性的搾取を体現した作品なので不愉快に思われたらすぐに逃げていただきますよう。
―びくん、と、心臓が高鳴る。
なんで僕はこんなところにいるのか。
今では誰も分からない。
ただ、原初の自然の摂理である敗者は勝者に従うというところを拡大解釈したら、まあ、こういう羽目にもなるのかもしれない。
「おい、ブラッキー。出番だぞ」
薄暗い会館の一番大きなホール。イーブイ系統は♂でも♀でもメインを張れる特異な存在だと聞いた。
踊り場に昇る前の、大部屋に行く前の部屋から視線を感じる。
ああ、あれがこの間捕まった仔か、とか次のエースはあの子なのか、とか――
控室で奴隷が被せられるようなみすぼらしい服を剥がされ、ステージの上で顧客を扇情し――さらには大枚をはたいてそのあとを求めるようなお大尽を捕まえるように指令を受けた。
だってしょうがないじゃないか。僕はここに買われたのだから。
ブラッキーの言い訳を聞くものはもはや誰もいない。その妖艶な肢体、薄暗い欲望渦巻く会場の中、ブラッキーが頭を下げる。
「本日お客様にお愉しみ頂くブラッキーです……よろしくお願いします……」
言うなり、煌びやかに飾られた装飾を背負い――中央の舞台に躍り出た。顧客の目線が僕に集まる。そんなに見たいもんか?
まだ始まったばかりなのに。
流されるBGMと僕の動きはあらかじめ打ち合わされていたもの、それを越えて肌を見せるのは契約違反。ストリンダ―が腹を鳴らしゴリランダーが太鼓を叩き、アシレーヌが裏声と地声を交えつつ顧客の耳を煽ったところで、最初の被服を剥がされた。
へえ、こういうのが好きなひとって結構いるんだと――なぜかその時は思考が安定していた。悪い側で。
最初のマントが剥がされたら自分の身体にある発光環が下着を通り越して露になってくる。
誰彼を求めているわけでもないのに、みっともない。
半分ほどステージの上で被服を投げると、僕の耳が、足が、背中が、胴体が、光を――相方を求めて発光した。
いや、でも……これはヤバい。
ここまで過激だとは、期待が半分、予想外が半分。ブラッキーは夜目が利くからと日没以降のショーに組み込まれていたのがいつの間にかメインの出し物にすり替えられていた。
「でも君、こういうの嫌いじゃないよね?」
これは先週同じ時間帯に同じところにいたヤドキング、僕が先週も同じ場所に立っていたことをよく知っていて――下着をずり下した。
これはやべえ。
ここまで過激なのは契約違反だ……契約違反?
そもそも何でここでこんなことしてるんだっけ????
「ああ、ブラッキーくんはかわいいな」
なんかもうどうでもよくて――多分借金とかそういう関係でこんな事させられてるんだろうけど――
自身の光る体に照らされた薄暗い個室には、今まで踊っていた時には全然気にしなかった篤志家たちが集結する。
「ひっ……!」
怯えるブラッキーの気持ちは顧客を制限するには全く至らず。
「あっ……あっ……!!」
本来なら布を剥がされてもそこには何もないはずのプログラムが、股間で屹立する。
ほう、今夜は♀ブイズではなくかわいいブラッキー君ですか。
ああ、そのかわいらしい首から上や乳首まで感じるとはなんと調教の行き届いた。
……褒められているのだろうか。もう大人数に身体を触れられすぎてどこがどうなっているとかが全然わからない。
「へへ……」
前足で目の前に垂れ下がっていた肉棒を掴む。既視感はあったが、理解したくない逸品だ。
「彼の滅私精神を尊重してくれますな?」
遠くで嗄れ声が聞こえた。
ともかく僕は――ブラッキーとして最低限からだと引き換えのことはした。
そのつもりだ。
股間の膨らみの激しい下帯をほどく。下卑た観衆の欲望に塗れた熱視線を一心に受け止める。
さあ犯せ。これを望んで私は動いてきたのだから。
ぐるり、と、自分を慕って付いてきた物考えぬ肉塊どもを一瞥する。ああ、そんなものか
新春更新大会
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