ポケモン小説wiki
ポケタン! エピソード2

/ポケタン! エピソード2

writer is 双牙連刃

予想外にご要望の多かったポケタン! の続編でございます。はい、非常に時間が掛かったものですw
他作品よりかなり長い作品となっている為、何処かにおかしなところがあるかもしれませんが…ご報告頂けたらありがたいですorz
お読み頂ける皆さんにお楽しみ頂ければ何より。では、↓よりスタートです。



「さぁ、やるかピカ」
「オッケー、何時でも」

 僕の目の前にはバスターが佇み、こちらに仕掛けてくるタイミングを計ってる。この時点で、他のクラスメイトを相手にするのと緊張感が違うんだよ。
そして、バスターが動く。爪を出して向かってくるって事は、まずは乱れ引っ掻きかな。なら、出鼻を挫くとしようか。
電光石火で一気に接近して間合いを無くす。ははっ、驚いてる驚いてる。

「驚いてる暇は無いよ、バスター!」
「くっ、ちぃ!」

 それでも怯まないで攻撃してくるところは流石バスターってところかな。電気ショック当てようと思ったんだけど、このままじゃあの爪をまともに喰らう事になっちゃうし、別の抵抗をするよ。
くるっと体を回して、バスターの腕へ尻尾を叩きつける。弾くのならこれで十分。

「やるな、でもまだだ」

 あらら、次の手への行動が早い。弾かれた方とは別の腕を上げたと思ったら、そこに氷の粒が浮かんだ。氷の飛礫かぁ。
体を回してすぐじゃ全部を迎撃するのは無理かな。なら、ある程度をエレキボールで相殺しよう。

「あいててて。油断しちゃった」
「きっちり相殺しておいてよく言うな!」

 更に向かってきての、体当たりでの追い打ちか。流石にそれは焦り過ぎだよ、バスター。
飛び上がって、バスターの体を跳び箱に見立てて後ろへ回る。ついでに、触れた手に電磁波を纏わせてね。

「しま……くそ、体が……」
「まっ、こんなもんかな」
「それまで! って、止めるまでも無かったか」

 体育の先生、ローブシンのブシン先生の合図で他の皆も模擬戦を止めた。まぁ、僕等が一番長くやってたみたいだけど。

「お前達は本当に、なんでそんなに戦い慣れてるんだ?」
「体動かすのは得意だからね」
「ふぅ……のはじゃなくて、のもの間違いだろ。ピカとだけだぞ、あんなに頭使って戦うのは」
「技を出し合うだけのバトルなんて詰まらないでしょ? バスターだってノリノリだったじゃん」

 ブシン先生が手渡したクラボの実を食べて、バスターの麻痺は治ったみたい。体育でも模擬戦するならやっぱりこういう備えはあるよね。
んー、時間的に後一戦くらい出来そうだけど、今の僕とバスターの戦ってるのを見てまず組もうとする相手が居ないんだよなぁ。

「よーし、次の組を作れー」
「先生、僕達は?」
「……俺とやるか?」
「遠慮しておきます」

 だって、僕はブシン先生のパワーに敵わないし、バスターはもう弱点の塊みたいな相手だもんね。二匹でやっても勝てる気がしないよ。
って事で、僕達は休憩モードです。フラシィの様子でも見てようかな。まぁ、見てなくても結果は分かるんだけど。

「た、たぁ~」
「やぁ~」
「……他のところは平和だな」
「そりゃあ、僕達のが異常なんだよ。あれが普通だと思うよ? 僕達の年では」

 なんだかこう、学芸会をしてる子を見る親の気分。因みにフラシィが戦ってるのはリキセルっていうオニスズメ。不利だよねー。
キャルの方を見ると……まぁ見る必要も無く五月蝿いんだけどね。

「ちょっとぉ! ちゃんと当たりなさいよぉ!」
「む、無茶言うなー!」
「いつも通りだな」
「まったくだよ」

 気迫はあるんだけど、直線的でしかもデタラメに向かって行くから攻撃が当たらないんだよね。ただ当てずっぽうでも全力だから当たると怖いんだけど。
ま、こんな感じで今日も学校は平和だよ。良い事だよねー。

「よーし止めー。今日の授業はここまでだ」
「あー終わった終わった」
「あ、ピカ、悪いんだが今日夕飯食べに行っていいか?」
「ん? どったの?」
「いや、今日は父さんが早く帰ってくるらしくてさ、たまには母さんと水入らずで食事でもしてもらおうかと思って」

 ふーん。まぁおじさんがいつも仕事で帰ってくるの遅いって言うのはバスターから聞いてるし、今日は晩御飯作るの僕だしいいか。

「いいよ。でも、夕飯の買い出し手伝ってね」
「助かる。……実はもう父さんにも母さんにも外食でもしてきなって言ってたから、断られたらどうしようかと思ってたんだ」
「なるほどねー。それなら何か食べたい物のリクエストとかある? 答えられるだけ答えるよ」
「うん? そうだなぁ……それなら、肉じゃがとか」
「それならなんとかなるかな。オッケー」
「……お前ら、そういう話は授業が終わってからしろ!」

 わーお、ブシン先生聞いてたんだ。うちの献立なんて聞いてどうするんだか? 話してた僕達も悪いけど。
とりあえずこの先の話は後だね。……多分、バスターは今日家に泊まっていく事になるだろうし、母さんにも話さないと。
でもOKだろうけどね。別にこれが始めてじゃないし、バスターも気が効き過ぎて苦労してるんだよ。
授業も号令が終わって、後はクラスに帰って帰りのホームルームを残すだけ。今日はバスターも居るんだし、ちゃんと肉じゃが作らないとね。



 とまぁ流れで今、バスターと一緒に帰ってるところだよ。なんでかキャルとフラシィも居るけど。
食材は一旦帰ってからまた買いに行く必要があるからどっちでもいいんだけどさ、なんでキャル達まで来たんだろ?

「で、これから二匹で何するのよ?」
「は?」
「なんの事だ?」
「だってあんた達が一緒に帰るなんて滅多に無いじゃない! 何かするんじゃないの?」
「っていうか、ピカが誰かと一緒に帰るのが滅多に無いから気になったんだけど……」

 あー、そういう事。ま、確かに僕は学校終わったらさっさと帰るよ。バスターもそうなんだけど、実は僕らの家って逆方向なんだよね。
キャルとフラシィは友達と話したりしてるから、挨拶だけしていつもは帰っちゃうんだよ。だから皆と帰るのってかなり久々かな。

「単にバスターが今日僕の家に御飯食べに来るだけだよ。多分、そのまま泊まっていくだろうけど」
「……悪い、頼めるか?」
「そのつもりだったからね。母さんも何も言わないと思うよ」
「えー、何それ面白そう。私もフランマさんの料理食べたいなー」
「そ、それにバスター君ピカの家に泊まるの!? い、いいなぁ」

 バスターは事情があるからそうなってるんであって、キャルもフラシィも何も無いんだから普通に家に帰ってもらうよ。あ、でも別に親の許可貰ったらいいか。
そうそう、バスターは逆方向だけど、キャルとフラシィは別にそんな事無いよ。と言っても、やっぱりちょっと離れてるけどね。

「残念だけど、今日僕がご飯作るから。それと、フラシィも泊まりたかったら来てもいいよ? ただし、許可貰ったらね」
「なんだーフランマさんじゃないんだー」
「ほ、本当!? じゃ、じゃあ僕聞いてくるー!」

 あらら、走っていっちゃった。そんなに嬉しい事かなぁ?

「……本当に、フラシィはピカの事好きなんだな」
「ま、仕方ないんじゃない? フラシィの友達で色々リードしてくれるのってピカくらいだし、今くらい明るくなったのもピカと友達になってからだから色々頼りにしてるところあるんでしょ」
「そうでもないと思うけど? あー、でも最初はあんなに喋ってくれなかったのは確かかな」

 フラシィってネット好きなところから分かると思うけど、インドア派だから大人しい感じなんだよね。最初会った時なんか、教室で誰とも喋ってなかったし。
それで興味を持って話し掛けて仲良くなったんだけど。言われると結構変わったかなぁ。

「まぁフラシィは後で直接僕ん家に来るだろうし、帰ろっか」
「そうだな」
「何にもないなら私も帰るわ。それじゃ、明日……って明日はお休みか」
「じゃないとバスターも泊まるなんておじさん達に言わないでしょ。じゃね、キャル」
「まぁな。じゃ」
「そりゃそうね。じゃ、明日暇ならピカの家行くから。じゃねー」
「……絶対来るよね」
「多分な」

 寧ろ自分以外いつものメンバーが揃ってるんだから来ない方が変だよ、キャルの場合。
それは明日の話だから置いといて、僕達も帰らないと。この後夕飯の買い出しもしなきゃだし。ついでにお菓子なんかも買っておこうか。
バスターを促して、家へまた歩き出す。……と思ったらフラシィが走ってきた。早っ。

「はぁっ、はぁっ、いいって、けほっ、はぁ……」
「だ、大丈夫フラシィ? そんなに急がなくても、後で直接家に来てくれればよかったのに」
「あ……急いでたから全然思いつかなかったよ。えへへ」
「ん? 何持ってきたんだ?」
「あ、これ? ノートパソコン。使うか分かんないけど一応持ってきたの」

 フラシィらしい持ち物かもね。それじゃ、いい加減帰ろうか。
三匹で話しながら歩いて、何事も無く帰ってきた。僕の家って母さんの仕事用にガラス細工用の竈と煙突があるから、この辺でも目立つ家なんだよ。
家に入ると、母さんが真っ白になってテーブルに突っ伏す形で椅子に座ってた。理由は分かってるから心配しないけど。

「えぇ!? フランマさん!?」
「ど、どうしたんだ!?」
「母さ~ん、生きてる?」
「ピ、カ……おか……えり……」
「大丈夫そうだね。間に合ったの?」
「ギリ、ギリ……もう……ガラスの像とか……無理……」

 大きな依頼の仕事やり終わった後は、母さん大体こうなるから見慣れたもんだよ。

「……大丈夫、なのか?」
「うん。ちょっと遠くにさ、新しい美術館出来るのって知ってる?」
「えっと……これ? 『フリシア美術館』っていうの」
「そうそうそれそれ。そこの館長さんがフリーザーなんだけどね、そこからガラスのフリーザー像を作ってほしいって依頼があって、明日がそれの納期だったんだ」

 フラシィがわざわざパソコンで検索してくれてたよ。無線LANって奴なのか、その場でインターネット出来るのって便利だなー。

「うぅ……あら、バスター君にフラシィ君じゃない。どうしたの?」
「あ、うん。今日二匹ともここに泊まりたいって事なんだけど」
「そうなの。いいわよ」
「あ、相変わらず軽い……いいんですか、フランマさん」
「別に困る事は無いし、ピカも泊めていいって思った子しか連れてこないのは知ってるしね。伊達にこの子の母親やってないわよ」
「やったー! フランマさんありがとう!」

 おぉ、はしゃぐフラシィはレアかもしれない。っていうかさり気なく恥ずかしい事を言わないでほしいな、本当に。

「それじゃあ腕によりをかけ……」
「るのは僕。母さんは休んでなよ」
「えー? 折角ピカの友達が来たのにぃ」
「子供じゃないんだから駄々こねない」
「ぶーぶー、ピカのケチぃ」
「な、なんていうか……」
「親子って言うより姉弟みたいだよね、ピカとフランマさんって」

 本当にね。あ、ちゃんとバスターとフラシィは僕達が本当の親子じゃないのも知ってるよ。だから言ったんだろうけど。
話してる間にちょっと元気になったのか、本当に母さんが動き出しそうだからさっさと買い物に行こうか。

「それじゃ、僕は夕飯の買い出し行ってくるよ。母さんは大人しくしててよ?」
「俺も付き合う約束だったな」
「はいはい」
「あ、僕は折角だからフランマさんとお話してようかな」
「そう? なら母さんが勝手に料理始めないように、ついでに見張っててよ」
「始めないったら。ところで、今晩何?」
「肉じゃが」
「わーい。ピカの肉じゃがって美味しいのよねー、大好きよー」

 それはどうも。今日は二匹多いし、ちょっと多めに作らないとね。
バスターと一緒に家を出ると、辺りは日が沈みかけて暗くなり始めてた。これは、帰る頃は真っ暗かな。街灯があるから心配は無いけど。

「良いマグマラシだよな、フランマさんって」
「身寄りの無い僕を拾って育てちゃうくらいだからね。それは合ってるよ」
「……こうして思うと、ピカもフランマさんも凄いな。同じことをやれって言われても、俺には出来そうにない」
「そんな事ないよ。僕はたまたまこういう生き方になっただけだし、皆が皆違うから面白いんだしさ」
「ははっ、確かにそうだ。本当に面白い奴だよ、ピカは」

 そんな変わり者に興味を持ったバスターも相当だと思うけどねぇ。
そんな事を話しながら、いつも買い物に来るスーパーまで来た。肉じゃがに必要な物は……まぁ、残ってるよね?
じゃがいも、にんじん、糸こんにゃく……うん、なんとかなるかな。後は皆でゆっくりしてる時に食べる物を幾つか、と。
これだけ買えば十分でしょ。僕だけだったら地味にきついけど、バスターが居れば全然問題無い。物持ちやらせるのはちょっと気が引けるけどね。
レジを通して、買い物完了。にしても、レジ打ちをロコンがやってるなんて珍しいな。バイトかな?

「お待たせ。ま、これくらいあれば皆で食べても足りるでしょ」
「十分だろうな。早く詰めて帰らないと、フランマさん辺りががたつくんじゃないか?」
「バスター分かってるねー。今頃、お腹空いたーとかフラシィに愚痴ってるかもね」
「なら、早く帰ってやらないとな」

 なんだかバスターも楽しそうだね。口数もいつもより多いように感じるし、いつもはキリッとしてる顔も少し緩めだよ。
よし、買い物袋に物も詰めたし、バスターが言う通り母さんががたつく前に帰ろうか。
予想はしてたけど、辺りはやっぱり真っ暗か。今は特に事件が起きてる話は聞かないけど、前のあれがあるから用心はしないと。

「……何かあったか? ピカ」
「ん? いや、特には。……顔に出てた?」
「普段面倒くさがりを装ってるんだから、不意に真面目になるのは目立つぞ」
「あらら、これでもポーカーフェイスは得意だと思ってるんだけどなぁ」
「真面目な時以外はな」
「でも気にしないで。暗いとあの時の事を思い出しちゃって、ちょっと警戒しただけだから」
「あれか……そういえば、感謝状が家に飾られてたみたいだな」
「いいって言っても母さんが断固として仕舞おうとしないんだよ。僕としては恥ずかしいから片付けたいんだけど」
「うちもそんな感じだ。まぁ、あって問題のある物じゃないし、いいんじゃないか?」

 僕もそれで納得する事にしてるよ。でも、もう少し早く解決出来てればって思うと、あんまり胸は張れないんだよ。
高望みなのは分かってるよ。でも……まだ、被害に遭ったポケモンの多くは立ち直ってないみたいなんだ。助けられたミローネ先生やセレナは少しずつ元に戻ってるみたいだけど。
終わった事を顧みても仕方ないか。ま、もう後味が悪いような事には極力首を突っ込まないって事で。
バスターと並んでまた歩き出す。晩ご飯晩ご飯っと。
特に何も無く帰宅~。したら母さんからのお腹空いたラッシュが待ってました。子供じゃないんだから本当にちょっとは自重してよ。
仕方なく急ぎ目に調理開始です。じゃがいもの皮剥きはバスターが受け持つって言ってくれたし、野菜はフラシィが切ってくれるって言うんでそっちもお任せ。僕はお肉を炒めてっと……。

「ふふっ、ピカ達の協力肉じゃが、楽しみね~」
「協力って言ったって、味付けするのは僕なんだから過度にはしないでよ?」
「よし、切るところまで終わったぞピカ」
「こっちもだよぉ」
「サンキュ。じゃあ後は僕だけでなんとかなるから、バスターもフラシィも待ってて」
「了解」
「うん! ピカの肉じゃがか~」

 お肉を炒めるの完了で、水を入れて沸騰するまで待って……。
沸騰したらまずはじゃがいも、それが十分に火が通るまで煮たら今度は野菜を入れて、これを柔らかくなるまで煮たら味を整えて、最後に糸こんにゃくを投入、っと。最後に隠し味のマゴの実のスライスを投入。
僕としては、じゃがいもは少し溶けてるくらい煮込むのが好みだけど、母さんはホクホクしてる方が好きだから煮込む時間は適度に。あ、フラシィ達はどうなんだろ? 聞いておけばよかったかな。

「わぁ……」
「これは、なかなか堪らない香りだな」
「少し甘味が効いてるのが疲れてる時に本当に効くのよねー」
「あ、それでマゴの実入れたんだ」
「そゆこと。後10分くらい煮れば良い感じだと思うから、もうちょっと待ってね」
「とすると、丁度七時くらいね。あーお腹空いたわー。じゅるっ」
「母さん、ここまで聞こえるくらい涎出すってどういう事さ……」
「全てはこの香りが悪いの。罪作りな香りだわー」

 もうバスターとフラシィが居るのもお構い無しだね……。
適度に鍋を混ぜながら具が変に偏らせないようにして、火の通り具合を確認。そろそろいいかな?
お玉にじゃがいもを掬って、箸を刺す。ん、オッケーオッケー。肉じゃが完成っと。

「お待たせー」
「来た!」
「へぇー、ピカの作る物食べるのなんて始めてだから楽しみだなぁ」
「うん、美味そうだ」
「あ、お米炊く暇は無かったからパンでいいよね?」
「問題無し無し。ほらほら、早くピカも席に着きなさい」
「はいはい」

 それじゃあ皆で頂きます。うわ、言った途端に母さんが自分の器に肉じゃが盛った。と思ったら、皆の分もよそうのね。これで食べ始めたらどうしようかと思ったよ。
あぁ、鍋ごと持ってくるのは我が家の習慣みたいなものかな。おかわりもし易いし、鍋使った物は大体こうだよ。

「あ、これ凄く美味しい!」
「これは流石って言うしかないな」
「はぐっ、はむ……ハンに乗へてはへると、口の中がひあわせ……あむ」
「食べるか喋るかどっちかにしなよ母さん」

 呆れてる僕を余所に、バスター達も笑ってるしまぁいいか。楽しく食べた方がご飯も美味しいもんね。
それじゃ、僕も食べようか。どうせなら温かいうちに食べないとね。



 うーん、綺麗に平らげられた鍋を洗うっていうのはやっぱり気持ち良い。皆満足してくれたみたいだし、上々の出来だったかな。
よし、洗い物終わり。……なんで母さんはバスターを抱っこして寛いでるんだろ?

「あ、あの、フランマさん、出来れば放してほしいんですが……」
「もうちょっと我慢してね♪ ピカの毛も癖の無いサラサラだけど、バスター君の毛並みも捨てがたいわね~」
「そりゃあ同学年に並ぶ者無しなんて言われてるモテニューラだからね、バスターは」
「あ、ピカ。洗い物終わった?」
「うん」
「俺としては、そう呼ばれるのは結構迷惑なんだがな……」
「でもバスター君カッコイイからモテるのも分かるわー。フラシィ君も可愛い系で捨てがたいけど」
「なんの品評をしてるのさ……」

 そしてフラシィもちょっと嬉しそうにしないでよ。喜ぶとこじゃないからね、今の。
ふんだ、どうせ僕は可愛げも無いし格好良さもバスターには適わないですよーだ。
拗ねてないで僕もゆっくりしよっと。流石に食べたばかりだからお菓子は要らないかなぁ。

「そうそう、今の話で思い出したけど、今ってこんなサイトあるんだよ」
「ん? なにこれ、校内なんでもランキング?」
「うん。生徒会のポケモンが学校のホームページを盛り上げる為に作ったんだって」

 へぇ~、あ、四年の男子ポケ人気ランキング、トップはやっぱりバスターだ。女子は……セレナか。この2大巨塔と友達なんだから不思議なものだよねぇ。
僕らの学校は6年制。六年間通ったら、専門の知識が必要な仕事に就くつもりのあるポケモン以外は皆働き始める。大体学校に通ってる間に一回なり二回なり皆進化しちゃうからね。
僕の名前は……まぁ、何処にも無いよね。そこまで問題児じゃないし、優等生でもない。我ながら平凡なピカチュウだよ。
そんな感じで、フラシィの持ってきたパソコンを四匹で閲覧中です。うちって、テレビはあるけどそれだけなんだよね、娯楽系の電化製品って。

「いやぁぁぁぁぁ!」
「ん!? なんだ今のは、悲鳴?」
「外からだ!」
「こんな夜に悲鳴なんて……皆は家に居て! 私が見てくるわ」
「な事させる訳ないでしょ! バスター、行くよ!」
「あぁ!」
「ちょ、こら! あーもう、フラシィ君はここに居て!」
「は、はいぃ!」

 外に飛び出すと、そこには血痕があった。まだ新しい……。
あ! 血痕の続く先に……誰か居る! 
一匹はローブを纏っててよく分からない……もう一匹は、そのローブを来てる奴に追い詰められてる!
考えるよりまず行動だ。エレキボールを作って、投げつける!
母さんもバスターも状況が分かったのか、僕のエレキボールを追うような形で追撃に向かった。なら、僕は追い詰められてたポケモンを保護しなきゃ。

「フランマさん、合わせます!」
「オッケー! サポートよろしく!」

 母さんの火炎車が発動して、辺りを赤く照らす。ローブの奴、ちょっとたじろいだみたいだ。
そこに追撃でバスターの爪が迫る。……惜しい、ローブを掠めただけだ。あの動き……戦い慣れてるポケモンみたいだな。
とりあえず僕は追い詰められてたポケモンの所に到着。……血痕はこの子のだったのか。

「大丈夫? 動かないで、息を整えて」
「ひぐっ、痛い、痛いよぉ……」

 ロコンの……牝の子かな? 押さえてる右肩の辺りを見ると、切り裂かれたような傷口が出来てた。……もう少し深かったら危なかったかもしれないな。

「……!」
「ん? 不味い、ピカ!」
「ピカ! 避けて!」
「え? な……」

 戦いを放棄して……こっちに来た!? 不味い、狙いはこの子か!
駄目だ、避けたらこの子が助からない! やれる事は……あんまりやりたくないなぁ。

「くっ!」
「きゃあ!?」
「!?」
「うぁぁ!」

 うぅ、背中に灼けるような痛みが……そりゃあこの子庇ったんだから僕がこいつの攻撃を受ける事になるのは分かってたけど、これはきっついなぁ。
でも、僕もやられっ放しで終わる程ポケモン出来てないんでね……せめてもの、一矢だ!

「こ、のぉ!」
「ぐぅっ!?」

 聞いた、この低い声は牡のものだ。大の大人の牡がこんな子を狙うとはね。

「あんた……うちの息子に……」
「俺の友達に……」
「「何してんだこらぁぁぁぁぁ!」」

 うわぁ、バスターと母さんがキレた。いや、僕の為にって言うのは嬉しいけど、母さんの背中からの火が尋常じゃない大きさで噴き出してるんだけど。
ローブの奴は……流石に厳しいと判断したのか、それとも僕の電気ショックで麻痺でもしたのか、町中の闇の中に消えていっちゃった。

「待てぇ!」
「逃がすか!」
「母さん、バスター、ダメだ!」
「え……ピカ?」
「深追いしちゃダメだ。戦ったんなら分かるでしょ? 相手は相当手馴れてるし、この暗がりに隠れられたら闇討ちされる可能性もある」
「そ、そうだが……」
「って、あんな奴追いかけてる場合じゃないわ。ピカ!」

 ふぅ、なんとかどっちも止まってくれたか。……流石にちょっと、動けそうにないんで行かれたらどうしようかと思ったよ。
傷は……浅くは無さそうかなぁ。気絶しそうだけど、痛過ぎて逆に意識がはっきりするよ。

「あ、あぁ……だ、大丈夫だからね、ピカ。すぐに手当てするから」
「ぼ、僕よりまずはこの子を」
「ロコン? まさか、このロコンが狙われてたのか」
「みたいだね。っぐ……」
「この子も不味いわね……バスター君、傷薬とか持ってくるから、少しだけ二匹の事を見てて」
「分かりました。ピカ、もうちょっと頑張ってくれ」
「くっ、へへ……まったく、僕はカッコイイ事しようとするだけで命懸けだもん、まいっちゃうよねぇ」
「分かったから、少し喋らずに休め。こんな時にまで変な気を回さなくていい」

 じゃあ、そうしようかな。ロコンは……気絶したみたいだ。でも、まだ息はあるのが分かる。
受けたのは、鋭い刃物みたいだ。切られ具合からして、普通のナイフとかそういうのではないみたい。もっと長さのあるものだ。
どれくらい血が出てるか分からないけど、マジで体が動かせない。あまりこの子に覆いかぶさるようになってるこの状況を長引かせたくないんだけどな。

「ピカ!? ピカァ!」
「フラシィ? ダメだ、今ピカに触るのは危険だ」
「お待たせ! すぐに手当てするわ!」
「ぐすっ、病院にも電話したから、お医者さんもすぐに来るよぉ。ピカァ……」
「大丈夫だから泣くな、フラシィ。絶対に、大丈夫だから……」

 とかなんとか言って、バスターの声も震えてるじゃないか。僕だってまだ死ぬ気は無いよ。
ぐぅ、がぁぁぁぁぁ!? き、傷薬が壊滅的に痛い! し、死んじゃう、マジで死んじゃうぅ!
く、食いしばれ僕! 呻き声なんて出して不安を余計助長させても意味が無いぞ!
こ、これならロコンみたいに気絶してる状態で手当てしてもらった方が幸せだったかも……あぁ、なまじ意識を保ってる自分が憎い。

「……今出来る限界はここまでね。もう、お医者は何してるのよ!」
「はやぐ、はやぐきでぇ……」
「くそ……くそ!」
「み、皆とりあえず落ち着く。僕も死にゃしないから。っていうか、怪我してる僕にこんな事言わせないでよ」

 もうなんか痛みで覚醒し過ぎてすんごく冷静だよ。生まれてこのかた最大のダメージかもしんない。
つらつら喋ってるけどマジできついよ。本当、追撃とかされてたら僕もロコンも助からなかったレベルだよ。
ん、バタバタ走ってくる足音が聞こえてくる。救いの手が駆けつけてくれたかな?

「う、動かせない重傷者は何処ですかぁ!? って、うわぁ!」
「先生ですか!? 早く、早くこの子達診てあげて下さい!」
「酷い怪我だ……意識はあるんですか!?」
「うぃーす」
「うひゃぁ!?」
「僕は意識あり、ロコンも気は失ってるけど小さく呼吸はしてるよ」

 状況を教えると、お医者さんも分かってくれたのか処置を始めてくれた。……これ、大きな傷として残るかなぁ? 残らないといいんだけど……。

「……うん、かなり派手な傷だけど、ピカチュウ君のもロコンちゃんのもなんとかなりそうだ」
「それなら、覚悟はしてるんで早いとこお願いします」
「あぁ、かなり痛いだろうけど、我慢してね」

 ひぎぃぃぃ! 覚悟はしてたけどやっぱり痛い! ってか縫われてる!? ここでそういうのはありなんですか!?
で、でもその方が傷口が開く心配は減るか……いだだだだ! 縫われる程の傷とは、きっついなぁもう。
ふぅ……終わったかな? なんか、体拭かれてるみたいだし、後は包帯巻かれて終わりかな?

「これで安静にしてれば、傷口はよくなっていくよ。ただ……傷跡は残っちゃうかもしれないけど」
「つつつ……でも、動けるようになったから、贅沢は言えないかなぁ」

 ん? バスターと母さんが青ざめて、フラシィが泡吹いて倒れてる。あぁ、僕が縫われてるのはかなりショッキング映像だったかもだね。
おや、お医者さんはエルレイドさんだったか。……流石にこのエルレイドさんがさっきの襲撃犯って訳じゃ無さそうだね。声が若過ぎる。

「それとロコンちゃんは……君より傷口は浅いし、縫わなくても平気かな」
「それは何より。母さ~ん、正気に戻って戻って。先生に払う代金用意しなきゃ」
「はっ、そうだったわね。い、行ってくるわ」

 ぐるぐるっと包帯を巻いてもらって、僕への治療は終わりかな。まだ非常に痛むけど、これ以上は我慢するしかないか。

「ピカ、大丈夫か? まだ立たない方が……」
「後でどうせ母さんに強制的におぶられる事になるだろうし、動かなければ問題無いよ」
「……すまない、俺達が奴を拘束出来ていれば、そんな怪我させずに済んだんだが……」
「気にしなくていいよ。多分だけど、相手はこういうのをやるプロだったみたいだし、僕もちょっと油断してたからね」
「よし、この子もこれで大丈夫。しかし……一体何があったんだい? こんな時間に。少し書類を纏める為に院に残ってて来れたから良かったけど、君なんかはそれなりに危険な傷だったよ」
「僕にもさっぱりで。突然悲鳴が聞こえたと思ったら、この子が襲われてたんです」

 まだ目は覚ましそうにないかなぁ……年は僕らと同じくらいに見えるし、ご両親が心配してると思うんだけど。
……あれ? っていうかこの子、さっきスーパーでレジ打ってた子じゃないか。だからこんな暗くなってから外に居たのか……。
まずはこの子から話を聞かないと……って、おぉ!? 持ち上げられる!?

「はい、あんたはここ。すいません先生、こんな夜分に……」
「いえ、処置が早く出来てよかったですよ。一応この化膿止めを渡しておきますんで、食後にそのピカチュウ君とロコンちゃんに飲ませてあげて下さい」
「分かりました。あ、お代は幾らになりますか?」
「すいません、では、5000ポケになります」
「はい。あ、その子の分も含まれます? 違うなら、同額で?」
「……すいません、10000ポケでお願いします」

 まぁ、ここは払うしかないよね、この子が何処の子かも分からないんだし。
母さんが手渡すと、確認して持ってきてた鞄に仕舞った。まぁ、その先どうするかは僕らの領分じゃないから気にしないけど。
それじゃ先生を見送って……。倒れたフラシィはバスターが起こしてくれたみたいだし、家に戻ろうか。
まぁ、これだけやればご近所さんにも音だだ漏れだろうね。顔を出した皆に母さん達が頭だけ下げて撤退だ。ロコンはバスターに任せたよ。
……外に居た時間は大体一時間半くらいか。治療時間も合わせたら、このくらいの時間で済んでよかったかもね。

「もう大丈夫だよ、母さん。下ろして」
「駄目! あんたはしばらくそのままよ! もー、牝の子助けるにしても無茶して……」
「すっごく痛そうだったよ? フランマさんの言う通り、しばらくはフランマさんの背中に居なよぉ」

 ふぅ、無茶したのは確かだし、しばらくは大人しく皆の言う事聞こうか。自分で動くのも結構きついし。

「それで、問題はこの子か」
「うんと、名前さえ分かれば僕の検索である程度は分かると思うけど……」
「荷物も何も無し、当事者は気絶中となると、回復を待つしかないか」
「とにかく、皆疲れたし少し休みましょう。あ、ピカが飲み物とかお菓子とか買ってきてたわよね」
「うん。冷蔵庫の中だよ」
「じゃ、出してくるからそれで休憩しましょ」

 うーん、やっぱり情けない。動くなとは言われたけど、背中にへばりついたままっていうのは残念だよねぇ。
母さんの頭越しに何をしてるのかは見えるな。僕が幾ら抵抗してもどうせ縛り付けてでも下ろそうとしないだろうから、しばらくはこうやって色々見ようか。
いや、何も買ったの全部出さなくても……どっちでもいいか。なんか僕も喉渇いたし、後で貰お。……血、流したからかなぁ?

「はい、遠慮しないで飲んだり食べたりしてね」
「わーい」
「すいません、頂きます」
「母さん、僕にも飲み物頂戴」
「分かってるってば」

 コップに注がれたジュースを受け取って、軽く体を浮かせて飲む。零せないから慎重にね。

「それにしても……あいつ、何者だったのかしら?」
「ピカ、さっき奴はプロだって言ってたな? その根拠は?」
「ん? 大した事じゃないよ。バスター達が向かっていった時、適当にあしらってすぐにその子を狙ってきたでしょ? 多分、その子に危害を加えるか、もしかしたら……っていうのが目的だって考えると、あの場でそんな判断をするには場数を踏んでないと出来ないと思うんだよね。だって、下手をしたら後ろからバスター達にばっさり、でしょ?」
「なるほど……そう考えると、その子に狙われる何らかの要因があるって事になるな」
「その辺、ちゃんと聞かないとね。関わった以上、僕達も狙われる可能性があるし」
「えぇ!? どうしてぇ!?」
「相手がプロだとしたら、また邪魔をされる可能性を先に排除しようとする筈でしょ? 向こうは僕達の顔をしっかり見てて、こっちは殆ど情報ゼロ。今僕達はかなり不利な状況って訳」

 バスターは難しい顔してるし、フラシィは青ざめて震えてる。僕もちょっと配慮して言った方が良かったかな?

「上等じゃない。私の息子に手を出したこと、死ぬほど後悔させてやるわ」
「ちょちょ、やる気になるのはいいけど炎出さないでよ?」
「おっとと、大丈夫大丈夫。……でも、そうすると今も危険かしら?」
「それはちょっと考え難いかな。さっきあれだけ騒ぎになったし、わざわざローブなんて被ってたのは姿を見せたくなかったからでしょ? 目立つ可能性のある今、また襲ってくるのは愚策だろうしね」
「ん……」

 おや、眠り姫のお目覚めかな? 僕もまだ痛むって事はこの子も痛いだろうし、無理に色々は聞けないね。

「うっ、痛……」
「大丈夫? 手当はしてもらったけど、結構切られてたからまだ動かない方がいいよ」
「! あの……ここは?」
「ここは私達の家。私は、フランマ・フレイボルト。安心して、あいつは逃げていっちゃったから」
「そ、そうだあのピカチュウの子は!? 確か、私を庇って……」
「背中がばっさりだよ。ま、僕が勝手にやったことだから気にしないで」

 僕の声の出処が分かったからか、ロコンが僕の方を向いた。母さんの頭越しでごめんだけど。

「僕はピカ。あっちは僕の友達で……」
「バスター・ゲイルスノーだ」
「えと、フラシィ・サンドラインです」
「……ミセル・トレアー……です。ご迷惑をお掛けして、すいませんでした」

 あらら、名乗っただけで出ていこうとしちゃうんだ。まぁ、無理だろうけどね。

「うっ……」
「あら、ダメよ。えっと、ミセルちゃんね。まだ動けないだろうから、大人しく休んでいって」
「そんな、これ以上迷惑は……」
「ならせめて、ご両親が来るまでは休んだ方がいい。連絡先を聞けば、こちらから電話を掛けれるしな」

 ……ん? バスターが言った事に対して明らかに表情が曇ったな? 何かあるのかな?
予想を立てると……まぁ両親と仲が良くないか、居ないか……かな。
僕や母さんみたいに親が居ない子っていうのも割と居たりするんだよね。事情は色々でさ。

「……とりあえず、今外に出るのは危険かな。またあいつが襲ってくる可能性もあるし、そうじゃなくても怪我してるんだしさ」
「でも……」
「ま、同じ奴に切られた者同士、仲良くしようよ」

 母さんから降りて、すっとミセルちゃんに手を伸ばす。おや、流石に母さんも空気読んでくれたかな。
包帯に巻かれてる僕の姿を見て、なんだか泣きそうになっちゃってるな。うーん、逆効果?

「うん……それと、ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ。それに、珍しくカッコつけたんだからありがとうって言われた方が嬉しいかな」
「う、うん、ありがとう」

 前足を出して、握手。よかった、良い子そうじゃないか。

「……はぁ、この社交性をいかんなく発揮すれば、牝の子にもモテるでしょうに……なーんでひねくれちゃったのかしら」
「あのね……そういう事当事者である僕の前で言う? 普通」
「でも確かに勿体無いよな」
「だよね。でも、いつものピカも僕は好きだよ」
「うんうん、フラシィは分かってるね。じゃあミセルちゃん、お菓子とかもあるし、それ食べてまずは落ち着こうよ」
「いい……かな」
「もちろん!」

 ふぅ、帰るのは踏み止まってくれたみたいだね。これで帰られたら、多分明日のニュースが賑わう事になってたろうな。
多少まだ遠慮がちだけど、テーブルについてくれた。うっ、歩くと痛みが……これは本格的にしばらく無理出来そうにないなぁ。
うちのテーブルは母さんのガラス細工の依頼を受ける場にもなってるから、無駄に六匹掛けが出来る大きいのなんだよ。んじゃま、とりあえず各々に座ってと。

「はい、ミセルちゃん。大変だったわね」
「いえ……でも、本当に助かりました」
「そういえば、ミセルちゃんって荷物とか持ってなかったの? あそこには手ぶらで居たけど」
「あ……お店から出た時に襲われて、落としてそのまま……」
「あら、大変じゃない。お店って何処?」
「ダルマヤって言うスーパーなんです……どうしよう……」
「ピカ、そのスーパーって、さっき俺達が行ったところか?」
「その通り。……もしかしたら、今ならまだ見つけられるかも」

 家から出たところにあった血痕、それがミセルちゃんのものだって事は分かってるから、それを遡ればもしかしてって感じかな。

「なるほど……それなら俺が見てこよう」
「ちょっと待って。もう子供が出歩いていい時間じゃないし、私が行ってくるわ」
「えぇ、フランマさんだけで行くの? あ、危なくないかなぁ?」
「んー、それなら皆で行ってきてよ。あ、なんなら僕行こうか?」
「あんたは怪我してるんだから大人しくしてなさいってば。でも大丈夫? そうなると、ピカとミセルちゃんだけになるけど」
「うん、皆が行ったら家に鍵掛けるから、母さんは家の鍵持って行ってよ。それなら大丈夫でしょ」

 どうやら皆もそれで納得してくれたみたいかな。用心するに越した事は無いし、流石に鍵までした家に侵入してくる事は無いでしょ。

「それならちょっと急ぎ目で行ってこようかしらね。あ、ミセルちゃん、荷物ってどんなのかしら?」
「肩掛けのバッグです。ただ……肩掛けの紐は切れて、血が付いてると思います……」
「そ、そうね。じゃあ行ってくるから、ピカ、ミセルちゃんの事お願いね」
「はいはい了解」

 母さんが鍵を持って、バスター達と一緒に出掛けた。んー、もう警察が動いてるかもしれないな。ミセルちゃんの荷物、無事に見つかってくれるといいけど。
今見つからなかったら多分、事件性があるとかで警察に押収されるでしょ。だから暗い内に見つけないとならないんだよね。

「んじゃ、僕達はのんびりしようか」
「えと、いいの? 助けてはもらったけど、私……」
「気にしない気にしない。誰だって最初は初めましてからなんだからさ、僕達もそういう事ってことで」
「……あり、がとう」

 母さんが渡してたコップにジュースを注いであげると、やっと笑ってくれたよ。よかった。
しかし、切り出し方が難しいなぁ……聞きたい事はあるけど、傷口に塩を塗るようなことはしたくないしねぇ。

「ピカ君……だったよね? 怪我は、平気?」
「ん? あぁこれ? ちょっと大げさかなとも思うけど、さっき僕の怪我見てフラシィが気を失っちゃってさ。あまり見せるものじゃ無さそうだからこうしてもらっただけだよ」

 嘘ばっか。縫われる程の怪我がそんなものな訳無いでしょ。でも、ミセルちゃんは僕が縫われてるのを見てないから、こう言っておけばちょっとは気も楽でしょ。

「……本当にごめんなさい。私を庇った所為で」
「さっきも言ったけど、あれは僕がやっただけ。気にしないで。でも、代わりって言うと変だけど、話してくれるなら……ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「うん、私の話せる事なら」
「あの襲われた奴に見覚えとか何かある? どうも、君を狙ってきたのは確かそうなんだけど」

 首は……横に振られたか。なら狙われたのは今日が始めてってことね。ならあいつの事を聞いても何も分からないだろうな。

「どうして、私を……」
「うーん、考えられるのは、君を襲うように誰かに依頼されたってパターンかな。でも、それにはそれ相応の理由が無いとならないんだけど」
「理由……」
「思いつく事、ある?」

 考え込んだね。これ以上はダメっぽいか。
あまり立ち入った事までは聞けないけど、思いつくことがあるなら出来れば聞いておきたい。あいつをどうにか出来なくても、そっちを押さえるって事が可能になるからさ。

「思いつく事が無ければ、無理に答えなくていいよ。今ある情報でもなんとか出来ない訳じゃないし」
「なんとかって?」
「今日襲ってきた奴、多分君の暮らしてるところも知ってるよ。働いてるところに待ち伏せてたのがその証拠。もし君が独りになるような事があれば、今度は失敗しないように確実に追い詰めてくる」
「そんな……」

 この反応……もしかして、やっぱりかな。

「……ミセルちゃん、君は……両親の方と一緒に暮らしてないんじゃない?」
「え……」
「さっき僕が『君の暮らしてるところ』って言ったのに気付いたよね? 相手に知られていたとしても、ご両親が居るなら独りになる心配は無い。でも、君は明らかに恐れてる」
「そ、そんな事……」
「更に言うと、君は怯えてはいるけど、ご両親を心配してるような素振りをしなかった。つまり、君の家にはご両親は居ない……どうかな?」

 ……追い詰めるつもりは無かったんだけど、ミセルちゃんの顔は暗く俯いちゃった。はぁ、図星だったみたいだな。

「ごめん、ちょっと言い過ぎたよ。いけないな、こんな事言うつもりはなかったんだけど」
「ううん……ピカ君の言った事、合ってるよ。私、お母さん達と一緒には暮らしてない」
「そう、なんだ」
「ずっと、おばあちゃんと一緒に暮らしててね、そんなに大きくないアパートに暮らしてるんだ」

 どうやら、ご両親は存命みたいだね。別居するようになった経緯は……流石に聞けないか。

「でも……おばあちゃん、二週間前に……」
「そうだったんだ……あれ? スーパーで働いてるのって、二週間前からって事になるの?」
「ううん、学校に通うようになってから、あのスーパーでは働かせてもらってるの。自分で使う分のお金は、おばあちゃんに迷惑かけたくなかったから」

 なるほどね……つまり、ご両親から特にそういう費用とかは支払われずに、そのお祖母さんがミセルちゃんの面倒を見ていたって事か。それも酷い話だな。

「でもなるほどね。あれだけ上手くレジを打てるのに、二週間しか働いてないんじゃ変だと思ったんだよ」
「え? ピカ君、私の働いてるところ、見たの?」
「あれ、気付かなかった? 今日の夕方に買い物に行って、目の前でレジ打ってもらったんだけどな」
「そうだったの!? ごめん、全然気付かなかったよ……」

 まぁ、働いてたらいちいちお客の一匹ずつを覚えられる事は無いか。地味にショック。

「でも凄いな。僕と変わらないくらいの年だと思うけど、もう働いてるんだ。学校にも通ってるんだよね?」
「うん、ムーラン学校に……」
「え? 同じ学校? って、この辺で一番近い学校ってあそこだけど」
「そうなの? 私、四年なんだけど……」
「あらー学年も一緒。ならクラスが遠いのかな?」
「ピカ君も四年なの? ……さっき話してくれた時の様子だと、もっと年上だと思っちゃった」

 うん、良い感じに空気を変えれたかな? 立ち入った話を聞くのは、今はこんなところでいいでしょ。
それからは、学校の話なんかをちらほらと。さっきのバスター達なんかが僕と同じクラスだ、とかをね。
話しながらお菓子をつまんで、母さん達が帰ってくるのを待つ。少しは打ち解けてきてくれてる感じかな?
っと、玄関の鍵が開けられる音がした。帰ってきたみたいだけど、首尾はどうかな?

「ただいまー」
「お帰……あれ? フラシィだけ?」
「うん。フランマさんとバスター君は、ちょっと……」
「何かあったの?」
「ピカ、表をそこの窓からそ~っと覗いてみて」

 促された通りに覗いてみようか。ま、大体想像は出来るけど。
……うっひゃー、警察のバッジ付けたポケモンがうじゃうじゃ居るよ。どれだけ総動員してるんだか。
あ、母さんとバスターも居る。って事は、帰りか出てすぐにあれに捕まったってことね。うわ、母さんもバスターも鬱陶しそうな顔してる。多分、捕まったのは出てすぐだな。

「って感じなの」
「なるほどね。で、ミセルちゃんの荷物は?」
「うん! 見つけてきたよ!」

 肩紐の切れた血の付いたバッグ……どうやらそれらしいね。

「ミセルちゃん、これ?」
「あ、私のバッグ! よかった……」
「お手柄だよフラシィ。一匹で探したんでしょ? よく見つけられたね」
「えへへ、まだ警察さんはこの辺りの調査しかしてなかったみたいだから、急いで行ったんだー。帰ってくる時に見られそうになっちゃって危なかったよぉ」

 ミセルちゃんに手渡すと、早速中身を確認し始めた。無くなってる物とか無いといいんだけど……。
とりあえずミセルちゃんが確認してる間にフラシィに飲み物を出す。と言っても、使ってたコップに注ぐだけだけどさ。

「無くなってる物、無いみたい」
「よかった。今日はもう出歩けそうに無いし、ミセルちゃんも泊まっていきなよ」
「え? いいの? ミセルちゃんのお父さんとかお母さんとか、心配してるんじゃないかなぁ?」
「それなら大丈夫。えっと、フラシィ君、でいいんだよね? ピカ君から聞いたんだけど、同い年なんだね。よかったら、お話しない?」
「えぇ!? ミセルちゃんも同い年なの!? うん! お話しよ~!」

 荷物も無事見つかって、ミセルちゃんも元気になったみたい。後は母さん達が帰ってくるのを待つだけ……って言うか家の前に居るんだけどさ。
あの分だとまだまだ掛かりそうだし、適当に時間潰ししながら待つとしようか。



 ん、ふぅ……朝、か。時間は八時、結局日付変わってから寝たし、こんなもんかもね。
ベッドから体を起こして……つぅっ!? そうだった、僕今怪我してたんだっけ。あ、シーツにもちょっと染み出来てる。まぁ、どれだけ良い傷薬なりなんなり使われても、そんなにすぐに治る訳無いか。
シーツは洗う為に外して、包帯は後で母さんに新しいの巻いてもらおう。
バスターもフラシィも敷かれた布団でまだ寝てるし、もうちょっと寝かしておこう。バスターなんか、帰って来た時大分くたびれてたもん。
そっと部屋を出て居間に向かおう。多分母さんならもう起きてる筈だ。
ん、やっぱり良い香りする。母さんは起きてるみたいだね。

「お早う母さん」
「ふぁぁ……あ、お早うピカ。朝ご飯ならもうちょっと待ってて、ついさっき起きたばっかりなのよ」
「仕方ないよ、大分警察にねっちり話聞かれたんでしょ?」
「本当にしつこくて嫌になったわー。どんな奴が襲ってきたのなんか、ローブ着てて分からないって言ってもちょっとでも何か分からないかーってしつこくてしつこくて」
「ま、折角の汚名返上のチャンスなんだから張り切ってるんでしょ。あ、それ作り終わってからでいいからさ、皆が起きてくる前に包帯変えてくれない?」
「あ、そうね。ついでに体も拭いてあげるわ」

 お風呂はまだ駄目だろうし、仕方ないか。自分でやるって言っても無理やりやられるだろうし。
朝ご飯もまだそうだ、先に朝の日課を大体済まそうか。顔洗ったり歯ぁ磨いたりね。
ついでにシーツを洗濯物入れの篭の中に入れる。さて、今日は何をしようかな?
まずやる事は……ミセルちゃんの家に行ってみようか。もしかしたら、狙われた理由に繋がるものがあるかもしれないし。
それからは、まぁその後決めればいいか。

「ふぅ、さっぱりさっぱりっと」
「あ……お早う、ピカ君」
「ん? あぁミセルちゃん。お早う」

 僕の後一番乗りはミセルちゃんだったか。で、顔洗いに来たってところかな。

「もう僕は済んだから、どうぞ」
「ありがとう」

 と言っても、自分の家じゃないんだから顔を洗うくらいかな、やる事は。

「あ、起きてきたんなら丁度いいや。ミセルちゃんも後で母さんに包帯変えてもらいなよ」
「そう……だね」

 そっと包帯の上から傷口に触れてる……夢ならよかったのにって感じかな。

「私……本当に危なかったんだよね。もしピカ君達が助けに来てくれてなかったら……」
「どうなってたかは、ちょっと分からないかな。でも、今こうしてここに居る。それが事実だよ」
「うん、そうだね」

 うーん、なんとかしてあげたいよね、やっぱり。ここで匿うにしても限界はあるし、大本を何とかするしかないか……。
顔を洗い出したミセルちゃんの邪魔をしても悪いし、一足先に僕は母さんのところに行こっと。
戻ってきたら、テーブルの上には木の実と野菜の炒め物とか、サラダなんかが並んでた。朝ご飯には丁度良いかな?

「来たわね。ほらほら、後ろ向きなさーい」
「はいはい」

 もう母さんの準備は万端。傷薬と包帯以外にもどう考えても必要無いと思われる薬類が並んでるのには触れないでおこう。
スルスルと包帯が解けていって、多分母さんの前には僕の背中の怪我が顕になったところかな。

「……改めて見ると、思ってたより深く切られたみたいね。もう少し深ければ致命傷よ……」
「ある意味、相手との間合いが縮まったのが幸いしたかも。なんか、刃物で撫でられたような感じで切られたし、もうちょっと間合いが開いてたらもっとスパッと切られてたっぽいよ」
「あんた、客観的に何恐ろしい事言ってるのよ。ピカに居なくなられたら、私……」
「ちょちょ、急にしおらしくならないでよ。僕だってまだまだ死にたくないし、その為に分析してるだけなんだからさ」

 らしくない事言われたら、変に気を使っちゃうじゃん。止めてよね、もう。

「って言うか、あんた刃物なんて受けたことあるの?」
「受けた事は無いけど、ナイフとかの切先で切られたって言うより、先の曲がった刃物で撫で切られたような感じ。傷は一つだから……鎌って言った方が正しいかな」
「鎌、ねぇ? この傷、園芸用の鎌なんかではちょっと出来そうに無いわよ? そんな大きな物を持ってるような感じも無かったし……」
「そ、突き詰めれば、『腕そのものがそんな風になってるポケモン』に襲われたってわけ。かなり絞り込めると思わない?」
「あんたって子はなんでそういう方面にはそんなに頭の回転早いのよ。でもなるほどね、そんなポケモン、そうそうは居ないわ」

 それ以上は僕にも分からないけどね。だから後は調べてみないとなんとも言えないかな。
あ、ミセルちゃんも来た。話してる間に来なくて良かった、また気を落とされたら辛いもんね。

「あら、ミセルちゃんも来たわね。それじゃあ包帯変えちゃうから、ピカは後ろでも向いてなさい」
「はいはい」
「すいません、お願いします」

 見られてて良い気はしないだろうからねミセルちゃんも。僕だってそれくらい弁えてるよ。
包帯を巻き直してもらった今の感じ、痛みもあれば体のだるさもあるから僕だけで動くのは不可能。今の状態で戦闘になったら間違いなくやられるし、良くて相打ちくらいだろうね。
だから皆に事情を説明して一緒に行動してもらうしかない。休みは今日と明日あるけど、なるべくその二日で決着をつけないと。

「はい、出来上がり」
「ありがとうございます」
「もういい? 壁見てるのも退屈なんだけど」
「いいわよ。そんな事言って、ミセルちゃんの着替え見たかったの?」
「え!?」
「包帯を着替えって言うとはね……んな訳無いでしょ」

 母さんに呆れた視線を送ってると、ミセルちゃんがこっちを向いてるのに気付いた。
笑い掛けるとなんかぴくっと動いて別な方向いちゃった。あれ、なんか不快にさせたかな?

「ふぁ……なんだ、俺達が最後だったのか」
「むにゅ……皆、おはよぅ」
「まだバスターもフラシィも眠そうだね。顔洗ってきなよ、それから朝ご飯だよ」
「あぁ、そうする」

 フラシィを促すようにしてバスターは洗面所の方へ行った。
皆揃ったし、朝ご飯食べながら今日やる事を説明しようか。バスター達はいいとして、ミセルちゃんがどれだけ協力してくれるかが鍵かな。

「母さん、ガラス像はもう納品したんでしょ?」
「えぇ、昨日あんた達が帰ってくるちょっと前にね」
「なら今日の仕事ってある? 無いなら協力してほしいんだけど」
「協力? まぁ、なんの事かは大体分かるし、出来なくても無理してあんた達だけで動きそうだからね。今日明日は付き合ってあげるわ」
「ピカ君、怪我をしてるのに何かするつもりなの? 無理しない方が……」
「これはこの二日の休みの間に決着させたいからね。詳しくは、後でご飯食べた後にするよ」

 このまま後手に回ってたらまた誰かが犠牲になるかもしれない。そんなのは御免だから、ちょっと無茶でも頑張らないとね。



 現在、僕達はミセルちゃんの案内でミセルちゃんが暮らしてるアパートを目指してるところ。
因みに僕が普通に歩いて、ミセルちゃんは母さんの背中です。僕もあまりよろしい状態じゃないけど、そこは牝の子に無理させる訳にはいかないもんね。

「ピカ、疲れたらすぐに言うのよ?」
「心配しなくても大丈夫だって。ただ歩くくらいなら問題無いよ」
「だが、ミセルの家に行ってどうするんだ? 何か思うことでもあるのか?」
「ミセルちゃんは、襲われた理由に何も思いつく事は無いんだよねぇ?」
「うん、特には何も……」

 まぁ、ミセルちゃん自身にはあまり思いつく事は無いかもね。僕が知りたいのは、一緒に暮らしてたって言うお祖母さんの事だから。
普通に考えて、命を狙われるような事を同い年くらいの子がしてるとは思えない。なら狙われる理由は何処にあるか? ……当事者の知らないところにあるって仮定するのが妥当でしょ。
それにしても、町の中に警察のポケモンが多いなぁ。昨日事件が起きたばかりだから分かるけど、僕やミセルちゃんに気付かれると面倒だな。移動はなるべく早くしよう。

「あ、そこを曲がった先です」
「ふむ、結構遠かったかな。僕達の家の方に逃げてきたのは偶然?」
「うん、とにかく逃げなきゃと思ってたから」
「その辺りは運が良かったってところだな。もし他の場所に出ていたら、俺達ではどうにも出来ていなかったし」

 まったくだね。っと、確かにアパートがある。へぇ、まだ新しいのか、随分綺麗な建物だな。白い壁に二階建てか。
どうやらミセルちゃんの部屋は二階にあるらしいよ。鍵は昨日回収出来たカバンの中にあるみたいだから入れないって心配は無いね。
203号室、ここか。表札の名前はアリエム・トレアー? あぁ、これがミセルちゃんのお祖母さんの名前か。この部屋を借りてる名義はお祖母さんで間違いないか。
ミセルちゃんから母さんに鍵が手渡されて、入口のドアが開かれる。……中の様子は荒らされたりしてないみたい。あいつはここに入ってないみたいだ。

「一応聞くけど、部屋の中に何か変わった様子は無い? ミセルちゃん」
「えっと……うん、見えてるところでは変わりないみたい」
「それじゃ、お邪魔させてもらおうかしら」
「あ、はい。遠慮せずに皆どうぞ」
「じゃあ、失礼」
「お邪魔しまーす」

 ……ふむ、中も特に荒らされた様子は無いかな。部屋も綺麗だし、異常があるようには見えない。
家具なんかは全部四足ポケモン用のだな。ミセルちゃんのお祖母さんも四足のポケモンなのかな?

「へぇ、部屋の中も綺麗だし、ここで何かあったって事は無いみたいね」
「一応心配はしてたけど、そこまで荒らされてるとは思ってなかったからね」
「そうなのか? なら、なんでここに来たんだ?」
「ミセルちゃんのお祖母さんがどんなポケモンなのか知るため、かな」
「お祖母ちゃんが?」
「うん。ミセルちゃん、お祖母さんの部屋とかってある?」
「あるけど……お祖母ちゃんが居なくなってからは入ってないんだ。ちょっと、ね」

 それは、思い出したら辛いよね。でも今用があるのはそこなんだ。

「ごめん、そこに入っていいかな?」
「……ピカ、あんた一体何を調べたいのよ?」
「母さん、相手を襲うプロなんかを雇ってまで、ミセルちゃんを襲うような理由に心当たりってある?」
「え? うーん……ちょっと思いつかないわね」
「ミセルちゃん、お祖母さんが亡くなるまで、昨日みたいに襲われるような事はあった?」
「ううん、そんな事無かったよ」
「ちょっと待て、まさかピカ……」
「あまり考えたくは無いけどね。でも、それを確認しなきゃならないんだよ、今の僕達は」

 フラシィはまだよく分かってないみたいだけど、母さんもなんとなく察してくれたみたい。
不安そうな顔をミセルちゃんにあまりさせたくないんだけどね。でも、ある程度僕の中で固まりだしてる答えはあるんだ。
ミセルちゃんが何も言わずに一つの扉の方を指してくれた。そこ、なんだね。
扉を開けると、なるほど、一匹で使うには丁度良い部屋だね。ベッドと筆記用の机が置かれてるよ。
それじゃちょっと失礼してと。あまり色々探りたくはないんだけどなぁ。

「ミセルちゃん、弄っちゃいけない物があったら一声掛けて。僕もそこまで調べようとはしないから」
「ううん、ピカ君に任せる。私は……触れそうにないから」

 ……ミセルちゃんは、皆に任せよう。部屋の捜索は僕に任せるように言って、皆にはリビングで待っててもらう事にしたよ。
ん、ベッドのところに写真立てがある。これは……キュウコンとロコンだ。ロコンはミセルちゃんで間違いなさそうだな。なら横のキュウコンは……見た感じの年齢からして、アリエムさんで間違い無さそうだな。
ニ匹とも、笑ってる……きっと、アリエムさんもミセルちゃんと暮らしてて幸せだったんだろうな。
これは戻しておこう。アリエムさん、ミセルちゃんは……必ず助けてみせるよ。
ベッドにも変わった様子は無いし、次は机か。アリエムさんが亡くなった理由は聞いてないけど、ミセルちゃんの話から高齢だったのは分かる。なら、何かしらの準備はしてた筈だ。残していくことになるミセルちゃんの為に。
机の引き出しは、開いた。これで鍵でも掛かってたらどうしようかと思ったよ。

「一段目、外れ。二段目にも……目ぼしいものは無し。三段目……っと?」

 あった。やっぱり、アリエムさんは……。
ミセルへって書かれてる封筒。封はされてないみたいだ。申し訳ないけど、少し先に確認させてもらうよ。
中身は、手紙だ。……なるほどね。次の行き先は、フラシィの力を借りれば特定出来そうだ。
でもその前に、ミセルちゃんにこの手紙を渡そう。これは、アリエムさんからミセルちゃんへの、大切なメッセージだ。
部屋から出ると、待ってた皆の視線が僕に集まる。努めて普段と変わらないようにはしてるけど、内心結構辛いかなぁ。

「ピカ、何かあったの?」
「まぁ、ね。母さん、これを」
「はいはい。何これ封筒?」
「! それ、お祖母ちゃんの字……」
「中にあるのは、手紙かしら?」
「読んであげて。現状、関わってる皆が知っておいた方がいいと思うから」

 母さんが手紙を取り出す。先に読んでる僕は内容を覚えてるよ。とっても素敵で……寂しくなる、アリエムさんの最後の言葉……。

――ごめんなさい、ミセル。あなたがこれを読んでる時、お祖母ちゃんはもうあなたの傍に居ないわね。
本当はもっとミセルが大きくなって、素敵なキュウコンになるまで一緒に居てあげたかった。それから先も、ずっと。
でも、もうお祖母ちゃんに残された時間は無くなってしまうみたい。
あなたと一緒に暮らせた日々、とても幸せだった。大切だったわ。
あなたにしてあげられた事は多くなかったけど、最後に、あなたに明日を遺していきます。
この手紙を読んだら、ネイティオのハリエントさんというポケモンのところに行きなさい。お祖母ちゃんの友達で、あなたのこれからの事をお願いしてあるわ。
あなたをお父さんの所為で悲しい目に合わせてしまった私を許してとは言わないわ。でも、最後にこれだけは言わせて頂戴ね。
幸せになって、ミセル。それが、お祖母ちゃんの幸せ。最後のお願い。
あなたなら、これから素敵なお友達とも出会える。その出会いを大切にして。
いつでも、お祖母ちゃんはあなたの事を信じてるわ。……ありがとう。

 母さんが手紙を読み終わると、この場を静寂が包んだ。流石に声が出ないよね。

「お、祖母、ちゃん……」
「遺言、か」
「ピカ……あんたの見つけたかったのはこれなの?」
「うん、でもまだ足りないんだ。アリエムさんが残したもの、それを見つけないとならない」
「残したもの?」
「手紙にあった、ミセルちゃんの明日。それが何か知ってるのは……」
「ぐすっ、ハリエントさんってネイティオさんだね。すぐに調べるよ」

 助かるよフラシィ。でも、ハリエントってネイティオさんがアリエムさんの友達なら、ここに何かの情報が残ってると思うんだけどな。

「あら? 封筒の中にまだ何かあるわ。これは……名刺?」
「母さん、ちょっと見せて」

 そりゃあ手紙に書くくらいなんだから何かしらの手掛かりがある筈だよね。……弁護士? また凄いのが出たな。

「フラシィ、ハリエント法律事務所って場所を探して。電話じゃなくて、これから直接行くよ」
「え、そういうのって直接行って大丈夫なの?」
「……まさか、盗聴か?」
「可能性としてね。うちの電話使ってもいいけど、戻ってるだけタイムロスでしょ」
「……あった! ここからだと一時間くらい掛かるけど、行けなくはないよ」

 流石フラシィの検索スキル。本当に早くて助かるよ。
フラシィのパソコンには事務所までの地図を出したままにしてもらった。道が分かった方が早いのは確かだし。
後は……。

「行こう、ミセルちゃん。アリエムさんの最後のお願い、絶対に叶えないとね」
「……うん、ピカ君……手伝ってくれる?」
「当然!」
「知ったんだから、最後まで付き合わせてもらおう」
「ここで終わりなんて言ったら、私だけでもミセルちゃんに付き合うところよ」
「ぼ、僕はあんまり手伝えないかもしれないけど、頑張って手伝うよ!」
「皆……ありがとう」

 それには、昨日の夜の悪夢を二度と起こさないようにしないとね。原因を突き止めて、奴を無力化する。どっちも必ずやってみせるさ。
ハリエント法律事務所か……もしかしたら、更に協力者を増やせるかもしれない。仮にそうじゃないにしても、奴は追い詰める。絶対に。



「……父さん? あぁ、今ピカ達と遊んでるんだ。それで、フランマさんもいいって言うから今日も泊まっていきたいんだけど……」

 ちょっと寄り道して、バスターは今おじさん達に事情の説明中。何も言わずに帰らないで協力してもらう訳にはいかないし。
フラシィはちゃっかり二日間遊んでくるって言ってきてたんだってさ。だから連絡しなくて大丈夫だって。

「うん、迷惑は掛けないようにするよ。それじゃ」
「なんだって?」
「たまにはゆっくり友達と遊んで来なさい、との事だ」
「オッケー、それなら……行こうか」
「うわぁ……法律事務所ってこのビル一つ分がそうなの?」
「看板的に、そうらしいわね」
「ここに、お祖母ちゃんのお友達が……」

 ハリエントさん、大分儲かってるみたいだね。アポイント無しで入れるかなぁ?
とにかく行ってみるしかないか。もしアリエムさんの手紙が本当なら、ミセルちゃんと一緒ならなんらかの反応がある筈だ。
メインの入口も自動ドアか。お金掛かってるなぁ。

「いらっしゃいませ、ハリエント法律事務所へようこそ。どういったご用件でしょうか?」

 受付はレディアンね。包帯巻きのピカチュウとロコンが居れば、一瞬表情が変わるのも仕方ないか。

「あー私達は……」
「ハリエントさんに会いに来たんだ。僕達、友達なの」

 いや、全員でキョトンとしないでほしいな。子供らしさってのも、使いようでは十分に役立つのさ。

「えっと、先生に会いに?」
「うん。ミセルが会いに来たよって伝えてくれれば分かると思うんだけどなぁ」
「ミセル? それが君のお名前?」
「ううん、この子。僕はピカって言うの。よろしくね、お兄さん」

 あれ、なんか僕以外の皆が驚いてる。まぁ、牝っぽく見えるけどこのレディアンさん牡だよ。気付いてなかったのか。
って言うかお兄さんって呼ばれた当事者も驚いてるし。何故に?

「よ、よくわかったね、僕が牡だって」
「声が高いからお兄さんよく間違えられるんでしょ。でも、牝のレディアンさんがあまり大きな口を開けて欠伸するかなーって」

 入る前にガラス越しに見えたからね。法律事務所なんてお堅いところに務める牝がそんなデリカシーの無い事するってちょっと思いつかないでしょ。

「み、見てたのね……あ、ミセルが会いに来た、だったね。先生に伝えてみるよ」
「お願いしまーす」

 内線電話か。はー、同じ建物内でもやり取り出来るんだから便利なものだよねぇ。
ん? レディアンさんがミセルの名前を出してからちょっとして慌てだした。何かあったのかな?

「せ、先生が直接会いたいそうだよ……すぐに行くって」
「あらら、わざわざ向こうから来てくれるとは、ちょっと予想外かな」

 ……ん? なんだ?

「ミセルちゃん、下がって」
「え、どうしたのピカ君」
「何か……来る」

 何かの気配が上から降りてくる。まさか、あいつか?
僕の様子を察して母さんとバスターも警戒態勢に入った。ミセルちゃんとフラシィには下がっててもらおう。
……来た。降りてきた。って……あら? あれは?

「ミセルというポケモンは何処かね!?」
「まさか、ハリエントさん?」
「いかにも、私はハリエント・フィーダー。君達は? の前に、ミセルちゃんは!?」
「あ、あの、私です」
「おぉ、君か! ん、その包帯は?」
「……事情は、僕達の素性と一緒に話します。ここで話し始めましょうか?」
「いや、私の部屋へ行こう。どうやら、君達からも話を聞いたほうが良さそうだな」

 ご理解頂けて何よりだよ。そのままハリエントさんが案内してくれるようだから付いていこうか。
おぉ、自動ドアだけじゃなくエレベーターも完備か。さっき外から来たのは相当慌ててたんだろうね。
乗り込んで、最上階までご案なーいってか。ま、どうやら警備のポケモンも居るし、この中に居る分になら安全かな。

「ところで、君達は? 自己紹介くらい今でも聞けるし、聞かせてもらおうか」
「そうですね。僕はピカ・フレイボルト、ミセルちゃんの友達です。ま、昨日からですけど」
「それの親でフランマ・フレイボルトです」
「俺はバスター・ゲイルスノー」
「僕はフラシィ・サンドラインです。ピカと同じで、ミセルちゃんの友達です」
「私は……」
「ミセル・トレアー君だね。アリエムさんから話は聞いてるよ。……アリエムさんの訃報は私も残念だ。辛かったね」

 うん、これで確信出来た。間違い無く、僕達が訪ねてきたハリエントってネイティオさんで間違い無いな。
エレベーターの扉が開いて、そこには部屋が広がった。大きな机なんかはあるけど、かなり必要な物だけを揃えてるって感じかな。
ソファーなんかがあるのは接客用か。そこに座って話をするってことかな。

「では、聞かせてもらおう。まず、ミセル君のその傷は?」
「……昨日の晩、ミセルちゃんは何者かに襲われました。僕達が騒動に気が付いた時には、ミセルちゃんは怪我をした状態だったんです」
「襲われた!? ……まさか、いや、可能性があるとすれば……」

 ハリエントさん、やっぱり思うところはあるみたいだね。だとすれば、あれがあるんだ。必ず。

「襲われたミセルちゃんを僕達が見つけ、なんとかこれ以上の被害を出さないようにする為の手掛かりを求めてここまで来ました」
「私の事はどうやって?」
「……アリエムさんの導き、ですよ」

 ミセルちゃんが持ってた手紙をハリエントさんに渡す。これを見せれば、手紙の答えが分かるね。

「……そうか、アリエムさんはもう一通手紙を残していたのか。ミセル君の為に」
「もう一通? まだ他に?」
「あぁ、生前のアリエムさんから私は二通の手紙を受け取っていたよ。……遺言状として」
「それは今何処に?」
「一通は私が保管しているよ。もう一通は、受け取るべき相手に送った。だが、控えは写している」
「拝見させてください。それが、恐らく今回ミセルちゃんが襲われた原因です」

 頷いて、ハリエントさんは奥にある金庫へ向かっていく。丁重に保存しててくれたんだね。
弁護士と知り合い……どういう経緯かは知らないけど、アリエムさんの交友関係は広そうだよ。なら、それ相応のステータスはあるはずさ。
うわぁ、物々しい茶封筒の中に入れてあるなぁ。受け取って中を見ると、一通は封筒のまま、もう一通はコピーだと思われる手紙が入ってた。どれどれ。

「……やっぱり、そういう事か」
「え、どうしたのピカ?」
「これを見てくれれば分かるよ。ハリエントさん、これが収められてる銀行も分かってるんですよね?」
「もちろんだ。……しかし、君は何者だい? 先ほどからの言動からして、大よそ事態を把握していたようだが……」
「大したもんじゃないですよ。強いて言えば、ミセルちゃんの友達で同級生って事です」
「同級……な!?」

 あ、驚かれた。いやまぁ、ちょっとずれてるかなーとは思うけどね。

「お祖母ちゃんの遺産を全部私に!?」
「っと、そう、それがアリエムさんの望みだよ。すでに遺言として機能するのは確認済みさ」
「もう一通のこれに書かれている事もですか?」
「そう、そちらもだよ」
「自分の息子と、その妻には一切の遺産相続権を与えない……これって、ミセルちゃんの?」
「……お父さんと、お母さんだと思います」
「元々アリエムさんは息子さんと絶縁状態、ミセルちゃんの親権もアリエムさんに譲渡されてるんだ。法的にこの遺言を有効にする事は問題なかったんだよ」

 どうやら、予想以上にミセルちゃんの置かれてる環境って悪かったみたいだね。親権譲渡なんてよっぽどじゃないとされないよ。
でも、これでミセルちゃんが襲われた理由が繋がった。間違いなく、原因はこのアリエムさんの遺産だ。

「だが、これがどうしてミセルが狙われる理由に繋がるんだ?」
「……遺産の相続は、基本的に遺言があればそれが優先的な相続先になる。けど、その遺言を無効にする方法があるんだ」
「ど、どんな?」
「簡単だよ、相続者が居なくなる事。誰も相続出来なくなった遺産は国に納められる事になるけど、別に親族が居ればその親族に遺産は相続される。実の息子なら間違いなく。ですよね、ハリエントさん」

 ハリエントさんが頷く。僕もそこまで詳しくないけど、どうやら合ってたみたいだね。

「なら、ミセルちゃんがもし遺産を相続出来なくなったら……」
「遺産は自動でミセルちゃんのお父さん達の物になるって事」
「そんな、なら……」
「結論は急がないで母さん。今はミセルちゃんが狙われた理由に目星がついただけ、事実は奴を捕まえれば分かるさ」

 こんな話を聞いたら、流石にミセルちゃんも参るよね。今は傍に行って肩を撫でてあげるくらいしか出来ないけど、必ず助けてみせるよ。

「……なるほど、どうやら君達はかなり頼れるようだね。私からも協力をお願いするよ」
「でも、どうするんだ? こっちは奴の居場所どころか、姿すら分からないんだぞ?」
「ミセルちゃん、君のお父さんはキュウコンなんだよね?」
「え、う、うん」
「だとしたら、奴自身に直接ミセルちゃんを狙う理由は無い。でも、あいつは襲ってくる。何かしらの依頼を受けてミセルちゃんを狙ってるのだとしたら、奴はミセルちゃんを狙わなきゃならないって事実から逃げられないんだ」
「で、でもそれでどうするのピカ?」

 相手が向かってくるなら迎撃するのみ。でも、それにはもっと協力者が必要なんだよね。
その問題を解決してくれる要因に、ハリエントさんがなってくれるといいんだけどなぁ。

「ハリエントさん、警察関係者か警備のポケモンに知り合いは居ませんか?」
「ん? ……心当たりはあるが、どうするつもりなんだい?」
「相手がミセルちゃんを狙ってくるなら、こっちからお迎えしようと思うんですよ。最高のもてなしでね」
「そうか、奴を探すんじゃなく、奴の方から出てこさせるのか」
「でも、それじゃあミセルちゃんが危ないんじゃ……」
「だから僕達が居るんでしょ。ミセルちゃんの事は、僕達が守る。何があろうともね」

 僕の一言に母さん達が頷いてくれた。ミセルちゃんの警備は僕達がするから、後は奴を捕まえられる役割が必要だな。

「皆、私……」
「昨日今日の知り合いの僕達をそこまで信じてって言うのは酷かもしれないけど、なんとかしてみせるからさ。……一緒に、戦ってくれる?」

 僕の出した手にミセルちゃんはそっと触れてくれた。……信じてくれるなら、必ずやれるさ。

「そういう事なら、私も惜しまず協力しよう。だが準備の時間は必要だ。そろそろ正午でもある、皆まずは食事を取りながら休むんだ」
「そうですね。どっちみち奴をおびき出せるのは夜になってからだし、その間に色々準備しよう」
「久々に本気出せそうだし、ふっふっふ、首洗って待ってなさいよー。うちの息子と可愛い牝の子を襲った落とし前、きっちりつけさせてやるわ」
「やり過ぎて母さんが逮捕されるっていうのは勘弁してよ?」
「ピカ、僕はあんまり戦えないんだけど……」
「大丈夫、フラシィにも大事な事やってもらうから。後でちゃんと説明するよ」

 とにかく、何か始める前にまずはご飯でも食べようか。ありがたい事に、どうやらハリエントさんが用意してくれるみたい。
大忙しの前の一休み、しっかり休むとしようか。



「ねぇ、ピカ君」
「ん? どうかした?」
「どうして……私の事を助けようとしてくれるの?」
「んー……理由無いとダメかな?」
「だって、痛い思いもしたんだよ? 怖い相手が来るのが分かってるんだよ? それなのに」

 そこまで言ったミセルちゃんの口を軽く指で塞ぐ。確かに散々な目にはあったけど、首を突っ込んだのは僕自身だからね。

「僕自身が助けたいと思ったから助ける。僕の手が届くところで困ってる子が居るんだから、見過ごせない。ただそれだけだよ」

 我ながらキザというかクサい台詞。微妙に安っぽい気もするのは気にしないでおこう。
現在僕達は、僕の家からミセルちゃんの家へ向かう路地を歩いてます。それも、なるべく薄暗いところをね。
まぁ僕達って言っても僕とミセルちゃんだけなんだけど。他の皆は別のところでスタンバイ中さ。
もし、僕達の今日一日の行動が奴に監視されてたとしたら、この作戦に意味は無くなる。でもその心配は無いと思う。
あの時奴に仲間が居るんだったら話は違っただろうけど、今日街中は警察で大いに賑わってた。その中で僕達を尾行したり監視したりすればどうやっても周りの目を引く。
こっちの動きが分からない奴がどうやってミセルちゃんの居る場所を特定するか。……帰ってくる場所に張り込めばいいって事さ。
仮に昼間、僕達がミセルちゃんの家に行ったところを見られていたとしても、そのタイミングで襲われる心配はない。でも、今度は襲われないとならない。だから夜で、僕達二匹で動いてるって訳さ。

「……これで、昨日のポケモンは本当に出てくるの? きっと警戒してると思うんだけど」
「出てこないと困るんだよねぇ。明日に長引いちゃうと色々きついし」

 準備も済んでるし、この準備を明日も出来るかは怪しい。だから決着はなるべく今日済ませたいんだ。
僕だって奴が警戒してるって懸念はしてるよ。でも、奴が仕事をするんなら早く済ませようとする筈なんだ。昨日失敗してる所為でもね。
一度襲われてるってこっちは理解してるんだから、警察なりなんなりに行かれると面倒だって間違いなく思う筈。だから、こうして襲いやすい状況を作ってやれば、餌に食いついてくる。
……現に、僕達を後ろから尾行する奴が現れた。ミセルちゃんはまだ気付いてないかな。なら、もう少しこのまま歩こうか。
僅かにだけど距離を詰めてきてるか。間合いに入ったらすぐに来るだろうな。

「……!」
「振り向かないで。後ろの奴に気取られる」

 さて、どうするか。目的地まではもうちょっとあるんだよなぁ、もう少し距離を稼いでおきたいんだけど。
ある程度まで進めば皆分かるだろうけど、それにもまだ遠いか。
後ろの奴、また少し足を早めたな。足音で分かるよ。
堅い物が地面のアスファルトを掻いてる。ふぅん、足にも爪があるんだ。
そろそろ限界っぽいかな。同じ奴が来たなら、結構スピードもあったと思ったし。

「ミセルちゃん、少し痛むだろうけど我慢出来る?」
「うん、平気」
「よし……行くよ!」

 思い切り地面を蹴って走り出す。うん、やっぱり僕達を狙ってきてたな。後ろの奴も走り出した。
いったぁ……やっぱりまだ走るのはきついな。ミセルちゃんも辛そうにしてるけど走ってるんだ、泣き言は言ってられないか。
ダメだな、いまいち走るスピードが上がらない。歩くのに問題無いからもうちょっといけるかなーと思ってたけど、そこまで回復はしてなかったか。
追いつかれるよね、やっぱり。怪我っていうのは侮り難いものだよ。……この辺りなら、大丈夫かな。

「! ミセルちゃん!」
「え、きゃ!」

 一気に間合いが詰まった? もしかして、高速移動とか使えるのか? 危なかった、ミセルちゃんの居たところに大きめの刃が振り下ろされてる。
ギリギリ僕が体を当ててミセルちゃんを外らせたけど、受けてたら不味かった。

「……後ろからバッサリなんて、勘弁してよね」
「また……邪魔をするか」

 地面に突き立てられた刃を引き抜いて、それは奴が身に付けてるローブの中に仕舞われる。間違いなく昨日の奴と同様のポケモンだ。声が一緒だったし。

「なんでこの子を狙うのさ? この子が何したって言うの?」

 ……無言ね。なら、僕はミセルちゃんを庇うスタンスを取らせてもらうよ。

「答えないならそれでいいよ。ここで大声出すだけだからね」

 ! 昨日はそれで僕達が駆けつける事になったからか、大声って聞いただけで向かってきた。出される前に口封じってところか。
体当たり……で止めるのは今の僕には反動がきついから、ここは電気ショックで応戦だ。
向かってくる相手を牽制するのならこれで十分。倒すんじゃなくて、止めるのが今の僕の目的だからね。

「ちっ……面倒が増える」
「それは、僕も狙うって事? 冗談じゃないね、こんなところで誰かも分からない奴に殺されて堪るもんか」
「なんで……? どうして私がこんな目に遭わなきゃならないの!?」
「恨むのなら、お前に遺産を遺した相手を恨め。俺はそれの一部を報酬に頂く為に動くだけだ」
「遺産? どういう事さ?」

 ローブの下の顔がにやりと笑った。僕達が何も知らないと思わせられたかな。

「お前らのようなガキには分からないだろうな。そのロコンのガキを育てていたキュウコンの婆さん、そいつの資産は莫大だ。それが全てそのガキの物になる。納得出来ない奴が居てもおかしくないだろう」
「……あんたがこの子を狙うのは、その相手から頼まれたから?」
「最期だから教えてやろう。そのロコンを殺そうとしてるのは……」

 馬鹿で助かったよ。それを言わせれば、僕達の勝ちだ。

「お前の親だよ! 自分達に一切の金が入ってこないから、お前を殺して全てを資産を手に入れようとしたんだ!」
「……はっ、興奮してローブが外れてるよ、外道ストライクさん」
「!?」

 何も知らないのを演じるのはここまで。知りたい事はもう聞かせてもらったし、あんたにもう用は無いよ。
いつも適当な僕でも、流石にプッツンきました。よくそんな酷い事を嬉々とした表情で言えるな、下郎が。

「遺産を遺したアリエムさんを恨め? 巫山戯るな! アリエムさんがどんな思いでミセルちゃんに遺産を、明日を残していったと思う!」
「まさか、お前等知って!?」
「あぁ、全部知ってるさ。最後のピース、お前に誰が仕事を依頼したかを知る為に一芝居打たせてもらったけどね」

 まだ進化前の子供だって僕達を侮ったのが全ての間違いだ。今の言葉、はっきりと聞かせてもらったからね。

「依頼を受けた以上、何かしらの契約状は作ってるよね? 後から自分を裏切れないように。それが何処にあるかも言ってもらおうか?」
「……お前等にもう何も話す事は無い。今お前達を殺せば、全て終わるんだからな」
「本当にそう思ってるの? これだけ時間を掛けて? 僕達が何もしてないと思ってるんならとんでもない大馬鹿だね」

 こいつはまだ自分の置かれてる状況に気付いてないみたいだね。もう既に、袋の鼠なんだよ。
路地の十字路、僕はそこを狙った。そして今僕達はそこに居る。そして、十分に時間も掛けた。
十字路の四方全てに一時的な進路規制が出来てる。これで、もうこいつは逃げられないし、この件に関係無いポケモンを巻き込む事も無い。

「傷害、殺害未遂、殺害、あんたが警察に捕まる理由はどれかな? まぁ、どれも当てはまるだろうけどね」
「警察だと!? そんなもの何処に……」
「何処にも何も、あんたもう囲まれてんのよ。あーあ、この状態じゃ、流石にボコボコにするのは無理そうね」

 十字路の先から母さんやバスター、それにハリエントさんが要請してくれた警察の皆さんなんかが出て来た。
どうしてこんな事が出来たかって? ハイテク関係に強い一番の功労者が居るからさ。

「ピカ、大丈夫?」
「平気だよ。フラシィ、さっきの会話って録音出来た?」

 傍に来たフラシィが、地面にパソコンを置いて操作する。すると、僕達とこのストライクが話していた内容が流れ出す。

「な、なんだと!?」
「発信機付き極小マイク。本当、レニスさんは凄い物作るよね」
「お兄ちゃんが作った物がこんな風に役立つなんて、ちょっと意外……」

 包帯から小さな黒い機械を外してフラシィに返す。ま、借りてただけだからね。

「チェックメイトだよ。逃げ場は無いし、証拠もこの通り揃ってる」
「填められただと……」
「そもそも1回失敗した事を考慮して慎重に動かなかったあんたが馬鹿なんだよ。悔いるなら、妙な仕事をしてる自分を悔いるんだね」

 破れかぶれで僕達の方に突っ込んできたか。だが無駄だよ。

「何度も何度もうちの息子に襲いかかるとはね。……往生しなさい大馬鹿ストライク!」

 僕達の後ろから母さんが飛び出して、手加減無しにストライクの顔面を殴り抜いた。うわ、いったそ。
アッパー気味にぶち当てられたストライクは宙を仰いで、その後に吐かれた母さんの火炎の中に飲み込まれた。まぁ、死にはしない程度にはしてるでしょう。

「成・敗!」
「……ふぅ。それじゃ、警察の皆さんお願いします」
「よし、被疑者確保だ!」

 身動き取れない状態にしてるんだから確保なんて余裕でしょ。気合い入ってるのはいいけどさ。
にしても、流石にちょっと疲れたな。大怪我レベルの事になってるんだから当然か。
フラシィに録音したデータを警察に渡すように言って、後はバスターと母さんに任せちゃお。少し、休まないと。

「……信じたく、なかったな。もうずっと会ってないけど、お父さんもお母さんも何処かで私のこと考えてくれてると思ってた」
「ミセルちゃん……」

 泣き声は出さないけど、ミセルちゃんの目からは涙が流れ始めてた。そりゃ、あんな事聞かされればそうなるよね。
さぁ、もう一頑張りだ僕の体。ここで頑張らないと、絶対に後悔するぞ。

「私はね、要らないんだって。お父さんはお母さんの事は好きだけど、子供は要らなかったって」

 あれ、僕の体……こんなに重かったっけ? 頑張れ、もうちょっとだから。

「今度は要らないじゃなくて、邪魔なものになっちゃった」

 ミセルちゃんの前に立った。駄目だ、今にも崩れちゃいそうだ。

「お祖母ちゃんももう居ない。居ないの。私……」
「独りぼっちじゃない」

 支えるように、ミセルちゃんを抱きしめる。

「独りぼっちなんかじゃない。ここに僕は居る、アリエムさんも一緒に居てくれてる」
「……」
「独りになんかさせない。だから……負けないで」

 自分の気持ちに。って、声が出ない? あっら、なんか眠くなってきた。
そう言えば先生に無理しなきゃ回復するって言われたっけ。逆を言えば、無理すれば回復しないと。そりゃそうだな。
ま、もう動く必要も無いし、一眠りしようか。……目、覚めるよね? 僕。



 あのストライクの名前はレイジュ・パッセ。ミセルちゃんを狙った依頼の前に大分色々やっちゃってたみたいだね。もう一生刑務所から出てこれないってさ。
そしてレイジュの家からは、僕が予想した通り依頼受諾書が出て来た。依頼者の血液を紙に付けさせる、所謂血判状って奴。古臭いけど、血液検査で紙に書かれてる相手と一致するかは調べやすいかもね。
その紙が見つかった結果、ある一匹のキュウコンが逮捕されたのはもう言わなくても分かるでしょ。ま、他にも大分捕まったみたいだけど。
んで、僕はと言うと……。

「母さーん、そろそろ起きても」
「ダメ! 今度と言う今度は完っ全に元気になるまでベッドから出させないからね!」

 この通り。あの後僕は、そのまま病院に担ぎ込まれた。自分でも気付かないうちに縫われた傷口が開いちゃったみたいで、その場に血溜りを作りながら寝ちゃったみたいなんだよね。
輸血まで受けなきゃならなかったから相当危なかったんだろうね。いやぁ、我ながらニアデスだった。
そこから退院したのが三日前。実は、あの事件から二週間も経っちゃってるんだ。
それまで僕は寝たきり。まぁ、病院から家に場所は変わったけどさ。
キャルには困らされたよ。あの日朝から僕の家に来たみたいでね、見舞いに来た時に質問攻めに遭ったのは分かるでしょ。
まぁ、それは別にいいんだけどね。いつものことだし。
っと、それよりも今日は結構なイベントがあるんだった。一言で言うと、我が家で生活するポケモンが一匹増えます。

「母さん、僕はいいとして、そろそろ来るんじゃない?」
「あ、そうね。でも部屋はもう昨日のうちに用意してあるし、何時来てもオッケーよ」
「それにしても、よく僕のあんな思いつき聞き入れたね?」
「そりゃあねぇ……あんたに縋り付いて、泣きながら助けてって言ってるのを見たらほっとけないでしょー」

 あの状態になった僕の1番近くに居たからね。そんな状態になってたって言うのは意識が戻ってから始めて聞いたけど。
おや、チャイムがなった。来たのかな。

「あら、来たのかしらね」
「それじゃ、出迎えくらいは起きてもいいでしょ?」
「それくらいならね。でも、出歩いたりはさせないから」
「しないって。ほら行こうよ」

 玄関まで行って、そこを開け放つ。そこには、この二週間で見慣れた姿がある。

「こ、こんにちは」
「別にそんなに改まる事ないでしょ、ミセルちゃん」
「今日からここが下宿……というか家になるんだし、遠慮しないで入って」

 そう、今日からここで暮らすのはミセルちゃん。もう無いとは思うけど、あのアパートで独りで暮らし続けるのも危険だろうからさ。
ん? なんだ、後ろにハリエントさんも居るじゃないか。それに、ミセルちゃんの引越しを手伝ったであろうポケモンの皆さんも。

「ミセル君から引っ越すと言う話は聞いたが、なるほど、ここならば安心だ」
「基本的には普通の民家だし、ハリエントさんのビルよりは安全性に欠けると思いますけど」
「だが、ここには君が居る。下手な警備員よりもよっぽど安全だろう」
「今僕動き回ったら母さんに強制連行されるんですけどねぇ……」
「そうか、君は出血多量で……いや、済まなかった。まさか、君がそこまでの怪我を押してあの場に居たとは思っていなかったよ」
「僕もあそこまで出血してるのに気付かなかったですからね」
「はいはい、ご両者共に話したい事はあるだろうけど、まずはミセルちゃんの荷物を部屋まで運ぶのが先よ」
「おっとそうだった。さぁ、皆頼むよ」

 もしかしてこのポケモンさん達、ハリエントさんの事務所のポケモン? 駆り出されて大変だなぁ。
置いてあった荷物が新しくミセルちゃんの部屋になる場所へ運ばれていく。……あれ? このベッドって……。

「ミセルちゃん、あのベッドとか机は……」
「うん、お祖母ちゃんの。折角だから、こっちを使おうと思って」
「そっか。うん、いいんじゃないかな」
「あの、ピカ君は起きてても大丈夫なの? まだ寝ていた方がいいんじゃ……」
「心配しなくても、これが終わったらまたベッドの上だよ。怖ーい監視の目が今日からは増えるからね」

 ミセルちゃんのは監視じゃなくて心配の目だけどね。まぁ、どっちにしろ僕は身動きが取れないって点は同じだけど。

「監視でもしてないとあんたはまたどっかへフラフラ出掛けるでしょ。じっとしてるなら私だって目くじら立てないわよ」
「あのねぇ、僕だって何も無ければ安全第一で過ごすってば。痛い思いもしんどい思いも御免だよ」
「まぁ、それが1番だろうね。何かあればまた私も協力しよう」
「勘弁して下さいよハリエントさん。弁護士さんにお願いしなきゃならないような事案は起こしたくありませんって」
「そうかい? それは別として、学校卒業後の進路にうちで働くというのはどうかな? 君のような明晰なポケモンなら私の助手をやってもらいたいものなんだがな」
「弁護士か……ま、考えておきます」

 あんまり頭ばっか使う仕事も面倒なんだけどな。よっぽど進路に迷ったらありかもね。

「ハリエントさんも、ガラス細工が必要な事があれば私にご依頼を。割安でお作り致しますよ」
「ん? ……そうか、フランマ・フレイボルト! 最近知名度の上がっているガラス細工職人は君だったのか!」
「あら、私の事ご存知で?」
「いやいや、見事なガラス細工を作成してくれると噂は方々から聞くよ。いやぁ、まさかこんな形で出会うとはなぁ」

 あら、なんだかハリエントさんと母さんで話が弾みだしちゃった。それはそれでいいし、そっとしておこうか。
どうやら荷物の搬入も終わったみたいだ。手伝ってくれてたポケモンさん達が戻ってきたよ。
これでミセルちゃんの心配もしなくて済むかな。事件の手続きやら何やらもハリエントさんが働きかけてくれて終わってるしね。

「ピカ君……」
「ん、どうかしたミセルちゃん」
「その……ありがとう」
「別に僕は大した事してないよ。色々な点を繋いで、皆が動けるようにしただけ。極論言うと、ミセルちゃん庇って動き回って倒れただけだし」
「ううん、そんな事ないよ。それに、嬉しかった。あの時、ああ言ってくれて」

 あの時? うーん、何時の事?

「私は独りじゃないって、僕はここに居るって」
「あー……?」
「あれ、覚えてない? そっか、ピカ君、あの時もう意識が薄れてたんだ」

 えーっと、多分そうです。ってか僕そんな事言ったのか。なるほど、我ながら似合わないイケメンな台詞だ。

「えっと、なんかゴメンね。その辺ぼんやりしちゃって」
「ううん、大丈夫。ピカ君をそんなに無茶させたのは私だもんね」
「無茶はしたけど、それはミセルちゃんの所為じゃないよ。強いて言えば、あのレイジュって奴が1番悪いでしょ」

 本当に誰かを襲う事を生業にしている奴になんか関わるとロクな事無いね。前のブーピッグしかり。

「でも、私はちゃんと聞いたよ。ピカ君の言ってくれた通り、きっと……お祖母ちゃんも、近くに居てくれてるよね」
「……きっと、ね」

 そうか、僕があの時見た夢は、僕自身が言った事をアリエムさんが見せてくれたのかな。
僕が病院のベッドで目を覚ます前、夢を見たよ。はっきり覚えてるから、本当に夢だったのかは分からないけど。
僕は町を歩いてて、知らないキュウコンさんの横を通り過ぎて目を覚ますって言う不思議な夢。そのキュウコンさんは言ってた。
「ミセルをお願いね」って……あれはきっと……。

「ん! 今日からは僕と母さんも一緒! 楽しくやろうよ、ね!」
「う、うん!」
「そうだ。今日はミセルちゃんの引越し祝いって事でホームパーティ程度にはなるけど、何かしましょうか」
「あ、いいんじゃない。どうせキャルと皆も来るだろうし、ハリエントさんもどうですか?」
「ふむ……お邪魔してもいいだろうか」

 もちろんって母さんとミセルちゃんと一緒に答えると、ハリエントさんも笑顔になった。
アリエムさんの最後の願い、僕も叶えるのをお手伝いします。だから……。
これからも、ミセルちゃんを見守ってあげてください。笑顔の彼女を。


~後書き~
な、なげぇ…私のいつもの作品の約2.5倍の長さ。いやはや、何かと色々入れようとするとここまでになってしまうのが困りものです。
ここまでお読み頂けました皆様、改めてありがとうございました。お楽しみ頂けたのなら何よりです。
本来はキャルやセレナ辺りにも出番をと思っていたんですが…ミセルを出す為にカットになったりなんていう裏話なんかもあったり無かったり。長い作品は途中で色々迷ってしまって大変です…。
やはりいつもくらいの長さが1番いい。ですが、ポケタン! 系の作品を書くと多分この長さにorz この次は出るのか!?
とにかく、今作ではこの辺りにしましょう。次の作品が出来るまで、ご機嫌よう!

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • おーピカかっこいいですね!何か続きをまた期待している僕がいるようです。
    ――ピカチュウ大好き人間 2013-05-15 (水) 21:16:58
  • やっぱり双牙連刃さんの小説は面白いです。セレナ様が出てない(会話がない)のは残念ですがポケタンの続きが読めたのはとても嬉しいです。
    もし続けるようでしたらセレナ様とピカ君を、、、冗談です。ごめんなさい。
    これからも執筆頑張って下さい。
    ――196 ? 2013-05-16 (木) 00:09:31
  • 待望のポケタン続編がついに!
    そしてピカの頭の回転の速さに脱帽ですw
    推理物等は色々な要素をいれるとどうしても長くなるんですよね・・・。
    とはいえストーリーの流れがしっかりしているので長さが気になることなく読むことができました。(逆に話に引き込まれて続きが読みたくw)
    毎度楽しく読ませて頂いてますので、これからも執筆頑張って下さい。
    ――cross ? 2013-05-20 (月) 19:44:05
  • >>ピカチュウ大好き人間さん
    ピカはカッコよかったでしょうか? お楽しみ頂けたのなら何より、続きは出せるか分かりませんが…これからも頑張らせて頂きます。

    >>196さん
    セレナは一度救助対象として出しただけですからね、まだピカ達との絡みも書いてないし、時間に余裕のある時にでも何か書きたいなとは思ってます。何時になるか分かりませんが…。

    >>crossさん
    やはり探偵役なんていうのをやらせると頭の回転は速くないとなりませんからね。ピカはちょっと速すぎるかもしれませんけどw
    長さがやはり危惧するところだったんですが、お楽しみ頂けたのならよかったです。ありがとうございます。続きは…ネタが相当固まらないと書けないかもしれませんがorz
    ――双牙連刃 2013-05-23 (木) 19:44:52
  • やはりそうでしたか。じゃあその時がくるまで気長に待とうと思います。
    教えてくださりありがとうございました。
    ――196 ? 2013-05-24 (金) 00:20:47
  • うーん…溢れ出るコ○ン感...
    ――どこかの名無し ? 2015-08-01 (土) 21:14:01
お名前:

トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2013-05-15 (水) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.