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プクリンとぺラップのひみつ

/プクリンとぺラップのひみつ

(時闇空パロディ,官能表現(やおい),ハイパーボイスetc..)
苦手な要素をお持ちの方は()内反転して頂ければ。ネタバレには充分注意して下さい。

・主要キャラ簡易紹介
プクリン[ギルドの親方。若くして、その実力・知名度共に相当な域に達している、天才天然青年]
ぺラップ[プクリンの実質一番弟子。時に小賢しくも時に自己犠牲をも厭わない、時に優しい鳥]

プクリンとぺラップのひみつ 


 ― 1 ―

「はぁー参ったヨ。新人が二人も急に弟子入りしてきたもんだから、ワタシの部屋が無くなってしまったじゃないか。全く、困ったものだネ」
 そう、このペラップがぼやくのも無理は無い。
 ギルドに急に弟子入りした二人に、本来なら相部屋で雑魚寝をして貰いたい所だったのだが、このギルドの親方の急なきまぐれか考えあってか、彼の部屋を新人二人に明け渡す事に、彼は腑に落ちては未だいなかった。
「親方様は、ワタシの部屋を一体なんだと思っているのやら。なんなら、自分のご立派な部屋を明け渡せばいいものを。――他人ごとだと思って」
 この鳥は、甚だしくこの事態を迷惑していた。いや、新人が一気に二人もギルドに入団してくれたのは、正直とても嬉しく感じていた。しかし、自分の部屋がいきなり赤の他人に使われる事の歯痒さに、彼は少々、いやかなり苛立っていた。
 とそこに、一人の女性が彼に話し掛けてきた。
「ペラップ、どこか調子でも悪くて?」
仲間のキマワリが、気遣ってくれているんだろう。機嫌のいかにも悪そうな彼に声を掛けてみる、が。
「うるさいんだヨ! お前は今日依頼が朝早くに来ているだろう、さっさと行け!」
「まっ。人が気を遣ったって言うのに、全く失礼しちゃうんだから、もぅ!」
 知った事か、と彼は思った。部屋が無い。確かに夜はギルドの見張りがてら外でそのまま寝る事も少なくは無い。
 しかし、このあまりにも急で惨めな、親方様からの扱いに、彼は酷く辟易していた。
 ――ギルドの仲間に、辺り散らしてしまう程に。
「ディグタ! 今度足跡を見誤る様な事があったら、晩飯抜きだからネ。ドゴーム! お前は、相変わらずウルサイ。少し静かにしていろっ。グレッグル! お前は静か過ぎだっ。怪しげな壺ばっかり弄くり回していないで、たまには賞金首の一つでも獲ってこいっ。チリーン! お前は……何も悪くないネ。チッ。あぁビッパ!! お前は依頼主との待ち合わせの時間をもう過ぎてるじゃ無いか?! 新人が入ってすぐ、先輩が何をやってるんだこのノロマがっ!」
「(やべーぜ……今日のペラップ、かなりトサカにきちまってるぜ)」
「(ヘイヘイ。オレは巻き込まれるのはゴメンだぜ、さ、仕事仕事)」
「(いつも割と短気ですけど、珍しいですね。今日のあの荒れ具合)」
「(まぁ部屋が無くなったからねー、このギルドで親方様以外で唯一の個室をね。きゃーですわっ)」
「(うぅ……だからって八つ当たりは勘弁して欲しいでゲス)」

「オマエら、さっさと仕事に取りかかるんだヨ!」
『(……ひぇ~~)』
 
 ペラップが最後にトドメの怒声を辺りに響かせると、皆持ち場や外に一目散に散って行った。
 しかし慌ただしくも、ギルドがフル稼働しそうなまさにその時。
「……何事なの、ペラップ。おちおち二度寝も出来やしない」
 親方のご登場だった。彼の寝起きは酷く悪くてギルド内では有名だ。
 まだ寝ぼけたその瞳を、眠りを妨げたであろうペラップに向ける。少し不機嫌そうに。
「あ、いや。これはですね、そのー何と言いますか。あ、ほら! 昨日新人が二名入って来たでしょう? これは久し振りの嬉しい出来事。しかし浮かれていては先輩としての面目が立たないと思い、皆に渇を入れてたところです。はい」
「ふーん。今までのトモダチも、大切にしなきゃダメだよ? ……ボクはもう一眠りするから、少し静かにしててね。じゃ」
 そう言うと、親方と呼ばれるプクリンは自室へと戻っていき、ギルドの広場には一人の鳥がむなしく取り残された。
「どうせワタシなんて。所詮は過去の相棒、か」
 鳥の呟きが、ギルドにむなしく響いた。
 鳥の目に、僅かな涙が浮かんだのを誰も知らない。鳥は悲しかった、孤独だった。
「二人で探検してた頃は良かったヨ。死ぬ思いをした時もあった。だけど、あの時の方が、親方様はもっと優しかった」
 鳥が、また嘆いた。

 いつまでも嘆いていてはと、仕事に取り掛かろうとするものの、どうにも捗らない。
 掲示板のポスターの文字が目には入るが、頭には入らないでいた。

「ほぅ。ペラップ自ら賞金首を狙いに行くとは珍しいな」
「ですね」
街の探検家のある一組、オオスバメとケムッソが賞金首の顔が描かれたポスターの前に居る、ペラップに話し掛けた。
「へ? あ、あぁ。たまには何か大物でも単独で仕留めに行こうかと思ってネ(ぼーっとしてたらここに居たんだが、まぁいい)」
「流石、プクリンさんの一番弟子ですね! 一人で賞金首を狙いに行こうとするなんて、格好良いなー」
「……決めた。今日の獲物はコイツだ。“キャタピーに変身して詐欺を働く悪いメタモンです。見掛け次第、懲らしめてやってクダサイ”。くくっ、腕と腹が同時に鳴りやがるぜ。なぁケムッソ?」
「ひぇっ?! ハ、ハイ。そう思います……」
 気合いのやたら入ったオオスバメと、何故か怯えた表情をしたケムッソは掲示板の前から姿を消した。
 また取り残された一人の鳥は、ぼーっと掲示板をまた眺めて、宛ての無い思考をしばし張り巡らせていた。
「もうやけダ。いっその事本当に単独で、低ランクの賞金首でたまにはうさ晴らしにでも――」
と鳥が手に取った一枚の紙には、“Eランク――まだ子供ながら、甘えは皆無です。常駐無銭飲食に加え空気の読めないこのププリンに、アナタの裁きの鉄槌ヲ”と書いてあった。
「……何やってるの、こんな所で?」
 その声は親方のもので、鳥は大変驚いた。慌てて背中に、今まさに見つめていたであろうその紙を隠す。
「な、親方様!? まだ寝ていたのではっ」
「目、覚めちゃってさ。それに今日、ボク暇だし。――ん? 賞金首の掲示板の前に居るって事は、ジバコイルから何か連絡でも貰ってた?」
「い、いえ。別にそういう訳では……」
「だとしたら一人で? 珍しいね、ペラップが単独でダンジョンに行こうとするなんて。……さてはペラップも今日ヒマ?」
 ペラップは決して暇では無かった。
 処理しきれてない依頼の整理。食料調達。新人研修。家計簿。
 普段よりかはこれでも暇だったのだが、新人研修はきちんとやらないと、鳥的に何だか落ち着かなくて嫌だった。
 が、ふと今日の研修はビッパに主に任せてある事に鳥は気付いた。三歩歩く前に。
 食料調達が今日の要だが、街の御用達のカクレオンの店に、在庫が上手く残っていれば。
 大したこと無いじゃないか、と頭の隅で鳥は密かに思った。彼は実は暇だった。急なオフに、思わず笑みがこぼれる。
「……その含み笑いはヒマって事だね。よし! なら、ボクにちょっとこれから付き合って貰おうかなっ」
「へ?」
 
 こうして鳥は、いやペラップは。半ば強引に自らの親方に連れられ、ギルドを後にし、街の方角へと有無を言わさず向かう羽目となった。


 ― 2 ―

 街が近づいてくると共に、彼らの家でもあるギルドが遠くなっていく。道中はダンジョンのそれと比べれば危険は皆無であった。だと言ってもぺラップは一応仕事中での身であったので気を完全には抜く訳には行かなかった。なのに、反対に親方であろうプクリンといったら、まるで仕事中の覇気の一部も感じさせてはいなかった。否。このプクリンに、覇気という物は存在しないと言った方が早いかもしれない。実際長い付き合いのぺラップにも未だに解せぬ節は、この親方に対して確実に持っていた。しかし、それ故に光る人であったのも必然。ただの天才では面白くない。いや面白さは別段求められてはいなかったのだが、他人とはあからさまに違う何かを秘めたこの親方に、賛同するものは決して少なくは無かった――のはいつの話になるやら。
 熱気と活気は良いとしても、割りに合わない重労働。ぺラップを中心とした体育会系方針。そして親方の気まぐれと、時折襲う恐怖の『たぁーーーー!』。これで逃げ出さない新人の方を数えたほうが、随分と時間は浪費せずにすむのは明らかだった。だから今回の新人同時二名入団は、ぺラップにとってもプクリンにとっても心中嬉しいものではあった。――部屋を取られた事と、異性同士なのが鳥的には未だに“解せぬ”といった感じで、今も道中歩いてはいたのだが。
 しかし何気ない親方との久しぶりの二人きりの談話は、ぺラップの心を少しほぐしてくれた。
「どこに向かわれるのですか、親方様。この分だと、街の広場に向かわれる様ですが」
「ふふ。気になる? 本当にせっかちだなぁ、ぺラップは昔っから」
「い、いえ。差し出がましかった様なら、その、スミマセンです」
「……もしかして緊張してるの、いやだなぁ。ボク達、トモダチでしょ?」
「ですが、同時に今は親方様でもあり……」「あーっ! ついたー!」
 ほぼ同時に重なる二人の言葉と同時に、“目的地”へと一行は辿り着いた。
 ぺラップは辺りの風景を見て、「あぁ、いつもと変わらないな」と一人呟き、プクリンの方はというと、「トモダチ~、みんな元気だったー?」と辺りの住民に愛嬌を振りまいていた。周りの皆が街中に珍しく居るプクリンとの会話を楽しんでいるのを邪魔しないように、ぺラップはそっと仕事の一つを終えようとプクリンには気づかれぬよう、目当ての“カクレオンの雑貨屋”に近付いた。
 この店は、雑貨屋というだけあって何でも揃っている、別名“何でも屋”でもあった。カクレオンの兄弟二人で経営してるこの店は古くからあり、ダンジョン内等で支店なども開かれていたりと、意外にその規模は大きい。ダンジョン内で支店の連中が集めた技マシンからその他道具までが、所狭しとぎっしりと、しかし綺麗にそこにはいつも陳列されている。日替わりで店内の商品の入れ替えが行われるのも意外な凄さではある。それ故に、在庫調査を毎日行わなければならなくもあり、ギルド経営側もとい経理担当の一人の鳥としては、いささか面倒でもあったのだが。まぁこれは一見地味な作業に見えて欠かせないさりげない重要任務でもある。ことに、在庫にセカイイチという食料が当分入荷されない事実を知った日には……この鳥はその晩寝付けない程に、頭を悩まされることとなる。
 まずは、ぺラップはカクレオンからセカイイチの在庫・入荷状況を手早く聞くことにした。
「いやぁ、いつもありがとう御座いますぺラップさん。けど今日はビッパさんと新人さん達が既に在庫調査をされて行きましたが……」
「だと思ったヨ。二度手間を承知で顔を出したんだけどネ。いや、嫌な予感は当たるものだね、全く」
「……そうとも言い切れ無いかもしれませんよ」
「へ?」
「兄さん! 不味いでしょう、それは口止めされてるんじゃ」
 最後のカクレオン・弟の言葉がぺラップは異様に気に掛かった。が、ひとまずカクレオン・兄と共に手際良く在庫調査の再確認を行なう。ビッパと新人達を信じていない訳では無かったのだが、鳥的に非常に几帳面な性格が自分の仕事の怠りを、決して無駄であろうとも許せなかったのであった。
「さて。こんなもんだろうネ。いつもご苦労様」
「いえいえ! この街きってのお得意様ですからねー。このぐらいたやすい事ですよ。」
「さて、ワタシは親方様を見張り――いや見に行かなければ」
「そのことなんですけどねー……」「ちょ、兄さんったら!」
 同時に兄弟がしゃべる中、兄の方がぺラップにひそひそと耳打ちをする。
「……ふむ。してそのシークレットな商品とは、一体なんなんダ? しかもワタシ宛に」
「それがですねー、なんと! その注文主が……」

「なにやってるの、ねぇ」

 鳥はその小さい心臓が今にも止まってしまうかと思われる程に驚いた。いつの間に自分の背後に、と僅かな恐怖さえ感じた。
 カクレオン、もとい兄のほうはプクリンの満面の笑顔に何故か体全体を震わせて怯えていた。
「だれにもヒミツって、ボク言っておいたよね」
「そ、それはそうですが、がが」
 緑のトカゲの尻尾が、うっすらと消えかかってる様にさえぺラップとカクレオン弟には見えた。
「約束をトモダチに破られたら。ボ、ボクは……」
「すすす、すみません。この代々伝わるこの店に誓っ守秘義務は金輪際守らせて頂きますから! そ、そそそ、それだけはご勘弁を!!」
「お、親方様。お、おちつい……」「う、う…………うわぁぁあああ!!」

『ひえぇぇぇえええ!!』

 プクリンの泣き声とも叫びとも取れる何かが、広場の地面に亀裂を作りそうな程大地を揺らし、また辺りの木々はその立派な体躯を今にも倒れそうな程に揺らし、カクレオンの店の商品はほとんど全てが揺れで地面に落ち、辺りの住民は鼓膜と足元にダイレクトに来る得体の知れない振動に、心から怯えていた。
「ど、どうかお許しをっ。ぷ、プクリンさん!」
「お、親方様! ここでそれをやられては、広場のトモダチをも苦しめる事にっ!!」
 とたんに、揺れは和らいだ。同時に広場の全住民が鼓膜から手を離したり、地に伏せるのをやめた。
 カクレオン兄弟は間近に居たこともありまだ腰が砕ける程に怯えてはいたが、ぺラップはそれの類に悪くも慣れきっていたので、広場に居る誰よりも冷静ではいられた。――少しち(ryはしたものの。
「中身、見た?」
 唐突に、泣き顔のままぺラップに一言声を掛けるプクリン。
「い、一体なんなんですかそれは」「……たぁーーめぇーー、はぁーーめぇーー」
「み、見てません! プクリン様のギルドの名に誓って!!」
「……ほんとう?」
「ギルドの名と身近なトモダチの名に誓って、見ていません! ほ、本当です!」
 しばらくの沈黙の後、プクリンは先程の泣き顔が嘘の様に穏やかなオーラと笑顔が同時にその身に一瞬で戻った。
「なんだー。てっきりボク、もう見られちゃったのかと思ったよー。ねぇカクレオン?」
「すす、スミマセンでした……。お代は頂かなくて結構なので、どうぞ、これを……」
 そう言ってカクレオンから、何やら怪しげな大きな袋に包まれた物が一つ手渡される。それをプクリンは大事そうに、そしてとても嬉しそうに手に取った。
「お金、本当にいらないの? さすがボクの馴染みのトモダチ! ありがとっ!!」
「い、いえ……。今後とも“さりげなく”御ひいきにお願いします。ハイ」
「(スマン。事情は良く飲み込めんが、詫びは後で必ずするからな)」

 こうして慌しくも軽やかに街の広場を去ったプクリンと、そのお供の少々頭痛と鬱の兆しが見えかかっていたぺラップは、ギルドへと怪しげな袋を運びながら戻って行くのだった。


 ― 3 ―

 道中。ぺラップはプクリンにある疑問符を投げ掛けた。
「大きさの割にはそう重くなさそうですね、ソレ」
 それとは、もちろん例の袋のことを指していた。プクリンの手の諸事情(短い)あって、リヤカーで道中その得体のしれないブツを運ぶことにぺラップは常に不思議がっていた。そして、それを面白そうに見つめながら歩くプクリン。
「しかしリヤカーを押させてしまって申し訳ありません。本来なら弟子であるワタシが運ぶべきものを。しかもワタシ宛だと言うじゃありませんか」
「ぺラップ宛っていうところまではバレてるんだ。ふふ。……もっと暴れれば良かったかな」
「……今なんと?」
「あ、こっちの話ー。気にしないでいいよ、ぺラップはー」
「はぁ。全くこのお方は」
 何気ない会話を淡々と続けながらも、数十分も歩けばギルドに到着する。

「ただいまー、トモダチ~。みんな仕事ははかどってるー?」
 プクリンがギルド内の仲間・他の探検家全員に声を掛ける。愛想が良いのか何も考えていないのか。しかし声を掛けられる側はいつものことなので既に慣れきっている。
 よって返事は大勢から必然的に返ってくることになる。
「おぉ、プクリン。また大きな荷物を持ってご帰宅だな。……さてはお宝か?」
「親方様。おかえりなさい。また大きな荷物を持ってきましたねー」
「……よっと。あぁ、あれはリヤカーだったのか。おかえりなさい。親方様、ぺラップ」
「わざわざ出てこなくてもいいんだぜ、ディグダ? まぁとりあえずおかえりだ、親方様。ついでにぺラップ」
「ついで、とは何だドゴーム。ちゃんとワタシと親方様が居ない間の留守は出来たんだろうな? この単細胞め」
「なっ! 単細胞はねーだろ、単細胞はっ。大体なぁ、今日のお前、朝からいつにも増して小ざかしくて皆ちょっとイラついてたんだよ。ちょっとだけどな」
「ふむ。ちょっとでも小賢しいと思ってたんだネ。素直でいいじゃないか、ドゴーム。……本日の晩飯減量の刑に処す。ふふ」
「ちょ、オイ! そいつは職権乱用ってヤツじゃねーのかよっ。あんまり調子に乗ってるとだなぁ」
「……仮に乗ってるとしたら何ダ。言ってみろ。え?」

 一部のトモダチ同士のくだらない喧嘩が始まり掛けたその時、ある人物の破壊音声制御装置(ハイパーボイス・リミッター)が外れ掛けそうになっていたのに、チリーンがとっさに気付く。
「ケンカはやだよ……う、うぅ……」
「皆さんっ! ちょ、直撃が来ます! 耳を塞ぐか地面に急いで伏せてっ」
「な! ど、ドゴームっ。元はと言えばオマエがだな……」
「ここで人のせいかよっ! 大体個室が無くなったぐらいでギャーギャー騒ぐようじゃお前も大したことな――」
『……たぁーーーーっ!!』
 プクリンのリミッターがついに外れたその時、ギルド全体が大地の力を発動したかの如く激しく縦に、横にと揺れた。天井の外壁がその衝撃でパラパラと少し崩れ落ちてくる。塞いだ皆の鼓膜を貫通する程の大・不協和音。ギルド仲間のドゴームの雄叫びの比では無い。比にならない。確実にこのままだと皆の鼓膜とギルドの維持保障が出来ない。
 鳥はほふく前進をしながらプクリンの足元になんとか寄り、『たぁーーーーっ!!』の解除を懇願した。
「……もう、ケンカしないって約束する? うぅ」
「し、しますからっ。ワタシが謝りますから! ど、どうか早急に解除の方を……」
「……ほんとう? うぅ」
「本当ですから! は、早く泣き止まないとトモダチの鼓膜とギルドと体内細胞の保障がぁぁあ」

 突如。ピタッ、と振動が収まる周辺。と同時に収まるプクリンの涙。
 皆の命の保障と、ギルドを守れたことにぺラップは心から安心した。揺れの吐き気が強烈に込み上げてきたのを押さえながらも。
 
「うぅ……色んな意味で気持ち悪いが。まぁナンダ。その、悪かったな……色々と」
 ぺラップが伏せ目がちに、しかしちゃんとドゴームに謝る。
「ま、まぁいいってことよ。分かってくれればな。お、俺もどうやら言い過ぎたみてーだしな。わ、悪かったよ」
 
 終幕は意外とあっけなかった。それ程、彼らの絆が強い証でもあるのだが。
「うん、さすがボクのトモダチだね! さて、今日はちょっと早いけどチリーン」
「は、はい」
「夕飯の支度、お願い出来るかな。ボクがちょっと暴れちゃった反省も含めて、今日は少し豪華にしといて」
「は、はいっ。分かりました」
「豪華だとよーっ。くー! アレを必死に絶えた甲斐があったぜー。なぁディグダ?」
「ぼくは地面に潜って外に避難してましたから。でも、嬉しいことですねっ」
「なーんか、納得いかねぇ……。が、まいっか!」
「(ちっとも良くないヨ! ワタシは未遂を含めて、今日二度命を落とし掛けてっ)」
「ご飯が出来るまで、皆は仕事の続きを適当にやってて。ただし、ぺラップはボクの部屋にすぐ来ること。じゃ」
 バタン。とプクリンの個室のドアが閉められると共に、一人の鳥だけは己の今日の不運さを呪っていた。
「じゃ、俺らは見張りの続きをやってるか。ディグダ、頼むぜ」
「はい。頑張りましょう」
「ふふ。さて、私はみんなの夕飯の支度をして――あ、ぺラップ」
「……なんだ?」
「頑張ってね!」
「(いつも私が一番頑張ってるだろう……トホホ)」

 かくしてぺラップは説教をされるのかと怯えながら、プクリンの部屋に居るドアの取っ手へと、やたら重く感じる自身の羽を伸ばすのだった。
 ――重く分厚い扉が、今、開かれようとしていた。


 ― 4 ―

「失礼します、親方様」
 一人部屋にしては充分同棲も厭わない程の部屋の広さ。ぺラップは改めて辺りを見回してそう感じていた。
 宝やアイテム、書物の類が少し散乱してはいたが、意外にも綺麗にその部屋は整えられていた。
 大きな机の上に突っ伏したプクリンが、ぺラップの視界に入る。眠りはプクリンにとっての日々のルーチンと化しているのは周知の事実だ。ぺラップは学書を読みながら寝てしまったのだろうプクリンを起こさないように、静かに近くへと歩み寄った。
「さっきワタシを呼んだばっかりだと言うのに……全く」
 ぺラップは半ば呆れながらも、プクリンの足下に置いてあった袋に目をやる。
 中を見てはいけないと思いつつも、自分宛なんだからと、好奇心が膨らんでいくのを抑えられずにいた。
 しかし勝手な振る舞いはできないと自分を心の中で戒め、面倒だが気長にプクリンの起床を近くで健気にも待つ事にした。
「やぁ、ぺラップ」
 小さい心臓が、破裂しかけた。
「お、おおお親方様?! お、おお、起きていらっしゃったので?!」
「ふふ。勝手に開けないところはさすがだね。ぺラップ」
「いえ、それはまぁ……」
「でも気にはなるよね? じゃ開けてみよっか」
 そう言うと、プクリンは足下の袋を強引に机の上に持ち上げ、堅く結ばれた紐をほどき、中の物をそっと地面に下ろした。
「これは……藁、ですか? それにしてもサイズがワタシには大きすぎるような」
「――ぺラップ“だけ”なら、ね」
 
 早かった。でも、同時にとても優しかった。
 プクリンの柔らかい舌が、ぺラップの嘴の中に入り込み、彼を犯した。
 とっさのことに、ぺラップは大変驚きながらも、その心地よさにいつしか身を自然と委ねていた。
 息継ぎの合間に、プクリンがぺラップの耳元でそっと囁く。
「ぺラップの部屋は今日からここだからね……そのための特注品の二人用藁なんだから。無駄には、させないよ」
 愛撫は続いた。次第にぺラップの下腹部の辺りにプクリンの舌が這っていく。
「お、親方様っ?! い、イケナイですって! こ、こんナ」
 ぺラップには性の知識は人並みにはあった。が、“実技”は生まれてこのかた経験してないウブな鳥の一人だった。
 プクリンの方は計画的ではあったが“行為”自体は衝動的なものであった。ぺラップ共々、性の知識・経験に差異は無い。
 ただぺラップをずっと想っていた感情・欲情が、ここにきて臨界点を偶然にも必然的に突破したようなものに過ぎなかった。
 そして、現在に至る。
「親方様……そ、そこは……」
「ふふ」
 いつも皆には絶対見せないだろう妖美な笑み。セカイイチをいつも欲っしている無邪気なオーラをまとったプクリンが、今ここには存在しなかった。
 地面におもむろに広げていた大きな藁に、ぺラップを仰向けに寝かせる。そうすると必然的に彼の膨らみかけた“熱い魂”が顔を覗かせているのがはっきりと分かった。
「や……親方様ぁ」
「ぺラップのもっといい声。ボクは知ってるよ。だから……早く聞かせてよ」
 舌を焦らすように這わすのはやめて、プクリンはぺラップの熱い魂をその手で上下にこすり上げた。
 ぺラップの穂先から、透明の液が少量、藁の上と自身のお腹の上に滴り落ちる。
「うぅ、あぁっ! 親方様ぁ……駄目、ですってばぁ」
「でもこうすると気持ちいいのはボク知ってるよ? ……もっと鳴いていいんだよ、ぺラップ」
 プクリンの手の動きに釣られ、ぺラップが喘ぐ声も段々と大きくなっていく。
 その度にプクリンは満足そうな顔でぺラップを見下ろしながら、手の加速を休めることは無かった。
 広い部屋に一人の鳥の嬌声が響き渡る。それは二人だけの世界と化した、秘密の出来事の一片に過ぎなかった。

 暫くの時が、ぺラップにとっては大変長く感じた。下腹部の熱さが、まだ全身を伝って離れないでいて、それでいてまだ何かを求めている感覚。自分で扱るのとは、わけが違った。
 プクリンは焦らしに焦らしを重ねて、ぺラップに達することを許さなかった。強弱の駆使を、まるでその道の匠の技のようにこなしていた。ぺラップにはそれが良い意味で信じられなかった。この技を一体どこで身に付けてきたのか彼の頭脳を持ってしても皆目検討がつかなかったからだ。別の道の匠であることは確かなのだが。いかんせん、ぺラップにしてみては、これは腑に落ちないことであった。
「親方……様?」
「なぁに、もう出したい?」
「ひ、否定はしませんが……そ、その。一体そのような経験をどこで積まれたので?」
 プクリンは一瞬何かを考えるような素振りをして、ぺラップにすぐ答えた。
「昔のボクの師匠に一通り。えっちな人だったから、師匠。でも、今回が初めてだよボク。他人にこんなことするの。今までぺラップ以外に興味を持った人なんて……」
 プクリンの顔が、みるみる赤くなるのを見てぺラップもつられて顔を赤くした。自分をこんなにも想っていてくれてただなんて、と彼は思った。彼もずっとプクリンのことは好きだった。二人で探検活動をしている時から段々とではあったが。瀕死の傷を負った一件を境に、好きは恋に変わったと彼は記憶している。
 プクリンも同じだった。初めて誰かに身を守られた、衝撃。無くしたくない何か、衝動。運良く通りすがったラプラスに出会わなければ、ぺラップは死んでいた程の傷を負っていた事件。プクリンもまた、そこから禁断の恋に目覚めた。ただ、プクリンは知識はあっても常識が常人と根本から違うためか、自身は禁忌ともなんとも思っていなかった。
 別に性別なんて関係なかった。ただ、お互いが好き合ってる。言葉で確認し合ったわけではないが、そういうものはおのずと分かった。だから無理にでも挿れようなんて思いもしなかった。ぺラップも、素直に射精を無理に我慢してまで、彼を受け入れていた。
 
 時間は、弄り合いを始めてからかなり経っていた。

「ぺラップ……君を苦しめたくないから黙ってたけど」
「……随分、ご立派ですねぇ。流石、と言うべきか。いやはや」
「あんまりジロジロ見ないでよね」
 ぺラップは目線を逸らすプクリンを尻目に、そっと彼の逸物に羽を差し伸べた。彼の良く繕われた
片方の羽が、プクリンの立派な逸物を包み込むようにして、刺激を与える。
「くっ……ぺラップ……」
 弟子の前もあってか簡単には喘ぎ声は漏らさないプクリンを、ぺラップはもっと攻めてやりたい、親方様の味は自分だけが占めたいと、欲望が心の中で渦巻いていた。それを知ってか知らずか、プクリンの逸物は時間と共にその熱さを増していく。顔も紅潮し、普段の威厳と無邪気さが同居した彼独特の雰囲気は、そこには既に存在しなかった。
「あぁぺラップぅ……あ、そんなにされるとボ、ボクっ」
「いいですよ、羽ぐらい汚したって」
「んっ!」
 ぺラップの羽の中に吸い込まれていったプクリンの精が、彼の羽をほんのり熱くした。
 軽くもたれ掛かってくるプクリンの熱い吐息は、ぺラップの縮みかけた雄を、また熱くさせた。普段絶対に見せることの無いであろう、悶えた後の快感に酔った表情は、ぺラップの彼自身を熱くさせるには充分な材料であった。
「……良かったよ、ぺラップ」
「わ、私はまだ達してませんけどねっ。親方様が悦んでくださるのなら私はそれで――!」
 プクリンの口が、ぺラップのそれを咥え込む。
 ぬめり、とした感触がぺラップに鳥肌を立たせる。
「わ、わわっ……あ……」
「ん、綺麗にしてるんだねぺラップは。初めてだけど、やりやすいよ」
「口と舌でなんてっ、汚いですよぉ親方様ぁ」
「勝負の攻めと、大人には。時に汚さも必要なんだよ、ぺラップ……」
 プクリンのそれと比べるには流石に無理があった。
 普段羽毛で隠れているぺラップの雄が親方という最もギルドで地位の高い物にモノを咥えられてるという情景が、目の前で在り、そこには言い表しようもない快感もあった。
 ぺラップが熱い吐息を漏ら度に、プクリンの愛撫は激しさを増す。
「お、親方さま……は、離れないと、」
「くひにだひしゃっていいほ(口に出しちゃっていいよっ)」
 ぺラップはプクリンの口の中に出すのは極力避けたい思いがあった。親方を汚していいのか……そんな思いが射精の瞬間に頭を過ぎったが、この快楽は頭で制御できるものではない。
 プクリンが余りにも咥えて離そうとしないものだから、ぺラップのモノは熱く小刻みに脈動した。
「ん! あっ……んっ! はぁぁあっ!」
 媚声が、プクリンの部屋に反響してより響いた。
 普段自分で余り自身の処理をしないぺラップからは、予想以上の白濁液が溢れ、それがプクリンのピンク色の体を厭らしく白に染め上げた。
 プクリンは、受け止める直前。息継ぎの為にそこから口を離していた。
「わ! うわわ!!」
 当然、顔や体に飛び散るのは防ぎようが無かった。
「はぁ、はぁ……」
 放出後の余韻で、床でぐったりとするぺラップに、プクリンはやや強引に覆いかぶさり、
「ダメだよ……もう、僕、」
 虚ろな目でぺラップがふとプクリンの下腹部に目をやると、先程放出して一度萎えた筈のプクリンの雄がいまにもぺラップの後背から襲い掛かろうとしていた。
「親方さま……好意は大変う、嬉しすぎるのですが……ま、まだ行為に対する私の心の準備が、」
「ボクはずっと好きだった……こういう時をずっと待ってたんだ。新入りには感謝しなくちゃいけない。でも無理やりとかはボクもいやだし、ぺラップが気持ちよくなるとこが見たいから」
 プクリンがそういって、ぺラップを仰向けに優しく返して、そしてその嘴に軽くキスをした。
「親方じゃなきゃ強引に奪っていたかもね。でも仲間にどんな時でも優しくできない親方なんて、ボク駄目だと思うから……だからボクはこれだけでも充分気持ち良かったし、それに、」
「……それに、なんです、か」
 暫くの沈黙が部屋の時を止めた、後。
「愛してるから」
 そう言うと、プクリンは赤く染まった頬でぺラップを強く抱きしめる。
 ぺラップもそれに全く逆らわず、ただただ身を委ねて、信頼する親方の胸に抱かれて確かな愛を感じ取っていた――

 窓から漏れる月明かりが、二人を美しく照らし出す。
 今ギルドの一室の愛を奏でていた物は、蒼月の光と海から聞こえてきたのだろう波の音のただそれらの“青”だけだった。 




 to be continue..


 何かありまし『たぁーーーーっ!』ならば。

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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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