マグナゲート短編、終わりました。はい、タイトル詐欺ですね!
と、いうのも……このお話の元になった『ポケモン不思議のダンジョン マグナゲートと∞迷宮』は、前作『時渡りの英雄』の元になった探検隊シリーズとは大きな違いがあって、すべてのイベントを事細かに書く気になれなかったというのが、短編形式にしようと思った原因だからです。
探検隊シリーズは、主要人物4人の状況がコロコロ変わり、それによって心情も大きく移り変わっていくために、とっても下記がいがあるのですよね。例えば未来組がこの世界に訪れて順応するまでの期間とか、ジュプトルがお尋ね者になってからの期間とか。マグナゲートはそこんところ、少々メリハリがなく、また敵との交流もほぼないために、敵側の心情を書くのもあまり面白くないという状況で。そのせいか、キャラに萌えたりCPが出来たりという事もかなり少なく、イラストサイトでのこのゲームに関する絵の少なさは探検隊と比べて非常に悲惨なものとなっています。
そんな感じでいろいろと残念なところがあったので、ゲームのエピソードのすべてを書こうとせずに、日常生活や、掛かれていないエピソードのねつ造、そして各キャラの掘り下げやパラダイスで起こる事件などを中心に書いていきながら、一つの流れを作ってゆき、そして最後の冒険へとつなげようという事で、こんなタイトルになったのです。だから短編集の予定だったんです、嘘じゃないです。
思い返せば、2話のあたりですでにキュレムとの戦いの構想は出来上がっており、『キュレムは氷触体の影響で弱らせられたところで倒す』という筋道を立てて、色々と書いてきました。第5話で明らかになりましたが、ティーダがこの世界に来て真っ先に文字を学ぼうとしていた理由もそこにあって、日誌をつけるために文字を学んでいたというわけですね。
その後も、パラダイスを発展させるためにいろいろ頑張ってきて、だからこそキュレムを言い負かすだけの理論武装は出来ました。多分、彼でなければキュレムを弱らせる方法までは発見できても、倒すまでには至らなかったでしょう。卑怯な手段を使っても、おそらくその程度では弱っていないキュレムは負けませんでしたし。
主人公のティーダが農業開発に携わる職業に従事しちぇいるという設定も、一つは私自身が学生の時に学んだ経験をわずかでも生かしたいという理由はありましたが、それ以上にキュレムとの戦いに臨むための意味合いもありました。あとは、2話目のあとがきにある通りに、農場に2回連続ヤブクロンが出たせいもありますがね。
さて、今回のお話を書いてみて思ったのは、途中で主人公がビリジオンかと思ったなどと……そんなこともありました。時渡りの英雄に比べると、まともな戦闘描写も少なく、ムンナ戦ではビリジオンが強すぎたり、キュレム戦は圧倒的すぎたり、氷触体戦ではチートVSチートだったり、ティーダの強さがいまいち分からないのもマイナスでしたね。だって探検隊と比べて魅力的な戦闘があまりにも少ないんだもの
また、伝説のポケモンがあまり活躍していないので、ビクティニを強引に活躍させる機会を作ったり、普段は活躍できないキャラに活躍の場を設けたりなど、色々とがんばりました。その結果、スターミーのプラチナやスワンナママさん、ヨーテリーとクルマユなど、主要キャラ以外で気にいったキャラも多く、今回の経験を生かして、また好きになれるキャラを創作してゆきたいものです。
このゲーム、クリア後のボリュームがあまりに少なすぎるせいか非常に不評で、二次創作も少なめという感じなので、私の完結からまた何か引っ張って行ければいいと思います。
今回もまた長い作品になってしまいましたが、長いことお付き合いいただきありがとうございました。また次の長編で出会いましょう。
俺がこっちの世界に帰ってくるとき、クロースは便宜を図ってニンゲンの世界を去った直後の時間移動させてくれた(もしかしたら、日食の日という事が関係があるのかもしれない)ために、俺は気絶していたところを熱中症の疑いで病院に運ばれたところで間が覚めた。
ところが、検査をしても体に異常は見つからないので、そのまま退院していいよと医者に言われ、ボールを割ってもなお憑いてきてくれたヨノワールのヘルのために新しいボールを購入し、その日はホテルの中でずっと泣いていた。
そうして時は経ち――
「パパ、今そっちの方にヘルちゃん送ったから」
「ありがとう。また機会があったらお願いするよ」
「いえいえ、どういたしまして」
あれから約一年半ほど。俺とアイカは、インターネットを通じて改めて繋がり合い、現在は親子のような関係になっている。距離こそ離れているが、まぁ……テレビ電話があればそんな距離なんて縮まって思える。
会えない時間に想いを募らせるような、そんな時間の使い方も趣があっていいが、やっぱり最新機器の便利さにはかなわない。
「今回はどうだったの?」
「あぁ、ちょっとした植物の病気さ。あいつら俺に頼りっきりでさ。でも、対処法とかいろいろ教えてやったら、みんながきちんとメモを取るようになったし、多分もう大丈夫だと思うけれど……」
「大変だねぇ、パパは。私の方は皆がしっかりやってくれていて、大助かりだよ」
まぁな、と俺は笑う。俺があの世界を去ってから数か月。アメヒメは、俺とどうしても再開したいがために『世界のへそ』というダンジョンの内部にある『銀河律の丘』という場所で、俺との再会を願った。その頃には俺もアイカに資金援助なんかをしたりして、悪い影響しか与えない両親から引きはがす形でトレーナーとして旅立たせており、順風満帆の生活を送っていた。
そんな状況でアメヒメからコンタクトがあるとは意外な出来事で、突然3DSにあのゲームの画面が現れたことにはひどく驚いたものだ。
アメヒメの願いは、『ティーダがこちら側の世界とニンゲンの世界を行き来できるようにしてほしい』というもの。アイカと一緒じゃなきゃ嫌だと、声をかけると、クロースがその言葉をアメヒメに伝えて、アイカも一緒に戻れるようになったわけだ。
そうして、今は交代で時折、自主的に神隠しにあいにいくという日々を過ごしている。あちらの世界で、俺はダイケンキとして、アイカはオノノクスとして、かつての仲間たちに訪ねに行くのだ。俺は体も大きくなってしまったため、アメヒメがライチュウに進化したところで、もうつがう事は出来ないだろう。クロースもまた、『そうしてくれると助かります』、と言っていた。恐らく、別世界の住人である俺の子供が生まれるといろいろまずいのだろうが……ミジュマルの時に何回か女を金で抱いたが、子供出来たりとかしてないよね……? クロースが何も言わないという事はきっと大丈夫なのだろう。
結局、彼女いない歴イコール年齢というのは今でも変わらないが、娘のような存在も出来て、どちらの世界でも幸せな生活を送っている。宿場町の仲間達とたまに会う日も楽しみだし、なんというか長生きしたい。漠然とそう思える、幸せな日々だった。
「そうそう、パパ。今度私3つめのバッジに……エイセツシティジムに挑戦するんだけれどね……」
「お、3つめかぁ……って、俺がいない間に2つめ手に入れていたの? 早いな……やっぱり才能あるんじゃないかな、お前」
実の娘ではないけれど、こうやって自分が見込んだ若い子が成長していく様子は、非常に嬉しいものだ。あちらの世界のヨーテリーも、顔を見せるたびに立派に成長していて、今はいつかダンジョニストになるために、毎日鍛錬をしているのだとか。アイカも……もっともっと、強くなってくれるといいな。
「うん、そうなんだけれど……ヒャッコクシティでエスパータイプのジムに挑んだ時、私のニダンギルがニャオニクスのシャドーボールで簡単に倒れちゃったんだよね……鋼タイプって、ゴーストタイプの攻撃今一つじゃなかったっけ? なんか、記憶がごっちゃで……ジムリーダーのゴジカさんも『これは歪み……乱された、この世の理』とか言っていたし……」
「いや、鋼にゴーストは等倍だろ……? ……あれ? いや、鋼タイプに対しては等倍のはずだが、なぜか猛烈にいまひとつだった気がする……なんでだろ?」
「そうなのよね……私も、頭では分かっているんだけれど、なぜだか心が認めないというかなんというか……まさか、私達が原因で世界にひずみが出来てたりとか……」
おどけた口調で、アイカは笑う。
「ないない、ありえないって」
俺も笑って返した。
ないよな?
今度、クロースに聞いてみるか……?
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