して受け入れた。
「あなたはとても責任感の強い方なのね」
そうなのだろうか。旅に出る条件である以上厳守しなければならないと思っている節がある辺りではそうなのだろう。
兎も角。最後まで付き合う。その言葉の重みを必要以上に捉えすぎているからなのか、いざ対面してあの有り様である。
半端な気持ちで決めたくなかったのが態度として面に出てしまった。
そんな自分を老人は見放すことなく、対話を通して信用に値すると判断し、特別扱いとして書斎の立入許可を許してくれた。
そこでは主に研究とは大きく関与し得ない書類や保留となっている未公開の物をまとめて保管しているのだという。
そんな秘密の部屋へ自分を案内していいのだろうかと躊躇ったが、信用してくれたとあってはそれにちゃんと答えたい自己もおり、素直に心遣いに感謝する。
そして現状に至る。
随分と長く回想に耽ってしまったが、目当ての物らしき書類を片っ端から濫読している最中で、まだ決め手を掴みきれずにいる。
節目に休憩を挟むのも頃合いかと書類を閉じ、元の場所へ戻す傍らでふとひとつの文献が気にかかった。
背表紙に刻まれた文献をゆっくりと目で、指で、なぞるように反芻する。
『進化の病』
軽く読み進めていくと見知ったものがそこにいた。
あの兎の子だ。
優しく顔を愛でる様に指で触れ、そっと頁を捲る。
進化先と思われる姿と、更にその先の姿だろうか。
表紙の本題はそこから始まり、興味を引く記述が残されていた。
進化には不確定要素が大きく、一部のものから全体的にと幅広く変化が現れる。
この兎はその中でも稀な反応を見せた。
彼等は体質的な問題で履く者と履かざる者に分かたれる現象が見られた。
その経過観察結果を以下に記録する。
被験体(以降Aとする)
性別:♂
健康:良好
性格:大人しい
身体的特徴:通常体と比べて色素が薄い、体格やや痩せ
Aは過去に大病を患うことも疾患もなく至って健康体そのものであった。
唯一問題点として見られる身体的特徴以外は普通である。
最初の進化で異常は見られなかったが、その次が著しく体調の異変を訴える傾向がA含め様々な被験体でも確認できた。
何れもそれより先の進化は現時点において確認されていない。
本来進化とは永い時を経てゆっくりと遺伝子に変質をもたらすものである。
急激な体質の変化を可能とする彼等の生態には未だに不可思議が多く、進化にはプラスにもなればマイナスにもなる側面を併せ持つ。
一部の器官、機能を失う代わりに新たな器官、機能を得る。
時にはそれで命を落とすケースも少なからず存在する。
Aは進化の途上で新陳代謝の調節が正常に機能しない症状と見られ、放置しておくと自分の体熱で死亡するリスクが非常に高い状態にあった。
解熱薬を注入するのが効果的ではあるが、被験体の体熱により成分が変質する為、一定下の数値が必要となる。
対策を講じている内にAの体毛が発火した。
緊急措置として水風呂に浸からせるも徐々に水温が上がり、大量の氷を投入して水温を下げ続ける。
現場は二重の水掛け論で混迷を極める中、奇策とも取れる医療法が提案された。
発火する体毛を刈り取る事で冷却と発火材の除去を図る。
理には叶っているが、それを実行するには設備や装備が不足していた。
Aは今も燃え続け、刈り取る器具が熱に耐えられるかも怪しいばかりか、耐熱手袋すらもない。あったとしても手元の感覚はかなり狂うだろう。
となれば素手でそれを持つしかなく、誰がそれを実行に移すのかである。
立候補したのは奇策を挙げた若者であった。
若者の処置は手早く、徐々にAの容態は安定化していった。
それに伴って進化の変調も始まり、剥き出しになった皮下が被毛に包まれるまで数分とかからない。
恐るべき再生速度であり、この発見は今後の医療技術を促進させ得る物になると思われる。
無事に進化を終えたAは体力の消耗により昏倒に陥るが翌日には復帰。
後遺症として剃り残った被毛が焼け焦げた部分として残るが、皮下は平常であり、健康面に異常は見られない。
尻尾が黒い為か他の同種との差異が容易につき、Aのトレードマークとなる。
退院後、野生に戻す手筈であったがAがそれを拒否した。
施術を担当した若者の側を離れない為、各々の相違が無いことを確認し、所有権を若者に譲渡する。
――施術を担当した若者について――
施術は成功に終わったが、代償として若者の手指は火傷の損傷により重篤化。
指先からは炭化が進み、壊死の侵食を防ぐ為上腕骨を残して切断。
利き腕でない片手も火傷の後遺症が強く残り、感覚器官の損失は免れない。
現役を退く以外に選択肢が無い若者へ我々ができることは数多の感謝と犠牲を糧に再発防止に努めるのみである。
責任を感じてか、Aは若者の腕になろうと自発的に面倒を見てくれている。
若者のメンタルケアにも一役買い、退院後もパートナーとして付き添える様、徹底してカリキュラムを組む。
若者とAの関係性を観察して新たな発見も得られた。
これもまたひとつの『進化』ではなかろうか。
被験体(以降Bとする)
性別:♀
健康:良好
性格:腕白
身体的特徴:毛量が多い
Bはこれまでの例と違って始めの進化から何かしらの異常が観られる被験体であった。
健康面による問題点は無いのだが、異常に毛量が多く、また新たに生えてくるまでのスパンが極端に短い。
定期的にトリミングカットを挟まないと思うように行動ができなくなるばかりか、ストレスの起因により自ら被毛を食い千切る、掻き毟る等の自傷行為に走る傾向が観られる。
また持ち前の性格も作用して物に当たり散らす癖がある。過去に担当の研究員が襲われて流血沙汰を引き起こしたが幸い命に別状は無い。
担当を変えるか伺った所、続行を望んだので引き続き観測を再開。
担当者の怪我の状態に対するBは意外にも大人しく、以降癇癪癖はあるものの人に当たり散らす事はしなくなった。
担当者も慣れてきたのか以前よりも手早くカット処理が進み、大変喜ばしい事かと思いきやBはそれを不満に感じる様だ。
試験的に±5分の猶予を儲けてみた所、短くすれば不機嫌になり、長くすれば御機嫌になる様子が観測できた。
下世話だがあれは好意を寄せていると捉えて良いだろう。
その観察結果を担当者に伝えるとやや恥ずかしそうにしながらも悪い気はしない所か、同じ感情をBに対して抱いているらしい。
両者の間に確かな信頼関係が築けているのを確認すると同時に、Bの次なる進化もそう遠くはない話に思われた。
前例の悲劇を繰り返さないよう、担当者に心掛けと準備を万端に整えさせる。
観測開始より***日。
Bに変調が訪れる。
担当者曰く、被毛が手櫛に絡んだ分抜け落ちるという。
前例のない症状である。要注意として観測を続ける。
翌日。
脱毛の範囲が広がる。
翌々日。
Bが再び癇癪を起こす。
事態の深刻化を重く受け止め、本人の意思を確認した後担当者をBと同室に配属。
**日。
全体の脱毛が五割を越える。
上半身はほぼ丸裸と言ってよく、また新たに生えてくる様子が観られない。
掻き毟りを防止するため素肌をタオルで包む。
同日、深夜。
Bに異変が起きたと内線より担当者から報告が入る。
風邪のような微熱を帯び、頻りに担当者に体を擦り寄わせる行動を繰り返すという。
前例とは違う症状ではあるが、幸いなことに既知の症例であった。
担当者にその症例についての解説、対策法を言付けるとしどろもどろな反応で躊躇いの色が受話器越しに伺えた。
応援を送りたい気持ちはあるが、Bと親しい仲である担当者以外には荷が重すぎる他、メンタルケアの重用も兼ねなければならない。
それに対応できるのは担当者以外には居らず、どうしても人手が要る状況になった時のみ応援を送る事を約束し、Bの治療を担当者に委ねる。
翌日、早朝。
昨夜の通報以降、Bの個室の外で少数の応援スタッフを残したまま、担当者の応答を待つ。
暫くして内線のベルが鳴り、担当者の報告を確認する。
然しながら担当者は昨夜の内容についての全容を語りたがらず、個人的な部分は非公開として扱うことを約束した旨を取り付けた。
――担当者の証言より推測――
Bの症状について、全身の毛が抜け落ちる現象は進化の予兆であり、進化後に再び生えてきた所を担当者が目撃している。
前例とは違う現象からBの進化が通常であり、Aが特殊なものであったと仮説を立てるがデータ不足による粗が目立つ。今後も要検証の余地あり。
別の発症について、これは病気でも何でもなく生物学的な生理反応から来る『発情期』の時期が被ったものである。
人間相手にそういった感情を抱くことは通常無いが、閉鎖的な環境、何らかの紆余曲折による関係性等、特殊なケースによって誘発される可能性がある。
環境の改善案として雌雄のカップリングか別個体を用意し、データ収集を測る必要があるだろう。
*事件に関する記録のみ抜粋
*年*月*日 深夜*時
担当している被験体Bの症状が芳しくない。
頻りに体を私に擦り寄せたり、いつもとは違う声色で鳴いたり、体臭もやや強く感じるものの嫌な臭いではない。
甘ったるい匂いが鼻孔をくすぐり、背筋がざわつく感覚を覚えつつ、とりあえずBの背中を抱擁ついでに撫で擦る。
タオル越しに伝わる熱では分からなかったが、右頬に直接触れたBの頭に違和感を覚えた。
額に手を当て、次に額同士を当てて熱を測る。
やはりいつもより体温が高い。
前例の悲劇を思い出し、その兆候が現れだしたのだろうかと直ぐ様に上司に内線を操作して連絡を取る。
最初は風邪かとも思ったが、どうやらそうではないらしい。
タイミングが良いのか悪いのか、発情期を迎えたBの発散を大至急私が担うことになった。
状況判断の適材適所としては私が最適解である以上やむを得ないのも理解している。
上司から対策法のレクチャーを簡易的に教授した後、内線を切り、一旦深呼吸を入れる。
長い夜になるかもしれない予感へ気後れしないよう、両頬を張った。
Bにこれから行う事を説明する。その時の私は懺悔するように、Bに赦しを解いて貰いたい気分でもあった。
もし私がBに対して特別な感情を抱くことが無ければ、そうはならなかっただろう。
この担当に就いてからというものの、ろくな出逢いを探せないでいる。
それはまだいい。そもそも自分はモテる方ではないので期待もしていない。
だが自分の性処理すらまともに出来ないでいるというのはこう言っては何だが拷問である。
Bの事が心配だという気持ちは確かにあるものの、それに向き合えば向き合う程に自分の肉欲が肥大化していくのも確かだった。
Bのためを思えばこそ担当を変わるべきだったろうに、その頃の私は使命感に燃えていて、負った怪我の具合も省みない無謀な強さがあった。
告白しよう。
私はBに対して恋慕を抱いている。だがそれの正体は肉欲に支配され、熱り立つ欲望が捌け口を求めて結び付いているだけの醜い感情だった。
人間として恥ずべき獣性に支配されんばかりの肉塊だった。
そんな状態の私がBに適切な処置を施術できるとは思えない。
それでもやるしかないのだ。ここまで付き合ってしまった以上、私しかBを介抱できないのだ。
研究者として担当者として何よりよき隣人として。
再度両頬を張る。Bの熱が伝播したかの如き熱さに、痛みは熱に換わる間も無くかき消された。
そっとBの頬から触れる。
ぴくり、と小刻みに震えたその先へ続く道筋をゆっくりとなぞっていく。
口吻へ。親指が触れ、Bが食む。
ぬるりとした感触、先に触れた表面より尚熱を帯びた舌、奥へ奥へと呑み込まんとする吸引力。
感情が爆発しそうだった。
今すぐにでも指を引き抜き、その口吻へ自らの舌先をねじり込みたくなる魔性を孕んだ感触が指先から胸中へ、じわりと滲みながらも急速に接近してくる。
動悸が早くなり、触れずとも分かる爆音を奏でている。
指先を通してBに伝わりかねない動揺を隠すように指をそっと引き抜いた。
窓の無い個室の中で照らされたモニターの星明かりが影を落とし、一筋の煌めきを含んで落ちる。
追い掛ける様に滑り落ちた指先は喉へ。
咥内に溜まる唾の嚥下の振動に揺られ、指は更に滑り落ち、頸に。
被毛が殆ど残っていないそれはあまりにも細く、片手だけで輪を作り、力加減を間違えればへし折ってしまいそうな華奢さだった。
そこから更に降る最中で鎖骨に触れた。
親指が引っ掛かり、その先へと降る指先の本数が二本指に変わる。
程無くして柔らかな丘陵が見え、頂上を探ると硬い隆起に触れた。
艶やかな音色がBの口から溢れる。素肌へ直に触れる感触はこれまでにない快楽をBに植え付け、欲求の昂りを加速させていく。
動悸が指先を通して伝わるものの、それがBのものなのか自分のものなのか分からない。
ならばと掌全体で触れ、指の合間に乳房を挟むと、密着が増した分反応も大きく返ってきた。
伝わる確かな別の動悸と、Bの艶姿に当てられてか、自分の昂りも極まっていくのを自覚していく。
頭頂側から流れる血が全て陽根に集まり、意識が脳にあるのかそちらにあるのか、自分を見失いそうになる感覚を軽く振り払う。
指の中腹で主張を立てる芽吹きを挟むと刺激が強すぎたのか、一際大きく幼体を浮かせ、痙攣の反芻に咽び鳴いた。
絶え間なく押し寄せる津波に堪えようと両手で白衣を引き寄せ、私の胸に頭を置くBを愛おしく思う反面、白衣の下に隠された燻りの主張も大きくなっていた。
だからだろう。自分の熱に浮かされて気付くのが遅れてしまった。
鼻を突く異臭と、衣服が貼り付く不快感が事態の変容を訴える。
膝上にBを座らせながらの施術を行っていれば当然の帰結であった。
脱ぎ捨てたいが、Bがそこに残り続ける以上選択肢は無い。
それよりも浸水をどうにかするのが先である。幸いBの素肌をガードするべく巻いていたタオルが役に立つ。
しかし身ぐるみを剥ぐとなると素肌に刺す外気が辛いかもしれない。
Bの震える手指をそっと開かせ、解放された白衣を広げてBごと抱き込む。
唐突の事に驚きの色を見せるかと思ったが、意外にもそうした素振りは見られない。
それほどまでにBからの信頼は厚かったと分かる。それだけに自分が抱えるそれがいたたまれない気持ちになる。
そっとタオルを巻き取ると汗を吸ったのかやや湿り気を帯びていた。構わずBの下腹部に押し当て、異臭の元を吸わせていく。
完全とは言い難くも多少の改善には繋がったであろう。
忙しなく動く私が落ち着いたのを見計らってか、Bが私の空いた手を手繰り寄せる。
指先に絡み付いた残り香を嗅いでは表情を歪め、再び嗅いでは繰り返す。
三度目を折り返した所で、そのまま手指を胸へと導いていく。
触れた瞬間再び甘く鳴くBの艶姿へ、催促を求める色情へ応えようとして。
肥大化していた私の劣情が児戯に悪戯心を唆した。
触れた芽吹きを軽く押し潰し、爪弾きながら重力に沿って南下していく。
別の芽吹きが指に絡み、同じ末路を辿る。
三度目で全身の硬直が始まり。
四度目で嘶いた。
再び震えを押し殺そうとする幼体が私のシャツを引き寄せる。同時に下腹部でも更なる洪水が押し寄せていた。
被せていたタオルをそっと押し退けると籠った異臭が周囲に満ちる。
上半身と違って下半身にはまだ多量に被毛が残っており、殆どの被毛は甘露を吸ってしなだれていた。
指先を地肌に沿わせて毛並みを掻き分けると所々で絡み付く。侵入を拒む様に生い茂る露草に軽く苛立ちを覚え、一本の葦を摘まんでは引っ張る。
根が浅いのか、抵抗も少なくするりと抜けた。
ここにきて悪戯心は遠慮は要らぬと煽り立て、声に従う様に次の葦を引き抜きに掛かる。
一毛、二毛、三毛。
やがて面倒になったのか、指先で摘まめるだけ摘まんで引き抜いた。
それまで小さく反応を見せていたBが徐々に大きくなり、眺めている内に愉しくなってくる己を自覚する。
十を越え、百を過ぎ、千切りに差し掛かる所で。
雌花の球根が地表に露出する感触が指先から伝わり、同時に幼体もまた跳ねた。
目当ての物を探り当てたならば次にやることを企んでいたが、その前に周囲の整地が必要だろう。
児戯の最中に絡まれては些か気落ちがするというもの。
逸る気持ちを抑えて自分の手指が届く範囲まで丁寧に処理していく。
暗闇に慣れた目で眺めると中々に背徳的な光景がうっすらと見えてきた。
もう少し星明かりが強ければ、蕾の花開く様子を眺められたのだろうが、指先が触れる感触からでも想像できる範囲であり、不満どころか昂りの追い焚きを促していく。
埋もれた花弁を穿られ、球根の皮は執拗に責め立てられた影響で秘核が剥き出され、挟み、捻られ、擦られ、爪弾かれる度。
蕾の奥からはしとどに溢れた甘露が吹き零れていく。
回数を重ねるにつれて指は半数上を容易く呑み込み、そこまで拡がってしまえば自分の肉欲も受け止めきれるのではないかという悪魔の囁きが声高く脳髄に響いた。
制止の声は最早何処にもなく、最後の良心ですら脱ぎ捨てた白衣を床に敷かれ、置き去りにされて虚しく空回る。
休む間も無く連続で快楽の虜にされたBを上に乗せ、長いこと不自由を強いられていた下半身が漸く偽りの夜空に曝け出された。
下着とズボンはBの甘露を多量に吸い、自分の吐き出した欲望の涎と混じりあって淫靡な臭いを醸している。
そこから聳え立つ陽根にBの視線が集まり、見られているというだけで達しそうになるのを必至で堪える。
正直の所、先端が花弁に触れただけで果てかねない勢いに呑まれていた。
これから起こることを本能で理解しているのか、Bは嫌がる素振りも嫌悪感を露にすることもなく、待ち焦がれる様にして腰を浮かせて催促を要求してきた。
望み通りの展開が叶い、先端が花弁の中へ埋もれた矢先、双方に襲い繰る快楽の波が電気反応を伴って伝播していく。
加えて何ヵ月もおざなりになっていた分もあり、いつもより高い感度へと極まっていた陽根への刺激を堪える余力はほぼ皆無に等しい。
敢えなく果てた陽根の荒ぶりは侵入経度が浅いのも相まって、殆どの子種を宙へと撒き散らし、Bの顔にまで降り掛かり、それだけでは飽き足らずに下腹部から胸へと何筋にも線を引いていく。
暴発による熱暴走に項垂れながらもBの様子を伺う。
顔についたそれを指で拭い取り、初めて見る物へ興味津々に目を輝かせ、指先で捏ね繰り、臭いを嗅ぎ、舌先で味に触れ、咥内へと全てを呑み込んでからは味わいを執拗に確かめながら、数十秒を経て体内へと嚥下された。
その味を何と受け取ったかは定かではないが、今度は胸にこびりついた白濁液を掬い取ろうと手を伸ばしていく。
Bの指先で塗り広げられていく白濁液は地肌の上で膜となり、星明かりを受けて微かに煌めく。その情景が幼体には似つかわしくない妖しさを帯び、扇情的な挑発に触発された陽根が更なる快楽欲求を欲していた。
味わいの途中であるBを横目に、再び先端が花弁の奥へと沈む。
一度吐精したからか、先程よりは快楽に対して余裕のある調子を見せた。
このまま快楽に溺れるままに奥へと沈み行くかと思われたが、途中で窮屈な窄まりに強い抵抗感を覚えた。
流石に指半数が入ったとはいえ、拡がったのは入り口付近のみで、奥は未拡張のままである。
強引に押し拡げることも可能だろうが、不思議とその選択肢を私は選ばなかった。
欲望に流されたとはいえ、Bのことを心から好いているのは本心なのである。
破瓜の痛みに涙ぐむBへ申し訳ない気持ちを言葉に乗せながら、挿入状態をなるべく刺激しないようゆったりと動きつつ、Bの顔へと口許を近づける。
近づける限界まで伸ばした所で、Bの耳先を摘まみ、そっと口付けてから、Bへの感情を吐露していく。
好きという気持ち。歪な気持ち。捻くれた気持ち。
それ等を経て尚、君が好きという気持ちを。
想いを乗せて何度も吐きだした。
好きと伝える度に挿入したままの陽根が締め付けられては緩んでいく。
それを肯定と受け取っていいのかと問えばyesの代わりに陽根が締め付けられる。
愛おしく、嬉しさのあまりについ抱き締めてしまいそうになるのを寸前の所で堪えた。
長いことそうして愛を確かめあっていると、Bの幼体を淡い光が覆い始めた。
それは未知ではなく既知の現象だ。
私は知っていると同時に気付く。
これからBは最終進化を迎えるのだと。
淡い光は眩い煌めきへと強まり、薄目でなければ目を開けていられない輝きを放っていた。
それでも薄目であれ見届けたいと堪え忍んで観察を続ける。
光の侵食が伸びるにつれてBの幼体も伸びているような気がした。
悠久にも思える永い時を経た頃、唐突に光が閃光を伴って弾けた。
あまりの強さに等々目が眩み、反射的に閉じてしまう。
閉ざしても尚突き刺す閃光が眼球を焼き、暗闇に陰を遺す。
一瞬の煌めきが過ぎ去り、静寂を取り戻すのを確認すべく恐る恐ると目を開ける。
眼下の先には見慣れない、けれど確かに見覚えのある姿があった。
無事に進化を終えたBへ祝福の言葉を囁こうと、舌に葉を乗せた所で強い力に阻まれた。
伸長が伸びたことにより、先程までは届かず仕舞いだった距離をBが急速に詰め寄った。
その結果、私の言葉は実を結ばず、代わりに初めて交わす彼女との愛の児戯に精一杯の祝福を乗せた。
夜が明けたらここを離れよう。
私は間違いを起こした。
私自身が思ってなくとも、世間的に見れば異常な契りを彼女と交わしたのだ。
決心は固く、何があろうと覆らない。
それが彼女との永久の別れになるとしても。
だから。
今だけはもう少し、このままで。
ふたりだけの愛を確かめるように。
刻み付ける。
窓が建ち並ぶ長方形。間取りは果てしなく家屋の数と配置は解放感の中に包まれている。
人一人分を残した隙間の先の空間。揺り篭の上で佇む老人は眼下に広がる灯火のひとつひとつを眺めている。
そっと横に並んで同じ風景を観測していると徐々に灯火の数が増え、薄暗がりの中でやがて大きな一つの灯火となった。
その情景は書斎の電飾が一つ一つ暗闇に呑まれていく様にも似ていた。
別世界から帰ってきた余韻に浸りつつ思考する。
世界は無数に存在している様で実の所それは正しくない。
世界とは結果論に過ぎず、それぞれが選んだという、選ばれたという『選択肢』の帰結によって生まれ出でる。
選ばれなかった方の世界は誰にも看取られること無く、正しく『非公開』として消えていく。
僕はその世界の一端を覗き見た。
絶望的な境地に立たされ、先の見えない未来を何故選ばねばならないのか、それがずっと疑問だった。
右を見ても左を見ても分からないならば進まない方が安全なのでは無いかと何度も心の中で反芻した。
今日という特別が無ければ僕はずっと何も選ぶ事なく、非公開の中に組まれて死んでいただろう。
それに気付いた瞬間、僕の中で言い訳を作る僕は消えた。
完全に居なくなった訳ではないだろう。
僕が選ぶ選択肢の世界で先回りしてまた現れるかもしれない。
そうなったならば、今日の事を思いだそう。
選んだ世界も、選ばれなかった世界も。
いつかは消えて元に戻る。
傍らで杖の音がした。
揺り篭から降りた老人は昼間と変わらない笑みを浮かべ、昼間と同じ問いを掛けてきた。
選択肢を選び、僕は僕の世界を公開していく。
航海して世界を広げていく。
後悔を経た先にも世界はあるのだから。
ふと過去の自分を思い出した。
海を渡り、遠く離れた別世界に足を踏み入れてから数ヶ月、はて、年は過ぎてただろうか。
どうにも日付感覚が朧気になりがちでいけない。
相棒が無鉄砲に前を歩く質があり、後方確認をする暇が無いのも少なからず影響してはいそうである。
鬱蒼と生い茂る森林、丘陵の頂上に差し掛かる折りで眼下に広がる絶景に息を呑む。
視界を埋め尽くす草原、草に隠れて生息する生き物の音、湖があり、麓では柵で隔てた建物が見える。
恐らく牧場だろう。調査がてらに立ち寄ってみるのも悪くない。牧場から続く道を視線で辿っていき、近い方の道まで進んでいくと見覚えのある足跡を見つけた。
足跡というよりは、焼け跡が正しいかもしれない。
とりあえず迷子の相棒はこの奥へ進めば合流できるだろう。
丘を下るに連れて視界の境界線も徐々に下がり、草むらの高さがそれなりにあることに気付く。
道がなければ実に骨の折れる踏破になっていただろう。
この地の開拓者や先駆者に感謝である。
そうこうしている内に牧場が見えてくる。
建物の影が近づくにつれて柵の中の様子も分かるようになった折りで、相棒の姿がちらついた。
どうして柵の中に居るのだろうか。全く。
溜め息もそこそこに駆け足で柵へと近寄り、相棒を呼ぶ。
こちらに気付いたか、ぴょんぴょんと跳ねて距離を縮めてくる。
はて、僕の相棒はあんなに華奢だっただろうか。
相棒ならば全力疾走で駆け寄り、そのまま体当たりを噛ましてくる牛のような生き物だったが、目前のそれはゆったりと跳び跳ねつつ50m手前で静止した。
そこまで近寄ればそれが僕の相棒ではない事に気づくのに時間は掛からなかった。
人違いだった事を謝りつつ、失礼とは知りつつも職業柄観察を続けてしまう。
心なしか僕の相棒と比べるとその子は被毛が薄く、地肌が透けて見える。
下半身もよくよく見れば赤色のキュロットパンツである。
その特徴的な要素の疑問は直ぐに瓦解した。
暫く見つめあっているとその子は指を真横に指し、示される方向へ目を向けると牛舎が見えた。ちょうど内側が見える造りになっており、荷馬車の隣に体格のいい男性がこちらに背を向けて立っている。
男性は何やら抱えている様子で、抱えられながら喜んでいるそれこそ僕の相棒であった。
唐突に頭痛がしてきた。また他所様に迷惑をかけてないだろうかと頭を抱えつつ、気乗りのしない足取りで牧場主の元を訪れた。
この辺では同種が珍しいのか、すっかり意気投合してしまった相棒と牧場主に対して僕の態度はやや引き気味に距離を置いていた。
彼等に思う所があり、あまり諸事情に詮索をしたくないからだ。
少々休憩を挟ませて頂く都合で一人風景を眺めながら、頂いたホットミルクで暖を取りつつ、喉を潤していく。
とても美味しい反面、家庭的な味わいが望郷の念を駆り立てた
内ポケットから携帯を開き、SNSアプリを起動する。
両親のグループチャットが開かれるが、更新日付は僕の旅立ち以降途絶えていた。
両親とは普通の親子だった。
そう、普通だった。だから離婚だってありきたりな現象に過ぎなかった。
親権について両親は最後までもめていて、僕はどちらに転んでも大人しく従うだけの無気力な子供だった。
あの特別な一日が無ければ、きっと両親のどちらかと今でも繋がって居たのだろう。
でもそうしなかった。
両親の事は嫌いではない。好きという気持ちも尊敬という気持ちもある。
ただ理解できなかっただけだ。
家族という繋がりはそうも容易く壊れるものなのかと、童心が学習するには負担が重すぎた。
だから僕はそこから離れる選択肢を選んだ。
両親の別れる最後の姿を見たくないという理由で。
そっと記憶を閉ざして非公開の棚に仕舞いこんだ。
今でも残る強い後悔の念へ引きずられそうになる。
暗い顔をして塞ぎこんでいると、悪戯小僧がこっそりとテーブル上のホットミルクを狙っている。
ちょっとでも油断するとすぐこれだ。
片手で相棒の鼻面を掴み、それは君には飲めないよと代わりに適当な木の実をポーチから取り出し、鼻面の上に置いてやる。
そのまま動かないよう指示を出してから解放してやると、器用に表情だけを歪めては視線で僕に合図をねだる。
面白いのでそうして眺めていたい所だが、そこまで鬼では無いのでちゃんと傍らに居ること、離れすぎないことを注意させ、食べて良しの合図を出す。
待ってました! と言わんばかりの勢いで木の実が鼻面から転がり落ち、それを口でキャッチしようとして失敗した。
咥え損ねた木の実が地面に触れるすれすれで相棒の爪先が割り込み、反動にバネを利用して宙へと蹴りあげられる。
おおっ、と思わず声があがった。
だがそこから先は予想とは全く別の終わり方を迎えた。
木の実はヘディングで更に宙を舞うや唐突に巨大な火の玉と化し、同時に跳び上がった相棒が華麗なシュートを決めて大空へと蹴り放つ。
元が木の実だからか、やがて燃え尽きては空中分解を起こして何も見えなくなった。
視線を相棒へ戻すと自分のハットトリックに酔っているのか、喜びの舞やドヤ顔ポーズを決めているが、冷静さを取り戻すと自分が蹴り上げた木の実の行方を思い出したようで、泣き顔に変わっていく。
どうしよう。笑ってはいけないとは思うんだけど。
ごめん、無理。
口を片手で塞ぎながら必至で堪えてみても隙間から声が漏れてしまう。
その様子に傷付いたのか、背中を相棒が両手で叩くが、そこまで痛くもなくマッサージみたいで気持ちいい。
もう構うものかと手を離して思い切りに笑う。
腹の底から自分の本心を曝け出すと、抱えている悩みも破顔とともに大空へと吸い込まれていった。
草原の合間を縫う道すがら、相棒は相変わらず前を歩き、落ち着きのないムーブメントを繰り返している。
ただ反省はしているのかちゃんと目の届く範囲で静止する様になった。
あの後別の木の実を上げたら機嫌を直したので、現金な子は羨ましいなぁ等と苦笑する。
何も告げずに牧場から去ってしまったので、謝礼代わりに幾つかの木の実を包んでテーブル上に残しておいた。
横からお一つ拝借しようと手を伸ばす相棒を妨害するのも忘れない。
後悔のない生き方は理想的だけれど、実態は後悔がマシな生き方を選ぶことの繰り返しである。
どんな生き方をしても、最適解を選んでも、人は必ず後悔する生き物でできている。
苦悩そのものが人だと言っても過言ではない。
僕は家族を求めた。
けれど両親のどちらにも僕の理想は無かった。
どちらも選べないなら新しく作るしかない。
それが僕の選択肢。
ゆったりと歩く僕を急かそうと相棒が大空へと跳び跳ねている。
その先に広がる世界を歩こう。
僕の家族と供に。
後書
創作意欲というものは何時枯れるか分からないもので、それは唐突に明日訪れるかもしれないし今この瞬間で枯れてしまう時もあります。
最後の作品を機に創作から退こうと以降はここを見る事はありませんでした。
然しながら枯れる時もあれば湧き出す時もまた唐突にやってくるものです。
そういうタイミングにフォロワーさんが「仮面大会やってますよ」等の声がかかり、実に4年半以上の帰還となりました。
お久しぶりです。初めましての方はこんにちは。
とはいえ仮面大会関係なしに今回の作品は形に出したいと思っていたので、いずれは普通に投稿されていた物と思います。
大会の有無を知ったのがエントリー〆切の2日前というギリギリもいいとこな場面もあり、
本来書きたかった物や着地点が微妙にズレてしまったのは個人的に勿体なかったと同時に文を綴る楽しさもたまには良い物だなと、
苦痛と苦悩を一端隅に避けて創作できたのは自分の中ではかなり大きな意味を齎したのが一番の宝になりました。
思ったものとは違う形になってしまったものの、ここから更に派生する泉も幾つか湧き出しているのでどんな形であれ、完成させるというのはとても大事です。
いずれその湧き水もある程度形になったら続き物として投稿しようと思いますので、この物語が気になる読者様は気長に見守って頂けるとありがたいです。
長い事創作から離れていたにも拘らず、完成した作品を読み返してみると本当に所々で出てくる悪癖という名の個性にはほとほと苦笑いしか出てきません。
仮面を被るという行為が似合わないスタイルなのです。そもそも仮面を被る意識が皆無なのです。そんなものはウサちゃんの遊び道具として天へ還って頂きました。
ウサちゃんで思い出しました。
私の悪癖の一つで全体をほぼ地の文で埋める、種族名や人名の呼称を濁す等、他にもありますが大体この二つが読者に読み辛さを強制しているのは本当に申し訳ない。
ただこうした書き方も場面によっては最適解になったりするもので物は使いようです。
心理描写は兎も角、レポートや日記等の過去の記録媒体に対してはそういう書き方がそれっぽく演出できると私的には思っています。
暫くはウサちゃんメインの作品作りを(創作意欲が続いてる間は)展開していきますので何のポケモンなのか分からなかったら是非そちらも応援して頂けたらとても喜びます。
最後になりましたが、主催者様、参加者様の方々、読者様の方々へ。
お疲れさまでした。ありがとうございました。また次回もよろしくお願い致します。
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