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ロエのもりで

/ロエのもりで

※このページは触手・雄産卵・その他諸々の比較的読み手を選ぶ描写を含みます。



ロエのもり。
 
この森でも無ければその森でも無い、あの森でも無ければどの森でも無い、何処にあるのか、誰が名付けたのか、或いは実在するかも定かでは無い御伽噺。
海と大地の間に存在するとも、ミュウが戯れに造り上げた遊び場とも、或いは伝説に謳われるポケモン達の憩いの場であるとも言われ、
人の手の届かぬ理想郷とも、選ばれし人間だけが垣間見る事が出来る楽園とも、単なる妄想と断じる否定的な者も居る。
どちらにせよもしその森が実在するとして、物語に語られるようにあらゆるポケモン達が楽しく暮らせるような生態系が存在する筈が無い。
おそらくそのような楽園じみた場所は存在したのであろうが、そんなものはとうの昔にこの世界から姿を消してしまったのだろう。
 
                                 ―――――――――――――ある冒険家の手記一冊目より
 
とうとう見つけた。実在したのだ。過去の私の見識の無さを悔いる。
此処は本当の意味で楽園だ。ポケモン同士の争いが存在しない。理想郷と言ってもいいかもしれない。
しかし彼等はどうやって闘争本能を抑えているのだろうか。食料は豊富な木の実が本性を歪ませるに足るとしても。
 
                                 ―――――――――――――ある冒険家の手記二冊目より
 
ああ、世界は私が思っていたよりもずっとずっと広かった。
 
                                 ―――――――――――――ある冒険家の手記三冊目より
 
 
 
巨木と若木が混在する森。日光を遮る梢の下に太陽の光を酷く必要とする食虫植物がちらほらと風に靡き、
出鱈目に夏の花が咲き乱れ、秋の実りと春の息吹が混在する大地。そんな場所に存在する一本の朽ちかけた、とはいってもまだまだ倒れぬ巨木。
歳月が巡る内にその身に幾多の若木を宿し、絡み食い破り織りなした焦茶色の天蓋に苔むした洞はポケモンの塒の為にあるかのような完璧さ。
地面に程近い空洞の中に疲れた体を休めているポケモンが居たとしても何らおかしくは無いし、実際に其処には二匹のポケモンが存在した。

太陽の光が大地に夜明けを伝える頃、鼻を揺らす朝の匂いにぼっさりと冬毛に膨れ上がった身体を伸ばして、レントラーは眼を覚ます。
誰も見ていない事を確認して後脚を折り曲げて器用に頬を掻くその姿は、そういう趣味がある人間に見せればもう一撃でKOされるような肉体美。
黒と青の二色に色分けされた毛皮の下にはその身体を動かす為の筋肉が確固として存在し、それでいてカイリキーの様な過剰な印象を与えない。
つまらなそうに揺れる尾の先の星型は黄色、くあぁと欠伸に開かれた口には牙が生え揃って一見すれば恐ろしい事この上ない。
が、眼光ポケモンとの名前の元となったその赤地に黄金の瞳をよく眺めれば、其処に宿る優しさに気が付く者もいるだろう。
全てを見通すというその視線の先、レントラーの腹の下に丸まっていた橙色の毛玉はブースター。
長い耳にくりくりした黒眼、柔らかそうな表皮にふんわりと気持ち良さそうな毛を纏い、小さな口からは涎を一筋垂らして眠っている。
格好良いというよりも愛くるしさを見る者にアピールするのはまだ成獣というよりは仔に近いような年齢だからだろうか。
爪を収めた前脚の先でレントラーがちょいちょいと頬を擽ってやるとくすぐったいのかもぞもぞと動き、ブースターはうっすらと眼を開く。
 
「んー……。寝顔も食べたいくらい可愛いんだがなぁ」
「いい加減そういうナチュラルに危ない事言うのは止めてよ」
 
片方は牙を剥きだして笑い、片方は不機嫌そうにぼやきつつも、二匹の間には親愛の情が流れている事は誰の目にも明らかで。
全身を擦りつけるような動き、流れる様に毛繕いに移行した彼等は互いの体格差など物ともしない。
じゃれ合いは日常茶飯事の様で、ともすればレントラーに食べられてしまいそうな際どい体勢でも身を任せている事からも、
ブースターの彼に対する信頼が窺える。同時に彼もまた野生にあるまじき程にだらけきった表情で相手の毛並みを弄っている。
爪先だけでなく、たっぷりと唾液を絡めて牙で背中を梳く度にブースターに籠った熱がほわほわと外に逃げて行き、毛の束はしんなりとまとまって。
くまなく全身を梳かした後は尾の手入れ、濡れて毛並みのへたりこんだ尻尾を優しく解して整える。

「ほら、終わったぞ」
「えへへ」
「何だよ」
「お腹空いたなぁって思っただけ」
「……ったく。適当に取ってきてやるから卵ちゃんと温めておけよ」
「うんっ!」

えへへーと甘ったるい声を洩らしながら奥の苔を重ねて敷き詰めた場所に大切そうに置かれた卵を大事そうに抱えるブースター。
溜息を一つ吐いたレントラーは塒を後に、巨木の根を足場に外に飛び出る。
苔むし傾いた根はともすれば脚を滑らせそうな感覚を齎すが、四肢を器用に操る彼にはその心配は必要無い。
殆ど音を出さずに地面を駆けるその蒼黒の獣の姿は一幅の絵画のようでもあり、時折ぱしぱしと体表から紫電が漏れ出しているところから考えるに、
散歩や気晴らしを兼ねた運動なのだろう。野生の生活において、暇を潰す物などそうそうありはしないのだから。
重低音の鼻歌を歌いながらレントラーは走る。星飾りの尾を地面に水平に、ときたま目の前に立ち塞がる蔦の壁を避けながら。
誰が見ても幸福そうな、人間で言えば新婚ほやほやのお父さんと言ったところだろうか。
御伽噺なら"いつまでもふたりはしあわせにくらしました"の後の風景、それで無くとも此処まで育った見事なレントラーを襲うようなポケモンなど、
少なくとも普通の森には殆ど存在しない筈で。それどころかこんな幸せそうな命の喜びに溢れたポケモンに襲い掛かるなど、
どれだけ悪に染まった人間でも躊躇しそうな程で。その幸せに綻びなど見つかるはずも無く。


――――だけどそれでは物語が進まない。


不幸は幸福との対比でしか測れないように。
冷たさは熱の欠如でしか無いように。
あるいは残酷な世界の悪戯か、マーフィーの法則の差し金か。
ロエの森は如何なる生物でも許容する。それがどのような精妙な調和(システム)の上に成り立っているかは定かではないが、
其処に例外は無い。例外は無いのだ。通常ではありえない生物でもこの場所では存在が許されている。
例えば、触手。それは単に森に住まうポケモンからは触手と呼ばれている。それ以外の言葉では説明できないからだ。
植物なのか動物なのかも明らかにされていない、大きさも長さも色も形すらも様々で、たった一つの特徴を持って他の物と区別される存在。
要するに、エロい。

何処からともなく現れて、雄雌関係無く縛り、搾り、変な色の体液をぶちまけて卵を産みつける。
自尊心と主に下腹部は大変な事になるものの、死ぬ事は殆ど無い為に其処まで危険視されている訳でも無い。
それどころか触手がある為にこの森に住んでいるポケモン達は緩やかな団結の元にあると言ってもいい。
全員に共通の敵が存在すれば自然と皆の心が纏るのは人間もポケモンも同じであるのだから。
あるいはこれこそがこの森の造り主が彼等に与えた贈り物なのかもしれない。絡み取られるレントラーにとってはたまったものでは無いかもしれないが。

「うおっ!?」

丁度良く実がなった果樹の下、跳び上がって牙で茎を噛み千切り、口に数個の木の実を銜えて着地する瞬間。
ばしゅる、しゅばると影から信じがたい速度で飛び出した深緑の鞭がレントラーの後脚に絡みつく。
そのまま引き摺られる様に木の根元に引かれ、ぺたぺたと彼の全身に巻きつくのは肉色と緑の二色のコントラスト。
口元から零れる実を丁寧に揃えて傍に置く肉色の蔦はなかなか紳士な態度だが、はたしてもがくレントラーにそれに気が付く余裕があるかどうか。
如何なる仕組みか先走りの如く分泌されたぬめる体液はレントラーの脱出を助けるどころかさらに強固に彼を固定する。
既にしてべとべとに汚れた獅子の姿は淫らと言うよりも度の過ぎた水遊びの後のような、きっと本人は大層気持ち悪いに違いないが。
そんな中、輝きを失わないレントラーのぎらぎらとした瞳の前で一本の触手がゆらゆらと揺れる。
甘酸っぱい香り、雨の後の草叢の香り、煙と精液と脳漿の香り。ポケモンの体の自由を奪う香り。
目の前はすなわち鼻の前。思いきりそれを吸いこんでから彼はその意味に気が付くが、既に時遅く。
全身の腱という腱。筋肉という筋肉からすうっと力が抜けていくのを理解して、塒に残して来たブースターが心配しなければいいがと他人事のように。
死ぬ事は殆ど無いと言ってもいい。だから命の心配は無い、ただこんな大切な時期に触手(こいつら)に捕まった自分を彼は許せなかった。

「くそっ……離せっ……ぐむッ」

喉を塞がれたような潰れた声。
実際に喉を塞がれ、最小限の隙間だけを残して彼の口膣と食道は触手によって塞がれている為に声を出す事も出来ない。
噛み切ろうにも限界近くまで広げられた顎は痺れ、それでなくとも香りとゴムの様な耐久力によって触手を切断する事は難しい。
要するに既に彼には逃げ出すという選択は残されていないのだ。一昼夜か三日か一週間か、触手が満足するまで相手をするしかない。
舌で押し出そうにもあまりにも太く長く、喉を小突かれるたびにその気持ち悪さに悲鳴を上げようとして、しかしそれすら叶わない。
じんわりと染みだす触手の体液は酸味混じりの苦いもの、と言っても精液の様に生臭いものでは無く、あくまでも植物の汁に近い味で。
鋭敏なポケモンの味覚がその中に幽かな甘みを見つけ出してしまい、息苦しさも手伝って飲み下してしまってから彼は後悔する。
ありがちな効果。触手の一部にはポケモンをその気にさせる液体を分泌する種類がある事を思い出したからだ。
例えば全身がどうしようもなく痒くなるような。例えば身体の芯がとめどなく熱くなるような。

それどころか、全身が急速に冷えて行くのを感じて、彼は酷く驚愕した。
寒い。あまりにも寒いのだ。この世に生を受けてこの方感じた事の無い程の寒さ。
背骨が凍てつくような。がたがたと無様に震えだしたくなるような。誰かに暖めて欲しくなるような。
悔しさと微かな欲情に、その二つ名の元となった眼光が曇る。しかし力の抜けた今の彼には抵抗する事など出来ない。
ぴくんとはぜた蔦にありったけの嫌悪感を抱いたとしても、それで何か現実が変わる訳でも無い。
むしろさらさらとした飲みやすいそれは逆に厭らしい。粘っこくない為に喉に溜まる事もなく胃に雪崩れ込んで腹を膨らまし、
じわじわと吸収されて自分の血肉になっていく事を無理矢理に認識させられているような、そんな恐怖と嫌悪感。

――びゅるっ

出し渋りを大きく一回放って口膣から抜かれた数本の触手は、レントラーの唾液とうっすらと混ざる血、自身の吐きだした体液に塗れて鈍く輝き。
許容量を超えて胃の中に出されたそれに噎せ返りながら彼がぼたぼたと体液を吐きだすと、触手達は満足したのか蠢いて攻め方を変更する。
ざらざらした猫科の舌に染みついた味を不快に思いながらも、まだまだ彼は堕ちはしない。
だから触手はうねりながら毛皮を掻き分けて地肌をなぞり、玉袋を弾いて彼の身体を楽しむ。
不覚ながらも股間で猛るモノにぬるりと巻きつかれ、精を搾るように動かされた時は彼も流石に悲鳴を上げた。
ねとねとした粘液と共にきつく締めつけられれば、雄ならば誰だってもっと快感が欲しくなるもので。
ましてや飲まされた体液の効果で人肌が恋しくなっているのならばなおさらの事、たとえ触手の温度が自らの体温よりも低くとも。
荒い息を吐きながら何とか自ら快感を得ようとヘコヘコと自由にならない腰を動かして、其処を巻きついた触手に擦りつけている姿は見苦しい。
見苦しいが、その必死な表情、いくばくかの苦痛と嫌悪と快感と、どうしようもない様々な感情がないまぜになった表情は例えようも無く淫靡で。
そうして必死で"前"にばかり意識を集中しているものだから、しゅるしゅると"後ろ"を狙う細い蔦に気づくのが遅れてしまう。

「ぅがアッ!?」

頭の芯まで突き抜けるような快感、などでは無い。
違和感と不快感。一気に火照った身体が熱を失う。
黒い毛皮に隠された、もちろん今まで誰にも弄られた事など無いような排泄孔。
無理矢理押し広げて入るという表現が適切な程に太くは無く、しかし違和感を齎さない程に細くは無い、それでいて自由に動く触手。
そんなものが彼の尾に沿って根元まで、そうして身体の内側にまで潜り込んでいた。
ゆっくりとぐるぐるかき混ぜるような動き。けして激しいとは言えない、じわじわと慣らすような回転と伸縮。
表面の凹凸が内側から外に出る度に腰が震える衝撃が背骨を奔って彼の脳髄を揺らす。
快感、なのかもしれない。それでもそれを快感と認識するにはまだ痛みと不快感の方が大きすぎた。
触手から解き放たれた口を食いしばってその表現しがたい衝撃に耐えている内に、少しずつ変化が現れる。
彼は未だ不快感と痛みを感じてはいるものの、それよりも掻き回し抉る動きによる衝撃の感覚の方が強くなってきたのだ。
気がつけば自身の雄根には触手が全く触れていないというのに、それでも抜き差しされる度にとろりと際限無く溢れる先走り。
彼にしても初めての体験だったために何が何だか分からないまま、ただただ腰の辺りに生じる僅かな熱さの赴くままに尻尾を振る。
脳裏に妻たるブースターの肢体がよぎり、劣情に囚われた彼はこのような状況に置いて愛する相手をオカズとする事に躊躇いを持たず。
罪悪感を四肢を微かに震わせながらも、自らが絶頂に達するためにレントラーの脳内では妻との情事が再生され、
しかし其処までしてもどうしてもあと一歩、むっちりと腫れあがった玉袋の内側の物を吐きだすにはまだ刺激が足りない。

「糞野郎ッ…が。足りねぇだろ……っぐ」

鞘に収まっていた赤身は完全に露出してゆらゆらと揺れているものの、足りない。まだ足りない。刺激が、反応が、快感が足りない。
いつの間にか肛門から内側をまさぐる触手の動きが激しいものになっている事に彼は気がつかない。気がつけない。
自身から求める様に、それこそ雌の様に腰を振る姿は、普段のレントラーからは考えられないような痴態で。
どれだけの時間が過ぎただろうか。ぬるま湯の様な快感と触手の舞に包まれて、絶頂も気絶も開放も赦されず。
いまや彼の内側にめり込んだ触手は肉色の太い特別な物。いわゆる産卵管に近い役目を果たすものだと言う事は、その根元の膨らみからも明らかで。
内側に詰まった丸い物体がゆっくりと触手の内側を通って彼の尾の根元に近づいて行く。

――ぐぶっ

緩みきった肛門は、その膨らみを受け入れる。
同時に跳ね上がるように彼自身の雄根からもぴしゃりと透明な液体が飛んだ。

――ぐぶっ

またひとつ。
直腸のさらに奥へ。粘液で腸内に――雌ならば胎内であり、確実に発芽するのだが――固定されていく触手の卵。

――ぐぶっ

そうしてもうひとつ。
レントラーの腹は最初よりも若干膨れた程度で、注意して観察しなければ違いなど分からないだろう。
が、これで触手は目的をほぼ達成したと言ってもいい。あとは種を蒔くだけなのだから。
今までずっと放置していたレントラーの股間に聳え立つ肉槍に、先が四つに分かれた触手がぴったりと吸いつく。
扱く様な、舐め取られるような、搾るような、ありとあらゆる動きが一気に彼を襲う。
限界ぎりぎりでずっとお預けを喰らっていた後のいきなりの激しい動きに耐えられるはずも無く。

「―――ッ、あ゙、ぁっ……!! 」

押し殺すような声を上げ、身体を戦慄かせて一気に絶頂に。
尾骨の先から頭蓋の頂点まで奔る無色の快楽の衝撃は今までのどんな行為よりも強く。
弾けるような脈動を伴い、時間をかけて練り上げられた熱い精液をこれ以上ない位にたっぷりと触手の内側に放つ。
熱く張ってずっしりと重いそれから次々に作り出されて送られる精子は膨らんだ亀頭と広がった尿道を通って触手にぶちまけられて、
そうしてそれは漏れる事無くその肉の蔦の内側に消える。最高の快楽の中、がくがくと崩れ落ちそうになる彼の腰をしっかりと触手が支え、
最後の一滴までも搾ろうと。半開きの口からだらしなく垂れ下がる舌と焦点の合わない眼は何処からどう見ても精神の箍が緩んだ証。
ぴくん、ぴくんと小刻みな震えに合わせるのは、自身の遺伝子を確実に残そうという原始的な欲求の表れだろうか。
暫しの後、レントラーの子種を飲み込んだ触手がずるりと其処から外れると、レントラーを凌辱し終えた触手はしゅるしゅると彼を解放――――しなかった。
まだ一つだけ、触手にはやる事が残っている。そう、種を蒔くという仕事が。

「――――やぁっ、あ……」

つい先程彼が造って吐きだした白濁をすべて飲み込んだ触手が動き、くち、と音を立てて彼の肛門に照準を合わせる。
卵を産みつけた時に拡張されたその穴は、容易に自身の精液を溜めて膨れ上がった触手を飲み込む。
べちゃべちゃと内側に熱が灯る感覚。自分の体温、どろりと腸内に吐き出されたのが自身の精液だと認識した瞬間に、
どうしようもない恥辱と快感によって彼は再び果てた。濃厚な子種の集合が腸内にへばりつく卵を浸し襲いかかる。
雌ならば自家受精。雄ならば精液を採取しての交配。そうやって触手は種類を増やして繁栄してきたのだから。
どさりと今度こそ全ての力を使い果たして崩れ落ちるレントラー。後は時間が立てばレントラーの特質を受け継いだ触手が生まれる事だろう。
もっとも生まれた時に親であるレントラーに殺されなければの話ではあるが。
触手が揺れて彼の拘束を解く。ずるずると樹の蔭を伝って何処かに消えていこうとする肉色と深緑の触手の群れ。
後に残されるのはぐしょぐしょに濡れて、尻からは自らの精液を垂れ流す口を半開きにしたレントラー。


――――だけどそれでは物語が終わってしまう。


たんっ、と軽い生物が地面を蹴る音。瞬時に軌跡に火が舞って、残像は橙色に。
茜色を超えて白に輝く業火。眩き光は熱を伴って、収束された大文字は地面ごと触手の群れを薙ぎ払う。
口元から光を放ち続けるブースターは触手を完全に滅した事を確認すると、悲しそうにレントラーを見つめ、力を失った彼の身体を器用に背中に乗せ、
一歩一歩彼の重さを感じながらしっかりとした足取りで塒へと向かっていった。



夏の星座と春の星座が同居し、あまりにも強い月明かりが星の瞬きを掻き消す事でようやく空の調和が保たれている。
夜天を旅する風はこの森より外に出る事無く、外側(かなた)の風はこの森を決して訪れない。境を越えれるのは意思ある者だけなのだから。
境界に程近い辺域、つまりは触手が最も跋扈する土地、()()()()()()()()()()()かの様にポケモンの居住に適した巨木群。
そのうちの一つから奇怪な鳴き声が漏れている事に耳が良い者なら気がつくだろう。
枯葉と苔を敷き詰め、最大限柔らかくした地面の上で――とはいっても乾いた堅牢な巨木が基礎となっている為に清潔ではある――ぽろぽろと涙を零す獣が一匹。
玄と蒼の躯はぼさぼさに乱れとても栄養状態が良さそうには見えない。もし一週間前の彼の姿を知っている者が見れば、非常に驚く筈だ。
といっても、この森に生きるポケモンの間ではある意味酷く馴染みの症状でもあるのだが。

「ぶ……すたぁ……ぅ」
「大丈夫、わたし達の卵は一番奥に隠したから、暴れてもいいよ」
「いっ……ひぐっ…」

ぴくぴく四肢を痙攣させつつも何かを耐えるレントラーを優しく看病する炎色の毛並みの可愛らしい毛玉。
唯一王だ役立たずだと言っている輩に見せてやりたい献身的な態度でレントラーの身の回りの世話をこの一週間彼女は一人で行ってきた。
無理に卵を引き剥がそうとすればレントラーの内臓に修復不可能な損傷を与えることにもなりかねない為に、自然に孵るのをじっと待つ。
食料を持ちかえり、彼の荒れていく毛並みをそれでも精一杯梳かして、日に日に気弱になっていく彼の心を元に戻す為に彼女ひたすら話し掛け続けた。
ブースターにとっても辛い一週間だったとはいえ、彼女は泣き言など言わないし、言えない。
彼の方が辛い事を身を持って知っているから。何か身体の奥の方で自分を造り変えようとしてくるおぞましい動きを経験した事があるから。
加えてレントラーは雄で、おまけに触手に孕まされたのは一回目で。この齢になるまで逃げ続けてきたというのはそれだけ強い牡の証ではあるが、
逆に言えばその積み上げてきた自尊心も何もかもを今彼は奪われて泣いているのだ。

精神面からの干渉が激しいという事は、親株あたりが運よくエスパータイプを孕ませることに成功したのだろう。
上から数えて二番目の危険度を誇る種とはいえ、触手に対して最強を誇る炎タイプの彼女が細心の注意を払って戦えば、生まれたての触手など物の数では無い。
身体を快楽と苦痛で断続的に操ろうとする胎に仕込まれた触手の卵にレントラーは必死で抵抗して。
そうして七日七晩を耐え抜いて、ついに彼の中に居られなくなった触手達が発芽の時を迎える。

「ぅぁがっ……いやっ…ぁがッ!」

ぼぶりと汚らしい音を立てて彼の肛門から姿を見せるのは肉色の卵。
柔らかい薄皮で包まれた中には何かがぐるぐると渦巻いて、膜を破って突き出た細い管にはレントラーの血がじっとりと染みついている。
一つ、二つ、三つ。出産、と言ってもいいのだろうか、ゆっくりと吐き出されたそれがぼたりと地面に落ちるのと同時に彼の雄はたらたらと透明な体液を零す。
それが快感からのものなのか、はたまたただの生理的な反応なのかは分からない。疲労で最早身体も動かせないのか彼は腰と背筋を痙攣させるだけだ。
地に折り重なった卵は脈動しつつ急速に蠢き、水音を立てて柔らかな卵の中から新しい触手がこの森に生を受け――――
――――精密に絞られたブースターの火炎放射で一瞬にしてその身体を焼き尽くされ、黒い炭の塊となって動きを止めた。

「レントラー、もうだいじょぶだから、ね?」
「……心配…かけて……わるかった……な」

崩れるような姿勢で横になっているレントラーに、これ以上ないような慈愛に満ちた表情で語りかけるブースター。
そのまま彼女は触手の残骸と共に焦げた床を牙と爪で削って樹の外に放り投げる。真新しい傷痕だけが触手が残した痕跡だった。
荒い息ではあるものの、それでも峠を越した彼は、いつものように彼女を抱き寄せてやる。
脇腹に寄せる様に抱いて星型の飾りのついた尻尾をゆらゆら揺らせば、どんな時でも彼女はその可愛らしい瞳を輝かせてじゃれついたものだ。
だから尾の付け根は今も開きっぱなし、自身の腸液でぐっしょりと濡れ、未だ萎えぬ雄根からもぽたぽた何かが垂れていたからといって、
決して彼は疾しい気持ちで炎の毛並みに顔を埋めた訳では無い。それ以前にそんな体力は残されていない。
けれども彼の愛する彼女は、彼を愛する彼女は、蒼と黒の獣に抱かれた橙色の毛玉はそうは思わなかった。
なんだかんだ言って此処一週間はそれどころじゃ無かったし。おまけにずっとつきっきりでレントラーの世話に奔走してたし。
解りやすく言うと私もう昂っちゃってとまんなーい状態なのである。どうにか彼の容体も安定した、というのも引き金だったのかもしれない。

「―――――――――ねぇ、いいよね♪」
「……おいっ……馬鹿、俺は」
「えへへー、たまにはわたしの自由にさせてくれたっていいでしょ?」
「だからって……なにもこんな時に…!?」

殆ど抵抗の無いレントラーを仰向けに。
雌の秘所の如く開きっぱなしになった彼の其処を見て、なんとなくえっちぃなーなどと場違いな感情を抱きながら。
"とりあえず此処も治療しなくちゃ"だったり、"もう三日くらいは安静にして置かないとなぁ"と瑣末事も脳内を過るが、
またとない機会なので彼女は手っ取り早く自分の好きにさせて貰う事にした。
毛並みに殆どへばりつく様な角度で聳える赤い抜き身。自身の熱い吐息を吹きかければそれに合わせてぴくりと動く。
快感を与えてはくれても一度だってレントラーはブースターに事の主導権を握らせた事が無かったから、その意趣返しなのだろう。
最大で1000℃にも達するという体温、吐息も舌もその温度は正しく灼熱と表現できる。もちろん彼に耐えられるような温度に抑えてはいるが。
柔らかな熱さ――の中に時たま牙を滑らせてやる。粘土の様な熱い締め付けと吸引の合間に挟まれる硬質の接触。
急所である其処にそんな物を感じるのは雄にとって驚きであり、同時に僅かながらも恐怖を与える行為で。
絶対に突き立てる事など無く、ましてや噛む事などあり得なくても、自分にとって一番大切な場所に牙がふれる感触はどんな雄にでも緊張を与える。
快感だけ、を感じる最中に突如割りこんでくる強烈な刺激。それは軽い痛みが引いた後にもレントラーの心に興奮を残す。

「わかったって……っと」
「いいから今はわたしに任せて、ね?」

本当は自分も舐めたりして欲しいんだけどなぁと思いつつも、それでも奉仕に近い形になってしまうのは彼が本調子では無いからには仕方がない事。
消耗した身体で起き上がろうとする彼を抑えるその身体は、例えどれだけ疲労していたとしても簡単に撥ね退けられるだろう重さと大きさ。
だけど軽く当てられた前脚に、全てを見通す金色の瞳を写し返す夜色の瞳に、彼女の声に彼は縛られる。
たまにはいいかと考えてしまう時点で何処か触手に弄られたのかもな、と思っても、根底にあるのは愛である事に変わりは無く。
互いに信頼し、互いに理解を求めて足掻き、ただ一緒に居るだけで――もちろん身体を重ねはするが――満たされる関係。
この森においては殆ど見られないけれど、ロエ(システム)の外においてはほぼ理想的と言われるような、そういう関係。

「ごぶざただったし……さ」

反り返り気味の雄槍にたっぷりと唾液をまぶし撫で回せば、自身の内に突きこまれる事を想像するだけで熱をもった其処が収縮し、
沸き上がる蜜が毛皮をじっとりと濡らして彼女の内股を汚していく。互いに貪るような交わりが大好きだとはいえ、流石に今の彼にそれを要求するのは酷という物。
ならばその種を口で受けるのはもったいない事この上ない。そう判断を下した彼女は小さな身体で覆いかぶさるように動いて。
受け入れるべきモノを、受け入れるべき場所に。びくんとレントラーの突然の痙攣じみた突き上げで、しっかりと根元で支えられていなかった努張は狙いを外す。
滑りの良い粘液を含んだ毛の、燃えるように熱いその纏められた毛羽立ちの心地よさ。人の言葉を借りれば素股が一番近いのだろうか。
最早彼も言葉を発する事無く、ただ唯一自由になる尾でもって優しく彼女の背を撫でるだけ。
限界までレントラーに首を曲げて貰わないと入れたりそれに近い状態では――互いに向かい合う体勢であっても――口を重ねられないのは非常に残念で、
ブースターにとっては何時までも成長しない自身の身体に対する不満の一つの原因であったりもするのだが。
ずるずると雄を迎え入れる入り口を擦るそれによる痛痒感は、太く長い物をがつがつと抉り込まれるのとはまた別の快感で。
彼はあまりそれが好きでは無いようで、いつもいつも早めに切り上げて本番を始めてしまうから、今回は楽しませて貰おうと。

「……っは、お前も好きだな」
「たまにはいいでしょ、えへへ」
「うぉっ!?馬鹿っ、そっちは―――――」

ブースターの尻尾。
自身の胴体部と同じ程の長さと太さを誇るそれは、長く細やかな毛と体温による毛皮に含まれる空気の膨張効果による部分が大きい。
肉と骨に関してだけ言えば、比率的にはエーフィーよりも若干長く太い程度と言ったところだろうか。
要するに、十分に汗と体液で濡れた状態で自分の意思で乾かさずにおけば、ボリュームが非常に減少する。
そうしてえてして四足獣の尾は自在に動かせるものであり。彼が悲鳴に似た嬌声を上げたのは肉棒の下にぶら下がる重い袋に絡む物があったからだ。
薄く撫でる様にやわやわと尾で揉みつつも時折先端は酷く広がった肛門の周辺部を軽く叩くように刺激し、雄槍は相変わらず股に挟まれるように擦られる。
毛皮に包まれた二つの塊を愛撫するブースターの尾はそれこそ触手のようであり、彼自身の凌辱の記憶を否が応にも呼び起こす。
それが気持ち良いのがレントラーにとってはたまらない屈辱でもあり、同時に相手がブースターならば受け入れられる快感でもあって。

「つかれた?」
「……。いや……ちゃんとお前の中に出したい」
「うれしいなぁ、えへへ」
「変な声だすなよ……ったく」
「たくさんたくさん、吐き出してね」

彼女も素股に満足したのか一旦腰を浮かせてそうっと狙いを定める。待ち切れないかのように涎を垂らすレントラーの槍、だけどそれは彼女も同じ事。
つい先程までの淫戯でもって十分すぎる程に蕩けた雌穴。雄を喰らうという修飾語が妥当なものに思える、そんな肉色の顎を彼女は開き。
湿った灼熱感を彼に与えつつ、ぐぷっと水音を立てて根元までを一気に呑み込んだ。
ゆっくりと持ち上げて、重力に任せて落とす。答える様にレントラーは突き上げる、その繰り返し。
絡みついては押し分けて、引っ掛かれば擦り上げる。体位は違っても、時たまレントラーの肛門と睾丸をさする尾があっても、やっている事は最も基本的な事。
雄と雌の最も基本的な形。それはどれだけ理性を持って、どれだけ言葉で飾っても変わらない基本。
次の世代を生み出す為に遠い遠い先祖が"ひとり"ではなく"ふたり"を選んだ時から続く命の系譜。
そんな事に関係無く気持ち良い物は気持ちいいし、実際そんな事を考えて交尾しているポケモンなどロエの森には殆ど存在しないのだが、それでも。
それでも下半身を汚液塗れにして互いの身体を貪り合う二匹の姿は、見る者がいれば確実に心を動かすような、いっそ感動的な物で。

「わかっ…てるッ!」

野卑た声をあげてレントラーが腰を押しこむと同時、反り返ったそれがぐっと一回り大きく。
嬌声をあげた彼女が痛いほどにそれを絞めつけて、一滴も逃さないように準備を。
痙攣する胎内に広がった尿道から大量の白濁が溢れはじめ、互いの尾骨の先端から鼻先までを快感が奔る。
どう見ても倍近い体格の蒼黒の獣にきつく抱きついた焔色の雌、繋がった部分からは濃いゲル状のなにかが飛び散って。
緩やかに落ちついて行く射精、それでもひくつく先端を自身の腹の中に感じながら、身体の下にいる雄の逞しさを全身で受け止めて。
とても幸せそうな顔を見せる彼女に彼も幸せな気持ちになる。

「あふぁ……明後日あたりには卵も孵ると思うから、明日も頑張ろうね?」
「お前なぁ……」

明日の朝ガビガビだろうなぁと冷めた目で考えるレントラーと繋がったまま、彼女は器用に丸まって眠り始める。
子育て中に孕んだらどうすんだよ等の独り言を呟く彼を残して。
だけどそういう所も惚れた一因だったりするので、レントラーは何も言う事が出来ず。
そもそも考えるのは彼の得意とするところでは無い。ごちゃごちゃした事は嫌いなのだ。
なるようになるだろう、と一つ大きな欠伸を放ち、彼もブースターを抱きとめる様に丸くなって眠りについた。

枯葉も苔も敷かずに住居内で行為に及んだために、後日塒から臭いが取れずに奔走する事となるのだが、それは別の話。



あとがき らしきもの

これを書くきっかけを下さった御方に捧げます。
本当はもう少しグロっちくて救いの無い話になるはずだったのですが。
読んで下さった人の内、一人でもこの作品に欲情して下さる事を願って。

批判批評感想は作者ページにお願いいたします。

















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焼失して解読できない手記の欠片へ

おそらくそれは優しさではないのです。
慈しみと愛だけでは癒せない傷もあるのですから。
つらつらとログを見直していたらこんな風になりました。おかしいですね。
もちろんこの作品は実在する団体人物とは一切関係が御座いません。


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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