ポケモン小説wiki
マグナゲート短編、第4:カクレオン商店の秘密

/マグナゲート短編、第4:カクレオン商店の秘密


まとめページ

作者:リング
 今日は、いつもの日課である掲示板の依頼を受ける日。掲示板の依頼は、必然的にダンジョンへと潜る事になるため、ダンジョン内で自身のタイプによって得手不得手が分かれる、Vウェーブの情報は欠かせない。
 例えば、このVウェーブ。ノーマルタイプの風が吹いていれば、ミルホッグやムーランドなどの調子が上がり、スタミナが長持ちしたり、勉強の効率が上がったりといい事尽くめである。
 私達、アイリスのパーティーで言えばノコッチのタイラーとかがパワーアップする。電気タイプなら、ピカチュウの私とエモンガのヒエン。ビリジオンのリアさんは、格闘と草のどちらでも強化されるお得なタイプ構成である。
「あー……朝はやっぱり起きるのつらいなぁ……。ティーダはどうよ?」
 その予報は、結構正確なのだが前日に予見するのにも限界があるため、日付が変わるごとに念のため確認することが必要だ。その確認は朝早くに行うため、夜更かしの多いエモンガは辛い様子。
「んー……俺はあれよ。アメヒメにぎゅーって抱きしめられると、興奮して気絶するから毎日ぐっすり。ゆえに問題ない」
「私そんなに抱きついていません!」
「そんなに?」
「そんなに?」
「あらあら……」
 エモンガ、ノコッチ、ビリジオンさん……そこに反応しないでよ。特にリアさん、『あらあら』って言ってにやけるのはやめてよ……うぅ、ティーダのせいだぁ。
「そっかぁ、たまに抱きついているのね? いいわぁ、私もそんな初々しい生活をしたいなぁ」
「ビリジオンさん、からかわないで……」
 顔が、頬が熱い。
「ふふ、そうね。ごめんね」
 ビリジオンさん、まったく悪いと思っていないよぉ。
「ティーダァ……恨むよぉ?」
「いいじゃないの、俺達の仲のよさを外にアピールしたって、バチは当たらないぜ」
「お前なんて鉄骨にでも角材にでも当たっちまえ」
「わーお。エモンガが俺に話しかけたせいで、殺伐とした雰囲気に!」
 ティーダがおどけながらエモンガに責任を押し付ける。全部お前が原因だっつーの。
「お、俺のせいにするなよぉ!? 全部ティーダのせいだろうが」
「そうね」
「そ、そうだよね……」
 ビリジオンさんもノコッチも、エモンガの言う事に同意する。ざまぁみろティーダ。

「まぁまぁ、喧嘩しても仕方ないしさ、話題でも変えない?」
「いいぜ、例えば?」
 提案するノコッチに、エモンガが無茶振りする。
「え、え、え……えーと、例えば自分の持っている知識を披露するとか」
「おー、面白そうだな。じゃあまずはお前から」
 そうして、ノコッチが話題のアイデアを出すと、今度も案の定ノコッチに無茶振りだ。
「えーと、えーと……その、あれだ。鉱山とか、洞窟ではね。地上とは違う危険が満載だから、そういう場所で発掘や採集を行う場合は、アブソルとかドクロッグといった、危険予知に優れた勘を発揮するポケモンを連れて行くんだって」
「ほーぅ……なるほど。それじゃあ、次はリーダー」
 エモンガはすっかり会話の流れを支配して、次はティーダにまわされた。私も何を言うか考えておかないと。
「え、お、俺? えーと……そうだな。炎タイプのポケモンを隙間風が一切入らない密室に入れておくと、他のタイプのポケモンよりもずっと早く窒息するんだけれどさ。ヒトモシ系統のポケモンは、命を燃やすからなのかね、窒息するまでの時間が炎タイプの中ではダントツに長いんだ。もちろん、命を燃やす事が出来ない時は、他のポケモンと同じように窒息するけれどさ。
 炎を燃やしていても二酸化た……窒息する空気が発生しないんだとよ。だから、鉱山仕事じゃ重宝するとか。鉱山つながりということで」
「ほー……でもそれって、命を燃やされる奴が死ぬんじゃない?」
 そうそう、エモンガ。私も同じ事を考えたわ。
「あー、そうだよ。だから、ヒトモシ系統の奴らは仕事の役に立たない奴の命を燃料にするんだって。だから、シャンデラを鉱山仕事で使う地域では、戦争が起こっても生きている老人を殺したりせずに、燃料にして使うんだ。恐ろしいもんだぜ」
「それ、知っているわ。実際、そういうことがあって……ほかにも、鉱山で怪我をして作業が出来なくなったら命を燃やされる……とかね。それで恨みを買って、反乱を起こされた場所もあるそうよ。希族なんてやっていると、そういう血なまぐさい事件も耳に入ってくるわ」
 ビリジオンさん、結構物知りだよなぁ。貧乏希族って聞いたけれど、どうして希族をやめちゃったんだろうかなぁ?

「みんな結構色んな事を知っているもんだなぁ……次、ビリジオン」
「あら、私? そうねぇ、たまに、ダンジョン内で商売をしているカクレオンがいるじゃない?」
 あぁ、それなら知っている。珍しい道具を売っていたけれど、結構な値段だったから手が出せなかったのを覚えている。
「あのカクレオンの正体なんだけれどね、アルセウスって言う神なのよ。と、まことしやかに語られているの」
「えー……アルセウスったら、原初の神だよね? この大陸は縦糸(ウォープ)様と横糸(ウェフト)様と縫い糸(スウィング)様が作ったけれど、この『世界を創った神』を創った神だとか」
 ノコッチにそういわれると、私が昔出会ったウォープさんって、物凄い人なんだな……改めて。
「うん、そうよ。面白い噂でしょー?」
「面白いけれど、噂じゃあなぁ……」
 せっかく面白い話なのに、エモンガは相変わらずビリジオンに気を許していないのだろう、難癖をつけている。
「ふふ、噂なのが気になるのかしら? でも、それについては信憑性があるのよー」
「へー、どんなのだ? 聞かせてくれよ」
 ビリジオンの話にティーダが物凄くワクワクして食いついている。こういうの好きなんだね、ティーダ。
「カクレオンが戦っているところを見た事があるのよ。こう……泥棒で指名手配されている奴と同じ種族のポケモンを発見したから尾行していたのよ。丁度草原のダンジョンだったし。
 でさ、結論から言えばそいつは本物だったんだけれどね、指名手配のせいで街にもいけなくなってみすぼらしい姿をしていたのよ。ダンジョンで食料を狩っていたりはしたものの、水浴びしていないから蝿がぷんぷん飛んでてね。
 そんなとき、カクレオン商店には自分の体を洗い流す事が出来る洗濯玉。手持ちの現金は無し! これはもう盗むしかないって状況だったわけ」
「また、それは面白い状況だな……」
「で、そいつは仲間を3人ほど連れていたんだけれどさ。4人で泥棒すればカクレオンくらいどうにでもなると思ったのでしょうね。ついでにありったけの商品を盗んで逃げようとしたのだけれど……」

 ◇

そう、あれは酷いものだったわ

「あー!! 大切な商品がぁぁぁぁぁ! 誰か捕まえてぇぇぇぇぇ!!」 
 大声で叫ぶカクレオンの声を聞いて、私も現行犯逮捕しようとしたの。そしたらね。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
 あまり素早くないけれど硬い種族、そう……デスカーンの声だったわ。あ、もちろん街にいるのとは別個体よ?
「なんなんだこりゃ、シャドークローか? ありえねぇ!! あいつのシャドークローは俺の装甲より何倍も強いってのかよ!!」
 そう、それは見事に深々と切り裂かれたデスカーンの顔。カクレオンのほうはどういうスピードなのか、一瞬でデスカーンの目の前まで回りこんで、わざわざ丈夫な顔を切り裂いたの。そして、カクレオンは一言。
「…今のはシャドークローではない…ひっかくだ」
「!」
「同じ技といえども、使う者の攻撃力の絶対量によって、その威力は大きく異なる。つまり、余のひっかくと普通のポケモンのシャドークローとでは、ひっかくのほうが威力は大きいということだ」
 いやぁ、威厳に満ちた声だったわね。そもそも、ひっかくなんて、ゴーストタイプのデスカーン相手には効果はないはずなのに、それなのにそこいらのポケモンのシャドークローよりも強いって相当だわ。その時、『穴抜け玉』を使ってデスカーンは逃げようとしたんだけれどね。けれど、発動しなかったのよ、これが……そしてね。
「……知らなかったのか…? カクレオンからは逃げられない!」
 って、威厳のある口調で言うの。痺れるわよねー。
「……これが、余のシャドークローだ。その想像を絶する威力と、優雅なる姿から太古よりカクレオン商会ではこう呼ぶ…カイザーギラティナ!!」
 と言って、デスカーンを切り裂いたときは、目を瞑りたくなるのを堪えてその光景を見たけれど、巨大な黒い手……どれくらい巨大かって言うと、そうね……私の身長2つ分くらいかしらね。それがデスカーンを切り裂くものだから、酷い傷を負っていたわね。怖い怖い。

 デスカーンに構わず逃げていた前方の方からも悲鳴が聞こえてきたの。どこからともなく現れた別個体のカクレオンが立ちはだかっていて、次の瞬間にはトリデプスが乱れ引っ掻きを受けていたわ。
「くっ……だが、乱れ引っ掻きなど耐え切ったぞ」
 そう、カクレオンは一瞬のうちに5発引っ掻いたわね。手の動きが見えなかったなんて、人生初の体験だったわ。
「耐えたか。だが、ワシの乱れ引っ掻きは百八式まであるぞ」
 手の平を合わせて、祈るようなポーズをとりながらの、カクレオンのセリフ。うん、痺れたわー……そして、言葉どおり108回引っかかれて、トリデプスは無残な事になっていたの。女の子だったらあの顔じゃ街を歩けないわね。

 そして、別の方向ではゴチルゼルの女の子がカクレオンの舌に捕まっていて……
「ほんなら『舌で舐める』は どんくらい延びるか分かる? しゃァない よう分かるように キミらの長さで教えたげるわ。13kmや」
 とか言っていたの。そんなに伸びて何をする気か知らないけれど、全身を舐められて呼吸も出来ないほどの麻痺をわずらっていたわね。べとべとに濡れていたし、あのカクレオンなんかそういう趣味があったんじゃ……

 で、私のほうにニョロトノが逃げてきて、なんとそいつは私を盾にしようとしたの。そしたら、私ごとカクレオンに囲まれちゃってさ。
「ちょ、ちょ、ちょっと……わわわ、私はこいつらの仲間じゃないわよ?」
 あのカクレオンの強力な攻撃を見た後じゃ、私もその状況は恐怖だったわ。しかも、カクレオンの一人が私に向かってきて、なんと私に殴りかかってきたの……さすがに死を覚悟したけれどね。
 こう、メメタァ! って音がしたかと思うと、私の後ろに隠れていたニョロトノだけがぶっ倒れていたの。ニョロトノの腹には、それはもう綺麗な波紋の模様が浮かんでいたわ……どうして私には何のダメージもなかったのか、今でも分からないわ。

 ◇

「と、いうわけ。ちなみに、その時のお尋ね者が、当時猛威を振るっていた、『堅牢』という窃盗団の一味でね。漁夫の利を得る形で逮捕したものよ」
「えー……」
「えー……」
 ティーダと私の声が重なる。
「マジかよ……」
 この話にはエモンガも苦笑い。
「流石です、ビリジオンさん!」
 ノコッチは物凄く信じてるし。
「それだけの強さを持つポケモンだもの……宿場町にいるカクレオンさんが、それだけの強さを発揮できると思う?」
「いや、思わないけれどさ……でも、それがカクレオンとアルセウスが同一の存在とこじつけるのは無理があるんじゃねーか? それに、それって作り話なんじゃない?」
 そうよね。エモンガの言うとおり。作り話の可能性は否定できないわ。
「うーん。でもね、アルセウスは1000本の手を持っているという伝説があるの。そしてそれは実際に手の形をしているわけではなく、カクレオンの形をしているっていう学説があるのよね。手の一つ一つに眼と耳を持たせることで、下界の様子を垣間見ることもできるしさ」
「なるほど……俺達人間の様子を監視するために商人としてダンジョンに姿を現すのか……面白い学説だな。元希族だけあって、勉強してるんだなー、ビリジオンさんは」
「ふふ、貴方には敵わないわ、ティーダ。貴方の作った畑、素敵よ」
「いやー。『それと同じくらい貴方も素敵よ』って付け加えてもらえると嬉しいんだけれどねー」
「あらー、どうしようかしら? 貴方も素敵だけれど、畑の方が素敵かも。ほら、大きくって抱擁力があるもの」
 それにしても、何でビリジオンさんはティーダのかわしかたがこんなに上手いのだろう。見習いたい……
「おーっと、ダイケンキに進化したら待ってろよ。俺の包容力見せてやるからな」
「あら、楽しみ」
 この2人、めっちゃ仲がいいな。うぅ……私もこれくらいティーダと普通に会話したいのに。

「おはよう、ビクティニ」
 と、そんな会話をしているあいだに、私達はビクティニの元までたどり着く。Vウェーブの予報をするために、街に流れ着いた住人である。子供のような見た目だけれど、こう見えて何十年も生きている希少種であるが、Vウェーブの予報を生業としてきた流れ者だけあって希族ではないようだ。
「あー、ビリジオン、おはよー! 何、今日もこのスペシャルプリティーでキュートでラブリーなこの僕、ビクティニ君にVウェーブの予報を聞きにきたのかな?」
 あぁ、そうか。ティーダよりもうざったいこのビクティニとの付き合いの経験が、スルースキルに繋がっているのかな。
「えぇ、今日も頼むわね。今日は、このダンジョンに向かおうと思うのだけれど……」
 言いながら、ビリジオンさんは草結びで掴んだ銅貨と、マリルリのお仕事掲示板の依頼用紙をビクティニへと渡す。
「ふむふむ、このダンジョンは……そうね。今はドラゴンだけれど、午後から強い炎のVウェーブが吹くだろうね。夜には弱まって、明日の明け方くらいにはゴーストになるかな」
「ふふ、ありがとう。じゃあ、そういうわけで……今日は炎に強い水タイプのティーダ、アメヒメはどうせついていくんでしょ? で、そうね……あのダンジョンにも炎タイプはいるし私はお留守番にするわ……ノコッチとエモンガはどうする?」
「え、あぁ……そうだな。俺は一緒にお留守番なんて勘弁だからな、一緒に行くぜ」
「ぼ、僕は……」
 言いながら、ノコッチはビリジオンと私達を見る。ビリジオンと一緒にいたいけれど、探検して経験を積みたいというところだろう。
「えと、探検に行きます! やっぱり、一対一の強さを磨く鍛錬ならこちらでも出来ますが、『ガキ』を相手にする経験は実際にダンジョンに出かけないと味わえませんし」
「うん、頑張りなさい!」
 と、言うわけで今回はティーダ、私、エモンガ、ノコッチという編成に。

「ところで、ビクティニ。貴方に聞きたい事があるのだけれど……」
「んー、なーにー? 僕の趣味とか職業とかを聞きたいのかな?」
 趣味はダーツ、職業はVウェーブ予報でしょ……知ってるから。知ってるから!
「それは、後の機会に聞くとするわ。聞きたいのは、ダンジョンの中で店を出しているカクレオンのことだけれど……貴方、泥棒の光景を見たことはある?」
 相変わらず、相手の鬱陶しい言葉は軽くかわして、ビリジオンさんは先程の話の続きをする。
「お、それなら知ってるよ。盗んだシーンは見ていなかったけれど、階段を下りようとしたところで、『誰か捕まえてー!!』って声が聞こえてさ」

 ◇

そりゃもう、衝撃的な光景だったよー。

 僕のまんまるなおめめがさらに真円に近付くような感じだったねー。僕も、泥棒を捕まえたら何かお礼がもらえるんじゃないかって言う下心があったんだけれどさ。
 だから階段の前を陣取って、日本晴れをしてVジェネレートの準備をしていたわけ。
 そしたら、まるで風か神速かと疑うような速さでカクレオンが現れて、階段の前で立ちはだかったんだ。その物凄い圧力があまりに近寄りがたかったんで、僕も思わずその場を離れてしまってさ。そして、泥棒らしきアギルダーが現れた時に、カクレオンはこういうんだ。
「よくもここまで来たものだ。
 貴様等は私の全てを奪ってしまった。
 これは許されざる反逆行為といえよう。
 この最終鬼畜道具をもって貴様等の罪に私自らが処罰を与える。
 死ぬがよい
 って言いながら、時空のオーブっていう道具を取り出してね。そのオーブは、持っていると全ての技の威力が倍近くに跳ね上がるとか何とか。異国の大陸の『運命の塔』ってところで試練を終えた者に与えられる、最終鬼畜道具なんだ。
 いやね、運命の塔の伝説は知っていたけれど、実物を見たのは初めてだし、そもそも本当にあれが実物なのかどうかすら分からないんだけれどさ。けれど、強かったよー。洗濯機のごとき水の波導、ふぐ刺しの如く周囲へ放たれる原始の力の薄く鋭い小石達。後光の如く放たれる、冷凍ビーム、ソーラービーム、サイケ光線、チャージビームがそれぞれ数本の一斉掃射。
 ありゃ人間業じゃなかったねー。

 ◇

「と、言うわけで……カクレオン相手に泥棒をするときは死の覚悟をした方がいいよー」
「へー、貴方も衝撃の光景を見た事があるのねー」
「衝撃ってレベルじゃないだろ……っていうか、洗濯機ってなんだ?」
 エモンガの言葉がその通りすぎる。衝撃ってレベルじゃないし、洗濯機って一体何よ……。
「あー、洗濯機って言うのは人間が残した遺産で、ロトムが代々その形を伝えている、服を洗う道具だよー。庶民には縁が無いけれど。この大陸でも、街に行けばギアルを動力に動く洗濯機があるよー」
「懐かしい……希族時代は持ってたのよね、それ……」
 ビリジオンさんは、希族時代のことを思い出したのか、ため息をついていた。
「そうそう、その攻撃でやられたポケモンの末路だけれど、お仕置きされた上に全ての有り金と道具を奪われるんだよねー」
 ビクティニさん、笑顔で言っているけれど、それすごく怖い。
「……いくら正当防衛でも奪い返すのはいけないんだけれどね。あのカクレオン相手に何かを言うのは無理だったのは覚えているわ」
「ねー♪ カクレオンには一生逆らわないって心に決めたよー」
 この2人、共通の話題で盛り上がっているが、どんな光景だったのやら。すごく見たい……
「し、しかし……そんな光景、どうすれば見られるのでしょうか……」
「運がよければ見られると思うわよ。そうね、私と同じように、お尋ね者を追っていればそのうち見つかるんじゃないかしら?」
 あー、なるほど。自分で泥棒をやるわけにはいかないものね……見てみたいけれど犠牲者にはなりたくないし
「うーん……見てみたい気もするけれど、あれだな。ノコッチ、お前じゃチビっちゃうんじゃないか?」
「いやいや、僕もう子供じゃないんだから……」
 ノコッチはエモンガの言葉を否定するけれど、なんとなく光景が想像できるな。悪いけれど……
「えー、男がチビっても面白くないぜー?」
 そういう問題じゃないだろ、ティーダ。というか、女がチビるとして誰にチビってほしいんだお前は。
「あら、じゃあアメヒメがしてあげたら」
「何で私なのよー!?」
 というか、ビリジオンさんは何で男の下品な会話に自然に混ざれるの……? 本当にすごいな、見習いたい。
「なーに言ってんだビリジオンさん」
「あら、ティーダ。流石にアメヒメをからかいすぎかしら?」
 クスクスと笑ってビリジオンさんは言う。
「アメヒメのはチビる前に俺が飲み干すからそんなことはギャーッ!!」





「喰らえ、この女の敵が!!」
 流石の私もこれにはぶちきれ、電気ショックを使わざるを得ない。
「おー、お見事。俺も見習いたい威力だね」
 エモンガ……元はといえばあんたの発言が発端でこうなったんだから、恨むわよ。
「ふふーん。ティーダは変態さんだねー。電気のVウェーブが吹いていないのが残念だなー」
 本当、ビクティニの言う通りよ。まったく。
「あー、いててて。こんな凶暴なアメヒメなら、チビる心配はなさそうだ……」
「分かればいいのよ、ふん」
 ティーダ……こいつの軽口は、死んでも治りそうにないわね、まったく。



 次は私達のパラダイスにて雑貨屋を営んでいるヌオーのヌマンナさんに話を聞いてみる。
「ん、カクレオンだぬか? 一連の流れを観察した事があるだぬ」
 やはり旅なれている人達は結構見ているらしい。私もいつか見られるかな、泥棒の風景……それだけ世界が荒んでいるってことだから、あまり見たいものじゃないけれど。

 ◇

 まぁ、確かに衝撃的ではあっただぬ
 その時は確か、『ギャー ドロボー! 早く捕まえてぇ~!」』って聞こえてきたから、捕まえてやろうと振り向いただぬ
 そしたら、次の瞬間には……
「私の戦闘力(レベル)は53万です」
 とか、カクレオンが言っていただぬ。ハンデのためにベロだけで戦ってやろうとも言っていて、『舌で舐める』だけでオオタチを倒していただぬ。
 そして、そのオオタチを倒したカクレオンが一瞬で氷付けになっただぬ。何かと思ったら、それは絶対零度だったらしく……
「へっ……いくら強くても絶対零度は耐えられねえだろ」
 と、遅れて逃げてきたバイバニラが言っただぬ。まぁ、その時だけはそいつも輝いていただぬが……
「レオンがやられたようだな…」
「ククク…奴は四天王の中でも最弱……」
「絶対零度ごときに負けるとはカクレオン族の面汚しよ…」
 3人ほど集まって来ただぬ。バイバニラも抵抗はしたんだぬが……それはもう瞬く間にもみくちゃにされてしまっただぬ。

 そうそう、決め台詞は『またつまらぬ物を斬ってしまった……』だったぬ。

 ◇

 だから舌で舐めるはノーマルタイプに効果が無いでしょ……どんだけよそれ。
「そのあと、お仕置きタイムだったわけだぬが……毛を全て刈り取ってから塩を体に塗りたくって日向ぼっこさせたり」
「ひぃっ!!」
 ヌオーの横で『ズルッグわざっぐ』を経営しているズールが小さく悲鳴を上げた。
「蜂蜜を塗って蟻塚にぶち込んだり」
「うひぃっ」
「磔にして蚊がいる森に放置したり、その横で脂ノリノリの骨付き肉をジューシーなから揚げにして美味しそうに食べていたりしただぬ。その他にも、漆を背中に塗ったり、水が一定の間隔で滴り落ちる場所に縛って放置したり」
「いやだぁぁぁぁぁぁ!! もうゴリゴリお仕置きはいやだぁぁぁぁ!!」
 あ、ズルッグが店をほっぽり出して逃げた……どうやらヌオーさんの発言がトラウマを抉ってしまったらしい。
「そのお仕置きを、ズルッグにやったらあんな感じになっただぬ。あ、営業中に店を放り出して逃げたから後で給料没収だぬ」
 ひどっ……。
「へぇ、ゴリゴリお仕置きってそういう……」
 ティーダ、興味深そうに聞かないの。感性がおかしくなっちゃうよ。
「さすがGODヌオーと呼ばれるだけの事はありますね。素晴らしい手腕です」
「それほどでもないだぬ。今はただのご隠居中のしがない雑貨屋だぬ」
 ……要するに、カクレオンが恐ろしいと言うことだけは分かった。うん、絶対に逆らわないようにしよう。
「しかし、そのカクレオンのセリフ、どこかで聞いた事があるようなのばっかりなんだよなぁ……なんでだろう?」
 え、そうなのティーダ?
「あら、いいところに気付いたわねティーダ。アルセウスはあらゆる世界のあらゆる景色や創作物を覗いていると言うわ。だから、戯画や口伝などに似たようなセリフがあったのかもしれないの……そういうところも、カクレオンとアルセウスが同一の存在だとささやかれる一因なんだけれど……」
「とにかく、すごい奴ってことなんだな」
 そ、そうね、うん。まさか本当にアルセウスなんじゃ……いや、そんなわけは無いか。
 そう思って、宿場町にいるカクレオンに話を聞いてみても、カクレオンは太古の昔からなぜか商人としての家系が続いているということしか分からず、『あなたが神か』と尋ねても『そうです』と言うような答えも返って来るはずもなく。
 真相は謎のままである。


 その話から、数ヶ月が経った。私達は、相変わらずパラダイスの発展のために資金集めの依頼受けの最中なのだが。
「あ……あいつら!」
 ダンジョンで見つけたのは、かつてノコッチを騙してお金を奪おうとした不届き者のコマタナ(一人キリキザンに進化している)や、その仲間である。親友であるエモンガが心配して探していたからギリギリでノコッチを助ける事が出来たが、もしもあの時エモンガがいなかったらと考えると、きっと恐ろしい目にあっていたことだろう。
 その証拠に、そいつらはあの後も色々悪事をやって指名手配されており、今も賞金稼ぎに狙われているのだろう、ボロボロの見た目であった。悔しい事に、今回は格闘タイプが多いダンジョンのためにノコッチはお休み。リベンジは出来そうにないけれど、仕方あるまい。
 そこに、カクレオン商店。あ……
「おい、てめぇ……首を掻き切られたくなかったら、俺達に有り金と商品をよこせ」
 カクレオンの頭についているトサカを掴みながら、キリキザンは言う。
「はい、有り金はお持ちの商品を譲っていただければ差し出しますし、商品もお金をいただければ差し上げますよー。どんな商品がお望みですかー?」
「てめぇ、舐めてんじゃねーぞ!」
 と、キリキザンが放った辻斬りは、小指一本で止められていた。へぇ、小指で止められるものなんだ……。その時、ザクッと音がしたかと思うと、先ほどのキリキザンが引っかかれて倒れ伏していた。何が起こったと言うのか……。
「キリキザン……君が、泣くまで、引っ掻くのをやめない!!」
 その言葉を皮切りに、どんどんとカクレオンが集まってくる。というか、泣く前に死ぬと思う。
「食べてもいいですか?」
「よろしい、ならば戦争だ!」
「許さねぇ……テメェらの血は何色だ!!」
「さあ かかってきなさい! ワタクシはアナタの絶望する瞬間の顔がみたいのだ! 誰が何をしようと、私を止めることは出来ない!」
 あちこちから集まってきたカクレオンに囲まれて、そのあとは地獄絵図であった。デンチュラやらホイーガやらキリキザンやら、全員がそれはもう見事にカクレオンに蹂躙され、あちこちで断末魔の声が上がるのだ。ゴリゴリお仕置きされ、私達の御用になって……。
 ヌマンナさんから語られたお仕置きのほかに、水の中に体を沈めて竹筒でのみ呼吸を許したり、狙いの的を持たせて毒を初☆体☆験させたり。それはもう酷い拷問お仕置きであった、チビるなよと言っていた張本人のエモンガがチビっていたし……ティーダとビリジオンが平然としていたのが対称的ね。
 せっかくゴリゴリお仕置きされたのだから、あのキリキザン達もズルッグみたいに真面目になってくれればいいんだけれどね……。


 あぁ、そういえば……私も、例の学説を信じる事にしよう。
 だって、あれ(カクレオン)は神なのだと言われたら、反論の言葉が思い浮かばないほど強いのだもの。

コメント 

お名前:
  • 改めて読み返してみるとムンナたちの境遇の伏線が張られていたんですね
    ―― 2013-11-20 (水) 16:27:39
  • 「私“達”、アイリスのパーティーで言えば」「強化されるお得なタイプ“校正”である」「いいじゃないの、俺“達”の仲のよさを外に」「喧嘩しても仕方ない“示唆”」「命を燃やされる“やつ”が死ぬんじゃない?」「縦糸様と横糸様と縫い糸様が“作”ったように」「シャド“ウ”クローか? ありえねぇ!! あいつのシャド“ウ”クローは」「今のはシャド“ウ”クローではない…ひっかくだ」「普通のポケモンのシャド“ウ”クローとでは」「そこいらのポケモンのシャド“ウ”クローよりも」「ほんなら『舌で舐める』は どんくらい“延”びるか“わ”かる?」「なるほど……俺“達”人間の様子を」「私“達”はビクティニの元までたどり着く」「こう見えて“年”十年も生きている」「ノコッチはビリジオンと私“たち”を見る」「実物なのかどうかすら“わ”からないんだけれどさ」「原始の力の薄く鋭い小石“達”」「あのカクレオン“な”いてに何かを言うのは」「死んでも“直”りそうにないわね」「次は私“たち”のパラダイスにて」「やはり旅なれている人“たち”は」「私“達”は、相変わらずパラダイスの発展のため」「俺“達”に有り金と商品をよこせ」「ゴリゴリお仕置きされ、私“たち”の御用になって」「“ちび”るなよと言っていた張本人」「平然としていたのが対“象”的ね」「あのキリキザン“達”もズルッグ」

    間違いと変換忘れがありました。また、非常に細かいことなのですが、「たち」と「達」、「こと」と「事」が混合していました。

    もう読んでいてツッコミしまくりでしたwwwしかしツッコミが追いつかなかったwww
    前話のシリアス調から一転、ギャグパートで楽しませていただきました。キャラたちの性格が立っていて、マグナゲートはやったことありませんが、面白そう雰囲気が伝わってきました。
    しかしこれほどのネタよくありましたね・・・(
    ――ナナシ ? 2013-05-13 (月) 18:47:25
  • ほほー、これが噂に聞くスーパーポケモン・(ゴッド)ですか(大嘘
    今作には出演してませんけど、弟さんの戦闘力も兄みたいに鬼強なのでしょうかw
    ―― 2013-05-05 (日) 23:59:18
  • ネタを詰め込む天才かww

    ギャグマンガ日和とかカイジとかも入ってるかな?ww
    ―― 2013-05-05 (日) 22:43:24
  • よくもこの小説をうpしたものだ。
    あなたは私の腹筋を崩壊させてしまった。
    これは許されざる反逆行為といえよう。
    ―― 2013-05-05 (日) 22:22:08

最新の5件を表示しています。 コメントページを参照


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2013-11-24 (日) 05:51:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.