ポケモン小説wiki
一進一退

/一進一退

 夢だったか現実でだったか忘れたが、僕は以前に誰かからこう聞かれたことがあった。
「お前の夢は何だ?」
 そのときから僕はポケモントレーナー、いやポケモンマスターになると決めていたので、
「ポケモンマスターになる」
 とすぐに答えた。僕が答えた言葉を確認するとその誰かは笑った。
「はっはっは。そうだな。お前の望みをかなえてやろう」
 誰かが言葉を言い終えた後に僕は突然くらっと来て倒れそうになった。
僕が倒れそうになっても誰かは心配する様子も無く更に言葉を続けた。
「お前の名前は○○では無い……。××だ!」
 違う。僕の名前は○○……? 俺の名前は××……。俺の名前は××だ!
だいぶ昔のことのような気がする。覚えているのはここまでだ。

 隣に住む幼馴染のジュンイチがシンジ湖に珍しいポケモンがいるから捕まえると言い出して俺もついていったのが冒険の始まりだった。湖にたまたまトランクを置き忘れたのはポケモンを研究している偉い博士で。これもたまたまその人からポケモンとポケモン図鑑までもらって。ナナカマド博士は外見が怖かったけど優しい人だった。冒険に出ると言ったら母に父と同じねと言われ。後でわかったことだけど湖には本当に珍しいポケモンがいた。

 俺は着実にポケモンリーグへ足を進めていった。バッジも8つ手に入れた。よし、今からポケモンリーグに挑戦だ。深呼吸をして扉に入る。階段を上ると後ろの扉が閉まってしまった。もう後には引き返せない。俺は腰のボールをもう1度握り締め、また階段を上り始める。四天王は自分の専門タイプを持っているトレーナーが揃っているが、迂闊に弱点を攻めると生半可な攻撃は返り討ちにされてしまう。気を引き締めていかなければ。
とにかく必死に戦った。ここで負ければまた最初からやり直さなければならないから。やり直しなんてできないから……。虫の恐怖におびえ、砂まみれになり、暑さで意識が朦朧として、超能力に惑わされ必死に戦った。
 そして、今チャンピオンの扉を開く。扉の向こうに待っていたのは、シ、シロナさん? チャンピオンだったのか。

「元気にしてた? そう。
 テンガン山のこと感謝しています。
 どんな困難にぶつかってもポケモンと乗り越えてきたのね。
 それはどんなときでも自分に勝ってきたということ。
 そうして学んだ強さ。君たちから伝わってくる!
 さてと! ここに来た目的はわかっています。
 ポケモンリーグチャンピオンとして君と戦います」
 シロナさんが言葉を言い終わりボールを構える。チャンピオンの威圧感がすごい。いつもの穏やかな雰囲気は微塵もない。
 熱戦の中ガブリアスにエンペルトの冷凍ビームが決まったときようやく勝利を確信できた。

「おみごとです。すばらしい戦いだったわ。
 ポケモンが最大限、力を発揮できるよう応援しつつ、冷静な判断で見事勝利した……。
 その情熱と落ち着き、二つを合わせ持つ。
 君とポケモンならいつだって、どこだって、どんなことでも乗り越えられる。
 戦っていてそう思ったの!
 シンオウの新しいチャンピオンの誕生ね!
 さあ! そのリフトに乗って!」

 シロナさんに殿堂入りを記録する部屋まで連れて行かれた。ただ、記録するマシンがあるだけで他には何も無い部屋だった。しかし、無駄に広い。床もピカピカでほとんど誰も出入りしていないようだ。
「そこにボールを置いて……」
 シロナさんに言われるままにボールを装置に置き、殿堂入りに記録されるのを待つ。ようやくオレの夢であるポケモンマスターに今なる。殿堂入りを記録するマシンから光が放たれ、オレは思わず目をつぶる。これが、初めて挑戦したポケモンリーグでの最後の記憶だった。

 はっと目を覚ます。周りを見てみると俺の部屋だった。ポケモンリーグに挑戦したのは夢だったのか。いや、きっと夢ではない。じゃあ、どうやってポケモンリーグから自分の家に戻ってきたんだ……?このことを確かめるために俺はポケモンセンターに向かおうとした。いや、向かわなくてもいい。自慢の手持ちポケモンのステータス欄にはチャンピオンに勝った証のリボンが煌々と輝いている。これでチャンピオンに勝ったことは間違いない。次はシロナさん本人に確かめよう。俺はもう一度ポケモンリーグに向かった。もう一度だけ勝ち続けなければならない。一度勝ったら次も勝てる。初挑戦のときよりも速くチャンピオンのところにたどり着いた。
「シロナさん。俺は1回ポケモンリーグで優勝しましたか?」
 俺の質問は無視された。何も知らなければ、俺の問いは意味不明な問いに聞こえるだろう。答えの代わりにシロナさんの口から発せられたのは、あの時と同じ言葉だった。バトルが終わった後もシロナさんは同じ言葉を繰り返し、俺を殿堂入りの部屋まで誘導する。ボールを殿堂入りを記録する機械の上に置くと、機械から発せられる光が強くなり、そこで俺の記憶が無くなる。そして、また、自分の家に居る。ポケモンリーグに行くことが無意味に思えた。二度とあそこには行かなくていいだろう。

 ポケモンリーグに行かなくなると何故か手持ちの仲間を増やしたくなった。6匹と言わずにもっとたくさん。仲間の数は多いに越したことは無い。151匹居ても足りないかもしれない。ズイタウンに育て屋があったはずだ。いや、その前にオーキド博士にパルパークに呼ばれているんだった。なんでもパルパークには珍しいポケモンが居るらしい。俺は意気揚々とパルパークに向かった。俺は簡単にスタッフからの説明を聞いた。しかし、疑問点がいくつかあった。カントーやホウエンから連れてきたポケモンという部分だ。俺は一度もカントーやホウエンに行ったことが無い。行ったことがあったとしても向こうの地方でポケモンを捕まえていない。しかし、スタッフはもう既にオレがホウエンからポケモンを連れてきていると言う。わけがわからない。話していてもしょうがない。オレはパークボールを6個もらいパルパークの中に足を進めた。園内に入って感じたのが草むらや海からポケモンの気配がしないことだ。しかし、こんな狭い場所に自然がよく再現できたと思う。その点ではカントーにあるサファリゾーンと同じだろう。……? カントーのサファリゾーン? 俺はまず海に足を進めた。何故か急に天候が変わり雨が降り出した。今まで晴れていたのに……。入り口のほうを見るとそちらのほうは晴れている。まあ、いいや。とりあえず。エンペルトの波乗りで海を進もう。少し進むと俺たちの下に大きなシルエットが浮かび上がった。こんな巨大な海のポケモンはホエルオーぐらいだろう。エンペルトは危険を察知したのか影の範囲から高速移動で脱出した。あまりに急なことだったので俺は振り落とされそうになった。エンペルトがこうも逃げたくなるようなポケモンはどんなポケモンなんだろうか。影を作っていたポケモンがゆっくりとその姿を現す。姿を現したのはカイオーガだった……。なんでこんなところに……。絶対に……ありえない……。カイオーガはこちらの姿を確認すると攻撃の体制に入った。このままではまずい。自然とさっきもらったボールに俺の手が伸びる。そしてそのまま何も考えずに投げつける。
「戻れ! カイオーガ!」
 カイオーガはボールの中に吸い込まれていった。今言ったのは俺なのか? 戻れ? そんなはずは無い。こんなポケモン今まで実際に見たことが無かった。とりあえず、今は6匹のポケモンを捕まえることが先決だ。次は山に行ってみよう。
山につくと今度はいきなり日差しが強くなった。さっきまで雨のせいで濡れていたのでちょうどいいが……。
さっきはカイオーガだったから……。いや、絶対にそんなことは認めたくない。目の前にそびえ立つ巨体……グラードン……。
 伝説。いや、神とまで呼ばれるようなポケモンが俺の前にいる。確かにディアルガとパルキアは見たことがあったが、それはシンオウ地方の話だ。
別地方の伝説のポケモンまでこちらの地方に来られたらかなりおかしいことになるだろう。まさか、もう変になっているのか?さっきカイオーガにボールを投げたときと同様に自然と俺の手がパークボールに伸びる。ボールを投げられたグラードンは抵抗をしない。何故だ。俺はグラードンを捕まえた後、岩の上に座り込んだ。別地方の伝説のポケモンが2匹、しかもこんなパルパークという場所にいるわけがない。絶対にありえない。残りの4匹のポケモン。レックウザ、ミュウツー、デオキシス、そして……ホウオウを捕まえ俺は出入り口に戻った。
「お疲れ様。××君」
 スタッフの人の声を無視して近くの椅子にへたりこんだ。「歪んでいます。可笑しい。何かが。コロシアムの」それ異常に歪んでいる。
こんなにも伝説のポケモンが1箇所に集まるはずは無い。ん? まてよ。俺が連れてきたとか言ってたな。連れてこられたのなら1箇所に固まっているのもわかる。しかし、連れてきたのは俺じゃない。まあ、いいや。そのうちわかるだろう。ズイタウンに戻ってポケモンを育てよう。

 それから俺は卵を孵化させることを始めた。もちろん1日に1回パルパークに行ってポケモンを捕獲する。
今日はこのポケモンを育てよう。今日はパルパークでこのポケモンを捕まえた。来る日も来る日もその繰り返しだった。日付だけは確かに進んでいく。しかし、季節は変わらない。木も育たない。育つのは自分で植えた木の実だけだ。だんだんと人と話さなくなってきた。他の人は話しても同じことしか喋らない。まったく会話が成り立たない。ポケモンを孵化させ、育てるにつれだんだんとこの生活に嫌気がしてきた。これがポケモンマスターのやることか?
そもそもポケモンマスターってなんだっけ?

 何も進まない。進んでも元に戻っている。
いくら育て屋爺さんからタマゴを受け取っても、孵化させた後すぐに意識が遠のき、また育て屋爺さんの前にいる。
いくら日にちがたっても時は止まったままだ。昨日とやることはまったく変わらない。
いくらバトルに負けても突然意識が飛び、戦う前になっている。

 助けてくれ!

 これは悪夢ではないかと思った。ちょうどそんな時ダークライと言うポケモンの噂を耳にした。
この悪夢を見せているのはダークライではないか? 波止場の宿に行けばダークライに会えるらしい。
そして、ダークライと対峙した俺はダークライに問いかけた。
「答えろ! ダークライ! これはお前の仕業か?」
 しかし、ダークライは答えなかった。
これは時間が狂っているのではないかと思った。ちょうどそんな時、槍の柱にいたディアルガのことを思い出した。
時間を狂わせているのはディアルガではないか? 槍の柱に行けばディアルガに会うことができる。
そして、ディアルガと対峙した俺はディアルガに問いかけた。
「答えろ! ディアルガ! これはお前の仕業か?」
 しかし、ディアルガは答えなかった。
これは空間が歪んでいるのではないかと思った。ちょうどそんな時、槍の柱にいたパルキアのことを思い出した。
空間を歪ませているのはパルキアではないか? 槍の柱に行けばパルキアに会うことができる。
そして、パルキアと対峙した俺はパルキアに問いかけた。
「答えろ! パルキア! これはお前の仕業か?」
 しかし、パルキアは答えなかった。

 ダークライは関係が無かった。ディアルガに会っても、パルキアに会っても何も変わらなかった。
 俺は唯一まともに会話ができるオーキド博士の家に来ていた。
「オーキド博士。俺の周りの人がおかしくなっているんです。博士は何かわかりますか?」
 オーキド博士は俺のほうをちらりと見ると視線をまた机に戻した。
「そうじゃの……、これはわしの推測じゃが、何かがおかしくなっておるかもしれんし、なっていないのかもしれん。
 いや、もともとおかしかったことに気づいていなかっただけかもしれんのう。
 ふむ。わしもそろそろかの……」
 オーキド博士はそう言うと座布団に座り直した。
 え? そろそろ?
「博士。どういう意味ですか?」
 オーキド博士は俺の問いを無視し言葉を発した。
「ふむ。どれどれ、ポケモン図鑑を見てあげよう。捕まえたポケモンは……」
 違う。こんなことが聞きたいんじゃない。
ついにオーキド博士までもが俺と話せなくなった。もともと、俺と会話をしていた人はこの世界に居たのだろうか。ナナカマド博士も。ジュンイチも。シロナさんも……。たまにはバトルタワーじゃなくて四天王にでも行ってみようか。言っても意味の無いことのような気がするが……。

 もう四天王は俺の敵ではなかった。初挑戦のときに苦戦していたことが懐かしい。
1人目、2人目、3人目、4人目、そして、シロナさん。
俺はもう一度質問しようとしたがやめた。返ってくる答えは同じに決まっている。
久々に殿堂入りの部屋に来た。相変わらず床はぴかぴかで俺やシロナさんの姿が映っている。
「さあ、ボールをマシンの上に置いて……」
 この感覚も久々だなあ……。だんだんと意識が遠くなっていく…………。

 目が覚めるとやはりそこは自分の部屋だった。冒険を始めたころと何も変わっていない。
ふと机の上に放置してあったDSliteに目が留まった。さて、何のソフトで遊んでいたか。
刺さっていたソフトは「ポケットモンスター ダイヤモンド」……? は?
ポケットモンスター? ポケモンをゲームにしてどうするんだ?
とりあえずスタートさせてみよう。なんだ、プレイ時間△△△:△△か、結構やりこんであるな。
ゲームの画面に主人公の部屋が表示される。あれ? どこかで見覚えがある……。
そうか、ここは俺の部屋だ。俺の部屋? なぜゲームに俺の部屋が? 主人公は机の前に立っており、DSliteに話しかける状態になっている。
俺が試しに右を押せば主人公は右に移動し、俺の体も自然と右に移動する。
俺が試しに左を押せば主人公は左に移動し、俺の体も自然と左に移動する。
なっ……? 俺が話しかけていたのは……? ポケモンマスターと言うのは? 育てたポケモンは? 時間は?

 俺がやっていたポケモンというのは?

 Do you continue?

 NO!

 GAME OVER

「フアイルのデータがこわれています」


あとがき

約1年前の作品を引っ張り出してきました。最後の一文は初代をプレイしたことがある人にとって懐かしいでしょう。
「ポケモン」とは何なのでしょうか。ポケモンは夢と現実どちらに存在するんでしょうか。
そして、この小説の主人公は夢と現実どちらに居たのでしょうか。

最後に、ポケモンをプレイしているときに、振り返ってはいけませんよ。

お名前:
  • これは複雑かつ怖いなあ。
    ――消しゴムの粕 ? 2010-05-19 (水) 01:02:53
  • 夢であっても現実であっても 楽しい思い出には違いないと思いますよ。
    10年、20年後ふとポケモンのソフトを見つけてやってみて、ポケモンを夢中でプレイしていた頃(今)を思い出して懐かしさに涙をこぼしたりする(笑
    自分なりに解釈したので見当違いな感想かもしれませんね、、、
    長々と失礼しました。
    ―― 2010-05-19 (水) 00:38:55
  • コメントテスト
    ――城壁 2010-05-18 (火) 22:28:17

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Last-modified: 2010-05-18 (火) 00:00:00
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