SOSIA.チラ裏的作品その五
○
ヴァンジェスティ家使用人。ちょっと変わった姿をしている。
○
ヴァンジェスティ家使用人。
○ラクート:トゲチック
ヴァンジェスティ家使用人。
○キール:クチート
北凰騎士団十三番隊長。なぜか巻き込まれた。
カフェレストラン『ウェルトジェレンク』の片隅――妙な組み合わせの四匹がひそひそとティータイムを過ごしている。
「困りましたねぇ。僕たちどうなるんでしょう?」
「このお話が始まってから二回目ですしねー。後付けでなんとかなりますよきっと」
「姉さんはどうしてそんなに脳天気でいられるのですか……」
彼女たちのいる席は、人目につかない――いや、誰の目にも見えない
会話の内容からは、なにやら不穏な空気が流れていることが伺える。
「まったくです。確かに第四世代からスタートしたこの世界は一度同じ試練を乗り切ってはいますが、今回は前回とはわけが違います」
銀縁の眼鏡をかけたクチートのキールが、サーナイトに不満げな視線を向ける。
「良いですか孔雀さん、皆さん。前回は新しいポケモンや新しい技が増えただけに過ぎません。ところが今回は、既存のポケモンに対する変更が加えられたのです。第一世代から第二世代へのあの大きな変化を思い起こさせるほどの重大事件ですよこれは」
「あの頃は大変でしたねー。かつての四コマ漫画などには男の子のラッキーがいたものですが、存在を抹消されてしまう結果に……」
「そうです。それと同じことが起こりかねない大事件だと言っているのです。特に孔雀さん、貴女は私と同じ双方の仕様変更の被害者なのですよ。あまりに自覚に欠けていると言わざるを得ません」
「被害者だなんて。わたしたちは二つも恩恵を受けられるではありませんか。キールさんもこれからは同じフェアリータイプどうし、仲良く……」
「ちょっと、どさくさに紛れて抱きつこうとしないでください!」
抱擁ポケモンである孔雀の抱擁を、キールはすんでのところですり抜けた。
「あらら、ごめんなさい。あまりに可愛いのでつい」
「なっ……わ、私はそのような、可愛いなどと貴女に言われるような覚えはありませんっ」
「姉さん。これでもキールさんは年上の方なのですから、そのように虐めては失礼ですよ」
「これでもとはなんですこれでもとは。貴女こそ少女のような顔をしているくせに、この私をそのような目で……」
キルリアの橄欖はとうに二十歳を超えていながらにして、十五、六歳にしか見えない。胸に下げた変わらずの石で進化を止めているのが一因ではあるのだが。
「あのぉ、話がそれちゃってますけどぉ……」
三匹のやりとりを見ていたトゲチックのクチートが、のんびりした口調で釘を刺す。
「問題は、今までの僕たちの歴史に矛盾が生まれてしまうことですよねぇ?」
「そうですその通り! 全く、この姉妹が変なことを言うものですから話が脇道に……こほん。特に最近の出来事では、先の反乱のお話ですね。橄欖さんとラクートさん、それとシオン君の三匹がランナベールの護神ラティアスのセルアナと一戦を交えたと聞き及んでいますが」
「ありましたねぇ。彼女は本当に強かったですぅ」
「では橄欖さん、スクリーンの準備をお願いします」
「はい」
橄欖が投影機にPCを繋ぎ、スクリーンを降ろしてくる。
「わーお。これはオーバーテクノロジー」
「この際ですから細かいことはお気になさらず。では問題のシーンを振り返ってみましょう」
ラティアスの、おそらく両手から放たれたらしい白い弾が、シオンさまに襲い掛かった。シオンさまは横っ跳びに避けたが、地面に当たった弾が爆散。濃い霧が飛び散る。 二発目は橄欖に飛んできた。命中の直前に咄嗟にサイコキネシスの糸で撃墜したが、視界いっぱいに霧が広がってしまう。 「ひぎゃあ」 三発目。ラクートの間の抜けた悲鳴が聞こえた。被弾してしまったか。 問題は、被弾したことではない。 広がった霧に包み込まれて、敵の姿が完全に見えなくなってしまった。 「橄欖、ラクート! 僕の所に固まって!」 ラクートの悲鳴とほとんど重なるくらいだった。シオンさまが叫んだ。この状況では、敵の位置を把握できるのはシオンさまだけだ。 「そうはいかないよ!」 殺気! 振り向いた時には遅かった。シオンさまの方へ駆けるわたしの背後から青い炎が迫っていた。瞬く間にその熱に包み込まれた。 ――が、橄欖の体が竜の息吹に燃え尽きることはなかった。 「間に合ったぁ」 ラクートが一点集中で展開した光の壁のお陰で、無傷とはいかないもののダメージは最小限に抑えられた。 「ラクート……ありがとう……」 一見好判断のようにも見えるけれど、もし狙いがラクートだったら。そうは考えなかったのだろうか。結果的に助けられたが、かなり身の危険を伴うやり方だ。 「索敵は僕に任せて! 指示通りに動いてよ!」 でも、終わり良ければ全て良し。三匹は背中合わせになった。 「真上から! 散って!」 ドラゴンクローだろうか、押し寄せてきた巨大な圧力が橄欖たちのいた地面を叩いた。岩肌が割れながら大きく陥没し、砂や小石を撒き散らした。
「おやおや。橄欖ちゃんもラクートもご苦労さま。当たっても効かないドラゴン技を必死に……」
「当時はエスパー単タイプだったんです! 護神の竜の息吹なんてまともに受けたらしんでしまいます」
「……とまあ、このように歴史におかしなところがいくつか生まれてしまうというわけです」
「これはいけませんねぇ」
「しかしわたしたちだけではなく……おそらく他の世界でも同じようなことがたくさん起こってしまっているはずです」
橄欖は遠い目で、遥か彼方の宇宙へ思いを馳せる。
いつかどこかでマリルリやエルフーンやプクリンがドラゴンと対峙する姿が目に浮かんだ。
「ええ。過去の歴史は許されるとは思います……ですが、今後ドラゴンタイプや毒タイプと戦うときは考慮されるのでしょうか」
「私たちも鍛錬によって新しい技を身につけているわけですから……その辺りはどこかでこの世界を広げて走り回っているというミミロップがどうにかしてくれるでしょう」
「わたしやキールさんがメガ進化する日も近いかも、ですよ!」
「そうです、メガ進化がありました。この私もメガクチートになれば、私に相応しい剛健で威厳ある姿を……!」
「なおメガクチートさんも非常に可愛らしいようです」
「なぬ」
「ちょ、ちょっと待ってください! メガと名のつくポケモンが可愛らしいなんて、そのようなことが――」
キールの叫びは虚しくも、ひずみの中へと飲み込まれて消えた。
おひさしぶりです、三月兎です(・ω・)
ついにXYが発売しましたね!
わたしは買おうかなぁとは思っているのですけど、実はまだ。。。
それにしても、まさかフェアリータイプが増えるなんてびっくりですヽ(゚Д゚ )ノ
こんなの書いてる暇があったら本編を進めなさいと怒られそうですね(
そちらの方もすこしずつ筆を進めていますので、どうか気長にお待ちくだされば幸いです。
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