「…」
沢山の人に見送られ、カントー地方より、ジョウト地方へと移動する一台のトラックがあった。
その荷台には、沢山の荷物と共に一人の少年が沈んだ表情で虚空を見つめていた。
荷台の扉は固く閉ざされている為、少年がどこを向いても、その目に映るのは闇だけである。
だが、少年は瞳を閉じようとはせず、見えないものの自分を見送りに来てくれた人たちを思い出す。
ポケモントレーナーになったばかりの赤い帽子の少年と、茶髪の少年。そんな少年たちよりも二歳ぐらい年上のハナダシティジムリーダー。さらには、少年の師匠とも呼ぶべき人物であり、近いうちに四天王になるのではないかと言うほどの実力を持った女性もいた。
そして、右目に包帯を巻いた一人の少女も、少年の為に見送りに来ていた。
「…ネーク」
全員の別れ際の顔を思い出しながら、少年は、自分たち家族が引っ越す原因を作り、毒を抜かれて野生に帰され、それでもなお、少年がトラックに乗り込む前に遠くから見送ってくれた彼の初めてのポケモン、ハブネークのニックネームを呼び、それと同時に痛む背中に歯を食いしばりながら、溢れてくる涙を拭くのであった。
※※※
カントー地方、トキワシティ。
何時来ても鍵が掛かっているジムと、ポケモンリーグへ続く道があるぐらいであり、これといって有名な場所ではなかった。そう、ある事件が起きるまでは…。
その事件とは、ポケモンと一緒にかくれんぼをしていた二人の少年少女が負傷し、そのポケモンの毒のせいで、一生傷が残ってしまう事態に陥ってしまった事件であり、結果として、そのポケモンは毒を抜かれて野生に帰され、その飼い主であった少年には、五年間ポケモントレーナーになる事を禁じる異例の事態となった。
その後、その少年の家族は、止む終えずジョウト地方へと引越しをし、トキワシティにはその事件と、被害者の少女の家族だけが残される結果となって幕を閉じるのであった。
※※※
これは、その事件から八年後。ポケモントレーナーになる事を諦め、なるべくポケモンと接しようとせずに過ごしてきた一人の青年の物語である。
そして、その青年の物語は、ジョウト地方からホウエン地方へと向かうトラックの荷台から始まる。
あとがき
初めまして、アーベントと申します。今まではROM専でしたが、思い切って投稿をしてみました。
ポケモンの中でも、ルビーサファイアが好きなので、そのストーリーに沿った、オリジナル展開有りの小説を書いていけたら良いと思っています。
今回はプロローグだったので、短めですが、これからドンドン書いていきたいと思います。
もし何か問題がありそうでしたらコメントをお願いいたします。
後、ギャルゲー的な展開にはなりますが、非エロの作品になりますのでご了承ください。