ブラックパンサー
作者 涼風
☆作者からの注意☆
※今の所は[非]ですが、もしかしたら官能表現が入るかもしれないです。
※また、グロいかもしれないので(表現力が無いのでそうじゃないかもしれませんが)
苦手な人はこちらへどうぞ。
初春のまだ冷たい空気が、完全には温まっていない体に凍みる。
天国のような温かさの部屋を出て、地獄のような極寒の廊下を通り、ある部屋の前にたどり着く。
自分の容姿に乱れが無いかを確認して、部屋に入るために扉を開ける。すると目の端に天蓋付のベッドが見え、わが主がすやすやと寝ている。
そんな呑気な主を起こす前に部屋のカーテンを開ける。そうして冷気を暖めなければ主が二度寝してしまうからだ。
カーテンを開けると姿を現したばかりの太陽が大地を暖めている。
「姫、朝でございます」
「うぅ……分かってるわよ……ふぁ」
布団がゴソゴソと動く。欠伸を聴くとこちらまでそこにある布団で寝たくなるのだが。自分の欲を理性で押さえつけ、仕事を遂行する。
「おはようございます、姫」
「おはよう……クリス」
私の主の姫がようやく布団から出て、自分の毛並みを揃える。
その間に自己紹介を済ませておくことにしよう。
私の名前はクリス。種族はキュウコンで年齢はシークレット。ちなみに雄だ。キュウコンの容姿や名前から雌だと勘違いするものがいると思うからな。
職業は今は執事。……今は。
「クリス、終わったわ〜」
ちょうど姫も支度が整ったところで、自己紹介は終了しよう。
「姫の本日のご予定ですが、王妃様と共に歩いて村へ向かいます」
「何するの?」
「……昨日も申し上げました通り、村の経済状況の視察です」
「そんな事を私がする必要あるの?」
昨日言ったじゃねえか!!……と言うとクビになるだろうから、あくまで優しく言葉を返す。
「質問に質問は失礼であることは承知しておりますが……。姫は村のオレンの実一つが御幾らだと思われますか?」
「うーん……20ポケくらい?」
「惜しいです。100ポケでした」
「どこが惜しいのよ」
「姫の財政感覚ならば、もっと破格になると思っておりましたから」
コレで姫は分かっただろうか、自分が村に行かなくてはならない理由が。
「……クリスは私を莫迦にしているわけ?」
どうやら分かっていない様であった。そうだった、この方に常識は通用しないんだ。少し損した気分だ。
午後、私と姫様は王妃様と共に村の市場を回っていた。
「イオン姫はどうだ?」
王妃の執事をしているバクフーンのパッチが話しかけてきた。
言うのが遅れたが、私の主人である姫はイオンという。種族はミミロップ、18歳。その他の事はその内分かるだろう。
「どうと言われてもな……。いつも通りだ」
「姫の前では皆も明るく振る舞っているが、このインフレじゃなぁ……」
「それを知らない姫がいるって、どうなるんだろうかこの国は……」
俺はため息混じりに、姫の悪口としか取れない言葉を放つ。
「国は国王と王妃がいるからこそだな。姫は箱入り娘だと思う。あの方は今はダメだ」
「姫様に関してお前は辛口だな。そんなに言えるのはお前だけだぞ」
「ズバッと言わなくちゃ彼女は直らんからな」
「クリスさんとパッチさん、少しよろしいでしょうか?」
ふと、深緑色の軍服のような制服を着た、一匹のサーナイトが話しかけてきた。彼女は近衛師団総団長のロコと言う。
「こんな感じで警備はよろしいのかしら?」
「いいと思う。だがお前も下手をすれば命を狙われる立場なんだぞ。部下ぐらいはつけておけ」
「そうね……。私がもう少し年取ったら考えるわ」
若くして国の最大防衛組織の総団長という地位に上り詰めた彼女の実力は、この国で一番と言えるだろう。
団長の選考会で行ったバトルの相手が、全員格闘タイプだったと言うわけではない。また、体を選考員へ売ったという訳でもない。むしろ彼女への風当たりは強かった。そんな中でも団長になったとなれば、実力は言わずとも分かるだろう。
まあ、今夜にでもその実力が発揮されるのだが。
その後紆余曲折あったけども、今は深夜。それまでは説明する意味が無いのでしょーりゃく。え、何があったかぐらい教えて欲しい?
寝るまで姫に殴る、蹴る、仕事の妨害などひたすら苛められました。あの方は私を何だと考えているでしょうか?私も一応はポケモンなのに。
さて、既に姫様はお休みになられています。
これからは私の第二の仕事へ移りたいと思います。執事じゃないのか? そうですよ、一応執事と言うことになっています。
あ、このテンションはいつもですよ。決してネジが外れたわけではありません。 あえて言うなら、多重人格みたいなものですね。てへっ☆
「じゃあ行ってくる」
「おう。気をつけろよ」
独り言ではありません。わたしはそんなに寂しくは無いですよ。王妃の執事兼護衛のパッチと相部屋なんです。
ちなみに、国王は護衛を持ちません。理由は居ても邪魔であると言うことと、人件費の削減だそうです。何処までケチなんでしょうか。貴方が一番狙われやすいんですよ。
仕事先への出入り口は、クローゼットの奥です。小説みたいですね。
その先は緩やかに下っている暗い廊下があり、先は全く見えません。昔は怖かったのですが今はもう慣れました。
そんなこんなで廊下を抜けるとそこは…………小さな小屋へと繋がっていました。
雪国ではありません。雪はタイプ的にそこまで好きではないです。
小さな小屋には小さな暖炉がありましたが、薪はくべてなかったので少し寒かったです。
実を言うと私は、反王制を唱える集団を根絶やしにするために結成された、ランス国王直属特殊隠密組織 通称“ブラックパンサー”の隊長なんです。かっこいいでしょ。
通称と言っても、組織の存在自体を知るの八人のメンバーとランス国王の計九名のみなので、自分たちが便利なように呼んでるだけなんです。名前の由来ですか? それはですね、国王様の気分です。話によると、脳内ルーレットで決めたそうな。どうでもいいですね。本題に戻しましょう。
選抜された八人から成り、原則的にはフォーマンセルで行動します。
そしてここは、ブラックパンサーの基地。
今は自分も含めて三人いまして、後の一人は敵のアジトヘ先行潜入中です。
「待ってたわよ」
「すまなかった。姫がなかなか寝付けないとか言うから、二十分部屋に居させられた」
「運が良いのだか悪いのだか。そういえば、こうやって小隊を組むのは初めてね?」
「確かにそうだな。よろしく頼むよロコ」
「今はその名前じゃないわよプロミネンス」
「済まんな、シュート」
プロミネンスとかシュートとか言うのは、ブラックパンサーでのコールサイン。
私はプロミネンス、先程出てきたサーナイトのロコはシューティングスター。長いので普段はシュート。そうなると、プロミネンスって微妙ですよね。略すには短いし、そのままでは長いし。
部屋に居るもう一人はロズレイドのパル、コールサインはジュピターです。
「今日はミルキーが先行しているが、標的はビンゴだとよ」
本日のメンバー、最後はシャワーズのファン。コールサインはミルキーウェイですが、コレも長いのでミルキーと普段は呼ばれています。
「ジュピター何かあるか?」
「いえ。行きましょう」
では、皆さんは何かありますでしょうか?……無いですよね。早速仕事に移りたいと思います。
「はーい。イオン姫様のことをどう思っていますか?」
「何処までいっちゃってますか? キス? ま、まさか……こうb「何処までもいってない!! その前にサーナイト、心読むな! ロズレイドは話を膨らますな!」
いかんいかん。冷静になれ俺! こんな奴らのペースに乗せられたら最後、明日から地獄を見ることになるんだ。ほーら、プロミネンスは冷静になった。よし。
「こんな事してる暇は無いんだぞ、さっさと行くぞ」
「何かありますか、って聞いたのはそっちなのに……」
「そうか、隊長もそこまでいってたのか。フフフ……」
「分かったな!?」
口では怒るが手は出さないですよ。否、出せないんです。本気で二人に手を出せば、ジュピターにはぎりぎり勝てるけども、シュートにはおそらく手を出す前にお星様になりますね。うん。
正直、彼女が隊長でもよかった気がするんですが。というか、メンバーを統制できないリーダーって良いんですかね?
「隊長、こちらです」
「真下の家の中に、確認したところでは四匹いました。種族はグラエナ、ブーバー、サンダース、レパルダスです」
「分かった。シュート、頼んだぞ」
シュートが手にブラックホールみたいのを創りました。これは、空間を歪ませることで出来、敵のアジトの時空を歪ませるためです。制圧しやすくなるんですよ。
まあ、神ではないので長時間出来るわけではないですが、制圧するには十分な時間は歪ませることが可能ですよ。やっぱりリーダーは替わるべきじゃないですか?
「出来たわ。三人とも、手を置いて」
これから仕事を始めるんですよ。内容はマンキーでも覚えられるくらい簡単です。
反乱分子を殺せば良いんです。
相手も強いですが、せいぜいランクは上の下。一方の私達は、自分で言うのは何ですが上の上。
まあ、強いから任務遂行率が十割なんですけどね。決して自慢じゃないですよ。
目の前が真っ暗になって、次の瞬間に部屋の中へ入りました。シュートがテレポートを使ったんです。
敵に驚かせる隙を与えません。一番近くに居たサンダースへ火炎放射を放ちます。面白いくらい燃えますね。
いやぁ、一瞬で声が聞こえなくなりました。サンダースだったとも分からないくらい真っ黒です。例えるならばブラッキーでしょうか。
改めて自分の火炎放射の威力に惚れ惚れしますね。……どうでもいいですか。
「今日は案外簡単だったわね?」
「油断した奴が最も死にやすいんだぞ」
「分かってるわよ。さっさと帰りましょ」
今更ですが、本当はこの仕事嫌ですよ。血を見るのはあまり得意ではないですから。まあ、なんでこの仕事やってるか自分でもよく分かりませんが。
今日はこれで終わりなので、現場から離れ先程の小屋に戻りました。何も現場に残さず……ね。
翌日。
私は国王・姫とともに隣の国、ペイン国へ向かった。
なんだかんだで二時間半しか寝れてなくて今だに眠いのだが、立場上仮眠を取ることも出来ない。
ペイン国とは国交があるが、数十年前まで犬猿の仲であった。
横に居る国王の父、先代の国王は兵を率いてペインに攻め込んだことがある。
しかし病気で急死し、後を継いだ国王―弱冠十五歳だったが―の鶴の一声で戦争が終結したのだった。国王としての器であったといえるだろう。
「クリス眠いの?」
「申し訳ございません。昨晩はあまり寝れておりませんので……」
姫が珍しく気を気遣って下さった。
「そうか。仕事か?」
事情を知っている国王も心配するようなふりをする。
「はい。昨晩の内に済ませなければならない雑事があったもので」
「無理はするなよ。お前が居ないと色々大変なんだからな」
「お気遣いありがとうございます」
恐らく今の言葉は、クリスにではなくプロミネンスに対してだと思われる。なぜだか分からないが、その時私は少し孤独を感じた。
昼過ぎ、我々はペイン国の首都にある王宮に到着した。どんよりとした空ではあるが、ランスよりも緯度が低いので冬にしては暖かかった。
「到着致しました」
「長旅お疲れ様でございました。こちらへどうぞ」
一人の兵士がやって来て、我々を誘導する。
誘導された先には、一人の雌のゴチルゼルが我々の到着を待っていた。
「お待ちしておりました、クロス国王様、イオン姫様」
「こちらは冬でも良い気候で、氷タイプが弱点の私には羨ましいですね」
確かに、ドラゴン・ひこうタイプを持つボーマンダである国王にして見れば、ランスの寒冷な気候は辛いのだろう。
「相変わらず御綺麗であらせられる。お久しぶりです、キュリー女王様」
そう言って、二人は握手する。前には絶対考えられないことだ。
「お疲れの所申し訳ありませんが、記念碑の方に向かいたいと思います」
我々がペイン国に来たのは、記念碑に向かうことだ。何の記念碑かはその内分かる。
記念碑に各々の国の支配者が花を手向けた。そうして手を合わせ戦死者の冥福を祈る。
そう。記念碑とは先程軽く触れた戦争──通称六十年戦争の石碑と鐘撞き堂。
今日は戦争が終結するきっかけとなった、停戦平和条約の締結日。毎年この日に両国の王族を始め、沢山の国民がこの地を訪れる。
「もう二十五年も経ちますね。あの悲惨な戦争が終結してから……」
「……長いようで短い。時とは無情ですね」
正直言えば、私も戦争の悲惨さを知らない。そのくらい時は過ぎた。
「そろそろ帰りましょうか」
「ええ」
辺りも暗くなり現在は夕食の会食中である。長ーいテーブルにおいしそーな料理が使われている。私も何故か同席している。
「そういえば、娘さんはどうなさっていますか?」
「フララは今出かけておりまして、明日帰ってくる予定です」
フララというのはペインの王女の事である。種族はドレディア。歳は確か二十五だったと思う。
「是非ゆっくりして行ってください。両国の友好関係二十五周年ですから」
「今ではこんなにも交流があるとは、当時は思いもしなかったです」
「こういうことに関しては時に感謝すべきなのですね。ふふふ」
このような感じで食事は進んでいった。
夜になったが、先程の会食の精神的疲労からあまり寝付きが良くなかったので、外で涼むことにした。
空には雲が少しあるが、真ん丸とした月が出ている。
「クリス、少しいいかしら?」
「ああ。別に構わないぞ」
後ろから声を掛けられ振り返ると、そこにはロコが立っていた。
「どうした。何かあったのか?」
「あら。
俺の横に座ると、当然であるかのように右手を俺に繋いできた。
月の光を浴びる彼女の姿は、俺には女神のように映る。彼女の仕種一つ取っても俺には十分過ぎる。そのくらい俺は彼女を愛しているし、彼女も愛してくれているだろう。
そんなに相思相愛の仲だったのに何故別れたのか。気になると思うが理由は簡単。彼女の近衛師団入団だ。
ロコが前々から入りたいと願っていたのは知っていたし、彼女のしたいことを俺がとやかく言うべきではないと思っている。彼女のために別れたのだ。
俺は浮気とかもっての他というタイプなので、それ以降彼女を作る気はなかった。
数年後にブラックパンサーのメンバーとして偶然再会し、今に至るという感じだ。
「……二人っきりっていうのも数年振りね」
「そうだn……」
そして、彼女の欠点(?)はすぐにキスをしたがるところなのだ。俺としては別に嫌ということでも無いので、結局黙って受けるのだが。
「……いきなり過ぎじゃないか?」
「どうせやるんだから、どのタイミングでも変わらないわよ」
別れたとはいえ、彼女も俺の事を愛していた……いや、愛してくれているようだ。
「でさ……。一つお願いがあるんだけど」
「何だ?言ってみ」
ロコが珍しく、恥ずかしそうに聞いてくる。
「……ほ、本番はダメかしら……」
俺と一対一の時はおしとやかな彼女とは思えないほど、爆弾発言だった。だが、彼女が希望するならやってあげるべきではないのか。そう思った。
「ダメだろうな」
聞き覚えのある第三者の声が聞こえた。声がした上の方向を見ると、飛んで降りてくる国王の姿が見え、俺達の前に着地した。
「国王様!?」
「邪魔してスマンな。だが、場所を考えたほうがいいだろう。ここはペイン国だからな。流石に問題がある」
国王の裏の顔を知っている我々からすれば、笑顔な目の前のボーマンダが別人に見えた。
「お前達もまだまだ若いな。国に帰ったら
そう言って、自分の部屋に戻る。その姿はまさに中年の雄だった。
「……帰りましょうか」
「……そうだな」
気まずくなったムードを取り払うように、俺達は部屋に帰る。
そんな中、俺は昼間に孤独を感じた理由が分かった気がした。
久しぶりの更新。短いのに非常に遅いですね。
次も更新は遅くなりそうです。申し訳ないっす。
誤字脱字・おかしい点がございましたら、コメントしていただけると幸いです。
後、私の成長のためにアドバイスがありましたら是非お願いします。
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