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ブースターと交わるだけの愛なのか

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エーフィ×ブースターの官能となっております、
嫌だと言う方はブラウザバックお願いします。
何がしたかったのか不明な点が多すぎますが、
お付き合いくださればと思います。



ブースターと交わるだけの愛なのか

writer ソライロ


『かんぱーい』

ガチャガチャとグラスがぶつかり合い、会が始まる。
他にも大勢の客が居る店内は非常にやかましいが、
祝いの会に来た面子はそれにも負けないくらいの声で話し始める。

「それにしても、良くあんなところに就職できたな」

「いやー、ホント良かったよ」

「そういや、SC社に入社したのって、結構多いよね」

最初は、もっぱらそんなことを話し始めた。
サークルの同期メンバー全員が、内々定を貰ったというわけで、
こうして、お祝い会という飲み会が開かれたわけである。

「そう言えば、ミザキはどこだっけ」

突然、自分に話を振られ、
飲んでいる途中だった飲料をのどに流し込む。

「えっと、SCだよ」

「ふーん、結構SC多いな、そんなに採用が多かったのか」

「なんか、今年はね」

少し話し込んでいたところに、頼んでいた料理が運ばれてくる。
自分の頼んでいたフライドポテトの皿を近くに置き、
それをつまむ。

「ミザキ、いっつもそれだな」

「悪かったな」

ポテトを一本咥えながら答える。

「あ、俺もいただきっと」

向かいに座っていたピクシー、クタニがポテトを二、三本取る。

「ん、どうぞ。シマもどう?」

隣に座っているジュプトルのシマにも勧める。

「あ、ああ。ありがと」

「そういや、シマの行く、カタダ商店って、どんな企業なんだ」

すかさずクタニが話しかける。

「んーとな、ホームセンターを展開してたりするかな。
カーブスとか言う店」

「あー、あれねえ」

シマの差し出すサラダを皿に取りながら、
相槌をうつ。

「ねえねえー、ハダ、ボタン押してー」

机の端に座っているハッサム、ハダに、
クタニが呼び鈴を押すように頼む。

「ミザキは、なんかいる?」

「じゃあ、ポテト」

「またかよ。シマは」

「野菜スティック」

シマもシマで、野菜しか食べてないような気がする。

「あ、女子組は」

隣に座るガバイトのタダと話していた、
女子三匹にも注文を聞く。
モココのコタニと、ブースターのナミキはライス、
もう一匹のマグマラシのコウノは要らないと答えた。

「あ、クタニさん。俺は豆を」

ハダがクタニに言ったそれを含め、
クタニがまとめて注文した。

「それにしても、四年あっというまだな」

タダが話を振る。

「もっと遊んどけばよかったなあー」

「あー、私も思うよそれ」

ナミキとコウノが続ける。
まあ確かに自分も、もう少し何かいろいろできたほうが良かったが、
わりと満足はしているところもあった。

「僕はわりと満足してますよ、サークル楽しかったし」

グラスを傾けながら、話に混ざる。
中に入っている氷をくるくると回しながら、
それなりに充実していた日々を思い返す。

「そんなこと言って、ミザキは誰とも付き合ってないだろー」

タダが茶化してくる。

「別に、それはどうでもよかったし」

今まで、そしてこれからもだろうが、
そう言った交際と言うのは、面倒事としか思っていない。
自分の時間を有意義に使いたいし、
講義にバイトにサークル、趣味。
楽しく過ごしていた時間に、そんな物の時間を入れる余裕はなかった。

「そんなこと言いながら、
ネットにニンゲンの恋愛小説とか投下してるくせに。
大昔に居たと言われている、ほとんど空想の生き物なのに、
それの恋愛なら興味あるんだな」

全く、タダはどこからそんな情報を仕入れて来るのか。

「何で、そんなこと知ってるんだ」

「クタニ」

「おい、クタニい……」

「あはは、ごめんって、でも、タダも面白いって言ってたぞ」

「ああ、まあ、面白くはあったよ」

バシバシと肩を叩きながら、ポテトをつまんでいる。

「そういや、シマもだっけ」

「うんー、同業者って感じ?」

シマの方を振り向くと、うんうんと頷きながら、
サラダを食べていた。

「でも、シマもカノジョ居たでしょ」

「あー、うん、いるよ」

そう答えるシマに、何となく裏切られたような気持になるが、
すかさず自分も主張をする。

「僕だってさ、興味ないわけじゃなかったけど、
時間ないし、なら、まあいっかって思っただけで」

「ミザキ、必死だな」

クタニに笑われ、そこで言葉を止める。
何となく、負けた。そんな感じがした。

「しかし、その年で童貞も、なかなか悲しいものがあるんじゃないかな」

もう、何も言い返せない。

「まあまあ、ミザキもこれから長いしな、
別にどうこう、悪いとか、そう言うんじゃないから、
悪かった」

タダが調子よく謝ってしめる。

「まあ、うん、これからだしね」

何か引っかかる気がするが、
そうやって話が済んでしまうのが、
タダの良さである。

「お待たせしました」

追加で頼んでいた物が届き、
そこから会話はさらに花を咲かせた。

「にしてもさ、あの教授、ほんっとに実験道具の扱いが雑でさ、
よくセッティングずれてるし」

「あーあー、あるある、でも先輩は大抵ちょちょっと直しちゃったりさ、
見て覚えなきゃ、コツとかわかんないし」

ここまで来れば、嫌な思い出や、苦労話も、
ほとんどが笑い話に変わった。
各々、酒も進み、あっという間に時間は経っていった。

「あーおかし、ほんと傑作だわ」

「そーそー。あれ、ナミキは」

タダが気付くと、ナミキはテーブルの端で物言わなくなっていた。

「脱落しちゃったかー、どうするよ」

「あー俺、明日予定あるしな、時間も遅いしなあ」

「どうするよー」

タダとクタニが話し合って、みんなに問いかける。
だいぶ遅くなったということで、
みんな、お開きにすると言う方向で話はまとまった。

「それじゃあ、お開きにしますか。
もう代金は預かってるから、俺が払っておくねー、お疲れ様でした」

タダが財布を出しながら言う。

「ナミキさんはどうするよ」

クタニが起こそうとするも、全く起きる気配はない。

「あー、なんかね、部外者禁止の寮らしくて、送っていけないのよね」

コウノさんが考えながら、答える。

「じゃあ、ミザキが泊めてやれよ、家近かっただろ」

確かにタダの言う通り、
この店からかなり近いところにアパートを借りている。

「じゃあ、それでいっか。ミザキなら大丈夫だろ」

その場にいたナミキと自分以外が頷く。
まあ、結構信頼されているんだなと思いながら、
今回、ナミキは自分が引き受けることになった。

「んじゃ、お疲れさまー」

店を出て、各々の家があるほうに分かれた。

「大変だろ、担ぐの」

ハダが隣で声をかけてくれる。
家が同じ方向なのは、ハダだけだった。

「まあ、大丈夫だよ」

「それにしても、お似合いだぞ、エーフィとブースター。
そのまま、お持ち帰りのあとに、自分のもんにしたらどうだ」

笑いながらハダが言う。

「んな訳ないでしょ」

背中の温かみを感じながら、冗談に突っ込む。
しかし、温かみとは言うが、季節は夏の終わり。
暑い、熱い。
ここのところの蒸し暑さと、背中の炎タイプの熱さで、
わりと辛かったりする。

「なんか、砂漠歩いてるポケモンみたいだな、顔が」

「あ、ああ。暑い」

ハダとてくてく歩き、自分の家にたどり着く。

「ハダ、ちょっと上がってくか」

「ああ、少し水をくれ」

「そんな気がした」

鍵を開け、大して広くない室内に入る。
ナミキをわりときれいにしているベッドに寝かせる。

「コップは棚にのってるやつ使って。
僕にもいっぱい注いでほしいな」

ハダに頼み、自分は突っ張り棒にかけてあったタオルケットを、
ナミキにかけてやる。

「ほい、水。四足の使うコップって変わってるな。
それに、どうやって文明暮らしをしてるのか不思議だよ」

「それは、まあ、頑張ってる、うん」

渡されたグラスの水を飲み干し、テーブルに空になったコップを置く。

「風通しいいな。そんなにムシムシはしないし、いい部屋だな」

「うんー、家賃も平均的だし、当たりだったかな」

一息つき、机の上に置いてあった個包装されたチョコを食べる。

「いる?」

「じゃあ、二つ」

二つ渡すと、ハダは早速一つ食べる。

「それにしても、もう社会に出るんだな、俺ら」

「うん」

感慨深そうにハダが言う。
こうやって、就職が決まると、
その分余裕はあるが、同時に気が引き締まる思いもある。

「さてと、そろそろ帰らなきゃな」

「そっか、わかった。気を付けてね」

玄関で見送り、後には自分と、眠っているナミキが残される。
時刻は既に23時をまわったくらい。
飲み会ではあまり飲まなかったせいか、
あまり眠くなかった。

「どうするかな」

何をするでもなく、
しばらくの間、スマホを弄っていた。
しかし、寝転がっていたので、
さすがにだんだんと目蓋が重くなってくる。

「んー、ねむいな……」

タイムラインではしゃぐ、ネットの住人達を眺めながら、
ぼーっとする。
最近は、リアルではなく、ネットの繋がりの方が多いなと、
そう感じる。
そんなんだから、リアルでの出会いも少ないわけだなと、
一人納得すると、途端に悲しくなった。

「寝るか……」

スマホを手放し、目を閉じる。
あれ、明日バイトは無かったかな……。
最近は結構暇な日が増えてきたし、どこか遊びに行ってもいいな。
どこに行こうか……。
などと考えていたが、いつしか思考は止まり、眠っていた。

そして、目覚ましの音で目が覚める。

「んー、しまったかけっぱなしだった、あれ、スマホ……」

昨日手放したであろう場所を、手で探り、
まだ完全に覚めない中で、アラームを止める。

「んしょっと」

立ち上がり、目をかく。
やっとはっきり見えた視界には、
ベッドの上で眠るナミキが映る。
どうやら、まだ眠っているらしく、
小さく寝息が聞こえる。

「ま、ゆっくり寝かせておくか」

そのまま、玄関横のトイレに行き、用を足し、
台所の水道で顔を洗う。
カーテンを開けるのは忍びなかったので、
暗い中で戸棚を探り、ロールパンの袋を出す。
シンクの上で安いロールパンをかじり、
冷蔵庫からモーモーミルクを出して飲む。
いつもの食事だ。

「あの、おはよう」

横から声が聞こえる。

「あれ、もう起きたんだ」

おはようと言いながら、そちらを向く。
ナミキがぼさぼさの毛を直しながら居た。

「あの、トイレかりていいかな」

「ああ、玄関の横な」

ナミキはゆっくりと向かい、
パタンと静かに戸を閉める。
自分はその間にカーテンをあけ、
ナミキの朝食はどうするかなと考える。

「ごめん、ありがとう。ミザキが泊めてくれたんだ」

トイレから戻ってきたナミキが言う。

「ああ、うん。別に気にしないで」

「何もしてないよね」

「するわけないでしょ、僕が」

「ある意味、どうかと思うけど、まあよかった」

ナミキはため息をつく。

「どうしたの。いま、朝食準備するよ」

「あ、ううん、やっちゃったなあって。
飲みすぎには気を付けてたんだけど」

「ドンマイドンマイ」

わずかばかりある皿を取り出し、
ロールパンを温め、ミルクをグラスに注ぐ。
トレーに乗せて、部屋に運び、ナミキの前に置く。

「粗末なものしかないけど、良かったら」

「ありがと、いただくね」

そう言ってナミキは食べ始める。
何かしなければいけない事等も思いつかないので、
自分はそのまま食べている様子を眺めていた。
それにしても、ホントにそまつなもので悪かったな。
ナミキは心の中で文句でも言ってないだろうかと、
思いながらナミキを見続ける。

「ごちそうさま、ありがとね」

「ううん、おそまつさま」

トレーごと、台所の流しに片付ける。

「洗おうか?」

「ううん、これくらい良いよ」

軽く食器を洗い、水ですすぎ、棚網の上に乗せる。

「オスなのに、わりとしっかりしてるんだね」

「まあね、独り暮らししてるから、これくらいは」

「そうかなあ、ちゃんとしてるオスって、
そこまで多いわけでもないと思うけど」

「それは、思い込みさ」

部屋に戻り、ベッドを整え、タオルケットを突っ張り棒にかけておく。

「さてと、そろそろ帰る? よね?」

「あ、うん。そだね」

「あ、少し待って、送ってくよ。僕も出るし」

「どこか行くの?」

「いや、特には。どこかぶらつこうかなって」

「じゃあ、私と一緒にどう?」

突然のお誘いに、少し止まってしまう。
えっと、え、どうすれば。
こういうのは断らない方がいいかな。

「じゃあ、お願いします」

「うん、よろしくね」

いままで、そう言うことに全く縁のなかった自分には、
緊張しかなかった。
しかしまあ、別にただ一緒に行動すると言うだけだ。
そこまで、緊張する必要もないということは分かっている。

「では、出ましょうか」

ナミキを先に行かせ、自分は鍵をかけてから出る。

「さてと、ナミキはどこか行きたいの?」

「うん、アイオモールでも、どうかな」

アイオモール、駅前に新しくできた、こちらの方の地方では最大規模を誇る
ショッピングモールだ。
連日、ポケモンたちでにぎわっていると聞く。

「うん、じゃあ、そこに行こうか。そこなら、電車かな」

「そうね、駅はどっち?」

「こっち」

ナミキを連れて歩き出す。
駅まではそこまで遠くなく、歩いて7、8分ほどだ。

「それにしても、少しそっけなくない?」

「あ、ごめん」

何となく、緊張して言葉が繋がらない。
うん、こんなのだから、今まで恋愛とかもできなかったんだなと思う。

「どうしたの? なんか、緊張してる?」

「あ、いや、うん……」

「何で緊張するの、変なの」

ごもっともです、と頭を垂れる。
別に、緊張する理由なんてないはずなのに。
いや、でも、メスとこうして出かけるのは、
初めてだ。
やっぱり、そういう経験に乏しいのが原因なのかな。

「ミザキ君って、ちょっと変な所あるよね」

「まあ、そうかも」

「好きな子とか、いる?」

「ううん、いないかな。今までもいなかったし」

「へえー、そうなんだ」

なんだか、傷をつつかれている気分だ、
昨日の飲み会で散々だったのに。

「やっぱり、その年でそれは、かっこ悪いよ」

「は、はあ」

とどめの一撃、HPは0でひんしだ……。

「ほら、そう落ち込むことはないよ。
まだ半年くらいあるし」

「ああ、うん。そうだね」

そうこうしている内に駅に着く。
アイオモールのあるセントラル駅までは三駅あり、
その分の切符を買って入場する。

「一番ホームだからあっちだね」

ナミキを案内して、目的のホームまで行く。
電車が来るまで少しあるが、大した時間ではない。
ホームには、同じくセントラル駅に向かうのであろうポケモンたちが
ドアの来る目印のところで並んで待っている。
間もなく列車はやってきて、
ぞろぞろと車内に入ってく列に交じって乗り込む。
そして、電車にのり、三駅揺られて目的のセントラル駅にたどり着く。

「ナミキ、居る?」

「うん、大丈夫」

しっかりと降りてきていることを確認し、
セントラル駅の改札を抜ける。

「えっと、東口出て地下道通って行けばいいのか」

「ミザキ君は駅前詳しいんだね」

「まあ、少しだけね」

ナミキはあまり駅前回りが詳しくないとのことなので、
引き続いて案内する。
地下道を通り、アイオモールの地下から入店する。

「うわあ、すっごい……」

「あんまりしっぽぶん回すなよ」

興奮してしっぽがあらぶっているナミキを落ち着かせ、
エスカレーターを登って地上の専門店街のあるフロアに上がる。

「これ、すごい階層あるのね」

たしか、地上7階建てのモールだとか宣伝していた気だする。
それにしても、一つのフロアだけでも結構広いのに、
それが7階層とは、いやはや、恐ろしい。

「それじゃあ、一フロアずつ見ていってもいい?」

「ああ、うん。いいよ」

軽い気持ちで承諾したが、これがとんでもなかった。
メスの買い物と言うのは本当に長い。
一つ一つのフロアをじっくり見ていくナミキについて行くが、
半分も見終わらないうちにお昼になった。
そこで、お昼はレストラン街の中の一つでとることにした。

「ごめんね、つまらないでしょ」

「ううん、べつに。僕も見ていて楽しいし」

そっか、と言いながら、ナミキはそばをすする。
いや、シブい気がするのは、思い違いだと思いたい。

「もう少し、つきあってほしいんだけど、いいかな」

「うん、どうせ暇だし」

ゆっくりとお昼を食べ終わり、
再びショッピングを再開する。
それにしても長い。
半分も行ってなかったため、
午後もかなり遅くなってきたころにやっと全部見終わった。

「結局、何も買わないんだね」

「まあ、そうね。そんなものよ」

ナミキは笑顔で答える。
メスの買い物って不思議だなと思いながら、地下道を歩く。

「あ、そうだ。このまま、またミザキ君とこの駅まで行っていいかな」

「え、なんで」

「評判のお店があってさ」

「な、なるほど」

要するに、美味しい物のためだ。
そしてそのまま、行きと同じように電車に乗って、
ホウカ駅に到着する。
例によって、この辺りに詳しいということで、
お店までの案内を頼まれ、
自分も結構そう言うお店には興味があったので、
ナミキを連れて、目的の店まで歩いた。

「いらっしゃいませー」

店内に入ると、店員のパッチールの静かな声が出迎える。
喫茶店だが、ランチや、夜はディナーと、居酒屋もやっているという珍しいお店で、
その料理の味とドリンク類の評判は上々とのことだ。

「ミザキ君はどうする?」

席に通され、メニューを見ながらナミキが言う。

「そうだな。このカレーかな。オススメって書いてあるし」

「じゃあ、私もそれで」

パッチールに注文を頼み、
しばらく待つ。

「どうだった、今日」

「へっ」

突然の質問に答えがすぐ出ない。

「わたしと、一日いて……って、買い物だけじゃあ何でもないか」

「まあ、そうだね。でも、緊張したし、悪い気はしなかった。
つまらないわけでもなかったし」

そっか、と、ナミキは笑う。

「ねえ、女の子と、つきあってみようとか、思わないの?」

「え、うーん」

少し考える。
しかし、自分だって好きでこんな無様な経歴になっているわけではない。
ましてや、ごく普通のオスだ。

「まあ、できるならそうしたいかな。
彼女いない歴イコール年齢、なんて、好きでなってるわけじゃないし。
この年で童貞も、情けないし」

「まあ、そうね。でも、その言い方は身体目的みたいにとれちゃうけど」

「あ、いや、別にそう言うわけじゃないよ」

「まあ、別にそれでもいいとは思うんだけどね」

ナミキは変な所で、少し変わっている。
何だろう、このサークルの宿命なのか、
変わってるやつが多いというのは。
まあ、今はそんなことはどうでもいい。

「でもさ、なんか……声とかかけづらいっていうか。
別に、顔もいいわけじゃないし。能力も平凡な感じだし。
誰か、声かけてくれないかなー、なんて」

「そんな、受け身だから、いつまでたっても
彼女なんてできるわけないのよ」

「うん、わかってる、けど……どうせ告ったって、
断られるのが関の山だよ」

こちらの顔を見て、ナミキは考え込む。
そして、ため息をはくと、水を一口飲んでから、また話しかけて来る。

「まあ、そうかもしれないけども、
やらないうちからあきらめるのは早すぎるんじゃないかな」

「ナミキは、かわいいからそういうことが言えるんだよ」

その時、パッチールがカレーを持ってくる。
それを受け取り、自分はさっさと食べ始める。

「でも、私も今はフリーだし。アタックしようか悩んでるくらいよ?」

「ん……意外」

カレーを口に放り込みながら、ナミキの話を聞く。

「でも、ナミキの事だから、スペック高い奴なんでしょ、きっと」

「ううん、顔はけっしていいとは言えないし、能力は普通。
そして、彼女いなくて童貞」

「なんだよ、僕みたいなやつだな」

気にせずカレーを飲み込む。
カレーは飲み物とはよく言ったものである。

「はあ、とりあえず……、飲もうかな」

カレーをか、とか言いそうになるが、そこはこらえて、
ナミキが言うのは酒の事だろう。

「飲むんだ」

「それの方が話ができるの」

「じゃあ、僕も」

パッチールにカクテルを二人で頼む。
程なくして、二つのグラスがテーブルまで運ばれてくる。

「それじゃ、とりあえず、乾杯」

自分から言い、グラスの縁を合わせる。
そのまま一口飲むと、また話が再開する。

「とりあえずさ、ミザキ君は、目的や理由が何であれ、
がっつりいかなきゃだめだと思うよ」

「うーん……」

「何でそこ迷うの」

目的や理由が何であれと言われても、
それがあまり浮かばないから、困るのでもある。

「まあ、メスの味も知らない、童貞だから、
例えば私が少しかわいかろうと、興味なんかないもんね」

「そんなことない」

「何が違うの」

グラスを少しずつ空けながら話していると、
だんだん酔いも回ってきて口が軽くなってくる。
それが、災いか、福なのか。

「してみたいよ。その、ナミキはかわいいし。
君をねじ伏せて犯してやろうかとか、思ってみないでもないよ」

「へえ、でも、それじゃあただの犯罪だし。
それでどうするかだよねえ」

ナミキはからからとグラスの氷を鳴らしながら笑っている。

「でも、ナミキが好きとは……自信が持てない。
それに、申し訳が無いって言うか。
そう、そんな、ただシたいっていう理由とかで、
告ったって、そんなの愛なんかじゃないと思うしさ」

「うん、それでいいんじゃないかな」

「なにそれ」

ますます、ナミキがよく分からない。
一体何が言いたいんだろう。

「詰まるところをいえば、最終的には交尾に収着するでしょ。
だから、理由や目的が何であれいいかなって。
それで、相手の事を知って行って、
やっぱり違うなら、好きとは違ったらやめればいいし、
逆なら、そのまま行けばいいんじゃない」

「変じゃないかな……」

「そうかな、ようはキッカケ」

まあでも、キッカケは大事である。
目を向けなければ、何も気づくことも知ることも無くなってしまう。
キッカケは、なんだっていいというのが、
ナミキの言いたいことだろう。

「うーん、まあ、言わんとすることは分かった気がするよ」

「そっか良かった」

ナミキはグラスの中身を一気に飲み干す。

「それでさ、私を犯さないでもないって本当?」

いきなりとんでもない話に戻してくる。

「あ、いや、まあ」

「ふーん、それって、私の事が気になるってこと?」

「あ、うーん……そうなのかな」

「ちょっと嬉しいな」

ナミキはもともと赤いが、さらに頬を赤く染めたように話す。

「じゃあ、どうなの、私の事、知りたいってわけ?」

「どうなんだろう。今はただ、さっさと誰かとやって、
童貞卒業したい思いかもしれないし」

読めない自分の思いが、煩わしく思われる。
何でいつも、自分の事なのにわからないんだろう。

「そっか……じゃあさ、やってみる……?」

「は……い?」

「あ、うーん……とりあえず、ミザキ君の家にお邪魔してもいいかな。
もう少し話したりするかな」

「あ、うん。わかったよ」

とりあえず、自分の家に戻ることになった。
支払いは一応自分がすべて支払った。
何て言うか、そう言うところは少し見栄を張っているのかもしれない。
そして、さほど遠くない家に帰る。

「お邪魔しまーす」

先にナミキを上がらせる。
後に続いて、自分も上がり、防犯のための鍵も忘れない。

「じゃあ、早速続き」

「あ、うん」

ちょうどいい感じに酔って、気分がいい。

「んーとんーと、どうだったかな。
あ、そうだ……したい?」

「な、なにを」

「……交尾だよ?」

何でいきなりそういう話になるのだろうか。

「何でまたいきなり」

「だって、ミザキ君が自分の気持ち知るためには、
それが一番いいんじゃないかな。
悩んでるより実行、だよ」

だよじゃあないと思う。
いや、事が事だけに少し慎重になりたい。

「ほら、私の事もいっぱいわかるし、童貞も卒業できる。
今日一日振り回させてくれたお礼だと思って、さ
べつに、付き合ってとか言ってるわけじゃないし」

慎重に考えようとするも、
少々アルコールが入っていて、気分が上がっている。
勝手に、走り出す気分は止められない気がした。

「本気……か」

「もちろん。本気でもないのにこんなこと言うわけないでしょ、オスの前で」

一呼吸無言の間が開く。

「あ、でも、私が、ミザキの事が好きとは言ってないからね、
そこのところは、わかっててね」

「わかった」

それだけ確認すると、ナミキはベッドの上に乗る。

「結局、僕は誘われる側……か」

正直、腑に落ちない点はあるけども、
それでも、折角なわけで、これから先、
二度とこういうことはないだろう。
何て言うか、運命と言うものだろうか、
そういうのが、本当に奇妙だと思えて来る。

「じゃあ」

寝転がったナミキの上に被さる様に重なる。

「そう言うことは知ってんだ……」

「まあ、一応と言うかさ」

「ふーん」

お互いの口を重ね、キスをする。
一瞬ではなく、長く、濃厚な。
舌を絡ませながら、息を漏らす、ナミキの姿は、
普通のオスなら興奮しないわけがない。

「ん……はぁ……。じゃあ、ナミキ」

「モエカ、で呼んで」

「……モエカ」

「うん、そう。エイタ」

お互いに名前で呼び合い、笑い合う。
もう一度、口付けを交わす。
今度はもっと長く。
お互いの口の中で舌を絡ませ、
よくよく味わうように重ねる。
そして、口を離すと、細い橋が架かり、
ぷつっと切れて、落ちる。

「できるよね……」

そう言ってモエカは、ふせた格好から、
少し足を開き、お尻を持ち上げた形になる。
ごくりと唾を飲み込み、意を決して、
前足の指で、モエカの牝に触れる。
ぬるっとした感触で、最初は少しびっくりしたが、
そのまま牝に沿わせるように指を動かす。
くすぐったい、に近いような反応をし、
モエカは小さく声を上げる。
それに構うことなく、そのまま、尿道口のすぐ近くにあるという、
一番、敏感と言われている部位を中心に刺激を与えていく。

「ん……ぁ……あっ」

少し力を入れて押し、くりくりと弄る度に、
その声の頻度と音量は増していき、
多分気持ちいいんだろうなと察する。

「ぁ……っはぁ」

そう、モエカが息を漏らすたびに欲望が掻き立てられる。
もっと、見たい。
もっと、啼いてほしいと、衝動が加速していく。

「やっ、ちょ……っ」

口ではそう言っているが、
結局はモエカもその快楽に堕ちている。
しばらくそのまま、たまに少しパターンを変えたりしながら続けていた。

「あ……ふぁああっ」

絞り出したように啼き、モエカはその場にへたり込む。
牝からはたらたらと粘液が流れ出している。

「すごい……」

自分の手にべっとりと付いたモエカの体液を眺め呟く。
自分自身もすっかりあがっている息が、モエカの呼吸と同調する。

「はぁ……いいよ、次。エイタも」

「あ……うん」

そのまま、モエカの背に乗る。
ふわふわとした毛の感触が気持ちいい。

「怖気づいた?」

「ううん……」

そのまま、自分の牡を、モエカの中に侵入させていく。
なんてか、ものすごく熱い。
モエカがブースター、炎タイプって言うのもあるのかもしれないけど、
それ以上に、熱さを感じる。

「……どう、ハジメテ……は」

「なんか、よく分かんない」

そのまま、すっかりモエカの中に収まったところで、
自分から動き出す。
そこからは、特に考えなんてなかった。
ただ、目の前にあるコトをこなすような簡単なこと。
動きを繰り返すたびに、モエカからは声が漏れる。

「あぁっ、はぁっ」

「く……ぅ、きもちいい……」

もう、それだけ。
快楽のままに貪るなんて、最低じゃないかと思うけど、
所詮そんなものなんだ。
モエカの事、知れるとかそんなの、わかるわけない。
でも、嫌いではないかもしれない。
相手が、モエカだからこそって言うのあるかもしれないし。

「あ……イきそ……」

それを呟いたところで、モエカから返事などはない。
何も言わず、荒い呼吸をしているだけだった。
それって、良いってことなのかな。
これってまずくないのかな。
それを考える間もなく、頭の中が真っ白になる。

「う……はぁぅ……っ!」

モエカが啼くのは聞こえた。
自分の精液が、モエカの中に吐き出されて、
それから、モエカの背に前足を置き、息をつく。

「……どうだった」

モエカに尋ねられる。
牡を抜き、二人向き合う体勢になってから、
答えを返す。

「気持ち、よかったよ」

感想なんて、そんな物しか浮かばない。

「なんか、やけに考えてない?」

「あ、うーん……」

余計な事、たまに考えてはいたけど、
そんなの変わるものでもないのじゃないかな。

「もしかして、自分の気持ちを知るために必死だったとか」

「ちょっとだけ。でもわかんないし。
気持ちいなって思って、それで終わりだし」

「なんか、やっぱり変だね。エイタって」

どうせ、自分は変なんだと肩を落とす。

「なんていうか、そう言うのって、
前と後ろだよ。うん。
最中じゃなくて、前と後の気持ち」

「前と後……」

する前と、した後に、どういう感情を抱くか、
ってことなのかな。
うーん、よく分からない。
余計なことにとらわれている、そう言う目で
モエカはこちらを見ていた。

「もいっかい、いい」

「え……うん、いいけど」

承諾を得たところで、
モエカを抱きしめる。
特に、考えなくたっていいや、とりあえず、
余計なことなんて考えず、
モエカともう一度交わって見たいと思った。
そのまま、モエカをベッドに押し倒して寝かせ、
自分が上になる。

「慣れたって感じ?」

「さあ、どうだろう……」

そのまましっぽを絡ませる。
エーフィの特徴的な二股に分かれた尻尾で、
モエカのしっぽを挟み、モエカの上で、しばらく静かになる。

「いい?」

その問いかけに、モエカはゆっくりと頷く。
今度は向かい合ったまま、牡を挿入していく。

「は……ぃぅ」

それだけでもモエカは嬉しそうな表情をして、
迎え入れてくれる。
それを見ていると、自分もうれしく、
そしてもっと先までと言う衝動が駆ける。

「あっ……くぅ、モエカ……」

余計な事はいっさい頭に残さず、
快感と、モエカの事だけを見る。
腰を振り、少しずつ加速していくと、
同時に快感も鋭く増していく。

「はっ、はぁっ、んっ……」

口を開けて、目を薄く開けたまま喘ぐモエカの姿は、
自分の気持ちを昂らせるのにこれ以上の物はない。
ただ、その声を引き出すように、自分の牡を刺しこむ。

「はぁ……いいっ……」

自分の口から洩れる言葉も、もはや感情そのままに流れ出す。

「あっあぁっ……にゃあぁっ!」

口の横から涎を流しながら、なおも快感に身をよじる姿、
そして、自分の牡から伝わる快感。
もはや、その奔流を妨げるものは何もなかった。

「あっ……イく……っ」

「はぁ、あぁぁっ!」

自分の中身を全て出してしまうような感覚だった。
モエカも、ぴくぴくと足を震わせているところを見ると、
イってしまったのだろうか。
息を落ち着かせながら、牡を抜き、
モエカにそっとキスをする。
そのまま、モエカの横に倒れる様に横になった。

「どうだった……?」

「とても良かった……なんか、さっきよりも」

「そっか」

モエカは静かに笑う。

「僕、モエカの事……好きなのかもしれない」

「そう?」

「うん。だってさ、二度目もしたいって思ったり、
終わって、こんなに嬉しくて、満足して……」

「そっか」

モエカが、前足を握ってくる。
温かくて、少しホッとする。

「なんていうか、これから、もっと好きになっていきたいかな」

「うん、それでいいと思うよ。私も、だし」

「えっ?」

そこまで言うと、モエカは何も答えなくなった。
でも、何となくは分かった気がする。
これから、だね。




終わり



童貞君の話書いてみたいなあとか思ったら少し迷走しすぎてました。
それでもまあ、この二匹は幸せになってくれるでしょう(たぶん)
ここまで読んでくださりありがとうございました。



なにかありましたら……

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 初めまして、そして面白かったです。こういった、世界から二人だけ切り離されたような雰囲気の中で、どこか淡々と言葉を交わしていくって感じの物語がとても好きです。 -- おれん ?
  • 初めまして、そして面白かったです。こういった、世界から二人だけ切り離されたような雰囲気の中で、どこか淡々と言葉を交わしていくって感じの物語がとても好きです。 -- おれん ?
  • >>おれんさん
    読んで下さりありがとうございます!
    こういう雰囲気も悪くないかなと挑戦気味に書いたのですが、
    気に入って頂けたのであれば、幸いと思います! -- ソライロ
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Last-modified: 2016-03-18 (金) 16:16:11
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